(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】包装袋用積層体及び包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 15/085 20060101AFI20240621BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20240621BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
B32B15/085 A
B65D30/02
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020126412
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/067426(WO,A1)
【文献】特開2020-055181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/085
B65D 30/02
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性の包装袋として用いられる積層体であって、
1又は複数の延伸ポリエチレン系フィルムを含む基材層と、
前記基材層に積層されたシーラント層と、
を備え、前記シーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む無延伸ポリエチレン系フィルムと、前記無延伸ポリエチレン系フィルムにおけるシール面以外の面に被膜された金属蒸着層とを含
み、
前記基材層が、第1の延伸ポリエチレン系フィルムと、前記第1の延伸ポリエチレン系フィルムと前記シーラント層との間に介在された第2の延伸ポリエチレン系フィルムとを含み、これら第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムがそれぞれ2以上のポリエチレン層を含み、
前記第1の延伸ポリエチレン系フィルムにおける、第2の延伸ポリエチレン系フィルム側とは反対側の外面層を構成するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、かつ前記外面層の第2の延伸ポリエチレン系フィルム側に積層されたポリエチレン層が、中密度ポリエチレン層又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムにおける互いに対向するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、
前記第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムどうしの間に、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの薄膜からなる層内接着層が介在されていることを特徴とする包装袋用積層体。
【請求項2】
前記シーラント層が、前記シール面を有する第1無延伸ポリエチレン系フィルムと、前記第1無延伸ポリエチレン系フィルムにおける前記シール面とは反対側の前記基材層を向く面に層内接着層を介して積層された第2無延伸ポリエチレン系フィルムとを備え、
前記第1、第2無延伸ポリエチレン系フィルムが、それぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記第1、第2無延伸ポリエチレン系フィルムの何れかにおけるシール面以外の面に前記金属蒸着層が被膜されている請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記基材層と前記シーラント層との間に層間接着層が介在されている請求項1
又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第2の延伸ポリエチレン系フィルムにおける、前記シーラント層と対面する内面層を構成するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、かつ前記内面層の第1の延伸ポリエチレン側に積層されたポリエチレン層が、中密度ポリエチレン層又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記内面層と前記シーラント層との間に、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの薄膜からなる層間接着層が介在されている請求項
1又は2に記載の積層体。
【請求項5】
前記積層体を構成するポリエチレンの少なくとも一部が、植物由来ポリエチレンである請求項1~
4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記積層体を構成するポリエチレンの少なくとも一部が、リサイクルポリエチレンである請求項1~
