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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】蒸発源、成膜装置及び成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20240620BHJP
【FI】
C23C14/24 A
C23C14/24 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022014703
(22)【出願日】2022-02-02
(65)【公開番号】P2023112784
(43)【公開日】2023-08-15
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 由季
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-117114(JP,A)
【文献】特開2020-002443(JP,A)
【文献】特開2014-077193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に移動しながら基板に成膜する蒸発源であって、
成膜材料を収容する第1材料室と、
第1連通部によって前記第1材料室と連通し、前記第1材料室に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を拡散して、複数のノズルから噴射する第1拡散室と、
成膜材料を収容する第2材料室と、
第2連通部によって前記第2材料室と連通し、前記第2材料室に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を拡散して、複数のノズルから噴射する第2拡散室と、
を備え、
前記第1拡散室と前記第2拡散室は、前記第1方向に交差する第2方向に並んでおり、
前記第1材料室と前記第2材料室との間に、断熱機能を有する隔壁として、間隔を空けて前記第1材料室側と前記第2材料室側にそれぞれ第1隔壁と第2隔壁が設けられており、
前記第1隔壁と前記第2隔壁との間に、前記第1隔壁及び前記第2隔壁に設けられる通路に冷却液を送るための配管の一部が配される配置スペースが設けられていることを特徴とする蒸発源。
【請求項2】
前記第1方向の幅よりも前記第2方向の幅が広いことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源。
【請求項3】
前記配置スペースに、電気配線の一部が配されており、
前記配置スペースを塞ぐ蓋部が前記第1隔壁と前記第2隔壁に連結するように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の蒸発源。
【請求項4】
前記第1拡散室に設けられる前記複数のノズルと前記第2拡散室に設けられる前記複数のノズルから噴射される材料によって基板に形成される薄膜の膜厚分布が一様となるように、各ノズルの配置と傾きが設定されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一
つに記載の蒸発源。
【請求項5】
前記第1拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第2拡散室に最も近い位置に配置されたノズルと、前記第2拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第1拡散室に最も近い位置に配置されたノズルとの間隔は、380mm以上420mm以下であることを特徴とする請求項に記載の蒸発源。
【請求項6】
前記第1拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第2拡散室に最も近い位置に配置されたノズルの鉛直方向に対する前記第2方向の傾きは5度以下であり、前記第2拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第1拡散室に最も近い位置に配置されたノズルの鉛直方向に対する前記第2方向の傾きは5度以下であることを特徴とする請求項4または5に記載の蒸発源。
【請求項7】
前記第1拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第2拡散室から最も遠い位置に配置されたノズルは、噴射させる材料の出口側の先端が前記第2拡散室から離れる方向に傾いており、前記第2拡散室に設けられた前記複数のノズルのうち前記第1拡散室から最も遠い位置に配置されたノズルは、噴射させる材料の出口側の先端が前記第1拡散室から離れる方向に傾いていることを特徴とする請求項4,5または6に記載の蒸発源。
【請求項8】
前記第1拡散室と前記第2拡散室は、それぞれ前記第2方向の中央で位置決めされて、前記第2方向のうち両方向への熱膨張伸縮に伴う伸縮が可能に構成されており、
成膜時の環境温度での前記第1拡散室と前記第2拡散室の熱膨張の状態に基づいて、前記複数のノズルのそれぞれの配置と傾きが設定されていることを特徴とする請求項4,5,6または7に記載の蒸発源。
