(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
G03F 1/86 20120101AFI20240621BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240621BHJP
H01J 37/20 20060101ALI20240621BHJP
G01N 23/2251 20180101ALN20240621BHJP
【FI】
G03F1/86
H01J37/28 B
H01J37/20 A
G01N23/2251
(21)【出願番号】P 2020063490
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 力
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-099540(JP,A)
【文献】特開2007-053035(JP,A)
【文献】特開2012-064567(JP,A)
【文献】国際公開第2007/086400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/86
H01J 37/28
H01J 37/20
G01N 23/2251
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、
第2の導電膜と、前記第2の導電膜の上に設けられパターンが形成された吸収体と、を有する第1の領域と、
前記第1の領域の周囲に設けられ第3の導電膜を有する第2の領域と、
を有する第2の面と、を有する被検査試料の前記パターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、
前記第1の面に第1の電圧を印加する第1の電圧印加回路と、
前記照射により前記パターンから生じる検査画像を取得する検出器と、
前記第3の導電膜を介して前記第2の面に第2の電圧を印加する第2の電圧印加回路と、
を備え、
前記電子ビームに含まれる電子の加速電圧をV
acc、前記第2の面に到達する前記電子の入射電圧をV
L、前記第1の電圧をV
1
、前記第2の電圧をV
2
としたときに、
|V
acc―V
L|
=|V
2
|<|V
1|
である検査装置。
【請求項2】
第1の面と、パターンが形成された第2の面と、を有する被検査試料の前記パターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、
前記第1の面に、第1の電圧と、前記第1の電圧より小さい第1の微小電圧と、の和を印加する第1の電圧印加回路と、
前記照射により前記パターンから生じる検査画像を取得する検出器と、
を備え、
前記電子ビームに含まれる電子の加速電圧をV
acc
、前記第2の面に到達する前記電子の入射電圧をV
L
、前記第1の電圧をV
1
としたときに、
|V
acc
―V
L
|<|V
1
|
であり、
前記第1の微小電圧をΔV
1
としたときに、
|V
acc
―V
L
|<|V
1
+ΔV
1
|
である検査装置。
【請求項3】
前記被検査試料は、前記第1の面に設けられた第1の導電膜をさらに有し、
前記第1の電圧印加回路は前記第1の導電膜を介して前記第1の面に前記第1の電圧を印加する請求項1
又は請求項2記載の検査装置。
【請求項4】
第1の面と、パターンが形成された第2の面と、を有する被検査試料の前記パターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、
前記第1の面に第1の電圧を印加する第1の電圧印加回路と、
前記第2の面に第2の電圧を印加する第2の電圧印加回路と、
前記照射により前記パターンから生じる検査画像を取得する検出器と、
を備え、
前記電子ビームに含まれる電子の加速電圧をV
acc、前記第2の面に到達する前記電子の入射電圧をV
L、前記第1の電圧をV
1、前記第2の電圧をV
2としたときに、
|V
acc―V
L|=|V
2|<|V
1|
である検査装置。
【請求項5】
前記第1の電圧印加回路は、前記第1の面に、前記第1の電圧と、前記第1の電圧より小さい第1の微小電圧と、の和を印加し、
前記第2の電圧印加回路は、前記第2の面に、前記第2の電圧と、前記第2の電圧より小さい第2の微小電圧と、の和を印加し、
前記第1の微小電圧をΔV
1、前記第2の微小電圧をΔV
2としたときに、
|V
acc―V
L|=|V
2+ΔV
2|<|V
1+ΔV
1|
である請求項
4記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。例えば、電子ビームをEUV(Extreme Ultraiolet)マスクに照射して、放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置に関する。
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。これらの半導体素子は、回路パターンが形成された原画パターン(マスク或いはレチクルともいう。以下、マスクと総称する)を用いて、いわゆるステッパと呼ばれる縮小投影露光装置でウェハ上にパターンを露光転写して回路形成することにより製造される。
【0003】
そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、液浸露光とマルチパターニング技術によって既に20nmを切る加工寸法が実現され、さらにはEUV(Extreme Ultraviolet)露光の実用化により10nmを切る微細加工が実現されようとしている。また、NIL(NanoImprintingLithography)やDSA(Directed Self―Assembly,自己組織化リソグラフィ)など、露光機を使う以外の微細加工技術の実用化も進んでいる。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっており、同じ面積であっても検査しなければならないパターン数も膨大なものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査する検査装置の高精度化と高速化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。このため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査する検査装置の高精度化が必要とされている。
