(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】細胞外小胞の分泌を促進するための組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 1/00 20060101AFI20240624BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20240624BHJP
C12N 5/077 20100101ALI20240624BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240624BHJP
C12N 5/078 20100101ALI20240624BHJP
A61K 31/11 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/165 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20240624BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240624BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240624BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240624BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240624BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240624BHJP
A61K 31/575 20060101ALI20240624BHJP
C07D 403/14 20060101ALN20240624BHJP
C07D 207/36 20060101ALN20240624BHJP
C07J 9/00 20060101ALN20240624BHJP
【FI】
C12N1/00 G
C12N5/07
C12N5/077
C12N5/0775
C12N5/078
A61K31/11
A61K31/05
A61K31/165
A61K31/404
A61K31/4025
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P9/00
A61P25/00
A61P37/02
A61K31/575
C07D403/14
C07D207/36
C07J9/00
(21)【出願番号】P 2021512320
(86)(22)【出願日】2020-04-03
(86)【国際出願番号】 JP2020015310
(87)【国際公開番号】W WO2020204161
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2019071759
(32)【優先日】2019-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】的場 一隆
(72)【発明者】
【氏名】木田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】西野 泰斗
(72)【発明者】
【氏名】華山 力成
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孟史
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/182016(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/225440(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/120150(WO,A1)
【文献】山下竜幸,他,硫酸化糖脂質サルファタイドによる間葉系幹細胞のエクソソーム分泌促進効果,日本再生医療学会雑誌 再生医療,2017年02月01日,第16巻/増刊号[通巻69号],pp. 367, P-01-023
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
C12N 5/00
C07D 403/00
C07D 207/00
C07J 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞の分泌を促進するための組成物であって、式I
【化1】
[式中
R
1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
7であり、
R
2は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
5であり、
R
3は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
8であり、
R
4は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
6であり、
R
5及びR
6は、独立して、水素;ヒドロキシ;ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル;又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシであり、
R
7及びR
8は、独立して、水素、ヒドロキシ又は-NR
9R
10であり、
R
9及びR
10は、独立して、水素、又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ若しくはフェニルで置換されていてもよいC
1-C
6アルキルである]
の構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩
を含む、組成物。
【請求項2】
R
1が、C
1-C
6アルキルであり、R
3が、C
1-C
6アルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
2が、-C(O)-R
5であり、R
4が、-C(O)-R
6である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
R
5が、水素であり、R
6が、水素である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
式Iの構造を有する化合物が以下:
【化4】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式Iの構造を有する化合物が、(±)-ゴシポール、(S)-ゴシポール、(+)-アポゴシポール、(R)-(-)-ゴシポール及びサブトクラックスからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
脂肪組織由来の細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
培地組成物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の組成物を用いる、in vitro又はex vivoで細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物を用いる、in vitro又はex vivoで細胞外小胞を製造するための方法。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物と細胞とを接触させる工程を含む、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞は、細胞から分泌される小胞であり、その膜構造は細胞自身や細胞内小器官と同様に脂質二重層からなっており、唾液、血液、尿、羊水等のあらゆる体液中や細胞培養液中に安定して存在することが知られている。
