(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】酸化物含有銅微粒子およびその製造方法、ならびにそれを用いた焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240621BHJP
C22C 1/04 20230101ALI20240621BHJP
B22F 1/105 20220101ALI20240621BHJP
B22F 1/102 20220101ALI20240621BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20240621BHJP
B22F 1/16 20220101ALI20240621BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20240621BHJP
B22F 7/04 20060101ALN20240621BHJP
B22F 7/08 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
B22F1/00 L
C22C1/04 A
B22F1/105
B22F1/102
H01L21/52 E
B22F1/16
H05K1/09 A
B22F7/04 D
B22F7/08 C
(21)【出願番号】P 2022545701
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031373
(87)【国際公開番号】W WO2022045252
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020144680
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221589
【氏名又は名称】中谷 俊博
(72)【発明者】
【氏名】米澤 徹
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/106739(WO,A1)
【文献】特開2020-100893(JP,A)
【文献】特開2020-029392(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125581(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
C22C 1/04
B22F 1/105
B22F 1/102
H01L 21/52
B22F 1/16
H05K 1/09
B22F 7/04
B22F 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu
64
Oを含み、
さらにCu
2
Oを含む場合は、Cu、Cu
64OおよびCu
2Oの合計質量に対するCu
64Oの質量比は0.5~2.0質量%であ
り、
Cu
2
Oを含まない場合は、CuおよびCu
64
Oの合計質量に対するCu
64
Oの質量比が0.5~2.0質量%であり、
且つカルボン酸類により被覆されている、酸化物含有銅微粒子。
【請求項2】
Cu、Cu
64OおよびCu
2Oの合計質量に対するCu
2Oの質量比は0質量%以上0.5質量%未満である、請求項1に記載の酸化物含有銅微粒子。
【請求項3】
Cu、Cu
64OおよびCu
2Oの合計質量に対するCu
2Oの質量比は0.5~2.0質量%である、請求項1に記載の酸化物含有銅微粒子。
【請求項4】
銅微粒子を用意する工程と、
前記銅微粒子をカルボン酸類で被覆する工程と、
カルボン酸類で被覆された前記銅微粒子を分散媒中に添加してビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置により分散させる工程と、を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の酸化物含有銅微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記分散させる工程を不活性ガス雰囲気下にて行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散させる工程を大気下にて行う、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記ビーズミルのアジテータの回転数は1000rpm以上3000rpm未満である、請求項4~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1
または2に記載の酸化物含有銅微粒子を、不活性ガス雰囲気下にて、100℃~200℃に加熱する工程を含む、銅微粒子焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記不活性ガスはN
2を含む請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記不活性ガスにH
2が4体積%未満混合されている請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載の酸化物含有銅微粒子を、不活性ガス雰囲気下にて、180℃~200℃に加熱する工程を含む、銅微粒子焼結体の製造方法。
【請求項12】
請求項3に記載の酸化物含有銅微粒子を、不活性ガス雰囲気下にて、150℃~200℃に加熱する工程を含み、
前記不活性ガスは、N
2
を含み且つH
2
が4体積%未満混合されている、銅微粒子焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化物含有銅微粒子およびその製造方法、ならびにそれを用いた焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント基板の製造において、従来使用されていた露光及びエッチングを必要とせず、有害な化学物質を排出しないクリーンな技術として、インクジェットまたは印刷法により微細配線を直接形成させるプリンタブルエレクトロニクスと呼ばれる技術が注目されている。
【0003】
上記微細配線は、主に金属微粒子を加熱して焼結させることにより得られる。その金属微粒子は、基材等の耐熱性の観点から、例えば、250~350℃を下回る温度で焼結することが求められる。現状では、低温で焼結可能な銀微粒子が多く用いられているが、銀微粒子は高価で且つイオンマイグレーションによる配線短絡の影響が懸念されている。銀微粒子の代替として、安価で且つイオンマイグレーション耐性の高い銅微粒子が注目されているが、銅微粒子は低温で焼結しにくいという課題があり実用化には至っていない。
【0004】
これに対して、本発明者らは、2段階加熱(特許文献1)、銅錯体インクの導入(特許文献2)、および亜酸化銅(Cu2O)を銅微粒子に含有させること(特許文献3)により、いずれも200℃以下で銅微粒子の焼結を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-214722号公報
【文献】特開2017-1978号公報
