(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-19
(45)【発行日】2024-06-27
(54)【発明の名称】基板のガス放出を管理するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240620BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20240620BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20240620BHJP
【FI】
H01L21/31 A
H01L21/312 A
G01N1/22 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192705
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2022524939の分割
【原出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-12-12
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スピューラー, マシュー
(72)【発明者】
【氏名】イウ, トンミン
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087475(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123028(WO,A1)
【文献】特開2003-209103(JP,A)
【文献】特表2011-523774(JP,A)
【文献】特開2004-014555(JP,A)
【文献】特開2008-210852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/312
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理する方法であって、
1つ以上の動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内で、
スピンオンカーボン膜を含む基板を処理することと、
有機化合物センサを使用して前記熱処理チャンバの排出物のセンサ読み取り値からセンサデータを生成することと、
前記センサデータに基づいて前記排出物の少なくとも1つの特性を決定することと、
前記少なくとも1つの特性に基づいて、前記基板を処理するために前記1つ以上の動作パラメータを調整することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の動作パラメータを調整することが、
前記熱処理チャンバをポンプで排気することと、
前記熱処理チャンバをパージすることと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上の動作パラメータが、前記熱処理チャンバのチャンバ圧力、前記熱処理チャンバ内での前記基板の処理時間、排気ガス流量、前記熱処理チャンバに導入されるガス種、前記熱処理チャンバ内へのガス流量、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの特性が、有機化合物の濃度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板を処理することが、前記基板をアニールすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
方法を実行するようプログラム化されたシステムであって、
前記システムのメモリに格納されたアルゴリズムを含み、前記アルゴリズムが、複数の命令を含み、前記命令が、プロセッサによって実行されると、
1つ以上の動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内で、
スピンオンカーボン膜を含む基板を処理することと、
有機化合物センサを使用して前記熱処理チャンバの排出物のセンサ読み取り値からセンサデータを生成することと、
前記センサデータに基づいて前記排出物の少なくとも1つの特性を決定することと、
前記少なくとも1つの特性に基づいて、前記基板を処理するための前記1つ以上の動作パラメータを調整することと、
を含む方法を引き起こす、システム。
【請求項7】
前記1つ以上の動作パラメータが、前記熱処理チャンバのチャンバ圧力、前記熱処理チャンバ内での前記基板の処理時間、ガス放出の合間の時間間隔、排気ガス流量、前記有機化合物センサの前記センサデータに基づいて調整された、前記熱処理チャンバに導入されるガス種、前記熱処理チャンバ内へのガス流量、又はこれらの組合せを含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの特性が、有機化合物の濃度を含む、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの特性が、揮発性有機化合物の濃度を含む、請求項
8に記載のシステム。
【請求項10】
前記基板を処理することが、前記基板をアニールすることを含む、請求項6に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、半導体素子を製造するための装置及び方法に関する。より詳細には、本開示は、基板のガス放出を管理するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の熱プロセスにおいて、熱処理されている基板から、材料がガスとなって放出されうる。一般に、ガスとなって放出された材料は、熱処理チャンバの処理空間から周期的に排出される。しかしながら、ガスとなって放出された材料は、基板上に堆積する可能性があり、最終的に基板上に形成されるマイクロ電子デバイスの故障を招きうる。故障の防止においては、典型的に、エンドオブライン(end-of-line)のデバイスの性能及び歩留まりに依拠して、将来の実験のためにガス放出の頻度を決定又は調整する。エンドオブラインの性能への依拠により、最適に処理するために製造中に動作パラメータを調整することに関する情報は提供されない。したがって、製造中に基板のガス放出を管理するためのシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
