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特許7507862アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及び配線パターンの形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及び配線パターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 230/08 20060101AFI20240621BHJP
   G03F 7/42 20060101ALI20240621BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240621BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240621BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20240621BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20240621BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08F230/08
G03F7/42
G03F7/004 512
G03F7/033
G03F7/075 521
H05K3/06 H
H05K3/18 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022535935
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 CN2019126633
(87)【国際公開番号】W WO2021120106
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(73)【特許権者】
【識別番号】507190994
【氏名又は名称】上海交通大学
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI JIAO TONG UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】800 Dongchuan Rd.,Minhang District,Shanghai,200240,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100221992
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真由美
(72)【発明者】
【氏名】谷本 明敏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 禎明
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰治
(72)【発明者】
【氏名】姜 学松
(72)【発明者】
【氏名】馬 暁東
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-202495(JP,A)
【文献】特開2017-050043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 230/08
G03F 7/42
G03F 7/004
G03F 7/033
G03F 7/075
H05K 3/06
H05K 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性変換基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位と、(メタ)アクリル酸ベンジルエステルに基づく構造単位とを含み、
前記極性変換基が、弱アルカリ条件下で脱離せず、強アルカリ条件下で脱離する基を有し、下記式(1)で表される基である、アルカリ可溶性樹脂(但し、(a)テルペノイド骨格または脂環式骨格および(b)置換または非置換のシリル基の構造を含む重合体を除く。)。
【化1】

[式(1)中、Rは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はトリチル基を示す。]
【請求項2】
前記極性変換基を有する構造単位が、下記式(2)で表される化合物に基づく構造単位である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化2】

[式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数1~6のアルキレン基を示し、Rは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はトリチル基を示す。]
【請求項3】
前記Rが、トリチル基である、請求項1又は2に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のアルカリ可溶性樹脂を含むバインダ樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する、感光性樹脂組成物。
【請求項5】
支持体と、該支持体上に形成された感光層と、を備え、
前記感光層が、請求項4に記載の感光性樹脂組成物を含む、感光性エレメント。
【請求項6】
基板上に、請求項4に記載の感光性樹脂組成物又は請求項5に記載の感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、
前記感光層の少なくとも一部に活性光線を照射して、光硬化部を形成する工程と、
前記基板から、前記感光層の前記光硬化部以外の少なくとも一部を除去してレジストパターンを形成する工程と、
を備える、レジストパターンの形成方法。
【請求項7】
請求項6に記載のレジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を備える、配線パターンの形成方法。
【請求項8】
前記エッチング処理又はめっき処理の後に、前記光硬化部をアルカリ性水溶液により除去する工程を更に備える、請求項7に記載の配線パターンの形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及び配線パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板の製造分野においては、エッチング処理又はめっき処理等に用いられるレジスト材料として、感光性樹脂組成物、及び、支持フィルム上に感光性樹脂組成物を用いて形成された層(以下、「感光層」ともいう)を備える感光性エレメントが広く用いられている。
【0003】
プリント配線板は、上記感光性エレメントを用いて、例えば、以下の手順で製造されている。すなわち、まず、感光性エレメントの感光層を銅張積層板等の回路形成用基板上にラミネートする。次に、マスクフィルム等を介して感光層を露光し、光硬化部を形成する。このとき、露光前又は露光後に支持フィルムを剥離する。その後、感光層の光硬化部以外の領域を現像液で除去し、レジストパターンを形成する。次に、レジストパターンをレジストとして、エッチング処理又はめっき処理を施して導体パターンを形成させ、最終的に感光層の光硬化部(レジストパターン)を剥離(除去)する。
【0004】
環境への影響の観点から、レジストパターンの剥離には、従来、用いられていたアミン系剥離液に替えて、水溶液系剥離液が用いられるようになってきている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-061556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感光性樹脂組成物には、未露光部の現像性が高く、優れた解像性を有するレジストパターンを形成することが求められるだけでなく、レジストパターンを剥離除去するために、光硬化部の剥離特性に優れることが求められる。これに対して、水溶液系剥離液を用いた場合、アミン系剥離液に比べてレジストパターンの剥離時間が長く、剥離片が小片になり難い傾向にある。剥離特性の向上には、感光性層が含有するバインダ樹脂の親水性を高めることが考えられるが、現像時に感光層の露光部が膨潤し易くなり解像性が低下する。一方、バインダ樹脂の疎水性を高めようとすると、未露光部の現像性が低下するだけでなく、レジストパターンの剥離時間の短縮化及び剥離片の小片化が難しい。
【0007】