【文献】国際公開第2019/106739号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では2段階の加熱(酸化処理および還元処理)を必要とし、特許文献2では銅微粒子(銅粉末)に加えて、追加の銅材料(銅錯体)を用意する必要があり、いずれも多くの工程が必要となる。特許文献3では、高真空下で焼結させる必要があり、真空設備への出し入れのためにバッチ処理が必要となり生産性が低くなる。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、2段階の加熱および追加の銅材料を必要とせず、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱により、十分な導電性を示す焼結体が得られる銅微粒子およびその製造方法ならびにそれを用いた焼結体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様1は、
Cu64Oと必要に応じてCu2Oとを含み、且つカルボン酸類により被覆されている酸化物含有銅微粒子であって、
Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5~2.0質量%である、酸化物含有銅微粒子である。
【0009】
本発明の態様2は、
Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0質量%以上0.5質量%未満である、態様1に記載の酸化物含有銅微粒子である。
【0010】
本発明の態様3は、
Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0.5~2.0質量%である、態様1に記載の酸化物含有銅微粒子である。
【0011】
本発明の態様4は、
銅微粒子を用意する工程と、
前記銅微粒子をカルボン酸類で被覆する工程と、
カルボン酸類で被覆された前記銅微粒子を分散媒中に添加してビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置により分散させる工程と、を含む態様1~3のいずれか1つに記載の酸化物含有銅微粒子の製造方法である。
【0012】
本発明の態様5は、
前記分散させる工程を不活性ガス雰囲気下にて行う、態様4に記載の製造方法である。
【0013】
本発明の態様6は、
前記分散させる工程を大気下にて行う、態様4に記載の製造方法である。
【0014】
本発明の態様7は、
前記ビーズミルのアジテータの回転数が1000rpm以上3000rpm未満である、態様4~6のいずれか1つに記載の製造方法である。
【0015】
本発明の態様8は、
態様1~3のいずれか1つに記載の酸化物含有銅微粒子を、不活性ガス雰囲気下にて、100℃~200℃に加熱する工程を含む、銅微粒子焼結体の製造方法である。
【0016】
本発明の態様9は、
前記不活性ガスはN2を含む態様8に記載の製造方法である。
【0017】
本発明の態様10は、
前記不活性ガスにH2が4体積%未満混合されている態様9に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によれば、2段階の加熱および追加の銅材料を必要とせず、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱により、十分な導電性を示す焼結体が得られる銅微粒子およびその製造方法ならびにそれを用いた焼結体の製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、試料No.1の酸化物含有銅微粒子のXRDパターンである。
【
図2】
図2は、試料No.2の酸化物含有銅微粒子のXRDパターンである。
【
図3】
図3は、試料No.1の酸化物含有銅微粒子の高分解TEM像である。
【
図4】
図4は、試料No.2の酸化物含有銅微粒子の高分解TEM像である。
【
図5】
図5は、試料No.1の酸化物含有銅微粒子を、常圧、純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%))雰囲気下、120℃に加熱した後の焼結体のSEM像である。
【
図6】
図6は、試料No.1の酸化物含有銅微粒子を、常圧、純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%))雰囲気下、200℃に加熱した後の焼結体のSEM像である。
【
図7】
図7は、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を無加圧で接合したときの温度および圧力のプロファイルである。
【
図8】
図8は、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を接合したときの、接着強度測定方法を説明するための模式図である。
【
図9】
図9は、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を無加圧で接合したときの、接着強度測定結果を示すグラフである。
【
図10】
図10は、
図9の接着強度測定後の銅円柱試験片1側の破断面の光学顕微鏡像である。
【
図11】
図11は、
図9の接着強度測定後の銅円柱試験片2側の破断面の光学顕微鏡像である。
【
図12】
図12は、
図9の接着強度測定後の銅円柱試験片2側の破断面のFE-SEM像である。
【
図13】
図13は、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を加圧接合したときの温度および圧力のプロファイルである。
【
図14】
図14は、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を加圧接合したときの、接着強度測定結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、
図14の接着強度測定後の銅円柱試験片1側の破断面の光学顕微鏡像である。
【
図16】
図16は、
図14の接着強度測定後の銅円柱試験片2側の破断面の光学顕微鏡像である。
【
図17】
図17は、
図14の接着強度測定後の銅円柱試験片2側の破断面のFE-SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは、2段階の加熱および追加の銅材料を必要とせず、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱により、十分な導電性を示す焼結体が得られる銅微粒子を実現するべく、様々な角度から検討した。
【0021】
その結果、銅微粒子にCu64Oを特定の質量比で含有させ且つカルボン酸類により被覆することにより、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の加熱時において、カルボン酸類のフラックス作用によりCu64Oが還元されて銅微粒子同士が結合(ネッキング)しやすくなることを見出し、その結果、従来技術のような2段階の加熱および追加の銅材料を必要とせずに、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱で十分な導電性を示す焼結体を得ることができた。
【0022】
以下に、本発明の実施形態が規定する各要件の詳細を示す。
【0023】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子は、Cu64Oと必要に応じてCu2Oとを含み、且つカルボン酸類により被覆されており、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5~2.0質量%である。すなわち、当該酸化物含有銅微粒子はCu2Oを含まなくてもよく、その場合は、CuおよびCu64Oの合計質量に対するCu64Oの質量比を0.5~2.0質量%とすればよい。一方で、当該酸化物含有銅微粒子はCu2Oを含んでもよく、その場合は、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比を0.5~2.0質量%とすればよい。
