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  • 特許-吸水性樹脂粒子の再生方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/34 20060101AFI20240620BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
B01J20/34 G
B01J20/26 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021552437
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2020038947
(87)【国際公開番号】W WO2021075506
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019191204
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】山本 朋依
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-135046(JP,A)
【文献】特開2003-135519(JP,A)
【文献】特開2003-326161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/34
B01J 20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水した吸水性樹脂粒子を65℃以上の熱水で処理することと、
熱水処理後の前記吸水性樹脂粒子を親水性有機溶媒で処理することと、
親水性有機溶媒処理後の前記吸水性樹脂粒子から水分及び該溶媒の少なくとも一部を除去し、吸水性樹脂粒子固形分、水分及び該溶媒の合計量に対する、水分及び該溶媒の合計量を15質量%以下にすることとを含む、吸水性樹脂粒子の再生方法であって、
前記吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含んでおり、前記エチレン性不飽和単量体である、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であ
前記再生方法は、吸水した吸水性樹脂粒子と他の材料との混合物に供されるものであり、
前記熱水処理の前に、前記吸水した吸水性樹脂粒子を前記他の材料と分離する、再生方法。
【請求項2】
前記親水性有機溶媒が、炭素数1~5のアルコール、及び炭素数1~5のケトンから選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
共沸蒸留により、前記親水性有機溶媒処理後の前記吸水性樹脂粒子から水分及び該溶媒の少なくとも一部を除去する、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野で広く使用されている。使用済みの吸水性樹脂粒子は、廃棄されることが一般的である。一方、環境保護、廃棄物削減、経済性等の観点から、使用済みの吸水性樹脂粒子を再生して再利用することも行われている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-198862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸水性樹脂粒子の再生方法では、再生して得られる粒子の吸水性能が、吸水前の粒子と比べて劣化するという問題がある。
【0005】
本発明は、吸水性能の回復性に優れる吸水性樹脂粒子の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の吸水性樹脂粒子の再生方法は、吸水した吸水性樹脂粒子を熱水で処理することと、熱水処理後の該吸水性樹脂粒子を親水性有機溶媒で処理することとを含む。
【0007】
上記再生方法は、親水性有機溶媒処理後の吸水性樹脂粒子から水分及び該溶媒の少なくとも一部を除去し、吸水性樹脂粒子固形分、水分及び該溶媒の合計量に対する、水分及び該溶媒の合計量を15質量%以下にすることを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、吸水性能の回復性に優れる吸水性樹脂粒子の再生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】荷重下吸水量を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0012】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の再生方法は、吸水した吸水性樹脂粒子を熱水で処理することと、熱水処理後の上記吸水性樹脂粒子を親水性有機溶媒で処理することとを含む。
【0013】
本実施形態に係る再生方法に供する、吸水した吸水性樹脂粒子(吸水後の吸水性樹脂粒子)は、水分を吸収したものであればよく、例えば使用後の吸水性樹脂粒子であってよい。吸水後の吸水性樹脂粒子は、例えば、尿、血液等の体液、雨水、海水等の任意の水性液を吸収した吸水性樹脂粒子であってよい。本実施形態に係る再生方法は、特に尿等のイオン含有水性液を吸収した後の吸水性樹脂粒子の再生に適している。本実施形態に係る再生方法に供する、吸水した吸水性樹脂粒子には、単量体を重合して吸水性樹脂粒子を製造する途中で得られるような含水ゲル状重合体は含まれない。以下、本実施形態に係る再生方法に供される、吸水した吸水性樹脂粒子を「膨潤ゲル」とも称する。