【0003】
細胞外小胞としては、例えば、Exosomes(エクソソーム)、Microvesicles(MV;微小小胞体)、Apoptotic Bodies(アポトーシス小体)等が知られている。エクソソームは、エンドサイト-シス・パスウエイに由来する約20~約200nmの小胞であり、その構成成分としてタンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーティングRNA等)等が知られており、細胞間コミュニケーションを司る機能等を有しうる。微小小胞体(MV)は、細胞質膜に由来する約50~約1000nmの小胞であり、その構成成分としてタンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーティングRNA等)等が知られており、細胞間コミュニケーションを司る機能等を有しうる。アポトーシス小体は、細胞質膜に由来する約500~約2000nmの小胞であり、その構成成分として断片化された核、細胞小器官(オルガネラ)等が知られており、ファゴサイトーシスを誘導する機能等を有しうる。
【0004】
近年、細胞外小胞は、種々の細胞(例えば、間葉系幹細胞(MSC)等)から分泌されることが報告されており、生体内の細胞間コミュニケーションの媒介役として機能することや、ガンや神経変性疾患等の疾患との関連性が注目されている。例えば、非特許文献1では、エクソソームの分泌により、ミクログリアによるアミロイドβタンパク質の除去機能が促進されることが示唆されている。また、非特許文献2では、エクソソームが、脳内のアミロイドβの代謝に関与していることが示唆されている。
【0005】
間葉系幹細胞(MSC)が分泌する細胞外小胞は、抗炎症作用、細胞保護作用等の多面的な機能により、ガン、心疾患、神経変性疾患、免疫系疾患等の多くの疾患に対する治療への応用が検討されている。例えば、特許文献1には、間葉系幹細胞由来のエクソソ一ムが、心不全等の疾患を治療するために使用されうることが記載されている。また、特許文献2には、間葉系幹細胞由来の細胞外小胞が、種々の角膜上皮疾患を予防及び/又は治療するために用いられうることが記載されている。
【0006】
このような背景から、近年、細胞外小胞の分泌を促進する物質について研究が進められている。例えば、特許文献3では、トロンビンを含む培地で幹細胞を培養することにより、幹細胞からのエクソソームの生成を促進する方法が報告されている。また、特許文献4では、セラミドがエクソソームの産生を促進することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特表2011-513217号公報
【文献】国際公開第2017/022809号
【文献】国際公開第2015/088288号
【文献】特開2018-150290号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】Yuyama K et al.,J Biol Chem.,289(35),24488-98(2014)
【文献】Yuyama K et al.,J Biol Chem.,287(14),10977-89(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、細胞外小胞の分泌を促進する物質に関しては、その報告数が限られており、細胞外小胞の分泌を促進するための新たな組成物の開発が望まれている。
【0010】
したがって、本発明の課題は、細胞外小胞の分泌を促進するための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題に鑑み、鋭意検討を重ねたところ、本発明者は、意外にも、特定の化合物を含む組成物が、細胞外小胞の分泌を促進することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明は、要旨、以下のものを提供する。
〔1〕 細胞外小胞の分泌を促進するための組成物であって、式I
【化1】
[式中
R
1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
7であり、
R
2は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
5であり、
R
3は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
8であり、
R
4は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
6であり、
R
5及びR
6は、独立して、水素;ヒドロキシ;ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル;又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシであり、
R
7及びR
8は、独立して、水素、ヒドロキシ又は-NR
9R
10であり、
R
9及びR
10は、独立して、水素、又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ若しくはフェニルで置換されていてもよいC
1-C
6アルキルである]
の構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩
を含む、組成物。
〔2〕
細胞外小胞の分泌を促進するための組成物であって、式II
A-B II
[式中、
Aは、
【化2】
であり、
Bは、
【化3】
であり、
これらの式中、
各Ra~Rcは、独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、又はC
1-C
6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキルであり、
各Rdは、独立して、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシである]
の構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩
を含む、組成物。
〔3〕 細胞外小胞の分泌を促進するための組成物であって、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩を含む、組成物。
〔4〕 R
1が、C
1-C
6アルキルであり、R
3が、C
1-C
6アルキルである、〔1〕に記載の組成物。
〔5〕 R
2が、-C(O)-R
5であり、R
3が、-C(O)-R
6である、〔1〕又は〔4〕に記載の組成物。
〔6〕 R
5が、水素であり、R
6が、水素である、〔5〕に記載の組成物。
〔7〕 式Iの構造を有する化合物が以下:
【化4】
からなる群より選択される、〔1〕に記載の組成物。
〔8〕 式Iの構造を有する化合物が、(±)-ゴシポール、(S)-ゴシポール、(+)-アポゴシポール、(R)-(-)-ゴシポール及びサブトクラックスからなる群より選択される、〔1〕に記載の組成物。
〔9〕 Aが、以下:
【化5】
である、〔2〕に記載の組成物。
〔10〕 Bが、以下:
【化6】
である、〔2〕又は〔9〕に記載の組成物。
〔11〕 Rdが、C
1-C
6アルコキシである、〔2〕、〔9〕及び〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕 式IIの構造を有する化合物が以下:
