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特許7507136生体電極組成物、生体電極、及び生体電極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】生体電極組成物、生体電極、及び生体電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/263 20210101AFI20240620BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20240620BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/16 20060101ALI20240620BHJP
   C08K 3/18 20060101ALI20240620BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240620BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240620BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240620BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240620BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240620BHJP
   H01B 1/24 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
A61B5/263
C08F212/08
C08F220/10
C08K3/04
C08K3/08
C08K3/16
C08K3/18
C08L83/05
C08L83/07
C08L101/02
H01B1/06 A
H01B1/22 A
H01B1/24 A
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021172800
(22)【出願日】2021-10-22
(65)【公開番号】P2022075544
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020185025
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】畠山 潤
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
(72)【発明者】
【氏名】池田 譲
(72)【発明者】
【氏名】野中 汐里
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 幸士
(72)【発明者】
【氏名】岩淵 元亮
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰嘉
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169263(JP,A)
【文献】特開2011-126994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
H01B 1/00 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、(C)白金族系触媒、及び溶剤を含有する生体電極組成物であって、前記生体電極組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、前記溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることを特徴とする生体電極組成物。
【請求項2】
前記生体電極組成物が、(A)成分として前記イオン性の高分子材料を含有する溶液と、(B)成分として前記少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、及び(C)成分として前記白金族系触媒を含有する溶液の混合物であって、
前記(A)成分及び前記(B)成分中の水分がどちらも0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の生体電極組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の溶液の溶剤が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上であり、前記(B)成分が、無溶剤であるか炭化水素系又はエーテル系溶剤の溶液であることを特徴とする請求項2に記載の生体電極組成物。
【請求項4】
前記(A)成分中の前記イオン性の高分子材料が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのナトリウム塩、カリウム塩、銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項5】
前記構造が下記一般式(1)-1から(1)-4で示されるものであることを特徴とする請求項4に記載の生体電極組成物。
【化1】
(式中、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rfが酸素原子の時、Rfも酸素原子であり、結合する炭素原子とともにカルボニル基を形成し、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、かつ、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf、Rf、Rfは、フッ素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。Mはナトリウム、カリウム、又は銀である。)
【請求項6】
前記一般式(1)-1、(1)-2で示されるフルオロスルホン酸、(1)-3で示されるスルホンイミド、又は(1)-4で示されるスルホンアミドのナトリウム塩、カリウム塩、銀塩から選ばれる1種以上の繰り返し単位が、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有する繰り返し単位であることを特徴とする請求項5に記載の生体電極組成物。
【化2】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に単結合、エステル基、あるいはエーテル基、エステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~13の直鎖状、炭素数3~12の分岐状又は環状の2価炭化水素基のいずれかである。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3~12の分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかであり、Xは、単結合、炭素数6~12のアリーレン基、又は-C(=O)-O-X10-であり、X10は炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基であり、X10中にエーテル基、カルボニル基、エステル基を有していても良い。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、YとRとは結合し環を形成していてもよい。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0≦a3≦1.0、0≦a4≦1.0、0≦a5≦1.0、0≦a6≦1.0、0≦a7≦1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦1.0を満たす数である。M、Rf、Rf、Rfは前述と同様である。)
【請求項7】
前記(B)成分が、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項8】
前記(B)成分が、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンに加えてアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項9】
前記(B)成分として、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項10】
前記(A)成分が、イオン性の高分子材料に加えてアルケニル基を有するジオルガノシロキサンを含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項11】
前記(A)成分として、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることを特徴とする請求項10に記載の生体電極組成物。
【請求項12】
更に(D)成分として、前記(A)成分中又は前記(B)成分中に、カーボン粉、金属粉、ケイ素粉、チタン酸リチウム粉、及び金属塩化物粉から選択される1種類以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の生体電極組成物。
【請求項13】
前記カーボン粉が、カーボンブラック、黒鉛及びカーボンナノチューブのいずれか又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項12に記載の生体電極組成物。
【請求項14】
前記カーボン粉が更にイオン成分を含有するものであることを特徴とする請求項13に記載の生体電極組成物。
【請求項15】
前記金属粉が、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウムから選ばれる金属粉であることを特徴とする請求項12に記載の生体電極組成物。
【請求項16】
前記金属粉が、銀粉であることを特徴とする請求項15に記載の生体電極組成物。
【請求項17】
請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の生体電極組成物の製造方法であって、前記(A)イオン性の高分子材料と、前記(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、及び前記(C)白金族系触媒を別々の容器で保管し、生体電極を作製するときにそれぞれを混合して生体電極組成物とすることを特徴とする生体電極組成物の製造方法。
【請求項18】
請求項12に記載の生体電極組成物の製造方法であって、前記(D)成分が、前記(C)成分を混合する前か混合と同時に、前記(A)成分又は前記(B)成分中に混合されることを特徴とする生体電極組成物の製造方法。
【請求項19】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極。
【請求項20】
前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものであることを特徴とする請求項19に記載の生体電極。
【請求項21】
導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法。
【請求項22】
前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものを用いることを特徴とする請求項21に記載の生体電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚に接触し、皮膚からの電気信号によって心拍数等の体の状態を検知することができる生体電極、及びその製造方法、並びに生体電極に好適に用いられる生体電極組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IoT(Internet of Things)の普及と共にウェアラブルデバイスの開発が進んでいる。インターネットに接続できる時計や眼鏡がその代表例である。また、医療分野やスポーツ分野においても、体の状態を常時モニタリングできるウェアラブルデバイスが必要とされており、今後の成長分野である。
【0003】
医療分野では、例えば電気信号によって心臓の動きを感知する心電図測定のように、微弱電流のセンシングによって体の臓器の状態をモニタリングするウェアラブルデバイスが検討されている。心電図の測定では、導電ペーストを塗った電極を体に装着して測定を行うが、これは1回だけの短時間の測定である。これに対し、上記のような医療用のウェアラブルデバイスの開発が目指すのは、数日間連続して常時健康状態をモニターするデバイスの開発である。従って、医療用ウェアラブルデバイスに使用される生体電極には、長時間使用した場合にも導電性の変化がないことや肌アレルギーがないことが求められる。また、これらに加えて、軽量であること、低コストで製造できることも必要である。
【0004】
新型コロナウイルスの世界への蔓延に伴って、病院の容量を超えた多くのウイルス感染者が入院することによる医療崩壊を防ぐために、在宅医療の必要性が問われている。在宅の人の健康状態を病院にいる医師が診断できるオンライン診療が提案されており、そのために低コストで高精度なウェアラブルデバイスの開発が求められているのである。
【0005】
医療用ウェアラブルデバイスとしては、体に貼り付けるタイプと、衣服に組み込むタイプがあり、体に貼り付けるタイプとしては、上記の導電ペーストの材料である水と電解質を含む水溶性ゲルを用いた生体電極が提案されている(特許文献1)。水溶性ゲルは、水を保持するための水溶性ポリマー中に、電解質としてナトリウム、カリウム、カルシウムを含んでおり、肌からのイオン濃度の変化を電気に変換する。一方、衣服に組み込むタイプとしては、PEDOT-PSS(Poly-3,4-ethylenedioxythiophene-Polystyrenesulfonate)のような導電性ポリマーや銀ペーストを繊維に組み込んだ布を電極に使う方法が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、上記の水と電解質を含む水溶性ゲルを使用した場合には、乾燥によって水がなくなると導電性がなくなってしまうという問題があった。一方、銅等のイオン化傾向の高い金属を使用した場合には、人によっては肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題があり、PEDOT-PSSのような導電性ポリマーを使用した場合にも、導電性ポリマーのドープに使われない余剰のポリスチレンスルホン酸の酸性が強いために肌アレルギーを引き起こすリスクがあるという問題、洗濯中に繊維から導電ポリマーが剥がれ落ちる問題があった。