【0014】
例えば使用後の紙おむつでは、膨潤ゲルは、パルプ等の繊維状物と混合された状態である場合がある。本実施形態に係る再生方法では、下記に詳述する熱水処理、親水性有機溶媒処理等の各工程は、膨潤ゲル単独に対して行ってもよく、膨潤ゲルと繊維状物等の他の材料との混合物に対して行ってもよい。膨潤ゲルと繊維状物等の他の材料との混合物を本実施形態に係る再生方法に供する場合、膨潤ゲルを繊維状物等の他の材料から分離する工程は、例えば、熱水処理前にあらかじめ行ってもよく、熱水処理後の親水性有機溶媒処理前、親水性有機溶媒処理後の乾燥工程前、又は乾燥工程後に行ってもよい。
【0015】
膨潤ゲルとパルプ等の繊維状物との混合物から膨潤ゲルを分離する方法としては、膨潤ゲル(吸水性樹脂粒子)を実質的に溶解又は分解しない方法であればよく、例えば膨潤ゲル及びパルプを含む混合分散液を液中でスクリーンにより濾別する方法、又は乾燥後に風力分級する方法等が挙げられる。該混合物からの膨潤ゲルの分離は、後述する熱水処理において併せて行ってもよい。
【0016】
[熱水処理]
膨潤ゲルを熱水で処理するとは、膨潤ゲルを熱水と接触させることであってよく、具体的には例えば、膨潤ゲルを熱水に浸漬する、撹拌しながら膨潤ゲルを熱水に浸漬する、膨潤ゲルに熱水をかける等の方法によって行うことができる。膨潤ゲルを熱水で処理することにより、膨潤ゲルに吸収された又は膨潤ゲルに付着した不純物の少なくとも一部を除去し、膨潤ゲルを洗浄することができる。また、熱水処理により、膨潤ゲルの消毒効果も得られる。洗浄効率及び消毒効果の観点から、熱水による処理としては、膨潤ゲルを熱水に浸漬する方法が好ましく、撹拌しながら膨潤ゲルを熱水に浸漬する方法がより好ましい。
【0017】
本明細書において熱水とは、65℃以上である水をいう。洗浄効率及び消毒効果の観点から、熱水の水温が65℃以上であることが好ましく、80℃以上であることがより好ましく、90℃以上であることが更に好ましく、95℃以上であることがより更に好ましい。
【0018】
熱水処理に用いる水としては、典型的には使用済みのものである膨潤ゲルが、熱水処理前と比較してより浄化され、吸水性樹脂粒子を実質的に溶解又は分解しない範囲であれば、水にその他の成分が含まれていてもよい。熱水処理に用いる水としては、純水、イオン交換水、蒸留水、水道水、フィルター濾過した河川水等が好ましい。熱水のpHは5~9であることが好ましく、6~8であることがより好ましい。
【0019】
使用する熱水の量は、膨潤ゲルの全量に対して、5倍量以上であってよく、10倍量以上であることが好ましく、50倍量以上であることがより好ましい。使用する熱水の量は、膨潤ゲルの全量に対して、例えば100倍量以下であってよい。熱水処理の時間は、処理する膨潤ゲルの量によって適宜調節すればよく、例えば10分以上、30分以上又は1時間以上であってよい。熱水処理の時間は例えば5時間以内又は2時間以内であってよい。熱水処理は、例えば二回等、複数回実施してもよい。熱水処理を複数回行う際には、熱水処理後の膨潤ゲルと熱水とを一旦濾別したうえで、再び上述のように熱水処理を施せばよい。典型的には膨潤ゲルは、熱水処理すると、更に吸水して膨潤する現象が見られる。
【0020】
[親水性有機溶媒処理]
本実施形態に係る再生方法では、膨潤ゲルを熱水処理した後、親水性有機溶媒によって更に処理する。膨潤ゲルを親水性有機溶媒で処理するとは、膨潤ゲルと親水性有機溶媒とを接触させることであってよく、具体的には例えば、膨潤ゲルを親水性有機溶媒に浸漬する、撹拌しながら膨潤ゲルを親水性有機溶媒に浸漬する、膨潤ゲルに親水性有機溶媒をかける等の方法によって行うことができる。
【0021】
熱水処理後の膨潤ゲルを親水性有機溶媒で処理することにより、膨潤ゲルに含まれる水分の少なくとも一部を粒子外へ離脱させることができる。典型的には、親水性有機溶媒処理により、親水性有機溶媒処理前の膨潤ゲルよりも体積の小さいゲルが得られる。また、親水性有機溶媒処理によって、膨潤ゲルの表面に付着した不純物の少なくとも一部も併せて除去することができる。親水性有機溶媒による処理としては、膨潤ゲルを親水性有機溶媒に浸漬する方法が好ましく、撹拌しながら膨潤ゲルを親水性有機溶媒に浸漬する方法がより好ましい。
【0022】
本明細書において親水性有機溶媒とは、20℃で水に対し100g/L以上の溶解度を示す有機溶媒をいう。親水性有機溶媒としては、例えば、アルコール、ケトン等であってよい。アルコールは、例えば炭素数1~5であってよく、好ましくは炭素数1~3であり、具体的には例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられる。ケトンとしては、例えば炭素数1~5、好ましくは炭素数1~3であり、具体的には例えばアセトンが挙げられる。
【0023】
親水性有機溶媒は、例えば、沸点が50~90℃のものであってよい。親水性有機溶媒は、再生後の吸水性樹脂粒子の吸水性能の高さから、メタノール又はアセトンが好ましく、メタノールがより好ましい。親水性有機溶媒は、1種を用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
親水性有機溶媒は、水等のその他の溶媒及び/又は成分と混合された混合液の状態で、膨潤ゲルの処理に用いられてもよい。混合液中の親水性有機溶媒の含有量は、混合液全量に対して75質量%以上であってよく、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましく、98質量%以上であることがより更に好ましい。