【請求項9】
断熱機能を有するケースに、前記第1材料室と前記第1拡散室と前記第2材料室と前記第2拡散室が収容されており、
前記第1材料室、前記第1拡散室、前記第2材料室、及び前記第2拡散室と、前記ケースの内壁面との間に、成膜材料を加熱する加熱体が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれか一つに記載の蒸発源。
【請求項10】
前記ケースの内壁面と前記加熱体との間に、熱を反射するリフレクタが設けられており、
前記配管は、前記ケースに設けられる通路に冷却液を送ることを特徴とする請求項に記載の蒸発源。
【請求項11】
前記第2方向の両側に、基板に形成される膜の膜厚を測定するための膜厚モニタがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の蒸発源。
【請求項12】
前記第1拡散室から噴射される材料によって基板に形成される膜の膜厚を測定するための第1膜厚モニタと、
前記第2拡散室から噴射される材料によって基板に形成される膜の膜厚を測定するための第2膜厚モニタと、
を備え、
前記第1膜厚モニタの検出結果に基づいて前記第1材料室から噴射される材料による成膜制御が行われ、かつ前記第2膜厚モニタの検出結果に基づいて前記第2材料室から噴射される材料による成膜制御が行われることを特徴とする請求項1~10のいずれか一つに記載の蒸発源。
【請求項13】
チャンバと、
前記チャンバ内に配される請求項1~12のいずれか一つに記載の蒸発源と、
前記蒸発源を移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項14】
請求項13に記載の成膜装置を用いて基板に成膜する、
ことを特徴とする成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発源成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に薄膜を形成する成膜装置においては、蒸発源を移動させながら成膜する技術が知られている。この技術によれば、大判の基板に対しても好適に薄膜を形成することができる。しかしながら、蒸発源の移動方向に交差(一般的には直交)する方向における蒸発源の幅が広いと、蒸発源に収容される成膜材料の加熱分布や気化された材料の圧力分布が不均一になり、成膜特性(膜厚等)にバラツキが生じ易くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-2443号公報
【文献】特開2015-67865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、成膜特性のバラツキを抑制可能な蒸発源成膜装置及び成膜方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0006】
すなわち、本発明の蒸発源は、
第1方向に移動しながら基板に成膜する蒸発源であって、
成膜材料を収容する第1材料室と、
第1連通部によって前記第1材料室と連通し、前記第1材料室に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を拡散して、複数のノズルから噴射する第1拡散室と、
成膜材料を収容する第2材料室と、
第2連通部によって前記第2材料室と連通し、前記第2材料室に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を拡散して、複数のノズルから噴射する第2拡散室と、
を備え、
前記第1拡散室と前記第2拡散室は、前記第1方向に交差する第2方向に並んでおり、
前記第1材料室と前記第2材料室との間に、断熱機能を有する隔壁として、間隔を空けて前記第1材料室側と前記第2材料室側にそれぞれ第1隔壁と第2隔壁が設けられており、
前記第1隔壁と前記第2隔壁との間に、前記第1隔壁及び前記第2隔壁に設けられる通路に冷却液を送るための配管の一部が配される配置スペースが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、成膜特性のバラツキを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る成膜装置の概略構成図である。
図2】本発明の実施例に係る成膜装置の概略構成図である。
図3】本発明の実施例1に係る蒸発源の模式的断面図である。
図4】拡散室内における気化された材料の圧力分布の説明図である。
図5】拡散室に設けられるノズルと成膜される膜厚との関係を示す図である。
図6】本発明の実施例2に係る蒸発源の模式的断面図である。
図7】本発明の実施例3に係る蒸発源の模式的断面図である。
図8】本発明の実施例4に係る蒸発源の模式的断面図である。
図9】本発明の実施例4(変形例1)に係る蒸発源の模式的断面図である。
図10】本発明の実施例4(変形例2)に係る蒸発源の模式的断面図である。
図11】本発明の実施例5に係る蒸発源の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。以下の説明においては、蒸発源の移動方向を第1方向Xとし、第1方向Xに交差する方向を第2方向Yとする。なお、各実施例において、より具体的には、第2方向Yは、第1方向Xに直交し、かつ、成膜する基板の成膜面に平行な方向である。
