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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240620BHJP
   B41J 2/045 20060101ALI20240620BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B41J2/14 501
B41J2/045
B41J2/14 613
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020178653
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022069799
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】松藤 良太
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-241003(JP,A)
【文献】特開2008-110332(JP,A)
【文献】特開2002-59055(JP,A)
【文献】特開2004-1338(JP,A)
【文献】特開2005-9424(JP,A)
【文献】特表2007-537391(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107245430(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出口を備える板部材と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する駆動体と、
前記板部材、前記弁体および前記駆動体を保持する筐体と
を有する液体吐出ヘッドであって、
前記筐体の前記液体吐出口近傍に、前記筐体を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記筐体は、前記加熱手段を備える第1筐体と、前記加熱手段を備えない第2筐体とからなることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記駆動体を、前記第2筐体に備えることを特徴とする請求項2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1筐体は金属からなることを特徴とする請求項2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記第2筐体は樹脂からなることを特徴とする請求項2または3記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第2筐体に冷却部材を備えることを特徴とする請求項2、3または5記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記第1筐体に温度検知手段を備えることを特徴とする請求項2または4記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記温度検知手段はサーミスタであることを特徴とする請求項7記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項10】
前記加熱手段を制御する制御手段を有し、前記制御手段は、前記駆動体の熱膨張が伴う第1の伸び量と、前記筐体の熱膨張が伴う第2の伸び量とが同等になるように前記加熱手段を制御することを特徴とする請求項9記載の液体吐出装置。
【請求項11】
液体を吐出する液体吐出口を備える板部材と、
前記液体吐出口を開閉する弁体と、
前記弁体を駆動する駆動体と、
前記板部材を保持する第1筐体と、
前記駆動体を保持する第2筐体と
を有する液体吐出ヘッドであって、
前記第1筐体を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ソレノイド12の励磁を適当にコントロールすることにより可動鉄心8を駆動し、ニードル弁4がノズル孔2を開閉するインクジェットノズルを開示している。
【0003】
特許文献2は、ノズル22に連通するキャビティ23に吐出液体を加圧供給すると共に、ピン24でノズル22を閉塞可能とし、このピン24をアクチュエータ25でノズル22に対して離接可能とし、このアクチュエータ25を制御装置12で制御する構成とすることで、ピン24がノズル22から離間している間だけ、加圧供給されている吐出液体がノズル22から液滴として吐出される液滴吐出ヘッドを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、温度変化による液体の吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、液体を吐出する液体吐出口を備える板部材と、前記液体吐出口を開閉する弁体と、前記弁体を駆動する駆動体と、前記板部材、前記弁体および前記駆動体を保持する筐体とを有する液体吐出ヘッドであって、前記筐体の前記液体吐出口近傍に、前記筐体を加熱する加熱手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、温度変化による液体の吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図。
図2】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図。
図3】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの加熱手段の位置を示す説明図。
図4】液体吐出モジュールにおける熱膨張の説明図。
図5】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図。