【0025】
使用する親水性有機溶媒の量は、膨潤ゲルの全質量に対して、1倍量以上であってよく、3倍量以上であってよく、5倍量以上であってよく、10倍量以上であることが好ましい。使用する親水性有機溶媒の量は、膨潤ゲルの全質量に対して、例えば20倍量以下であってよい。
【0026】
親水性有機溶媒による処理は、例えば室温以上、かつ使用する親水性有機溶媒の沸点未満で行えばよく、具体的には例えば20~50℃で行うことができる。
【0027】
膨潤ゲルを親水性有機溶媒に接触させた後、用いた親水性有機溶媒の少なくとも一部とゲルとを分離することが好ましい。分離方法としては、篩、フィルター等により濾別する方法、遠心力を用いて分離する方法などが挙げられる。使用後に分離された親水性有機溶媒は、蒸留等のプロセスにより精製された後に、親水性有機溶媒処理に再利用されてもよい。
【0028】
親水性有機溶媒による処理を浸漬により行う場合、親水性有機溶媒を新たなものに交換して複数回処理を行ってもよい。親水性有機溶媒処理を複数回行う場合は、処理に用いた親水性有機溶媒の少なくとも一部とゲルとを一旦分離してから、次の処理を行うことが好ましい。
【0029】
親水性有機溶媒による処理は、合計で例えば30分以上、1時間以上、又は2時間以上行ってよく、例えば5時間以下、3時間以下、又は2時間以下であってよい。
【0030】
1回、又は必要に応じて複数回親水性有機溶媒処理を行った後のゲルにおいて、ゲル全量(吸水性樹脂粒子固形分、水分、及び親水性有機溶媒の合計量)に対する、水分及び親水性有機溶媒の合計量は、90質量%以下であってよく、85質量%以下であってよく、80質量%以下であることが好ましい。親水性有機溶媒処理後のゲルにおいて、ゲル全量に対する、水分及び親水性有機溶媒の質量割合は、例えば50質量%以上であってよい。
【0031】
[乾燥処理]
親水性有機溶媒処理の後は、ゲルに含まれる水分及び親水性有機溶媒の少なくとも一部を除去することが好ましい。水分及び親水性有機溶媒の少なくとも一部を除去するとは、水分のみの一部を除去する場合、親水性有機溶媒のみの一部を除去する場合、並びに、水分及び親水性有機溶媒のそれぞれ少なくとも一部を除去する場合を含む。
【0032】
水分及び親水性有機溶媒の除去方法としては、例えば、加熱乾燥、減圧乾燥、共沸蒸留等が挙げられる。共沸蒸留としては具体的には、例えば、水分及び/又は親水性有機溶媒を含むゲルを炭化水素分散媒に分散させた状態で、外部から加熱することにより共沸蒸留を行い、炭化水素分散媒を還流させることにより、水分及び/又は親水性有機溶媒を除去することができる。
【0033】
共沸蒸留に用いられる炭化水素分散媒としては、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、又は炭素数6~8の脂環式炭化水素であってよい。炭化水素分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。また、減圧乾燥としては、例えば、デカンテーション又はフィルターによる濾別によりゲルを取り出し、減圧乾燥することができる。再生した吸水性樹脂粒子の性能を下げすぎないという観点から、共沸蒸留での水分除去が好ましい。また、共沸蒸留の場合、乾燥処理の間に生じる粒子の凝集が抑制されるという点でも好ましい。水分及び溶媒の除去方法としては、これらの方法の1種を用いてもよく、複数種を組み合わせてもよい。
【0034】
水分及び溶媒の除去は、ゲル中の、吸水性樹脂粒子固形分、水分及び親水性有機溶媒の合計量に対する、水分及び親水性有機溶媒の合計量が15質量%以下になるように行うことが好ましく、10質量%以下になるように行うことが更に好ましい。
【0035】
熱水処理及び親水性有機溶媒処理、更に必要に応じて水分及び親水性有機溶媒の除去を行うことで、吸水性樹脂粒子を再生し、使用前(吸水前)の状態に近づけることができる。
【0036】
[吸水性樹脂粒子]
本実施形態に係る再生方法に供される吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含んでいてよい。該架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。
【0037】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0038】
エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和してから重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、例えば、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、50~90モル%、又は60~80モル%であってもよい。
【0039】
工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。
【0040】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70~100モル%であってもよい。(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってもよい。
【0041】