【0010】
(実施例1)
図1図5を参照して、本発明の実施例1に係る蒸発源と、この蒸発源を備える成膜装置及び成膜方法について説明する。
【0011】
<成膜装置>
図1及び図2を参照して、本実施例に係る成膜装置10について説明する。図1は本発明の実施例に係る成膜装置の概略構成図であり、正面側から見た構成を簡略的に示したものである。図2は本発明の実施例に係る成膜装置の概略構成図であり、上方から見た構成を簡略的に示したものである。なお、図1及び図2においては、主要な構成を透視して示している。
【0012】
本実施例に係る成膜装置10は、真空蒸着を行う蒸着装置である。成膜装置10は、チャンバ100と、チャンバ100の内部を真空(減圧雰囲気)にするための真空ポンプ200と、チャンバ100の内部に配される蒸発源300とを備えている。蒸発源300は、チャンバ100の内部に配された基板Sに蒸着させる成膜材料を加熱することで、当該材料を蒸発又は昇華させる役割を担っている。この蒸発源300によって蒸発または昇華された材料が、基板Sに付着することで、基板Sに薄膜が形成される。
【0013】
また、成膜装置10は、蒸発源300に電気や冷却液を供給するための大気ボックス410と、大気ボックス410の移動に伴って従動する第1大気アーム420及び第2大気アーム430とを備えている。大気ボックス410は、その内部が空洞により構成されており、第1大気アーム420及び第2大気アーム430の内部を通じて、チャンバ100の外部と連通するように構成されている。そのため、大気ボックス210の内部は大気に曝された状態となっている。このような構成が採用されることで、チャンバ100の外部に設けられた電源に接続される配線と、チャンバ100の外部に設けられた冷却液供給装置に接続される冷却管を蒸発源300に接続することができる。
【0014】
第1大気アーム420及び第2大気アーム430は、移動する大気ボックス410の空洞内に、配線及び冷却管を配するために設けられている。すなわち、第1大気アーム420及び第2大気アーム430は、その内部が空洞により構成され、かつ、大気ボックス420の移動に追随して動作するように構成されている。より具体的には、第2アーム430は、その一端がチャンバ100の底板に対して回動自在に構成されている。そして、第1大気アーム420は、その一端が第2大気アーム430の他端に対して回動自在に軸支され、その他端が大気ボックス410に対して回動自在に軸支されている。
【0015】
また、成膜装置10には、蒸発源300を移動させる移動機構が設けられている。本実
施例に係る移動機構は、一対のガイドレール520と、大気ボックス410を貫く回転軸の両側に設けられる一対のギア510と、回転軸を回転させるモータなどの駆動源(不図示)とを備えている。一対のガイドレール520には、一対のギア510とそれぞれ噛み合うラックが設けられている。以上の構成により、駆動源によって回転軸を回転させることで、一対のガイドレール520に沿って、大気ボックス410と共に蒸発源300を往復移動させることができる。
【0016】
以上のように、蒸発源300は、一対のガイドレール520に案内されるように構成されており、第1方向Xに直線的に往復移動するように構成されている。そして、蒸発源300を第1方向Xに移動させながら成膜材料を蒸発または昇華させることで、基板Sに薄膜を形成することができる。なお、蒸発源300の往路及び復路のうちの少なくともいずれか一方の移動中に成膜を行うことができる。
【0017】
以上のように、本実施例における移動機構においては、いわゆるラックアンドピニオン機構を採用する場合を示した。ただし、大気ボックス410及び蒸発源300を往復移動させるための移動機構については、ラックアンドピニオン機構に限定されることはなく、ボールねじ機構など、各種公知技術を採用し得る。
【0018】
また、本実施例に係る成膜装置10においては、蒸発源300における第2方向Yの両側に、基板Sに形成される膜の膜厚を測定するための膜厚モニタ600がそれぞれ設けられている。膜厚モニタ600は、膜厚モニタ600に形成される膜の膜厚を測定してその膜厚を基に基板Sに形成される膜の膜厚を予測することにより、基板Sに形成される膜の膜厚を測定するものである。膜厚モニタ600により測定される膜厚に基づいて、成膜量を制御する(例えば、蒸発源300における成膜材料の加熱量を制御する)ことによって、基板Sに形成する薄膜の厚みを所望の厚みにすることができる。
【0019】
<蒸発源>
図3を参照して、本発明の実施例1に係る蒸発源300について説明する。図3は本発明の実施例1に係る蒸発源の模式的断面図であり、蒸発源300を第1方向Xに垂直な面で切断した断面を簡略的に示したものである。
【0020】
蒸発源300は各種部材を収容するケース310と、ケース310の内部に設けられる第1材料室321及び第2材料室322と、同じくケース310の内部に設けられる第1拡散室331及び第2拡散室332とを備えている。
【0021】