【0024】
Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比が0.5質量%未満の場合、Cu64O量の不足のために加熱時の銅原子の拡散がおさえられ、銅微粒子同士の結合作用が弱まり、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱により得られる焼結体の導電性が不十分となるおそれがある。そのため、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5質量%以上とし、好ましくは1.0質量%以上とする。一方で、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比が2.0質量%超の場合、Cu64O量が過剰であり、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱ではCu64Oを十分に還元できず、それにより得られる焼結体の導電性が不十分となるおそれがある。
【0025】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子は、必要に応じてCu2Oを含んでもよい。Cu2Oは、Cu64Oと比較してカルボン酸類のフラックス作用により還元されにくいが、常圧(又はそれ以上の圧力)下180℃以上、好ましくは200℃以上の比較的高温であれば、少なくとも一部が還元され得る。そのため、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比が0.5~2.0質量%とした上で、Cu2Oをさらに含むことにより、比較的高温の加熱をすることで、銅微粒子のネッキングを促進し、それにより得られる焼結体の導電性を向上させることが可能となる。
【0026】
本発明の好ましい1つの実施形態は、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比を0質量%以上0.5質量%未満とすることである。すなわち、Cu2Oを含まないこと(Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比を0質量%とすること)、またはCu2Oを含みCuおよびCu64Oの合計質量に対するCu64Oの質量比を0質量%超0.5質量%未満とすることである。これにより、より低温の加熱(例えば120℃以下)においても十分な導電性を示す焼結体を得ることができる。
【0027】
本発明の好ましい別の実施形態は、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比を0.5~2.0質量%とすることである。これにより、例えば180℃以上、さらには200℃以上の高温の加熱で、より導電性の高い焼結体を得ることができる。
【0028】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子において、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64OおよびCu2Oの質量比は、XRDパターンを取得してRIR(Reference Intensity Ratio:参照強度比)法を用いることにより算出できる。RIR法とは、被検成分の最強線における、ベースラインを引いて決定したバックグラウンド強度を差し引いた積分強度から、データベースに記載されているRIR値を用いて定量値を算出する方法である。本発明の実施形態では、各成分の最強線(Cu(111)、Cu64O(044)およびCu2O(111))の積分強度および各RIR値(Cu:8.86、Cu64O:4.89、Cu2O:8.28)を用いて、当該質量比を算出した。なお、Cu(111)は2θ=43.298°、Cu64O(044)は2θ=40.710°、Cu2O(111)は2θ=36.419°の位置にそれぞれ回折ピークを有する。
【0029】
本発明の好ましい1つの実施形態は、酸化物含有銅微粒子が、Cu、Cu64Oおよび不可避不純物からなり、Cu、Cu64Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5~2.0質量%であり、且つ酸化物含有銅微粒子がカルボン酸類により被覆されていることである。不可避不純物は2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以下である。これにより、焼結体の導電性を向上させることができる。
本発明の好ましい別の実施形態は、酸化物含有銅微粒子が、Cu、Cu64O、Cu2Oおよび不可避不純物からなり、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5~2.0質量%であり、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比は0質量%超0.5質量%未満であり、且つ酸化物含有銅微粒子がカルボン酸類により被覆されていることである。本発明の好ましいさらなる別の実施形態は、酸化物含有銅微粒子が、Cu、Cu64O、Cu2Oおよび不可避不純物からなり、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比は0.5~2.0質量%であり、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比は0.5~2.0質量%であり、且つ酸化物含有銅微粒子がカルボン酸類により被覆されていることである。不可避不純物は2.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.0質量%以下である。これにより、焼結体の導電性を向上させることができる。
なお、不可避不純物とは、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素を指す。
【0030】
本発明の実施形態において、Cu64Oが酸化物含有銅微粒子の表面に存在することが好ましい。すなわち、Cu64Oが酸化物含有銅微粒子の表面に存在し、当該表面がカルボン酸類により被覆されていることが好ましい。これにより、特に低温(例えば120℃以下)で加熱した時の銅微粒子同士のネッキングを促進することができる。その際、酸化物含有銅微粒子の表面に存在するCu64Oの、当該表面からの厚さが5nm以下である部分を有することが好ましい。これにより、特に低温(例えば120℃以下)で加熱した場合において、カルボン酸類のフラックス作用によりCu64Oを還元しやすくなる。Cu64Oの当該表面からの厚さの下限は、特に制限されないが、例えば、0.1nm以上であり得る。
【0031】
本発明の実施形態において、Cu
64Oが酸化物含有銅微粒子の表面に存在しているか否かは、
図3および
図4のように、酸化物含有銅微粒子の端部を含む高分解TEM像から確認することができる。すなわち、回折強度の高いCu(111)面、Cu
64O(044)面およびCu
2O(111)面の格子縞間隔(面間隔)はそれぞれ、2.088Å、2.215Åおよび2.465Åであるため、高分解TEM像に現れる格子縞間隔の違いからCu、Cu
64OおよびCu
2Oを判別可能であり、酸化物含有銅微粒子の端部(表面)においてCu
64Oが存在しているか否かを確認できる。