【化7】
からなる群より選択される、〔2〕に記載の組成物。
〔13〕 式IIの構造を有する化合物が、オバトクラックス、プロジギオシン及びウンデシルプロジギオシンからなる群より選択される、〔2〕に記載の組成物。
〔14〕 ククルビタシンが、ククルビタシンA、ククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、ククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンG、ククルビタシンH、ククルビタシンI、ククルビタシンJ、ククルビタシンK、ククルビタシンL、ククルビタシンM、ククルビタシンN、ククルビタシンO、ククルビタシンP、ククルビタシンQ、ククルビタシンR、ククルビタシンS、及びククルビタシンTからなる群より選択される、〔3〕に記載の組成物。
〔15〕 ククルビタシンが、ククルビタシンBである、〔3〕又は〔14〕に記載の組成物。
〔16〕 脂肪組織由来の細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の組成物。
〔17〕 間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の組成物。
〔18〕 培地組成物である、〔1〕~〔17〕のいずれかに記載の組成物。
〔19〕 〔18〕に記載の組成物を用いる、in vitro又はex vivoで細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための方法。
〔20〕 〔19〕に記載の方法により得られてなる、培養上清。
〔21〕 〔20〕に記載の培養上清中から得られてなる、細胞外小胞。
〔22〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の組成物を用いる、in vitro又はex vivoで細胞外小胞を製造するための方法。
〔23〕 〔1〕~〔18〕のいずれかに記載の組成物と細胞とを接触させる工程を含む、〔22〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、細胞外小胞の分泌を促進するための組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】試験例1において、実施例1,5の化合物をU-87 MG細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD9 ELISA法で評価し、溶媒のみ(control)を添加した際の細胞外小胞の分泌量に対する相対的な分泌量として表した結果を示す。
【
図1B】試験例1において、実施例1,5の化合物をU-87 MG細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価し、溶媒のみ(control)を添加した際の細胞外小胞の分泌量に対する相対的な分泌量として表した結果を示す。
【
図2】試験例2において、実施例1,5の化合物をU-87 MG細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図3A】試験例3において、実施例1,5の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図3B】試験例3において、実施例1~4,6~8の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図4A】試験例4において、実施例1,5の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図4B】試験例4において、実施例1~4,6~8の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図5A】試験例5において、実施例1,5の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞増殖活性(細胞生存率)を評価した結果を示す。
【
図5B】試験例5において、実施例1~4,6~8の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞増殖活性(細胞生存率)を評価した結果を示す。
【
図6】試験例6において、実施例2,5の化合物をヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に処置することにより得られたエクソソームを、低酸素処置下のH9C2細胞に添加した際の生細胞数を評価した結果を示す。
【
図7A】試験例7において、実施例1~8の化合物をヒト骨髄由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図7B】試験例7において、実施例1~8の化合物をヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図7C】試験例8において、実施例1~8の化合物をヒト骨髄由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図7D】試験例8において、実施例1~8の化合物をヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図7E】試験例9において、実施例1~8の化合物をヒト骨髄由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞増殖活性(細胞生存率)を評価した結果を示す。
【
図7F】試験例9において、実施例1~8の化合物をヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に添加した際の細胞増殖活性(細胞生存率)を評価した結果を示す。
【
図8A】試験例10において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図8B】試験例10において、実施例1,5,9の化合物を293T細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD63 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図8C】試験例10において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD81 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図8D】試験例10において、実施例1,5,9の化合物を293T細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をTim4-CD81 ELISA法で評価した結果を示す。
【
図8E】試験例11において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をナノ粒子解析システムで評価した結果を示す。
【
図8F】試験例11において、実施例1,5,9の化合物を293T細胞に添加した際の細胞外小胞の分泌量をナノ粒子解析システムで評価した結果を示す。
【
図8G】試験例12において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図8H】試験例12において、実施例1,5,9の化合物を293T細胞に添加した際の細胞傷害性を、培養上清中のLDH量で評価した結果を示す。
【