ケース310は、底板部分と側板部分とを有するケース本体311と、ケース本体311の上方の開口部を塞ぐ蓋部312とを備えている。ケース本体311は、断熱機能を備えている。例えば、ケース本体311の内部に通路(流路)を形成しておき、この通路に冷却水などの冷却液を流すことで、断熱効果を発揮させることができる。このケース本体311に、第1材料室321及び第2材料室322と、第1拡散室331及び第2拡散室332が収容されている。
【0022】
第1材料室321及び第2材料室322は、いずれも成膜材料を収容するために用いられる室である。第1拡散室331は、第1材料室321に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を複数のノズル331bに至る前に拡散させて圧力分布を整え、複数のノズル331bへの流入量を調整するための室である。第1材料室321の天井部に設けられた貫通孔321aと、第1拡散室331の底板部に設けられた貫通孔331aとによって、第1連通部が形成されている。この第1連通部によって、第1材料室321と第1拡散室331とが連通することで、第1材料室321の室内で蒸発又は昇華した材料は、第1拡散室331の室内に導かれて拡散され複数のノズル331bからチャ
ンバ100へ噴射される。第2拡散室332についても、第2材料室322に収容された成膜材料が加熱されることで蒸発又は昇華した材料を複数のノズル332bに至る前に拡散させて圧力分布を整え、複数のノズル332bへの流入量を調整ための室である。そして、第2材料室322に設けられた貫通孔322aと、第2拡散室332に設けられた貫通孔332aとによって、第2連通部が形成されている。この第2連通部によって、第2材料室322と第2拡散室332とが連通することで、第2材料室322の室内で蒸発又は昇華した材料は、第2拡散室332の室内に導かれて拡散され複数のノズル332bからチャンバ100へ噴射される。
【0023】
そして、第1材料室321と第2材料室322は第2方向Yに並んでおり、第1拡散室331と第2拡散室332も第2方向Yに並んでいる。本実施例に係る蒸発源300は、第1方向Xの幅よりも、第2方向Yの幅が広い(図2参照)。従って、第1材料室321と第2材料室322は蒸発源300の長手方向に並んでおり、第1拡散室331と第2拡散室332も蒸発源300の長手方向に並んでいるということもできる。
【0024】
また、蒸発源300においては、第1材料室321、第1拡散室331、第2材料室322、及び第2拡散室332と、ケース本体311の内壁面との間に、成膜材料を加熱する加熱体340が設けられている。なお、特に図示はしないが、紙面手前側と奥側にも加熱体340が設けられている。すなわち、加熱体340は各室の外壁面を取り囲むように設けられている。加熱体340としては、シースヒータなど、通電により発熱する部材を好適に適用できる。この加熱体340によって、第1材料室321及び第2材料室322にそれぞれ収容された成膜材料が加熱されて蒸発又は昇華する。また、第1拡散室331及び第2拡散室332の室内において、蒸発又は昇華した材料が凝固してしまうことを抑制することができる。
【0025】
更に、蒸発源300においては、ケース本体311の内壁面と加熱体340との間に、熱を反射するリフレクタ350が設けられている。なお、特に図示はしないが、紙面手前側と奥側にもリフレクタ350が設けられている。また、第1拡散室331の外壁面と蓋部313との間、及び第2拡散室332の外壁面と蓋部313との間にもリフレクタ350が設けられている。以上の構成により、加熱体340からの熱がケース310に伝わることを抑制できるため、各室を効率的に加熱することができ、かつケース310の外部に熱が逃げることを抑制することができる。
【0026】
<本実施例に係る蒸発源及び成膜装置の優れた点>
本実施例に係る蒸発源300においては、第1拡散室331と第2拡散室332が、第2方向Yに並ぶように構成されている。これにより、単一の拡散室により構成される蒸発源を採用した場合に比べて、蒸発源300に収容される成膜材料の加熱分布、及び気化された材料の圧力分布をより均一化することができる。これにより、成膜特性のバラツキを抑制することができる。従って、成膜する基板Sの大判化に伴って、蒸発源300の長手方向の長さを長くする必要が生じても、成膜特性のバラツキを抑制することができる。
【0027】
ここで、気化された材料の圧力分布の均一化について、図4を参照して、より詳しく説明する。図4は拡散室内における気化された材料の圧力分布の説明図であり、蒸発源を簡略的に示した模式的断面図である。上述のように、蒸発源は、材料室320と、拡散室330と、材料室320と拡散室330とを連通する連通部330aとを備えている。また、拡散室330の上部には複数のノズル335が設けられている。
【0028】
基板Sに形成される薄膜の膜厚は、レート(単位時間当たりの成膜厚さ(成膜速度))により決まる。複数のノズルにおいて、各々のノズルにより形成される薄膜のレートが不均一の場合、基板Sに形成される薄膜の膜厚分布が異なってしまう。この膜厚分布を一様