本発明は、現像性、解像性及び剥離特性に優れる感光性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂、該アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及び配線パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、極性変換基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位とを含み、極性変換基が、弱アルカリ条件下で脱離せず、強アルカリ条件下で脱離する基を有する、アルカリ可溶性樹脂に関する。
【0009】
本発明は、別の側面において、上記アルカリ可溶性樹脂を含むバインダ樹脂と、光重合性化合物と、光重合開始剤と、を含有する感光性樹脂組成物に関する。
【0010】
本発明は、別の側面において、支持体と、該支持体上に形成された感光層とを備え、感光層が上記感光性樹脂組成物を含む感光性エレメントに関する。
【0011】
本発明は、別の側面において、基板上に、上記感光性樹脂組成物又は感光性エレメントを用いて感光層を形成する工程と、感光層の少なくとも一部に活性光線を照射して光硬化部を形成する工程と、基板から感光層の光硬化部以外の少なくとも一部を除去する工程と、を備えるレジストパターンの形成方法に関する。
【0012】
本発明は、別の側面において、レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板を、エッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を備える、配線パターンの形成方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、現像性、解像性及び剥離特性に優れる感光性樹脂組成物に用いられるアルカリ可溶性樹脂、該アルカリ可溶性樹脂を含む感光性樹脂組成物、感光性エレメント、レジストパターンの形成方法、及び配線パターンの形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】感光性エレメントの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成される限り、他の工程と明確に区別できない工程も含む。「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」、及び、それに対応する「メタクリル酸」の少なくとも一方を意味する。(メタ)アクリロイル等の他の類似表現についても同様である。
【0017】
本明細書において、感光性樹脂組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、感光性樹脂組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。本明細書において、「固形分」とは、感光性樹脂組成物に含まれる水及び溶媒等の揮発する物質を除いた不揮発分を指す。すなわち、「固形分」とは、後述する感光性樹脂組成物の乾燥において揮発せずに残る溶媒以外の成分を指し、室温(25℃)で液状、水飴状及びワックス状の成分も含む。
【0018】
[アルカリ可溶性樹脂]
本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂は、極性変換基を有する構造単位と、カルボキシ基を有する構造単位とを含み、極性変換基が、弱アルカリ条件下で脱離せず、強アルカリ条件下で脱離する基を有する。
【0019】
アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ性水溶液に可溶な樹脂である。アルカリ性水溶液とは、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、金属炭酸塩水溶液、及び有機アミン水溶液が挙げられる。樹脂がアルカリ性水溶液に可溶であることは、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0020】
樹脂を任意の溶媒に溶解して得られたワニスを、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して形成することにより厚さ5μm程度の塗膜とする。これをTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液、金属炭酸塩水溶液、又は有機アミン水溶液のいずれかに20~25℃において、浸漬する。この結果、塗膜が均一に溶解し得るとき、その樹脂はアルカリ性水溶液に可溶であると見なすことができる。
【0021】
本実施形態において、「極性変換基」とは、疎水性から親水性へ極性が変換する官能基を意味する。本実施形態に係る極性変換基は、弱アルカリ条件下では安定で疎水性を示しているものの、強アルカリ条件下では分解して水酸基、カルボキシ基等の親水性の基を生じることができる。弱アルカリ条件下としては、例えば、後述するレジストパターンの形成における感光層のアルカリ性水溶液による現像が挙げられる。強アルカリ条件下としては、例えば、形成されたレジストパターンのアルカリ性水溶液による剥離が挙げられる。すなわち、本実施形態に係る極性変換基は、感光層の現像に用いられる弱アルカリ性水溶液に対して安定な疎水性を示す基であり、レジストパターンの剥離に用いられる強アルカリ性水溶液により分解して親水性の基へ変化することができる。
【0022】
本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂は、感光性樹脂組成物のバインダ樹脂として用いることができ、感光性樹脂組成物から形成される感光層の現像性、解像性及び剥離特性を向上することができる。また、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂を厚膜用途の感光性樹脂組成物に用いることで、解像度を保ったまま剥離特性を向上することができる。
【0023】
アルカリ可溶性樹脂は、剥離特性の見地から、極性変換基を有する構造単位を含む。剥離特性をより向上する観点から、極性変換基は、下記式(1)で表される基であってもよい。
【0024】
【化1】
【0025】
式(1)中、Rは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はトリチル基を示す。式(1)で表される基は、強アルカリ条件下でRが脱離して、「-OH」へ変換することができる。
【0026】
解像性及び剥離特性のバランスに優れる観点から、上記極性変換基を有する構造単位は、下記式(2)で表される化合物に基づく構造単位であってもよい。
【0027】
【化2】
【0028】
式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を示し、Lは炭素数1~6のアルキレン基を示し、Rは、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基又はトリチル基を示す。アルカリ溶解性を向上する観点から、Lは、炭素数1~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基であることが更に好ましい。
【0029】
式(2)で表される化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-(トリメチルシリルオキシ)エチル、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、及び(メタ)アクリル酸トリチルが挙げられる。
【0030】
本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂は、例えば、極性変換基を有するモノマと、カルボキシ基を有するモノマとをラジカル重合させることにより製造することができる。
【0031】
剥離特性をより向上する観点から、極性変換基を有するモノマの含有量は、アルカリ可溶性樹脂を構成するモノマの全量を基準として、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、又は4質量%以上であってよい。現像性をより向上する観点から、極性変換基を有するモノマの含有量は35質量%以下、30質量%以下、又は25質量%以下であってよい。
【0032】
アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ現像性の見地から、カルボキシ基を有する構造単位を含む。カルボキシ基を有するモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、α-ブロモアクリル酸、α-クロルアクリル酸、β-フリル(メタ)アクリル酸、β-スチリル(メタ)アクリル酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、及びプロピオール酸が挙げられる。アルカリ現像性をより向上する点から、カルボキシ基を有するモノマは、(メタ)アクリル酸であってもよく、メタクリル酸であってもよい。
【0033】
