(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ニッケル複合水酸化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 53/00 20060101AFI20240621BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240621BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240621BHJP
【FI】
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
(21)【出願番号】P 2021525226
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 EP2019079678
(87)【国際公開番号】W WO2020094482
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-28
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】バイアーリンク,トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】プフィスター,ダニエラ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167533(WO,A1)
【文献】特開2016-088834(JP,A)
【文献】特表2016-533018(JP,A)
【文献】特開2011-198759(JP,A)
【文献】特表2017-538649(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 25/00-47/00
C01G 49/10-99/00
H01M 4/00-4/62
JSTPlus/JST7580/JSTchina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径d50が3~20μmであるニッケル複合水酸化物を製造する方法であって、
そのニッケル複合水酸化物が、
(a)ニッケルの水溶性塩とコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1
種の水溶性塩との水溶液と、
(b)アルカリ金属水酸化物の水溶液と、
(c)
(c-i)アルカリ金
属炭酸塩
又はアルカリ金属重炭酸塩又はこれらの組合せ、又はアンモニウム炭酸塩又はアンモニウム重炭酸塩又はこれらの組合せの、
(c-ii)アルカリ金属水酸化物、
に対するモル比が0.001:1~0.04:1である水溶液
と、
の組み合わせを含み、
その方法が、連続撹拌槽型反応器において又は少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケードにおいて、1以上の工程で行われ、
溶液(b)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(a)を混ぜ
合わせるか、又は、
溶液(a)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(b)を混ぜ合わ
せるか、又は
溶液(a)、(b)
及び(c
)を同時に混ぜ合わせる、方法。
【請求項2】
水溶液(a)が、Al、Mg、B、又は遷移金属であって、ニッケル、コバルト及びマンガンは除かれる遷移金属のうちの少なくとも1種を追加的に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニッケル複合水酸化物が、溶液(a)と、溶液(b)と、溶液(c)と、
(d)アルカリ金属アルミン酸塩の水溶液と
の組合わせを含み、
その方法が、連続撹拌槽型反応器において又は少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケードにおいて、1以上の工程で行われ、
溶液(b)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(a)を混ぜ合わせて、そして、溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は、
溶液(a)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(b)を混ぜ合わせて、そして、溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は
溶液(a)、(b)、(c)、及び、溶液(d)を同時に混ぜ合わせる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ニッケル複合水酸化物が、遷移金属と一般式(I):
(Ni
aCo
bAl
c)
1-dM
d(I)
(式中、aは0.70~0.95の範囲であり、
bは0.025~0.2の範囲であり、
cは0.005~0.1の範囲であり、そして
dは0~0.05の範囲であり、
Mは、Mg、B、遷移金属(但し、Co及びNiを除く)、及びこれらのうちの少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a+b+c=1.0である)