一実施形態において、処理空間を画定する熱処理チャンバと、熱処理チャンバに接続されたガスラインと、排気導管によって熱処理チャンバに接続された排気ポンプと、排気導管に接続された排気流コントローラと、排気導管に接続されたサンプリングラインと、を備えた、基板処理装置が提供される。サンプリングラインが、有機化合物センサ及びサンプリング流量制御弁を含む。有機化合物センサが、制御モジュールと通信可能である。
【0004】
他の実施形態において、動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内で基板を処理することを含む、基板を処理する方法が提供される。センサデータが、有機化合物センサを使用して、熱処理チャンバの排出物のセンサ読み取り値から収集されうる。排出物の少なくとも1つの特性が、センサデータに基づいて決定されうる。
【0005】
他の実施形態において、システムのメモリに格納されたアルゴリズムであって、アルゴリズムが、複数の命令を含み、命令が、プロセッサによって実行されると、
動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内で基板を処理することと、
有機化合物センサを使用して熱処理チャンバの排出物のセンサ読み取り値からセンサデータを生成することと、
センサデータに基づいて排出物の少なくとも1つの特性を決定することと、
を含む方法を引き起こす、アルゴリズムが提供される。
【0006】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約されている本開示のより詳細な説明が、実施形態を参照することによって得られ、それらの実施形態の一部が添付図面に示される。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることから、添付の図面が本開示の典型的な実施形態のみを例示しており、したがって本開示の範囲を限定すると見做すべきでないことに注意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の特定の態様に係る、有機化合物センサを有する例示的な熱処理装置を概略的に示す。
【
図2】本開示の特定の態様に係る、基板のガス放出を管理するための例示的なシステムのブロック図である。
【
図3】本開示の特定の態様に係る、ベースラインのセンサ情報を更新することにより基板のガス放出を管理するための例示的なシステムのブロック図である。
【
図4】本開示の特定の態様に係る、1つの有機化合物センサを有する例示的なデュアル熱処理装置を概略的に示す。
【
図5】本開示の特定の態様に係る、2つの有機化合物センサを有する例示的なデュアル熱処理装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解が容易になるよう、可能な場合には、各図に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号を使用した。一実施形態の構成要素及び特徴は、さらなる記載がなくとも、他の実施形態に有益に組み込まれうると想定されている。
【0009】
半導体基板の熱処理は一般的に、様々な目的の半導体製造において利用されている。様々な種類の熱処理には、急速熱処理、レーザ処理、均熱処理(soak annealing)が含まれうる。熱処理中に利用される温度が、基板及びその上に堆積する材料の様々な特性を変えうる。例えば、ドーパントの拡散、結晶材料の変形、及び表面変形は、熱処理によって実現されうる処理の種類の一部にすぎない。
【0010】
基板の熱処理から生じるデバイス欠陥を監視するための従来のアプローチは、典型的に、エンドオブラインのデバイスの性能及び歩留まりに依存している。より高いレベルの欠陥性は、基板メトロロジにおける粒子測定によって検出可能でありうる。処理の終了時に欠陥のレベルを検出すると、基板及び後続の基板上の欠陥を軽減するために行われるインプロセス(in-process)調整が可能ではない。このような従来のアプローチとは対照的に、本発明者らは、チャンバに組み込まれたセンサの使用によって、エンドオブライン欠陥性測定を使用せずに、熱処理中に有機化合物のガス放出のリアルタイムフィードバックが提供されることを見出した。さらに、センサからのこのようなリアルタイムフィードバックの使用によって、プロセスの設計及び制御を可能とすることができる。特に、プロセス設計は、プロセスにおける各段階についての動作パラメータを含み、当該動作パラメータのそれぞれが、いくつかの異なる方法を使用して決定された特性に基づいて調整されうる。動作パラメータには、とりわけ、ガス種、ガス流量、時間、圧力、温度、プラズマ有り(plasma on)又はプラズマ無し(plasma off)、ランプレート、基板の位置のうちの1つ以上が含まれる。本発明者らはさらに、スループットが高く、欠陥性が低く、再現性が高い、アニールチャンバといった熱処理チャンバの動作が、センサによって可能となることを見出した。いくつかの実施形態において、動作パラメータは、センサ読み取り値に基づいて、或る特性の所定のセンサ読み取り値をサンプル読み取り値が下回るまで動作パラメータを調整することによって、調整される。
【0011】
他の実施例と組み合わせることが可能な一実施例において、センサが、入口サンプリングラインを使用してチャンバからの排気をサンプリングする。他の実施形態と組み合わせることが可能な少なくとも1つの実施形態において、センサは、信号又はセンサデータを制御モジュールに送信する電力及び電気接続部と共に、ハウジング内に含まれている。同実施形態及び他の実施形態において、様々な動作パラメータ及びプロセスの制御を可能にするために、信号がシステムによって処理され、使用される。また、動作パラメータをより良く理解するために後処理に使用可能な情報を開発するために、信号が収集され、使用されうる。センサデータは、プロセスの後に評価されるが、センサデータは、エンドオブライン欠陥率測定値よりも包括的である。というのは、センサデータが、将来の処理後に改良するための、プロセス全体にわたる洞察力を提供するからである。これとは対照的に、エンドオフライン測定値は、単に、最終的なデバイス上に欠陥が存在するという情報を提供するに過ぎない。