図8I】試験例13において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞増殖活性を評価した結果を示す。
【
図8J】試験例13において、実施例1,5,9の化合物を293細胞に添加した際の細胞増殖活性を評価した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、細胞外小胞の分泌を促進するための組成物であって、式I
【化8】
[式中
R
1は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
7であり、
R
2は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
5であり、
R
3は、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル、又は-C(O)-R
8であり、
R
4は、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル又は-C(O)-R
6であり、
R
5及びR
6は、独立して、水素;ヒドロキシ;ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキル;又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシであり、
R
7及びR
8は、独立して、水素、ヒドロキシ又は-NR
9R
10であり、
R
9及びR
10は、独立して、水素、又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ若しくはフェニルで置換されていてもよいC
1-C
6アルキルである]
の構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩
或いは、式II
A-B II
[式中、
Aは、
【化9】
であり、
Bは、
【化10】
であり、
これらの式中、
各Ra~Rcは、独立して、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、又はC
1-C
6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルキルであり、
各Rdは、独立して、水素、ヒドロキシ、C
1-C
6アルキル、又はヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC
1-C
6アルコキシである]
の構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩
或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩
を含む、組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、細胞外小胞の分泌を促進するための、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩を提供する。
【0017】
本発明はまた、細胞外小胞の分泌を促進するための組成物を製造するための使用であって、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩の、使用を提供する。
【0018】
本発明はまた、細胞外小胞の分泌を促進するための方法であって、それを必要とする被験体に式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩を投与することを含む、方法を提供する。
【0019】
本明細書中で用いられる「ヒドロキシ」とは、式「-OH」で表される基を意味する。
【0020】
本明細書中で用いられる「ハロゲン」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等を意味する。
【0021】
本明細書中で用いられる「アミノ」とは、式「-NH2」で表される基を意味する。
【0022】
本明細書中で用いられる「ニトロ」とは、式「-NO2」で表される基を意味する。
【0023】
本明細書中で用いられる「シアノ」とは、式「-CN」で表される基を意味する。
【0024】
本明細書中で用いられる「C1-C6アルキル」とは、1~6個の炭素原子を含む飽和の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基(これらに限定されるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、ペンチル、へキシル等を含む)を意味する。好ましいC1-C6アルキルは、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル等を含む)であり、より好ましくは、メチル、イソプロピルである。
【0025】
本明細書中で用いられる「ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC1-C6アルキル」とは、C1-C6アルキルの1つ以上の水素原子が、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ又はシアノにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい基を意味する。
【0026】
本明細書中で用いられる「C1-C6アルコキシ」とは、式「-O-C1-C6アルキル」で表される基を意味する。C1-C6アルコキシとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t-ブトキシ等が挙げられ、好ましくは、メトキシである。
【0027】
本明細書中で用いられる「ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC1-C6アルコキシ」とは、C1-C6アルコキシの1つ以上の水素原子が、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ又はシアノにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい基を意味する。
【0028】
本明細書中で用いられる「ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ若しくはフェニルで置換されていてもよいC1-C6アルキル」とは、C1-C6アルキルの1つ以上の水素原子が、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ、シアノ若しくはフェニルにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい基を意味する。
【0029】
本明細書中で用いられる「C1-C6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ若しくはシアノで置換されていてもよいC1-C6アルキル」とは、C1-C6アルキルの1つ以上の水素原子が、C1-C6アルキル、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノ、ニトロ又はシアノにより置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい基を意味する。
【0030】
本明細書中の化学構造式中に示される、結合と交差する破線は、該化学構造において破線が接続されている原子の、分子の残部又は分子の断片の残部への結合点を示す。
【0031】
