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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】レーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240621BHJP
   B23K 26/067 20060101ALI20240621BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/067
H01L21/78 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020084041
(22)【出願日】2020-05-12
(65)【公開番号】P2021178338
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 正和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄輝
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208445(JP,A)
【文献】特開2019-217527(JP,A)
【文献】特開平04-099607(JP,A)
【文献】特開2004-188475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00
B23K 26/067
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザービームを発振するレーザー発振器と、
該レーザービームを集光する集光ユニットと、
該レーザー発振器と該集光ユニットとの間に配設され、該レーザービームを少なくとも2以上に分岐する分岐ユニットと、
を含むレーザービーム照射ユニットと、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルと該レーザービームとを加工送り方向に相対的に移動させる加工送りユニットと、
を備えたレーザー加工装置を用いて、被加工物を加工する被加工物のレーザー加工方法であって、
被加工物の表面における該レーザービームの分岐間隔をLとし、分岐された該レーザービームのそれぞれの集光スポットのビーム径をDとし、該加工送りユニットの加工送り速度を加工点における該レーザービームの周波数で除算した値をSとし、nを任意の整数とした場合、L>D>S、かつ、L≠n×Sとなるように、該分岐間隔、該加工送り速度および該周波数を設定することを特徴とする、被加工物のレーザー加工方法。
【請求項2】
(n-1)×S<L<n×Sであって、nショット目における1分岐目の集光スポットと、1ショット目における2分岐目の集光スポットと、の加工送り方向の重なり幅をWとした場合、0≦W/D<0.8となるように、該分岐間隔、該加工送り速度および該周波数を設定することを特徴とする、請求項1に記載の被加工物のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の板状物をストリート(分割予定ライン)に沿って分割してチップ化する方法として、切削ブレードを回転させながら切り込むことで分割する切削方法や、板状物に対して吸収性を有する波長のパルスレーザービームを照射することで分割するレーザー加工方法が知られている(特許文献1、2参照)。
【0003】
レーザー加工方法は、溝幅を切削ブレードによる溝幅よりも小さくすることができるため、板状物のストリートを狭くすることでチップの取り個数を増やすことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-99607号公報
【文献】特開2004-188475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ストリートに沿ってレーザー加工を行う際に生じるレーザービームによる熱ダメージ等によって、分割後の半導体デバイスの抗折強度が低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体デバイスにおける抗折強度の低下を抑制することができるレーザー加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工方法は、被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザービームを発振するレーザー発振器と、該レーザービームを集光する集光ユニットと、該レーザー発振器と該集光ユニットとの間に配設され、該レーザービームを少なくとも2以上に分岐する分岐ユニットと、を含むレーザービーム照射ユニットと、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルと該レーザービームとを加工送り方向に相対的に移動させる加工送りユニットと、を備えたレーザー加工装置を用いて、被加工物を加工する被加工物のレーザー加工方法であって、被加工物の表面における該レーザービームの分岐間隔をLとし、分岐された該レーザービームのそれぞれの集光スポットのビーム径をDとし、該加工送りユニットの加工送り速度を加工点における該レーザービームの周波数で除算した値をSとし、nを任意の整数とした場合、L>D>S、かつ、L≠n×Sとなるように、該分岐間隔、該加工送り速度および該周波数を設定することを特徴とする。