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特許7507208構造物の損傷診断装置及び損傷診断プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】構造物の損傷診断装置及び損傷診断プログラム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240620BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20240620BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
E04G23/02 A ESW
G06Q50/08
G01N21/88 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022156265
(22)【出願日】2022-09-29
(65)【公開番号】P2024049806
(43)【公開日】2024-04-10
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】松本 巧
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085546(JP,A)
【文献】特開2020-154465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
G06Q 50/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
教師データとして少なくとも、対象構造物の点検や補修、補強工事以前に行われた様々な構造物の点検や補修、補強工事に関して複数記録された構造物の竣工図や補修図の3次元データと補修箇所や点検箇所の画像データ、及び補修、補強時の損傷状況や補修計画を保存する教師データサーバと、
点検・補修を行う対象構造物を撮影する撮影手段と、前記対象構造物に関する特定情報を入力する入力手段と、前記教師データや前記対象構造物の画像データ及び前記特定情報を少なくとも一時的に保存可能とすると共に、前記教師データと前記対象構造物の画像データ及び前記特定情報に基づいて、前記対象構造物に関する補修、補強の要否や補修、補強計画を提案するプログラムとを記憶した記憶手段と、前記プログラムを稼働させる演算手段と、前記演算手段が前記プログラムを稼働させる事により提案された前記対象構造物に関する補修、補強の要否や補修計画を視認可能に表示する出力手段と、を有する補修、補強計画作成部と、
を備えることを特徴とする構造物の損傷診断装置。
【請求項2】
前記特定情報には少なくとも、前記対象構造物が存在する地域や対象構造物の竣工、補修、補強に関する3次元データ、経過年数、塗装情報が含まれ、
前記プログラムは、前記教師データから形態や損傷状況が近似する構造物を検出することで、補修、補強の要否判定や、前記補修、補強計画の提案を行うことを特徴とする請求項1に記載の構造物の損傷診断装置。
【請求項3】
前記教師データサーバは、複数のサーバや端末から成り立つものであり、
前記補修、補強計画作成部は、ネットワークを介して前記教師データを参照して前記プログラムの教師データとして利用することを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の損傷診断装置。
【請求項4】
前記教師データサーバは、複数のサーバや端末に点在するデータを纏めた統合サーバであり、
前記補修、補強計画作成部は、ネットワークを介して前記統合サーバを参照することで前記教師データを取得し、前記プログラムの教師データとして利用することを特徴とする請求項1または2に記載の構造物の損傷診断装置。
【請求項5】
演算手段を介して稼働され、
教師データサーバ、あるいは記憶手段に記憶された教師データと、撮影手段と入力手段を介して前記記憶手段に保存された対象構造物の画像データ及び特定情報とを読み出す工程と、
前記教師データと前記対象構造物の画像データ及び特定情報とを比較して解析し、前記教師データにおいて補修、補強が行われた損傷状況と一致する割合が所定の範囲を超えている場合に補修、補強が必要であると判定し、所定の割合以下である場合には、補修、補強が不要であると判定する工程と、