アルカリ現像性とアルカリ耐性とをバランスよく向上させる点から、カルボキシ基を有するモノマに由来する構造単位の含有量は、アルカリ可溶性樹脂を構成するモノマの全体量を基準として、10~45質量%、15~40質量%、又は20~35質量%であってもよい。この含有量が10質量%以上ではアルカリ現像性が向上する傾向があり、45質量%以下ではアルカリ耐性に優れる傾向がある。
【0034】
アルカリ可溶性樹脂は、密着性及び剥離特性の観点から、スチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位を有してもよい。スチレン誘導体は、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレンのα位又は芳香環における水素原子が置換された重合可能な化合物である。アルカリ可溶性樹脂中におけるスチレン又はスチレン誘導体に基づく構造単位の含有量は、10~60質量%、15~55質量%、又は25~50質量%であってもよい。この含有量が10質量%以上では、密着性が向上する傾向があり、60質量%以下では、現像時に剥離片が大きくなることを抑制でき、剥離に要する時間の長時間化が抑えられる傾向がある。
【0035】
アルカリ可溶性樹脂は、解像性及びアスペクト比の見地から、(メタ)アクリル酸ベンジルエステルに基づく構造単位を有してもよい。アルカリ可溶性樹脂中における(メタ)アクリル酸ベンジルエステルに由来する構造単位の含有量は、解像性を向上させる見地から、5~50質量%、15~45質量%、又は10~40質量%であってもよい。
【0036】
アルカリ可溶性樹脂は、可塑性を向上する見地から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに基づく構造単位を有してもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸プロピルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ドデシルエステルが挙げられる。
【0037】
解像性を向上する観点から、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000以上、2000以上、3000以上、又は5000以上であってよい。好適に現像できる観点から、アルカリ可溶性樹脂のMwは、30000以下、28000以下、26000以下、又は24000以下であってよい。Mwは、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンの検量線を用いて測定することができる。
【0038】
アルカリ可溶性樹脂の親水性度は、アルカリ可溶性樹脂を構成するモノマの親水性度とモノマの共重合比とから、下記式により算出することができる。モノマの親水性度は、モノマにイオン交換水を加えて23℃で12時間静置した後、カールフィッシャー法で測定されるモノマに含まれる水分量(質量%)である。
アルカリ可溶性樹脂の親水性度=モノマの共重合比(質量%)×モノマの親水性度
【0039】
極性変換基が分解する前のアルカリ可溶性樹脂の親水性度は、露光部の現像時のアルカリ耐性の見地から、80~120、82~115、又は84~110であってよい。極性変換基が分解した後のアルカリ可溶性樹脂の親水性度は、剥離特性の見地から、95~120、98~115、又は100~110であってよい。現像性、解像性及び剥離特性のバランスをより向上する観点から、極性変換後の親水性度の増加率は、3~45%、5~40%、又は10~35%であってよい。
【0040】
[感光性樹脂組成物]
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(A)バインダ樹脂(以下、「(A)成分」という場合がある。)、(B)光重合性化合物(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、(C)光重合開始剤(以下、「(C)成分」という場合がある。)と、を含有する。以下、感光性樹脂組成物が含有し得る各成分について詳述する。
【0041】
<(A)バインダ樹脂>
(A)成分であるバインダ樹脂は、本実施形態に係るアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A1)成分という場合がある。」)を含む。(A1)成分を含有することで、露光部の現像時のアルカリ耐性が向上し、優れた解像性を有するレジストパターンを形成することできる。該レジストパターンは、強アルカリ性水溶液によって、剥離することができる。(A1)成分は、1種の樹脂のみで構成されてもよく、2種以上の樹脂を含んで構成されてもよい。
【0042】
(A)成分は、(A1)成分以外のアルカリ可溶性樹脂を更に含んでよい。該アルカリ可溶性樹脂は、フェノール性水酸基を有する樹脂であってもよい。フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシスチレンをモノマ単位として含む共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)等のポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、及びポリナフトールが挙げられる。
【0043】
(A)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、30~90質量部、40~85質量部、又は50~80質量部であってもよい。(A)成分の含有量がこの範囲内であると、感光層の光硬化部の強度がより良好となる。
【0044】
<(B)光重合性化合物>
(B)成分は、光重合性を示す官能基として、例えば、ビニル基、アリル基、プロパルギル基、ブテニル基、エチニル基、フェニルエチニル基、マレイミド基、ナジイミド基、(メタ)アクリロイル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基を有する化合物である。(B)成分は、エチレン性不飽和基を1つ以上有する化合物であれば特に限定されない。光重合性を示す官能基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
エチレン性不飽和基を1つ有する光重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、及びフタル酸系(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、及び(メタ)アクリル酸ヒドロキシルエチルエステルが挙げられる。
【0047】
(B)成分は、解像度、密着性及びレジスト形状を好適に向上させる観点から、フタル酸系化合物を含んでもよい。フタル酸系化合物としては、例えば、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート(別名:3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート)、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及びβ-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレートが挙げられる。
【0048】
エチレン性不飽和基を2つ有する光重合性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、及びアルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
(B)成分は、アルカリ現像性及び解像度を向上させる観点から、アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。アルキレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン(2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン等)、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。
【0050】
エチレン性不飽和基を3つ以上有する光重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート;テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等のテトラメチロールメタン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等のジトリメチロールプロパン由来の骨格を有する(メタ)アクリレート;ジグリセリン由来の骨格を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、硬化(露光)後の耐薬品性を高めて、露光部と未露光部との耐現像液性の差を大きくするという観点から、ジペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0051】