にするためには、各々のノズルにより形成される薄膜のレートをより均一にする必要がある。また、品質を向上させ、汎用性を高めるためには、広いレート範囲で膜厚分布を一様にすることができることが望ましい。
【0029】
材料室320において気化された材料は、連通部330aを通って、拡散室330へと流れていく。拡散室330における材料の圧力分布は、主として、拡散室330の室内の形状寸法と、連通部330aの寸法及び配置と、複数のノズル335の形状寸法及び配置に依存する。図4に示す例においては、拡散室330の長手方向の中央付近の圧力が最も高く、長手方向の両側に向かうにつれて圧力が小さくなる。圧力の高い付近に設けられたノズルから噴射される材料の量は多くなり、圧力が低い付近に設けられたノズルから噴射される材料の量は少なくなるため、中央付近と両側付近の圧力差を小さくするのが望ましい。
【0030】
本願発明者は次のような知見を得ている。レートを高くするために圧力を高くするほど圧力差は小さくなり、レートを低くするために圧力を低くするほど圧力差が大きくなる。また、拡散室330の長手方向の幅Wが長いほど、圧力差が大きくなり易く、拡散室330の流路面積(室内の高さHや幅により決まる)が狭いほど圧力差が大きくなり易い。
【0031】
そのため、大判の基板Sに対して、単一の拡散室により構成される蒸発源を用いて、広いレート範囲で膜厚分布を一様にするのは難しい。また、膜厚分布を一様にすることが可能なレートの範囲が狭くなるため、汎用性も低い。これに伴い、複数種類の蒸発源が必要となる。
【0032】
これに対して、本実施例においては、上記の通り、第1拡散室331と第2拡散室332が第2方向Yに並ぶように構成したことで、個々の拡散室内において圧力差が大きくなってしまうことを抑制することができる。従って、大判の基板Sに対しても、広いレート範囲で膜厚分布を一様にすることができる。また、第1拡散室331と第2拡散室332に気化された材料を供給するための材料室(第1材料室321及び第2材料室322)が別々に設けられているので、各拡散室に供給される材料の量が異なってしまうことも抑制することができる。
【0033】
上記の通り、第1拡散室331に設けられる複数のノズル331bと第2拡散室332に設けられる複数のノズル332bから噴射される材料によって基板Sに形成される薄膜の膜厚分布が一様となるように、各ノズルの配置と傾きが設定される。
【0034】
図5を参照して、複数のノズルの配置及び傾きについて、より詳細に説明する。図5は拡散室に設けられるノズルと成膜される膜厚との関係を示す図である。図5の(a)から(d)においては、それぞれ、下方に第1拡散室Pと第2拡散室Qを簡略的に示しており、上方に第2方向Yの位置に対する基板Sに形成される膜厚の厚さを示している。なお、便宜上、膜厚の分布を分かり易くするために、縮尺については第2方向Yに対する膜厚の厚みを強調するようにしている。
【0035】
図5(a)は、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルPNと第2拡散室Qに設けられた複数のノズルQNが、いずれも鉛直方向に対して傾きがないように設けられる場合を示している。ノズルが鉛直方向に対して傾いていない場合には、基板Sに形成される薄膜については、ノズルの真上の位置で最も膜厚が厚くなり、真上の位置から離れるにつれて膜厚は徐々に薄くなる。複数のノズルPN,QNの配置を適宜設定することによって、各ノズルによって形成される膜厚を一様にすることができ、膜厚全体の厚みを一定にすることが可能となる。第1拡散室Pと第2拡散室Qの第2方向Yの幅や所望のレート範囲等にも因るが、複数のノズルについて、隣り合う間隔を全て等しくしたり、連通部に近いほど隣
り合うノズルの間隔を広くして、連通部から離れるにつれて隣り合うノズルの間隔を狭くすることで、膜厚全体の厚みを一定にすることができる。
【0036】
図5(b)は、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルと第2拡散室Qに設けられた複数のノズルのうち、外側のノズルが鉛直方向に対して外側に傾くように設けられる場合を示している。すなわち、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルのうち第2拡散室Qから最も遠い位置に配置されたノズルPN1と2,3番目に遠い位置に配置されたノズルは、噴射させる材料の出口側の先端が第2拡散室Qから離れる方向に傾いている。また、第2拡散室Qに設けられた複数のノズルのうち第1拡散室Pから最も遠い位置に配置されたノズルQN1と2,3番目に遠い位置に配置されたノズルは、噴射させる材料の出口側の先端が第1拡散室Pから離れる方向に傾いている。
【0037】
ノズルが鉛直方向に対して傾いている場合には、基板Sに形成される薄膜については、ノズルの真上の位置よりもノズル先端の傾いた方向にずれた位置で最も膜厚が厚くなり、当該部分から離れるに従って膜厚は徐々に薄くなる。そのため、各ノズルによって形成される膜厚を一様にして、膜厚全体の厚みを一定にするためには、傾けるノズルについては、内側に配置する必要がある。つまり、図5(a)に示す構成に比べて、ノズルPN1等については、第2拡散室Q側に配置させ、ノズルQN1等については、第1拡散室P側に配置させる必要がある。従って、第1拡散室P及び第2拡散室Qの第2方向Yの幅を、図5(a)に示す構成に比べて短くすることができる。これに伴い、拡散室内において、気化された材料の圧力分布をより一層均一化することができる。また、蒸発源をより小型化することも可能となる。