【0004】
検査手法としては、拡大光学系を用いて半導体ウェハ等のウェハやリソグラフィマスク等のマスクといった被検査試料の上に形成されているパターンを所定の倍率で撮像した光学画像と、設計データ、あるいは被検査試料上の同一パターンを撮像した光学画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、検査方法として、同一マスク上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計されたCADデータをマスクにパターン描画する時に描画装置が入力するための装置入力フォーマットに変換した描画データ(設計パターンデータ)を検査装置に入力して、これをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、この設計画像データと、パターンを撮像した測定データとなる光学画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。かかる検査装置における検査方法では、検査対象基板はステージ(試料台)上に載置され、ステージが動くことによって光束が被検査試料上を走査し、検査が行われる。検査対象基板には、光源及び照明光学系によって光束が照射される。検査対象基板を透過あるいは反射した光は光学系を介して、センサ上に結像される。センサで撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0005】
上述した検査装置では、レーザ光を検査対象基板に照射して、この透過像或いは反射像を撮像することにより、光学画像を取得する。一方、近年、露光波長が13.5nmであるEUV光源を用いたリソグラフィ(EUVリソグラフィ)が注目されている。露光波長193nmのArFエキシマレーザーを用いたArF液浸リソグラフィと比較すると、露光波長/(NA)で1/4~1/5程度となるため、EUVリソグラフィでは大幅な解像力の向上が期待できる。そのため、EUVマスクの欠陥検査を行う装置の開発が求められている。
【0006】
EUVマスクは、例えばマスク基板として用いられる極低熱膨張ガラスの表面に、EUV光の反射膜となるSi(シリコン)/Mo(モリブデン)多層膜、Ru(ルテニウム)などからなるバッファー層、及び所定のパターンを有する吸収体を形成することで得られる。吸収体としては、例えばTa(タンタル)を含む合金が提案されている。ここで、EUV光の波長領域は容易に材料に吸収されてしまい、光の屈折を利用したレンズを利用することが出来ない。このため、投影光学系はすべて反射光学系で構成されている。よって、EUVマスクも上述のような反射型のマスクとなる。
【0007】
EUVマスクの検査を行う際には、EUVマスクの帯電を抑制して高分解能の検査画像を取得するために、EUVマスクのパターンが設けられている面における、電子ビームの入射電圧(Landing Voltage)又はランディングエネルギー(Landing Energy)を適切に制御することが好ましい。入射電圧の制御のためには、電子ビームに含まれる電子の加速電圧を変化させる方法と、電子ビームに含まれる電子を減速させるリターディング電圧をEUVマスクに印加する方法と、が考えられる。しかし、パターンが設けられている面における電子のエネルギーを精密に制御して、検査画像の分解能を向上させるためには、リターディング電圧をEUVマスクに印加することが好ましい。
【0008】
ここで、マスク基板は、上述のように低熱膨張ガラスであるため、絶縁体である。そのため、マスク基板にリターディング電圧を印加して、電子のエネルギーを制御することは出来ない。一方、上述のSi/Mo多層膜は、電気伝導性を有する。このため、Si/Mo多層膜にリターディング電圧を印加することにより、EUVマスクのパターンが設けられている面に対して均一にリターディング電圧を印加することが可能である。しかし、パターンが設けられている面にリターディング電圧を印加する領域を別途設けると、1枚のマスクで製造可能な半導体素子の数が、リターディング電圧を印加する領域の分だけ少なくなってしまう、という問題があった。
【0009】
特許文献1には、Mo/Si多層膜の端部に電極を形成してリターディング電圧をかけ、Si集束イオンビームで異物及びMo/Si多層膜を除去する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、素子歩留まりの向上と高分解能を有する検査画像の取得を両立可能な検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、第1の面と、第2の導電膜と、第2の導電膜の上に設けられパターンが形成された吸収体と、を有する第1の領域と、第1の領域の周囲に設けられ第3の導電膜を有する第2の領域と、を有する第2の面と、を有する被検査試料のパターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、第1の面に第1の電圧を印加する第1の電圧印加回路と、照射によりパターンから生じる検査画像を取得する検出器と、第3の導電膜を介して第2の面に第2の電圧を印加する第2の電圧印加回路と、を備え、電子ビームに含まれる電子の加速電圧をVacc、第2の面に到達する電子の入射電圧をVL、第1の電圧をV1
、第2の電圧をV
2
としたときに、|Vacc―VL|=|V
2
|<|V1|である。また、本発明の一態様のマルチ電子ビーム検査装置は、第1の面と、パターンが形成された第2の面と、を有する被検査試料のパターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、第1の面に、第1の電圧と、第1の電圧より小さい第1の微小電圧と、の和を印加する第1の電圧印加回路と、照射によりパターンから生じる検査画像を取得する検出器と、を備え、電子ビームに含まれる電子の加速電圧をV
