(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-20
(45)【発行日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ウエハ検査装置、ウエハ検査システム、ウエハ検査方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240621BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240621BHJP
C30B 33/08 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G06T7/00 610Z
G06T7/00 300F
C30B33/08
(21)【出願番号】P 2023054251
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【氏名又は名称】福井 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和博
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-129403(JP,A)
【文献】特開2013-211547(JP,A)
【文献】特開2010-223812(JP,A)
【文献】特開2004-117151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G06T 7/00
C30B 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチピットの検出に用いられるパラメータを取得するデータ入力I/Fと、
ウエハの表面の撮影画像を取得する画像入力I/Fと、
前記パラメータに基づいて前記撮影画像を解析し、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する制御部と、を備え、
前記撮影画像は、前記ウエハに光を供給する照明装置と前記ウエハを撮影する撮像装置により撮像され、
前記撮影画像は、前記エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように撮影された画像であり、
前記パラメータは、輝度閾値及び傾斜角範囲を含み、
前記制御部は、前記撮影画像内で、画像基準軸に対する前記長軸の角度が前記傾斜角範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、ウエハ検査装置。
【請求項2】
前記パラメータは、円形度閾値を含み、
前記制御部は、前記撮影画像内で、円形度が前記円形度閾値未満である孤立点をエッチピットとして検出する、請求項1に記載のウエハ検査装置。
【請求項3】
前記パラメータは、サイズ範囲を含み、
前記制御部は、前記撮影画像内で、サイズが前記サイズ範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置。
【請求項4】
前記撮影画像において、前記ウエハの表面が(100)面である場合、前記ウエハの(0-1-1)面または(011)面の、前記照明装置と前記撮像装置を結ぶ線に対する角度は、30°から60°の範囲内である、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記エッチピットの密度を、所定の領域ごとに算出する、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記撮影画像を二値化処理した二値化画像を生成し、該二値化画像から、前記パラメータに基づいて、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置。
【請求項7】
前記ウエハは、半導体の単結晶基板である、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のウエハ検査装置と、
前記ウエハをステージ上に固定する位置決め装置と、
前記ウエハを撮影する撮像装置と、を備え、
前記ウエハ検査装置は、前記ステージを特定ピッチで移動させながら、前記撮影画像を取得する、ウエハ検査システム。
【請求項9】
ウエハ検査装置が、エッチピットの検出に用いられるパラメータを取得する工程と、
撮像装置が、ウエハの表面を撮影して撮影画像を生成する工程と、
ウエハ検査装置が、前記撮影画像から、前記パラメータに基づいて、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する検出工程と、を含み、
前記撮影画像は、前記ウエハに光を供給する照明装置と前記ウエハを撮影する撮像装置により撮像され、