前記補修、補強が必要であると判定された場合に、補修、補強の要否判定を行う際に検出された近似する構造の詳細の中から構造物の補修、補強履歴の実例を参照することで、前記対象構造物に関する補修、補強計画の提案をする工程と、を含むことを特徴とする構造物の損傷診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の損傷診断、及び損傷した構造物の補修、補強に係り、特に、定期的な点検や補修、補強に関するデータが蓄積されている公共構造物に好適な損傷診断装置、及び損傷診断プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、本願出願人が特許文献1や特許文献2で提案しているように、マイクロフィルムで保管された構造物の竣工図や改修工事の図面を3次元のデジタルデータへ変換して保存するという技術が普及しつつある。このため、図面の恒久的な保存や、改修の時期や場所の把握、及びそれらの情報の共有化が容易になってきている。また、本願出願人は特許文献3において、保存されている構造物の3次元データに対して、点検時や改修時に撮影した画像を貼り付けることで、該当箇所の経時的な変化を容易に把握することができるようにする事を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6834089号公報
【文献】特許第6935033号公報
【文献】特許第7003352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、デジタルデータ化することで、恒久的な保存が可能となり、かつ改修の時期や状態変化をも容易に把握することが可能となった構造物の図面関連データは、データ化、管理の容易性から、そのデータ数は上昇の一途をたどる事が考えられる。しかし、こうして保存されたデータについては、個々の構造物の管理に用いられる事が常であり、ビッグデータとして蓄積された情報を活用する用途が見出されていないという実状がある。
【0005】
そこで本発明では、蓄積された構造物の補修、補強データ等を利用して、他の構造物の補修、補強計画を作成することを可能とする損傷診断装置、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る構造物の損傷診断装置は、少なくとも、構造物の竣工図や補修図の3次元データと補修箇所や点検箇所の画像データ、及び補修、補強時の損傷状況や補修計画を複数記録した教師データを保存する教師データサーバと、点検・補修を行う対象構造物を撮影する撮影手段と、前記対象構造物に関する特定情報を入力する入力手段と、前記教師データや前記対象構造物の画像データ及び前記特定情報を少なくとも一時的に保存可能とすると共に、前記教師データと前記対象構造物の画像データ及び前記特定情報に基づいて、前記対象構造物に関する補修、補強の要否や補修、補強計画を提案するプログラムとを記憶した記憶手段と、前記プログラムを稼働させる演算手段と、前記演算手段が前記プログラムを稼働させる事により提案された前記対象構造物に関する補修、補強の要否や補修計画を視認可能に表示する出力手段と、を有する補修、補強計画作成部と、を備えることを特徴とする構造物の損傷診断装置。
【0007】
また、上記特徴を有する構造物の損傷診断装置における前記特定情報には少なくとも、前記対象構造物が存在する地域や対象構造物の竣工、補修、補強に関する3次元データ、経過年数、塗装情報が含まれ、前記プログラムは、前記教師データから形態や損傷状況が近似する構造物を検出することで、補修、補強の要否判定や、前記補修、補強計画の提案を行うものであると良い。このような特徴を有する事によれば、補修、補強の要否判定や、補修、補強計画を提案する際の精度を向上させることが可能となる。
【0008】
また、上記特徴を有する構造物の損傷診断装置における前記教師データサーバは、複数のサーバや端末から成り立つものであり、前記補修、補強計画作成部は、ネットワークを介して前記教師データを参照して前記プログラムの教師データとして利用するものとしても良い。このような特徴を有する事によれば、既存のシステムを利用して教師データサーバを構築することが可能となる。
【0009】