acc
、第2の面に到達する電子の入射電圧をV
L
、第1の電圧をV
1
としたときに、|V
acc
―V
L
|<|V
1
|であり、第1の微小電圧をΔV
1
としたときに、|V
acc
―V
L
|<|V
1
+ΔV
1
|である。
【0013】
上記態様の検査装置において、被検査試料は、第1の面に設けられた第1の導電膜をさらに有し、第1の電圧印加回路は第1の導電膜を介して第1の面に第1の電圧を印加することが好ましい。
【0016】
また、本発明の他の態様の検査装置は、第1の面と、パターンが形成された第2の面と、を有する被検査試料のパターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、第1の面に第1の電圧を印加する第1の電圧印加回路と、第2の面に第2の電圧を印加する第2の電圧印加回路と、照射によりパターンから生じる検査画像を取得する検出器と、を備え、電子ビームに含まれる電子の加速電圧をVacc、第2の面に到達する電子の入射電圧をVL、第1の電圧をV1、第2の電圧をV2としたときに、|Vacc―VL|=|V2|<|V1|である。
【0017】
上記態様の検査装置において、第1の電圧印加回路は、第1の面に、第1の電圧と、第1の電圧より小さい第1の微小電圧と、の和を印加し、第2の電圧印加回路は、第2の面に、第2の電圧と、第2の電圧より小さい第2の微小電圧と、の和を印加し、第1の微小電圧をΔV1、第2の微小電圧をΔV2としたときに、|Vacc―VL|=|V2+ΔV2|<|V1+ΔV1|であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、素子歩留まりの向上と高分解能を有する検査画像の取得を両立可能な検査装置の提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態における検査装置の模式構成図である。
【
図2】実施形態における成形アパーチャアレイ部材の構成を示す概念図である。
【
図3】実施形態における基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
【
図4】実施形態におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
【
図5】実施形態において用いられるEUVマスクの模式断面図である。
【
図6】実施形態における検査方法のフローチャートである。
【
図7】実施形態の検査装置の作用効果を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0021】
(実施形態)
実施形態の検査装置は、第1の面と、パターンが形成された第2の面と、を有する被検査試料のパターンに、電子ビームの照射を行う照射源と、第1の面に第1の電圧を印加する第1の電圧印加回路と、照射によりパターンから生じる検査画像を取得する検出器と、を備え、電子ビームに含まれる電子の加速電圧をVacc、第2の面に到達する電子の入射電圧をVL、第1の電圧をV1としたときに、|Vacc―VL|<|V1|である。
【0022】
図1は、本実施形態における検査装置の構成を示す構成図である。
図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、荷電粒子ビーム検査装置の一例である。電子ビームは、荷電粒子ビームの一例である。検査装置100は、電子光学画像取得機構(画像取得機構)155、及び制御系回路160(制御部)を備えている。電子光学画像取得機構(画像取得機構)155は、電子ビームカラム102(電子鏡筒)、検査室103、検出回路106、ストライプパターンメモリ123、駆動機構127、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃(照射源)201、電磁レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、縮小レンズ205、電磁レンズ206、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板213、ビームセパレーター214、電磁レンズ224,226、及びマルチ検出器222が配置されている。なお、マルチ検出器222は、検出器の一例である。
【0023】
検査室103内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ(試料台)105が配置される。XYステージ105上には、被検査試料(EUVマスク)400が配置される。被検査試料(EUVマスク)400は、例えば、パターン形成面を上側に向けて、XYステージ105上に設けられた支持部104の上に配置される。また、XYステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続される。
【0024】
制御系回路160では、コンピュータである制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、展開回路111、ステージ制御回路114、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、画像保存部132、フィルタ回路139、分割回路140、第1の電圧印加回路142、第2の電圧印加回路144、第1の電圧制御回路146、第2の電圧制御回路148、磁気ディスク装置等の設計データ保存部109、モニタ117、メモリ118、プリンタ119、に接続されている。また、XYステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下に駆動機構127により駆動される。駆動機構127では、例えば、X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることが出来る。XYステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。