【0032】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の平均粒径は20~300nmであることが好ましい。ここで「粒径」とは酸化物含有銅微粒子の一次粒径で且つ円相当直径を指し、「平均粒径」とはメディアン径を指す。平均粒径が適度に大きいことで微粒子間の凝集力が低下し、例えば、分散媒中に分散させたときに酸化物含有銅微粒子が分散しやすくなる。また、平均粒径が適度に大きいことで、全体としては表面積を小さくできることから、絶縁体であるカルボン酸類の被覆量も少なくでき、焼結体の導電性を向上させやすい。更に全体として表面積を小さくできることから、必要以上に過剰な表面酸化も抑制できる。一方、平均粒径が適度に小さいことで、均一な表面の焼結体が得られやすく、焼結体の体積抵抗率が低下するだけでなく、高速伝送性も向上する。この現象は表皮効果に起因する。すなわち、高周波信号では、導電体表面に電流集中が生じるため、焼結体表面が粗いと伝送経路が延び、損失が大きくなる。焼結体を構成する銅微粒子の平均粒径を小さくすることで、表面粗さは小さくなり、焼結体の均一性が確保しやすくなる。
上記平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ランダムに少なくとも10個以上の酸化物含有銅微粒子を撮像し、それらの粒径を測定することにより求めることができる。
【0033】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の形状としては、特に限定されず、球状、楕円体形状、多角体形状(多角錘状、立方体状、直方体状等)、板状、棒状および/または不定形状であってもよく、分散性に優れる点から球状等の等方形状であることが好ましい。
【0034】
本発明の実施形態では、加熱時にカルボン酸類のフラックス作用を利用してCu64Oと場合によってはCu2Oを還元する。本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子を被覆するカルボン酸類としては、例えば飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、ヒドロキシ酸、芳香族カルボン酸、テルペン系カルボン酸類等が挙げられ、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。カルボン酸類として、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族カルボン酸、およびテルペン系カルボン酸から選ばれる少なくとも1種以上を用いることが好ましい。また、カルボン酸類は疎水性であることが好ましい。疎水性であることで、保存時(非加熱時)に下記式(1)で表されるような平衡反応を抑制し、H3O+に起因した腐食反応の進行を抑制することができる。
RCOOH+H2O ⇔ RCOO-+H3O+ ・・・(1)
上記式(1)において、Rは、例えば一価の炭化水素基である。
【0035】
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数が5以上であることが疎水性を示すため好ましい。脂肪族モノカルボン酸は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよく、また飽和脂肪族モノカルボン酸および不飽和脂肪族モノカルボン酸のいずれであってもよい。これらの中でも、直鎖状の飽和脂肪族モノカルボン酸が好ましい。また、脂肪族モノカルボン酸の炭素数は、5~18が好ましい。脂肪族モノカルボン酸は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数が偶数のカプロン酸(炭素数6)、カプリル酸(炭素数8)、カプリン酸(炭素数10)、ラウリン酸(炭素数12)、ミリスチン酸(炭素数14)、パルミチン酸(炭素数16)、ステアリン酸(炭素数18)等が安価で入手しやすく好適である。
【0036】
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数が6以上であることが疎水性を示すため好ましい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖状および分岐鎖状のいずれであってもよく、また飽和脂肪族ジカルボン酸および不飽和脂肪族ジカルボン酸のいずれであってもよい。これらの中でも、直鎖状の飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましい。また、脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、6~18が好ましい。脂肪族ジカルボン酸は1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,0-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、ブラシル酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、タプシン酸、1,15-ペンタデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0037】
芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリト酸、トリメリト酸、トリメシン酸等が挙げられる。
【0038】
テルペン系カルボン酸としては、ロジン等に含まれるものを用いることができる。例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デシドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0039】
本発明の実施形態において、酸化物含有銅微粒子をカルボン酸類が被覆しているかどうかは、公知の質量分析法で確認することができ、例えばレーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization:LDI)などで表面のカルボン酸類をイオン化させて、飛行時間測定法(Time of Flight:TOF)などで質量電荷比を求めることにより確認することができる。
【0040】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の製造方法は、銅微粒子を用意する工程と、前記銅微粒子をカルボン酸類で被覆する工程と、カルボン酸類で被覆された前記銅微粒子を分散媒中に添加してビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置により分散させる工程とを含む。
以下、各工程について詳述する。
【0041】
<1.銅微粒子を用意する工程>
銅微粒子を用意する方法については特に限定されないが、気相法(スパッタリング法、蒸発法、プラズマ法等)または液相法(化学還元法、加熱分解法、ポリオール法等)が挙げられる。銅微粒子の純度としては、98.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは99.0質量%以上である。これにより、焼結体の導電性を向上させることができる。また、銅微粒子の平均粒径としては、20~300nmとすることが好ましい。銅微粒子を化学還元法で用意する場合、溶媒に銅化合物を分散または溶解させて、さらに還元剤とカルボン酸類を溶媒に添加した上で銅化合物の還元反応を行うことにより、後述するカルボン酸類で被覆する工程を同時に行うことができ好ましい。
【0042】
<2.カルボン酸類で被覆する工程>