前記撮影画像は、前記エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように撮影された画像であり、
前記パラメータは、輝度閾値と、エッチピット傾斜角の範囲と、を含み、
前記検出工程は、前記撮影画像内で、画像基準軸に対する前記長軸の角度が前記傾斜角の範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、ウエハ検査方法。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1又は2に記載のウエハ検査装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ検査装置、ウエハ検査システム、ウエハ検査方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの結晶欠陥を評価するために、エッチピット密度(EPD;Etch Pit Density)を測定する方法が知られている。エッチピットは、ウエハをエッチング処理したときにウエハの表面に現れる腐食孔である。例えば非特許文献1には、各測定域のエッチピット密度は、数えたエッチピット数をその領域面積で割ったものとすることが記載されている。
【0003】
エッチピット密度測定は、通常このエッチピットを数えることで行われ、エッチピットを自動計数する技術が提案されている。例えば特許文献1には、半導体単結晶エッチング面の拡大像を、画像処理によりエッチピット密度測定をするに際し、拡大像中のエッチピットを除くすべての部分を認識しない範囲域でしきい値を複数変化させながら二値化画像を得、該二値化画像の独立図形を数え、該図形数の最大値のものをエッチピット数とする画像処理を行うことを特徴とするエッチピット密度測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】SEMI M36-0699、「低転位密度GaAs基板のエッチピット密度(EPD)の測定方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のエッチピット密度測定方法では、異物をエッチピットと誤検出してしまうことがあった。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、エッチピットを高精度に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
【0009】
(1)エッチピットの検出に用いられるパラメータを取得するデータ入力I/Fと、ウエハの表面の撮影画像を取得する画像入力I/Fと、前記パラメータに基づいて前記撮影画像を解析し、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する制御部と、を備え、前記撮影画像は、前記ウエハに光を供給する照明装置と前記ウエハを撮影する撮像装置により撮像され、前記撮影画像は、前記エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように撮影された画像であり、前記パラメータは、輝度閾値及び傾斜角範囲を含み、前記制御部は、前記撮影画像内で、画像基準軸に対する前記長軸の角度が前記傾斜角範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、ウエハ検査装置。
【0010】
(2)前記パラメータは、円形度閾値を含み、前記制御部は、前記撮影画像内で、円形度が前記円形度閾値未満である孤立点をエッチピットとして検出する、(1)に記載のウエハ検査装置。
【0011】
(3)前記パラメータは、サイズ範囲を含み、前記制御部は、前記撮影画像内で、サイズが前記サイズ範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、(1)又は(2)に記載のウエハ検査装置。
【0012】
(4)前記撮影画像において、前記ウエハの表面が(100)面である場合、前記ウエハの(0-1-1)面または(011)面の、前記照明装置と前記撮像装置を結ぶ線に対する角度は、30°から60°の範囲内である、(1)~(3)のいずれかに記載のウエハ検査装置。
【0013】
(5)前記制御部は、前記エッチピットの密度を、所定の領域ごとに算出する、(1)~(4)のいずれかに記載のウエハ検査装置。
【0014】
(6)前記制御部は、前記撮影画像を二値化処理した二値化画像を生成し、該二値化画像から、前記パラメータに基づいて、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する、(1)~(5)のいずれかに記載のウエハ検査装置。