【0025】
電子銃201には、図示しない高圧電源回路が接続され、電子銃201内の図示しないフィラメントと引出電極間への高圧電源回路からの加速電圧の印加と共に、所定の引出電極の電圧の印加と所定の温度のカソード(フィラメント)の加熱によって、カソードから放出された電子群が加速させられ、電子ビームとなって放出される。縮小レンズ205、及び対物レンズ207は、例えば電磁レンズが用いられ、共にレンズ制御回路124によって制御される。また、ビームセパレーター214もレンズ制御回路124によって制御される。一括ブランキング偏向器212は、少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208、及び副偏向器209は、それぞれ少なくとも4極の電極群により構成され、偏向制御回路128によって制御される。
【0026】
被検査試料(EUVマスク)400にマスクパターンを形成する基になる設計パターンデータは、検査装置100の外部から入力され、設計データ保存部109に格納される。
【0027】
ここで、
図1では、本実施形態を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0028】
図2は、本実施形態における成形アパーチャアレイ基板203の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m
1列×縦(y方向)n
1段(m
1,n
1は2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。
図2の例では、512×512の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ外径の円形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチ1次電子ビーム20が形成されることになる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。次に検査装置100における電子光学画像取得機構155の動作について説明する。
【0029】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、電磁レンズ202によって屈折させられ、成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、
図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、マルチ1次電子ビーム(マルチビーム)20が形成される。
【0030】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ(縮小レンズ)205、及び電磁レンズ206によってそれぞれ屈折させられ、中間像及びクロスオーバーを繰り返しながら、マルチ1次電子ビーム20の各ビームのクロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214を通過して電磁レンズ207(対物レンズ)に進む。そして、電磁レンズ207は、マルチ1次電子ビーム20を被検査試料400にフォーカス(合焦)する。電磁レンズ207により被検査試料400上に焦点が合わされた(合焦された)マルチ1次電子ビーム20は、主偏向器208及び副偏向器209によって一括して偏向され、各ビームの被検査試料400上のそれぞれの照射位置に照射される。なお、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板213の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板213によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、
図1に示すように制限アパーチャ基板213の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板213は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板213を通過したビーム群により、検査用(画像取得用)のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0031】
被検査試料400の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されると、かかるマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して被検査試料400からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)が放出される。
【0032】
被検査試料400から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、電磁レンズ207を通って、ビームセパレーター214に進む。
【0033】
ここで、ビームセパレーター214はマルチ1次電子ビーム20の中心ビームが進む方向(電子軌道中心軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。このため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離する。
【0034】
斜め上方に曲げられ、マルチ1次電子ビーム20から分離したマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、電磁レンズ224,226によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222には、反射電子及び2次電子が投影されても良いし、反射電子は途中で発散してしまい残った2次電子が投影されても良い。マルチ検出器222は、例えば図示しない2次元センサを有する。そして、マルチ2次電子ビーム300の各2次電子が2次元センサのそれぞれ対応する領域に衝突して、電子を発生し、2次電子画像データを画素毎に生成する。マルチ検出器222にて検出された強度信号は、検出回路106に出力される。