感光性樹脂組成物の未露光部のアルカリ現像性を向上すると共に、露光部の接着強度を向上する観点から、(B)成分は、エチレン性不飽和基と酸変性基とを有する光重合性化合物を含んでもよい。変性する酸性基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、フェノール性水酸基等が挙げられ、これらの中でもカルボキシ基が好ましい。
【0052】
エチレン性不飽和基と酸性基とを有する光重合性化合物としては、例えば、スチレン-マレイン酸系樹脂及び酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体が挙げられる。
【0053】
スチレン-マレイン酸系樹脂は、スチレン-無水マレイン酸共重合体のヒドロキシエチル(メタ)アクリレート変性物である。酸変性ビニル基含有エポキシ誘導体は、エポキシ樹脂をビニル基含有有機酸で変性した化合物に、飽和基又は不飽和基含有多塩基酸無水物を反応させてなる化合物である。
【0054】
エポキシ樹脂としては、エポキシ基を2つ以上有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、及びグリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、半導体チップ実装時の信頼性の観点から、ビスフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0055】
ビニル基含有有機酸としては、特に制限されず、ビニル基含有モノカルボン酸であってもよい。ビニル基含有モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸の二量体、メタクリル酸、β-フルフリルアクリル酸、β-スチリルアクリル酸、桂皮酸、クロトン酸、α-シアノ桂皮酸等のアクリル酸誘導体;水酸基含有アクリレートと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物;ビニル基含有モノグリシジルエーテル又はビニル基含有モノグリシジルエステルと二塩基酸無水物との反応生成物である半エステル化合物;などが挙げられる。
【0056】
エチレン性不飽和結合は、光重合が可能であれば特に限定されない。エチレン性不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基等のα,β-不飽和カルボニル基が挙げられる。α,β-不飽和カルボニル基を有する光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールのα,β-不飽和カルボン酸エステル、ビスフェノール型(メタ)アクリレート、グリシジル基含有化合物のα,β-不飽和カルボン酸付加物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート、及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0057】
多価アルコールのα,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、エチレン基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2~14でありプロピレン基の数が2~14であるポリエチレン・ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO,PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。「EO変性」とはエチレンオキサイド(EO)基のブロック構造を有するものであることを意味し、「PO変性」とはプロピレンオキサイド(PO)基のブロック構造を有するものであることを意味する。
【0058】
(B)成分は、レジストパターンの柔軟性を向上する観点から、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含んでもよい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、EO基及びPO基の少なくとも一方を有してもよく、EO基及びPO基の双方を有してもよい。EO基及びPO基の双方を有するポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおいて、EO基及びPO基は、それぞれ連続してブロック的に存在しても、ランダムに存在してもよい。また、PO基は、オキシ-n-プロピレン基又はオキシイソプロピレン基のいずれであってもよい。なお、(ポリ)オキシイソプロピレン基において、プロピレン基の2級炭素が酸素原子に結合していてもよく、1級炭素が酸素原子に結合していてもよい。
【0059】
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、FA-023M(日立化成株式会社製)、FA-024M(日立化成株式会社製)、及びNKエステルHEMA-9P(新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0060】
(B)成分は、レジストパターンの柔軟性を向上する観点から、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートを含んでもよい。ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、β位にOH基を有する(メタ)アクリルモノマーとジイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等)との付加反応物、トリス((メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート)ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びEO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0061】
EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、「UA-11」及び「UA-21EB」(新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、「UA-13」(新中村化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0062】
(B)成分は、厚膜のレジストパターンが形成し易く、解像度及び密着性をバランスよく向上させる観点から、ジペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含んでもよい。ジペンタエリスリトール又はペンタエリスリトール由来の骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基を4つ以上有することが好ましく、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、又はジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0063】
解像度及び硬化後の剥離特性をより向上させる観点から、(B)成分は、ビスフェノール型(メタ)アクリレートを含んでもよく、ビスフェノール型(メタ)アクリレートの中でもビスフェノールA型(メタ)アクリレートを含んでもよい。ビスフェノールA型(メタ)アクリレートとしては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリブトキシ)フェニル)プロパン、及び2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパンが挙げられる。中でも、解像度及びパターン形成性を更に向上させる観点から、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパンが好ましい。
【0064】
商業的に入手可能なものとしては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシジプロポキシ)フェニル)プロパンは、BPE-200(新中村化学工業株式会社)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンは、BPE-500(新中村化学工業株式会社)、FA-321M(日立化成株式会社)等が挙げられる。
【0065】
ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレートとしては、例えば、ノニルフェノキシテトラエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシペンタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘキサエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシヘプタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシオクタエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシノナエチレンオキシアクリレート、ノニルフェノキシデカエチレンオキシアクリレート、及びノニルフェノキシウンデカエチレンオキシアクリレートが挙げられる。
【0066】
<(C)光重合開始剤>
(C)成分としては、(B)成分を重合させることができる成分であれば、特に限定されず、通常用いられる光重合開始剤から適宜選択することができる。(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0067】
(C)成分として、例えば、アシルホスフィンオキサイド系、オキシムエステル系、芳香族ケトン系、キノン系、アルキルフェノン系、イミダゾール系、アクリジン系、フェニルグリシン系、クマリン系等の光重合開始剤が挙げられる。
【0068】
(C)成分は、感度及び解像度をバランスよく向上する点で、アクリジン系光重合開始剤、フェニルグリシン系光重合開始剤、又は、イミダゾール系光重合開始剤を含んでもよい。
【0069】
アクリジン系光重合開始剤としては、例えば、9-フェニルアクリジン、9-(p-メチルフェニル)アクリジン、9-(m-メチルフェニル)アクリジン、9-(p-クロロフェニル)アクリジン、9-(m-クロロフェニル)アクリジン、9-アミノアクリジン、9-ジメチルアミノアクリジン、9-ジエチルアミノアクリジン、9-ペンチルアミノアクリジン、1,2-ビス(9-アクリジニル)エタン、1,4-ビス(9-アクリジニル)ブタン、1,6-ビス(9-アクリジニル)ヘキサン、1,8-ビス(9-アクリジニル)オクタン、1,10-ビス(9-アクリジニル)デカン、1,12-ビス(9-アクリジニル)ドデカン、1,14-ビス(9-アクリジニル)テトラデカン、1,16-ビス(9-アクリジニル)ヘキサデカン、1,18-ビス(9-アクリジニル)オクタデカン、1,20-ビス(9-アクリジニル)エイコサン等のビス(9-アクリジニル)アルカン、1,3-ビス(9-アクリジニル)-2-オキサプロパン、1,3-ビス(9-アクリジニル)-2-チアプロパン、及び1,5-ビス(9-アクリジニル)-3-チアペンタンが挙げられる。
【0070】
フェニルグリシン系光重合開始剤としては、例えば、N-フェニルグリシン、N-メチル-N-フェニルグリシン、及びN-エチル-N-フェニルグリシンが挙げられる。
【0071】
イミダゾール系光重合開始剤としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2,2’,5-トリス-(o-クロロフェニル)-4-(3,4-ジメトキシフェニル)-4’,5’-ジフェニルビイミダゾール、2,4-ビス-(o-クロロフェニル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2,4,5-トリス-(o-クロロフェニル)-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-ビス-4,5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2-フルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,3-ジフルオロメチルフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、2,2’-ビス-(2,4-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾール、及び2,2’-ビス-(2,5-ジフルオロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラキス-(3-メトキシフェニル)-ビイミダゾールが挙げられる。
【0072】
(C)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.1~10質量部、0.2~5質量部、又は0.5~4質量部であってもよい。(C)成分の含有量が0.1質量部以上では、光感度、解像度及び密着性が向上する傾向があり、10質量部以下では、レジストパターン形成性により優れる傾向がある。
【0073】
<(D)成分:光増感剤>
本実施形態に係る感光性樹脂組成物は、(D)成分として光増感剤を更に含有してもよい。(D)成分を含有することにより、露光に用いる活性光線の吸収波長を有効に利用することができる。(D)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
(D)成分としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。(D)成分は、解像度をより向上する観点からピラゾリン化合物又はアントラセン化合物を含んでもよい。
【0075】
ピラゾリン化合物としては、例えば、1-(4-メトキシフェニル)-3-スチリル-5-フェニル-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1,5-ビス-(4-メトキシフェニル)-3-(4-メトキシスチリル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピルフェニル)-3-スチリル-5-フェニル-ピラゾリン、1-フェニル-3-(4-イソプロピルスチリル)-5-(4-イソプロピルフェニル)-ピラゾリン、1,5-ビス-(4-イソプロピルフェニル)-3-(4-イソプロピルスチリル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(4-tert-ブチル-スチリル)-5-(4-tert-ブチル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(4-イソプロピル-スチリル)-5-(4-イソプロピル-フェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-イソプロピルスチリル)-5-(4-イソプロピルフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(4-メトキシスチリル)-5-(4-メトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-フェニル-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-メトキシフェニル)-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-tert-ブチル-フェニル)-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(3,5-ジメトキシスチリル)-5-(3,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(3,4-ジメトキシスチリル)-5-(3,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(2,6-ジメトキシスチリル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(2,5-ジメトキシスチリル)-5-(2,5-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(2,3-ジメトキシスチリル)-5-(2,3-ジメトキシフェニル)-ピラゾリン、及び1-(4-イソプロピル-フェニル)-3-(2,4-ジメトキシスチリル)-5-(2,4-ジメトキシフェニル)-ピラゾリンが挙げられる。
【0076】
アントラセン化合物としては、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、及び9,10-ジペントキシアントラセンが挙げられる。
【0077】
(D)成分の含有量は、光感度及び解像性を向上させる観点から、(A)成分及び(B)成分の総量100質量部に対して、0.01~5質量部、0.01~1質量部、又は0.01~0.2質量部であってもよい。
【0078】
(その他の成分)