【0007】
また、優れた導電性を有することから、金属ナノワイヤー、カーボンブラック、及びカーボンナノチューブ等を電極材料として使用することも検討されている(特許文献3、4、5)。金属ナノワイヤーはワイヤー同士の接触確率が高くなるため、少ない添加量で通電することができる。しかしながら、金属ナノワイヤーは先端が尖った細い材料であるため、肌アレルギー発生の原因となる。また、カーボンナノチューブも同様の理由で生体への刺激性がある。カーボンブラックはカーボンナノチューブほどの毒性はないものの、肌に対する刺激性が若干ある。このように、そのもの自体がアレルギー反応を起こさなくても、材料の形状や刺激性によって生体適合性が悪化する場合があり、導電性と生体適合性を両立させることは困難であった。
【0008】
金属膜は導電性が非常に高いために優れた生体電極として機能すると思われるが、必ずしもそうではない。心臓の鼓動によって肌から放出されるのは微弱電流だけではなく、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオンである。このためイオンの濃度変化を電流に変える必要があるが、イオン化しづらい貴金属は肌からのイオンを電流に変える効率が悪い。よって貴金属を使った生体電極はインピーダンスが高く、肌との通電は高抵抗である。
【0009】
イオン性のポリマーを添加した生体電極が提案されている(特許文献6、7、8)。シリコーン粘着剤にイオンポリマーとカーボン粉を添加して混合した生体電極は粘着性を有し、撥水性が高いためにシャワーを浴びたり汗をかいた状態で長時間肌に貼り付けても安定的に生体信号を採取することが可能である。イオンポリマーは肌を通過しないために肌への刺激性がなく生体適合性が高く、これによっても長時間の装着を可能とする生体電極である。
【0010】
シリコーンは本来絶縁物であるが、イオンポリマーとカーボン粉との組み合わせによってイオン導電性が向上し、生体電極として機能するのである。しかしながら、更なるイオン導電性の向上による性能の向上が求められている。
【0011】
印刷によってデバイスが製造されるプリンタブルエレクトロニクスが注目されている。生体用デバイスにおいてもロールツーロール印刷による生産が可能になれば、生産性向上によるコスト低減が可能になる。プリンタブルエレクトロニクスは軽量で薄膜である特徴も有する。肌に貼り付けたときの装着感を低減するためにも軽薄短小である必要がある。
【0012】
ウェアラブルデバイスは、肌に数日間貼り付けて剥がした後に肌上に残渣があってはならない。特に生体電極においては、肌に貼り付けるための十分な粘着性だけでなく、剥がした後の残渣を防止するために十分な膜強度を有していなければならない。
【0013】
生体電極を印刷によって生産するためには、生体電極印刷用のインクを調合してから印刷まで、あるいは印刷から膜を固化させるためのベークまでの時間のマージンが必要である。この時間マージンがないと、例えばインク調合から印刷までの時間的な余裕が無く、時間を厳格にコントロールしないといけなくなり、突然のトラブルによって印刷装置が止まってしまった場合に対応できない。印刷による安定生産のためには、インクの調合から印刷そして膜の硬化までの時間的な余裕が確保できる材料が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2013/039151号
【文献】特開2015-100673号公報
【文献】特開平5-095924号公報
【文献】特開2003-225217号公報
【文献】特開2015-019806号公報
【文献】特開2018-99504号公報
【文献】特開2018-126496号公報
【文献】特開2018-130533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を達成するために、本発明では、下記生体電極組成物および生体電極を提案するものである。
【0017】
即ち、本発明は、(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、(C)白金族系触媒、及び溶剤を含有する生体電極組成物であって、前記生体電極組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、前記溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることを特徴とする生体電極組成物を提供する。
【0018】
本発明の生体電極組成物であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い生体電極用の生体接触層を形成できる。
【0019】
前記生体電極組成物は、(A)成分として前記イオン性の高分子材料を含有する溶液と、(B)成分として前記少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、及び(C)成分として前記白金族系触媒を含有する溶液の混合物であって、前記(A)成分及び前記(B)成分中の水分がどちらも0.2質量%以下であることができる。
【0020】
このような生体電極組成物であれば、(A)成分と(B)成分の水分含有率が低いため、(A)成分と(B)成分を混合した直後からヒドロシリル基の失活反応が進行することがなく、(A)成分と(B)成分、(C)成分を混合して放置した後に生体電極を形成した場合であっても、これを肌に貼り付けて生体信号を取得後にこれを剥がした後に肌上に残渣が生じることが無い。
【0021】
この場合、前記(A)成分の溶液の溶剤が、ヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上であり、前記(B)成分が、無溶剤であるか炭化水素系又はエーテル系溶剤の溶液であることができる。
【0022】
(A)成分のイオン性の高分子材料は、極性が高いためにこのようなエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上に溶解しやすく、(B)成分のヒドロシリル基を有するオルガノシリコーンは炭化水素系又はエーテル系溶剤に溶解しやすい(無溶剤でもよい)。(A)成分と(B)成分を混合する場合、イオン性の高分子化合物(高分子材料)を予め溶剤に溶解させておくと、混合を素早く行うことが出来る。
【0023】
また、本発明の生体電極組成物では、前記(A)成分中の前記イオン性の高分子材料が、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのナトリウム塩、カリウム塩、銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物であることが好ましい。
【0024】
このような生体電極組成物であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を好適に形成できる。
【0025】
この場合、前記構造が下記一般式(1)-1から(1)-4で示されるものであることが好ましい。
【化1】
(式中、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rfが酸素原子の時、Rfも酸素原子であり、結合する炭素原子とともにカルボニル基を形成し、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、かつ、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf、Rf、Rfは、フッ素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。Mはナトリウム、カリウム、又は銀である。)
【0026】
このような生体電極組成物であれば、本発明の効果をより向上させることができる。
【0027】
更に、前記一般式(1)-1、(1)-2で示されるフルオロスルホン酸、(1)-3で示されるスルホンイミド、又は(1)-4で示されるスルホンアミドのナトリウム塩、カリウム塩、銀塩から選ばれる1種以上の繰り返し単位が、下記一般式(2)に記載の繰り返し単位a1~a7から選ばれる1種以上を有する繰り返し単位であることが好ましい。
【化2】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に単結合、エステル基、あるいはエーテル基、エステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~13の直鎖状、炭素数3~12の分岐状又は環状の2価炭化水素基のいずれかである。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3~12の分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかであり、Xは、単結合、炭素数6~12のアリーレン基、又は-C(=O)-O-X10-であり、X10は炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基であり、X10中にエーテル基、カルボニル基、エステル基を有していても良い。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、YとRとは結合し環を形成していてもよい。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0≦a3≦1.0、0≦a4≦1.0、0≦a5≦1.0、0≦a6≦1.0、0≦a7≦1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦1.0を満たす数である。M、Rf、Rf、Rfは前述と同様である。)
【0028】
このような生体電極組成物であれば、本発明の効果をより一層向上させることができる。
【0029】
また、本発明では前記(B)成分が、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含有するものであることができる。
【0030】
また、前記(B)成分が、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンに加えてアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを含有するものであってもよい。
【0031】
本発明の生体電極組成物では、このような(B)成分を好適に用いることができる。
【0032】
また、前記(B)成分として、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであってもよい。
【0033】
このような(B)成分を含むものであると、粘着力が向上する。
【0034】
また、本発明では前記(A)成分が、イオン性の高分子材料に加えてアルケニル基を有するジオルガノシロキサンを含有するものであることができる。
【0035】
本発明の生体電極組成物では、このような(A)成分を好適に用いることができる。
【0036】
また、前記(A)成分として、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであってもよい。
【0037】
このような(A)成分を含むものであると、粘着力が向上する。
【0038】
また、本発明では更に(D)成分として、前記(A)成分中又は前記(B)成分中に、カーボン粉、金属粉、ケイ素粉、チタン酸リチウム粉、及び金属塩化物粉から選択される1種類以上を含有するものであることができる。
【0039】
このような導電性粉末(カーボン粉、金属粉、ケイ素粉、チタン酸リチウム粉、及び金属塩化物粉)をさらに添加することによって一層導電性を向上させることができる。
【0040】
この場合、前記カーボン粉が、カーボンブラック、黒鉛及びカーボンナノチューブのいずれか又はこれらの組み合わせであることが好ましく、更にイオン成分を含有するものであることもできる。
【0041】
このようなものであれば、より一層導電性を向上させることができる。
【0042】
また、前記金属粉が、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウムから選ばれる金属粉であることが好ましく、銀粉が特に好ましい。
【0043】
このようなものであれば、電子導電性を高めることができる。
【0044】
また、本発明は、上記生体電極組成物の製造方法であって、前記(A)イオン性の高分子材料と、前記(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、及び前記(C)白金族系触媒を別々の容器で保管し、生体電極を作製するときにそれぞれを混合して生体電極組成物とすることを特徴とする生体電極組成物の製造方法を提供する。
【0045】
本発明の生体電極組成物の製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物を効率よくかつ低コストで製造することができる。
【0046】
また、本発明の生体電極組成物の製造方法では、前記(D)成分を、前記(C)成分を混合する前か混合と同時に、前記(A)成分又は前記(B)成分中に混合することができる。
【0047】
このような生体電極組成物の製造方法であれば、(D)成分由来の水分による影響を小さくすることができる。
【0048】
また、本発明は、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上記生体電極組成物の硬化物であることを特徴とする生体電極を提供する。
【0049】
本発明の生体電極であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い。
【0050】
この場合、前記導電性基材が、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものであることが好ましい。
【0051】
本発明では、このような導電性基材を好適に用いることができる。
【0052】
また、本発明は、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、上記生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成することを特徴とする生体電極の製造方法を提供する。
【0053】
本発明の生体電極の製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い生体電極を効率よくかつ低コストで製造することができる。