4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記基材層に印刷層が設けられている請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の積層体からなる包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性の包装袋として用いられる積層体に関し、特にバリア性を有する包装袋に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の包装袋は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの複数種の樹脂層を積層した積層体によって構成されている。さらに、アルミ箔などの金属層が設けられることで空気バリア性が付与された積層体も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
異種材質フィルムの積層体からなる袋は、ゴミとして回収された後に材質ごとに分別するのが容易でなく、リサイクル性が低い。積層体をポリエチレンだけで構成すれば、リサイクルが容易になるが、金属層を無くすとバリア性が失われる。
本発明は、かかる事情に鑑み、可撓性の包装袋用の積層体のリサイクル性とバリア性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、可撓性の包装袋として用いられる積層体であって、
1又は複数の延伸ポリエチレン系フィルムを含む基材層と、
前記基材層に積層されたシーラント層と、
を備え、前記シーラント層が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む無延伸ポリエチレン系フィルムと、前記無延伸ポリエチレン系フィルムにおけるシール面以外の面に被膜された金属蒸着層とを含むことを特徴とする。
【0006】
好ましくは、前記基材層が、積層された複数の延伸ポリエチレン系フィルムを含み、各延伸ポリエチレン系フィルムが、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも1つを含む。
【0007】
好ましくは、前記シーラント層が、前記シール面を有する第1無延伸ポリエチレン系フィルムと、前記第1無延伸ポリエチレン系フィルムにおける前記シール面とは反対側の前記基材層を向く面に層内接着層を介して積層された第2無延伸ポリエチレン系フィルムとを備え、
前記第1、第2無延伸ポリエチレン系フィルムが、それぞれ直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記第1、第2無延伸ポリエチレン系フィルムの何れかにおけるシール面以外の面に前記金属蒸着層が被膜されている。
【0008】
好ましくは、前記基材層と前記シーラント層との間に層間接着層が介在されている。
【0009】
好ましくは、前記基材層が、第1の延伸ポリエチレン系フィルムと、前記第1の延伸ポリエチレン系フィルムと前記シーラント層との間に介在された第2の延伸ポリエチレン系フィルムとを含み、これら第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムがそれぞれ2以上のポリエチレン層を含み、
前記第1の延伸ポリエチレン系フィルムにおける、第2の延伸ポリエチレン系フィルム側とは反対側の外面層を構成するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、かつ前記外面層の第2の延伸ポリエチレン系フィルム側に積層されたポリエチレン層が、中密度ポリエチレン層又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む。
融点が高く耐熱性に優れた高密度ポリエチレンによって外面層を構成しておくことで、製袋工程におけるシールバーの高熱によって、基材層が劣化したり損傷したりするのを防止できる。
【0010】
好ましくは、前記第2の延伸ポリエチレン系フィルムにおける、前記シーラント層と対面する内面層を構成するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、かつ前記内面層の第1の延伸ポリエチレン側に積層されたポリエチレン層が、中密度ポリエチレン層又は直鎖状低密度ポリエチレンを含み、
前記内面層と前記シーラント層との間に、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの薄膜からなる層間接着層が介在されている。
融点が高く耐熱性に優れた高密度ポリエチレンによって内面層を構成しておくことで、基材層とシーラント層とのラミネート成形時に、溶融された層間接着層の熱によって、第2ポリエチレンフィルムが劣化したり損傷したりするのを防止できる。
【0011】
好ましくは、前記第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムにおける互いに対向するポリエチレン層が、高密度ポリエチレンを含み、