【0035】
図3は、本実施形態における被検査試料400に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図3において、被検査試料400の第1の領域420には、複数のマスクパターン432が2次元のアレイ状に形成されている。第1の領域420は、例えば、検査領域である。各マスクパターン432には、1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各マスクパターン432内は、例えば、2次元状の横(x方向)m
2列×縦(y方向)n
2段(m
2,n
2は2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。本実施形態では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。なお、
図3においては、後述する第2の領域422及び第3の領域424は図示されていない。
【0036】
図4は、本実施形態におけるマルチビームの照射領域と測定用画素との一例を示す図である。
図4において、各マスクダイ33は、例えば、マルチビームのビーム径でメッシュ状の複数のメッシュ領域に分割される。かかる各メッシュ領域が、測定用画素36(単位照射領域)となる。
図4の例では、8×8列のマルチビームの場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(マルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(マルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。
図4の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、照射領域34内に、1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な複数の測定用画素28(1ショット時のビームの照射位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う測定用画素28間のピッチがマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図4の例では、隣り合う4つの測定用画素28で囲まれると共に、4つの測定用画素28のうちの1つの測定用画素28を含む正方形の領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図4の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素36で構成される場合を示している。
【0037】
本実施形態におけるスキャン動作では、マスクダイ33毎にスキャン(走査)される。
図4の例では、ある1つのマスクダイ33を走査する場合の一例を示している。マルチ1次電子ビーム20がすべて使用される場合には、1つの照射領域34内には、x,y方向に(2次元状に)m
1×n
1個のサブ照射領域29が配列されることになる。1つ目のマスクダイ33にマルチ1次電子ビーム20が照射可能な位置にXYステージ105を移動させ停止させる。この位置で主偏向器208によって、マルチ1次電子ビーム20が走査するマスクダイ33の基準位置にマルチ1次電子ビーム20全体を一括偏向させ、当該マスクダイ33を照射領域34として当該マスクダイ33内を走査(スキャン動作)する。XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行う場合には、主偏向器208によって、さらにXYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。マルチ1次電子ビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置に相当する1つの測定用画素28を照射することになる。
図4の例では、副偏向器209によって、各ビームは、1ショット目に担当サブ照射領域29内の最下段の右から1番目の測定用画素36を照射するように偏向される。そして、1ショット目の照射が行われる。続いて、副偏向器209によってマルチ1次電子ビーム20全体を一括してy方向に1測定用画素36分だけビーム偏向位置をシフトさせ、2ショット目に担当サブ照射領域29内の下から2段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。同様に、3ショット目に担当サブ照射領域29内の下から3段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。4ショット目に担当サブ照射領域29内の下から4段目の右から1番目の測定用画素36を照射する。次に、副偏向器209によってマルチ1次電子ビーム20全体を一括して最下段の右から2番目の測定用画素36の位置にビーム偏向位置をシフトさせ、同様に、y方向に向かって、測定用画素36を順に照射していく。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべての測定用画素36を順に照射していく。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で各穴22と同数の複数のショットに応じたマルチ2次電子ビーム300が一度に検出される。
【0038】
以上のように、マルチ1次電子ビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチ1次電子ビーム20のショットにより、その都度、照射された測定用画素36からマルチ2次電子ビーム300が放出され、マルチ検出器222にて検出される。本実施形態では、マルチ検出器222の単位検出領域サイズは、各測定用画素36から上方に放出されたマルチ2次電子ビーム300を測定用画素36毎(或いはサブ照射領域29毎)に検出する。
【0039】