【0015】
(7)前記ウエハは、半導体の単結晶基板である、(1)~(6)のいずれかに記載のウエハ検査装置。
【0016】
(8)(1)~(7)のいずれかに記載のウエハ検査装置と、前記ウエハをステージ上に固定する位置決め装置と、前記ウエハを撮影する撮像装置と、を備え、前記ウエハ検査装置は、前記ステージを特定ピッチで移動させながら、前記撮影画像を取得する、ウエハ検査システム。
【0017】
(9)ウエハ検査装置が、エッチピットの検出に用いられるパラメータを取得する工程と、撮像装置が、ウエハの表面を撮影して撮影画像を生成する工程と、ウエハ検査装置が、前記撮影画像から、前記パラメータに基づいて、前記ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する検出工程と、を含み、前記撮影画像は、前記ウエハに光を供給する照明装置と前記ウエハを撮影する撮像装置により撮像され、前記撮影画像は、前記エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように撮影された画像であり、前記パラメータは、輝度閾値と、エッチピット傾斜角の範囲と、を含み、前記検出工程は、前記撮影画像内で、画像基準軸に対する前記長軸の角度が前記傾斜角の範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する、ウエハ検査方法。
【0018】
(10)コンピュータを、(1)~(7)のいずれかに記載のウエハ検査装置として機能させるためのプログラム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エッチピットを高精度に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるウエハ検査システムの構成例を示す図である。
【
図2】本発明によるウエハ検査装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】画像中のエッチピットの傾斜角を示す図である。
【
図4】本発明によるウエハ検査方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】ウエハにおけるエッチピットの測定領域の一例を示す図である。
【
図6】ウエハ表面を撮影した撮影画像の一例を示す図である。
【
図7】
図6の撮影画像を白黒反転処理した前処理画像の一例を示す図である。
【
図8】
図7の前処理画像を二値化処理した二値化画像の一例を示す図である。
【
図9】エッチピット密度の測定結果の一例を示す図である。
【
図10】エッチピットの長軸が画像X軸に対して傾斜するように設定した一例を示す図である。
【
図11A】エッチピットの長軸の画像水平軸に対する角度を45°とした場合のエッチピットの検出結果の一例を示す図である。
【
図11B】エッチピットの長軸の画像水平軸に対する角度を0°とした場合のエッチピットの検出結果の一例を示す図である。
【
図11C】エッチピットの長軸の画像水平軸に対する角度を0°とした場合のエッチピットの検出結果の他の例を示す図である。
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0022】
<ウエハ検査システム>
図1を参照して、本発明に従うウエハ検査システム1の一例を説明する。
図1に示すウエハ検査システム1は、ウエハ検査装置10と、位置決め装置20と、照明装置30と、撮像装置40と、端子台50と、表示装置60と、を備える。
【0023】
位置決め装置20は、ステージ21と、PLC(Programmable Logic Controller)22と、を有する。位置決め装置20は、ウエハ(半導体の単結晶基板)をステージ21上に固定する。ステージ21は、測定時にウエハ全体の画像を取り込めるように動く。ステージ21は、本実施形態ではX軸方向及びY軸方向に移動可能なXYステージであるが、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に移動可能なXYZステージであってもよい。位置決め装置20は、PLC22の制御に基づいてステージ21を特定ピッチで移動させることにより、ステージ21にセットされたウエハWの位置決めを高精度に行う。
【0024】
照明装置30は、光源、集光レンズなどを用いて、ステージ21にセットされたウエハWの表面に光を供給する。
【0025】