前記第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムどうしの間に、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの薄膜からなる層内接着層が介在されている。
これによって、第1、第2の延伸ポリエチレン系フィルムどうしのラミネート成形時に、溶融された層内接着層の熱によって、第1及び第2の延伸ポリエチレン系フィルムフィルムが劣化したり損傷したりするのを防止できる。
【0012】
好ましくは、前記積層体を構成するポリエチレンの少なくとも一部が、植物由来ポリエチレン又はリサイクルポリエチレンである。これによって、環境負荷を軽減できる。
【0013】
好ましくは、前記基材層に印刷層が設けられている。
また、本発明は、前記の積層体からなる包装袋を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓性の包装袋用の積層体のリサイクル性とバリア性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体からなる包装袋の斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、前記積層体の拡大断面図である。
図2(b)は、
図1の円部11bにおける拡大断面図である。
【
図3】
図3は、前記包装袋の製造方法の一例を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第4実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第5実施形態に係る積層体の断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第6実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図3)>
図1は、自立袋からなる包装袋1を示したものである。包装袋1は、一対の胴部フィルム2と、底フィルム3を含み、可撓性及び自立性を有している。胴部フィルム2及び底フィルム3は、積層体10によって構成されている。
【0017】
図2(a)に示すように、積層体10は、基材層11と、層間接着層16と、シーラント層20を含む。基材層11は、延伸ポリエチレン系フィルム12と、印刷層13を含む。延伸ポリエチレン系フィルム12は、好ましくは二軸延伸されているが、一軸延伸でもよい。一軸延伸の場合、その延伸方向は、包装袋1(自立袋)の高さ方向(
図1において上下方向)であることが好ましい。
延伸倍率は好ましくは2~15倍である。
【0018】
延伸ポリエチレン系フィルム12ひいては基材層11は、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうち少なくとも1つを主成分として含み、これらポリエチレンのうち2種以上の混合物であってもよい。
「主成分として含む」とは、その成分がフィルムの少なくとも50wt%以上を占めることを言い、好ましくは90wt%以上、より好ましくは99wt%以上を占めることを言う。
高密度ポリエチレン(HDPE)は、密度0.941g/m3~0.970g/m3程度のポリエチレンを言う。
中密度ポリエチレン(MDPE)は、密度が高密度ポリエチレンの密度範囲より小さく直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の密度範囲より大きいポリエチレンを言い、具体的には密度0.926g/m3~0.940g/m3程度のポリエチレンを言う。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の密度範囲は、0.911g/m3~0.925g/m3程度である。
【0019】
延伸ポリエチレン系フィルム12には、主成分のポリエチレンの他、必要に応じて酸化防止剤、スリップ剤等の少量の添加剤が添加されていてもよく、微量の不可避的不純物が含まれていてもよい。
延伸ポリエチレン系フィルム12を構成するポリエチレンの少なくとも一部は、植物から生成したエチレンを重合させてなる植物由来ポリエチレンであることが好ましい。
基材層11の厚みは、20μm~100μm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0020】
延伸ポリエチレン系フィルム12の片面の所定領域には、印刷層13が設けられている。印刷層13には、画像、絵柄、商品名、ロゴマーク、商品説明などが表されている。印刷層13は、延伸ポリエチレン系フィルム12における外側面(シーラント層とは反対側の面)に設けられているが、延伸ポリエチレン系フィルム12における内側面(シーラント層と対面する面)に設けられていてもよい。
【0021】
図2(a)に示すように、基材層11の内側面(同図において下面)に層間接着層16を介してシーラント層20が積層されている。層間接着層16は、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンの薄膜で構成されているが、これに限らず、溶剤型や無溶剤型などの一般的な樹脂接着剤を用いてもよい。層間接着層16の厚みは、例えば10μm~30μm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0022】