以上のようにマルチ1次電子ビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。なお、ステップアンドリピート動作で各マスクダイ33のスキャンを行っても良いし、XYステージ105を連続移動させながら各マスクダイ33のスキャンを行う場合であってもよい。照射領域34がマスクダイ33よりも小さい場合には、当該マスクダイ33中で照射領域34を移動させながらスキャン動作を行えばよい。
【0040】
以上のように、電子光学画像取得機構155は、マルチ1次電子ビーム20を用いて、パターンが形成された基板(ウェハ)101上を走査し、マルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板(ウェハ)101から放出される、マルチ2次電子ビーム300を検出する。マルチ検出器222によって検出された各測定用画素36からの2次電子の検出データ(2次電子画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、ストライプパターンメモリ123に格納される。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路141に転送される。
【0041】
図5は、実施形態において用いられる被検査試料(EUVマスク)400の模式断面図である。
【0042】
被検査試料400は、第1の面450と、第1の面450の反対側に設けられた第2の面452と、を有する。
【0043】
被検査試料400には、基板404が用いられている。基板404としては、合成石英を用いた基板や、露光中の熱歪みを抑制するため、石英より熱膨張率の小さな極低熱膨張ガラスを用いた基板が、好ましく用いられる。
【0044】
基板404の一方の面でもある第1の面450には、第1の導電膜402が設けられている。第1の導電膜402は、例えばCrN(窒化クロム)で形成されている。被検査試料(EUVマスク)400の面は、完全に平坦であることが望ましい。しかし現実には、基板404の初期形状や、Si/Mo多層膜の形成や吸収体の形成に伴う応力により、被検査試料(EUVマスク)400は、基板の形状や基板変形に起因するフラットネスの誤差を有している。そのため、EUV光を反射する反射面の凹凸が、ウェハ上でのパターン歪となって形成されることとなる。これを抑制するために、Si/Mo多層膜の蒸着装置や露光装置では被検査試料(EUVマスク)400の固定に静電チャックが導入されている。第1の導電膜402を用いて、かかる静電チャックにマスクの固定を行う。これにより、被検査試料(EUVマスク)400を静電気力で保持できるため、パターンのフラットネスが維持される。
【0045】
なお、第1の面450には、第1の導電膜402の周囲に第1の導電膜402が設けられていない領域が設けられていても良い。XYステージ105の上に被検査試料400を支持する際に、上述の第1の導電膜が設けられていない領域を支持部104によって支持することにより、第1の導電膜にダメージを与えないようにすることができる。
【0046】
基板404の他方の面でもある第2の面452には、第1の領域420と、第2の領域422と、第3の領域424と、が設けられている。ここで、第2の領域422は、第1の領域420の周囲に設けられている。第3の領域424は、第1の領域420と第2の領域422の間に設けられている。例えば、第2の領域422は第3の領域424を取り囲むように設けられている。また、例えば、第3の領域424は第1の領域420を取り囲むように設けられている。
【0047】
第1の領域420には、第2の導電膜406が設けられている。ここで、第2の導電膜406は、Siを含むSi膜406a及びMoを含むMo膜406bを、例えば40周期以上60周期以下の程度で積層した多層膜である。第2の導電膜406は、EUV光の反射膜である。なお
図5においては、Si膜406a及びMo膜406bの積層階数を省略して図示している。
【0048】
バッファー層410は、第2の導電膜406の上に設けられている。バッファー層410は、後述する吸収体412のエッチング時、及び吸収体412の欠陥修正時に、第2の導電膜406を保護するために設けられている。
【0049】
吸収体412は、バッファー層410の上に設けられている。バッファー層410及び吸収体412には、パターン414が形成されている。パターン414は、例えば、
図3において示した、複数のマスクパターン432を含む。なお、吸収体412の上には、さらに図示しない酸化物層等が設けられていても良い。
【0050】
第2の領域422には、第3の導電膜408が設けられている。ここで、第3の導電膜408は、Siを含むSi膜408a及びMoを含むMo膜408bを、例えば40周期以上60周期以下の程度で積層した多層膜であり、EUV光の反射膜である。なお
図5においては、Si膜408a及びMo膜408bの積層階数を省略して図示している。なお、第3の導電膜408の上には、さらに図示しないバッファー層、吸収体又は酸化物層等が設けられていても良い。
【0051】
第3の領域424には、Si膜、Mo膜、バッファー層、吸収体、酸化物層のいずれも設けられていない。言い換えると、第3の領域424においては、基板404の表面がむき出しになっている。第3の領域424は、ブラックボーダーと呼ばれる領域である。第3の領域424は、露光時にパターン414以外の部分で反射された露光光による、意図しない露光を抑制するために設けられた領域である。
【0052】
第1の電圧印加回路142(
図1)は、第1の導電膜402を介して第1の面450に、例えば配線143を用いて、第1の電圧V
1と、第1の電圧V
1より小さい第1の微小電圧ΔV
1を印加する。ここで、第1の電圧V
1は、例えば負の電圧である。第1の電圧V
1の大きさは、例えば数十kVの程度である。一方、第2の電圧印加回路144(
図1)は、第3の導電膜408を介して第2の面452に、例えば配線145を用いて、第2の電圧V
2と、第2の電圧V
2より小さい第2の微小電圧ΔV
2を印加する。ここで、第1の微小電圧ΔV
1及び第2の微小電圧ΔV