本実施形態に係る感光性樹脂組成物には、必要に応じて、染料、光発色剤、熱発色防止剤、可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤、難燃剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、イメージング剤、熱架橋剤、重合禁止剤等の添加剤を更に含有してもよい。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
染料としては、例えば、マラカイトグリーン、ビクトリアピュアブルー、ブリリアントグリーン、及びメチルバイオレットが挙げられる。光発色剤としては、例えば、トリブロモフェニルスルホン、ロイコクリスタルバイオレット、ジフェニルアミン、ベンジルアミン、トリフェニルアミン、ジエチルアニリン、及びo-クロロアニリンが挙げられる。可塑剤としては、例えば、p-トルエンスルホンアミドが挙げられる。
【0080】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の溶媒又はこれらの混合溶媒に溶解して、固形分が30~60質量%程度の溶液として調製することができる。
【0081】
[感光性エレメント]
本実施形態の感光性エレメントは、支持体と、該支持体上に形成されたと感光層とを備え、感光層は上述の感光性樹脂組成物を含む。本実施形態の感光性エレメントを用いる場合には、感光層を基板上にラミネートした後、支持体(支持フィルム)を剥離することなく露光してもよい。本実施形態に係る感光性エレメント1は、図1にその一例の模式断面図を示すように、支持体2と、支持体2上に形成された上記感光性樹脂組成物に由来する感光層3とを備え、必要に応じて設けられる保護層4等のその他の層を備えて構成される。
【0082】
(支持体)
支持体しては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン-2,6-ナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、及びポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。中でも、入手し易く、且つ、製造工程におけるハンドリング性(特に、耐熱性、熱収縮率、破断強度)に優れる点で、PETフィルムであってもよい。
【0083】
支持体のヘーズは、0.01~1.0%又は0.01~0.5%であってもよい。ヘーズが0.01%以上であると、支持体自体を製造し易くなる傾向があり、1.0%以下であると、レジストパターンに発生し得る微小欠損を低減する傾向がある。「ヘーズ」とは、曇り度を意味する。本開示におけるヘーズは、JIS K 7105に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定された値をいう。ヘーズは、例えば、NDH-5000(日本電色工業(株)製)等の市販の濁度計で測定が可能である。
【0084】
支持体の厚みは、1~100μm、5~60μm、10~50μm、10~40μm、10~30μm、又は10~25μmであってもよい。支持体の厚みが1μm以上であることで、支持体を剥離する際に支持体が破れることを抑制できる傾向がある。また、支持体の厚みが100μm以下であることで、支持体を通して露光する場合に解像性が低下することを抑制することができる。
【0085】
(保護層)
感光性エレメントは、必要に応じて保護層を更に備えてもよい。保護層としては、感光層と支持体との間の接着力よりも、感光層と保護層との間の接着力が小さくなるようなフィルムを用いてもよく、また、低フィッシュアイのフィルムを用いてもよい。具体的には、例えば、上述する支持体として用いることができるものが挙げられる。感光層からの剥離性の見地から、ポリエチレンフィルムであってもよい。保護層の厚さは、用途により異なるが、1~100μm程度であってもよい。
【0086】
感光性エレメントは、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、支持体上に、感光性樹脂組成物の溶液(塗布液)を塗布して塗布層を形成し、これを乾燥することで感光層を形成する。次いで、感光層の支持体とは反対側の面を保護層で被覆することにより、支持体と、該支持体上に形成された感光層と、該感光層上に積層された保護層とを備える、感光性エレメントが得られる。
【0087】
塗布液の支持体上への塗布は、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、エアーナイフコート、ダイコート、バーコート等の公知の方法により行うことができる。
【0088】
塗布層の乾燥は、塗布層から有機溶媒の少なくとも一部を除去することができれば特に制限はない。例えば、70~150℃にて、5~30分間程度行ってもよい。乾燥後、感光層中の残存溶媒量は、後の工程での溶媒の拡散を防止する観点から、2質量%以下であってもよい。
【0089】
感光性エレメントにおける感光層の厚みは、用途により適宜選択することができるが、乾燥後の厚みで1~100μm、1~50μm、又は、5~40μmであってもよい。厚さが1μm以上であることで、工業的な塗工が容易になり、生産性が向上する。また、100μm以下であることで、密着性及び解像度が向上する。
【0090】
感光性エレメントの形態は特に制限されない。例えば、シート状であってもよく、巻芯にロール状に巻き取った形状であってもよい。ロール状に巻き取る場合、支持フィルムが外側になるように巻き取ってもよい。巻芯としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂又はABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)等のプラスチックが挙げられる。
【0091】
ロール状の感光性エレメントの端面には、端面保護の点から端面セパレータを設置してもよく、耐エッジフュージョンの点から防湿端面セパレータを設置してもよい。感光性エレメントは、透湿性の小さいブラックシートに包んで包装してもよい。
【0092】
感光性エレメントは、例えば、後述するレジストパターンの形成方法に好適に用いることができる。中でも、解像性の観点で、めっき処理によって導体パターンを形成する製造方法への応用に適している。
【0093】
[レジストパターンの形成方法]
本実施形態のレジストパターンの形成方法は、(i)基板上に、上記感光性樹脂組成物、又は、上記感光性エレメントを用いて、感光層を形成する工程(感光層形成工程)と、(ii)上記感光層の少なくとも一部(所定部分)に活性光線を照射して、光硬化部を形成する工程(露光工程)と、(iii)上記基板上から上記光硬化部以外の少なくとも一部を除去してレジストパターンを形成する工程(現像工程)と、を備え、必要に応じてその他の工程を含んで構成されてもよい。レジストパターンとは、感光性樹脂組成物の光硬化物パターンともいえ、レリーフパターンともいえる。レジストパターンの形成方法は、レジストパターン付き基板の製造方法ともいえる。
【0094】
((i)感光層形成工程)
基板上に感光層を形成する方法としては、例えば、上記感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥してもよく、又は、上記感光性エレメントから保護層を除去した後、感光性エレメントの感光層を加熱しながら上記基板に圧着してもよい。感光性エレメントを用いた場合、基板と感光層と支持体とからなり、これらが順に積層された積層体が得られる。上記基板としては特に制限されないが、通常、絶縁層と絶縁層上に形成された導体層とを備えた回路形成用基板、又は合金基材等のダイパッド(リードフレーム用基材)が用いられる。
【0095】
感光性エレメントを用いた場合、感光層形成工程は、密着性及び追従性の見地から、減圧下で行うことが好ましい。圧着の際の感光層及び/又は基板の加熱は、70~130℃の温度で行ってもよい。圧着は、0.1~1.0MPa程度(1~10kgf/cm程度)の圧力で行ってもよいが、これらの条件は必要に応じて適宜選択される。なお、感光層を70~130℃に加熱すれば、予め基板を予熱処理することは必要ではないが、密着性及び追従性を更に向上させるために、基板の予熱処理を行うこともできる。
【0096】
((ii)露光工程)
露光工程においては、基板上に形成された感光層の少なくとも一部に活性光線を照射することで、活性光線が照射された部分が光硬化して、潜像が形成される。この際、感光層上に支持体が存在する場合、その支持体が活性光線に対して透過性であれば、支持体を通して活性光線を照射することができるが、支持体が遮光性の場合には、支持体を除去した後に感光層に活性光線を照射する。
【0097】