シーラント層20は、無延伸ポリエチレン系フィルム21と、金属蒸着層22を含む。無延伸ポリエチレン系フィルム21は、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を主成分として含む。
無延伸ポリエチレン系フィルム21には、必要に応じて酸化防止剤、スリップ剤等の少量の添加剤が添加されていてもよく、微量の不可避的不純物が含まれていてもよい。
無延伸ポリエチレン系フィルム21の厚み(実質的にシーラント層20の厚み)は、50μm~200μm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0023】
無延伸ポリエチレン系フィルム21を構成するポリエチレンの少なくとも一部は、植物から生成したエチレンを重合させてなる植物由来ポリエチレンであることが好ましい。ひいては、積層体10を構成するポリエチレンの少なくとも一部は、植物由来ポリエチレンであることが好ましい。
【0024】
あるいは、積層体10を構成するポリエチレンの少なくとも一部が、ポリエチレン製品をリサイクルしたリサイクルポリエチレンであってもよい。リサイクルポリエチレンは、メカニカルリサイクルされたポリエチレンでもよく、ケミカルリサイクルされたポリエチレンでもよい。
【0025】
無延伸ポリエチレン系フィルム21における基材層11とは反対側(
図2(a)において下側)の面は、他の積層体10と接合されるシール面21aとなっている(
図2(b)参照)。
無延伸ポリエチレン系フィルム21における基材層11を向く面(シール面21a以外の面)には、金属蒸着層22が被膜されている。金属蒸着層22は、アルミニウムなどの金属によって構成されている。金属蒸着層22の厚みは、10nm~100nm程度であり、無延伸ポリエチレン系フィルム21の厚みに対して無視できるほど小さい。
図2(a)においては、金属蒸着層22の厚みが誇張されている。
【0026】
図2(b)に示すように、包装袋1においては、一対の胴部フィルム2どうしが重ねられている。各胴部フィルム2の基材層11は外面側へ向けられ、シーラント層20は内面側へ向けられている。これら胴部フィルム2の左右の縁部におけるシーラント層20どうしが融着されている。また、胴部フィルム2の底側の縁部及び底部フィルム3の周縁部どうしが融着されている(
図1参照)。
なお、
図2(b)において、各層11,20の厚みは幅に対して誇張されている。
【0027】
図3に例示するように、積層体10は、次のようにして製造される。
延伸ポリエチレン系フィルム12が押出及び延伸成形される。延伸ポリエチレン系フィルム12の所定領域には印刷層13が形成される。なお、印刷層13が延伸ポリエチレン系フィルム12の外側面に設けられている場合は、無延伸ポリエチレン系フィルム21とのラミネート後に印刷を行ってもよい。
【0028】
別途、無延伸ポリエチレン系フィルム21が押出成形される。該無延伸ポリエチレン系フィルム21に金属蒸着層22が蒸着される。蒸着工程は、押出成形後、ロール状態に巻かれる前の成形ライン上で行ってもよく、押出成形されて一旦ロール状態にされた後、蒸着専用ラインに移して行ってもよい。延伸ポリエチレン系フィルム12ではなく、無延伸ポリエチレン系フィルム21に金属蒸着層22に形成することで、延伸ポリエチレン系フィルム12への印刷工程においては、金属蒸着層22を気にすることなく、フィルム12の送り等を厳密に制御して印刷ピッチを管理することができ、印刷ずれを確実に防止できる。
【0029】
作製された連続フィルム状の基材層11及びシーラント層20の原反が、ラミネート装置にセットされて繰り出されるとともに、両層11,20の間に層間接着層16となるポリエチレンが溶融状態で押し出されてサンドイッチされる。これによって、基材層11及びシーラント層20が貼り合わされる。このようにして、長尺連続シート状の積層体10の原反がラミネート成形される。
前記積層体10が製袋機にセットされ、製袋機によって積層体10から包装袋1が作製される。
【0030】
積層体10からなる包装袋1によれば、積層体10に金属蒸着層22が設けられているために、ガスの透過、漏洩、侵入を阻止でき、ガス気バリア性を確保できる。
加えて、積層体10の略全体がポリエチレンの単一素材によって構成されているために、リサイクルが容易である。積層体10は、ポリエチレンのほか、金属蒸着層22をも含んでいるが、金属蒸着層22は厚みがナノメートルオーダーで極めて薄く、ポリエチレンと比べて極めて少量であるから、リサイクル性が損なわれることはほとんどない。
ちなみに、アルミ箔をバリア層として用いた場合、アルミ箔の厚みはミクロンメートルオーダー(例えば5~15μm程度)であるため単一素材性が劣る。
好ましくは、積層体10を構成するポリエチレンを植物由来としたり、リサイクルポリエチレンを用いたりすることによって環境負荷を軽減できる。