吸水性樹脂粒子は、表面近傍の架橋(表面架橋)が行われたものであってもよい。また、吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含んでいてもよい。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分は、流動性向上剤(滑剤)であってもよい。流動性向上剤は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る再生方法に供する吸水性樹脂粒子の吸水前の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状又はこれらの形状を有する一次粒子が凝集して形成された形状等であってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の、吸水前の中位粒子径は、例えば、130~800μm、200~850μm、250~700μm、又は300~600μmであってよい。
【0043】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、使用前におけるCRCが10~60g/g程度である吸水性樹脂粒子の再生に好適である。本実施形態に係る再生方法は、さらに、使用前におけるCRCが10~40g/g程度である吸水性樹脂粒子の再生において特に高い再生効果を奏し、使用前と同等又は使用前に近いレベルにまで吸水性樹脂粒子のCRCを回復させることが可能である。
【0044】
本実施形態に係る再生方法に供する、使用前の吸水性樹脂粒子、及び本実施形態に係る再生方法による再生後における吸水性樹脂粒子のCRCは、例えば、10g/g以上、15g/g以上、20g/g以上、又は23g/g以上であってよく、60g/g以下、50g/g以下、40g/g以下、35g/g以下、又は30g/g以下であってよい。
【0045】
本実施形態に係る再生方法は、例えば、使用前における2.07kPaの荷重下での生理食塩水の吸水量(以下、単に「荷重下吸水量」ともいう。)が、15~50mL/g程度である吸水性樹脂粒子の再生に好適である。本実施形態に係る再生方法は、さらに、使用前における荷重下吸水量が15~35mL/g程度である吸水性樹脂粒子の再生において特に高い再生効果を奏し、使用前と同等又は使用前に近いレベルにまで吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を回復させることが可能である。
【0046】
本実施形態に係る再生方法に供する吸水性樹脂粒子の、使用前、及び本実施形態に係る再生方法による再生後における荷重下吸水量は、例えば、15mL/g以上、18mL/g以上、又は20mL/g以上であってよく、40mL/g以下、又は35mL/g以下であってよい。
【0047】
本実施形態に係る再生方法により得られる再生後の吸水性樹脂粒子は、使用前の吸水性樹脂粒子と同様の用途、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料、保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料、止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【実施例
【0048】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
[吸水性樹脂粒子の製造]
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gを入れ、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温することにより分散剤を溶解した。形成された溶液を50℃まで冷却した。
【0050】
内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下して75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を加えて溶解することにより、第1段目の水性液を調製した。
【0051】
第1段目の水性液を上記フラスコに添加し、形成された反応液を10分間撹拌した。別途、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを加熱溶解させることにより、界面活性剤溶液を調製した。該界面活性剤溶液を上記フラスコに添加して、撹拌機の回転数を550rpmとして撹拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、上記フラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、重合を60分間行うことにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0052】
別の内容積500mLのビーカーに水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れ、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った。その後、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.090g(0.333ミリモル)、及び内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0117g(0.067ミリモル)を加えて溶解することにより、第2段目の水性液を調製した。