で表される更なる金属との組み合わせを含む、請求項1
~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法が11.5~12.8の範囲のpH値で行われる、請求項1
~4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケードで行われ、そして、(a)が、12.0~12.8の範囲のpH値で第1の槽型反応器において及び11.5~12.4の範囲のpH値で第2の槽型反応器において、(b)及び(c)と混ぜ合わされる、請求項1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
Mが、前記ニッケル複合水酸化物中の金属に対して、0.1~2.5モル%の範囲のMgを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
水溶性塩が硫酸塩及び硝酸塩から選択される、請求項1~
7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法が、アルカリ金属アルミン酸塩を含む溶液(d)を添加することを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
ニッケル複合水酸化物であって、
平均粒子径d50が3~20μmの範囲であると共に、[(d90-d10)/(d50)]として計算される粒子径分布の幅が少なくとも0.61である粒子状であり、
Niと、Co及びMnから選択される少なくとも1種の遷移金属と、を60~95モル%の範囲で含み、
炭酸塩を0.1~3.0質量%の範囲で含む(なお、%は、前記ニッケル複合水酸化物に対するものである)、ニッケル複合水酸化物。
【請求項11】
一般式(II):
(Ni
aCo
bAl
c)
1-d
M
d
O
x(OH)
y(CO
3)
z(II)
(式中、aは0.60~0.95の範囲であり、
bは0.025~0.2の範囲であり、
cは0.005~0.1の範囲であり、そして
dは0~0.05の範囲であり、
Mは、Mg、B、遷移金属(但し、Co及びNiを除く)、及びこれらのうちの少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a+b+c=1.0、
0≦x<1、
1<y≦2.1、及び
0<z≦0.25である)
で表される組成を有する、請求項
10に記載のニッケル複合水酸化物。
【請求項12】
金属部分が、一般式(III):
(Ni
aCo
bAl
c)
1-d
M
d
(III)
(式中、aは0.80~0.95の範囲であり、
bは0.025~0.195の範囲であり、
cは0.02~0.05の範囲であり、そして
dは0~0.035の範囲であり、
Mは、Ti、Zr、Nb、W、及びMgのうちの1種以上、並びに、Mgと、Ti、Zr、Nb、及びWのうちの1種以上との組み合わせから選択され、
a+b+c=1.0、及び
b+c<0.20である)
による組成を有する、請求項
10又は
11に記載のニッケル複合水酸化物。
【請求項13】
比表面積(BET)が5~70m
2/gの範囲である、請求項
10~
12のいずれか1項に記載のニッケル複合水酸化物。
【請求項14】
リチウムイオン電池用のカソード活物質を製造するための前駆体としての請求項
10~
13のいずれか1項に記載のニッケル複合水酸化物の使用法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平均粒子径d50が3~20μmのニッケル複合水酸化物を製造する方法であって、
そのニッケル複合水酸化物が、
(a)ニッケルの水溶性塩とコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1種(及び、場合により、Al、Mg、B、又は遷移金属(但し、ニッケル、コバルト及びマンガンは除く)のうちの少なくとも1種を含む)の水溶性塩との水溶液と、
(b)アルカリ金属水酸化物の水溶液と、
(c)アルカリ金属(重)炭酸塩又はアンモニウム(重)炭酸塩と(b)からのアルカリ金属水酸化物とのモル比が0.001:1~0.04:1である水溶液と、
場合により、(d)アルカリ金属アルミン酸塩の水溶液と
の組み合わせを含み、
その方法が、連続撹拌槽型反応器において又は少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケードにおいて、1以上の工程で行われ、
溶液(b)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(a)を混ぜ合わせて、そして、溶液(d)を使用する場合には、溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は、
溶液(a)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(b)を混ぜ合わせて、そして、溶液(d)を使用する場合には、溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は
溶液(a)、(b)、(c)、及び、溶液(d)を使用する場合には、溶液(d)を同時に混ぜ合わせる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池、蓄電池、又は充電式電池は、発電後に電気エネルギーを貯蔵し、必要に応じて電気エネルギーを使用(消費)できるいくつかの実施形態にすぎない。電力密度が大幅に向上したために、近年では水系二次電池からの脱却が進んでおり、更に電荷輸送がリチウムイオンによって行われる電池の開発が進んでいる。