【0054】
この場合、前記導電性基材として、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素、及び導電性ポリマーから選ばれる1種以上を含むものを用いることが好ましい。
【0055】
本発明では、このような導電性基材を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0056】
以上のように、本発明の(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、(C)白金族系触媒、及び溶剤を含有する生体電極組成物であって、前記生体電極組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、前記溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることを特徴とする生体電極組成物であれば、(A)~(C)成分を混合、塗布、ベーク時の付加反応の阻害を起こすことなく膜の硬化が可能で十分な膜強度であり、生体電極を肌に貼り付けて生体信号を測定し、剥がした後も肌上に残渣が生じることがない。(A)~(C)を混合して印刷するまでの時間や印刷してからベークするまでの時間が長くなっても、十分な膜強度を保持できて剥がした後の残渣が生じない。(A)~(C)成分を別々の容器に入れておけば長期の保管によって変質することが起こらない。
【0057】
また、本発明の生体電極であれば、十分な粘着性を有し、肌との接触面積が一定で、肌からの電気信号を安定的に高感度で得ることができる。
【0058】
また、本発明の生体電極の製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない本発明の生体電極を、低コストな印刷によって容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の生体電極を生体に装着した場合の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施例で作製した生体電極の印刷後の概略図である。
図4】本発明の実施例で作製した生体電極の1つを切り取って、粘着層を取り付けた場合の概略図である。
図5】本発明の実施例における生体信号の測定の際の、人体に対する電極及びアースの貼り付け場所を示す図である。
図6】本発明の実施例の生体電極を用いて得られる1つの心電図波形である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
上述のように、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無い生体電極用の生体接触層を形成できる生体電極組成物、該生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極、及びその製造方法の開発が求められていた。
【0061】
心臓の鼓動に連動して肌表面から微弱電流とナトリウム、カリウム、カルシウムイオンが放出されるところ、生体電極は、肌から放出されたこれらイオンの増減を電気信号に変換する必要がある。そのため、生体電極を構成するには、イオンの増減を伝達するためのイオン導電性に優れた材料が必要である。
【0062】
本発明者らは、高イオン導電性の材料としてイオン性液体に着目した。イオン性液体は熱的、化学的安定性が高く、導電性に優れる特徴を有しており、バッテリー用途への応用が広がっている。また、イオン性液体としては、スルホニウム、ホスホニウム、アンモニウム、モルホリニウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウムの塩酸塩、臭化水素塩、ヨウ化水素塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ノナフルオロブタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩、ヘキサフルオロホスファート塩、テトラフルオロボラート塩等が知られている。しかしながら、一般的にこれらの塩(特に分子量の小さいもの)は水和性が高いため、これらの塩を添加した生体電極組成物で生体接触層を形成した生体電極は、汗や洗濯によって塩が抽出され、導電性が低下する欠点があった。また、テトラフルオロボラート塩は毒性が高く、他の塩は水溶性が高いために肌の中に容易に浸透してしまい肌荒れが生じる(つまり、肌に対する刺激性が強い)という問題があった。
【0063】
中和塩を形成する酸の酸性度が高いとイオンが強く分極し、イオン導電性が向上する。リチウムイオン電池として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸やトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸のリチウム塩が高いイオン導電性を示すのはこのためである。一方、酸強度が高くなればなるほど、この塩は生体刺激性が強いという問題がある。つまり、イオン導電性と生体刺激性はトレードオフの関係である。しかしながら、生体電極に適用する塩では、高イオン導電特性と低生体刺激性が両立されなければならない。
【0064】
塩化合物の分子量が大きくなればなるほど、又立体的に高次構造なほど、肌への浸透性が低下して肌への刺激性が低下する。そこで、本発明者らは、イオン性の高分子化合物を生体電極組成物に添加することに想到した。
【0065】
更に、本発明者らは、この塩を、粘着剤(樹脂)に混合したものを用いることによって、常に肌に密着し、長時間安定的な電気信号を得ることができることに想到した。粘着剤としては、生体適合性、皮膚呼吸性、剥がしたときの肌の変形を抑えて赤みを抑えるという観点で、シリコーン粘着剤を用いることが好ましいと考えた。
【0066】
シリコーン粘着剤は、架橋性のシリコーンとMQレジンとのハイブリッドからなるが、架橋反応としてパーオキサイドの分解によるラジカル架橋又はヒドロシリル基とビニル基とのヒドロシリル化反応が用いられる。生体電極組成物としてカーボンの添加は導電性向上に効果的であるが、カーボンはラジカルを吸収してしまうために、ラジカルによる架橋反応の場合にはカーボンを添加することが出来ない。一方、ヒドロシリル化反応では、カーボンによって反応が阻害されることはない。
【0067】
ヒドロシリル基は水やヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基等の活性プロトンを有する化合物と反応する。例えば、ヒドロシリル基は水と反応するとシラノール基となり、ビニル基とのヒドロシリル化反応が進行しなくなる。よって、ヒドロシリル化反応を進行させるためには、水分含有率を低くしなければならないし、溶剤としてヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基等の活性プロトンを有する化合物を添加することも出来ない。
【0068】
水を含有しやすいのは、(B)成分のヒドロシリル基を有するシリコーンではなく、(A)成分のイオン性の高分子化合物(高分子材料)を含有する溶液である。(A)溶液に含有している水分が、(B)溶液と混合したときに上記ヒドロシリル基の失活反応を引き起こす。よって、(A)成分のイオン性の高分子化合物を含有する溶液は脱水処理を行う必要がある。脱水処理は、イオン性の高分子化合物を含有する溶液の濃度を上げるための共沸脱水やモレキュラーシーブス等の脱水剤を用いることによって行うことが出来る。
【0069】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、生体電極組成物中の水分の含有率を低くして、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基等の活性プロトンを有する化合物の含有量も少なく抑えれば、これらと混合したときのヒドロシリル基の失活反応を抑制して、ヒドロシリル化反応が阻害されなくなること、及び、このように水分の含有率と活性プロトンを有する化合物の含有量とが制限された生体電極組成物から形成される生体電極は肌に貼り付けて剥がした後に肌上への残渣が生じることが無いことを見出し、本発明を完成させた。
【0070】
即ち、本発明は、(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、(C)白金族系触媒、及び溶剤を含有する生体電極組成物であって、前記生体電極組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、前記溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることを特徴とする生体電極組成物である。
【0071】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下において、各成分はその成分を含有する溶液を包含するものとする。
【0072】
<生体電極組成物>
本発明の生体電極組成物は、(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、(C)白金族系触媒、及び溶剤を含有し、かつ、前記生体電極組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、前記溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることを特徴とする。後述するように必要に応じて上記(A)~(C)成分以外のものを含有することができる。
【0073】
生体電極組成物中の水分の含有率が高いと、組成物中のシリコーンのヒドロシリル基と水が反応しシラノール基となり、白金族系触媒存在下におけるSi-H基とSi-ビニル基等とのヒドロシリル反応による架橋が進行しなくなる。架橋反応が進行しないと膜強度が弱くなり、生体電極を張り付けて剥がしたときに膜内破壊が起こり、肌上に生体電極の残渣が生じる。
特に、(A)イオン性の高分子材料を含有する溶液と、(B)付加反応硬化型のシリコーンと、(C)白金族系触媒を含有する溶液を混合してなる生体電極組成物の場合、前記(A)成分の溶液と(B)成分の溶液それぞれの水分が0.2質量%を超えていると、混合後の(B)成分中のシリコーンのヒドロシリル基と水が反応しシラノール基となり、上記傾向が顕著になる。
【0074】
また、(A)イオン性の高分子材料を含有する溶液として、ヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含んでいる場合も溶剤とヒドロシリル基との反応が起こり、ヒドロシリル基の割合が低下することによってヒドロシリル化反応が阻害される。イオン性の高分子材料は、極性が高いためにヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含んでいる溶剤に溶解しやすいが、これらを含まないエーテル系、エステル系やケトン系の溶剤に溶解させる必要がある。
【0075】
従って、本発明の生体電極組成物においては、組成物中の水分の含有率が0.2質量%以下であり、溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものであることが必須である。なお、溶剤、溶液及び生体電極組成物中の水分含有率はカールフィッシャー法で測定できる。
以下、本発明の生体電極組成物について詳しく説明する。
【0076】
[(A)成分]
(A)成分はイオン性の高分子材料である。シリコーンは本来絶縁物であるが、イオン性ポリマー(イオン性の高分子材料)との組み合わせによってイオン導電性が向上し、生体電極として機能する。イオン性の高分子材料は、イオン導電性を有するものであれば特に限定されない。
【0077】
イオン性の高分子材料は、フルオロスルホン酸、フルオロスルホンイミド、及びN-カルボニルフルオロスルホンアミドのうちのいずれかのナトリウム塩、カリウム塩、及び銀塩から選ばれる構造を有する繰り返し単位を含有する高分子化合物であることが好ましい。
このようなイオン性の高分子化合物を含む生体電極組成物であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、かつ低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を好適に形成できる。
【0078】
更に、前記構造を有するイオン性の繰り返し単位は、下記一般式(1)-1から(1)-4のいずれかで示されるものであることがより好ましい。
【化3】
(式中、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、酸素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基であり、Rfが酸素原子の時、Rfも酸素原子であり、結合する炭素原子とともにカルボニル基を形成し、Rf、Rfは水素原子、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基であり、かつ、Rf~Rfのうち1つ以上はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。Rf、Rf、Rfは、フッ素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、少なくとも1つ以上のフッ素原子を有する。mは1~4の整数である。Mはナトリウム、カリウム、又は銀である。)
【0079】
更に、前記イオン性の繰り返し単位は下記一般式(2)中のa1~a7から選ばれるものであることがより一層好ましい。
【化4】
(式中、R、R、R、R、R10、R11、及びR13は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、及びR12は、それぞれ独立に単結合、エステル基、あるいはエーテル基、エステル基のいずれか又はこれらの両方を有していてもよい炭素数1~13の直鎖状、炭素数3~12の分岐状又は環状の2価炭化水素基のいずれかである。Rは、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3~12の分岐状のアルキレン基であり、R中の水素原子のうち、1個又は2個がフッ素原子で置換されていてもよい。X、X、X、X、及びXは、それぞれ独立に単結合、フェニレン基、ナフチレン基、エーテル基、エステル基、アミド基のいずれかであり、Xは、単結合、エーテル基、エステル基のいずれかであり、Xは、単結合、炭素数6~12のアリーレン基、又は-C(=O)-O-X10-であり、X10は炭素数1~12の直鎖状、分岐状、環状のアルキレン基、又は炭素数6~10の2価の芳香族炭化水素基であり、X10中にエーテル基、カルボニル基、エステル基を有していても良い。Yは酸素原子、又は-NR19-基であり、R19は水素原子、炭素数1~4の直鎖状、又は炭素数3、4の分岐状のアルキル基であり、YとRとは結合し環を形成していてもよい。mは1~4の整数である。a1、a2、a3、a4、a5、a6、及びa7は、0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0≦a3≦1.0、0≦a4≦1.0、0≦a5≦1.0、0≦a6≦1.0、0≦a7≦1.0であり、0<a1+a2+a3+a4+a5+a6+a7≦1.0を満たす数である。M、Rf、Rf、Rfは前述と同様である。)
