(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】キサンテンジアミン、キサンテンジアミド第4族金属錯体及びオレフィン重合体製造用触媒
(51)【国際特許分類】
C07D 405/14 20060101AFI20240621BHJP
C08F 10/00 20060101ALI20240621BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20240621BHJP
C07F 7/28 20060101ALN20240621BHJP
C07F 7/00 20060101ALN20240621BHJP
【FI】
C07D405/14 CSP
C08F10/00 510
C08F4/64
C07F7/28 C
C07F7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020100580
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】多田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】曽根 誠
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/232503(WO,A1)
【文献】特表2014-533306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0174610(US,A1)
【文献】Andreychuk, Nicholas R.,Thorium(IV) alkyl and allyl complexes of a rigid NON-donor pincer ligand with flanking 1-adamantyl substituents,Dalton Transactions,2018年,47(14),4866-4876
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/00-421/14
C07F7/00-7/30
C08F4/60-4/70
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される化合物であることを特徴とするキサンテンジアミン。
【化1】
(式中、R
1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、R
2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。)
【請求項2】
一般式(2)で示される金属錯体であることを特徴とするキサンテンジアミド第4族金属錯体。
【化2】
(式中、Mは第4族金属原子を表す。R
1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、R
2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表し、Xはそれぞれ独立してジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(2)において、Mがチタン原子又はハフニウム原子、R
1がtert-ブチル基、R
2がメチル基、Arがキノリン-2-イル基、Xがジメチルアミノ基である、金属錯体であることを特徴とする請求項2に記載のキサンテンジアミド第4族金属錯体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のキサンテンジアミド第4族金属錯体、活性化助触媒及び有機金属化合物を含むものであることを特徴とするオレフィン重合体製造用触媒。
【請求項5】
請求項4に記載のオレフィン重合体製造用触媒の存在下、オレフィンの重合を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンテンジアミン、その誘導体及び該誘導体を含むオレフィン重合体製造用触媒に関するものであり、特に新規なキサンテンジアミン、該キサンテンジアミンをジアニオン性二座配位子とするキサンテンジアミド第4族金属錯体、該キサンテンジアミド第4族金属錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該オレフィン重合体製造用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体の製造触媒は、チーグラー触媒や、クロム触媒が広く用いられ、さらに、メタロセン系触媒の発見により、配位子設計の自由度が高い金属錯体を用いた触媒系の採用が進んできている。そして、メタロセン系触媒へ高い機能を付与させることを目的に、架橋構造を有する等の複雑なシクロアルカジエニル系の配位子及びそれを有する金属錯体が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、有機配位子が金属-窒素結合によって第4族金属に結合しているアミド錯体の中にも、オレフィン重合体の製造用触媒として検討されているものがあり、キサンテン-4,5-ジアミド配位子を持つ第4族金属錯体が開示され(例えば、特許文献3参照)、中心金属に結合している窒素原子が2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基等の置換フェニル基で置換されている錯体が開示されている(非特許文献1及び2参照)。
【0004】
さらに近年は、種々の機能材料の原料として耐摩耗性や耐衝撃性、耐薬品性に優れる分子量の特に大きなオレフィン重合体、特に分子量100万以上の超高分子量ポリエチレン等の需要が高く、その製造用触媒の新規開発が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-130314号公報
【文献】特開昭61-264010号公報
【文献】国際公開第2018/232503号
【非特許文献】
【0006】
【文献】「Organometallics」、(米国)、2017年、第36巻、第16号、p.3084-3093
【文献】「Polyhedron」、(オランダ)、2006年、第25巻、第4号、p.859-863
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,2に提案された架橋構造を有する等の複雑な分子構造を有するシクロアルカジエニル系の配位子は、その合成ルートが煩雑なものとなり、該配位子を持つ金属錯体の製造コストがかさむことが工業化の大きな課題であった。
【0008】
また、特許文献3には、キサンテン-4,5-ジアミド配位子を持つジルコニウム錯体を触媒として用いることが提案されているが、得られるポリエチレンは分子量が数万程度と、超高分子量の範疇には属さないものであり、非特許文献1,2に記載された錯体は、中心金属に結合している窒素原子が2,4,6-トリイソプロピルフェニル基、2,6-ジイソプロピルフェニル基等の置換フェニル基で置換されているものであると共に、触媒としての検討もなされていないものである。
【0009】