撮像装置40は、ステージ21にセットされたウエハWの表面を撮影し、撮影画像をウエハ検査装置10に出力する。撮像装置40は、対物レンズを用いてウエハWの像を拡大してもよい。例えば、撮像装置40は、視野直径が1.73mm、倍率が10倍の対物レンズを用いてもよい。ここで、照明装置30と撮像装置40は、照明装置30から放射された光がウエハWの表面で反射して撮像装置40に向かうように、照明装置30の光源の中心と、ウエハWの表面の撮像位置と、撮像装置40のレンズの中心とが、俯瞰視で直線上に並ぶように配置される。この直線をウエハWの表面に投影した線を、以下「照明装置と撮像装置を結ぶ線」と称する。すなわち「照明装置と撮像装置を結ぶ線」とは、前記照明装置の光源の中心と前記撮像装置のレンズの中心を結ぶ線を前記ウエハの上方からウエハ表面に投影した直線である。
【0026】
このように直線上に並ぶように配置されるには、照明装置30と撮像装置40はウエハWの表面の撮像位置の直上に位置せず、ウエハWの表面の撮像位置の垂線に対して斜めとなるように光照射角度θLと撮像角度θCを有して配置される。光照射角度θLと撮像角度θCは10°~45°とすることが好ましく、例えば、光照射角度θLと撮像角度θCを共に20°としてよい。このように光照射角度θLと撮像角度θCを有していることで、エッチピットの形状は、真上から光照射して撮像される場合に比べて、光の影となる部分がわずかに延伸するように撮像される。そのように撮像されたエッチピットに対して本発明を適用することで、エッチピットを高精度に検出することが可能となる。
【0027】
ウエハ検査装置10は、ステージ21を特定ピッチで移動させながら、撮像装置40によって撮影された撮影画像を取得する。そして、ウエハ検査装置10は、撮影画像を解析し、エッチピットを検出する。ウエハに転位があると、転位があるところはエッチングされやすく、ウエハ表面の面方位に応じて、転位があるところにエッチピットが生じる。このエッチピットの形状には特徴があるため、撮影画像を解析することで、エッチピットを検出することができる。ウエハ検査装置10の詳細については後述する。
【0028】
表示装置60は、ウエハ検査装置10による検査結果を表示する。
【0029】
<ウエハ検査装置>
次に、
図2を参照して、本発明に従うウエハ検査装置10の一例を説明する。
図2に示すウエハ検査装置10は、データ入力I/F11と、PLC I/F12と、画像入力I/F13と、制御部14と、記憶部15と、データ出力I/F16と、を備える。
【0030】
PLC I/F12は、ウエハ検査装置10とPLC22との間のインターフェースであり、ウエハ検査装置10は、PLC I/F12及び端子台50を介してPLC22に接続される。ウエハ検査装置10とPLC22とは、イーサネット通信を行ってもよい。PLC I/F12は、DIOボード(デジタル入出力ボード)であってもよい。ウエハ検査装置10は、ウエハサイズに対応したプログラムを選択して、PLC22に転送してもよい。
【0031】
画像入力I/F13は、ウエハ検査装置10と撮像装置40との間のインターフェースであり、ウエハ検査装置10は、画像入力I/F13を介して撮像装置40に接続される。画像入力I/F13は、撮像装置40により撮影された、ウエハの撮影画像を取得する。画像入力I/F13は、撮影画像を記憶部15に出力する。画像入力I/F13は、撮影画像がアナログデータであった場合には、デジタルデータに変換する。本実施形態では、画像入力I/F13が出力する撮影画像を8ビットのデジタル画像とする。画像入力I/F13は、フレームグラバ(画像入力ボード)であってもよい。フレームグラバは同期信号を生成し、撮像装置40へ出力する。この同期信号により、撮像装置40の撮影タイミングや露光時間を制御する。
【0032】
記憶部15は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。記憶部15に含まれる各メモリは、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部15は、ウエハ検査装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部15の一部は、ウエハ検査装置10の外部に備えられてもよい。
【0033】
制御部14は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部14は、PLC I/F12及び画像入力I/F13を介してPLC22及び撮像装置40の動作を制御し、ステージ21を所定の間隔で所定の距離を移動させるとともに、撮像装置40によるウエハWの撮影を、ステージ21が移動するタイミングに同期させる。
【0034】
データ入力I/F11は、ウエハ検査装置10と入力装置との間のインターフェースであり、ウエハ検査装置10は、データ入力I/F11を介して入力装置に接続される。入力装置は、キーボード、マウス、ポインティングデバイスなどである。データ入力I/F11は、入力装置から、エッチピットの検出に用いられるパラメータ(エッチピット検出パラメータ)を取得し、記憶部15に出力する。エッチピット検出パラメータは、ユーザが入力装置を用いて設定してもよい。表1に、エッチピット検出パラメータの一例を示す。