【0031】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図4)>
図4に示すように、第2実施形態の積層体10Bにおいては、基材層11が2つ(複数)の延伸ポリエチレン系フィルム12A,12Bの積層構造になっている。好ましくは、延伸ポリエチレン系フィルム12A,12Bは、共押出によって成形されている。
延伸ポリエチレン系フィルム12A,12Bを互いに別々に押出成形した後、接着層を介して貼り合わせてもよい。
【0032】
各延伸ポリエチレン系フィルム12A,12Bは、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のうち少なくとも1つを主成分として含み、これらポリエチレンのうち2種以上の混合物であってもよい。2つの延伸ポリエチレン系フィルム12A,12Bが同じ種類又は組成のポリエチレンで構成されていてもよく、異なる種類又は組成のポリエチレンで構成されていてもよい。これらポリエチレンの少なくとも一部は、植物から生成したエチレンを重合させてなる植物由来ポリエチレン又はリサイクルポリエチレンであることが好ましい。
【0033】
外側の延伸ポリエチレン系フィルム12Aの外側面(
図4において上面)には、印刷層13が設けられている。
なお、印刷層13が、内側の延伸ポリエチレン系フィルム12Bのシーラント層20を向く内側面(
図4において下面)に設けられていてもよい。複数の延伸ポリエチレン系フィルム12を互いに別々に押出成形した後、貼り合わせる場合には、印刷層13が外側の延伸ポリエチレン系フィルム12Aの内側面(
図4において下面)に設けられていてもよく、印刷層13が内側の延伸ポリエチレン系フィルム12Bの外側面(
図4において上面)に設けられていてもよい。
延伸ポリエチレン系フィルムの積層数は、2つに限らず3つ以上でもよい。
第2実施形態によれば、積層体10Bの強度を高めることができ、ひいては包装袋1の強度を高めて破袋を防止できる。
【0034】
<第3実施形態(
図5)>
図5に示すように、第5実施形態の積層体10Cにおいては、シーラント層20が、
第1無延伸ポリエチレン系フィルム23と、第2無延伸ポリエチレン系フィルム24とを備えている。基材層11側(
図5において上側)の第1無延伸ポリエチレン系フィルム23は、無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含む。第1無延伸ポリエチレン系フィルム23の内側面(
図5において下面)は、他の積層体と融着されるシール面23aとなっている。
【0035】
第1無延伸ポリエチレン系フィルム23におけるシール面23aとは反対側の面(基材層11を向く面)には、層内接着層26を介して、第2無延伸ポリエチレン系フィルム24が積層されている。層内接着層26は、好ましくは低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンの薄膜で構成されているが、これに限らず、溶剤型や無溶剤型などの一般的な樹脂接着剤を用いてもよい。層内接着層26の厚みは、例えば10μm~30μm程度であるが、これに限定されるものではない。
【0036】
第2無延伸ポリエチレン系フィルム24は、無延伸の直鎖状低密度ポリエチレンを主成分として含む。第2無延伸ポリエチレン系フィルム24における外側面(シール面23a以外の面)に金属蒸着層22が被膜されている。
積層体10Cにおけるシーラント20の全体厚さは、例えば50μm~200μm程度であるが、これに限定されるものではない。
積層体10Cを構成するポリエチレンの少なくとも一部は、植物から生成したエチレンを重合させてなる植物由来ポリエチレン又はリサイクルポリエチレンであることが好ましい。
【0037】
シーラント20の作製時には、第1、第2無延伸ポリエチレン系フィルム23,24を別々に押出成形し、第2無延伸ポリエチレン系フィルム24には金属蒸着層22を蒸着させた後、2つのフィルム23,24を層内接着層26を介してラミネートする。
第3実施形態によれば、金属蒸着層22を被膜するフィルム24の厚みをシーラント20の全体厚さの数分の1にすることで、フィルム24をロール状にしたときの1本のロールあたりのフィルム長さを増大できる。したがって、蒸着加工時のロール取り替えなどの段取り回数やロスを減らすことができ、加工コストを低く抑えることができる。
一方、複数のフィルム23,24を積層してシーラント層20全体の厚みを大きくすることで、シール強度を高めたり、シーラント層20ひいては積層体10Cにコシを付与したりして、包装袋1としての強度を確保することができる。
【0038】
複数の延伸ポリエチレン系フィルムが、それぞれ2~3以上のポリエチレン層を含んでいてもよい。
<第4実施形態(
図6)>
図6に示すように、第4実施形態の積層体10Dにおいては、外側(第1)の延伸ポリエチレン系フィルム17が2つのポリエチレン層17a,17bを含む。内側(第2)の延伸ポリエチレン系フィルム18が2つのポリエチレン層18a,18bを含む。