【0038】
図5(c)は、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルと第2拡散室Qに設けられた複数のノズルを、全て鉛直方向に対して外側に傾くように設けられる場合を示している。このような構成を採用すれば、図5(b)に示す構成と同様に、第1拡散室P及び第2拡散室Qの第2方向Yの幅を短くすることができる。しかしながら、このような構成を採用した場合には、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルのうち第2拡散室Qに最も近い位置に配置されたノズルPN2と、第2拡散室Qに設けられた複数のノズルのうち第1拡散室Pに最も近い位置に配置されたノズルQN2との距離を短くする必要がある。この距離は、ノズルの傾きを大きくするほど、短くしなければならない。従って、第1拡散室Pと第2拡散室Qとの間の間隔を狭くする必要がある。そのため、断熱効果を図る目的や後述のように配線等の配置スペースを設けたい場合には、当該間隔が制限されてしまうため、図5(c)の構成を採用することができないこともある。
【0039】
図5(d)は、図5(b)に示す構成において、最も内側に配されたノズルを鉛直方向に対して内側に傾くように設けられる場合を示している。すなわち、図5(b)に示す構成において、第1拡散室Pに設けられた複数のノズルのうち第2拡散室Qに最も近い位置に配置されたノズルPN2は、噴射させる材料の出口側の先端が第2拡散室Qに近づく方向に傾いている。また、第2拡散室Qに設けられた複数のノズルのうち第1拡散室Pに最も近い位置に配置されたノズルQN2は、噴射させる材料の出口側の先端が第1拡散室Pに近づく方向に傾いている。
【0040】
以上のような構成を採用することで、図5(b)に示す構成に比べて、第1拡散室P及び第2拡散室Qの第2方向Yの幅をより一層短くすることができる。しかしながら、ノズルPN2とノズルQN2の傾きを大きくすると、ノズルPN2から噴射される材料がノズルQN2を汚し、ノズルQN2から噴射される材料がノズルPN2を汚してしまう。従って、これらのノズルの傾きは、ノズルが汚されない範囲にするのが望ましい。
【0041】
以上を考慮すると共に、経験則及び実験結果によれば、第1拡散室Pに設けられた複数
のノズルのうち第2拡散室Qに最も近い位置に配置されたノズルPN2と、第2拡散室Qに設けられた複数のノズルのうち第1拡散室Pに最も近い位置に配置されたノズルQN2との間隔は、380mm以上420mm以下の範囲で設定するとよい。
【0042】
また、上記のノズルPN2の鉛直方向に対する第2方向Yの傾きは5度以下にするとよい。同様に、上記のノズルQN2の鉛直方向に対する第2方向Yの傾きは5度以下にするとよい。
【0043】
ここで、拡散室は環境温度に応じて、特に長手方向である第2方向Yに熱膨張伸縮によって伸縮する。そこで、第1拡散室Pと第2拡散室Qは、それぞれ第2方向Yの中央で位置決めされて、第2方向Yの両方の方向への熱膨張伸縮に伴う伸縮が可能となるように各々構成されるのが望ましい。その上で、成膜時の環境温度での第1拡散室Pと第2拡散室Qの熱膨張伸縮の状態に基づいて、複数のノズルのそれぞれの配置と傾きを設定するとよい。なお、ノズルとリフレクタ350との間には、これらが突き当たってしまわないようにクリアランスを設ける必要がある。このクリアランスは、拡散室の熱膨張収縮の量を考慮して設定しなければならない。そのため、拡散室を位置決めした位置から離れた位置に設けられるノズルほど、クリアランスを大きく設定しなければならない。上記の通り、拡散室を第2方向Yの中央の位置で位置決めすることで、一方の側面で位置決めした場合に比べて、中央から離れた位置のノズルについてもクリアランスを最小限にすることが可能となる。これにより、ノズルが冷えてしまうことを抑制することができ、凝固した材料がノズルに付着してしまうことを抑制することができる。
【0044】
また、第2方向Yにおける加熱分布及び気化された材料の圧力分布の均一化を図るために、蒸発源300は、第2方向Yの幅の中心の面に対して対称構造とすると好適である。特に、ケース本体311の形状及び寸法、各室の内壁面の形状及び寸法、複数のノズル331bと複数のノズル332bの配置、第1連通部と第2連通部の配置、加熱体340の配置、及びリフレクタ350の配置は、上記面に対して対称にするのが望ましい。
【0045】
更に、上記の通り、本実施例に係る成膜装置10においては、蒸発源300における第2方向Yの両側に、膜厚モニタ600がそれぞれ設けられている。一方の膜厚モニタ(第1膜厚モニタ)は、第1拡散室331から噴射される材料によって基板Sに形成される膜の膜厚を測定するために用いられる。また、他方の膜厚モニタ(第2膜厚モニタ)は、第2拡散室332から噴射される材料によって基板Sに形成される膜の膜厚を測定するために用いられる。そして、第1膜厚モニタの検出結果に基づいて第1拡散室311から噴射される材料による成膜制御が行われ、かつ第2膜厚モニタの検出結果に基づいて第2拡散室332から噴射される材料による成膜制御が行われると好適である。このような制御を行うことで、より確実に、膜厚全体の厚みを一定にすることができる。