【表1】
【0035】
ここで、「傾斜角範囲」とは、画像中のエッチピットに外接する、面積が最小となる四角形(外接四角形)の、画像基準軸(例えば、画像X軸)に対する傾斜角の範囲である。本実施形態では、画像中のエッチピットの傾斜角は、
図3に示すように、当該外接四角形の長軸と、画像X軸との成す角θとする。
図3において、外接四角形は破線で示されている。以下、「外接四角形の長軸」を「エッチピットの長軸」ともいう。
【0036】
「長辺範囲」とは、外接四角形の長辺の画素数の範囲である。「短辺範囲」とは、外接四角形の短辺の画素数の範囲である。「円形度」とは、円らしさを表す値であり、面積をS、周囲長をLとすると、L2/(4πS)で求められる。真円の円形度は1であり、真円から離れるほど1より大きな値となる。「ウエハの配置角度」とは、ウエハをステージ上に置く際の、照明装置と撮像装置を結ぶ線とエッチピットの長軸方向との間の角度である。
【0037】
制御部14は、エッチピット検出パラメータに基づいて撮影画像を解析し、ウエハWの表面に現れたエッチピットを検出する。制御部14は、前処理部141と、エッチピット計数部142と、エッチピット密度算出部143と、を備える。
【0038】
前処理部141は、記憶部15から撮影画像を入力し、画像を結合してウエハ全面画像とした後、撮影画像に対して白黒反転(ネガポジ反転)処理を行い、前処理画像を生成することができる。前処理部141は、白黒反転処理の前又は後に、必要に応じて、ノイズを除去するノイズ除去処理、コントラストを強調するコントラスト強調処理、光学系に起因するシェーディングを補正するシェーディング補正、光学系に起因するひずみを補正するひずみ補正処理などの処理を行ってもよい。
【0039】
エッチピット計数部142は、記憶部15からエッチピット検出パラメータを取得する。エッチピット計数部142は、撮影画像内で、輝度値がエッチピット検出パラメータの「輝度閾値」以下の(前処理画像においては輝度が「輝度閾値」より大きい)孤立点のうち、画像基準軸に対する(エッチピットの長軸の)角度がエッチピット検出パラメータの「傾斜角範囲」内である孤立点をエッチピットとして検出する。エッチピットの傾斜角は、結晶異方性によって概ね固定される。したがって、エッチピット検出パラメータの「傾斜角範囲」により、エッチピットであるか異物であるかを判別することができる。エッチピット計数部142は、孤立点の画像基準軸に対する角度を測定することによりエッチピットを検出してもよい。また、エッチピット計数部142は、あらかじめ画像基準軸に対する角度が「傾斜角範囲」内である、エッチピットの形状を模した所定のパターンを用意し、該パターンと孤立点とのパターンマッチングによりエッチピットを検出してもよい。
【0040】
ここで、「傾斜角範囲」の設定方法は、以下のとおりである。
1. ウエハの面方位を確認して、ウエハ表面において形成されるエッチピットの長軸の向き(結晶異方性の方向)を確認する。例えば、オリエンテーションフラットの面方位を確認し、オリエンテーションフラットに対する、ウエハ表面において形成されるエッチピットの長軸の向きを確認する。
2. ウエハの表面の撮像において、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くようにウエハを配置する。「ウエハの配置角度」としては、例えば、オリエンテーションフラットを有するウエハの場合には、照明装置と撮像装置を結ぶ線に対するオリエンテーションフラットの角度を設定する。
3. 1.と2.に基づいて、撮像後の画像水平軸(X軸)に対する結晶異方性に起因するエッチピットの理論上の傾斜角(外接四角形の長軸と、画像X軸との成す角)を確認する。
4. 撮像時のエッチピットの、理論上の傾斜角に対する振れ幅(本実施形態では±15°)を設定する。「傾斜角範囲」は、理論上の傾斜角に対する振れ幅の範囲である。なお、本実施形態では振れ幅は15°以内としているが、エッチピットの撮像精度やウエハのセット位置精度に応じて、10°以内や5°以内としても良い。
【0041】
上記2.における、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くようにウエハを配置するにあたっての、ウエハの配置方法としては、ウエハの面方位が分かれば配置することができる。ウエハの面方位は、Semi規格に従ってオリエンテーションフラットやノッチなどの位置により規定されており、X線回折によって確認することができる。本実施形態では、オリエンテーションフラットを有するウエハを用いる場合とし、そのオリエンテーションフラットは、ダブテイルを持つ面方位とする。Semi規格(SEMI M9-0811「鏡面単結晶ガリウムヒ素ウェーハの仕様」の