上記銅微粒子とカルボン酸類を混合させることにより、銅微粒子をカルボン酸類で被覆することができる。混合の際には、カルボン酸類が液体であれば、カルボン酸類に銅微粒子を添加して混合させてもよいし、カルボン酸類が固体であれば、適当な溶媒にカルボン酸類を溶解させた後、銅微粒子を添加して混合させてもよい。混合時の温度としては、25~90℃とすることが好ましく、混合時間としては10~180分とすることが好ましい。
【0043】
本発明の実施形態に係る<1.銅微粒子を用意する工程>および<2.カルボン酸類で被覆する工程>の一例を以下に示す。
まず、溶媒に銅化合物を分散または溶解させて、カルボン酸類と還元剤を溶媒中に添加し、昇温等の還元反応が進行する条件で反応させ、前記カルボン酸類で被覆された銅微粒子を生成する。
【0044】
溶媒としては、水と比較して極性の低いメタノール、エタノール、2-プロパノール等の低級アルコール類、アセトン等のケトン類を用いることができる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
銅化合物としては、溶媒中に粒子として分散する酸化銅(CuO)、亜酸化銅(Cu2O)、水酸化銅(Cu(OH)2)等、または、溶媒に一部あるいは全量が溶解して銅イオン溶液となるギ酸銅(Cu(HCOO)2)、酢酸銅(Cu(CH3COO)2)、硫酸銅(CuSO4)等の無水物もしくは水和物を用いることができる。
【0046】
銅化合物の添加量は、銅化合物の種類に依存し、特に限定されないが、銅微粒子の生産性、反応液の粘度上昇の抑制等の観点から、銅イオンの濃度が0.01~5mol/Lとなるように添加することが好ましく、より好ましくは0.1~3mol/Lである。
【0047】
カルボン酸類の添加量は、その鎖長などに依存するが、銅微粒子に対する被覆量を制御する観点等から、例えば溶媒中の銅イオンに対して0.0001~4当量の範囲が好ましく、0.002~0.1当量の範囲がより好ましい。
【0048】
還元剤としては、ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、泡水ヒドラジン等のヒドラジン系還元剤、水酸化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素酸塩、クエン酸、アスコルビン酸類が挙げられる。還元剤の添加量は、銅化合物との反応を考慮し、化学量論的に決定すればよい。
【0049】
銅化合物が分散又は溶解した溶媒を加熱することにより、銅化合物から、銅微粒子の金属核を還元し、カルボン酸類で被覆された銅微粒子が生成する。加熱温度としては、25~90℃とすることが好ましく、加熱時間としては10~300分とすることが好ましい。
【0050】
反応終了後、カルボン酸類で被覆された銅微粒子を有機溶剤等により洗浄、精製した後、分離、乾燥等を適宜に行ってもよい。
【0051】
<3.ビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置により分散させる工程>
上記のように生成したカルボン酸類で被覆された銅微粒子を分散媒中に添加してビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置により分散させる。この工程により、ビーズミルまたは高圧湿式微粒化装置で分散される過程でカルボン酸類および分散媒を介して適度に銅微粒子を酸化することができ、その結果Cu64Oを(場合によってはCu2Oも)生成でき、且つCu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu64Oの質量比を0.5~2.0質量%とすることができる。なお、高圧湿式微粒化装置は、液体(分散媒)に満たされた容器に増圧機に接続したプランジャーから高圧で(分散媒)を押し出しセラミックスボールに衝突させて微粒化する装置であり、例えば、スターバーストミニ((株)スギノマシン製)等が挙げられる。高圧湿式微粒化装置による分散は、ビーズミルによる分散と比較して、分散時のビーズ等によるコンタミが少なく好ましい。
【0052】
分散媒としては、銅微粒子(およびその酸化により生成される酸化物含有銅微粒子)を高濃度で分散させることができる観点から、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、アルカノール類、脂肪族多価アルコール類、脂環族アルコール類等のアルコール系溶媒、アミン系溶媒、酢酸エステル等のエステル系溶媒、鎖状ケトン類、環状ケトン類等のケトン系溶媒、鎖状エーテル類、環状エーテル類等のエーテル系溶媒、芳香族炭化水素類等の芳香族系溶媒、ハロアルカン類等のハロゲン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散媒の粘度としては、0.1Pa・s以上であることが銅微粒子(およびその酸化後に生成される酸化物含有銅微粒子)の分散性が向上するため好ましい。
【0053】
分散媒中の銅微粒子の添加量は、生産効率の観点から、例えば30質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。当該添加量の上限については特に制限されないが、その後塗布液として使用することを想定した場合、塗布性の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。分散媒中の銅微粒子の添加量を多くして分散させるためには、分散媒の粘度、ビーズの材質(密度)、ビーズ径(ビーズの個数)および回転数等を適宜調整すればよい。高圧湿式微粒化装置を使用する場合の種々の条件(例えば噴出圧力およびパス回数等)についても、使用する装置の仕様に応じて適宜調整すればよく、例えば、スターバーストミニ((株)スギノマシン製)を使用する場合、噴出圧力は100~245MPaとすることができ、パス回数は特に制限はないが、生産性の観点から1~20回としてもよい。
【0054】
分散媒には必要に応じて種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、カップリング剤、分散剤、着色剤、色相改良剤、染料定着材、光沢付与剤等が挙げられる。
【0055】
ビーズミルの分散時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気としてもよく、大気としてもよい。圧力は、特に制限されない。不活性ガス雰囲気下で分散させることで、Cu2Oを含まない、またはCu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0.5質量%未満である酸化物含有銅微粒子を生成することが可能となる。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられ、その純度が高い程、Cu2Oが少ない(または無い)酸化物含有銅微粒子を生成することができる。不活性ガスとしては、安価で入手しやすい点からN2が好ましく、例えば純度が4N以上のN2であることがより好ましい。一方、大気で分散させることで、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0.5質量%以上である酸化物含有銅微粒子を生成することが可能となる。高圧湿式微粒化装置の系内は、液体(分散媒)で満たされていることから、高圧湿式微粒化装置による分散時の雰囲気は特に制限されない。
【0056】
ビーズミルによる分散時の温度は、例えばカルボン酸類と分散媒の反応等を抑制するために、室温とすることが好ましい。分散時には、ビーズ同士の摩擦、セラミックスボールとの衝突等の影響で高温にならないよう、適宜冷却しながら行ってもよい。高圧湿式微粒化装置による分散時も同様に、セラミックスボールとの衝突等の影響で高温にならないよう、適宜冷却しながら行ってもよい。
【0057】