【0046】
以上の本実施例に係る蒸発源及び成膜装置の優れた点において説明した内容については、以下の各実施例においても同様である。
【0047】
(実施例2)
図6には、本発明の実施例2が示されている。本実施例においては、第1連通部と第2連通部の配置が実施例1と異なる場合の構成を示す。その他の構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0048】
図6は本発明の実施例2に係る蒸発源の模式的断面図であり、蒸発源300Aを第1方向Xに垂直な面で切断した断面を簡略的に示したものである。
【0049】
上記実施例1で説明した通り、蒸発源300においては、第1材料室321と第1拡散室331とを連通させる第1連通部と、第2材料室322と第2拡散室332とを連通させる第2連通部とが設けられている。成膜材料の加熱分布や気化された材料の圧力分布を均一化して、成膜特性のバラツキを効果的に抑制するために、これら第1連通部と第2連通部を配置する最適な位置は、加熱体340の配置構成などによって変わり得る。
【0050】
上記実施例1においては、第1連通部と第2連通部は、蒸発源300における第2方向Yの幅方向の中心に片寄った位置に設けられている。これに対して、本実施例に係る蒸発源300においては、第1連通部は第1材料室321における第2方向Yの幅方向の中心に設けられ、第2連通部は第2材料室322における第2方向Yの幅方向の中心に設けられている。
【0051】
以上のように構成される本実施例に係る蒸発源300Aにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(実施例3)
図7には、本発明の実施例3が示されている。本実施例においては、ケースに関する構成が実施例1と異なる場合の構成を示す。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0053】
図7は本発明の実施例3に係る蒸発源の模式的断面図であり、蒸発源300Bを第1方向Xに垂直な面で切断した断面を簡略的に示したものである。
【0054】
本実施例においては、第1材料室321と第2材料室322との間に、断熱機能を有する隔壁311aが設けられている。なお、本実施例においては、この隔壁311aは、第1拡散室331と第2拡散室332との間も遮るように設けられている。また、この隔壁311aは、ケース310Bにおけるケース本体311に一体的に設けられている。隔壁311aに断熱機能を持たせるための構成は、ケース本体311において説明した通りである。
【0055】
そして、隔壁311aと第1材料室321及び第1拡散室331との間には加熱体340が設けられ、加熱体340と隔壁311aとの間にはリフレクタ350が設けられている。同様に、隔壁311aと第2材料室322及び第2拡散室332との間には加熱体340が設けられ、加熱体340と隔壁311aとの間にはリフレクタ350が設けられている。
【0056】
以上のように構成される本実施例に係る蒸発源300Bにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、第1材料室321及び第1拡散室331は、四方の側面から加熱され、かつ、第2材料室322及び第2拡散室332も、四方の側面から加熱される。従って、蒸発源300Bにおける第2方向Yの長さが長い場合に、効率的に成膜材料を加熱することができる。なお、図7においては、第1連通部は第1材料室321における第2方向Yの幅方向の中心に設けられ、第2連通部は第2材料室322における第2方向Yの幅方向の中心に設けられる場合を示している。しかしながら、第1連通部と第2連通部の位置は、上記の通り、適宜設定することができる。
【0057】
(実施例4)
図8図10には、本発明の実施例4が示されている。本実施例においては、ケースに関する構成が実施例1と異なる場合の構成を示す。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0058】
図8図10は本発明の実施例4に係る蒸発源の模式的断面図であり、それぞれ、蒸発源300C,C1,C2を第1方向Xに垂直な面で切断した断面を簡略的に示したものである。
【0059】
本実施例においても、実施例3と同様に、第1材料室321と第2材料室322との間に、断熱機能を有する隔壁が設けられている。ただし、本実施例においては、間隔を空けて第1材料室321側と第2材料室322側にそれぞれ第1隔壁311bと第2隔壁311cが設けられている。本実施例においても、これら第1隔壁311b及び第2隔壁311cは、第1拡散室331と第2拡散室332との間も遮るように設けられている。また、これら第1隔壁311b及び第2隔壁311cは、ケース310Cにおけるケース本体311に一体的に設けられている。
【0060】