【0003】
電極材料は、リチウムイオン電池の特性にとって非常に重要である。リチウム含有混合遷移金属酸化物(例えば、層状構造のスピネル混合型酸化物(特に、ニッケル、マンガン及びコバルトのリチウム含有混合型酸化物)は、特に重要性を増している(例えば、EP1189296参照)。しかしながら、電極材料の化学量論だけでなく、他の特性(例えば、形態及び表面特性)も重要である。
【0004】
対応する混合型酸化物は、一般に2段階プロセスを使用して調製される。第1段階では、遷移金属の難溶性の塩は、溶液(例えば、炭酸塩又は水酸化物)からその難溶性の塩を沈殿させることによって調製される。この難溶性の塩は、多くの場合、前駆体とも呼ばれる。第2段階では、沈殿した遷移金属の塩とリチウム化合物(例えば、Li2CO3、LiOH、又はLi2O)とを混合し、そして、高温(例えば、600~1100℃)でか焼する。
【0005】
既存のリチウムイオン電池には、特にエネルギー密度に関して改善の余地が依然として残っている。この目的では、カソード材料は比容量が高くなければならない。カソード材料を簡単な方法で処理して、(単位体積あたりの)最大エネルギー密度を達成するために高密度にすべき厚さ20μm~200μmの電極層を与えることもまた有利である。
【0006】
EP3225591A1には、遷移金属水酸化物を製造するための方法が開示されている。共沈させるために、アルカリ金属水酸化物と少量の炭酸塩とを混合している。粒度分布の狭い複合水酸化物を含む炭酸塩が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】EP1189296
【文献】EP3225591A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、リチウムイオン電池用の優れた電極活物質(特に、高い重量容量の電極活物質と高いタップ密度の電極活物質とを組み合わせることによって得られる体積エネルギー密度に関する電極活物質)を合成できる前駆体を提供することであった。更に、本発明の目的は、そのような前駆体を製造するための適切な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、冒頭に定義された方法が見出され、以下、本発明の方法又は(本)発明による方法とも呼ばれる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の方法は、3~20μm、好ましくは4~15μmの範囲の平均粒子直径(d50)を有するニッケル複合水酸化物を製造するための方法である。本発明の文脈における平均粒子直径(d50)は、例えば、光散乱によって決定することができ、体積に基づく粒子直径の中央値を意味する。
【0011】
本発明の一実施形態では、本発明に従って製造されたニッケル複合水酸化物についての粒子径分布の幅は、[(d90-d10)/(d50)の直径]として表され、少なくとも0.61、例えば0.61~2、好ましくは0.65~1.5である。
【0012】
本発明による方法は、ニッケル複合水酸化物の調製に関する。本発明の文脈において、「ニッケル複合水酸化物」は、ニッケルとコバルト及びマンガンのうちの少なくとも1種との化学量論的に純粋な水酸化物だけでなく、特に、遷移金属カチオン以外のカチオン(すなわち、マグネシウムカチオン)、及び、場合により、遷移金属カチオン以外の1種以上のカチオン(例えば、アルミニウム又は(ホウ酸塩としての)ホウ素、及びアルカリ金属イオン)、及び、場合により、水酸化物イオン以外のアニオン(例えば、酸化物イオン及び硫酸アニオン)を含む。
【0013】
本発明の一実施形態では、「ニッケル複合水酸化物」という用語は、ニッケルと、コバルト及びマンガンのうちの少なくとも1種(場合により、Al、Mg、B、又は遷移金属(但し、ニッケル、コバルト及びマンガンは除く)のうちの少なくとも1種を含む)との複合水酸化物を意味しており、ニッケルのモル含有量は、前記ニッケル複合水酸化物中のカチオンに対して、60~98%の範囲である。
【0014】
前記ニッケル複合水酸化物は、微量の他の金属イオン(例えば、遍在する微量の金属(例えば、ナトリウム、Ca、又はZn))を含むことができる。しかし、そのような微量のものは、本発明の説明では考慮されない。この文脈での微量は、前記ニッケル複合水酸化物の合計金属含有量に対して、0.01モル%以下の量を意味するであろう。
【0015】
本発明の一実施形態では、前記ニッケル複合水酸化物は、遷移金属と一般式(I):
(NiaCobAlc)1-dMd(I)
(式中、aは0.70~0.95の範囲であり、
bは0.025~0.2の範囲であり、
cは0.005~0.1の範囲であり、そして
dは0~0.05の範囲であり、
Mは、Mg、B、遷移金属(但し、Co及びMnを除く)、これらのうちの少なくとも2種の組み合わせとから選択され、
a+b+c=1.0である)
で表される更なる金属との組み合わせを含む。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、前記ニッケル複合水酸化物は、遷移金属と一般式(III):
(NiaCobAlc)
1-d
M
d
(III)