【0012】
本開示の特定の態様が、熱処理中の基板のガス放出を管理するためのシステム及び方法を提供する。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の装置は、処理空間を画定する熱処理チャンバを含み、熱処理チャンバは、処理空間にガスを伝達するために熱処理チャンバに接続されたガスラインを有する。熱処理チャンバはまた、排気導管によって熱処理チャンバに接続された排気ポンプと、排気導管に接続されたサンプリングラインと、を含む。サンプリングラインは、制御モジュールに通信可能に接続された有機化合物センサ及びサンプリング流量制御弁を含む。
【0013】
図1は、本開示の特定の態様に係る例示的な熱処理装置100を概略的に示している。熱処理装置100は、ガス源102と、排気ポンプ114と、有機化合物センサ120と、を備える。熱処理装置100は、処理空間108を画定する熱処理チャンバ128(アニールチャンバなど)を含む。側壁132及び天井130が、高い処理温度に耐えるのに適した材料から形成される。幾つかの実施形態において、熱処理チャンバ128が、ステンレス鋼、アルミニウム、及び/又は他の適切な金属材料から形成されうる。
【0014】
処理空間108は、その中に配置された基板に対して、約700oC~約1200oC、例えば約850oC~約1100oCなどの約400oCを超える温度に基板を加熱することによって熱処理を行うよう構成されている。基板支持体126が、処理空間108内に配置されており、熱処理中に基板を、真空チャック又は静電チャックといった様々な方法によって、その上に保持するよう構成されている。基板はまた、リング又はピンといった様々な他の装置によって、及び/又は他の方法によって、基板支持体126上に配置され及び/又は基板支持体126上で保持されうる。基板支持体126はまた、その上に配置された基板の加熱を促進するために、コイルといった抵抗加熱装置を含みうる。ランプからの電磁エネルギーといった他の加熱方法を、抵抗加熱装置と組み合わせて又は抵抗加熱装置の代わりに使用して、基板を加熱することが可能である。
【0015】
ガスライン107は、任意の適切な形状の導管であり、石英材料、セラミック材料、及び/又は金属材料から形成されうる。ガスライン107への損傷、ガスライン107のエッチング、又はガスライン107上の堆積を低減又は防止するために、ガスライン107の表面に様々な材料でコーティングすることも可能である。
【0016】
ガス源102が、ガスライン107を介して1つ以上のプロセスガスを熱処理チャンバ128に供給する。ガス源102は、アルゴン、酸素、窒素、ヘリウム、及び、三フッ化窒素などのフッ素含有ガスといったプロセスガスを伝達する。プロセスガスは、個別に又は組み合わせて、及び/又は、順次又は同時に、熱処理チャンバ128に伝達されうる。ガス制御弁104がガスライン107に接続されており、ガスライン107を介したガス源102から熱処理チャンバ128へのガス流を制御する。いくつかの実施形態において、2つ以上のガス源(例えば、102)が、処理空間108と流体連結していてよい。
【0017】
稼働中に、材料が、熱処理された基板からガスとして放出され、ガスとして放出された材料が、熱処理チャンバ128(例えば、側壁132、天井130)、構成要素の表面上に堆積し、蓄積し、及び/又は基板上に残留物を形成しうる。堆積物が熱処理チャンバ128、構成要素の表面上に蓄積するのを防止するために、及び/又は堆積物を除去するために、熱処理チャンバ128は、ガス源からのガスによってパージされうる。
【0018】
熱処理された基板からガスとして放出された材料、並びに、ガスを介して熱処理チャンバ128の表面から除去された材料が、処理空間108から排気導管109を通過して、排気ポンプ114によって排出される。排気ポンプ114は、ターボポンプとすることができ、排気ポンプは、処理空間108内に減圧環境を作り出すことが可能であり(又は、減圧環境を作り出すよう構成可能であり)、処理空間108からガス及び他の材料を除去することが可能である。
【0019】
基板は、熱処理されたときに揮発性有機化合物を生成する材料を含みうる。いくつかの実施形態において、基板は、スピンオンカーボン(spin-on-carbon)膜、フォトレジスト膜、スピンオン誘電体、スピンオンハードマスク、及びスピンオン反射防止コーティングといった膜を含みうる。上記膜は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエン、及びこれらの組み合わせといった流延溶媒を含みうる。スピンオンカーボン膜は、熱処理されたときにナフタレン及び酢酸エチルといった化合物を生成しうる異なる組成から構成されうる。
【0020】
ガス、任意のプラズマ、揮発性化合物、及び他の材料(総称として「排出物」)が、排気導管109に接続された排出物流量制御弁112を使用して処理空間の排出物の排出物流量を制御することによって、処理空間108から除去される。排出物流量制御弁112は、熱処理チャンバ128に接続された任意の圧力センサ103及び/又は排気導管109を使用することによって、熱処理チャンバ128からの排出物の流量を制御する。制御モジュール116が、任意の圧力センサ103からの信号を監視し、排出物流量制御弁112を操作して、熱処理チャンバ128の圧力及び熱処理チャンバ128から出た排出物の流量を管理する。制御モジュール116は、動作パラメータを制御するために使用される中央処理装置(CPU)144、メモリ140、及び補助回路142を含む。CPU144は、工業環境で使用することが可能な汎用コンピュータプロセッサの任意の形態でありうる。ソフトウェアルーチンが、メモリ140(例えば、遠隔ストレージシステム、ランダムアクセスメモリ、読出専用メモリ、フロッピー、又はハードディスクドライブなど)に、又は他の形態によるデジタルストレージに格納されている。補助回路142が、任意の構成を用いてCPU144に接続されておりキャッシュ、クロック回路、入力/出力システム、電源等を含む。制御モジュール116と、熱処理チャンバ128の様々な構成要素(例えば、コントローラ、センサ、及び弁)と、の間の双方向通信が、
図1に破線で描かれた信号バスとして総称される、数多くの信号ケーブルを介して、無線信号によって、又はこれらの組み合わせによって処理される(
図4及び
図5も参照)。
【0021】