また、本発明のレーザー加工方法は、(n-1)×S<L<n×Sであって、nショット目における1分岐目の集光スポットと、1ショット目における2分岐目の集光スポットと、の加工送り方向の重なり幅をWとした場合、0≦W/D<0.8となるように、該分岐間隔、該加工送り速度および該周波数を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、半導体デバイスにおける抗折強度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るレーザー加工方法の加工対象の被加工物を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るレーザー加工方法に用いるレーザー加工装置の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。
図3図3は、図2の被加工物の表面の要部を模式的に示す平面図である。
図4図4は、実施形態に係るレーザービームによる加工ラインを模式的に示す説明図である。
図5図5は、図4の加工ラインを割り出し送り方向に分解して模式的に示す説明図である。
図6図6は、比較例に係るレーザービームによる加工ラインを模式的に示す説明図である。
図7図7は、図6の加工ラインを割り出し送り方向に分解して模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。更に、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物100の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態の加工対象の被加工物100の構成について説明する。図1は、実施形態に係るレーザー加工方法の加工対象の被加工物100を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。
【0012】
図1に示すように、被加工物100は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板101とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物100は、基板101の表面102に格子状に設定された分割予定ライン103と、分割予定ライン103によって区画された領域に形成されたデバイス104と、を有している。デバイス104は、例えば、IC(Integrated Circuit)、またはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。
【0013】
被加工物100は、環状フレーム110および貼着テープ111に支持される。環状フレーム110は、被加工物100の外径よりも大きな開口を有する。貼着テープ111は、外周が環状フレーム110の裏面側に貼着される。被加工物100は、環状フレーム110の開口の所定の位置に位置決めされ、被加工物100の裏面105が貼着テープ111の表面に貼着されることによって、環状フレーム110および貼着テープ111に固定される。
【0014】
次に、実施形態に係るレーザー加工方法に用いるレーザー加工装置1の構成について説明する。図2は、実施形態に係るレーザー加工方法に用いるレーザー加工装置1の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。以下の説明において、Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向に直交する方向である。実施形態のレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0015】
レーザー加工装置1は、チャックテーブル10と、加工送りユニット14と、レーザービーム照射ユニット20と、を有する。レーザー加工装置1は、加工対象である被加工物100に対してレーザービーム21を照射することにより、被加工物100を加工する装置である。
【0016】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持面11で保持する。保持面11は、ポーラスセラミック等から形成された円盤形状である。保持面11は、実施形態において、水平方向と平行な平面である。保持面11は、例えば、真空吸引経路を介して真空吸引源と接続している。チャックテーブル10は、保持面11上に載置された被加工物100を吸引保持する。
【0017】
チャックテーブル10の周囲には、被加工物100を支持する環状フレーム110を挟持するクランプ部12が複数配置されている。チャックテーブル10は、回転ユニット13によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転される。回転ユニット13によってチャックテーブル10を回転させることで、被加工物100の加工送り方向を変更することができる。回転ユニット13は、加工送りユニット14に支持される。
【0018】