【0053】
撹拌機の回転数を1000rpmとして撹拌しながら、上記フラスコ系内を25℃に冷却した後、第2段目の水性液の全量を、第1段目の重合スラリー液に添加した。系内を窒素で30分間置換した後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合反応を60分間行うことにより、含水ゲル状重合体を得た。
【0054】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを撹拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、247.9gの水を系外へ抜き出した。その後、上記フラスコに表面架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間保持した。
【0055】
その後、n-ヘプタン及び水を125℃にて蒸発させて乾燥させることによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させ、重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合することにより、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を230.0g得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は354μmであった。
【0056】
[使用済み吸水性樹脂粒子モデルの作製]
500mLのビーカーに、JAYCO人工尿500gを量り取った。人工尿をマグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて600rpmで撹拌させながら、上記製造例にて作製した吸水性樹脂粒子2.0gを、ママコが発生しないように人工尿中に分散させた。60分間撹拌を継続し、吸水性樹脂粒子を十分に膨潤させた。目開き75μmのJIS標準篩を用いて、ビーカーの内容物をろ過した。取り出された膨潤ゲルが載った篩を、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で30分間放置することによって余剰の水分を除去することにより、人工尿吸収膨潤ゲル(膨潤した吸水性樹脂粒子)122.0gを得た。この膨潤ゲルを、使用済み吸水性樹脂粒子のモデルとして使用した。
【0057】
用いた人工尿の組成は以下のとおりである。
塩化カルシウム二水和物 0.025%
リン酸水素二アンモニウム 0.015%
塩化マグネシウム六水和物 0.0496%
リン酸二水素アンモニウム 0.085%
塩化カリウム 0.2%
硫酸ナトリウム 0.2%
残部:蒸留水
【0058】
<実施例1>
(熱水処理)
還流冷却器、及び、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。上記フラスコ内に、上記人工尿吸収膨潤ゲル90.0g及びイオン交換水1000gを充填し、600rpmで撹拌しながら120℃のオイルバスに浸漬し加熱した。上記フラスコの内温が100℃に到達した時点から1時間撹拌することで、該膨潤ゲルを洗浄した。洗浄後の膨潤ゲルを目開き75μmのJIS標準篩を用いて濾別した。取り出された膨潤ゲルが載った篩を、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾けたまま30分間放置することにより、洗浄後の膨潤ゲルから余剰の水分を除去して、熱水処理後の膨潤ゲルを220.0g得た。
【0059】
(親水性有機溶媒処理)
以下の親水性有機溶媒処理は、温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行った。1000mLのビーカーにメタノールを279.5g量り取った。マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いてメタノールを600rpmで撹拌させながら、熱水処理後の膨潤ゲル215.0gをメタノールに分散させた。30分間メタノールの撹拌を継続することにより、膨潤ゲルを洗浄及び脱水した。目開き75μmのJIS標準篩を用いて濾別することにより、メタノール処理後のゲルを得た。取り出されたゲルが載った篩を、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態でドラフト装置内に30分間放置することにより、余剰の水分及びメタノールを除去し、1回目メタノール処理後のゲルを7.6g得た。
【0060】
1000mLのビーカーにメタノールを279.5g量り取り、上述の1回目メタノール処理と同様にして、1回目メタノール処理後のゲル7.4gをメタノールによって再度処理し、2回目メタノール処理後のゲルを5.6g得た。
【0061】
1000mLのビーカーにメタノールを279.5g量り取り、上述の1回目メタノール処理と同様にして、2回目メタノール処理後のゲル5.4gをメタノールによって更に処理し、3回目メタノール処理後のゲルを5.3g得た。
【0062】
(乾燥)