熱処理装置100は、排気導管に接続された排気遮断弁110を含む。排気遮断弁110は、熱処理チャンバ128がガス放出しているときには開放位置にあることができ、熱処理チャンバ128がガス放出していないときには閉止位置にあることができる。排気遮断弁110は、手動で操作することができ、又は制御モジュール116を介するなどして遠隔で操作することができる。いくつかの実施形態において、排気遮断弁110は、熱処理チャンバ128がパージされているときには開放位置にあることができ、排気遮断弁110は、ガスが充填されるときには、熱処理チャンバ128内の圧力を上げるために、閉止位置にあることができる。
【0022】
熱処理装置100は、排気導管109に接続可能なサンプリングライン113を含むことができ、サンプリングライン113は、有機化合物センサ120及びサンプリング流量制御弁122を含みうる。サンプリングラインは、排気導管109の第1の位置に結合された第1のライン端111と、排気導管109の第2の位置に結合された第2のライン端115と、を有しうる。サンプリングライン113は、第1のサンプリング遮断弁118と、第2のサンプリング遮断弁124と、を含みうる。いくつかの実施形態において、第1サンプリング遮断弁118及び第2のサンプリング遮断弁124は、三方弁とすることができる。例えば、第1のサンプリング遮断弁118は、第1のライン端111と排気導管109との合流点に接続された三方弁であってもよく、第2のサンプリング遮断弁124は、第2のライン端115と排気導管109との合流点に接続された三方弁であってよい。いくつかの実施形態において、第1のサンプリング遮断弁118及び第2のサンプリング遮断弁124は、サンプルライン113に接続された二方弁とすることができる。有機化合物センサ120及びサンプリング流量制御弁122は、2つのサンプリング遮断弁118、124の間の位置に、サンプリングライン113に沿って配置されうる。稼働時に、サンプリング遮断弁118、124は、サンプリング中及び有機化合物の監視中には開放位置にあることができ、有機化合物が監視されていないときには閉止位置にあることができる。サンプリング遮断弁118、124は、手動で操作することができ、又は制御モジュール116を介するなどして、遠隔で操作することができる。いくつかの実施形態において、サンプリング中に、排気遮断弁110は閉止位置にあることができ、サンプリング遮断弁は開放位置にあることができる。例えば、サンプリングは、排気遮断弁110が閉止位置にあるとき及び/又は排気遮断弁110が開放位置にあるときといった、アニーリングプロセスの任意の段階に行われうる。有機化合物のサンプリングは、基板の全ての処理の間継続していてよい。
【0023】
サンプリング流量制御弁122及び有機化合物センサ120は、制御モジュール116に通信可能に接続されうる。制御モジュール116は、有機化合物センサ120からの信号を監視し、サンプリング流量制御弁122を操作して、有機化合物センサ120を横切る排出物の流れを管理することが可能である。例えば、サンプリング流量制御弁122は、有機化合物センサ120へのサンプリングライン113内の排出物の流量を調整することによって、有機化合物センサの飽和を防止することが可能である。有機化合物センサ120は、熱処理チャンバ128内で形成された揮発性有機化合物を検出することが可能である。有機化合物センサは、光イオン化検出器(PID:photoionization detector)、残留ガス分析器(RGA:residual gas analyzer)、及び非分散赤外線センサ(NDIR:non-dispersive infrared sensor)からなる群から選択されたセンサでありうる。例えば、有機化合物センサがPIDでありうる。例えば、PIDのランプが、約10.0eVから約10.6eV、例えば10.0eV又は10.5eVのイオン化電位(eV)を有しうる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のシステム、プロセス、及び方法に従って検出されうる排出物中に存在する有機化合物は、アセトン、アルシン、ブタジエン、ベンゼン、クメン、ジメトキシメタン、エチルメルカプタン、硫化水素、メシチルオキシド、メチルエチルケトン、メチルメルカプタン、一酸化窒素、ホスフィン、スチレン、トルエン、塩化ビニル、ナフタレン、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のシステム、プロセス、及び方法に従って検出されうる排出物中に存在する有機化合物は、約8.0eV~約10.5eV、例えば約8.1eV、又は約10.1eVのイオン化電位を有する。
【0024】
本開示のいくつかの態様において、有機化合物センサが、装置と容易に一体化されるような大きさに設定される。いくつかの実施形態において、有機化合物センサが、約10mm~約50mm、例えば約10mm~約20mm、例えば約17.6mmの高さを有しうる。いくつかの実施形態において、有機化合物センサが、約10mm~約50mm、例えば約10mm~約30mm、例えば約20.4mmの直径を有しうる。いくつかの実施形態において、有機化合物センサが、約30グラム未満、例えば約20グラム未満、例えば約10グラム未満、例えば約8グラム未満、例えば約5~約9グラム、例えば約8グラムの重量を有しうる。有機化合物が存在することを検出するために、数多くの装置及び方法が利用可能である。これらの装置は大型で高価である可能性があり、アニーリングシステムといったシステムには容易に組み込まれない。有機化合物センサをシステムに組み込むことで、その情報を使用して処理中に動作パラメータを調整することが可能となる。例えば、センサが無いと、チャンバ(例えば、128)は正常には排気されず、有機化合物が、検出されずにチャンバ内に蓄積する。また、チャンバが排気されるが、有機化合物を除去するのに十分なほどには排気されないということも想定される。センサなしでチャンバを排気するということでは、どれくらいの有機化合物がチャンバ内に蓄積しているのかも分からず、定期的な間隔でチャンバを排気することに依拠しているというには不十分である。チャンバが頻繁に排気され過ぎると、プロセス全体の効率が低下し、損失が生じる可能性がある。しかしながら、チャンバが十分に頻繁に排気されない場合には、品質面の問題が、結果的に、基板製品が製造されて欠陥があることが分かるまではしばしば気付かれない最終的な基板製品を生じさせる可能性がある。