さらに、上記特徴を有する構造物の損傷診断装置における前記教師データサーバは、複数のサーバや端末に点在するデータを纏めた統合サーバであり、前記補修、補強計画作成部は、ネットワークを介して前記統合サーバを参照することで前記教師データを取得し、前記プログラムの教師データとして利用するものとしても良い。このような特徴を有する事によれば、教師データの一元管理が可能となり、利便性が向上する。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明に係る構造物の損傷診断プログラムは、演算手段を介して稼働され、教師データサーバ、あるいは記憶手段に記憶された教師データと、撮影手段と入力手段を介して前記記憶手段に保存された対象構造物の画像データ及び特定情報とを読み出す工程と、前記教師データと前記対象構造物の画像データ及び特定情報とを比較して解析し、前記教師データにおいて補修、補強が行われた損傷状況と一致する割合が所定の範囲を超えている場合に補修、補強が必要であると判定し、所定の割合以下である場合には、補修、補強が不要であると判定する工程と、前記補修、補強が必要であると判定された場合に、補修、補強の要否判定を行う際に検出された近似する構造の詳細の中から構造物の補修、補強履歴の実例を参照することで、前記対象構造物に関する補修、補強計画の提案をする工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記のような特徴を有する構造物の損傷診断装置、及びプログラムによれば、蓄積された構造物の補修、補強データ等を利用して、他の構造物の補修、補強計画を作成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る構造物の損傷診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】教師データの一例を構成する橋梁点検時に撮影された損傷箇所の画像データである。
図3】教師データの一例を構成する橋梁の損傷箇所の補修状態を示す画像データである。
図4】実施形態に係る構造物の損傷診断装置による補修、補強計画の提案対象となる橋梁を点検した際に撮影された損傷箇所の画像データである。
図5】実施形態に係る構造物の損傷診断装置により提案された補修、補強計画に従って補修が成された橋梁の画像データである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の構造物の損傷診断装置、及びプログラムに係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、その効果を奏する限りにおいて、構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0014】
[構成]
まず、図1を参照して、本実施形態に係る構造物の損傷診断装置の構成について説明する。本実施形態に係る構造物の損傷診断装置(以下、単に診断装置10と称す)は、少なくとも教師データサーバ12と補修、補強計画作成端末14とを備えることにより成立する。教師データサーバ12は、教師データ保存するサーバである。ここで、教師データとは、少なくとも、構造物の竣工図や補修図の3次元データと補修箇所や点検箇所の画像データ、及び補修、補強時の損傷状況や補修、補強計画を複数記録することで構成されるデータ群のことを言う。また、補修、補強計画には、構造物が存在する地域や構造物が竣工された年月日、補修、補強年月日、塗装情報、荷重情報(耐荷重等に関する情報)などが含まれる。また、教師データサーバ12は、1つのサーバにより構成されるものに限られず、複数のサーバや端末に点在するデータ群により構成されるものであっても良いし、複数のサーバや端末に点在するデータを統合したクラウドサーバのようなものであっても良い。
【0015】
補修、補強計画作成端末14は、少なくとも、撮影手段16と、入力手段18、記憶手段20、演算手段22、及び出力手段24と、を有するものであれば良い。撮影手段16は、点検・補修、補強を行う対象構造物を撮影するための要素であれば良い。このため、ここでいう撮影手段16とは、点検等を行う作業者自らが撮影する機能を有するもののみならず、ドローンに付帯されたカメラなど、撮影位置や角度を任意に変化させることのできるものを含む。
【0016】
入力手段18は、対象構造物に関する特定情報を入力するための要素であり、キーボードやマウスの他、タッチパネル等を含むものとする。なお、ここでいう特定情報には、少なくとも、対象構造物が存在する地域や、対象構造物の竣工、補修、補強に関する3次元データ、竣工や補修、補強を行ってからの経過年数、使用されている塗料などの塗装情報を含む。また、耐荷重性を必要とする構造物の場合には荷重情報等が含まれる。
【0017】
記憶手段20は、撮影手段16を介して得られた対象構造物の画像データや、入力手段を介して入力された情報(対象構造物に関する特定情報等)、教師データサーバ12を参照して取得して得られる教師データの一部を少なくとも一時的に保存したり、詳細を後述するプログラムを記憶するための手段であり、具体的には、メモリや、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などであれば良い。