【0080】
上記一般式(2)中のa1~a7から選ばれるイオン性の繰り返し単位を得るためのモノマーは、具体的には特開2020-002342号段落[0061]~[0091]に記載されており、これと共重合するためのモノマーや共重合比率、重合方法や分子量などは、段落[0112]~[0135]に記載されているものを用いることができる。
【0081】
イオン性の高分子化合物とヒドロシリル基を有するオルガノシリコーンとを混合する場合、イオン性の高分子化合物を予め溶剤に溶解させておくと、混合を素早く行うことが出来る。イオン性の高分子化合物を溶解させる溶剤は、水分が0.2質量%以下であり、ヒドロキシ基、カルボキシル基、チオール基等の活性プロトンを有さないエーテル系、エステル系やケトン系の溶剤が好ましく用いられる。
【0082】
イオン性の高分子化合物を溶解させるためのエーテル系溶剤としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールメチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールメチルプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルベンジルエーテル、ジエチレングリコールビス(2-プロピニル)エーテルを挙げることができる。ケトン系溶剤としては、具体的にはシクロペンタノン、2-カルボニルエトキシシクロペンタノン、2-メトキシカルボニルシクロペンタノン、2-エトキシカルボニルシクロペンタノン、2-ヘプチルシクロペンタノン、2,2,4-トリメチルシクロペンタノン、2-シクロペンチルシクロペンタノン、2-アセチルシクロペンタノン、2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-2-シクロペンテノン、2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン、2-アミル-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、シクロヘキサノン、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン、4,4-ジメチルシクロヘキサノン、2-メトキシシクロヘキサノン、2-プロピルシクロヘキサノン、4-プロピルシクロヘキサノン、3,4-ジメチルシクロヘキサノン、3,3-ジメチルシクロヘキサノン、2-シクロヘキシルシクロヘキサノン、2-アリルシクロヘキサノン、2-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、4-tertブチルシクロヘキサノン、2-アセチルシクロヘキサノン、4,4,ジメチルシクロヘキサノン、3,5-ジメチルシクロヘキサノン、4-エチルシクロヘキサノン、2-secブチルシクロヘキサノン、2-シクロヘキセン-1-オン、3-メチル-2-シクロヘキセン-1-オン、4,4-ジメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、シクロヘプタノン、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロペンタノン、メチルn-ペンチルケトン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、プロピオフェノン、イソブチロフェノンを挙げることが出来る。
【0083】
エステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリラート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸-2-フェニルエチル、γ-ブチロラクトンα-メチル-γブチロラクトン、α-アンジェリカラクトン、δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、β-メチルγ-バレロラクトン、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、γ-メチレン―γ―ブチロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-ヘプタラクトン、γ-オクタラクトン、ウィスキーラクトン、γ-ノナラクトン、δ-ノナラクトンなどを挙げることができる。
【0084】
[(B)成分]
(B)成分は、少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーンであり、ヒドロシリル基を有し付加反応により硬化するものであれば特に限定されない。
(B)成分は、マトリックス樹脂となるものでもよいし、上記(A)成分と相溶して塩の溶出を防ぎ、存在する場合は導電性向上剤などを保持し、粘着性を発現させるものであってもよい。
【0085】
(B)成分は、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンを含有するものや、ヒドロシリル基を有するオルガノポリシロキサンに加えてアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンを含有するもの、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものであることができる。
このようなものとしては、例えば、特開2015-193803号公報に記載の、アルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジン、SiH基(ヒドロシリル基)を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有するものを挙げることができる。
【0086】
本発明の生体電極組成物は、これを調製する際にイオン性の高分子材料を含有する溶液(A)成分と、ヒドロシリル基を含有するポリシロキサンの(B)成分を混合する。ヒドロシリル基はポリシロキサン分子中に複数有することが好ましい。
【0087】
粘着性を発現させるためには、(A)成分か(B)成分のどちらか一方あるいは両方に、更にRSiO(4-x)/2単位(Rは炭素数1~10の置換又は非置換の一価炭化水素基、xは2.5~3.5の範囲である。)及びSiO単位を有するシリコーン樹脂を含有するものを添加することができ、特開2015-193803号公報に記載のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジンを混合することが好ましい。
【0088】
また、ポリマー末端や側鎖にシラノールを有するポリシロキサンと、MQレジンを縮合反応させて形成したポリシロキサン・レジン一体型化合物を用いることもできる。MQレジンはシラノールを多く含有するためにこれを添加することによって粘着力が向上するが、架橋性がないためにポリシロキサンと分子的に結合していない。上記のようにポリシロキサンとレジンを一体型とすることによって、粘着力を増大させることができる。上記ポリシロキサン中に複数のアルケニル基を含有することによってヒドロシリル基との架橋反応によって粘着力が更に増大する。
【0089】
[溶剤]
本発明の生体電極組成物は溶剤を含む。成分ごとに溶剤を含んでいてもよく、それらは同じでも、異なっていてもよい。溶剤は各成分を溶解又は分散させることで作業性を向上させることができる。一方、溶剤によっては、初めから又は吸湿などにより水分を含むため、これを用いると生体電極組成物中の水分の含有率が高くなる。そうすると、組成物中のシリコーンのヒドロシリル基と水が反応しシラノール基となり、白金族系触媒存在下におけるSi-H基とSi-ビニル基とのヒドロシリル反応による架橋が進行しなくなる。架橋反応が進行しないと膜強度が弱くなり、生体電極を張り付けて剥がしたときに膜内破壊が起こり、肌上に生体電極の残渣が生じてしまう。
また、イオン性の高分子材料は、極性が高いためにヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含んでいる溶剤に溶解しやすいが、このような溶剤を用いると、溶剤中の活性水素とヒドロシリル基との反応が起こり、ヒドロシリル基の割合が低下することによってヒドロシリル化反応が阻害される。
そこで本発明では、作業性の向上とヒドロシリル基の失活抑制とに鑑み、溶剤がヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系及びケトン系溶剤のうちいずれか1つ以上を含むものである。本発明で用いる溶剤は、このような特定の溶剤を含むものであればよく、他の溶剤を更に含んでもよい。
【0090】
本発明の生体電極組成物は、最終的な組成物全体中の水分の含有率が0.2質量%以下であればよく、このような組成物になれば、使用される溶剤の水分含有率が0.2質量%を超えていてもよい。しかし、水分によるヒドロシリル基の失活抑制の観点から、(A)成分及び(B)成分中の水分がどちらも0.2質量%以下であることが好ましく、(C)成分以外の成分中の水分がいずれも0.2質量%以下であることがより好ましい。なお、(C)白金族系触媒は全体に対する配合割合がわずかで、水分を含んでいたとしても最終的な組成物全体中の水分の含有率が0.2質量%以下となるといえる。このため、(C)成分中の水分は特に問題とはならない。水分の含有率は少ないほどよいが、例えば0.0001~0.2質量%の範囲とすることができる。
溶剤の脱水処理は、常法により行えばよく、例えば、共沸脱水やモレキュラーシーブス等の脱水剤を用いることによって行うことが出来る。脱水処理は、予め行っていてもよいし、組成物を調製する過程で行ってもよい。
【0091】
また、本発明の生体電極組成物には、(B)成分として炭化水素系有機溶剤又はエーテル系有機溶剤を添加することができる。炭化水素系有機溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン、クメン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、スチレン、αメチルスチレン、ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、シメン、ジエチルベンゼン、2-エチル-p-キシレン、2-プロピルトルエン、3-プロピルトルエン、4-プロピルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルトルエン、1,2,4,5-テトラメチルトルエン、テトラヒドロナフタレン、4-フェニル-1-ブテン、tert-アミルベンゼン、アミルベンゼン、2-tert-ブチルトルエン、3-tert-ブチルトルエン、4-tert-ブチルトルエン、5-イソプロピル-m-キシレン、3-メチルエチルベンゼン、tert-ブチル-3-エチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、5-tert-ブチル-m-キシレン、tert-ブチル-p-キシレン、1,2-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、ジプロピルベンゼン、ペンタメチルベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン等の芳香族系炭化水素系溶剤、n-ヘプタン、イソヘプタン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、1,6-ヘプタジエン、5-メチル-1-ヘキシン、ノルボルナン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1-メチル-1,4-シクロヘキサジエン、1-ヘプチン、2-ヘプチン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、1,3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、1-メチル-1-シクロヘキセン、3-メチル-1-シクロヘキセン、メチレンシクロヘキサン、4-メチル-1-シクロヘキセン、2-メチル-1-ヘキセン、2-メチル-2-ヘキセン、1-ヘプテン、2-ヘプテン、3-ヘプテン、n-オクタン、2,2-ジメチルヘキサン、2,3-ジメチルヘキサン、2,4-ジメチルヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン、3,3-ジメチルヘキサン、3,4-ジメチルヘキサン、3-エチル-2-メチルペンタン、3-エチル-3-メチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-メチルヘプタン、4-メチルヘプタン、2,2,3-トリメチルペンタン、2,2,4-トリメチルペンタン、シクロオクタン、シクロオクテン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキサン、イソプロピルシクロペンタン、2,2-ジメチル-3-ヘキセン、2,4-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-1-ヘキセン、2,5-ジメチル-2-ヘキセン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、2-エチル-1-ヘキセン、2-メチル-1-ヘプテン、1-オクテン、2-オクテン、3-オクテン、4-オクテン、1,7-オクタジエン、1-オクチン、2-オクチン、3-オクチン、4-オクチン、n-ノナン、2,3-ジメチルヘプタン、2,4-ジメチルヘプタン、2,5-ジメチルヘプタン、3,3-ジメチルヘプタン、3,4-ジメチルヘプタン、3,5-ジメチルヘプタン、4-エチルヘプタン、2-メチルオクタン、3-メチルオクタン、4-メチルオクタン、2,2,4,4-テトラメチルペンタン、