図2)を参照する。例えば、ウエハ表面が(100)面である場合、ウエハの(0-1-1)面または(011)面がオリエンテーションフラットである。この場合、エッチピットの長軸はオリエンテーションフラットと水平となる。例えば、そのようなオリエンテーションフラットを、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように配置することで、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くようにすることができる。オリエンテーションフラットを、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上60°以下傾くようにウエハを配置することも好ましい。他の実施形態としてオリエンテーションフラットを持たないウエハを用いる場合であっても、通常、ウエハの面方位とエッチピットの長軸の方向は確認することができるため、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように配置することができる。
【0042】
エッチピット計数部142は、前処理画像をエッチピット検出パラメータの「輝度閾値」を用いて二値化処理した二値化画像を生成し、該二値化画像から、エッチピット検出パラメータに基づいてエッチピットを検出してもよい。二値化画像を生成することにより、孤立点が強調される。孤立点とは、二値化画像においては、隣接する周囲の全ての画素と値が異なる領域である。エッチピット計数部142は、二値化処理を行わない場合には、前処理画像に対してエッジ検出処理を行い、エッジに囲まれた領域を孤立点として検出してもよい。
【0043】
エッチピット計数部142は、孤立点のうち、円形度が1以上であってエッチピット検出パラメータの「円形度閾値」未満である孤立点をエッチピットとして検出してもよい。ウエハ表面の面方位が(100)面の場合、エッチピットの形状は、六角形となる。一方、異物の形状は、一般的にエッチピットよりも歪である形状も含まれる。したがって、エッチピット検出パラメータの「円形度閾値」により、エッチピットであるか異物であるかを判別することができる。形状が歪ではなく円に近い異物は、上述の傾斜角範囲によって判別することができる。
【0044】
また、エッチピット計数部142は、孤立点のうち、サイズがエッチピット検出パラメータの「サイズ範囲」内である孤立点をエッチピットとして検出してもよい。エッチピットのサイズがあらかじめ分かっている場合には、エッチピット検出パラメータの「サイズ範囲」により、エッチピットであるか異物であるかを判別することができる。
【0045】
また、エッチピット計数部142は、上記のエッチピット検出パラメータを組み合わせてエッチピットとして検出してもよい。例えば、エッチピット計数部142は、孤立点のうち、画像基準軸に対する角度がエッチピット検出パラメータの「傾斜角範囲」内であり、円形度がエッチピット検出パラメータの「円形度閾値」未満であり、サイズがエッチピット検出パラメータの「サイズ範囲」内である孤立点を、エッチピットとして検出してもよい。
【0046】
エッチピット計数部142は、ウエハWの全測定領域を分割した分割領域ごとに、エッチピットを計数する。なお、ウエハ検査装置10は、各分割領域のエッチピットの数のうち、最も大きい数を最大転位密度(個/mm2)として検出してもよい。
【0047】
エッチピット密度算出部143は、エッチピット計数部142により分割領域ごとに検出したエッチピットの個数を、分割領域の面積で除して、分割領域ごとにエッチピット密度を算出する。例えば、分割領域のサイズが1mm×1mmである場合には、分割領域の面積は0.01cm2となる。エッチピット密度算出部143は、算出したエッチピット密度を記憶部15に出力する。
【0048】
エッチピット密度算出部143は、ウエハW全体に対するエッチピット密度を算出する場合には、分割領域ごとのエッチピットの個数を加算し、加算したエッチピット数をウエハWの全測定領域の面積で除して、エッチピット密度を算出する。また、エッチピット密度算出部143は、ウエハWの全測定領域における分割領域ごとのエッチピット密度又はエッチピットの有無を示す、全面MAPを作成してもよい。
【0049】
データ出力I/F16は、エッチピット密度、エッチピットの有無などを、表示装置60に出力する。
【0050】
<ウエハ検査方法>
次に、本発明に従うウエハ検査方法の一例を説明する。