【0018】
ここでプログラムとは、教師データと、対象構造物の画像データ、及び特定データに基づいて、対象構造物に対する補修、補強の要否判定や、補修、補強が必要であると判定した場合における補修、補強計画を提案するためのものである。補修、補強の要否判定や、補修、補強計画の提案は、既存のアルゴリズムにより構築された人工知能(AI)により成されるようにすれば良い。補修、補強の要否判定を行う際には、画像データや特定情報と教師データとを比較して、近似する構造の詳細や、構造物の補修、補強履歴、補修、補強を行う前の損傷状況を検出、解析する。そして、対象構造物の画像データや特定情報から解析した損傷状況が、教師データにおいて補修、補強が行われた損傷状況と一致する割合が所定の範囲を越えている場合には、補修、補強が必要であると判定し、所定の割合以下である場合には、補修、補強が不要であると判定するといったものであれば良い。
【0019】
また、補修、補強計画の提案については、例えば補修、補強の要否判定を行う際に検出された近似する構造の詳細の中から構造物の補修、補強履歴の実例を参照して立案するようにすれば良い。具体的には、対象構造物の損傷箇所の位置やサイズ、状態を画像データや3次元データ等に基づいてその特徴を認識し、特徴が近似する損傷箇所を有する構造物を検出し、補修、補強履歴のデータを参酌する。そして、検出された構造物の損傷箇所の特徴の近似率が高い場合には、検出された構造物の補修、補強履歴を援用して補修、補強計画の提案を行うようにすれば良い。一方、損傷箇所の特徴の近似率が低い(所定の割合以下である)場合には、複数の構造物管理者の補修、補強履歴のデータを統合して補修、補強計画の提案を行うようにしても良い。
【0020】
演算手段22は、記憶手段20に記録されたプログラムを稼働させる事の他、撮影手段16を介した画像データの取り込みや、入力手段18や出力手段24等の機能を発揮させるための各種処理を行うための要素である。
【0021】
出力手段24は、入力手段18を介した入力情報や、撮影手段16を介して取り込んだ画像データ、及びプログラムによる補修の要否結果、並びに提案された補修計画の内容を視認可能に表示するための要素である。具体的には、ディスプレイなどの表示手段の他、プリンタなどの印刷手段も含むものとする。
【0022】
なお、図1や上記説明では、補修、補強計画作成端末14は、撮影手段16や入力手段18、記憶手段20、演算手段22、及び出力手段24を1つの筐体に包含された要素であるように示しているが、実施形態に係る補修、補強計画作成端末14は、1つの筐体に撮影手段16や入力手段18、記憶手段20、演算手段22、及び出力手段24を含むもの(例えば高機能型形態電話(いわゆるスマートフォン))の他、各機能を有する要素をそれぞれ個別の端末とし、これを集合させたもの(補修計画作成部)であっても良い。
【0023】
[作用]
次に、上記のような診断装置10を利用した構造物の補修、補強計画提案について図2から図5を参照して説明する。なお、以下の説明では、対象構造物として橋梁を例に挙げて説明する。
【0024】
最初に、補修、補強計画提案に用いられる教師データがどのようにして蓄積されるのかについて説明する。教師データは、対象構造物の点検や補修、補強工事以前に行われた様々な構造物の点検や補修、補強工事に関して保存されてきた情報である。具体的には、ある自治体の担当者が図2に示すような橋梁の点検を行ったところ、支承付近のウェブに損傷(図2中のハッチング部分)が見つかったとする。このような場合にはまず、点検を行った際に撮影した画像データ(図2に相当)が、対象構造物である橋梁における竣工図の3次元データに関連づけて保存される。
【0025】
次に、画像データや実際の点検から得られる情報に基づいて得られる損傷箇所の所見が、特定情報の一部として入力される。図2に示す例では、「損傷箇所の一部には孔(図2中の格子状細目ハッチング部分)が開いており、孔の周囲には腐食(図2中の斜線ハッチング部分)が見受けられた。腐食部分には、板厚の減少が見受けられた。」といったものとなる。なお、竣工図の3次元データと画像データにより特定される損傷箇所の位置関係はテクスチャマッピングの技法などにより関連付けられることで、点検、損傷箇所が構造物のどの部位に当たるかを容易に把握することができるようになる。
【0026】