2,2,4-トリメチルヘキサン、2,2,5-トリメチルヘキサン、2,2-ジメチル-3-ヘプテン、2,3-ジメチル-3-ヘプテン、2,4-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-1-ヘプテン、2,6-ジメチル-3-ヘプテン、3,5-ジメチル-3-ヘプテン、2,4,4-トリメチル-1-ヘキセン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-エチル-2-メチルシクロヘキサン、1-エチル-3-メチルシクロヘキサン、1-エチル-4-メチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,1,3-トリメチルシクロヘキサン、1,1,4-トリメチルシクロヘキサン、1,2,3-トリメチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、アリルシクロヘキサン、ヒドリンダン、1,8-ノナジエン、1-ノニン、2-ノニン、3-ノニン、4-ノニン、1-ノネン、2-ノネン、3-ノネン、4―ノネン、n-デカン、3,3-ジメチルオクタン、3,5-ジメチルオクタン、4,4-ジメチルオクタン、3-エチル-3-メチルヘプタン、2-メチルノナン、3-メチルノナン、4-メチルノナン、tert-ブチルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、4-イソプロピル-1-メチルシクロヘキサン、ペンチルシクロペンタン、1,1,3,5-テトラメチルシクロヘキサン、シクロドデカン、1-デセン、2-デセン、3-デセン、4-デセン、5-デセン、1,9-デカジエン、デカヒドロナフタレン、1-デシン、2-デシン、3-デシン、4-デシン、5-デシン、1,5,9-デカトリエン、2,6-ジメチル-2,4,6-オクタトリエン、リモネン、ミルセン、1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエン、α-フェランドレン、ピネン、テルピネン、テトラヒドロジシクロペンタジエン、5,6-ジヒドロジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、1,4-デカジイン、1,5-デカジイン、1,9-デカジイン、2,8-デカジイン、4,6-デカジイン、n-ウンデカン、アミルシクロヘキサン、1-ウンデセン、1,10-ウンデカジエン、1-ウンデシン、3-ウンデシン、5-ウンデシン、トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ-4-エン、n-ドデカン、2-メチルウンデカン、3-メチルウンデカン、4-メチルウンデカン、5-メチルウンデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、1,3-ジメチルアダマンタン、1-エチルアダマンタン、1,5,9-シクロドデカトリエン、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素系溶剤を挙げることができる。イソパラフィン系の溶剤としては、例えば、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV(スタンダード石油製)を挙げることができる。
エーテル系有機溶剤としては、具体的には、ジイソプロピルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ-n-ペンチルエーテル、メチルシクロペンチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジ-secブチルエーテル、ジ-sec-ペンチルエーテル、ジ-tert-アミルエーテル、ジ-n-ヘキシルエーテル、アニソール、3-メトキシトルエン、4-メトキシトルエン、trans-アネトール等を挙げることができる。なお、上記有機溶剤は、ヒドロシリル基の失活抑制に鑑み、ヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を有さないものであってよい。
【0092】
なお、溶剤の添加量は、(A)成分又は(B)成分の樹脂100質量部に対して10~50,000質量部の範囲とすることが好ましい。
【0093】
[(C)成分]
アルケニル基を有するジオルガノシロキサンと、ヒドロシリル基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(C)成分の白金族系触媒による付加反応によって架橋させることができる。
【0094】
(C)成分の白金族系触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金-オレフィン錯体、白金-ビニル基含有シロキサン錯体等の白金系触媒、ロジウム錯体及びルテニウム錯体等の白金族金属系触媒などが挙げられる。また、これらの触媒をアルコール系、炭化水素系、シロキサン系溶剤に溶解・分散させたものを用いてもよい。
【0095】
なお、白金族系触媒の添加量は、有効量であればよいが、樹脂100質量部に対して5~2,000ppm、特には10~500ppmの範囲とすることが好ましい。
【0096】
上記シリコーン系の樹脂において、上述のアルケニル基を有するジオルガノシロキサン、RSiO0.5及びSiO単位を有するMQレジン、ヒドロシリル基を複数有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンに加えて、アミノ基、オキシラン基、オキセタン基、ポリエーテル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、メタクリル基、アクリル基、フェノール基、シラノール基、カルボン酸無水物基、アリール基、アラルキル基、アミド基、エステル基、ラクトン環から選ばれる基を有する変性シロキサンを添加することによって上述の塩との相溶性が高まる。
【0097】
なお、後述のように、生体接触層は生体電極組成物の硬化物である。硬化させることによって、肌と導電性基材の両方に対する生体接触層の接着性が良好なものとなる。
【0098】
また、付加硬化型のシリコーン樹脂を用いる場合には、(A)成分又は(B)成分中に付加反応制御剤を添加してもよい。この付加反応制御剤は、溶液中及び塗膜形成後の加熱硬化前の低温環境下で、白金族系触媒が作用しないようにするためのクエンチャーとして添加するものである。具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロヘキサノール、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ブチン、3-メチル-3-トリメチルシロキシ-1-ペンチン、3,5-ジメチル-3-トリメチルシロキシ-1-ヘキシン、1-エチニル-1-トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2-ジメチル-3-ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン等が挙げられる。
【0099】
付加反応制御剤の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して0~10質量部、特に0.05~3質量部の範囲とすることが好ましい。
【0100】
[(D)成分]
本発明の生体電極組成物は、(D)成分としての導電性粉末をさらに含有することができる。導電性粉末としては、導電性を有する粉末であれば特に制限されないが、カーボン粉(カーボン材料)、金属粉、ケイ素粉、チタン酸リチウム粉、及び金属塩化物粉から選択される1種類以上が好ましく、カーボン粉及び/又は金属粉がより好ましい。(D)成分は、(A)成分又は(B)成分中に予め混合しておくことが好ましい。このような導電性粉末(カーボン粉、金属粉など)をさらに添加することによって一層導電性を向上させることができる。なお、以下において、導電性粉末を「導電性向上剤」ともいう。
【0101】
[カーボン粉]
導電性向上剤として、カーボン材料(カーボン粉)を添加することができる。カーボン材料としては、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、炭素繊維等を挙げることができる。カーボンナノチューブは単層、多層のいずれであってもよく、表面が有機基で修飾されていても構わない。カーボン粉が更にイオン成分を含有すること、つまり、カーボン材料(カーボン粉)表面又は内部にイオンを吸着又は含有していてもよい。カーボン材料にイオンを吸着又は含有させることによってイオン導電性が更に向上し、生体信号の感度をより高めることができる。カーボン粉にイオンを吸着又は含有させるには、イオンを含む溶液中にカーボン粉を分散させて攪拌しながら加熱する方法や、カーボン粉にイオンを打ち込む方法を挙げることができる。カーボン材料の添加量は、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0102】
[金属粉]
本発明の生体電極組成物には、電子導電性を高めるために、(D)成分として、金、銀、白金、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロム、インジウムから選ばれる金属粉を添加することが好ましい。金属粉の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0103】
金属粉の種類として導電性の観点では金、銀、白金が好ましく、価格の観点では銀、銅、錫、チタン、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、ルテニウム、クロムが好ましい。生体適合性の観点では貴金属が好ましく、これらの観点で総合的には銀が最も好ましい。
【0104】
金属粉の形状としては、球状、円盤状、フレーク状、針状を挙げることができるが、フレーク状の粉末を添加したときの導電性が最も高くて好ましい。金属粉のサイズは、特に限定されないが、100μm以下、タップ密度が5g/cm以下、比表面積が0.5m/g以上の、比較的低密度で比表面積が大きいフレークが好ましい。導電性向上剤として、金属粉とカーボン材料(カーボン粉)の両者を添加することもできる。
【0105】
[珪素粉]
本発明の生体電極組成物には、(D)成分として、イオン受容の感度を高めるために、珪素粉を添加することが出来る。珪素粉としては、珪素、一酸化珪素、炭化珪素からなる粉体を挙げることが出来る。粉体の粒子径は、特に限定されないが、100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。珪素粉の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0106】
[チタン酸リチウム粉]
本発明の生体電極組成物には、(D)成分として、イオン受容の感度を高めるために、チタン酸リチウム粉を添加することが出来る。チタン酸リチウム粉としては、LiTiO、LiTiO、スピネル構造のLiTi12の分子式を挙げることが出来、スピネル構造品が好ましい。又、カーボンと複合化したチタン酸リチウム粒子を用いることも出来る。粉体の粒子径は、特に限定されないが、100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。より細かい粒子の方が表面積が大きいために、たくさんのイオンを受け取ることが出来、高感度な生体電極となる。これらは炭素との複合粉であっても良い。チタン酸リチウム粉の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0107】
[金属塩化物粉]
本発明の生体電極組成物には、(D)成分として、イオン導電性を向上させるために、金属塩化物粉を添加することが出来る。金属塩化物粉としては、後述するイオン性添加剤である塩化ナトリウム、塩化カリウムなどのアルカリ金属塩化物や、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩化物の粉末を挙げることが出来る。中でも、塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましい。粉体の粒子径は、特に限定されないが、100μmよりも小さい方が好ましく、より好ましくは1μm以下である。より細かい粒子の方が表面積が大きいために、より効率的にイオンキャリアとして機能することができ、高感度な生体電極となる。これらは炭素との複合粉(カーボン粉が更に金属塩化物由来のイオン成分を含有するもの)であっても良い。カーボン粉を含有させるには、上述のカーボン粉にイオン成分を含有させる方法によることができる。例えば、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの金属塩化物の水溶液又はメタノールなどアルコール分散液に、黒鉛やカーボンブラックなどのカーボン粉を加え、必要に応じて加熱しながら攪拌した後、溶媒(水、メタノールなど)を蒸発させてイオン処理カーボン粉を得ることができる。金属塩化物粉の添加量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して1~50質量部の範囲とすることが好ましい。
【0108】
上記金属粉等の粒子径(サイズ)は、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒径(D50)とすることができる。レーザー回折・散乱法による測定は、例えば、マイクロトラック粒度分析計MT3300EX(日機装(株)製)により行えばよい。
【0109】
[(E)成分]
本発明の生体電極組成物は、必要に応じて(E)成分としての添加剤をさらに含有することができる。添加剤としては、ポリエーテル、ポリグリセリン、ポリグリセリンエステル、ポリエーテルシリコーン、ポリグリセリンシリコーンなどの保湿成分、イオン導電性向上のための塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムカリウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ベタイン等の塩を挙げることができる。後述のポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物や無機粒子も挙げられる。
【0110】
(粘着性付与剤)
また、生体電極組成物には、生体に対する粘着性を付与するために、粘着性付与剤を添加してもよい。このような粘着性付与剤としては、例えば、シリコーンレジンや非架橋性のシロキサン、非架橋性のポリ(メタ)アクリレート、非架橋性のポリエーテル等を挙げることができる。