そこで、本発明は、合成が容易で分子設計の自由度が高く、かつ分子量の大きなオレフィン重合体の製造用触媒としての有用性が期待できる新規配位子、新規錯体、該新規錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該オレフィン重合体製造用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、キサンテンの4位及び5位をピリジルアミノ基またはキノリルアミノ基で置換した構造であるキサンテンジアミン及び該キサンテンジアミンをジアニオン性二座配位子とするキサンテンジアミド第4族金属錯体が、合成が容易かつ良好な反応収率であることから効率よく製造できることに加え、該キサンテンジアミド第4族金属錯体を含む触媒が高いオレフィン重合活性を示し、分子量の特に大きなオレフィン重合体の製造用触媒として有用なことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(1)で示される化合物であることを特徴とするキサンテンジアミンに関するものである。
【0012】
【0013】
(式中、R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、R2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。)
また、一般式(2)で示される金属錯体であることを特徴とするキサンテンジアミド第4族金属錯体、それを含むオレフィン重合体製造用触媒に関するものである。
【0014】
【0015】
(式中、Mは第4族金属原子を表す。R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基を表し、R2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基を表し、Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表し、Xはそれぞれ独立してジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を表す。)
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0016】
本発明のキサンテンジアミン(1)は、上記一般式(1)で示される新規な化合物である。ここで、R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基である。該炭素数1から6のアルキル基としては、直鎖状、環状又は分岐状のいずれでもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、1,3-ジメチルブチル基、シクロヘキシル基等を例示することが出来る。R2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基である。
【0017】
該キサンテンジアミン(1)の具体例としては、以下の化合物を挙げることができる。
【0018】
【0019】
【0020】
なお、上記構造式中におけるMe、Et、Pr、iPr、Bu、iBu、sBu、tBu、tPe、Hx、Cyは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基を示す。そして、これら化合物の中でも、(1-9)又は(1-22)で表される化合物が好ましく、(1-22)で表される化合物が特に好ましい。
【0021】
該キサンテンジアミン(1)の製造方法としては、該キサンテンジアミン(1)の製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよく、特に効率的に該キサンテンジアミン(1)を製造することが可能となることから、以下に示す製造法1による製造方法を例示することが出来る。
【0022】
該製造法1は、パラジウム触媒及び塩基の存在下で、一般式(3)で示されるアリールアミンと一般式(4)で表されるジブロモキサンテンをカップリングさせることにより、該キサンテンジアミン(1)を製造する方法である。
【0023】
【0024】
ここで、Ar、R1及びR2は、上記一般式(1)と同様の置換基を例示することができる。
【0025】
製造法1において用いられるパラジウム触媒としては、アリールアミン(3)とジブロモキサンテン(4)とのカップリング反応が進行すれば特に制限は無く、中でもキサンテンジアミン(1)の収率に優れることから、0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子とを組み合わせて用いるパラジウム触媒が好ましい。使用可能な0価パラジウム化合物としてはトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム等を例示することが出来、二座ホスフィン配位子としては1,3-ジフェニルホスフィノプロパン(以下、dpppと記すこともある。)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(以下、BINAPと記すこともある。)等を例示することが出来る。0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子のモル比は、パラジウム原子1モル当たり1から1.5モルの二座ホスフィン配位子を用いるのが該キサンテンジアミン(1)の収率に優れる点で好ましい。また0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子を混合して調製した二座ホスフィン配位パラジウム錯体を製造法1の触媒として用いることも出来る。該パラジウム触媒の使用量に特に制限は無く、通常はジブロモキサンテン(4)1モル当量に対して0.001から0.2モル当量用いるのが好ましく、0.01から0.1モル当量用いるのが更に好ましい。
【0026】
また、その際の塩基としては、パラジウム触媒の存在下、ハロゲン化アリールとアリールアミンのカップリングが可能な塩基であればよく、特に収率に優れる点でナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが好ましく、ナトリウムtert-ブトキシドが更に好ましい。
【0027】
該製造法1におけるアリールアミン(3)、ジブロモキサンテン(4)及び塩基のモル比に制限は無く、通常はジブロモキサンテン(4)に対して2から2.6モル当量のアリールアミン(3)及び2から3モル当量の塩基を用いることによって収率良くキサンテンジアミン(1)を得ることが出来る。
【0028】
該ジブロモキサンテン(4)は、Angew.Chem.Int.Ed.、第52巻、12536ページ(2013年)、Dalton Trans.、第46巻、7457ページ(2017年)、Chemistry A European Journal、第22巻、14383ページ(2016年)、Organometallics、第16巻、3027ページ(1997年)等の公知文献に記載の方法に準じて入手することが出来る。
【0029】
製造法1は、該キサンテンジアミン(1)の収率に優れる点で、不活性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガス等を例示することが出来る。安価な点で窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0030】