そして、このような点検情報に対して、次のような補修、補強情報が関連付けて記録される。これにより、上記のような損傷(画像データにより判別できるもの)が生じた場合には、補修、補強が必要になると判定することができるようになる。そして、ある自治体では、図2に示すような橋梁の損傷を図3に示すような手順(補修、補強計画)により補修、補強し、教師データの一部としてこれが記録される。具体的には、「(1)ウェブにおける腐食部分をケレンする。(2)ウェブにL字型の当て板(厚さ〇mm)を当て、ケレンした範囲を覆う。(3)当て板とウェブに貫通孔を開け、高力ボルトでウェブと当て板を連結固定する。」といった補修、補強情報である。なお、このような補修、補強計画には、当て板の図面(3次元データ)や、取付位置の寸法などを関連付けるようにすることができる。これにより、教師データを参照することで、上記のような損傷箇所に対する補修、補強計画を導き出す事が可能となる。教師データは、このような過去の構造物の竣工情報や補修、補強情報が複数集まる事により成立することとなる。
【0027】
次に、実施形態に係る診断装置10を利用した補修、補強計画提案の例について説明する。上記教師データの作成を行った自治体とは別の自治体(他の自治体)の担当者が、ある橋梁の点検を行ったところ、図4に示すような画像が撮影された。撮影された画像データは、対象構造物の特定情報と共に記憶手段に一時保存され、プログラムの稼働により教師データとの比較が行われる。なお、教師データと、対象構造物の画像データ及び特定情報との比較は、教師データサーバ12、あるいは記憶手段20から図示しないメモリへの読み出しが成される事で実行される。
【0028】
構造物の名称や3次元データの近似性、画像データを解析した結果の近似性から、図2に示す橋梁の補修、補強例が教師データの1つとして検出されると、図4に示す橋梁には補修、補強が必要であると判定される(補修、補強の要否判定)。なお、補修、補強の要否判定は上述したように、対象構造物の画像データや特定情報と教師データとを比較して、近似する構造の詳細や、構造物の補修、補強履歴、補修、補強を行う前の損傷状況を検出、解析する。そして、対象構造物の画像データや特定情報から解析した損傷状況が、教師データにおいて補修、補強が行われた損傷状況と一致する割合が所定の範囲を越えている場合には、補修、補強が必要であると判定し、所定の割合以下である場合には、補修、補強が不要であると判定するといったものであれば良い。また、特定情報には、点検時の実測により得られた損傷箇所の数値データや、担当者の所見などを含むようにしても良い。教師データとの照合率を向上させることができると共に、後に教師データとして利用する際の特定情報として役立てる事ができるからである。
【0029】
対象構造物について、補修、補強が必要であると判定された場合、教師データに基づく補修、補強計画の提案が成される。図4に示す例の場合、図2に示す教師データが近似するため、図3の補修、補強情報に基づいて補修、補強計画が提案される。すなわち、「(1)ウェブにおける腐食部分をケレンする。(2)ウェブにL字型の当て板(厚さ〇mm)を当て、ケレンした範囲を覆う。(3)当て板とウェブに貫通孔を開け、高力ボルトでウェブと当て板を連結固定する。」といった補修、補強計画である。なお、提案された補修、補強計画は、出力手段に表示され、必要に応じて印刷等されることとなる。そして、提案された補修、補強計画に従って補修、補強が成されると、図4のような損傷が生じていた橋梁は、図5に示すように補修されることとなる。
【0030】
[効果]
上記のような診断装置10によれば、蓄積された構造物の補修データ等を利用して、他の構造物の補修、補強計画を作成することが可能となる。これにより、構造物に関する補修、補強の要否判断や補修、補強計画の作成に要する労力を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
対象構造物に関する補修、補強の要否判定や、提案する補修、補強計画の精度を向上させるためには教師データの数を増やす必要がある。このため、国土交通省、各自治体や高速道路会社などが保管している教師データを互いに閲覧可能としたり、国土交通省や大手シンクタンク等が一元管理するようにすると良い。本願における教師データサーバ12は、このようなデータ共有化システムを含むものとする。
【0032】
また、診断装置10により提案される補修、補強計画は、完全なものである必要は無く、補修、補強計画を立てる上での参考となるものであれば良い。補修、補強計画を立てる際の労力を軽減することができるからである。
【符号の説明】
【0033】
10………診断装置、12………教師データサーバ、14………補修、補強計画作成端末、16………撮影手段、18………入力手段、20………記憶手段、22………演算手段、24………出力手段。
図1
図2
図3
図4
図5