【0111】
(架橋剤)
生体電極組成物にはエポキシ系の架橋剤を添加することも出来る。この場合の架橋剤は、エポキシ基やオキセタン基を1分子内に複数有する化合物である。添加量としては、樹脂100質量部に対して1~30質量部である。
【0112】
(架橋触媒)
生体電極組成物にはエポキシ基やオキセタン基を架橋するための触媒を添加することも出来る。この場合の触媒は、特表2019-503406号中、段落0027~0029に記載されているものを用いることが出来る。添加量としては、樹脂100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0113】
(イオン性添加剤)
生体電極組成物には、イオン導電性を上げるためのイオン性添加剤を添加することが出来る。生体適合性を考慮すると、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムカリウム、特開2018-44147号公報、同2018-59050号公報、同2018-59052号公報、同2018-130534公報の塩を挙げることが出来る。
【0114】
(ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物)
本発明の生体電極組成物において、膜の保湿性を向上させて肌から放出されるイオンの感受性とイオン導電性を向上させるために、ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物を添加することも出来る。ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物の配合量は、特に限定されないが、(A)成分と(B)成分の合計100質量部に対して0.01~100質量部とすることが好ましく、0.5~60質量部とすることがより好ましい。また、ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合で使用してもよい。
【0115】
ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物は、下記一般式(4)および(5)で示されるものであることが好ましい。
【化5】
(式(4)および(5)中、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良く、水素原子または炭素数1~50の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基であり、エーテル基を含有していても良く、一般式(6)で示されるシリコーン鎖であってもよく、R’は式(4)-1又は式(4)-2で表されるポリグリセリン基構造を有する基であり、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良く、前記R’基又は前記R’基であり、R’は、それぞれ独立であり、互いに同一であっても異なっていても良く、前記R’基、前記R’基又は酸素原子である。R’が酸素原子である場合、R’基は結合して1つのエーテル基となって、ケイ素原子とともに環を形成しても良い。a’は同一であっても異なっていても良く0~100であり、b’は0~100であり、a’+b’は0~200である。但し、b’が0の時はR’の少なくとも1つが前記R’基である。式(4)-1、(4)-2及び(5)中、R’は炭素数2~10のアルキレン基又は炭素数7~10のアラルキレン基、R’及びR’は炭素数2~6のアルキレン基であり、R’はエーテル結合であっても良く、c’は0~20、d’は1~20である。R8’は、水素原子、エーテル基を含有していても良い炭素数1~50の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はフェニル基である。)
【0116】
このようなポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物としては、例えば以下を例示することができる。
【0117】
【化6】
【0118】
【化7】
【0119】
【化8】
【0120】
【化9】
【0121】
【化10】
【0122】
【化11】
【0123】
【化12】
【0124】
【化13】
【0125】
【化14】
【0126】
【化15】
(式中、a‘、b’、c’及びd’は上記のとおりである)
【0127】
このようなポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物を含むものであれば、より優れた保湿性を示すことができ、その結果、肌から放出されるイオンに対してより優れた感度を示すことができる生体接触層を形成できる生体電極組成物とすることができる。
【0128】
(その他添加剤)
生体電極組成物には、シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子などの無機粒子を混合することも出来る。シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子は表面が親水性であり、親水性のイオンポリマーやポリグリセリンシリコーンとのなじみが良く、疎水性のシリコーン粘着剤でのイオンポリマーやポリグリセリンシリコーンのシリコーン粘着剤での分散性を向上させることが出来る。シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子は乾式、湿式どちらでも好ましく用いることが出来る。シリカ粒子、アルミナ粒子、チタニア粒子、ジルコニア粒子の形状は、球状、楕円状、不定形状、中空状、多孔質のいずれであっても構わない。また、シリカなどの粒子表面をシランカップリング剤やシリコーンなどで表面修飾していても構わない。
【0129】
<生体電極組成物の製造方法>
本発明の生体電極組成物の製造法は特に限定されないが、例えば、(A)イオン性の高分子材料と、(B)少なくともヒドロシリル基を有する付加反応硬化型のシリコーン、及び(C)白金族系触媒を別々の容器で保管し、生体電極を作製するときにそれぞれを混合して生体電極組成物とすることができる。
【0130】
このように、イオン性の高分子材料と、ヒドロシリル基を有するオルガノハイドロジェンシロキサンとは別の容器に入れて保管し、ヒドロシリル化反応による硬化直前に白金族系触媒と一緒に混合し、塗布によって成膜しベークによってヒドロシリル化反応による硬化を行うことが好ましい。イオン性の高分子化合物を含有する溶剤は、脱水処理を行って水分を除去していても微量の水分を含有しており、長期間の保管中に徐々にシラノールが生成してしまうためである。
【0131】
また、上記(D)成分を含む場合には、(D)成分が、(C)成分を混合する前か混合と同時に、(A)成分又は(B)成分中に混合されてもよい。
このようにすることで(D)成分由来の水分による影響を小さくすることができる。
【0132】
(脱水処理)
上述したように水を含有しやすいのは、(B)成分のヒドロシリル基を有するシリコーンではなく、極性溶剤を含む(A)成分のイオン性の高分子材料を含有する溶液である。(A)溶液に含有している水分が、(B)溶液と混合したときに上記ヒドロシリル基の失活反応を引き起こす。よって、(A)成分のイオン性の高分子化合物を含有する溶液は必要に応じて脱水処理を行う。脱水処理は、常法によって行えばよく、例えばイオン性の高分子化合物を含有する溶液の濃度を上げるための共沸脱水や、モレキュラーシーブス等の脱水剤を用いることによって行うことが出来る。
【0133】
以上のように、本発明の生体電極組成物であれば、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極用の生体接触層を形成することができる生体電極組成物となる。また、導電性粉末(カーボン粉、金属粉など)を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。
【0134】
<生体電極>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極であって、前記生体接触層が、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物である生体電極を提供する。
【0135】
以下、本発明の生体電極について、図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0136】
図1は、本発明の生体電極の一例を示す概略断面図である。図1の生体電極1は、導電性基材2と該導電性基材2上に形成された生体接触層3とを有するものである。生体接触層3は本発明の生体電極組成物の硬化物からなる。生体接触層3は樹脂6、イオン性ポリマー5、導電性向上剤4を含むことができる。以下図1,2を参照して、生体接触層3が、導電性向上剤4とイオン性ポリマー5が樹脂6中に分散された層である場合について説明するが、本発明の生体電極はこの態様に限定されない。
【0137】
このような図1の生体電極1を使用する場合には、図2に示されるように、生体接触層3(即ち、導電性向上剤4とイオン性ポリマー5が樹脂6中に分散された層)を生体7と接触させ、導電性向上剤4とイオン性ポリマー5によって生体7から電気信号を取り出し、これを導電性基材2を介して、センサーデバイス等(不図示)まで伝導させる。このように、本発明の生体電極であれば、上述のイオン性ポリマーと導電性向上剤によって導電性及び生体適合性を両立でき、粘着性も有しているために肌との接触面積が一定で、肌からの電気信号を安定的に高感度で得ることができる。
【0138】
以下、本発明の生体電極の各構成材料について、更に詳しく説明する。
【0139】
[導電性基材]
本発明の生体電極は、導電性基材を有するものである。この導電性基材は、通常、センサーデバイス等と電気的に接続されており、生体から生体接触層を介して取り出した電気信号をセンサーデバイス等まで伝導させる。
【0140】
導電性基材としては、導電性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、金、銀、塩化銀、白金、アルミニウム、マグネシウム、スズ、タングステン、鉄、銅、ニッケル、ステンレス、クロム、チタン、炭素及び導電ポリマーから選ばれる1種以上を含むものとすることが好ましい。
【0141】
また、導電性基材は、特に限定されず、硬質な導電性基板等であってもよいし、フレキシブル性を有する導電性フィルムや導電性ペーストを表面にコーティングした布地や導電性ポリマーを練り込んだ布地であってもよい。導電性基材は平坦でも凹凸があっても金属線を織ったメッシュ状であってもよく、生体電極の用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0142】
[生体接触層]
本発明の生体電極は、導電性基材上に形成された生体接触層を有するものである。この生体接触層は、生体電極を使用する際に、実際に生体と接触する部分であり、導電性及び粘着性を有する。生体接触層は、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物であり、即ち、上述の(A)成分と、(B)成分、(C)成分を混合し、塗布の後に硬化させた粘着性の樹脂層である。(A)成分と(B)成分には、アルケニル基を有するポリシロキサンとMQレジン、必要に応じて(D)成分、(E)成分を含有していても良い。
【0143】
なお、生体接触層の粘着力としては、0.5N/25mm以上20N/25mm以下の範囲が好ましい。粘着力の測定方法は、JIS Z 0237に示される方法が一般的であり、基材としてはSUS(ステンレス鋼)のような金属基板やPET(ポリエチレンテレフタラート)基板を用いることができるが、人の肌を用いて測定することもできる。人の肌の表面エネルギーは、金属や各種プラスチックより低く、テフロン(登録商標)に近い低エネルギーであり、粘着しにくい性質である。
【0144】
生体電極の生体接触層の厚さは、1μm以上5mm以下が好ましく、2μm以上3mm以下がより好ましい。生体接触層が薄くなるほど粘着力は低下するが、フレキシブル性は向上し、軽くなって肌へのなじみが良くなる。粘着性や肌への風合いとの兼ね合いで生体接触層の厚さを選択することができる。
【0145】
また、本発明の生体電極では、従来の生体電極(例えば、特開2004-033468号公報に記載の生体電極)と同様、使用時に生体から生体電極が剥がれるのを防止するために、生体接触層上に別途粘着膜を設けてもよい。別途粘着膜を設ける場合には、アクリル型、ウレタン型、シリコーン型等の粘着膜材料を用いて粘着膜を形成すればよく、特にシリコーン型は酸素透過性が高いためこれを貼り付けたままの皮膚呼吸が可能であり、撥水性も高いため汗による粘着性の低下が少なく、更に、肌への刺激性が低いことから好適である。なお、本発明の生体電極では、上記のように、生体電極組成物に粘着性付与剤を添加したり、生体への粘着性が良好な樹脂を用いたりすることで、生体からの剥がれを防止することができるため、上記の別途設ける粘着膜は必ずしも設ける必要はない。
【0146】
本発明の生体電極をウェアラブルデバイスとして使用する際の、生体電極とセンサーデバイスの配線や、その他の部材については、特に限定されるものではなく、例えば、特開2004-033468号公報に記載のものを適用することができる。
【0147】
以上のように、本発明の生体電極であれば、上述の本発明の生体電極組成物の硬化物で生体接触層が形成されるため、肌からの電気信号を効率良くデバイスに伝えることができ(即ち、導電性に優れ)、長期間肌に装着してもアレルギーを起こす恐れがなく(即ち、生体適合性に優れ)、軽量であり、低コストで製造することができ、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない生体電極となる。また、導線性粉を添加することによって一層導電性を向上させることができ、粘着性と伸縮性を有する樹脂と組み合わせることによって特に高粘着力で伸縮性が高い生体電極を製造することができる。更に、添加剤等により肌に対する伸縮性や粘着性を向上させることができ、樹脂の組成や生体接触層の厚さを適宜調節することで、伸縮性や粘着性を調整することもできる。従って、このような本発明の生体電極であれば、医療用ウェアラブルデバイスに用いられる生体電極として、特に好適である。
【0148】
<生体電極の製造方法>
また、本発明では、導電性基材と該導電性基材上に形成された生体接触層とを有する生体電極の製造方法であって、前記導電性基材上に、上述の本発明の生体電極組成物を塗布し、硬化させることで前記生体接触層を形成する生体電極の製造方法を提供する。