ビーズミルのビーズの材質としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア等を用いることができる。高密度、耐摩耗性等の観点からジルコニアを用いることが好ましい。ビーズ径としては、特に制限されず、銅微粒子の添加量等その他の条件に応じて適宜調整すればよいが、例えば1μm~2mmとすることができる。
【0058】
ビーズミルの撹拌部材(アジテータ)の回転数としては、3000rpm未満とすることが、銅微粒子の過剰な酸化、変形、融合、一体化および過分散を抑制する上で好ましい。一方、1000rpm以上とすることが、銅微粒子の凝集を解き、分散させ、表面を適度に酸化させる上で好ましい。また回転数を変化させて複数回分散を行ってもよく、例えば最初は1000~1500rpmで回転させておき、ある程度分散が進んでから1500~2500rpmに回転数を上げて分散を行ってもよい。
【0059】
ビーズミルでの分散時間は、特に制限されず、銅微粒子の添加量、分散媒およびビーズミルで用いるビーズ径等その他の条件に応じて適宜調整すればよいが、例えば10~180分とすることができる。
【0060】
ビーズミルによる分散終了後、ビーズと酸化物含有銅微粒子を適切なセパレータを用いて分離する。なお、高圧湿式微粒化装置を使用する場合、ビーズミルとは異なり、セラミックスボールが分散液中に入らないので、セラミックスボールと酸化物含有銅微粒子とを分離する必要はない。
以上により分散媒に分散された、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子を得ることができる。分散媒は必要に応じて乾燥等により除去してもよい。
【0061】
本発明の実施形態の目的が達成される範囲内で、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の製造方法は、他の工程を含んでいてもよい。
【0062】
以上のように本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の製造方法を説明したが、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の所望の特性を理解した当業者が試行錯誤を行い、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子を製造する方法であって、上記の製造方法以外の方法を見出す可能性がある。
【0063】
本発明の実施形態に係る銅微粒子焼結体の製造方法は、上記のようにして製造した酸化物含有銅微粒子を、不活性ガス雰囲気下にて、100℃~200℃に加熱して焼結させる工程を含む。上記における「不活性ガス雰囲気下」は、常圧(又はそれ以上の圧力)下であってもよい(すなわち、常圧であってもよく、常圧よりも加圧した状態であってもよい)。
【0064】
本発明の実施形態では、不活性ガス雰囲気下で焼結が可能である。当該雰囲気の圧力は、常圧(又はそれ以上の圧力)であってもよい。不活性ガス雰囲気下での加熱は、真空下での加熱とは異なり、バッチ処理を必要とせず生産性が高いという利点がある。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられ、安価で入手しやすい点から窒素(N2)を含むことが好ましく、より好ましくは不活性ガスが高純度(例えば4N以上)のN2からなることである。また、焼結体の導電性を向上させる観点から、不活性ガスに水素(H2)等の還元性ガスを混合してもよい。H2は、爆発下限界(4体積%)未満で不活性ガスに混合させることができ、例えば3体積%以下で混合させることができる。好ましくは不活性ガスが高純度(例えば4N以上)のN2からなり、さらにその不活性ガスに3体積%以下でH2が混合されていることである。
【0065】
本発明の実施形態では、200℃以下で焼結が可能である。基材等の耐熱性の観点から、加熱温度は低いほど好ましい。一方、生産性の観点からは、例えば100℃以上とすることが好ましい。より好ましくは120℃以上であり、さらに好ましくは150℃以上である。これにより加熱時間を短縮することができる。用途に応じて基材等の耐熱性が高い場合は、焼結体の導電性を向上させる観点で200℃超に加熱してもよい。
【0066】
本発明の実施形態では、加熱焼結時間は、加熱温度および銅微粒子の焼結体の厚さ等に応じて適宜調整され、例えば180分以下とすることができる。生産性の観点から、120分以下とすることが好ましい。
【0067】
本発明の実施形態に係る銅微粒子焼結体の製造方法において、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子を直接加熱して焼結体を生成してもよいし、当該微粒子を分散媒に分散させて、その分散液を基材上に塗布して加熱することにより焼結体を生成してもよい。分散媒としては、酸化物含有銅微粒子を高濃度で分散させることができる観点から、有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、例えば、アルカノール類、脂肪族多価アルコール類、脂環族アルコール類等のアルコール系溶媒、アミン系溶媒、酢酸エステル等のエステル系溶媒、鎖状ケトン類、環状ケトン類等のケトン系溶媒、鎖状エーテル類、環状エーテル類等のエーテル系溶媒、芳香族炭化水素類等の芳香族系溶媒、ハロアルカン類等のハロゲン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散液をスクリーン印刷に使用することを想定して、分散媒をエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の粘性の高い多価アルコール類としてもよく、分散液をインクジェット印刷に使用することを想定して、分散媒をメタノール、エタノール、2-プロパノール等の粘性の低い低級アルコールとしてもよい。また、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の製造方法で用いた分散媒をそのまま用いることが工程を簡易化できて好ましい。
【0068】
分散液は必要に応じて、種々の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、カップリング剤、分散剤、着色剤、色相改良剤、染料定着材、光沢付与剤等が挙げられる。
【0069】
基材は、有機材料または無機材料を使用できる。有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース誘導体、フッ素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。無機材料としては、例えば、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラスおよび耐熱ガラス等のガラス類、アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム-酸化錫系複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)およびアンチモンドープ酸化亜鉛(AZO)等の金属酸化物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせた複合材料であってもよい。基材の厚みは、特に限定されないが、基材を介して加熱する場合の熱伝達等を考慮して5mm以下が好ましい。
【0070】