図4は、ウエハ検査方法の一例を示すフローチャートである。ここで、ウエハWは、半導体の単結晶基板であり、所定の処理によりエッチピットが発生しているものとする。例えば、ウエハWの表面を硫酸系鏡面エッチング液(H
2SO
4:H
2O
2:H
2O=3:1:1(体積比))で前処理した後、液温320℃のKOH融液中に35分間浸積することで、エッチピットが発生する。本実施形態では、ウエハWは、表面の面方位が(100)面のGaAs基板であり、オリエンテーションフラットの面方位は(011)面である場合を例として説明を行う。このとき、エッチピットの長軸の向きは、オリエンテーションフラットと水平の向きである。
【0051】
ステップS101では、ユーザ(測定者)が、ウエハWをステージ21にセットする。セットするにあたり、照明装置と撮像装置を結ぶ線に対するウエハの配置角度を、エッチピットの長軸が照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線に対して規定の角度となるように合わせる。
【0052】
ステップS102では、ウエハ検査装置10が、ウエハWの種類に対応したエッチピット検出パラメータを取得する。また、位置決め装置20が、ウエハWのサイズに対応したプログラムを取得する。ウエハWのサイズは、SEMI規格にて定められている。ステップS101とステップS102の順番は逆であってもよい。
【0053】
ステップS103では、測定を開始する。撮像装置40による撮像サイズに合わせて、位置決め装置20が、ステージ21上のウエハWを所定のピッチ(例えば、4.2mm)でXY方向に移動しながら、撮像装置40が、ウエハW表面の分割画像を撮影する。撮像された分割画像は記憶部15に保存される(ステップS104)。そして、ステップS105において、前処理部141において分割画像を結合して、ウエハ全面の画像を生成して記憶部15に保存される。
【0054】
図5に、ウエハWにおけるエッチピットの測定領域の一例を示す。
図5は、ウエハWの上部のみを示している。
図5に示す例では、ウエハWの全面から、ウエハWの外周から中心に向かって3mm幅の円環状の部分Cを除いた領域を全測定領域Aとする。そして、全測定領域Aを1mm角に分割した小領域を分割領域Dとする。分割領域Dごとに、エッチピットの計数が行われる。
【0055】
全測定領域Aの外周線と1mm角とが重なる(外周線が1mm角を横断する)位置においては、1mm角のうち外周線内の面積が大きい場合は該1mm角を分割領域Dに含め、1mm角のうち外周線内に入る面積が小さい場合は該1mm角を分割領域Dに含めないものとして、外周線で囲まれる面積に対する1mm角で囲まれる面積が、誤差±2%以内(好ましくは誤差±1.5%以内)となるようにする。例えば、本実施形態において、ウエハW内で測定が行われる分割領域Dの有効数は、3インチウエハ(直径76mm)で3881、4インチウエハ(直径100mm)で6849、6インチウエハ(直径150mm)で16529とすることができる。
【0056】
ステップS106では、ウエハ検査装置10の前処理部141が、前処理画像を生成する。
図6に撮影画像の一例を示し、
図7に
図6の撮影画像を白黒反転処理した前処理画像の一例を示す。白黒反転処理では、撮影画像の各画素値を、255から引いた値に変換する。本実施形態では、反射光学系で測定を行うため、
図6に示すように、窪んでいるエッチピット、及び異物等の凸箇所は暗く見え、それ以外の箇所は明るく見える。
【0057】
ステップS107では、ウエハ検査装置10のエッチピット計数部142が、エッチピット検出パラメータに基づいて前処理画像を二値化処理して、二値化画像を生成する。
図8に、
図7の前処理画像を二値化処理した二値化画像の一例を示す。
図8では、前処理画像の輝度が輝度閾値以上である画素を白とし、前処理画像の輝度が輝度閾値未満である画素を黒としている。二値化処理により、
図8に示すように、エッチピットが強調される。ステップS105では、エッチピット計数部142が、二値化画像から、エッチピット検出パラメータに基づいて分割領域Dごとにエッチピットを検出し、計数する。
【0058】
ステップS108では、ウエハ検査装置10のエッチピット密度算出部143が、エッチピット密度を算出する。
【0059】
ステップS109では、表示装置60が、エッチピット密度を表示する。表示装置60は、分割領域Dごとにエッチピット密度を表示してもよい。また、表示装置60は、
図9に示すように、全測定領域Aのうち、エッチピット数が1個以上である分割領域Dを、エッチピット数が0個である他の分割領域Dと区別して表示してもよい。
図9では、エッチピット数が1個以上である分割領域Dを黒色で示している。
【0060】