図6】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図。
図7】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体正面図。
図8】液体吐出ヘッドの温度制御に係わる部分のブロック図。
図9】液体吐出ヘッドの温度制御の一例を示したフロー図。
図10】液体吐出装置の全体概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態を、図面を用いて以下に説明する。
【0009】
図1は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。図1(a)は液体吐出ヘッドの全体斜視図、図1(b)は同ヘッドの全体側面図である。
【0010】
液体吐出ヘッド300(以下、ヘッドと称する)は、ハウジング310aと、ハウジング310aに接合(積層)して設けたハウジング310bとを備える。ハウジング310aは金属等の熱伝導性の高い材質からなり、ハウジング310bは樹脂等の熱伝導性の低い材質からなる。また、ハウジング310aは、その正面と背面にヒータ340を備える。ヒータ340は温度制御が可能であり、ハウジング310aを加熱する。また、ハウジング310bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ350を備える。
【0011】
ここで、ハウジング310aは第1筐体の一例であり、ハウジング310bは第2筐体の一例である。また、ヒータ340は加熱手段の一例である。なお、以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング310と記す。
【0012】
図2は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図(図1(a)のA-A線矢視断面図)である。
【0013】
ハウジング310aは、液体を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持する。また、ハウジング310aは、供給ポート311側からの液体をノズル板301上を経て回収ポート313側へ送る流路312を備える。
【0014】
ハウジング310bは、ハウジング310aの流路312と接続する供給ポート311および回収ポート313を備える。供給ポート311と回収ポート313との間には、流路312内の液体をノズル302から吐出するための液体吐出モジュール330を配置している。液体吐出モジュール330は、ハウジング310aに設けたノズル302の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液体吐出モジュール330を備えた構成を示している。なお、ノズル302および液体吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル302および液体吐出モジュール330の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302および液体吐出モジュール330の配列は、1列ではなく、複数列で配置してもよい。
【0015】
なお、図において符号315は、ハウジング310aとハウジング310bとの接合部に設けたシール部材である。本例ではシール部材としてOリングを用いており、ハウジング310aとハウジング310bとの接合部からの液体の漏れを防いでいる。
【0016】
上記の構成により、供給ポート311は、加圧した状態の液体を外部から取り込み、液体を矢印a1方向へ送り、液体を流路312に供給する。流路312は、供給ポート311からの液体を矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート313は、流路312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3方向へ回収する。
【0017】
液体吐出モジュール330は、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332を備える。ハウジング310bは、圧電素子332の上端部と対向する位置に規制部材314を備えている。規制部材314は、圧電素子332の上端部に当接しており、圧電素子332の固定点を成している。
【0018】
ここで、ノズル板301は板部材の一例であり、ノズル302は液体吐出口の一例である。また、ニードル弁331は弁体の一例であり、圧電素子332は駆動体の一例である。
【0019】
上記の構成において、圧電素子332を作動してニードル弁331を上方向へ動かした場合は、ニードル弁331によって閉じていたノズル302が開いた状態になり、ノズル302から液体を吐出することができる。また、圧電素子332を作動してニードル弁331を下方向へ動かした場合は、ニードル弁331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じた状態になり、ノズル302から液体は吐出しなくなる。
【0020】
図3は、本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの加熱手段との位置関係を示す説明図である。
【0021】
ハウジング310aは、ヒータ340を図3に破線で示すように、複数のノズル302を横断するようにしてノズル302の近傍に備えている。
【0022】
ここで、液体吐出ヘッドにおける熱膨張について説明する。
【0023】
図4は、液体吐出ヘッドを構成する液体吐出モジュールにおける熱膨張の説明図である。図は単一の液体吐出モジュールを示しており、図4(a)は液体吐出モジュールの部分拡大図、図4(b)は図4(a)のA部詳細図である。
【0024】