加工送りユニット14は、チャックテーブル10とレーザービーム照射ユニット20から照射されるレーザービーム21とを加工送り方向に相対的に移動させる。加工送りユニット14は、実施形態において、回転ユニット13およびチャックテーブル10を、加工送り方向であるX軸方向および割り出し送り方向であるY軸方向に移動させる。なお、図2の矢印15は、加工送り時のチャックテーブル10の移動方向を示す。
【0019】
レーザービーム照射ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対してパルス状のレーザービーム21を照射するユニットである。図2に示すように、レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振器22と、ミラー23と、分岐ユニット24と、集光レンズ25と、を含む。
【0020】
レーザー発振器22は、被加工物100を加工するための所定の波長を有するレーザービーム21を発振する。レーザー発振器22は、被加工物100に対して吸収性を有する波長(例えば、355nm)のレーザービーム21を発振する。レーザー発振器22は、予め設定された周波数によってパルス状のレーザービーム21を発振する。
【0021】
ミラー23は、レーザービーム21を反射して、チャックテーブル10の保持面11に保持した被加工物100に向けて反射する。実施形態において、ミラー23は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を分岐ユニット24へ向けて反射する。
【0022】
分岐ユニット24には、レーザー発振器22から発振されかつミラー23によって反射されたレーザービーム21が入射する。分岐ユニット24は、入射するレーザービーム21を少なくとも2以上に分岐させて集光レンズ25へと透過させる。レーザービーム21が分岐する方向は、加工送り方向である。分岐ユニット24は、例えば、回析型光学素子(Diffractive Optical Element)である。回析型光学素子は、回析現象を利用して入射されたレーザービーム21を複数のレーザービームに分岐させる機能を有する。
【0023】
集光レンズ25は、レーザー発振器22から発振されたレーザービーム21を、チャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物100に集光して照射させる。集光レンズ25は、実施形態において、分岐ユニット24により加工送り方向に分岐された複数のレーザービーム21を集光スポット30に集光する。
【0024】
次に、実施形態に係るレーザー加工方法について説明する。図3は、図2の被加工物100の表面102の要部を模式的に示す平面図である。図4は、実施形態に係るレーザービーム21による加工ライン3を模式的に示す説明図である。図5は、図4の加工ライン3を割り出し送り方向に分解して模式的に示す説明図である。
【0025】
図3に示すように、レーザービーム21の集光スポット30である加工点は、被加工物100の表面102の分割予定ライン103に設定される。分岐された複数のレーザービーム21は、被加工物100の表面102に照射される際に、被加工物100の表面102において集光スポット30が加工送り方向であるX軸方向に直線状かつ等間隔に並ぶ。図3から図5に示す一例において、レーザービーム21は、5つのレーザービームに分岐される。すなわち、図3に示すように、集光スポット30は、加工送り方向であるX軸方向に分岐された5つの集光スポット31、32、33、34、35を含む。
【0026】
前述のとおり、レーザービーム21は、予め設定された周波数によってパルス状に照射される。実施形態のレーザー加工方法では、1パルスのレーザービーム21が、5つに分岐されて、図3に示すように、被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に集光スポット31、32、33、34、35を形成する。すなわち、各パルスのレーザービーム21は、被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に複数(実施形態では5つ)の集光スポット31、32、33、34、35として照射される。このように、1パルスのレーザービーム21は、複数(実施形態では5つ)に分岐して、被加工物100の表面102上に複数の集光スポット30(実施形態では5つの集光スポット31、32、33、34、35)として照射される。
【0027】
互いに隣接する集光スポット31、32、33、34、35の分岐間隔36は、全て等間隔である。分岐間隔36は、1パルスのレーザービーム21が、5つに分岐されて、図3に示すように、被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に形成された集光スポット31、32、33、34、35の中心間の距離である。なお、以下の説明において、分岐されたそれぞれのレーザービーム21について、1分岐目、2分岐目、・・・、5分岐目、と称する。
【0028】
レーザービーム21を加工点に照射しつつ、図2に示すチャックテーブル10を加工送りすることによって、図4に示す加工ライン3が形成される。レーザービーム21は、予め設定された周波数によってパルス状に照射される。すなわち、加工ライン3は、予め設定された加工送りユニット14(図2参照)の加工送り速度を、レーザービーム21の周波数で除算したショット間隔37(図5参照)の複数の集光スポット30によって形成される。