製造法1は、該キサンテンジアミン(1)の収率に優れる点で、有機溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(以下、CPMEと記すこともある。)、シクロペンチルエチルエーテル(以下、CPEEと記すこともある。)、tert-ブチルメチルエーテル(以下、MTBEと記すこともある。)、テトラヒドロフラン(以下、THFと記すこともある。)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒を挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。該キサンテンジアミン(1)の収率に優れる点で、有機溶媒としてはトルエン又は1,4-ジオキサンが好ましく、トルエンが更に好ましい。
【0031】
製造法1では、反応温度及び反応時間に特に制限はなく、一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、50℃から180℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1時間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによって該キサンテンジアミン(1)を収率良く製造することが出来る。
【0032】
製造法1によって製造した該キサンテンジアミン(1)は、当業者が芳香族アミンを精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、洗浄、結晶化、カラムクロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等を挙げることが出来る。
【0033】
該キサンテンジアミン(1)は、ジアニオン性二座配位子とするキサンテンジアミド金属錯体とすることができる。
【0034】
そして、本発明のキサンテンジアミド第4族金属錯体(2)は、上記一般式(2)で示される新規な金属錯体である。ここで、Mは第4族金属原子であり、例えば、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子を例示することが出来、中でも、オレフィン重合体製造用触媒とした際に重合活性に優れるものとなることから、チタン原子又はハフニウム原子が好ましく、ハフニウム原子が更に好ましい。また、R1はそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1から6のアルキル基である。該炭素数1から6のアルキル基としては、上記した一般式(1)と同様のものを挙げることができ、中でも、オレフィン重合体製造用触媒とした際の重合活性に優れるものとなることから、tert-ブチル基が好ましい。R2はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり、中でも、オレフィン重合体製造用触媒とした際の重合活性に優れるものとなることから、メチル基が好ましい。Arはそれぞれ独立してピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基であり、中でも、オレフィン重合体製造用触媒とした際の重合活性に優れるものとなることから、キノリン-2-イル基が好ましい。Xはそれぞれ独立してジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基であり、中でもオレフィン重合体製造用触媒とした際の重合活性に優れる点でジメチルアミノ基が好ましい。
【0035】
該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)の具体例として、以下の金属錯体を挙げることができる。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
なお、上記構造式中におけるMe、Et、Pr、iPr、Bu、iBu、sBu、tBu、tPe、Hx、Cyは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2-ブチル基、tert-ブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基を示す。また、これら金属錯体の第4族金属原子にはテトラヒドロフランやジメチルアミン等の中性配位子が配位していても良い。そして、オレフィン重合体製造用触媒とした際に優れた重合活性を示す触媒となることから、(2-Ti-9)、(2-Ti-22)、(2-Zr-9)、(2-Zr-22)、(2-Hf-9)、(2-Hf-22)が好ましく、(2-Ti-22)又は(2-Hf-22)が更に好ましい。
【0042】
該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)の製造方法としては、該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)の製造が可能であればいかなる方法を用いてもよく、特に効率的に該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)を製造することが可能となることから以下に示す製造法2による製造方法を例示することが出来る。
【0043】
該製造法2は、アミド錯体(5)と該キサンテンジアミン(1)とを反応させることにより、キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)を製造する方法である。
【0044】
【0045】
ここで、M、X、R1、R2及びArは前記と同様のものを例示することができる。
【0046】
そして、該アミド錯体(5)としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム等を例示することが出来、収率が良い点でテトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム又はテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムが好ましく、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン又はテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムが更に好ましい。
【0047】
製造法2を実施する際の該アミド錯体(5)と該キサンテンジアミン(1)のモル比には特に制限は無く、該アミド錯体(5)1モル当量に対して該キサンテンジアミン(1)を0.9~1.1モル当量用いることが、収率が良い点で好ましい。
【0048】
また、製造法2は、不活性ガス雰囲気中にて実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガス等を例示することが出来る。安価な点で窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0049】