分散液の塗布方法としては、慣用の方法を用いることができるが、配線等のパターンを形成する場合、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法、凸版印刷法、フレキソ印刷法、反転印刷等を使用できる。配線パターンの形成は、例えば、基材上に分散液を所望のパターンとなるように塗布し、上記条件で加熱することで行うことができる。
【0071】
塗布量は、特に限定されないが、例えば1~100g/m2とすることができる。焼結体の厚みとしては、特に限定されないが、例えば1~100μmとすることができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
【0073】
1Lフラスコに原料酸化銅(CuO、日進ケムコ製)0.1molに対して、溶媒アルコール(2-プロパノールまたはエタノール)を100mL投入し、攪拌羽根で十分に攪拌しながらカプロン酸を2~6mmolの範囲で添加、ウォーターバスにより70℃まで昇温した後、ヒドラジン一水和物を0.2mol添加して1~2時間反応させた。反応後は、室温まで冷却した後、遠心分離により上澄み液を除去した後、エタノール、アセトン、メタノール等の溶媒を用いて同様の操作を行うことで銅微粒子の精製を行った。最後に窒素フローにて十分に乾燥させて粉末を回収した。得られた粉末の水接触角を測定した結果高い疎水性を示し、微粒子表面がカプロン酸で被覆されていることを確認した。また、得られた粉末のXRDパターンを取得し、RIR法にて銅(Cu)の純度を解析した結果、99.0質量%以上であった。
【0074】
上記銅微粒子を分散媒中に添加して、ビーズミル(日本コークス工業(株)製、製品名:パウダーラボ)で分散させた。分散媒としてジプロピレングリコールを使用し、上記銅微粒子の含有量は50質量%とした。ビーズの材質はジルコニア(ZrO2)とし、ビーズ径は0.03mmとした。分散は、試料No.1では純度4Nの窒素雰囲気下で行い、試料No.2は大気下で行った。分散時は室温に維持し、ビーズミルのアジテータの回転数は最初1000rpmとして30分間分散を行い、その後2000rpmで30分間分散を行った。分散終了後、セパレータによりジルコニアビーズを分離して、ジプロピレングリコール中に分散され、カプロン酸で被覆された酸化物含有銅微粒子(試料No.1および2)を得た。
【0075】
試料No.1および2の酸化物含有銅微粒子のXRDパターンを取得した。なお、XRDパターンは、試料No.1および2の酸化物含有銅微粒子の分散液をそのまま試料基板に塗布して得た。
図1および2に試料No.1および2のXRDパターンをそれぞれ示す。
図1および
図2には、Cu、Cu
64OおよびCu
2Oに起因するピークのみ観察された。不可避不純物は、多くとも1.0質量%以下であったといえる。
試料No.1および2のCu、Cu
64OおよびCu
2Oの合計質量に対するCu
64OおよびCu
2Oの質量比については、RIR法を用いて算出した。すなわち、
図1および2の各成分の最強線(Cu(111)、Cu
64O(044)およびCu
2O(111))におけるベースラインを引いて決定したバックグラウンド強度は差し引いた積分強度および各RIR値(Cu:8.86、Cu
64O:4.89、Cu
2O:8.28)を用いて、当該質量比を算出した。なお、Cu(111)は2θ=43.298°、Cu
64O(044)は2θ=40.710°、Cu
2O(111)は2θ=36.419°の位置にそれぞれ回折ピークを有する。
【0076】
試料No.1および2の酸化物含有銅微粒子の端部の高分解TEM像を取得した。なお、TEM用試料は、高分解TEM用カーボンコートグリッド上に、試料No.1および2の酸化物含有銅微粒子の分散液を希釈して塗布し、真空乾燥して得た。
図3および4に試料No.1および2の高分解TEM像をそれぞれ示す。なお、基礎出願(日本国特許出願、特願第2020-144680号)においては、
図3および
図4については、格子縞の違いをより詳細に理解できるように、原図を物件提出書として本願と同時に提出している。必要に応じてこの原図も参照されたい。
図3および
図4において、1で示される領域は、Cu(111)の面間隔に対応する格子縞が確認される領域であり、2で示される領域は、Cu
64O(044)の面間隔に対応する格子縞が確認される領域であり、3で示される領域は、Cu
2O(111)の面間隔に対応する格子縞が確認される領域である。
図3および
図4において、1つの粒子にCu、Cu
64OおよびCu
2Oが存在することが確認された。
【0077】
ジプロピレングリコール中に分散された試料No.1および2の酸化物含有銅微粒子をアルミナ基板上に塗布し、常圧で、2種の加熱時の雰囲気(純度4Nの窒素雰囲気、または純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%)雰囲気)および3種の加熱温度(120℃、150℃、200℃)の合計6種の条件でそれぞれ60分間加熱し、焼結体を得た。得られた焼結体の体積抵抗率を、抵抗率計(三菱化学アナリテック製ロレスタGP)を用いて四探針法により測定した。結果を表1に示す。なお、表1において、「加熱条件」の「雰囲気」欄には、純度4Nの窒素雰囲気下で加熱した場合は「N2」と記載し、純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%)雰囲気下で加熱した場合は「N2-H2(3%)」と記載した。また、試料No.2の加熱条件が「圧力:常圧、加熱温度:120℃、雰囲気:N2」のとき、焼結体の抵抗値が非常に高く(>107Ω)体積抵抗率を測定できなかったため、体積抵抗率欄には「-」と記載した。
【0078】
【0079】
表1の結果より、次のように考察できる。表1の試料No.1および2は本発明の実施形態で規定する要件の全てを満足する例であり、常圧下200℃の加熱で、体積抵抗率が5.0×10-4Ω・cm以下であり、十分な導電性を示す焼結体が得られた。
【0080】
試料No.1は、本発明の好ましい1つの実施形態の要件、すなわちCu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0質量%以上0.5質量%未満を満たしており、常圧下150℃の加熱でも1.0×10-4Ω・cm以下であり、高い導電性を示す焼結体が得られ、常圧下120℃の加熱でも5.0×10-4Ω・cm以下であり、十分な導電性を示す焼結体が得られた。
【0081】
試料No.2は、本発明の好ましい別の実施形態の要件、すなわちCu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu2Oの質量比が0.5~2.0質量%を満たしており、常圧下200℃の加熱において体積抵抗率が1.5×10-5Ω・cm以下であり、より高い導電性を示す焼結体が得られた。
【0082】
試料No.1および2において、加熱時の不活性ガスN2に還元性ガスH2が混合されていることにより、H2を含まない場合と比較して、試料No.1の120℃での加熱を除いて、体積抵抗率が低くなった。
【0083】
図5に、試料No.1の酸化物含有銅微粒子を、常圧、純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%))雰囲気下、120℃に加熱した後の焼結体のSEM像を示し、
図6に、試料No.1の酸化物含有銅微粒子を、常圧、純度4Nの窒素および水素混合ガス(水素濃度3体積%))雰囲気下、200℃に加熱した後の焼結体のSEM像を示す。
図5(120℃で加熱、体積抵抗率:4.6×10
-4Ω・cm)と比較して、
図6(200℃で加熱、体積抵抗率:1.9×10
-5Ω・cm)では、銅微粒子同士がよくネッキングしていることが観察された。
【0084】