圧電素子332でニードル弁331を動かしてノズル302を開閉する液体吐出ヘッドでは、圧電素子332を高い周波数で駆動し続けると、圧電素子332の発熱により圧電素子332とニードル弁331に熱膨張が起こる。
【0025】
圧電素子332は、図2の説明で述べたように、圧電素子332の上端部を固定点としているため、熱膨張した圧電素子332は図4(a)の矢印a4方向へ伸びて、ニードル弁331をノズル板301側へ押し下げる。また、圧電素子332からの熱は、圧電素子332と接しているニードル弁331にも伝わり、ニードル弁331自体も熱膨張により矢印a5方向へ伸びる。
【0026】
その結果、ニードル弁331の先端部331aとノズル板301との接触部では、先端部331aをノズル板301に押し込む状態が発生する。圧電素子332の作動によってニードル弁331が変位する量は一定であるため、ノズル板301に対するニードル弁331の先端部331aの押込量が大きくなる程、ノズル302を開くことが難しくなる。
【0027】
例えば、熱膨張が起きていない状態では、図4(b)に示すように圧電素子332の作動によりニードル弁331は変位量G1だけ移動して、ノズル板301とニードル弁331の先端部331aとの間に適正な隙間を形成する。流路312内の液体は、この隙間を通りノズル302から吐出することができる。
【0028】
しかし、熱膨張によりニードル弁331の先端部331aがノズル板301に喰い込んだ状態では、ニードル弁331を変位量G1だけ動かしても、ノズル板301とニードル弁331との間に適正な隙間を得ることができない。ノズル板301とニードル弁331との間の隙間は、適正値よりも狭い隙間となり液体の流体抵抗が大きくなるため、ノズル302からの液体吐出速度も低下し、狙いの吐出適量を得ることができなくなる。
【0029】
また、ハウジング310は、圧電素子332と接触していないため、圧電素子332からの熱によるハウジング310の熱膨張は殆ど生じない。すなわち、ハウジング310の内部では、熱膨張による圧電素子332およびニードル弁331の伸びが発生している一方で、ハウジング310およびノズル板301は圧電素子332からの熱による熱膨張の影響を殆ど受けない。こうした熱膨張の差は、ノズル302とニードル弁331との水平方向における相対位置においても位置ずれを招く。
【0030】
また、ヘッド周囲の環境温度によっても、ノズル板301およびハウジング310aの伸縮が発生する場合がある。ハウジング310aの伸縮が発生した場合は、圧電素子332の発熱時と同様に、ノズル板301とニードル弁331の先端部331aとの間に適正な隙間が得られず、狙いの吐出適量を得ることができなくなる。
【0031】
上述のように、本実施形態は、液体を吐出するノズル302を備えるノズル板301と、ノズル302を開閉するニードル弁331と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332と、ノズル板301、ニードル弁331および圧電素子332を保持するハウジング310とを有する液体吐出ヘッド300であって、ハウジング310のノズル302近傍に、ハウジング310を加熱するヒータ340を備える。
【0032】
これにより、温度変化による液体の吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0033】
また、ハウジング310は、ヒータ340を備えるハウジング310aと、ヒータ340を備えないハウジング310bとからなる。そして、圧電素子332はハウジング310bに備えている。
【0034】
これにより、ノズル302近傍に集中的に熱を供給することができ、ニードル弁331に対するノズル302の位置補正の応答性を高めることができる。
【0035】
また、ハウジング310aは金属からなり、ハウジング310bは樹脂からなる。
【0036】
これにより、ノズル302周辺の温度を上げ易くなり、ノズル302の位置補正の応答性をより高めることができる。
【0037】
図5は、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。図5(a)は液体吐出ヘッドの全体斜視図、図5(b)は同ヘッドの全体側面図である。
【0038】
上述の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドと同等の部材には同一符号を付し、その説明は省略する。本実施形態の液体吐出ヘッドは、第1実施形態に係る液体吐出ヘッドに対して、ハウジング310bの正面と背面にペルチェ素子360を備える点が異なる。
【0039】
ペルチェ素子360は熱を放散し、ハウジング310bを冷却する機能を有する。圧電素子332を備えたハウジング310bをペルチェ素子360で冷却し、発熱源を備えないハウジング310aをヒータ4で加熱することで、ハウジング310aとハウジング310bの温度は短時間で近づけることができる。
【0040】
ハウジング310aがハウジング310bと同等の温度に上昇することで、ハウジング310aが保持するノズル板301にも熱膨張が生じる。この熱膨張により、図4で述べたノズル板301に対するニードル弁331の先端部331aの押込量に相当する分、ノズル板301が伸びる。これにより、ノズル板301に対するニードル弁331の先端部331aの押込が解消し、ノズル302に対するニードル弁331の先端部331aの位置補正の応答性を高めることができる。
【0041】
図6は、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。図6(a)は液体吐出ヘッドの全体斜視図、図6(b)は同ヘッドの全体側面図である。
【0042】
上述の第1および第2実施形態に係る液体吐出ヘッドと同等の部材には同一符号を付し、その説明は省略する。本実施形態の液体吐出ヘッドは、第1および第2実施形態に係る液体吐出ヘッドに対して、ハウジング310bの正面と背面にヒートシンク370を備える点が異なる。