【0149】
なお、本発明の生体電極の製造方法に使用される導電性基材等は、上述のものと同様でよい。
【0150】
導電性基材上に生体電極組成物を塗布する方法は、特に限定されないが、例えばディップコート、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、フローコート、ドクターコート、スクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の方法が好適である。
【0151】
樹脂の硬化方法は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)、(B)成分によって適宜選択すればよいが、例えば、熱及び光のいずれかで又はこれらの両方で白金族系触媒を活性化させ、ヒドロシリル基とアルケニル基に結合するシリコーンとの付加反応によって硬化させることが好ましい。
【0152】
なお、加熱する場合の温度は、特に限定されず、生体電極組成物に使用する(A)、(B)成分によって適宜選択すればよいが、例えば50~250℃程度が好ましい。
【0153】
また、加熱と光照射を組み合わせる場合は、加熱と光照射を同時に行ってもよいし、光照射後に加熱を行ってもよいし、加熱後に光照射を行ってもよい。また、塗膜後の加熱の前に溶剤を蒸発させる目的で風乾を行ってもよい。
【0154】
(A)成分と(B)成分の水分含有率が高いあるいは(A)成分にヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含む溶剤が混合している場合は、(A)成分と(B)成分を混合した直後からヒドロシリル基の失活反応が進行する。この場合、(A)成分と(B)成分、(C)成分を混合して放置後生体電極を印刷、硬化、肌に貼り付けて生体信号を取得後にこれを剥がした後に肌上に残渣が生じる。これは、ヒドロシリル基の失活によって生体電極膜内の架橋密度が低くなるための凝集破壊が起こったためである。成分を混合後素早く印刷しても、ベークなどの硬化までの時間が長い場合も同様の現象が起こる。
【0155】
硬化後の膜表面に水滴を付けたり、水蒸気やミストを吹きかけると肌とのなじみが向上し、素早く生体信号を得ることが出来る。水蒸気やミストの水滴のサイズを細かくするためにアルコールと混合した水を用いることも出来る。水を含んだ脱脂綿や布と接触させて膜表面を濡らすことも出来る。
【0156】
硬化後の膜表面を濡らす水は塩を含んでいても良い。水と混合させる水溶性塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ベタインから選ばれる。
【0157】
前記水溶性塩は、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、サッカリンナトリウム塩、アセスルファムカリウム、カルボン酸ナトリウム、カルボン酸カリウム、カルボン酸カルシウム、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ベタインから選ばれる塩であることができる。なお、上述の高分子化合物(A)は、前記水溶性塩に含まれない。
【0158】
より具体的には、上記の他に酢酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ピバル酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、吉草酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、エナント酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、ペラルゴン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、ウンデシル酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、トリデシル酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ペンタデシル酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、マルガリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、アジピン酸二ナトリウム、マレイン酸二ナトリウム、フタル酸二ナトリウム、2-ヒドロキシ酪酸ナトリウム、3-ヒドロキシ酪酸ナトリウム、2-オキソ酪酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、メタンスルホン酸ナトリウム、1-ノナンスルホン酸ナトリウム、1-デカンスルホン酸ナトリウム、1-ドデカンスルホン酸ナトリウム、1-ウンデカンスルホン酸ナトリウム、ココイルセチオン酸ナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ラウミドプロピル、イソ酪酸カリウム、プロピオン酸カリウム、ピバル酸カリウム、グリコール酸カリウム、グルコン酸カリウム、メタンスルホン酸カリウム、ステアリン酸カルシウム、グリコール酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、3-メチル-2-オキソ酪酸カルシウム、メタンスルホン酸カルシウムが挙げられる。ベタインは分子内塩の総称で、具体的にはアミノ酸のアミノ基に3個のメチル基が付加した化合物であるが、より具体的にはトリメチルグリシン、カルニチン、プロリンベタインを挙げることが出来る。
【0159】
前記水溶性塩は、さらに炭素数1~4の1価アルコール又は多価アルコールを含有することができ、前記アルコールがエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ジグリセリン、又はポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物から選ばれるものであることが好ましく、前記ポリグリセリン構造を有するシリコーン化合物が上記一般式(4)及び(5)で示されるものであることがより好ましい。
【0160】
水溶性塩含有水溶液による前処理方法は、硬化後の生体電極膜上に噴霧法、水滴ディスペンス法等で生体電極膜を塗らすことが出来る。サウナのように高温高湿状態で塗らすことも出来る。塗らした後は乾燥を防止するために、浸透層の上に、さらに保護フィルムを積層することで覆うことも出来る。保護フィルムは肌に貼り付ける直前に剥がす必要があるので、剥離剤がコートされているか、剥離性のテフロン(登録商標)フィルムが用いられることができる。剥離フィルムで覆われたドライ電極は、長期間の保存のためにはアルミニウムなどでカバーされた袋で封止されることが好ましい。アルミニウムでカバーされた袋の中での乾燥を防止するためには、この中に水分を封入しておくことが好ましい。
【0161】
本発明の生体電極を肌に貼り付ける前に、肌側を水やアルコール等で湿らせたり、水やアルコール等を含有する布や脱脂綿で肌を拭くことも出来る。水やアルコール中に前述の塩を含有させることも出来る。
【0162】
以上のように、本発明の生体電極の製造方法であれば、導電性及び生体適合性に優れ、軽量であり、水に濡れても乾燥しても導電性が大幅に低下することがない本発明の生体電極を、低コストで容易に製造することができる。
【実施例
【0163】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、「Me」はメチル基、「Vi」はビニル基を示す。
【0164】
合成実施例1
生体電極組成物にイオン性材料(導電性材料)として配合したイオン性ポリマー1溶液は、以下のようにして合成した。各モノマーの20質量%PGMEA溶液を反応容器に入れて混合し、反応容器を窒素雰囲気下-70℃まで冷却し、減圧脱気、窒素ブローを3回繰り返した。室温まで昇温後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー全体1モルに対して0.01モル加え、60℃まで昇温後、15時間反応させた。エバポレーターによりPGMEAを蒸発させポリマーを30質量%まで濃縮すると同時に水分を蒸発させた。得られたポリマーの組成は、ポリマー溶液の一部を乾燥後、H-NMRにより確認した。また、得られたポリマーの分子量(Mw)及び分散度(Mw/Mn)は、溶剤としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により確認した。
【0165】
30質量%イオン性ポリマー1のPGMEA溶液
Mw=38,100
Mw/Mn=1.91
【化16】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0166】
合成実施例2
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-ヘプタノンを用いてイオン性ポリマー2溶液を用意した。
【0167】
30質量%イオン性ポリマー2の2-ヘプタノン溶液
Mw=32,100
Mw/Mn=1.99
【化17】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0168】
合成実施例3
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-エトキシカルボニルシクロペンタノンを用いてイオン性ポリマー3溶液を用意した。
【0169】
30質量%イオン性ポリマー3の2-エトキシカルボニルシクロペンタノン溶液
Mw=33,300
Mw/Mn=1.83
【化18】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0170】
合成実施例4
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にシクロヘキサノンを用いてイオン性ポリマー4溶液を用意した。
【0171】
30質量%イオン性ポリマー4のシクロヘキサノン溶液
Mw=80,100
Mw/Mn=2.15
【化19】
【0172】
合成実施例5
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にシクロペンタノンを用いてイオン性ポリマー5溶液を用意した。
【0173】
30質量%イオン性ポリマー5のシクロペンタノン溶液
Mw=44,400
Mw/Mn=1.94
【化20】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0174】
合成実施例6
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-プロピルシクロヘキサノンを用いてイオン性ポリマー6溶液を用意した。
【0175】
30質量%イオン性ポリマー6の2-プロピルシクロヘキサノン溶液
Mw=41,100
Mw/Mn=1.86
【化21】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0176】
合成実施例7
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-アセチルシクロヘキサノンを用いてイオン性ポリマー7溶液を用意した。
【0177】
30質量%イオン性ポリマー7の2-アセチルシクロヘキサノン溶液
Mw=43,600
Mw/Mn=1.93
【化22】
【0178】
合成実施例8
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オンを用いてイオン性ポリマー8溶液を用意した。
【0179】
30質量%イオン性ポリマー8の2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン溶液
Mw=35,700
Mw/Mn=2.06
【化23】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0180】
合成実施例9
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-ヘプチルシクロペンタノンを用いてイオン性ポリマー9溶液を用意した。
【0181】
30質量%イオン性ポリマー9の2-ヘプチルシクロペンタノン溶液
Mw=55,100
Mw/Mn=2.02
【化24】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0182】
合成実施例10
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンを用いてイオン性ポリマー10溶液を用意した。
【0183】
30質量%イオン性ポリマー10の3,3,5-トリメチルシクロヘキサノン溶液
Mw=87,500
Mw/Mn=2.01
【化25】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0184】
合成実施例11
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に2-メトキシカルボニルシクロペンタノンを用いてイオン性ポリマー11溶液を用意した。
【0185】
30質量%イオン性ポリマー11の2-メトキシカルボニルシクロペンタノン溶液
Mw=41,600
Mw/Mn=1.91
【化26】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0186】
合成実施例12
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にγ-バレロラクトンを用いてイオン性ポリマー12溶液を用意した。
【0187】
30質量%イオン性ポリマー12のγ-バレロラクトン溶液
Mw36,100
Mw/Mn=1.55
【化27】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0188】
合成実施例13
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にε-カプロラクトンを用いてイオン性ポリマー13溶液を用意した。
【0189】
30質量%イオン性ポリマー13のε-カプロラクトン溶液
Mw=38,300
Mw/Mn=2.01
【化28】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0190】
合成実施例14
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にシクロヘプタノンを用いてイオン性ポリマー14溶液を用意した。