製造法2は、収率が良い点で、有機溶媒中にて実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類は、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、CPEE、MTBE、THF、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒を挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いても、複数の有機溶媒を任意の比率で混合して用いても良い。収率が良い点で、有機溶媒としては芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒が好ましく、トルエン又はTHFが更に好ましい。
【0050】
製造法2では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、具体例としては、-80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによって該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)を収率良く製造することが出来る。
【0051】
製造法2によって製造した該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)は、当業者が前周期遷移金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、洗浄、結晶化等を挙げることが出来る。
【0052】
本発明の該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)は、活性化助触媒、場合によってはさらに有機金属化合物を含むことにより新規なオレフィン重合体製造用触媒とすることができ、該オレフィン重合体製造用触媒は、オレフィンの重合活性に優れるものであることはもとより、分子量の極めて高い高分子量、例えば超高分子量のオレフィン重合体の製造に適したものとなる。
【0053】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を構成する活性化助触媒としては、該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)又は該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)と有機金属化合物との混合物に作用させることにより、オレフィン重合が可能な活性種を形成することが出来る化合物であれば特に制限はなく、また該活性化助触媒は、単独で用いても、2種類以上を同時に用いても良い。該活性化助触媒としては、(i)有機アルミニウムオキシ化合物、(ii)キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)に、若しくは該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)と有機金属化合物との混合物に作用させることにより、該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)の中心金属上にカチオンを生じさせることが出来る化合物、(iii)粘土化合物、等を挙げることが出来る。
【0054】
該活性化助触媒の一例である(i)有機アルミニウムオキシ化合物としては、市販あるいは公知の化合物を例示することができ、(a)トリアルキルアルミニウムと芳香族カルボン酸化合物との反応で得られるアルキルアルミニウム化合物の熱分解で得られる有機アルミニウムオキシ化合物、(b)有機アルミニウム化合物と水との反応により得られる有機アルミニウムオキシ化合物、(c)ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウムを芳香族系溶媒中で、加熱析出させて製造する固体状の有機アルミニウムオキシ化合物等を例示することが出来る。上記の(a)有機アルミニウムオキシ化合物として好ましくは、工業的に入手が容易な、アルキル基を含むポリメチルアルミノキサン、ポリエチルアルミノキサン、ポリイソブチルアルミノキサン、変性ポリアルキルアルミノキサン(アルキル基としてメチル基、イソブチル基等を含む)、固体状のポリメチルアルミノキサン等を例示することが出来る。該有機アルミニウムオキシ化合物は、無機酸化物に担持されたものも使用することが可能である。無機酸化物としては、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア等の典型元素の無機酸化物;チタニア、ジルコニア等の遷移金属元素の無機酸化物及び、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア等の混合物を例示することが出来る。無機酸化物に担持させる場合の有機アルミニウムオキシ化合物として好ましくは、担体形状の制御性が良い点や、高い重合活性が発現することから固体状のポリメチルアルミノキサン、より高い重合活性が発現することからポリメチルアルミノキサン、変性ポリメチルアルミノキサン等を例示することが出来る。
【0055】
また、該(ii)キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)に、若しくは該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)と有機金属化合物との混合物に作用させることにより、該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)の第4族金属原子上にカチオンを生じさせることが出来る化合物としては、キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)をカチオン性の錯体に変換させることが可能な化合物であれば特に制限はなく、具体的には、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のオニウムボレート;リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の金属ボレート;トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリチルボレート;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のルイス酸性化合物及び、これらのペンタフルオロフェニル基を全て3,5(ビストリフルオロメチル)フェニル基に置換した化合物等を例示することが出来る。特に好ましくは、工業的に入手が容易な、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及び、これらのペンタフルオロフェニル基を全て3,5(ビストリフルオロメチル)フェニル基に置換した化合物を例示することが出来る。
【0056】
(iii)粘土化合物としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト属粘土化合物が挙げられる。本発明においては、天然の粘土化合物及び人工合成により得られる粘土化合物が使用可能であり、また、上記に例示がないものにおいてもカオリナイト等粘土化合物の定義に属するものであれば用いることが出来る。さらに、上記粘土化合物は複数種混合して用いることも出来る。