(式中、aは0.80~0.95の範囲であり、
bは0.025~0.195の範囲であり、
cは0.02~0.05の範囲であり、そして
dは0~0.03の範囲であり、
Mが、Ti、Zr、Nb、W、及びMgのうちの1種以上、並びに、MgとTi、Zr、Nb、及びWのうちの少なくとも1種との組み合わせから選択され、
a+b+c=1.0、及びb+c<0.20である)
で表される更なる金属との組み合わせを含む。
【0017】
本発明の一実施形態では、Mは、前記ニッケル複合水酸化物中の金属の合計あたり0.1~2.5モル%の範囲のMgを含む。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記ニッケル複合水酸化物は、遷移金属と一般式(IV):
(NiaCobMnc)1-dMd(IV)
(式中、aが0.6~0.95の範囲であり、
bが0.025~0.2の範囲であり、
cは0.025~0.2の範囲であり、そして
dが0~0.1の範囲であり、
Mが、Al、Mg、Ti、Zr、W、及びNb、並びに、これらのうちの少なくとも2種の組み合わせから選択され、そして
a+b+c=1)
で表される更なる金属との組み合わせを含む。
【0019】
本発明の一実施形態では、ニッケル複合水酸化物は、アニオン(例えば、硫酸塩)の合計数に基づいて、アニオン(但し、水酸化物又は炭酸イオンは除く)を0.01~10モル%、好ましくは0.3~5モル%含む。
【0020】
本発明の方法は、
(a)ニッケルの水溶性塩と、コバルト及びマンガンのうちの少なくとも1種(及び、場合により、Al、Mg、B、又は遷移金属(但し、ニッケル、コバルト及びマンガンは除く)のうちの少なくとも1種を含む)の水溶性塩との水溶液(以下、「水溶液(a)」とも呼ばれる)と、
(b)アルカリ金属水酸化物の水溶液(以下、「溶液(b)」とも呼ばれる)と、
(c)アルカリ金属(重)炭酸塩又はアンモニウム(重)炭酸塩と水酸化物とのモル比が0.001:1~0.04:1である水溶液(以下、「溶液(c)」とも呼ばれる)と、
場合により、(d)アルカリ金属アルミン酸塩の水溶液(以下、「溶液(d)」とも呼ばれる)と
の組み合わせを含み、
その方法は、連続撹拌槽型反応器内において又は少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケード内において、1以上の工程で行われ、
溶液(b)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(a)を混ぜ合わせて、そして溶液(d)を使用する場合には溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は、
溶液(a)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、次に溶液(b)を混ぜ合わせて、そして溶液(d)を使用する場合には溶液(d)を混ぜ合わせるか、又は
溶液(a)、(b)、(c)、及び溶液(d)を使用する場合には溶液(d)を同時に混ぜ合わせる。
【0021】
ニッケルの水溶性塩という用語又はニッケル以外の金属の水溶性塩という用語は、25℃で25g/l以上の蒸留水における溶解度を示す塩を意味しており、その塩の量は、結晶水が取り除かれた状態及びアクア錯体に由来する水が取り除かれた状態で決定される。ニッケルの水溶性塩、コバルトの水溶性塩、及びマンガンの水溶性塩は、好ましくは、Ni2+水溶性塩、Co2+水溶性塩、及びMn2+の水溶性塩とすることができる。ニッケルの水溶性塩、コバルトの水溶性塩、マンガンの水溶性塩の例は、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物(特に、塩化物)である。硝酸塩及び硫酸塩が好ましく、そのうちの硫酸塩がより好ましい。
【0022】
本発明の一実施形態では、溶液(a)の濃度は、広い範囲で選択することができる。好ましくは、その合計濃度は、合計で1~1.8モルの遷移金属/溶液kg、より好ましくは1.5~1.7モルの遷移金属/溶液kgの範囲内に選択される。本明細書で使用される「遷移金属塩」は、使用可能な限り、ニッケル、コバルト、及びマンガンの水溶性塩を意味しており、そして、他の金属(例えば、マグネシウム、又はアルミニウム、又は遷移金属(但し、ニッケル及びコバルト及びマンガンは除く))の塩を含むことができる。
【0023】
水溶性塩の別の例は、ミョウバン、KAl(SO4)2である。
【0024】
溶液(a)は、2~5の範囲のpH値を有することができる。より高いpH値が望まれる実施形態では、アンモニアを溶液(a)に加えることができる。
【0025】
溶液(b)は、アルカリ金属水酸化物の水溶液である。アルカリ金属水酸化物の例は、水酸化リチウムである。水酸化カリウム、及び、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの組み合わせが好ましい。水酸化ナトリウムが更により好ましい。
【0026】
本発明の一実施形態では、溶液(b)は、1~50質量%、好ましくは10~40質量%の範囲のアルカリ金属水酸化物の濃度(%は、溶液(b)全体に対するものである)を有する。
【0027】
溶液(b)のpH値は、好ましくは13以上、例えば14.5である。
【0028】
溶液(c)は、アルカリ金属(重)炭酸塩又はアンモニウム(重)炭酸塩の水溶液であり、好ましくは炭酸塩である。炭酸アンモニウム及び炭酸ナトリウムがより好ましく、そして、炭酸ナトリウムが更により好ましい。