2は、被検査試料400の膜厚に応じて、変化されるものである。
【0053】
なお、第2の電圧V2と第2の微小電圧ΔV2を印加する際には、例えば配線145の先端を鋭利なものとしておいて、酸化物層等を破壊して第3の導電膜と配線145を直接接するものとしても良いし、又は酸化物層等を事前に除去しておいても良い。
【0054】
第1の微小電圧ΔV1と第2の微小電圧ΔV2については、例えば、オペレーター又は制御計算機110が、検査中に、適宜変化させることが出来る。又は、例えば、第1の電圧制御回路146及び第2の電圧制御回路148を用いて、焦点を合わせるために、又は基板404の膜厚に応じて、適宜第1の微小電圧ΔV1及び第2の微小電圧ΔV2を変化させても良い。
【0055】
なお、第1の微小電圧ΔV1及び第2の微小電圧ΔV2は、勿論0ボルトであってもかまわない。その場合には、第1の電圧印加回路142を用いて第1の電圧V1を第1の面450に印加し、第2の電圧印加回路144を用いて第2の電圧V2を第2の面452に印加していることになる。
【0056】
電子ビームに含まれる電子の加速電圧をVacc、第2の面452に到達する、電子ビームに含まれる電子の入射電圧をVLとしたときに、|Vacc―VL|=|V2+ΔV2|<|V1+ΔV1|の関係が満たされることが好ましい。なお、第1の微小電圧ΔV1及び第2の微小電圧ΔV2が0ボルトである場合には、上述の関係は、|Vacc―VL|=|V2|<|V1|となる。ここで、電子の入射電圧VLとは、電子ビームに含まれる電子が第2の面452に到達したときのランディングエネルギーEL(単位はeV)を、電圧に換算したものである。例えばランディングエネルギーELと入射電圧VLの関係は、EL/(1.6×10-19)=VLの関係式により表記される。加速電圧Vaccの一例は10kVであり、入射電圧VLの一例は2kVであり、第1の電圧V1の一例は-13kVであり、第2の電圧V2の一例は-8kVである。なお、加速電圧Vacc、入射電圧VL、第1の電圧V1及び第2の電圧V2は、上述の電圧に限定されるものではない。
【0057】
第1の電圧V1と第1の微小電圧ΔV1は、|V1/100|≦|ΔV1|≦|V1/10|の関係を満たすことが好ましい。また、第2の電圧V2と第2の微小電圧ΔV2は、|V2/100|≦|ΔV2|≦|V2/10|の関係を満たすことが好ましい。
【0058】
なお、第1の電圧印加回路142及び第2の電圧印加回路144の構成は特に限定されるものではない。例えば第1の電圧印加回路142について、第1の電圧V1を印加する第1の電圧主回路と、第1の微小電圧ΔV1を印加する第1の電圧補助回路と、を有する構成としても構わないが、この限りではない。第2の電圧印加回路144についても同様である。
【0059】
図6は、実施形態における検査方法のフローチャートである。
【0060】
まず、被検査試料400を、XYステージ105の、例えば支持部104の上に載置する。次に、被検査試料400のパターン414に、マルチ1次電子ビーム20の照射を行う(S10)。次に、第1の電圧印加回路142を用いて、第1の導電膜402を介して第1の面450に第1の電圧V1と第1の微小電圧ΔV1の和を印加する(S20)。次に、第2の電圧印加回路144を用いて、第3の導電膜408を介して第2の面452に第2の電圧V2と第2の微小電圧ΔV2の和を印加する(S30)。次に、マルチ検出器222を用いてパターン414から生じたマルチ2次電子ビーム300を検出し、さらに検出回路106等を用いて検査画像を取得する(S40)。なお、例えば、第1の電圧V1と第1の微小電圧ΔV1の和の印加と、第2の電圧V2と第2の微小電圧ΔV2の和を印加する順番は、特に上記のものに限定されるものではない。例えば、下記のような順番であってもかまわない。すなわち、第1の電圧印加回路142を用いて、第1の導電膜402を介して第1の面450に第1の電圧V
1
と第1の微小電圧ΔV
1
の和を印加する(S20)のとほぼ同時に、第2の電圧印加回路144を用いて、第3の導電膜408を介して第2の面452に第2の電圧V
2
と第2の微小電圧ΔV
2
の和を印加する(S30)。その後に、被検査試料400のパターン414に、マルチ1次電子ビーム20の照射を行う(S10)。次に、マルチ検出器222を用いてパターン414から生じたマルチ2次電子ビーム300を検出し、さらに検出回路106等を用いて検査画像を取得する(S40)。
【0061】
次に、本実施形態の検査装置及び検査方法の作用効果を記載する。
【0062】
本実施形態の検査装置のように、第1の面450に第1の電圧V1と第1の微小電圧ΔV1の和を印加することにより、第2の面452のパターンが形成された領域に対してリターディング電圧を印加するための領域を、別途設ける必要がなくなる。そのため、上記のリターディング電圧を印加するための領域には、より多くの素子を形成することが出来る。従って、素子歩留まりの向上と高分解能を有する検査画像の取得を両立可能な検査装置の提供が可能となる。
【0063】
特に、EUVマスクには、上述の通り、パターンのフラットネスを維持するために、第1の面450に第1の導電膜402が設けられている。そのため、第1の導電膜を介して第1の面450に電圧を容易に印加することが可能である。
【0064】
図7は、本実施形態の作用効果を説明するための模式図である。電子ビームカラム102(電子鏡筒)の電位は、例えば0Vである。第1の領域420の中央の部分等と比較すると、第1の領域420の端の部分や、第1の領域420と第3の領域424における境界の部分等は、電位分布又は電気力線に歪が生じやすい。そこで、第3の導電膜408を介して第2の面452に第2の電圧V
2と第2の微小電圧ΔV
2の和を印加すると、上述の歪を補正することが可能である。なお、
図7において示した電子ビームカラム102(電子鏡筒)の形状は、電位分布又は電気力線の説明のために示したものであり、実際の検査装置100における形状と一致しているものではない。
【0065】