【0057】
また、(iii)粘土化合物としては、上記粘土化合物に対し酸処理、無機イオン処理及び/または有機イオン処理等を施し変性させたものも使用することが出来る。酸処理としては、塩酸、硫酸、硝酸又はリン酸処理等を例示することが出来る。なお無機イオン処理及び/又は有機イオン処理とは、粘土化合物層間に無機イオン化合物及び/又は有機イオン化合物を導入し、イオン複合体を形成することであり、無機イオン処理で用いられる無機イオン化合物としては、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム、アルミニウム等の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等を例示することが出来、有機イオン処理で用いられる有機イオン化合物としては、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機スルホニウムオキシ塩、有機リン酸塩等を例示することが出来る。
【0058】
好ましい粘土化合物としては、担体形状の制御性が良い点や、高い触媒活性が発現することから有機アンモニウム塩により有機イオン化合物処理された変性粘土化合物等を例示することが出来る。
【0059】
そして、該有機金属化合物としては、特に重合活性に優れるオレフィン重合体製造用触媒とする際に、該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)、該活性化助触媒に加え、有機金属化合物をその構成とするものであり、該有機金属化合物は、例えば炭素数1~24の有機アルミニウム化合物及び/又は炭素数1~16の有機亜鉛化合物を挙げることができ、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物;ジエチル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等を例示することが出来る。これら有機金属化合物は、一種類を単独で用いても、複数を任意の比率で混合して用いても良い。好ましい有機金属化合物としては、工業的に入手が容易な、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチル亜鉛等を例示することが出来る。
【0060】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を構成する該キサンテンジアミド第4族金属錯体(2)(以下(A)成分ということもある。)及び活性化助触媒(以下、(B)成分ということもある。)、さらに場合によっては、有機金属化合物(以下、(C)成分ということもある。)を用いる際の使用割合に関しては、オレフィン重合体製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特にオレフィン重合体を効率よく製造することが可能なオレフィン重合体製造用触媒となることから、(A)成分と(B)成分の重量比が(A)成分:(B)成分=10:1~1:10000にあることが好ましく、特に3:1~1:1000の範囲であることが好ましい。また、(C)成分を用いる場合には、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A)成分:(C)成分=100:1~1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1~1:10000の範囲であることが好ましい。
【0061】
そして、本発明のオレフィン重合体製造用触媒の調製方法については、上記(A)成分及び上記(B)成分、場合によっては、上記(C)成分を含むオレフィン重合体製造用触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば(A)成分、(B)成分、(C)成分に対して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法等を挙げることが出来る。また、これらの成分を混合する順番に関しても特に制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も特に制限はない。
【0062】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を用いて重合することができるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;スチレン等のスチレン誘導体;1,3-ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の共役及び非共役ジエン;シクロブテン等の環状オレフィン;等を例示することが出来る。さらに、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1-ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンと5-エチリデン-2-ノルボルネン等の、2種以上のオレフィンを用いて共重合体とすることも出来る。
【0063】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を用いオレフィン重合体を製造する際の製造方法としては、例えば溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、スラリー重合法等の方法等を例示することが出来、粒子形状の整ったオレフィン重合体を効率よく安定的に製造することが可能となることからスラリー重合法が好ましい。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、重合反応を阻害しない限り特に制限はない。使用可能な溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等を例示することが出来る。さらにプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のオレフィンを溶媒として用いることも出来る。