【0029】
本発明の一実施形態では、溶液(b)は水酸化ナトリウムの水溶液であり、そして、溶液(c)は炭酸ナトリウムの水溶液である。
【0030】
本発明の一実施形態では、溶液(c)は、1~15質量%の範囲のアルカリ金属(重)炭酸塩の濃度(なお、%は溶液(c)全体に対するものである)を有する。
【0031】
溶液(c)がアルカリ金属炭酸塩の溶液である実施形態では、溶液(c)のpH値は7以上、例えば9~13である。
【0032】
本発明の一実施形態では、溶液(b)及び(c)中の水酸化物と(重)炭酸塩とのモル比は、0.001~0.04、好ましくは0.001~0.02の範囲である。
【0033】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、例えば1~15質量%の範囲の濃度で、アルカリ金属アルミン酸(例えば、アルミン酸カリウム、特にアルミン酸ナトリウム)を含む溶液(d)を添加することを含む。溶液(d)のpH値は、13~14超の範囲にすることができる。
【0034】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、10~85℃の範囲の温度で、好ましくは20~60℃の範囲の温度で実施される。
【0035】
本発明の一実施形態では、溶液(b)及び(c)を最初に混ぜ合わせて、続いて溶液(a)を混ぜ合わせる。溶液(b)及び(c)を混ぜ合わせる工程は、「ベースの予備混合(base pre-mixing)工程」と呼ばれることもある。ベースの予備混合工程は、10~90℃の範囲の温度で実施することができる。
【0036】
本発明の一実施形態では、溶液(a)及び(c)が最初に混ぜ合わされ、続いて溶液(b)と混ぜ合わされる。前記実施形態では、溶液(a)及び(c)を混ぜ合わせ後及び溶液(b)の添加前についてのpH値は4~6の範囲であり、これによって、早い段階での炭酸塩の沈殿及びCO2の発生を回避することができる。
【0037】
本発明の実施形態では、溶液(a)、(b)及び(c)は、例えば、連続撹拌槽型反応器への異なる入口を通過して同時に混ぜ合わされる。
【0038】
本発明の一実施形態では、溶液(a)、(b)及び(c)を混ぜ合わせる工程の終わりにおけるpH値は、8~12、好ましくは10.5~12.0、より好ましくは11.3~12.9、更に好ましくは11.5~12.8の範囲にあり、それぞれは、23℃の母液で測定される。
【0039】
溶液(d)を使用する場合には、溶液(d)は、最初に又はベースの予備混合混合中において、溶液(b)と混ぜ合わせることができる。他の実施形態では、溶液(d)は、溶液(a)、(b)及び(c)と同時に混ぜ合わされる。
【0040】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも2つの連続撹拌槽型反応器のカスケードで実行され、そして、(a)は、12.0~12.8の範囲のpH値の第1のタンク反応器において、及び11.5~12.4の範囲のpH値の第2のタンク反応器において、(b)及び(c)と混ぜ合わされる。そのような実施形態では、より良い粒子成長を達成することができる。好ましくは、そのようなカスケードは、正確には、2つの撹拌槽型反応器を有する。
【0041】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、1時間~10時間の範囲の継続時間を有する。この文脈では、継続時間は、連続撹拌槽型反応器における又はカスケードにおける平均滞留時間のそれぞれに対応する。
【0042】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、500mbar~20barの範囲の圧力、好ましくは標準圧力(1atm)で実施される。
【0043】
本発明の一実施形態では、本発明の方法で形成されたスラリーに溶解した酸素の含有量は、本発明の方法中にスラリーを通して希ガス又は窒素をバブリングすることによって低減される。
【0044】
本発明の一実施形態では、過剰の沈殿剤(例えば、遷移金属に基づく炭酸塩及びアルカリ金属水酸化物の過剰な合計量)が使用される。モル過剰は、例えば、1.01:1~100:1の範囲とすることができる。化学量論的な比率の沈殿剤で作業することが好ましい。
【0045】
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、少なくとも1種の遷移金属の配位子(Ligand)として機能することがある少なくとも1種の化合物Lの存在下で、例えば、少なくとも1種の有機アミンの存在下(又は、特にはアンモニアの存在下)で実施される。本発明の文脈において、水はリガンドと見なされるべきではない。化合物Lは、溶液(a)又は溶液(c)と一緒に、又は別々に加えることができる。
【0046】
本発明の一実施形態では、0.05~1mol/l、好ましくは0.1~0.7mol/lの範囲のLの濃度(特には、アンモニアの濃度)が選択される。母液中のNi2+の溶解度が、1000ppm以下、より好ましくは500ppm以下であるアンモニアの量が特に好ましい。
【0047】
本発明の一実施形態では、本発明の方法中での混合は、例えば、攪拌機を用いて行われる。少なくとも0.4W/l、好ましくは最大8W/l、より好ましくは最大4W/lの攪拌機出力を反応混合物に導入することが好ましい。
【0048】