【0029】
ショット間隔37は、所定のパルス目のレーザービーム21と次のパルス目のレーザービーム21の被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に形成された集光スポット31、32、33、34、35の中心間の距離である。ショット間隔37は、例えば、1パルス目のレーザービーム21の被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に形成された集光スポット31-1と、2パルス目のレーザービーム21の被加工物100の表面102の分割予定ライン103上に形成された集光スポット31-2との中心間の距離である。
【0030】
ショット間隔37は、実施形態において、集光スポット30におけるレーザービーム21のビーム径38より小さい。すなわち、1ショット目の集光スポット31-1、32-1、33-1、34-1、35-1と、後続する2ショット目の集光スポット31-2、32-2、33-2、34-2、35-2とは、それぞれが互いにオーバーラップする。なお、2ショット目および後続する3ショット目、3ショット目および後続する4ショット目、4ショット目および後続する5ショット目も、1ショット目および後続する2ショット目と同様の関係である。
【0031】
図4および図5に示す一例において、加工ライン3は、分岐間隔36をLとし、ショット間隔37をSとし、nを任意の整数とした場合、L≠n×Sである。なお、ショット間隔37は、加工送りユニット14の加工送り速度をVとし、加工点におけるレーザービーム21の周波数をfとした場合、S=V/fで表される。したがって、被加工物100の表面102におけるレーザービーム21の分岐間隔36、加工送りユニット14の加工送り速度、および加工点におけるレーザービーム21の周波数は、L≠n×V/fであるように設定される。
【0032】
これにより、加工ライン3は、5ショット目における1分岐目の集光スポット31-5が、1ショット目における2分岐目の集光スポット32-1に、所定の重なり幅39でオーバーラップする。重なり幅39は、互いに異なるパルス目のレーザービーム21の集光スポット31、32、33、34、35のうち互いに重なる集光スポット31、32、33、34、35同士の重なり合う部分の加工送り方向(矢印15で示す)の長さである。
【0033】
オーバーラップ率は、80%より小さいことが好ましい。これにより、抗折強度を向上させることができる。なお、オーバーラップ率(%)は、オーバーラップ率をPとし、集光スポット30におけるレーザービーム21のそれぞれの集光スポット31、32、33、34、35のビーム径38をDとし、重なり幅39をWとした場合、P=W/D×100で算出される。すなわち、本発明のレーザー加工方法では、0≦P<80となるように、分岐間隔36、加工送り速度および周波数が設定されるのが望ましい。オーバーラップ率が80%以上である場合(P≧80)、レーザービーム21で加熱し過ぎてしまうため、チップ分割後のデバイス104の抗折強度が低下する可能性がある。
【0034】
本発明のレーザー加工方法では、オーバーラップ率が0%(P=0)であってもよい。オーバーラップ率が0%(P=0)とは、集光スポット同士が接触しかつ重ならない状態を示す。この場合、レーザービーム21で加熱し過ぎてしまうことを抑制することができるので、チップ分割後のデバイス104の抗折強度の低下を抑制できる。なお、オーバーラップ率が0%未満(P<0)とは、集光スポット同士の中心間距離がビーム径38より大きく、集光スポット同士が離間している状態を示す。オーバーラップ率が0%未満(P<0)の場合、加工ライン3が不連続になることでチップ分割時に応力が集中し過ぎてしまうため、チップ分割後のデバイス104の抗折強度が低下する可能性がある。したがって、本発明のレーザー加工方法では、P≧0となるように、分岐間隔36、加工送り速度および周波数が設定されるのが望ましい。
【0035】
なお、2分岐目の集光スポット32-5および3分岐目の集光スポット33-1、3分岐目の集光スポット33-5および4分岐目の集光スポット34-1、4分岐目の集光スポット34-5および5分岐目の集光スポット35-1も、1分岐目の集光スポット31-5および2分岐目の集光スポット32-1と同様の関係である。
【0036】
実施形態のレーザー加工方法に用いるレーザー加工装置1は、例えば、レーザー加工装置1の各構成要素それぞれ制御する制御部と、オペレータによるレーザー加工条件の設定を受付可能な入力部と、を備える。制御部は、レーザービーム21の分岐間隔36、加工送りユニット14の加工送り速度、および加工点におけるレーザービーム21の周波数のうちいずれか2つのパラメータの値が設定された場合、L=n×V/fを満たす残りの1つのパラメータの値を算出して出力する。オペレータは、算出された値を除外して、残りの1つのパラメータを設定することができる。
【0037】
実施形態のレーザー加工方法に用いるレーザー加工装置1は、例えば、設定されたレーザービーム21の分岐間隔36、加工送りユニット14の加工送り速度、および加工点におけるレーザービーム21の周波数が、L=n×V/fを満たす場合、所定の警告情報を報知する報知部を備えていてもよい。