そして、第1隔壁311bと第1材料室321及び第1拡散室331との間には加熱体340が設けられ、加熱体340と第1隔壁311bとの間にはリフレクタ350が設けられている。同様に、第2隔壁311cと第2材料室322及び第2拡散室332との間には加熱体340が設けられ、加熱体340と第2隔壁311cとの間にはリフレクタ350が設けられている。
【0061】
以上のように構成される本実施例に係る蒸発源300Cにおいても、上記実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例の場合には、実施例3と同様に、第1材料室321及び第1拡散室331は、四方の側面から加熱され、かつ、第2材料室322及び第1拡散室332は、四方の側面から加熱される。従って、蒸発源300Cにおける第2方向Yの長さが長い場合に、効率的に成膜材料を加熱することができる。
【0062】
なお、図8においては、第1連通部と第2連通部が、蒸発源300Cにおける第2方向Yの幅方向の中心に片寄った位置に設けられる場合の構成を示している。しかしながら、第1連通部と第2連通部の最適な配置位置が、加熱体340の配置構成などにより変わることは上述の通りである。図9には、第1連通部が第1材料室321における第2方向Yの幅方向の中心に設けられ、第2連通部が第2材料室322における第2方向Yの幅方向の中心に設けられる蒸発源300C1(変形例1)について示している。また、図10には、第1連通部と第2連通部が、蒸発源300C2における第2方向Yの幅方向の両側に片寄った位置に設けられる蒸発源300C2(変形例2)について示している。
【0063】
また、本実施例に係る蒸発源300C,300C1,300C2においては、第1隔壁311bと第2隔壁311cとの間の空間を、電気配線の一部等が配される配置スペースとして利用することもできる。例えば、加熱体340を加熱するために電気を供給するための電気配線620の一部や、ケース本体311、第1隔壁311b及び第2隔壁311cに設けられる通路に冷却液を送るための配管610の一部を、上記の配置スペースに配することができる。なお、図8図10に示すように、第1隔壁311bと第2隔壁311cとの間に形成する配置スペースを塞ぐ蓋部311dを、1隔壁311bと第2隔壁311cに連結するように設けることで、電気配線620や配管610が露出しないようにするのが望ましい。
【0064】
(実施例5)
図11には、本発明の実施例5が示されている。本実施例においては、上記実施例4に示す構成において、ケース、材料室、及び拡散室の構成が異なる場合の構成を示す。基本的な構成および作用については実施例1及び実施例4と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0065】
図11は本発明の実施例5に係る蒸発源の模式的断面図であり、蒸発源300Dを第1方向Xに垂直な面で切断した断面を簡略的に示したものである。
【0066】
上記各実施例においては、材料室の第2方向Yの幅の方が、拡散室の第2方向Yの幅よりも広く、両者の間に段差が設けられる構成を示した。これに対応して、上記各実施例においては、ケース本体311の側面にも段差が設けられる構成が採用されている。
【0067】
これに対し、本実施例に係る蒸発源300Dの場合には、材料室の第2方向Yの幅と、拡散室の第2方向Yの幅が等しく構成されており、両者の間には段差が設けられない。また、これに伴い、本実施例に係るケース310Dにおいては、ケース本体311の側面には段差が設けられない。
【0068】
また、本実施例の場合には、一つの筐体の内部に、連通部としての開口部361を有する中板360を設けることによって、第1材料室321Xと第1拡散室331X、及び第2材料室322Xと第2拡散室332Xを形成する構成を採用している。
【0069】
以上のような構成を採用することで、他の実施例の場合に比べて、蒸発源の製造をより容易にすることが可能となる。
【0070】
なお、連通部の最適な配置位置が、加熱体340の配置構成などにより変わることは上述の通りであり、開口部361の配置については、図11に示す構成に限定されることはない。
【0071】
また、本実施例で示した構成(材料室と拡散室との間に段差がない構成)については、実施例4に限らず、実施例1~3にも応用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10…成膜装置 100…チャンバ 200…真空ポンプ 300,300A,300B,300C,300C1,300C2,300D…蒸発源 310,310B,310C,310D…ケース 311…ケース本体 311a…隔壁 311b…第1隔壁 311c…第2隔壁 311d…蓋部 312……蓋部 321a,322a,331a,332a…貫通孔 331b,332b…ノズル 340…加熱体 350…リフレクタ
410…大気ボックス 420…第1大気アーム 430…第2大気アーム 510…ギア 520…ガイドレール 600…膜厚モニタ 610…配管 620…電気配線 S…基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11