本発明の方法を適用することにより、粒子サイズは自動的に生成されるであろう。
【0049】
本発明の更なる観点は、ニッケル複合水酸化物(以下、本発明のニッケル複合水酸化物とも呼ばれる)に向けられている。本発明のニッケル複合水酸化物は、平均粒子径d50が3~20μmの範囲であり、[(d90-d10)/(d50)]として計算される粒子径分布の幅が少なくとも0.61である粒子状であり、そして、NiとCo及びMnから選択された少なくとも1種の遷移金属とを60~95モル%の範囲で含み、炭酸塩を0.1~3.0質量%の範囲で含む(%は、前記ニッケル複合水酸化物に対するものである)。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のニッケル複合水酸化物は、一般式(II)で表される組成:
(NiaCobAlc)
1-d
M
d
O
x
(OH)y(CO3)z(II)
(式中、aは、0.70~0.95、好ましくは0.80~0.95の範囲の数であり、
bは、0.025~0.2、好ましくは0.025~0.195の範囲であり、
cは、0.005~0.1、好ましくは0.02~0.05の範囲であり、そして
dは、0~0.05の範囲であり、
Mは、Mg、B、及び遷移金属(但し、Co及びMnは除く)であり、好ましくは、Mg、又は、MgとB及び(Co及びMn以外の)遷移金属(例えば、Zr、Ti、W、又はNb)の少なくとも1種との組み合わせであり、
a+b+c=1.0、及び
0≦x<1、
1<y≦2.1、及び
0<z≦0.25である)
を有する。
好ましくは、b+c<0.20である。
【0051】
本発明の一実施形態では、本発明のニッケル複合水酸化物は、5~70m2/gの範囲の比表面積(BET)を有し、その比表面積は、DIN ISO 9277:2010に従って、120℃で40分間のガス放出後に決定される。
【0052】
このようなニッケル複合水酸化物は、リチウムイオン電池用のカソード活物質を製造するのに非常に有用である。したがって、本発明の別の観点は、リチウムイオン電池用のカソード活物質を製造するための前駆体としての本発明のニッケル複合水酸化物の使用である。本発明の別の観点は、リチウムイオン電池用のカソード活物質を製造するための方法であり、前記方法は、本発明のニッケル複合水酸化物とリチウム源(例えば、Li2CO3、Li2O、LiNO3、LiOH又はLiOH・H2Oであるが、これらに限定されない)とを混合する工程、及び酸素の存在下及び600~900℃の範囲の温度でそのような混合物を熱処理する工程を含む。好ましいリチウム源は、Li2CO3、Li2O、LiOH及びLiOH・H2O、並びに、これらのうちの少なくとも2種の組み合わせである。
【0053】
本発明は、実施例によって更に説明される。
【0054】
特に明記されていない限り、すべての%は質量%である。
【0055】
実施例1:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.1):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=19:1)、金属の合計濃度は1.63mol/kgであった;
溶液(b.1):NaOH水溶液、25質量%;
溶液(c.1):Na2CO3水溶液、5質量%;
溶液(d.1):10質量%の(水中の)NaAlO2水溶液
アンモニア溶液:25質量%のNH3水溶液。
溶液(b.1)及び(c.1)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.002となるように混合した。
【0056】
オーバーフローシステムを備えた46リットルの撹拌槽型反応器に、3質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0057】
溶液(a.1)を8.6kg/hの速度で反応器に導入した。 同時に、溶液(d.1)とアンモニア溶液と(b.1)及び(c.1)の混合溶液とを、それぞれ、0.135kg/h、0.39kg/h、及び3.2kg/hの速度で、別々の供給口を通して反応器に導入した。(b.1)及び(c.1)の混合溶液の流量は、pH値を12.2±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0058】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が13.4μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH.1を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0059】
得られた水酸化物-OH.1の金属含有量は、Ni0.905Co0.0475Al0.0475であった。それぞれの式(I.1)の変数zは、0.048に相当する。
【0060】
M-OH.1は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い質量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。
【0061】
実施例2:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.2):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=24:1)、金属の合計濃度は1.65mol/kgであった;