【0039】
外側の延伸ポリエチレン系フィルム17において、シーラント層とは反対側(
図6の上側)の外面層を構成するポリエチレン層17aは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
前記外面層17aのシーラント層側に積層されたポリエチレン層17bは、中密度ポリエチレン層(MDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。
【0040】
内側の延伸ポリエチレン系フィルム18において、内面層(シーラント層20と対面する層)を構成するポリエチレン層18bは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
前記内面層18bのフィルム17側(シーラント層とは反対側)に積層されたポリエチレン層18aは、中密度ポリエチレン層(MDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。
【0041】
ポリエチレン層17b,18aどうしが、これら間に介在された層内接着層15Dによって接着されている。層内接着層15Dは、例えば溶剤型又は無溶剤型の樹脂接着剤によって構成されている。
【0042】
内面層18bひいては基材層11と、シーラント層20とは、これらの間に介在された層間接着層16Dによって接着されている。層間接着層16Dは、低密度ポリエチレン(LLDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレンの薄膜によって構成されている。
【0043】
第4実施形態において、延伸ポリエチレン系フィルム17,18は、それぞれ共押出成形等によって形成され、かつ互いに直交する方向に一軸延伸される。
これらフィルム17,18が層内接着層15Dによって接着され、基材層11が形成される。
該基材層11とシーラント層20とが重ねられるとともに、両者間に層内接着層15Eとなるポリエチレンが加熱溶融状態で押し出されてサンドイッチされる。これによって、積層体10Dがラミネート成形される。層間接着層16Dと接する内面層18bを、融点が高く耐熱性に優れたHDPEによって構成しておくことで、前記ラミネート成形時の熱によって、基材層11が劣化したり損傷したりするのを防止できる。
続いて、製袋工程においては、シートシール部33(
図3(b))の高熱のシールバーが外面層17aに押し当てられる。該外面層17aをHDPEによって構成することで、基材層11が熱による劣化や損傷を受けるのを防止できる。
【0044】
<第5実施形態(
図7)>
図7に示すように、第5実施形態の積層体10Eにおいては、外側(第1)の延伸ポリエチレン系フィルム17が3つのポリエチレン層17c,17d,17eを含む。内側(第2)の延伸ポリエチレン系フィルム18が2つのポリエチレン層18c,18dを含む。
【0045】
外側の延伸ポリエチレン系フィルム17において、シーラント層とは反対側(
図7の上側)の外面層を構成するポリエチレン層17cは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
外面層17cのシーラント層側に積層されたポリエチレン層17dは、中密度ポリエチレン層(MDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。
延伸ポリエチレン系フィルム18と対面するポリエチレン層17eは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
【0046】
内側の延伸ポリエチレン系フィルム18において、延伸ポリエチレン系フィルム17と対面するポリエチレン層18cは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
シーラント層20と対面するポリエチレン層18dは、中密度ポリエチレン層(MDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。
【0047】
したがって、延伸ポリエチレン系フィルム17,18における互いに対向するポリエチレン層17e,18cは、共に高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。
これらポリエチレン層17e,18cどうし、ひいては延伸ポリエチレン系フィルム17,18どうしが、これらの間に介在された層内接着層15Eによって接着されている。層内接着層15Eは、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンの薄膜によって構成されている。
【0048】
第5実施形態において、延伸ポリエチレン系フィルム17,18は、それぞれ共押出成形等によって形成され、かつ互いに直交する方向に一軸延伸される。