従来、ウエハWの取り込み画像は、エッチピットの長軸が照明装置と撮像装置を結ぶ線(画像Y軸)の垂線(画像X軸)と平行になるように設定していた。しかし、実験の結果、エッチピットの角度形状と影の出方の関係で、エッチピットの長軸が画像水平軸(画像X軸)に対して傾斜するように設定したほうが、エッチピットの輪郭は明確となり、且つ異物の輪郭はボヤけ、エッチピットの検出精度が向上することが分かった。そこで、ウエハの表面の撮像は、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線(画像Y軸)の垂線(画像X軸)から30°以上傾けるように撮像する。
図10に示すように、ウエハ検査装置10が取得する撮影画像において、エッチピットの長軸の画像X軸に対する角度が30°から60°の範囲内となるように設定してもよい。
【0061】
図11Aは、エッチピットの長軸の画像X軸に対する(理論上の)傾斜角を45°(照明装置と撮像装置を結ぶ線に対するウエハの配置角度を45°)とし、エッチピットの傾斜角範囲を45°±15°とした場合のエッチピットの検出結果の一例を示す図である。照明装置30と撮像装置40を結ぶ線は
図11Aの上下方向(画像Y軸)である。エッチピットが検出された領域を四角で囲っている。
図11Aでは、エッチピットが正確に検出されていることが分かる。
【0062】
一方、
図11B、
図11Cは、エッチピットの長軸の画像X軸に対する(理論上の)傾斜角を0°(照明装置と撮像装置を結ぶ線に対するウエハの配置角度は90°)とした場合の、傾斜角範囲を-15~15°とした場合と、傾斜角範囲の設定を解除した(傾斜角を計測しない)場合における、エッチピットの検出結果の一例を示す図である。照明装置30と撮像装置40を結ぶ線は
図11B、
図11Cの上下方向(画像Y軸)であり、
図11B内には照明装置30から撮像装置40に向かう方向を矢印で示している。
図11Bでは、エッチピットが検出された領域は四角で囲った1つのみであり、エッチピットとして検出されない場合が多いことが分かる。これは、エッチピットの長軸が、照明装置30と撮像装置40とを結ぶ線の垂線(画像X軸)と水平になっているため、撮像においてエッチピットの短軸方向が拡張されて、エッチピットの長軸の傾斜角の測定が正確にできなかったためと考えられる。そして、傾斜角を測定していない
図11Cでは、矢印で示す箇所において、異物をエッチピットとして誤検出されていることが分かる。
【0063】
<プログラム>
上述したウエハ検査装置10として機能させるために、プログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)などであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0064】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などのプロセッサであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部15からプログラムを読み出して実行することで、上述した処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。
【0065】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0066】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
このように、本発明によれば、エッチピットを高精度に検出することができるため、ウエハ検査の用途に有用である。
【符号の説明】
【0068】
1 ウエハ検査システム
10 ウエハ検査装置
11 データ入力I/F
12 PLC I/F
13 画像入力I/F
14 制御部
15 記憶部
16 データ出力I/F
20 位置決め装置
21 ステージ
22 PLC
30 照明装置
40 撮像装置
50 端子台
60 表示装置
141 前処理部
142 エッチピット計数部
143 エッチピット密度算出部
【要約】
【課題】エッチピットを高精度に検出する。
【解決手段】ウエハ検査装置10は、エッチピットの検出に用いられるパラメータを取得するデータ入力I/F11と、ウエハの表面の撮影画像を取得する画像入力I/F13と、パラメータに基づいて撮影画像を解析し、ウエハの表面に現れたエッチピットを検出する制御部14と、を備え、撮影画像は、ウエハに光を供給する照明装置とウエハを撮影する撮像装置により撮像され、撮影画像は、エッチピットの長軸が、照明装置と撮像装置を結ぶ線の垂線から30°以上傾くように撮影された画像であり、パラメータは、輝度閾値と、エッチピット傾斜角の範囲と、を含み、制御部14は、撮影画像内で、画像基準軸に対する角度が傾斜角の範囲内である孤立点をエッチピットとして検出する。
【選択図】
図2