【0064】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒によりオレフィン重合体を製造する重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度等の重合条件には特に制限はなく、任意に選択可能であり、その中でも、重合温度30℃から300℃、重合時間10秒から20時間、重合圧力常圧から100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素等を用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、又は連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるオレフィン重合体は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明は、合成が容易で、分子設計の自由度が高くオレフィン重合体の製造用触媒としての有用性を有する新規配位子、新規錯体、該新規錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供するものであり、より容易に効率よく分子量の大きなオレフィン重合体を得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。反応等は、特に記載のない限りにおいて不活性ガス雰囲気下で実施しており、実施例及び合成例に記載の化合物の製造は全てアルゴン雰囲気下で、オレフィン重合体製造用触媒の調製及びオレフィンの重合反応は窒素雰囲気下で実施した。用いたTHF、トルエン及びヘキサンは関東化学社製の脱水品である。それ以外の試薬については市販品をそのまま用いた。重ベンゼンは、金属ナトリウム/ベンゾフェノンケチルを用いて乾燥後、蒸留したものを用いた。
【0067】
実施例に記載したオレフィン重合体の諸物性は、以下に示す方法で測定した値を用いた。
【0068】
~融点の測定~
示差走査型熱量計(日立ハイテクノロジーズ(株)社製、商品名:DSC6220)を用いて融点を測定した。0℃から230℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、5分間230℃で保持し、重合体を溶融させた後、10℃/分の降温速度で-20℃まで降温、続いて-20℃で5分間保持することで該オレフィン重合体を結晶化させ、その後、-20℃から230℃まで10℃/分の昇温速度で昇温する際に観測される融点を、該重合体の融点とした。
【0069】
~固有粘度の測定~
ウベローデ型粘度計を用い、ODCB(オルトジクロルベンゼン)を溶媒として、135℃において、ポリエチレン濃度0.005wt%~0.01wt%で固有粘度の測定を行った。また、得られた固有粘度([η]、dl/g)にて、以下の式に従い粘度分子量(Mv)を算出した。
粘度分子量(Mv)=(1613×[η])1.43
~1H-NMRスペクトルの測定~
合成した化合物の同定は、核磁気共鳴スペクトル測定装置(ブルカーバイオスピン社製、(商品名)BRUKER ULTRASHIELD PLUSTM AVANCE III(400MHz)又はBRUKER AscendTM AVANCE III HD(400MHz))を用いて測定した。
【0070】
実施例1
2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(1-22)の合成
【0071】
【0072】
300mLナスフラスコにトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムPd2(dba)3(614mg,0.671mmol)、rac-BINAP(855mg,1.37mmol)、トルエン20mLを加えて80℃で10分間撹拌した。さらにナトリウムtert-ブトキシド(NaOtBu,5.44g,56.6mmol)、4,5-ジブロモ-2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-9H-キサンテン(10.2g,21.2mmol)、2-アミノキノリン(6.21g,43.1mmol)及びトルエン100mLを加えて40時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸15mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン100mL、ジエチルアミン5.0g(68mmol)を加えて室温で1時間撹拌し、析出した固体をろ別した。得られた固体をトルエン100mLに懸濁させ、ディーンスターク装置を用いて3時間かけて共沸脱水した。さらにトルエンを常圧留出して約40mLまで濃縮後、ヘキサン100mLを加えて室温で一晩撹拌した。得られた固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、黄白色固体として2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(1-22)を12.0g(19.7mmol)得た。収率93%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3);8.15(d,J=2.2Hz,2H),7.78(d,J=8.3Hz,2H),7.61-7.55(m,4H),7.49(dd,J=8.0,1.1Hz,2H),7.24-7.20(m,4H),6.84(br,2H),6.29(d,J=8.9Hz,2H),1.71(s,6H),1.39(s,18H)。
【0073】
実施例2
2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(ピリジン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(1-9)の合成
【0074】
【0075】
20mLシュレンク管にPd2(dba)3(46.0mg,0.050mmol)、rac-BINAP(64.0mg,0.10mmol)、トルエン5mLを加えて80℃で10分間撹拌した。さらにNaOtBu(240mg,2.50mmol)、4,5-ジブロモ-2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-9H-キサンテン(460mg,0.96mmol)、2-アミノピリジン(207mg,2.20mmol)を加えて19時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸1.5mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン10mL、ジエチルアミン1.5mLを加えて室温で1時間撹拌し、析出した固体をろ別した。得られた固体をトルエン20mLに懸濁させ、ディーンスターク管を用いて3時間かけて共沸脱水した。さらにトルエンを常圧回収して約3mLまで濃縮後、ヘキサン30mLを加えて室温で一晩撹拌した。得られた固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、黄白色固体として2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(ピリジン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(1-9)を382mg(0.75mmol)得た。収率78%。
1H-NMR(400MHz,CDCl3);8.24(ddd,J=5.0,1.9,0.8Hz,2H),7.81(d,J=2.3Hz,2H),7.43(m,2H),7.18(d,J=2.3Hz,2H),6.69(ddd,J=7.2,5.0,0.8Hz,2H),6.66(br,2H),6.55(m,2H),1.70(s,6H),1.37(s,18H)。
【0076】
実施例3
[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)チタン(2-Ti-22)の合成
【0077】
【0078】