さらに、以下のようにして試料No.3の酸化物含有銅微粒子を作製し、当該試料No.3につき、接合材料としての接着強度を調査した。接着強度を調査した背景としては、近年のパワー半導体の動作温度の上昇により、従来接合材料として用いられていたはんだ類ではその融点が低いことから十分な強度が得られない場合があった。そのため、より高融点の金属接合材料と、その接合温度の低温度化とが求められてきている。そこで、本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子の接合材料としての適用可能性を検討するため、接着強度を調査した。
【0085】
試料No.1および2の場合と同様に用意した銅微粒子を分散媒中に添加して、高圧湿式微粒化装置(スターバーストミニ((株)スギノマシン製)で分散させた。なお、分散媒としてトリエタノールアミンを使用し、上記銅微粒子の含有量は90質量%とした。また、分散時の噴出圧力は150MPaとし、噴出後の分散液を0℃のアイスバスで冷却しながら分散を行い、これを5回繰り返した(すなわちパス回数を5回とした)。分散終了後、、トリエタノールアミン中に分散され、カプロン酸で被覆された酸化物含有銅微粒子(試料No.3)を得た。試料No.3につき、試料No.1および2の場合と同様にXRDパターンを取得し、Cu、Cu64OおよびCu2Oの合計質量に対するCu、Cu64OおよびCu2Oの質量比を算出した結果、Cu:98.8質量%、Cu64O:1.2質量%であり、Cu2Oは検出されなかった。
【0086】
上記試料No.3につき、接合材料としての接着強度を調査した。
まず、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて、試験片を無加圧で接合した時の接着強度を以下のようにして調査した。
銅円柱試験片1(φ5mm、高さ5mm)と、銅円柱試験片2(φ12mm、高さ5mm)を用意し、それぞれの平坦部の表面を鏡面研磨(研磨剤として粒度#4000および粒度0.5μmのアルミナを順に使用)した。研磨後、銅円柱試験片1および銅円柱試験片2を希塩酸にて洗浄した。洗浄後、銅円柱試験片2の平坦部の一方に、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を塗布した。なお、塗布の際に、円形の開口を有するメタルマスク(φ12mm、厚さ0.15mm、開口部:φ5mm)を用いて、当該平坦部の中心部にのみ塗布するようにした。該塗布面(φ5mm)に、銅円柱試験片1の平坦部の一方を密着させ、さらに160gの荷重を加えて30秒保持した。その後、銅円柱試験片1および銅円柱試験片2を、100mL/分のN
2フローにより不活性ガス雰囲気下にした加熱炉中に入れて加熱した。加熱時の、温度(および圧力)のプロファイルを
図7に示す。
図7より、加熱温度は200℃以下であったことがわかる。
以上のように、銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて無加圧で接合した。
【0087】
以上のように接合した試験片を用いて、接着強度を測定した。
図8に接着強度測定方法を説明するための模式図を示す。
図8のように、銅円柱試験片1を治具3で挟み、銅円柱試験片2を破線矢印の方向に1mm/分で移動させたときにかかる最大負荷(MPa)を接着強度として評価した。
図9に接着強度測定結果を示す。なお、
図8における接着強度測定時の破線矢印の方向への移動および負荷の検出は、自動サーボスタンド(JSV-H1000、日本計測システム株式会社製)およびハンディデジタルフォースゲージ(HF-100、日本計測システム株式会社製)を用いて行った。
図9より、銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて無加圧で接合したときの接着強度は、17.0MPaであった。
【0088】
上記接着強度測定後の銅円柱試験片1および2の接合面(破断面)を、光学顕微鏡(VHX-7000、株式会社キーエンス製)により観察した。
図10に銅円柱試験片1の破断面の光学顕微鏡像を示し、
図11に銅円柱試験片2の破断面の光学顕微鏡像を示す。
図10および
図11より、銅円柱試験片1よりも、銅円柱試験片2の方に試料No.3の酸化物含有銅微粒子の焼結体が多く残っていた。さらに銅円柱試験片2の破断面をFE-SEM(JSM-6701F、日本電子株式会社製)を用いて観察した。
図12に銅円柱試験片2の破断面のFE-SEM像を示す。
図12に示すように、
図6と同様に試料No.3の酸化物含有銅微粒子同士がよくネッキングしており、良好な焼結状態が確認された。そのため、
図12に示される酸化物含有銅微粒子の焼結体は十分な導電性を示すと考えられる。
【0089】
次に、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて、試験片を加圧接合した時の接着強度を以下のようにして調査した。
上記と同様にして、銅円柱試験片2に試料No.3の酸化物含有銅微粒子を塗布した。当該塗布面(φ5mm)に、銅円柱試験片1の平坦部の一方を密着させ、さらに5kgの荷重を加えて10秒保持した。その後、銅円柱試験片1および銅円柱試験片2を、100mL/分のN
2フローにより不活性ガス雰囲気下にした加熱炉中に入れて、試験片の平坦部に荷重を加えて加圧しながら加熱した。加熱時の、温度および圧力のプロファイルを
図13に示す。
図13より、加熱温度は200℃以下であったことがわかる。
【0090】
以上のように接合した試験片を用いて、接着強度を測定した。
図8のように、銅円柱試験片1を治具3で挟み、銅円柱試験片2を破線矢印の方向に1mm/分で移動させたときにかかる最大負荷(MPa)を接着強度として評価した。
図14に接着強度測定結果を示す。なお、
図8における接着強度測定時の破線矢印の方向への移動および負荷の検出は、小型卓上試験機(EZ-X、株式会社島津製作所製)を用いて行った。
図14より、銅円柱試験片1と銅円柱試験片2を、試料No.3の酸化物含有銅微粒子を用いて加圧接合したときの接着強度は、63.9MPaであった。
【0091】
上記接着強度測定後の銅円柱試験片1および2の接合面(破断面)を、光学顕微鏡(VHX-7000、株式会社キーエンス製)により観察した。
図15に銅円柱試験片1の破断面の光学顕微鏡像を示し、
図16に銅円柱試験片2の破断面の光学顕微鏡像を示す。
図15および
図16より、銅円柱試験片1と銅円柱試験片2の両方に試料No.3の焼結体が残っていた。さらに銅円柱試験片2の破断面をFE-SEM(JSM-6701F、日本電子株式会社製)を用いて観察した。
図17に銅円柱試験片2の破断面のFE-SEM像を示す。
図17より、試料No.3の酸化物含有銅微粒子同士がよくネッキングしており、良好な焼結状態が確認された。そのため、
図17に示される酸化物含有銅微粒子の焼結体は十分な導電性を示すと考えられる。
【0092】
本出願は、出願日が2020年8月28日である日本国特許出願、特願第2020-144680号を基礎出願とする優先権主張を伴う。特願第2020-144680号は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の実施形態に係る酸化物含有銅微粒子は、2段階の加熱および追加の銅材料を必要とせず、常圧(又はそれ以上の圧力)下200℃以下の一度の加熱により、十分な導電性を示す焼結体が得られるため、例えばプリント基板(特に、フレキシブル基板)の回路形成材料、およびその他微小配線材料の他、熱伝導用途としてパワー半導体のダイボンディング材として利用可能である。また、帯電防止材、電磁波遮断材、赤外線遮断材等としても利用可能である。