露光方法としては、アートワークと呼ばれるネガ又はポジマスクパターンを介して活性光線を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる。また、投影露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。また、LDI(Laser Direct Imaging)露光法、DLP(Digital Light Processing)露光法等の直接描画露光法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。
【0098】
活性光線の光源としては、公知の光源を用いることができ、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、アルゴンレーザ等のガスレーザ、YAGレーザ等の固体レーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光を有効に放射するものが用いられる。
【0099】
((iii)現像工程)
現像工程においては、上記感光層の光硬化部以外の少なくとも一部が基板上から除去されることで、レジストパターンが基板上に形成される。
【0100】
感光層上に支持体が存在している場合には、支持体を除去してから、上記光硬化部以外の領域(未露光部分ともいえる)の除去(現像)を行う。現像方法には、ウェット現像とドライ現像とがあるが、ウェット現像が広く用いられている。
【0101】
ウェット現像による場合、感光性樹脂組成物に対応した現像液を用いて、公知の現像方法により現像する。現像方法としては、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッピング、スクラッビング、揺動浸漬等を用いた方法が挙げられ、解像性向上の観点からは、高圧スプレー方式を用いてもよい。これら2種以上の方法を組み合わせて現像を行ってもよい。
【0102】
現像液の構成は上記感光性樹脂組成物の構成に応じて適宜選択される。現像液としては、例えば、アルカリ性水溶液及び有機溶媒現像液が挙げられる。
【0103】
安全且つ安定であり、操作性が良好である見地から、現像液として、アルカリ性水溶液を用いてもよい。アルカリ性水溶液の塩基としては、リチウム、ナトリウム又はカリウムの水酸化物等の水酸化アルカリ;リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ジアミノプロパノール-2、モルホリンなどが用いられる。
【0104】
現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1~5質量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることができる。アルカリ性水溶液のpHは、9~14の範囲としてもよく、その温度は、感光層のアルカリ現像性に合わせて調節できる。アルカリ性水溶液中には、例えば、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶媒等を混入させてもよい。
【0105】
アルカリ性水溶液に用いられる有機溶媒としては、例えば、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。
【0106】
有機溶媒現像液に用いられる有機溶媒としては、例えば、1,1,1-トリクロロエタン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン及びγ-ブチロラクトン等が挙げられる。これらの有機溶媒には、引火防止のため、1~20質量%の範囲となるように水を添加して有機溶媒現像液としてもよい。
【0107】
本実施形態におけるレジストパターンの形成方法においては、現像工程において未硬化部分を除去した後、必要に応じて60~250℃程度での加熱又は0.2~10J/cm程度の露光を行うことにより、レジストパターンを更に硬化する工程を含んでもよい。
【0108】
[配線パターンの形成方法]
本実施形態に係る配線パターンの形成方法は、上記レジストパターンの形成方法によりレジストパターンが形成された基板をエッチング処理又はめっき処理して導体パターンを形成する工程を有する。配線パターンの形成方法は、エッチング処理又はめっき処理の後に、光硬化部をアルカリ性水溶液により除去する工程を更に備えてよい。
【0109】
めっき処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、基板上に設けられた導体層にめっき処理が行われる。めっき処理の後、後述するレジストパターンの除去によりレジストを除去し、更にこのレジストによって被覆されていた導体層をエッチングして、導体パターンを形成してもよい。めっき処理の方法としては、電解めっき処理であっても、無電解めっき処理であってもよいが、無電解めっき処理であってもよい。
【0110】
一方、エッチング処理では、基板上に形成されたレジストパターンをマスクとして、基板上に設けられた導体層をエッチング除去し、導体パターンを形成する。エッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。エッチング液としては、例えば、塩化第二銅溶液、塩化第二鉄溶液、アルカリエッチング溶液、過酸化水素系エッチング液等が挙げられる。
【0111】
エッチング処理又はめっき処理の後、基板上のレジストパターンは除去してもよい。レジストパターンの除去は、例えば、上記現像工程に用いたアルカリ性水溶液よりも更に強アルカリ性の水溶液により剥離することができる。強アルカリ性の水溶液としては、例えば、1~10質量%水酸化ナトリウム水溶液、1~10質量%水酸化カリウム水溶液等が用いられる。レジストパターンの除去は、強アルカリ水溶液を用いて、45~65℃で行ってもよい。
【0112】
めっき処理を施してからレジストパターンを除去した場合、更にエッチング処理によってレジストで被覆されていた導体層をエッチングし、導体パターンを形成することで所望のプリント配線板を製造することができる。この際のエッチング処理の方法は、除去すべき導体層に応じて適宜選択される。例えば、上述のエッチング液を適用することができる。
【0113】
本実施形態に係る配線パターンの形成方法は、単層プリント配線板のみならず、多層プリント配線板の製造にも適用可能であり、また小径スルーホールを有するプリント配線板等の製造にも適用可能である。
【実施例
【0114】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0115】
(1)メタクリル酸トリチル(MA-Tr)
攪拌機、窒素導入管、還流冷却管を備えた1000mL三口フラスコへ石油エーテル150mL、トリフェニルメチル0.10mol、メタクリル酸0.11mol、トリエチルアミン0.10molを投入し、室温で6時間反応を行った。反応液から生成物として生成するトリエチルアミン塩酸塩を除去した後、反応液に3質量%炭酸ナトリウム水溶液100mLを加えて3回洗浄した。洗浄後の反応液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、真空乾燥で溶媒を除去してMA-Trを得た。収率は90%であった。
【0116】
(2)tert-ブチルジメチルシリルメタクリル酸(MA-TBDMS)
攪拌機、窒素導入管、還流冷却管を備えた500mL三口フラスコへジクロロメタン150mL、メタクリル酸0.20mol、トリエチルアミン0.22molを投入し10分攪拌し、次にtert-ブチルジメチルシリルクロライド0.21mmolをフラスコ内に滴下し、室温で24時間反応を行った。反応液を3%塩酸水溶液で2回洗浄した後、純水で3回洗浄した。洗浄後の反応液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、真空乾燥で溶媒を除去してMA-TBDMSを得た。収率は98%であった。
【0117】
(3)トリエチルシリルメタクリル酸(MA-TES)
攪拌機、窒素導入管、還流冷却管を備えた500mL三口フラスコへジクロロメタン150mL、メタクリル酸0.20mol、トリエチルアミン0.22molを投入し10分攪拌し、次にトリエチルシリルクロライド0.21mmolをフラスコ内に滴下し、室温で24時間反応を行った。反応液を3%塩酸水溶液で2回洗浄した後、純水で3回洗浄した。洗浄後の反応液を硫酸マグネシウムで乾燥した後、真空乾燥で溶媒を除去してMA-TESを得た。収率は90%であった。
【0118】
(4)アルカリ可溶性樹脂
(実施例1)
攪拌機、窒素導入管、還流冷却管、滴下漏斗及び温度計を備えた1000mL三口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)96g及びトルエン64gを投入し、窒素雰囲気下で80℃まで昇温した。フラスコ内に、メタクリル酸(MA)20g、スチレン(STC)30g、ベンジルメタクリレート(BzMA)40g、メタクリル酸トリメチルシリル(MA-TMS)10g、及びアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1gの混合物を3時間かけて滴下した後、MFG6g、トルエン4g、及びAIBN0.20gの混合物を2時間かけて滴下し、更にMFG6g及びトルエン4gを滴下して反応を行った。反応液を95℃まで昇温して1.5時間攪拌した後、室温まで冷却し、アルカリ可溶性樹脂(A1)のポリマ溶液を得た。ポリマ溶液の不揮発分(固形分)は40質量%であった。