有機化合物を検出することが知られている利用可能な検出器は、質量によって強度を測定する能力を有することができ、特定の種の存在を、存在する各種の量といった追加的な組成の詳細事項と共に特定することが可能である。本発明者らは、しばしば大型で高価である上記検出器は、本開示で提供されるシステムの目的のためには必要ではないことを発見した。特に、揮発性有機化合物の全体濃度を検出することが可能な簡素で小型のセンサが、処理チャンバのガス放出の頻度等の動作パラメータを調整するために使用される適切なセンサデータを提供することが可能である。さらに、センサ又は検出器を使用して有機化合物を管理する能力は、酸素センサといった、有機化合物を検出しない他の組成センサを使用しては可能にされない。例えば、有機化合物を検出できない他の組成センサは、漏れについてチャンバを監視するといった他の目的のために、チャンバ内で使用することが可能であるが、本明細書で開示されるような動作パラメータを制御するためには有用ではない。
【0025】
図2は、本開示の特定の態様に係る、基板のガス放出を管理するための例示的なシステムのブロックフロー図である。システムは、様々な動作200を含みうる。これらの動作200は、
動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内の基板を処理すること(202)、
有機化合物センサを使用して熱処理チャンバの排出物のセンサ読み取り値からセンサデータを生成すること(204)、
センサデータに基づいて排出物の少なくとも1つの特性を決定すること(206)、
及び/又は(任意選択的に)
少なくとも1つの特性に基づいて、基板を処理するための動作パラメータを調整すること(208)
のうちの1つ以上を含むことができる。
【0026】
熱処理チャンバ128内で基板を処理することは、アニーリング時間、アニーリング温度、処理空間108に導入されるガス及び任意のプラズマの種類、処理空間108に導入されるガス及び任意のプラズマの流量及び量、熱処理チャンバ128から出た排出物の流量、熱処理チャンバ128の温度、熱処理チャンバ128の圧力、及び/又は各処理条件における時間といった、動作パラメータを使用する可能である。いくつかの実施形態において、基板が、約175~約300oCの温度で、約20トル~約530トルで、例えば約470トル~約530トルでアニールされうる。アニール時間は、約1秒~約120秒、例えば約30秒~90秒、例えば約60秒とすることができる。
【0027】
センサデータは、有機化合物センサ120から生成され、有機化合物の存在又は全有機化合物の濃度といった、排出物の少なくとも1つの特性を決定することが可能である。センサデータは、少なくとも1つの特性に基づいて、基板を処理するための動作パラメータを調整するために使用されうる。例えば、動作パラメータは、熱処理チャンバのチャンバ圧力、熱処理チャンバ内での基板の処理時間、排気ガス流量、熱処理チャンバに導入されるガス種、熱処理チャンバ内での基板の位置、又はこれらの組み合わせを含みうる。一実施形態において、プロセス設計が、プロセス設計の各動作について異なる動作パラメータを含みうる。例えば、上記動作をポンプによる排気動作とすることができ、当該動作は、或る一定の時間後に終了することが可能であり、又は、センサ読み取り値が有機化合物の濃度といった特性値を指し又はその付近にあるときに、終了することが可能である。
【0028】
図3は、本開示の特定の態様に係る、ベースラインのセンサ情報を更新することによって基板のガス放出を管理するための例示的なシステムのブロックフロー図である。システムは、様々な動作300を含みうる。
これらの動作300は、
有機化合物センサを使用して熱処理チャンバの少なくとも1つの特性を測定し、少なくとも1つの特性のためのベースラインを確立すること(302)、
動作パラメータを使用して熱処理チャンバ内の基板を処理すること(304)、
少なくとも1つの特性に基づいてベースラインからの変化を測定すること(306)、
少なくとも1つの特性に基づいて、基板を処理するための動作パラメータを調整すること(308)、
及び/又は、
新しいベースラインを作成すること
のうちの1つ以上を含みうる。
動作パラメータは、
図2を参照しながら記載した動作パラメータを含みうる。
【0029】
本開示のいくつかの態様において、有機化合物センサが、少なくとも1つの特性のためのベースラインを確立するために、有機化合物の存在、又は全有機化合物の濃度、又は特定の有機化合物の濃度、又はこれらの組合せといった、少なくとも1つの特性を測定することが可能である。いくつかの実施形態において、ベースラインが、センサに対する環境の影響、及びバックグラウンド組成測定の存在を含みうる。環境の影響は、湿度、センサ構成要素の品質、経時的なセンサ光強度、センサの飽和レベル、基板間での有機化合物の違い、又はこれらの組み合わせを含みうる。いくつかの実施形態において、ベースラインが、センサを較正するために使用されうる。センサ及び基板の種類をもとに、検出されている有機化合物に基づいてセンサを較正することも可能である。いくつかの実施形態において、有機化合物に基づく較正が、本開示の目的のためには必要ではない。ベースラインが一旦確立されると、基板が、熱処理チャンバのチャンバ圧力、熱処理チャンバ内での基板の処理時間、排出物の流量、熱処理チャンバに導入されるガス種、熱処理チャンバ内へのガス流量、及びこれらの組み合わせといった動作パラメータを使用して、熱処理チャンバ内で処理されうる。上記動作パラメータのそれぞれが、各個別コントローラと通信する制御モジュールによって制御されうる。制御モジュール116はまた、有機化合物の濃度といった特性が、所定の値でありうる或る一定の値に一旦達すると、センサデータに基づいて各動作パラメータを操作することが可能である。上記値は、例えば、ベースラインより上の閾値とすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、上記値に達した後に、熱処理チャンバがポンプで排気され、パージされうる。本明細書では、熱処理チャンバを「ポンプにより排気する(pumping)」というプロセスは、ガス源102から熱処理空間108内へのガスの流れを止め、圧力制御弁を排気ポンプ114へと開くことで熱処理空間108内のガスをポンプで排出することによって、熱処理空間を排気することを指している。本明細書では、熱処理チャンバを「パージする(purging)」というプロセスは、熱処理空間108への圧力を上げ、ガス源102からの、窒素ガスといったガスを充填することによって、熱処理空間108を再充填することである。上記プロセスが、本明細書では「ポンプ/パージ」と呼ばれる。例えば、プロセスチャンバがポンプで排気されパージされた後に新たなベースラインを確立するために、センサデータを再び収集することが可能であり、当該プロセスは、動作302から始めて繰り返すことが可能である。