【0043】
ヒートシンク370も、ペルチェ素子360と同様、熱を放散し、ハウジング310bを冷却する機能を有し、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0044】
ここで、第2実施形態で用いたペルチェ素子360および本実施形態で用いたヒートシンク370は、冷却部材の一例である。
【0045】
上述のように、第2実施形態および第3実施形態は、ハウジング310bにペルチェ素子360やヒートシンク370等の冷却部材を備える。
【0046】
これにより、ハウジング310bの温度を下げ易くなり、ノズル302の位置補正の応答性をより高めることができる。
【0047】
図7は、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体正面図である。
【0048】
上述の第1乃至第3実施形態に係る液体吐出ヘッドと同等の部材には同一符号を付し、その説明は省略する。本実施形態の液体吐出ヘッドは、第1乃至第3実施形態に係る液体吐出ヘッドに対して、ハウジング310aにサーミスタ317を備える点が異なる。
【0049】
サーミスタ317は、ハウジング310aの温度を検知する。例えば、ハウジング310aの温度をサーミスタ317により検知し、その検知温度からハウジング310aおよびノズル板301の熱膨張による伸び量を算出する。一方、液体吐出ヘッドに接続した制御部(図示せず)では、圧電素子332の発熱に伴う圧電素子332の熱膨張による伸び量を算出する。算出した両者の伸び量が同等になるように、ヒータ340を制御する。
【0050】
なお、サーミスタ317の出力を基に制御する制御対象は、ヒータ340に限るものではない。サーミスタ317の出力は、ヒータ340以外に、冷却部材(ペルチェ素子360、ヒートシンク370)の制御に用いてもよい。なお、サーミスタ317は温度検知手段の一例である。
【0051】
上述のように、本実施形態は、ハウジング310aにサーミスタ317を備える。
【0052】
これにより、簡易な構成でニードル弁331に対するノズル302の位置補正を実現できる。
【0053】
図8は、本実施形態の主に液体吐出ヘッドの温度制御に係わる部分のブロック図である。
【0054】
液体吐出装置は、例えば、制御部500、記憶部501、表示部502、操作パネル503、第1筐体温度検知部504、第1筐体温度調整部505、算出部506、第2筐体温度調整部507および判断部508を備える。
【0055】
第1筐体温度検知部504は、サーミスタ317等の温度検知手段を含み、第1筐体となるハウジング310aの温度を検知し、検知結果を制御部500へ送信する。
【0056】
第1筐体温度調整部505は、ヒータ340等の加熱手段を含み、制御部500からの指示に基づきハウジング310aを加熱する。
【0057】
算出部506は、圧電素子332の駆動電圧や駆動周波数等の情報を基に圧電素子332の発熱量を算出したり、熱膨張発生時の圧電素子332およびハウジング310aの伸び量等を算出する。
【0058】
第2筐体温度調整部507は、ペルチェ素子360やヒートシンク370等の冷却部材を含み、第2筐体となるハウジング310bに冷却部材を備える場合は、制御部500からの指示に基づきハウジング310bを冷却する。
【0059】
判断部508は、温度制御上の各種判断に係わる機能を有し、判断結果を制御部500へ送信する。
【0060】
制御部500は、液体吐出装置の全体の制御を司るCPUと、CPUへの液体吐出動作等の制御を実行するためのプログラムおよびその他の固定データを格納するROMを備える。また、制御部500は、被描画物に描く絵柄や文字等の描画データや被描画物の表面形状データ等(液体吐出装置が印刷装置の場合)を一時格納するRAMを備える。さらに、制御部500は、PC等のホストから描画データ等を受信するときに使用するデータおよび信号の送受信を行うためのI/F等を備える。なお、制御部500は、制御手段の一例である。
【0061】
記憶部501は、圧電素子332の駆動電圧や駆動周波数のテーブル等、各種情報を格納する。
【0062】
表示部502は、液体吐出装置で異常が発生した場合等に、その内容を表示し、ユーザに報知する。
【0063】
操作パネル503は、液体吐出を実施するにあたり必要となる情報(描画領域、描画データ、被描画物の表面形状データ等)の入力に用いる。なお、表示部502と操作パネル503は、タッチパネル等により1つの画面で行えるようにしてもよい。
【0064】
図9は、液体吐出ヘッドの温度制御の一例を示したフロー図である。
【0065】
液体の吐出動作を開始すると、算出部506は、圧電素子332の駆動電圧、駆動周波数等の情報を記憶部501から読み出し、この情報を基に算出部506は圧電素子332の発熱量を算出する(ステップS1)。
【0066】
算出した発熱量の情報を基に、算出部506は熱膨張による圧電素子332の伸び量Δ1を算出する(ステップS2)。
【0067】
次に、第1筐体となるハウジング310aに設けたサーミスタ317により、ハウジング310aの温度検知を行う(ステップS3)。
【0068】
サーミスタ317の検知結果を基に、算出部506は熱膨張によるハウジング310aの伸び量Δ2を算出する(ステップS4)。
【0069】
次に、判断部508は、ステップS2で求めた圧電素子332の伸び量Δ1と、ステップS4で求めたハウジング310aの伸び量Δ2とを比較する(ステップS5)。
【0070】
そして、圧電素子332の伸び量Δ1が、ハウジング310aの伸び量Δ2よりも大きくなければ、フローの先頭に戻りステップS1からステップS5を繰り返す。一方、判断部508が、伸び量Δ1が伸び量Δ2よりも大きいと判断した場合は、ハウジング310aに設けたヒータ340をオンにし、ハウジング310aを加熱する(ステップS6)。