溶液(b.2):NaOH水溶液とアンモニア水溶液との混合物。この溶液中のNaOH濃度及びアンモニア濃度はそれぞれ23.7質量%及び2.7質量%であった;
溶液(c.2):0.28質量%のNa2CO3水溶液、;
溶液(d.2):5.3質量%のNaAlO2水溶液。
溶液(b.2)及び(c.2)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.0022となるように混合した。
【0062】
オーバーフローシステムを備えた8リットルの撹拌槽型反応器に、3質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0063】
溶液(a.2)を1128.3g/hの速度で反応器に導入した。同時に、溶液(d.2)、 (b.2)、及び(c.2)を、それぞれ、197.2g/h、499.7g/h、及び257.2g/hの速度で反応器に導入した。(b.2)及び(c.2)の混合溶液の流量は、pH値を12.2±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0064】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が13.3μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH.2を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0065】
M-OH.2の金属含有量は、Ni0.905Co0.0375Al0.0575であった。
【0066】
M-OH.2は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い重量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。
【0067】
実施例3:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.3):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=24:1)、金属の合計濃度は1.65mol/kgであった;
溶液(b.3):NaOH水溶液とアンモニア水溶液との混合物。この溶液中のNaOH濃度及びアンモニア濃度はそれぞれ23.7w%及び2.7w%であった;
溶液(c.3):0.28質量%のNa2CO3の水溶液;
溶液(d.3):5.3質量%のNaAlO2水溶液。
溶液(b.3)及び(c.3)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.0022になるように混合した。
【0068】
オーバーフローシステムを備えた8リットルの撹拌槽型反応器に、3質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0069】
溶液(a.3)を1128.3g/hの速度で反応器に導入した。同時に、溶液(d.3)、 (b.3)、及び(c.3)を、それぞれ、197.2g/h、499.7g/h、及び257.2g/hの速度で反応器に導入した。(b.3)及び(c.3)の混合溶液の流量は、pH値を12.5±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0070】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が4.1μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH:3を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0071】
M-OH.3の金属含有量は、Ni0.905Co0.0375Al0.0575であった。
【0072】
M-OH.3は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い重量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。
【0073】
実施例4:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.4):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=24:1)、金属の合計濃度は1.65mol/kgであった;
溶液(b.4):NaOH水溶液とアンモニア水溶液との混合物。この溶液中のNaOH濃度及びアンモニア濃度はそれぞれ23.7質量%及び2.7質量%であった;
溶液(c.4):0.28質量%のNa2CO3水溶液;
溶液(d.4):5.3質量%のNaAlO2水溶液。
溶液(b.4)及び(c.4)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.0022になるように混合した。
【0074】
オーバーフローシステムを備えた8リットルの撹拌槽型反応器に、3質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0075】