その後、これらフィルム17,18が重ねられるとともに、両フィルム17,18の間に層内接着層15Eとなるポリエチレンが溶融状態で押し出されてサンドイッチされる。これによって、基材層11がラミネート成形される。延伸ポリエチレン系フィルム17,18における互いに対向するポリエチレン層17e,18cを、融点が高く耐熱性に優れたHDPEによって構成しておくことで、ラミネート成形時の熱によって、フィルム17,18が劣化したり損傷したりするのを防止できる。
【0049】
積層体10Eの基材層11とシーラント層20とは、これらの間に介在された層間接着層16Eを介して接着されている。層間接着層16Eは、たとえば溶剤型又は無溶剤型の樹脂接着剤によって構成されている。
外面層17cを融点が高く耐熱性に優れたHDPEによって構成しておくことで、製袋工程において基材層11がシールバーの高熱による劣化や損傷を受けるのを防止できる点は第4実施形態と同様である。
【0050】
<第6実施形態(
図8)>
図8に示すように、第6実施形態の積層体10Fは、内側(第2)の延伸ポリエチレン系フィルム18が3つのポリエチレン層18f,18g,18hを含むこと、及び層間接着層16Fの材質において、第5実施形態(
図7)の積層体10Eと異なっている。
積層体10Fの延伸ポリエチレン系フィルム18においては、延伸ポリエチレン系フィルム17と対面するポリエチレン層18fは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。したがって、延伸ポリエチレン系フィルム17,18における互いに対向するポリエチレン層17e,18fは、共に融点が高く耐熱性に優れたHDPEによって構成されている。これによって、ポリエチレン系フィルム17,18どうしのラミネート成形時に、溶融された層内接着層15Fの熱によって、フィルム17,18が劣化したり損傷したりするのを防止できる。
【0051】
延伸ポリエチレン系フィルム18における中間の(後記内面層のシーラント層側とは反対側に積層された)ポリエチレン層18gは、中密度ポリエチレン層(MDPE)又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する。
シーラント層20と対面する内面層を構成するポリエチレン層18hは、高密度ポリエチレン(HDPE)を含有する。これによって、基材層11とシーラント層20とのラミネート成形時に、溶融された層間接着層16Fの熱によって、ポリエチレン系フィルム18が劣化したり損傷したりするのを防止できる。
外面層17cを融点が高く耐熱性に優れたHDPEによって構成しておくことで、製袋工程において基材層11がシールバーの高熱による劣化や損傷を受けるのを防止できる点は第4実施形態と同様である。
【0052】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をなすことができる。
例えば、金属蒸着層22は、シーラント層20の無延伸ポリエチレン系フィルムにおけるシール面以外の面に被膜されていえばよい。第3実施形態において、金属蒸着層22が、第1無延伸ポリエチレン系フィルム23におけるフィルム24を向く外側面に蒸着されていてもよく、第2無延伸ポリエチレン系フィルム24におけるフィルム23を向く内側面に蒸着されていてもよい。
各フィルムの製造工程及び製袋工程は
図3に例示したものに限らず、適宜改変できるい。
第4~第6実施形態において、印刷層13が、何れかのフィルム17,18の何れかのポリエチレン層の何れかの面に設けられていてもよい。
印刷層22を省略してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば食品、洗剤などを収容する可撓性の包装袋に適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 包装袋
2 胴部フィルム
3 底フィルム
10 積層体
10B,10C,10D,10E,10F 積層体
11 基材層
12 延伸ポリエチレン系フィルム
12A,12B 延伸ポリエチレン系フィルム
13 印刷層
15D,15E,15F 層内接着層
16 層間接着層
16D,16E,16F 層間接着層
17 第1の延伸ポリエチレン系フィルム
17a ポリエチレン層(外面層)
17b 外面層のシーラント層側に積層されたポリエチレン層
17c ポリエチレン層(外面層)
17d 外面層のシーラント層側に積層されたポリエチレン層
17e 第2の延伸ポリエチレン系フィルムと対面するポリエチレン層
18 第2の延伸ポリエチレン系フィルム
18a 内面層のシーラント層側とは反対側に積層されたポリエチレン層
18b ポリエチレン層(内面層)
18c 第1の延伸ポリエチレン系フィルムと対面するポリエチレン層
18d シーラント層と対面するポリエチレン層
18f 第1ポリエチレン系フィルムと対面するポリエチレン層
18g 内面層のシーラント層側とは反対側に積層されたポリエチレン層
18h ポリエチレン層(内面層)
20 シーラント層
21 無延伸ポリエチレン系フィルム
22 金属蒸着層
21a シール面
23 第1無延伸ポリエチレン系フィルム
23a シール面
24 第2無延伸ポリエチレン系フィルム
26 層内接着層