【0119】
(実施例2~4)
MA、STC、BzMA、及びMA-TMSを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A2)~(A4)のポリマ溶液を得た。
【0120】
(実施例5~8)
MA、STC、BzMA、及びMA-Trを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A5)~(A8)のポリマ溶液を得た。
【0121】
(実施例9)
MA、STC、BzMA、及びメタクリル酸2-(トリメチルシリルオキシ)エチル(HEMA-TMS)を表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A9)のポリマ溶液を得た。
【0122】
(実施例10~12)
MA、メタクリル酸メチル(MMA)、STC、BzMA、及びHEMA-TMSを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A10)~(A12)のポリマ溶液を得た。
【0123】
(実施例13)
MA、STC、BzMA、及びMA-TBDMSを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A13)のポリマ溶液を得た。
【0124】
(実施例14)
MA、STC、BzMA、及びMA-TESを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(A14)のポリマ溶液を得た。
【0125】
(比較例1)
MA、STC、及びBzMAを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(B1)のポリマ溶液を得た。
【0126】
(比較例2~3)
MA、MMA、STC、及びBzMAを表1に示す配合量で用いた以外は、実施例1と同様にして、アルカリ可溶性樹脂(B2)~(B3)のポリマ溶液を得た。
【0127】
(重量平均分子量)
ポリマ溶液を120mg採取し、5mLのTHFに溶解して、Mw測定用の試料を調製した。Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算することにより導出した。GPCの条件を以下に示す。
【0128】
(GPC条件)
ポンプ:日立 L-6000型(株式会社日立製作所製)
カラム:Gelpack GL-R420、Gelpack GL-R430及びGelpack GL-R440(日立化成株式会社製、カラム仕様:10.7mmφ×300mm)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
測定温度:40℃
注入量:200μL
圧力:49Kgf/cm(4.8MPa)
流量:2.05mL/分
検出器:日立 L-3300型RI(株式会社日立製作所製)
【0129】
【表1】
【0130】
(5)感光性樹脂組成物
上記ポリマ溶液140質量部(アルカリ可溶性樹脂:56質量部)に対して、表2に示す配合量(質量部)の各成分を混合することにより、感光性樹脂組成物を調製した。
【0131】
表2に示す各成分の詳細は、以下のとおりである。
(光重合性化合物)
FA-321M(商品名):2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(日立化成株式会社製)
FA-023M(商品名):ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(日立化成株式会社製)
FA-MECH(商品名):(2-ヒドロキシ-3-クロロ)プロピル-2-メタクリロイルオキシエチルフタレート(日立化成株式会社製)
(光重合開始剤)
BCIM(商品名):2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール(Hampford社製)
(増感剤)
DBA(商品名):9,10-ジブトキシアントラセン(川崎化成工業株式会社)
(光発色剤)
LCV:ロイコクリスタルバイオレット(山田化学工業株式会社)
(密着付与剤)
SF-808H:カルボキシベンゾトリアゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール及びメトキシプロパノールの混合物(サンワ化成株式会社)
(染料)
MKG:マラカイトグリーン(大阪有機化学工業株式会社)
【0132】
【表2】
【0133】
(6)感光性エレメント
感光性樹脂組成物を、厚み16μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人フィルムソリューション株式会社、商品名「G2J」)(支持体)上に塗布し、75℃及び125℃の熱風対流式乾燥器で順次乾燥して、乾燥後の厚みが25μmの感光層を形成した。この感光層上にポリプロピレンフィルム(タマポリ株式会社、製品名「NF-13」)(保護層)を貼り合わせ、支持体と、感光層と、保護層とがこの順に積層された感光性エレメントをそれぞれ得た。
【0134】
[評価]
(親水性度)
20mLのガラスボトルへモノマ7gを投入した後、イオン交換水を加えて23℃で12時間静置した後、モノマのみをシリンジで回収しカールフィッシャー法にてモノマに含まれる水分量を求めた。モノマに含まれる水分量(質量%)をモノマの親水性度とした。各モノマの親水性度を表3に示す。
【0135】
【表3】
【0136】
上記モノマの親水性度とモノマの共重合比とからアルカリ可溶性樹脂の初期の親水性度、極性変換後の親水性度、及び親水性度の増加率を算出した。実施例のアルカリ可溶性樹脂の親水性度を表4に、比較例のアルカリ可溶性樹脂の親水性度を表5に示す。
【0137】
(積層体)
銅箔(厚み:35μm)をガラス繊維強化エポキシ樹脂層の両面に積層した銅張積層板(日立化成株式会社製、商品名「MCL-E-67」)を水洗、酸洗及び水洗後、空気流で乾燥した。次いで、銅張積層板を80℃に加温し、感光性エレメントを銅張積層板の銅表面に積層した。積層は、110℃のヒートロールを用いて、保護層を除去しながら、基板の0.4MPaの圧着圧力、1.0m/分のロール速度で行った。こうして、銅張積層板と感光層と支持体とがこの順に積層された積層体を得た。
【0138】
(現像性)
基板上に膜厚25μmの感光層を積層した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で感光層の現像を行い、残膜がゼロとなる現像時間を測定した。現像時間が20秒以下の場合を「A」、20秒未満の場合を「B」と評価した。
【0139】
(解像性)
積層体の支持体上に、解像度評価用ネガとしてガラスクロムタイプのフォトツール(解像度ネガ:ライン幅/スペース幅がx/x(x:1~30、単位:μm)の配線パターンを有するもの)を使用し、日立41段ステップタブレットの現像後の残存ステップ段数が17.0となるエネルギー量で露光を行った。露光後、光感度の評価と同様に、感光層の現像処理を行った。
【0140】
現像処理後、スペース部分(未露光部分)がきれいに除去され、かつライン部分(露光部分)が蛇行又は欠けを生じることなく形成されたレジストパターンのうち、最も小さいスペース幅の値により、解像性を評価した。最も小さいスペース幅が、15μm未満の場合を「A」、15~20μmの場合を「B」、20μm超の場合を「C」と評価した。
【0141】
(剥離特性)
基板上に膜厚25μmの感光層を積層した積層体を、直描露光機を用いて405nmで30mJを照射した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を最小現像時間(未露光部分が除去される最短時間)の2倍の時間でスプレー現像を行い、未露光部分を除去した(現像処理)。現像処理後、基板上に40mm×50mmの硬化膜が形成された試験片を得た。試験片を50℃の3質量%水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、硬化膜が基板より剥離するまでの時間を測定した。剥離時間が50秒未満の場合を「A」、50秒以上60秒未満の場合を「B」、60秒以上を「C」とした。
【0142】
【表4】
【0143】
【表5】
【0144】
以上の結果より、極性変換基を有する構造単位を含むアルカリ可溶性樹脂を含有する感光性樹脂組成物は、現像性、解像性及び剥離性を両立できることが確認できる。
【符号の説明】
【0145】
1…感光性エレメント、2…支持体、3…感光層、4…保護層。
図1