THF10mLにTi(NMe2)4413mg(1.84mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながら2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチルl-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(化合物例示番号(1-22)、1.12g,1.84mmol)を投入した。室温で14時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体をヘキサン10mLで三回洗浄し、減圧下で乾燥することにより、黄色固体として[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)チタン(2-Ti-22)を1.35g(1.97mmol)得た。収率98%。
1H-NMR(400MHz,C6D6);8.10(d,J=8.4Hz,2H),7.50(d,J=8.7Hz,2H),7.41(m,6H),7.27(d,J=8.7Hz,2H),7.12(m,2H),7.03(d,J=2.0Hz,2H),3.18(s,12H),1.74(s,6H),1.30(s,18H)。
【0079】
実施例4
[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)ハフニウム(2-Hf-22)の合成
【0080】
【0081】
トルエン15mLにHf(NMe2)4(551mg、1.55mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながら2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミン(化合物例示番号(1-22)、942mg,1.55mmol)を投入した。室温で14時間撹拌した後、溶媒を減圧下で留去した。得られた固体をヘキサン10mLで三回洗浄し、減圧下で乾燥することにより、黄色固体として[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)ハフニウム(2-Hf-22)を1.25g(1.44mmol)得た。収率92%。
1H-NMR(400MHz,C6D6);7.85(d,J=8.3Hz,2H),7.41(d,J=2.0Hz,2H),7.24(m,4H),7.17(m,4H),6.89(m,4H),3.20(brs,12H),1.67(s,6H),1.35(s,18H)。
【0082】
実施例5
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
500mL三口フラスコに、[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)チタン(化合物例示番号(2-Ti-22)、0.15g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及びヘキサン(100mL)を加えて室温で撹拌し、別途300mL三口フラスコで調製した固体メチルアルミノオキサンのヘキサン/オクタン溶液(49.3g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製)のヘキサン(100mL)希釈品を投入し、室温で2時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒Aを得た。
【0083】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒A(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。エチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(10g)を得た。重合活性は200000g/molTi原子であった。得られたポリエチレンは、固有粘度([η])が11dl/g、粘度分子量(Mv)が1190000であり、極めて高い分子量(超高分子量)のものであった。
【0084】
実施例6
エチレン及び1-ブテンの共重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び実施例5の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒A(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。エチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン・1-ブテン共重合体(8g)を得た。重合活性は160,000g/molTi原子であった。得られたエチレン・1-ブテン共重合体は、融点126℃、固有粘土([η])が10dl/g、粘度分子量(Mv)が1030000であり、極めて高い分子量のものであった。
【0085】
実施例7
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
300mL三口フラスコに、[2,7-ジ-tert-ブチル-9,9-ジメチル-N4,N5-ジ(キノリン-2-イル)-9H-キサンテン-4,5-ジアミノ]ビス(ジメチルアミノ)ハフニウム(化合物例示番号(2-Hf-22)、0.15g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及びヘキサン(100mL)を加えて室温で撹拌し、別途300mL三口フラスコで調製した固体メチルアルミノオキサンのヘキサン/オクタン溶液(41.8g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製)のヘキサン(100mL)希釈品を投入し、室温で2時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒Bを得た。
【0086】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒B(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。エチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(3g)を得た。重合活性は60000g/molHf原子であった。得られたポリエチレンは、固有粘土([η])が12dl/g、粘度分子量(Mv)が1350000であり、極めて高い分子量のものであった。
【0087】
実施例8
エチレン及び1-ブテンの共重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び実施例7の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒B(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。エチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン・1-ブテン共重合体(3g)を得た。重合活性は60000g/molHf原子であった。