図1には示されていないが、熱処理チャンバ128が、1より多いガス源102、及びガス制御弁104に接続されうる。したがって、センサデータに基づく排出物の少なくとも1つの特性に基づいて、別の種類のガスがチャンバに入れるように、様々なガス制御弁のそれぞれ(例えば、104)が、制御モジュール116によって操作されうる。新しいベースラインは、センサの飽和といった様々な原因から生じうるセンサデータのドリフトを考慮することが可能である。いくつかの処理条件下において、動作パラメータは、所与のサンプリング時間における絶対的なセンサ読み取り値というよりは、チャンバをポンプにより排気する及びパージするといった調整後の或る一定の期間の後のセンサ読み取り値の差に基づいて調整されうる。
【0031】
図4は、本開示の特定の態様に係る、有機化合物センサを有する例示的なデュアル熱処理装置を概略的に示している。熱処理装置400は、先に
図1を参照して記載した第1の熱処理チャンバ128と、第1の熱処理チャンバ128と実質的に同一でありうる第2の熱処理チャンバ428と、を含みうる。第2の処理チャンバ428は、第2の処理空間408を画定し、第2の側壁432及び第2の天井430を有し、その中に配置された第2の基板支持体426を有しうる。第2の処理チャンバ428の材料及び構成は、
図1で記載した第1の処理チャンバ128の材料及び構成と同一であってよく又は実質的に同じであってよい。
【0032】
少なくとも1つの実施形態において、第1の処理チャンバ128と第2の処理チャンバ428とは、壁を共有している。このような実施形態において、第1の処理チャンバ128の側壁432Aと、第2の処理チャンバ428の側壁132Aとが接合されており、又は同じ壁である。
【0033】
第2のガス源402が、第2の処理空間408と接続され、当該第2の処理空間408と流体連結していうる。第2のガス源402は、第2のガス源402及び第2の処理空間408に流体的に結合した第2のガスライン407を介して、第2の処理空間408にガスを伝達するよう構成されうる。例えば、第2のガスライン407は、第2のガス源402から、第2の熱処理チャンバ428の第2の天井430まで延在しうる。第2のガスライン407は、任意の適切な形状の導管であってよく、第2のガス源402によって伝達されるガスに対して不活性な材料から形成されうる。例えば、第2のガスライン407が、石英材料、セラミック材料、及び/又は金属材料から形成されうる。少なくとも1つの実施形態において、第1のガス源102と第2のガス源402とは別体のガス源である。他の実施形態において、第1のガス源102と第2のガス源402とは同じガス源である。いずれの実施形態においても、第1のガス源102及び第2のガス源402は、前駆体ガスの任意の所望の組み合わせを伝達するよう構成されうる。いくつかの実施形態において、第2のガス源402が、アルゴン、酸素、窒素、ヘリウム、及び三フッ化窒素などのフッ素含有ガスといった前駆体ガスを伝達しうる。前駆体ガスは、個別に又は組み合わせにおいて、及び/又は、順次又は同時に、第2の熱処理チャンバにへと伝達されうる。第2のガス源コントローラ404が、第2の熱処理空間408へのガスの流れを制御するために、第2のガスライン407に接続されうる。いくつかの実施形態において、2つ以上のガス源(例えば、402)が、第2の処理空間408に接続されうる。
【0034】
第2の処理空間408はまた、排気導管109を介して排気ポンプ114に接続されている。排気導管109は、
図4に示すように、第1の処理空間108と第2の処理空間408の双方と流体連結していうる。
【0035】
熱的に処理された基板からガスとして放出した材料、及び第2の熱処理チャンバ428の表面から除去された材料が、第2の処理空間408から排気導管109を通過して排気ポンプ114へと、第1の熱処理チャンバ128から材料がガスとして放出されるのと実質的に同じやり方で、同じ排気導管109又は異なる排気導管(図示せず)を介して排出されうる。排気ポンプ114は、第2の処理空間408内に減圧環境を作り出し、第2の処理空間408からガス及び他の材料を除去するよう構成されたターボポンプでありうる。基板は、熱処理されたときに揮発性有機化合物を生成する材料を含みうる。いくつかの実施形態において、基板は、スピンオンカーボン膜、フォトレジスト膜、スピンオン誘電体、スピンオンハードマスク、及びスピンオン反射防止コーティングといった膜を含みうる。上記膜は、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、トルエン、及びこれらの組み合わせといった流延溶媒を含みうる。スピンオンカーボン膜は、熱処理されたときにナフタレン及び酢酸エチルといった化合物を生成しうる異なる組成で構成されうる。
【0036】
ガス、任意のプラズマ、揮発性化合物、及び他の材料(総称として「排出物」)が、排気導管109に接続された排出物流量制御弁112を使用することにより、処理空間の排出物の排出物流量を制御することによって、第2の処理空間408から除去されうる。排出物流量制御弁112は、排気導管109に接続された任意の第2の圧力センサ(図示せず)を使用することによって、熱処理チャンバ128からの排出物の流量を制御することが可能である。制御モジュール116は、圧力センサからの信号を監視し、チャンバ排気流コントローラを操作して、第1の熱処理チャンバ128及び第2の熱処理チャンバ428の圧力、並びに、第1の熱処理チャンバ128及び第2の熱処理チャンバ428からの排出物の流量を管理することが可能である。熱処理装置400は、排気導管109に接続された排気遮断弁110を含みうる。排気遮断弁110は、第1の熱処理チャンバ128及び第2の熱処理チャンバ428でガス放出されているときには、開放位置にあることができ、第1の熱処理チャンバ128及び第2の熱処理チャンバ428でガス放出されていないときには、閉止位置にあることができる。排気遮断弁110は、手動で操作することが可能であり、又は制御モジュール116を介するなどして遠隔で操作することが可能である。いくつかの実施形態において、排気遮断弁110は、熱処理チャンバ128、428がパージされているときには、開放位置にあることができ、排気遮断弁110は、ガスが充填されるときには熱処理チャンバ128、428内の圧力を上げるために、閉止位置にあることができる。