【0038】
次に、比較例に係るレーザービーム21による加工ライン4について説明する。図6は、比較例に係るレーザービーム21による加工ライン4を模式的に示す説明図である。図7は、図6の加工ライン4を割り出し送り方向に分解して模式的に示す説明図である。
【0039】
図6および図7に示す比較例において、レーザービーム21は、実施形態と同様に、加工送り方向であるX軸方向に5つの集光スポット41、42、43、44、45が設定されるように5つのレーザービームに分岐される。互いに隣接する集光スポット41、42、43、44、45の分岐間隔46は、全て等間隔である。レーザービーム21は、予め設定された周波数によってパルス状に照射される。加工ライン3は、予め設定された加工送りユニット14(図2参照)の加工送り速度を、レーザービーム21の周波数で除算したショット間隔47の複数の集光スポット41、42、43、44、45によって形成される。
【0040】
加工ライン4は、分岐間隔46をLとし、ショット間隔47をSとし、nを任意の整数とした場合、L=n×Sである。なお、ショット間隔47は、加工送りユニット14の加工送り速度をVとし、加工点におけるレーザービーム21の周波数をfとした場合、Sc=V/fで表される。したがって、被加工物100の表面102におけるレーザービーム21の分岐間隔46、加工送りユニット14の加工送り速度、および加工点におけるレーザービーム21の周波数は、Lc=n×V/fであるように設定される。
【0041】
これにより、加工ライン4は、5ショット目における1分岐目の集光スポット41-5が、1ショット目における2分岐目の集光スポット42-1に、所定の重なり幅49でオーバーラップする。比較例において、オーバーラップ率は、100%である。なお、オーバーラップ率は、オーバーラップ率をPとし、集光スポット41、42、43、44、45におけるレーザービーム21のビーム径48をDとし、重なり幅49をWとした場合、P=W/Dで算出される。
【0042】
なお、2分岐目の集光スポット42-5および3分岐目の集光スポット43-1、3分岐目の集光スポット43-5および4分岐目の集光スポット44-1、4分岐目の集光スポット44-5および5分岐目の集光スポット45-1も、1分岐目の集光スポット41-5および2分岐目の集光スポット42-1と同様の関係である。
【0043】
以上説明したように、実施形態のレーザー加工方法は、被加工物100の表面102におけるレーザービーム21の分岐間隔36とショット間隔37との関係がL≠n×Sとなるように、分岐間隔36、加工送り速度および周波数を設定する。なお、Lは分岐間隔36の値、Sはショット間隔37の値、nは任意の整数を示す。
【0044】
比較例に示すように、加工送り方向に分岐されたレーザービーム21によるレーザー加工において、L=n×Sが成立する加工ライン4では、分岐された1つのレーザービーム21の集光スポット41のうち、nショット目で形成される集光スポット41-5は、隣接するレーザービーム21の集光スポット42のうち、1ショット目で形成される集光スポット42-1に完全に重なる。このように、同一の位置に集光スポットが設定されることにより、該位置でのレーザービーム21による熱ダメージが大きくなり、抗折強度が低下する。
【0045】
これに対し、実施形態の加工ライン3では、分岐された1つのレーザービーム21の集光スポット31のうち、nショット目で形成される集光スポット31-5は、隣接するレーザービーム21の集光スポット32のうち、1ショット目で形成される集光スポット32-1に一部が重なり、完全には重ならない。すなわち、L≠n×Sとなるように分岐間隔36、加工送り速度および周波数を設定することによって、nショット目で形成される集光スポット31-5と1ショット目で形成される集光スポット32-1とが完全に重なる状況を回避することができる。隣接する集光スポットの重なり幅39を小さくすることによって、レーザービーム21による熱ダメージを低減することができるので、デバイス104における抗折強度の低下を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0047】
例えば、レーザー加工方法によるレーザー加工条件は実施形態に限定されない。レーザー加工条件は、被加工物100の基板101がシリコンであり、かつ厚みが50μmである場合、例えば、以下の通り設定されてもよい。
分岐数:2~32
分岐間隔:10~400μm
スポット径:3~10μm
波長:355nm
周波数:100kHz
パワー:7.5kW
パス数:30pass
加工送り速度:10~2000mm/s
【符号の説明】
【0048】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
14 加工送りユニット
20 レーザービーム照射ユニット
21 レーザービーム
22 レーザー発振器
23 ミラー
24 分岐ユニット
25 集光レンズ
30、31、32、33、34、35 集光スポット
36 分岐間隔
37 ショット間隔
38 ビーム径
39 重なり幅
100 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7