溶液(a.4)を1128.3g/hの速度で反応器に導入した。同時に、溶液(d.4)、 (b.4)、及び(c.4)を、それぞれ、197.2g/h、499.7g/h、及び257.2g/hの速度で反応器に導入した。(b.4)及び(c.4)の混合溶液の流量は、pH値を12.3±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0076】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が11μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH.4を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0077】
M-OH.4の金属含有量は、Ni0.905Co0.0375Al0.0575であった。
【0078】
M-OH.4は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い重量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。
【0079】
実施例5:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.5):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=24:1)、合計金属濃度は1.65mol/kgであった;
溶液(b.5):NaOH水溶液とアンモニア水溶液との混合物。この溶液中のNaOH濃度及びアンモニア濃度はそれぞれ23.7質量%及び1.35w%であった;
溶液(c.5):0.48質量%のNa2CO3水溶液;
溶液(d.5):5.3質量%のNaAlO2水溶液。
溶液(b.5)及び(c.5)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.0038になるように混合した。
【0080】
オーバーフローシステムを備えた8リットルの撹拌槽型反応器に、1.5質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0081】
溶液(a.5)を1128.3g/hの速度で反応器に導入した。同時に、溶液(d.5)、 (b.5)、及び(c.5)を、それぞれ、197.2g/h、499.7g/h、及び257.2g/hの速度で反応器に導入した。(b.5)及び(c.5)の混合溶液の流量は、pH値を11.8±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0082】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が15.9μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH.5を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0083】
M-OH.5の金属含有量は、Ni0.905Co0.0375Al0.0575であった。
【0084】
M-OH.5は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い重量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。
【0085】
実施例6:
下記の溶液が調製された:
溶液(a.6):NiSO4及びCoSO4の水溶液(モル比Ni:Co=24:1)、合計金属濃度は1.65mol/kgであった;
溶液(b.6):NaOH水溶液とアンモニア水溶液との混合物。この溶液中のNaOH濃度及びアンモニア濃度はそれぞれ23.7質量%及び1.35質量%であった;
溶液(c.6):0.48質量%のNa2CO3水溶液;
溶液(d.6):5.3質量%のNaAlO2水溶液。
溶液(b.6)及び(c.6)は、水酸化物に対する炭酸塩のモル比が0.0038になるように混合した。
【0086】
オーバーフローシステムを備えた8リットルの撹拌槽型反応器に、1.5質量%の硫酸アンモニウム水溶液を投入した。硫酸アンモニウム溶液を攪拌しながら、槽型反応器内の温度を60℃に設定した。窒素ガス流を反応器に導入して、反応体積中の酸素含有量を2%未満に減少させた。
【0087】
溶液(a.6)を1128.3g/hの速度で反応器に導入した。同時に、溶液(d.6)、 (b.6)、及び(c.6)を、それぞれ、197.2g/h、499.7g/h、及び257.2g/hの速度で反応器に導入した。(b.6)及び(c.6)の混合溶液の流量は、pH値を12.0±0.1の範囲に保つようにpH調整回路によって調整した。
【0088】
方法の全体にわたって、反応温度を60℃に維持し、反応容量に約2W/lが導入されるように撹拌速度を設定した。撹拌槽型反応器は、反応容器内の液面を基本的に一定に保ちながら連続的に運転した。平均粒子サイズd50が10.0μmである本発明のニッケル複合水酸化物M-OH.6を、撹拌槽型反応器からの自由オーバーフローによって収集し、濾過によって単離した。
【0089】
M-OH.6の金属含有量は、Ni0.905Co0.0375Al0.0575であった。
【0090】
M-OH.6は、LiOHと略等モル量で混合される。得られた混合物を、酸素富化空気(O2/N2のモル比が3:2である)の強制流中において、755℃で9時間焼成する。高い重量容量と高いタップ密度を示すカソード活物質が得られる。