還流冷却器、冷却器、分流管、及び、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。上記フラスコ内に、3回目メタノール処理後のゲル5.0g及びn-ヘプタン400gを充填した。その後、125℃の油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水とメタノールとの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流させながら、上記フラスコの内温が98℃になるまで系外へ水を抜き出した。その後、125℃での加熱によりn-ヘプタン、メタノール及び水を留去して、再生吸水性樹脂粒子1.1gを得た。
【0063】
<比較例1>
実施例1と同様にして人工尿吸収膨潤ゲルの熱水処理を行い、熱水処理後の膨潤ゲルを219.2g得た。還流冷却器、冷却器、分流管、及び、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。上記フラスコ内に、上記熱水処理後の膨潤ゲル110.0g及びn-ヘプタン400gを充填した。その後、125℃の油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水とメタノールの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流させながら、上記フラスコの内温が98℃になるまで系外へ水を抜き出した。その後、125℃での加熱によりn-ヘプタン、メタノール及び水を留去して、再生吸水性樹脂粒子0.6gを得た。
【0064】
<比較例2>
1000mLのビーカーにメタノールを116.0g量り取った。マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いてメタノールを600rpmで撹拌させながら、人工尿吸収膨潤ゲル90.0gをメタノールに分散させた。30分間撹拌を継続することにより、該膨潤ゲルをメタノールによって洗浄及び脱水した。目開き75μmのJIS標準篩を用いて、メタノール処理後のゲルを濾別した。取り出されたゲルが載った篩を、水平に対して約30度の傾斜角となるように傾け、その状態で30分間放置することにより、余剰の水分及びメタノールを除去した。1回目メタノール処理後のゲルを22.2g得た。
【0065】
1000mLのビーカーにメタノールを116.0g量り取り、比較例2における1回目メタノール処理と同様にして、1回目メタノール処理後のゲル22.0gをメタノールによって再度処理し、2回目のメタノール処理後のゲルを11.6g得た。
【0066】
1000mLのビーカーにメタノールを116.0g量り取り、比較例2における1回目メタノール処理と同様にして、2回目メタノール処理後のゲル11.4gをメタノールによって更に処理し、3回目メタノール処理後のゲルを11.2g得た。
【0067】
還流冷却器、冷却器、分流管、及び、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段有する撹拌翼を備えた内径110mm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。上記フラスコ内に、3回目メタノール処理後のゲル11.0g及びn-ヘプタン400gを充填した。その後、125℃の油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水とメタノールの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流させながら、上記フラスコの内温が98℃になるまで系外へ水を抜き出した。その後、125℃での加熱によりn-ヘプタン、メタノール及び水を留去して、再生吸水性樹脂粒子1.5gを得た。
【0068】
<評価>
以下の方法により、得られた再生吸水性樹脂粒子について、CRC及び荷重下吸水量を測定した。また、上記製造例で得られた吸水性樹脂粒子(吸水前の吸水性樹脂粒子)について、同様にCRC及び荷重下吸水量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
<CRC測定方法>
EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に、吸水性樹脂粒子のCRCを下記の手順で測定した。測定は、温度25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で行った。
【0070】
60mm×170mmの大きさの不織布(製品名:ヒートパックMWA-18、日本製紙パピリア株式会社製)を長手方向に半分に折ることで60mm×85mmの大きさに調整した。長手方向に延びる両辺のそれぞれにおいて不織布同士をヒートシールで圧着することにより60mm×85mmの不織布バッグを作製した(幅5mmの圧着部を長手方向に沿って両辺に形成した)。不織布バッグの内部に吸水性樹脂粒子を0.2g精秤し収容した。その後、短手方向に延びる残りの一辺をヒートシールで圧着することにより不織布バッグを閉じた。
【0071】
不織布バッグが折り重ならない状態で、ステンレス製バット(240mm×320mm×45mm)に収容された生理食塩水1000g上に不織布バッグを浮かべることにより、不織布バッグの全体を完全に湿らせた。不織布バッグを生理食塩水に投入してから1分後にスパチュラにて不織布バッグを生理食塩水に浸漬することにより、ゲルが収容された不織布バッグを得た。
【0072】