【0037】
熱処理装置400は、排気導管109に接続可能なサンプリングライン113を含むことができ、サンプリングライン113は、有機化合物センサ120及びサンプリング流量制御弁122を含みうる。サンプリングラインは、排気導管109の第1の位置に結合された第1のライン端111と、排気導管109の第2の位置に結合された第2のライン端115と、を有しうる。サンプリングライン113は、第1のサンプリング遮断弁118と、第2のサンプリング遮断弁124と、を含みうる。いくつかの実施形態において、第1のサンプリング遮断弁118及び第2のサンプリング遮断弁124を三方弁とすることができる。例えば、第1のサンプリング遮断弁118は、第1のライン端111と排気導管109との合流点に接続された三方弁であってもよく、第2のサンプリング遮断弁124は、第2のライン端115と排気導管109との合流点に接続された三方弁であってよい。いくつかの実施形態において、第1のサンプリング遮断弁118及び第2のサンプリング遮断弁124は、サンプルライン113に接続された二方弁とすることができる。有機化合物センサ120及びサンプリング流量制御弁122は、第1のサンプリング遮断弁118及び第2サンプリング遮断弁124といった2つのサンプリング遮断弁の間の位置に、サンプリングライン113に沿って配置されうる。稼働時に、サンプリング遮断弁118、124は、サンプリング中及び有機化合物の監視中には開放位置にあることができ、有機化合物が監視されていないときには閉止位置にあることができる。サンプリング遮断弁118、124は、手動で操作することができ、又は制御モジュール116を介するなどして、遠隔で操作することができる。いくつかの実施形態において、サンプリング中に、排気遮断弁110を閉位置とすることができ、サンプリング遮断弁を開位置とすることができる。例えば、サンプリングは、排気遮断弁110が閉止位置にあるとき及び/又は排気遮断弁110が開放位置にあるときといった、アニーリングプロセスの任意の段階に行われうる。いくつかの実施形態において、サンプリングが、アニーリングプロセスの全段階の間継続していてよい。
【0038】
サンプリング流量制御弁122及び有機化合物センサ120は、制御モジュール116に通信可能に接続されうる。制御モジュール116は、有機化合物センサ120からの信号を監視し、サンプリング流量制御弁122を操作して、有機化合物センサ120を横切る排出物の流れを管理することが可能である。例えば、サンプリング流量制御弁122は、有機化合物センサ120へのサンプリングライン113内の排出物の流量を調整することによって、有機化合物センサの飽和を防止することが可能である。
【0039】
有機化合物センサ120は、熱処理チャンバ128内で形成された揮発性有機化合物を検出することが可能である。有機化合物センサは、光イオン化検出器(PID:photoionization detector)、残留ガス分析器(RGA:residual gas analyzer)、及び非分散赤外線センサ(NDIR:non-dispersive infrared sensor)からなる群から選択されたセンサでありうる。例えば、センサは、センサによって検出される処理空間内の有機化合物を、電磁エネルギーに対して、例えば、当該有機化合物をイオン化する紫外線に対して曝露して、濃度を報告することが可能である。少なくとも1つの実施形態において、有機化合物が、PIDのランプのイオン化電位(eV)より低いイオン化電位を有している可能性があり、光イオン化によって検出されうる。例えば、PIDのランプが、約10.0eVから約10.6eV、例えば10.0eV又は10.5eVのイオン化電位(eV)を有しうる。例えば、有機化合物センサはPIDでありうる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるシステム、プロセス、及び方法に従って検出されうる排出物中に存在する有機化合物が、アセトン、アルシン、ブタジエン、ベンゼン、クメン、ジメトキシメタン、エチルメルカプタン、硫化水素、メシチルオキシド、メチルエチルケトン、メチルメルカプタン、一酸化窒素、ホスフィン、スチレン、トルエン、塩化ビニル、ナフタレン、酢酸エチル、及びこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のシステム、プロセス、及び方法に従って検出されうる排出物中に存在する有機化合物は、約8.0eV~約10.5eV、例えば約8.1eV、又は約10.1eVのイオン化電位を有する。
【0040】
図4は、単一の排気導管109及び単一のサンプリングライン113を共有する2つのチャンバを示している。いくつかの実施形態において、2つのチャンバは、
図5に示され本明細書に記載される別体の排気導管及び/又は別体のサンプリングラインを有しうる。
【0041】
図5は、本開示の特定の態様に係る、例示的なデュアル熱処理装置500を概略的に示しており、デュアル熱処理装置500は、2つの熱処理チャンバ128、428と、2つの有機化合物センサ120、520と、を有している。熱処理チャンバ128、428は、1つ以上の共有ガス源又は別個のガス源(例えば、102、402)によって供給されうる。いくつかの実施形態において、第1の熱処理チャンバ128が、
図5に106及び102で示す2つのガス源を有しうる。いくつかの実施形態において、第2の熱処理チャンバ428が、