【0071】
判断部508は、ヒータ340がオンの状態にある期間、圧電素子332の伸び量Δ1とハウジング310aの伸び量Δ2とを比較する(ステップS7)。
【0072】
そして、ハウジング310aの伸び量Δ2が圧電素子332の伸び量Δ1と同等になっていない場合は、ヒータ340によるハウジング310aの加熱を継続する。一方、判断部508が、伸び量Δ1と伸び量Δ2とが同等になったと判断した場合は、ハウジング310aに設けたヒータ340をオフにし、ハウジング310aの加熱を停止する(ステップS8)。
【0073】
液体の吐出動作中は以上のステップを繰り返し、所望の作業が完了したならば、液体の吐出動作を終了する。
【0074】
図10は、液体吐出装置の全体概略構成図である。図10(a)は液体吐出装置の側面図、図10(b)は同装置の平面図である。
【0075】
液体吐出装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設置している。液体吐出装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0076】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0077】
液体吐出装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体吐出装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体吐出装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0078】
上述の第1乃至第4実施形態で説明した液体吐出ヘッド300は、ヘッド300のノズル302が被描画物100に対向するようにヘッド保持体70に取り付けて使用する。
【0079】
上記のように構成した液体吐出装置1000は、キャリッジ1をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けたヘッド300(図示せず)から被描画物100に向けて液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。
【0080】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0081】
[第1態様]
第1態様は、液体を吐出するノズル302(液体吐出口の一例)を備えるノズル板301(板部材の一例)と、ノズル302を開閉するニードル弁331(弁体の一例)と、ニードル弁331を駆動する圧電素子332(駆動体の一例)と、ノズル板301、ニードル弁331および圧電素子332を保持するハウジング310(筐体の一例)とを有する液体吐出ヘッド300(液体吐出ヘッドの一例)であって、ハウジング310のノズル302近傍に、ハウジング310を加熱するヒータ340(加熱手段の一例)を備えることを特徴とするものである。
【0082】
本態様によれば、温度変化による液体の吐出ばらつきを低減することが可能な液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0083】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、ハウジング310は、ヒータ340を備えるハウジング310a(第1筐体の一例)と、ヒータ340を備えないハウジング310b(第2筐体の一例)とからなることを特徴とするものである。
【0084】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、圧電素子332をハウジング310bに備えることを特徴とするものである。
【0085】
第2態様および第3態様によれば、ノズル302近傍に集中的に熱を供給することができ、ニードル弁331に対するノズル302の位置補正の応答性を高めることができる。
【0086】
[第4態様]
第4態様は、第2態様において、ハウジング310aは金属からなることを特徴とするものである。
【0087】
[第5態様]
第5態様は、第2態様または第3態様において、ハウジング310bは樹脂からなることを特徴とするものである。
【0088】
第4態様および第5態様によれば、ノズル302周辺の温度を上げ易くなり、ノズル302の位置補正の応答性をより高めることができる。
【0089】
[第6態様]
第6態様は、第2態様、第3態様または第5態様において、ハウジング310bにペルチェ素子360またはヒートシンク370(冷却部材の一例)を備えることを特徴とするものである。
【0090】
第6態様によれば、ハウジング310bの温度を下げ易くなり、ノズル302の位置補正の応答性をより高めることができる。
【0091】
[第7態様]
第7態様は、第2態様または第4態様において、ハウジング310aにサーミスタ317(温度検知手段の一例)を備えることを特徴とするものである。
【0092】
第7態様によれば、簡易な構成でニードル弁331に対するノズル302の位置補正を実現できる。
【符号の説明】
【0093】
300 液体吐出ヘッド
301 ノズル板(板部材)
302 ノズル(液体吐出口)
310a ハウジング(第1筐体)
310b ハウジング(第2筐体)
317 サーミスタ(温度検知手段)
331 ニードル弁(弁体)
332 圧電素子(駆動体)
340 ヒータ(加熱手段)
360 ペルチェ素子(冷却部材)
370 ヒートシンク(冷却部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【文献】特開2004-142382号公報
【文献】特開2010-241003号公報
図1
図2
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