不織布バッグを生理食塩水に投入してから30分後(浮かべた時間1分、及び、浸漬時間29分の合計)に生理食塩水の中から不織布バッグを取り出した。そして、遠心分離機(株式会社コクサン製、型番:H-122)に不織布バッグを入れた。遠心分離機における遠心力が250Gに到達した後、3分間不織布バッグの脱水を行った。脱水後、ゲルの質量を含む不織布バッグの質量Maを秤量した。吸水性樹脂粒子を収容することなく不織布バッグに対して上述の操作と同様の操作を施し、不織布バッグの質量Mbを測定した。下記式に基づきCRCを算出した。Mcは、測定に用いた吸水性樹脂粒子の質量0.2gの精秤値である。結果を表1に示す。
CRC[g/g] = {(Ma-Mb)-Mc}/Mc
【0073】
<荷重下吸水量>
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量を、25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で、図1に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部71、導管72、測定台73、及び、測定台73上に置かれた測定部74から構成される。ビュレット部71は、鉛直方向に伸びるビュレット71aと、ビュレット71aの上端に配置されたゴム栓71bと、ビュレット71aの下端に配置されたコック71cと、コック71cの近傍において一端がビュレット71a内に伸びる空気導入管71dと、空気導入管71dの他端側に配置されたコック71eとを有している。導管72は、ビュレット部71と測定台73との間に取り付けられている。導管72の内径は6mmである。測定台73の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管72が連結されている。測定部74は、円筒74a(アクリル樹脂(プレキシグラス)製)と、円筒74aの底部に接着されたナイロンメッシュ74bと、重り74cとを有している。円筒74aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ74bの目開きは75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ74b上に測定対象の吸水性樹脂粒子75が均一に撒布される。重り74cの直径は19mmであり、重り74cの質量は59.8gである。重り74cは、吸水性樹脂粒子75上に置かれ、吸水性樹脂粒子75に対して2.07kPaの荷重を加えることができる。装置Yのビュレット71a内には生理食塩水が目盛りのある所まで充填されており、コック71cの穴、導管72の内部、及び測定台73の中央の穴までは食塩水で充填されている。
【0074】
測定装置Yの円筒74aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子75を入れた後、重り74cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット71aの内部に供給されるため、ビュレット71aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット71aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されている。生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット71aの目盛りVaと、吸水開始から60分後のビュレット71aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下吸水量(2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量)を算出した。
荷重下吸水量[mL/g]=(Vb-Va)/0.1
【0075】
<乾燥減量>
吸水性樹脂粒子の乾燥減量を以下の方法で測定した。吸水性樹脂粒子約0.3gを、あらかじめ恒量(W3(g))としたアルミホイルケース(8号)にとり、その合計質量W4(g)を精秤した。精秤された粉体を、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)で2時間乾燥させた。粉体をデシケーター中で放冷した後、アルミホイルケース及び吸水性樹脂粒子の合計質量W5(g)を乾燥質量として測定した。以下の式から、吸水性樹脂粒子の乾燥減量を算出した。
乾燥減量(質量%)=[{(W4-W3)-(W5-W3)}/(W4-W3)]×100
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1で得られた再生吸水性樹脂粒子の吸水性能は、吸水前の粒子と同等にまで回復していた。また、実施例1で得られた再生吸水性樹脂粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、外観は吸水前の粒子と判別できない程度に回復していた。
【0078】
一方、比較例で得られた再生吸水性樹脂粒子は、吸水前の粒子と比較して、吸水性能に一部劣化が見られた。また、比較例1の再生吸水性樹脂粒子を走査型電子顕微鏡で観察したところ、吸水性樹脂粒子を構成する球状の各粒子が潰れた形状をしていた。
【符号の説明】
【0079】
71…ビュレット部、71a…ビュレット、71b…ゴム栓、71c…コック、71d…空気導入管、71e…コック、72…導管、73…測定台、74…測定部、74a…円筒、74b…ナイロンメッシュ、74c…重り、75…吸水性樹脂粒子、Y…測定装置。
図1