図5に406及び402で示す2つのガス源を有しうる。いくつかの実施形態において、アニーリングプロセスが、プラズマの使用を含む。2つの有機化合物センサ120、520が、例えば制御モジュール116を使用して、別々に制御されうる。第1の処理空間108は、第1の排気導管109を介して排気ポンプ114に接続されうる。第1の排出物流量制御弁112及び第1の排気遮断弁110が、第1排気導管109に接続されうる。第2の処理空間408は、第2の排気導管509を介して排気ポンプ114に接続されうる。第2の排出物流量制御弁512及び第2の遮断弁510が、第2の排気導管509に接続されうる。第1の排出物流量制御弁112と第2の排出物流量制御弁512のそれぞれは、第1の熱処理チャンバ128と第2の熱処理チャンバ428のそれぞれを別々に制御しうるように、制御モジュール116に通信可能に接続されうる。
【0042】
熱処理装置500は、第1の排気導管109に接続されうる第1のサンプリングライン113を含みうる。第1のサンプリングライン113は、第1の有機化合物センサ120、第1のサンプリング流量制御弁122、及び、第1の対のサンプリング遮断弁(例えば、118、124)を含みうる。熱処理装置500は、第2の排気導管509に接続されうる第2のサンプリングライン513も含む。第2のサンプリングライン513は、第2の有機化合物センサ520、第2のサンプリング流量制御弁522、及び、第2の対のサンプリング遮断弁518、524を含みうる。第1の有機化合物センサ120及び第2の有機化合物センサ520、並びにサンプリング流量制御弁122、522のそれぞれが、第1の熱処理チャンバ128と第2の熱処理チャンバ428のそれぞれを別々に制御しうるように、制御モジュール116に通信可能に接続されうる。図には示されていないが、第1の熱処理チャンバ128と第2の熱処理チャンバ428のそれぞれが、1つ以上の共有ガス源、又は1つ以上の独立したガス源(例えば、102、402)を含みうる。
実施例
【0043】
図1に例示された、光イオン化検出器を有する熱処理装置が、スピンオンカーボン膜を含む又は含まないシリコン基板のアニーリングのために配置された。基板を曝露させることを数回実行することが完了し、AMETEK MOCON piD―TECH(登録商標)eVx光イオン化センサを使用して、揮発性有機化合物の存在について試験を行った。上記数回の実行のうちのいくつかの後に続いて、ガス排気プロセス(「ポンプによる排気/パージ」)が行われ、その後にVOC(揮発性有機化合物)がサンプリングされ、VOCが「ppb」(10億分の1)単位で測定された。
【0044】
第1の実験において、スピンオンカーボンを含む第1の基板(「SoC(spin on carbon)基板」)を、ヘリウムガスの存在下で450oCの温度で予熱し、次いで、チャンバに流入する窒素ガスの存在下で、530Tで、25L/minで60秒間アニールした。サンプリング遮断弁は開放位置にあり、サンプリング流量が300sccmに制御され、PIDが、約6126ppbの揮発性有機化合物レベルを検出した。サンプリングの後で遮断弁が閉じられた。第1のSoC基板がアニールチャンバから取り除かれた後に、スピンオンカーボン膜を含まないシリコン基板(「ベアシリコン基板(bare silicon substrate)」)を用いて数回実験された。ベアシリコン基板は、SoC基板と同じ条件下で処理され、チャンバがサンプリングされ、ポストサンプリングで、おおむね469ppb未満の揮発性有機化合物(VOC)レベルが検出された。SoCによる実験直後の、ベアシリコン基板のプロセスでは、ベアシリコン基板の中で最も高いVOCレベルが示された。ベアシリコン基板の熱処理では、典型的に、SoC基板といった他の基板で通常観察されるガス放出の懸念がない。
【0045】
ベアシリコン基板が処理された後で、他のSoC基板が処理チャンバ内に配置され、前回の実験と同じ条件で処理されたが、処理の後に、チャンバ内へのガスの流れを止め、圧力制御弁を開けて処理チャンバ内のガスをポンプにより排出することによって、チャンバが排気された。次いで、チャンバへの圧力を上げて約50L/minで窒素を充填することによって、チャンバが再充填された。このプロセスは、本明細書では「ポンプによる排気/パージ」と呼ばれる。得られたVOC読み取り値は、667ppbであった。上記読み取り値によって、ポンプによる排気/パージのプロセスを設けずにSoC基板を処理した第1のSoC基板の実験に対する(例えば、6126ppb)、実質的な改善が示された。各実験の終了に、チャンバがポンプにより排気されてパージされ、チャンバのポンプによる排気及びパージの後で、VOCの測定が行われた。実際には、本開示の方法に係る連続的なVOCモニタリングを使用して、所定のVOC濃度に達した後にチャンバをポンプにより排気してパージすることが可能である。
【0046】
第2のSoC基板が処理された後に、追加のベアシリコン基板が処理され、VOC読み取り値が全て469ppb未満となった。最後に、5つのSoC基板が、ポンプによる排気/パージプロセスを用いて処理され、全て667ppb未満という結果が得られた。本発明者らは、VOC読み取り値にドリフトが生じており、このドリフトデータを、例えば
図3に描かれた例示的な方法で示したように、処理中に目標VOC読み取り値を更新するために使用しうることを観察してきた。各基板処理の間にVOC読み取り値を提供する能力によって、基板処理の間のチャンバ排気プロセスの有効性を評価することが可能となった。この情報に基づいて、排気動作がさらに調整され、動作パラメータが、デバイスの欠陥を防止するために予め定められ及び/又はインシトゥ(その場)で調整されうる。さらに、処理中にVOCの読み取り値を監視する能力は、インシトゥ(その場)でのプロセス調整によって、デバイスの欠陥を防止することを支援しうる。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、先に記載された方法の1つ以上の動作が命令として、制御ユニット(例えば、制御モジュール)又は任意の他の処理システムによる実行のために、コンピュータ可読媒体に含まれうる。コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、読取専用メモリ(ROM:read only memory)、フロッピーディスク、ハードディスク、フラッシュドライブ、又は、ローカルの若しくは遠隔の任意の他の形態によるデジタルストレージといった、命令を格納するための任意の適切なメモリを含みうる。
【0048】
先の記載は、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態が考案されうる。本開示の範囲は、下記の特許請求の範囲によって定められる。