【0191】
30質量%イオン性ポリマー14のシクロヘプタノン溶液
Mw=33,500
Mw/Mn=1.97
【化29】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0192】
合成実施例15
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤に3-メチルシクロヘキサノンを用いてイオン性ポリマー15溶液を用意した。
【0193】
30質量%イオン性ポリマー15の3-メチルシクロヘキサノン溶液
Mw=34,900
Mw/Mn=1.91
【化30】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0194】
合成実施例16
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にジエチレングリコールジエチルエーテルを用いてイオン性ポリマー16溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー16のジエチレングリコールジエチルエーテル溶液
Mw=43,100
Mw/Mn=1.74
【化31】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0195】
合成実施例17
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にジエチレングリコールメチルブチルエーテルを用いてイオン性ポリマー17溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー17のジエチレングリコールメチルブチルエーテル溶液
Mw=42,000
Mw/Mn=1.77
【化32】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0196】
合成実施例18
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にジエチレングリコールジブチルエーテルを用いてイオン性ポリマー18溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー18のジエチレングリコールジブチルエーテル溶液
Mw=41,000
Mw/Mn=1.69
【化33】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0197】
合成実施例19
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にジエチレングリコールブチルエーテルアセテートを用いてイオン性ポリマー19溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー19のジエチレングリコールブチルエーテルアセテート溶液
Mw=37,000
Mw/Mn=1.61
【化34】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0198】
合成実施例20
合成実施例19と同じ方法で、イオンモノマーを変更し、重合溶剤にジエチレングリコールブチルエーテルアセテートを用いてイオン性ポリマー20溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー20のジエチレングリコールブチルエーテルアセテート溶液
Mw=39,000
Mw/Mn=1.64
【化35】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0199】
合成実施例21
合成実施例19と同じ方法で、イオンモノマーを変更し、重合溶剤にジエチレングリコールブチルエーテルアセテートを用いてイオン性ポリマー21溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー21のジエチレングリコールブチルエーテルアセテート溶液
Mw=44,000
Mw/Mn=1.68
【化36】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0200】
合成実施例22
合成実施例19と同じ方法で、イオンモノマーを変更し、重合溶剤にジエチレングリコールブチルエーテルアセテートを用いてイオン性ポリマー22溶液を用意した。
30質量%イオン性ポリマー22のジエチレングリコールブチルエーテルアセテート溶液
Mw=48,000
Mw/Mn=1.81
【化37】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0201】
比較合成例1
合成実施例1と同じ方法で、30質量%の濃度で重合溶剤にシクロペンタノンを用いて重合し、脱水処理を行わずに比較イオン性ポリマー1溶液を用意した。
【0202】
30質量%比較イオン性ポリマー1のシクロペンタノン溶液
Mw=44,400
Mw/Mn=1.98
【化38】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0203】
比較合成例2
合成実施例1と同じ方法で、30質量%の濃度で重合溶剤にPGEEを用いて重合し、脱水処理を行わずに比較イオン性ポリマー2溶液を用意した。
【0204】
30質量%比較イオン性ポリマー2のPGEE溶液
Mw=46,600
Mw/Mn=1.95
【化39】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0205】
比較合成例3
合成実施例1と同じ方法で、重合溶剤にジアセトンアルコールを用いて重合し、比較イオン性ポリマー3溶液を用意した。
【0206】
30質量%比較イオン性ポリマー3のジアセトンアルコール溶液
Mw=36,600
Mw/Mn=1.92
【化40】
(式中の繰り返し数は平均値を示す。)
【0207】
ポリグリセリンシリコーン化合物1~5(添加剤)を下記に示す。これらの化合物の合成方法は特開2019-99469号に記載のとおりであり、SiH基を有するシリコーン化合物と、二重結合を有するポリグリセリン化合物を白金触媒存在下におけるヒドロシリル化反応によって合成した。
【0208】
【化41】
【0209】
生体電極組成物にシリコーン系の樹脂として配合したシロキサン化合物1~4を以下に示す。
【0210】
(シロキサン化合物1)
30%トルエン溶液での粘度が27,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がSiMeVi基で封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサンをシロキサン化合物1とした。
【0211】
(シロキサン化合物2)
MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60%アイソパーG溶液をシロキサン化合物2とした。
【0212】
(シロキサン化合物3)
30%トルエン溶液での粘度が42,000mPa・sであり、アルケニル基含有量が0.007モル/100gであり、分子鎖末端がOHで封鎖されたビニル基含有ポリジメチルシロキサン40質量部、MeSiO0.5単位及びSiO単位からなるMQレジンのポリシロキサン(MeSiO0.5単位/SiO単位=0.8)の60%アイソパーG溶液100質量部、及びアイソパーG26.7質量部からなる溶液を還流させながら4時間加熱後、冷却して、MQレジンにポリジメチルシロキサンを結合させたものをシロキサン化合物3とした。
【0213】
(シロキサン化合物4)
ヒドロシリル基を有するシリコーンとして、信越化学工業製 KF-99を用いた。
【0214】
また、シリコーン系の樹脂として、ポリエーテル型シリコーンオイルである側鎖ポリエーテル変性の信越化学工業製 KF-353を用いた。
【0215】
生体電極組成物に配合した有機溶剤を以下に示す。
PGMEA:プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート
PGEE:1-エトキシ-2-プロパノール
DAA:ジアセトンアルコール
アイソパーG:イソパラフィン系溶剤 スタンダード石油製
アイソパーM:イソパラフィン系溶剤 スタンダード石油製
【0216】
生体電極組成物に添加剤として配合した白金触媒、導電性向上剤(金属粉、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、チタン酸リチウム、黒鉛、イオン処理黒鉛、イオン処理カーボンブラック、金属塩化物)、添加剤(付加反応制御剤)を以下に示す。
白金触媒:信越化学工業製 CAT-PL-56(白金含有率2質量%)
金属粉 銀粉:Sigma-Aldrich社製 銀フレーク 直径10μm
金粉:Sigma-Aldrich社製 金粉 直径10μm以下
カーボンブラック:デンカ社製 デンカブラックLi-400
多層カーボンナノチューブ:Sigma-Aldrich社製 直径110~170nm、長さ5~9μm
チタン酸リチウム粉、スピネル:Sigma-Aldrich社製 サイズ200nm以下
黒鉛:Sigma-Aldrich社製 直径20μm以下
イオン処理黒鉛1:下記調製例1により作製した。
イオン処理カーボンブラック1,2:下記調製例2,3により作製した。
金属塩化物粉 塩化ナトリウム粉:パウダー状
塩化カリウム粉:パウダー状
付加反応制御剤:1-エチニルシクロヘキサノール
【0217】
(調製例1)
上記塩化ナトリウムを1質量%含有するメタノールに分散した上記黒鉛の10質量%を60℃で10時間攪拌し、メタノールを蒸発させてイオン処理黒鉛1を作製した。
【0218】
(調製例2)
上記塩化ナトリウムを1質量%含有するメタノールに分散したデンカブラックLi-400の10質量%を60℃で10時間攪拌し、メタノールを蒸発させてイオン処理カーボンブラック1を作製した。
【0219】
(調製例3)
調製例2と同様の方法で、塩化ナトリウムを上記塩化カリウムに置き換えてイオン処理カーボンブラック2を作製した。
【0220】
[実施例1~27、比較例1~3]
表1~3に記載の組成で、イオン性ポリマー(イオンポリマー)、ヒドロシリル基含有シリコーン、シリコーン樹脂、有機溶剤、導電性向上剤、及び添加剤(ポリグリセリン、付加反応制御剤)をブレンドし(A)成分と(B)成分を作製し、これに(C)成分を加えて表4、5に記載の割合で混合した。(A)成分(A溶液1~26、比較A溶液1~3)、(B)成分(B溶液1~3)の水分含有率(質量%)はカールフィッシャー法で測定した。なお、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を混合して得た生体電極組成物中の水分含有率は、(C)成分の配合割合がわずかであり、これに由来する水分は無視できるため、(A)成分と(B)成分の配合量(質量部)と水分含有率から求めることができる。実施例1~27では、いずれの生体電極組成物中の水分含有率も0.2質量%以下であった。
【0221】
【表1】
【0222】
【表2】
【0223】
【表3】
【0224】
(生体信号評価)
ビーマス(Bemis)社の熱可塑性ウレタン(TPU)フィルムのST-604上に、スクリーン印刷によって藤倉化成製の導電ペースト、ドータイトFA-333をコートし、120℃で10分間オーブン中でベークして円の直径が2cmの鍵穴状の導電パターンを印刷した。その上の円形部分に重ねて、表1~3に記載のA成分~C成分の混合物(生体電極組成物)を、混合後1時間経ってからスクリーン印刷で塗布し、室温で10分風乾した後、オーブンを用いて125℃で10分間ベークして溶剤を蒸発させ硬化させて生体電極を作製した(図3)。生体電極が印刷されたウレタンフィルムを切り取って、両面テープを貼り付けて、1つの組成物溶液につき生体電極(生体電極サンプル)を3個作製した(図4)。ここで、図3は熱可塑性ウレタンフィルム20上に導電パターン2が印刷され、硬化してなる生体接触層3が作製された生体電極1を示す図である。図4は導電パターン2が印刷されて硬化した熱可塑性ウレタンフィルム20を切り取って、両面テープ21を貼り付けた生体電極サンプル10を示す図である。
【0225】
(生体接触層の厚さ測定)
上記で作製した生体電極において、生体接触層の厚さをマイクロメーターを用いて測定した。結果を表4,5に示す。
【0226】
(生体シグナルの測定)
生体電極の導電ペーストによる導電配線パターンとオムロンヘルスケア(株)製携帯心電計HCG-901とを導電線で結び、心電計のプラス電極を図5中の人体のLAの場所、マイナス電極をLLの場所、アースをRAの場所に貼り付けた。貼り付け20分後に心電図の測定を開始し、図6に示されるP、Q、R、S、T波からなる心電図波形(ECGシグナル)が現れるかどうかを確認し、生体電極を剥がした後の肌上に生体電極膜の残渣が発生しているかどうかを観察した。結果を表4,5に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
【表5】
【0229】
表4,5に示されるように、水分含有率を0.2%以下に低減した溶液、あるいは(A)成分としてヒドロキシ基、カルボキシル基、窒素原子、チオール基を含まないエーテル系、エステル系、ケトン系を含有する溶剤を用いて作製した本発明の生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した実施例1~27では、良好な生体信号を得たうえ、剥がした後に肌上に残渣が残ることもなかった。
【0230】
一方、水分含有率が0.2%を超えた生体電極組成物を用いた場合や、ヒドロキシ基を含有する溶剤(DAA)を用いた場合は、生体信号を得ることは出来たが剥がした後の肌上に残渣が生じた(比較例1~3)。
【0231】
以上のことから、本発明の生体電極組成物を用いて生体接触層を形成した生体電極であれば、導電性、生体適合性、導電性基材に対する接着性に優れ、イオン導電性が高いために良好な生体信号を得ることが出来、付加反応が阻害されず十分に膜内での架橋反応が進行することにより、剥がした後も肌上に残渣が生じることがない。
【0232】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0233】
1…生体電極、 2…導電性基材(導電パターン)、 3…生体接触層、 4…導電性向上剤、 5…イオン性ポリマー、 6…樹脂、 7…生体、 10…生体電極サンプル、 20…熱可塑性ウレタンフィルム、21…両面テープ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6