電子ビームに含まれる電子の加速電圧をVacc、第2の面452に到達する、電子ビームに含まれる電子の入射電圧をVLとしたときに、|Vacc―VL|=|V2+ΔV2|<|V1+ΔV1|の関係が満たされることが好ましい。まず、検査のために望ましい入射電圧VLを任意に定めたとき、加速電圧Vaccと所定の入射電圧VLの差の絶対値|Vacc―VL|に等しい電圧を、|V2+ΔV2|として、第2の面452に印加すれば良いと考えることが出来る。このことを数式に表現すると、|Vacc―VL|=|V2+ΔV2|である。なお、例えば上述のように電子ビームカラム102(電子鏡筒)の電位が0Vである場合、V2+ΔV2は負の電圧である。
【0066】
次に、|V2+ΔV2|と|V1+ΔV1|の大小関係について考えると、第3の導電膜408と第1の導電膜402の間には、基板404が設けられている。そのため、第2の面452において電気力線を均一にするためには、基板404が設けられている分、|V1+ΔV1|として、|V2+ΔV2|より高い電圧を印加することが好ましい。そのため、|V2+ΔV2|<|V1+ΔV1|であることが好ましい。
【0067】
以上より、|Vacc―VL|=|V2+ΔV2|<|V1+ΔV1|の関係が満たされることが好ましい。
【0068】
基板404の膜厚は均一ではなく、検査をするそれぞれの基板404上の場所によって異なっている。例えば、基板404の膜厚が数mm程度である場合、基板404の膜厚は場所によって100μm程度異なることがある。このため、第1の電圧V1及び第2の電圧V2の大きさは、焦点を合わせるために、変化させることが好ましい。そこで、第1の電圧V1については、被検査試料400の膜厚に応じて、第1の微小電圧ΔV1の分だけ変化させることが好ましい。また、第2の電圧V2については、被検査試料400の膜厚に応じて、第2の微小電圧ΔV2の分だけ変化させることが好ましい。
【0069】
第1の電圧V1と第1の微小電圧ΔV1の大きさの関係は、基板404の平均膜厚と、基板404の場所による膜厚の変化分の関係によって定まる。例えば、基板404の平均膜厚に対して、基板404の場所による膜厚の変化分は、1%以上10%以下の程度と考えられる。このことから、|V1/100|≦|ΔV1|≦|V1/10|を満たすことが好ましい。なお第2の電圧V2と第2の微小電圧ΔV2についても同様に、|V2/100|≦|ΔV2|≦|V2/10|を満たすことが好ましい。
【0070】
本実施形態の検査装置及び検査方法によれば、素子歩留まりの向上と高分解能を有する検査画像の取得を両立可能な、検査装置及び検査方法の提供が可能になる。
【0071】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、その処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。また、「~記憶部」、「~保存部」又は記憶装置は、たとえば磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、ROM(リードオンリメモリ)、SSD(ソリッドステートドライブ)などの記録媒体を含む。
【0072】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上述の実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。例えば、実施形態では、EUVマスクを被検査試料として用いた例の説明をしてきた。しかし、被検査試料はEUVマスクでなくてもかまわない。また、例えば、実施形態では、マルチビームを照射する検査装置を例にして説明をしてきた。しかし、マルチビームを照射する検査装置でなくても構わない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもかまわない。
【0073】
実施形態では、検査方法及び検査装置の構成やその製造方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる検査方法及び検査装置の構成を適宜選択して用いることが出来る。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての検査方法及び検査装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0074】
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
28,36 画素
29 サブ照射領域
33 マスクダイ
34 照射領域
36 画素
100 検査装置
102 電子ビームカラム
103 検査室
104 支持部
106 検出回路
107 位置回路
109 設計データ保存部
110 制御計算機
111 展開回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
127 駆動機構
128 偏向制御回路
132 画像保存部
139 フィルタ回路
140 分割回路
142 第1の電圧印加回路
143 配線
144 第2の電圧印加回路
145 配線
155 電子光学画像取得機構(画像取得機構)
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃(照射源)
202 電磁レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
205 電磁レンズ(縮小レンズ)
206 電磁レンズ
207 電磁レンズ(対物レンズ)
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
213 制限アパーチャ基板
214 ビームセパレーター
216 ミラー
222 マルチ検出器
224,226 電磁レンズ
228 偏向器
300 マルチ2次電子ビーム
400 被検査試料(EUVマスク)
402 第1の導電膜
404 基板
406 第2の導電膜
406a Si膜
406b Mo膜
408 第3の導電膜
408a Si膜
408b Mo膜
410 バッファー層
412 吸収体
414 パターン
420 第1の領域(検査領域)
422 第2の領域
424 第3の領域
432 マスクパターン
450 第1の面
452 第2の面