本明細書中で用いられる「ラセミ体」とは、2つのエナンチオマーの等モル混合物であり、光学活性を有しないものを意味する。
【0032】
本明細書中で用いられる「立体異性体」には、エナンチオマー、ジアステレオマー等が包含される。
【0033】
本明細書中で用いられる「塩」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、無機酸又は有機酸との酸付加塩、金属との塩、有機塩基との塩等が挙げられる。本明細書中で用いられる「塩」は、好ましくは、薬学的に許容し得る塩である。
【0034】
本明細書中で用いられる「薬学的に許容し得る塩」とは、これらに限定されるものではないが、例えば、無機酸(これらに限定されるものではないが、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等)又は有機酸(これらに限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、メシル酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等)との酸付加塩;金属(これらに限定されるものではないが、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン等)との塩;アンモニウム塩;有機塩基(これらに限定されるものではないが、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トリメタミン、ジシクロへキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン等)との塩等が挙げられる。
【0035】
本明細書中で用いられる「ククルビタシン」としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ククルビタシンA、ククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、ククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンG、ククルビタシンH、ククルビタシンI、ククルビタシンJ、ククルビタシンK、ククルビタシンL、ククルビタシンM、ククルビタシンN、ククルビタシンO、ククルビタシンP、ククルビタシンQ、ククルビタシンR、ククルビタシンS、ククルビタシンT、これらの誘導体(例えば、配糖体、ジヒドロ体、オキソ体、デオキソ体等)等が挙げられる。
【0036】
本明細書中で用いられる「配糖体」とは、糖の水酸基が非糖質化合物と結合してできる化合物をいう。配糖体における糖は、単糖であってもよいし、二糖又はそれ以上の複数の糖であってもよい。配糖体を構成する糖としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラムノース、アラビノース、キシロース等のアルドース、フルクトース等のケトース、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸等のウロン酸、アピオース、ルチノース等が挙げられる。また、配糖体を構成する糖は、D体、L体、又はD体とL体との混合物(DL体)であってもよい。
【0037】
本明細書中に記載の組成物に含まれる式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩には、その溶媒和物(例えば、その水和物)、その結晶多形、異性体混合物等も包含される。
【0038】
本明細書中で用いられる「溶媒和物」とは、1つ以上の溶媒分子と、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩との会合体、複合体等を意味する。溶媒としては、これらに限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、酢酸エチル等が挙げられる。
【0039】
本発明の一実施態様では、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩を含む、本明細書中に記載の組成物を提供する。
【0040】
本発明の一実施態様では、R1が、C1-C6アルキルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0041】
本発明の一実施態様では、R3が、C1-C6アルキルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0042】
本発明の一実施態様では、R1が、C1-C6アルキルであり、R3が、C1-C6アルキルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0043】
本発明の好ましい一実施態様では、R1が、イソプロピルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0044】
本発明の好ましい一実施態様では、R3が、イソプロピルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0045】
本発明のより好ましい一実施態様では、R1が、イソプロピルであり、R3が、イソプロピルである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0046】
本発明の一実施態様では、R2が、-C(O)-R5である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0047】
本発明の一実施態様では、R4が、-C(O)-R6である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0048】
本発明の好ましい一実施態様では、R2が、-C(O)-R5であり、R4が、-C(O)-R6である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0049】
本発明の一実施態様では、R5が、水素である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0050】
本発明の一実施態様では、R6が、水素である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0051】
本発明の好ましい一実施態様では、R5が、水素であり、R6が、水素である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0052】
本発明の一実施態様では、式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩を含む、本明細書中に記載の組成物を提供する。
【0053】
本発明の一実施態様では、Aが、以下:
【化11】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0054】
本発明の一実施態様では、Bが、以下:
【化12】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0055】
本発明の好ましい一実施態様では、Aが、以下:
【化13】
であり、Bが、以下:
【化14】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0056】
本発明の好ましい一実施態様では、A-Bが、以下:
【化15】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0057】
本発明の一実施態様では、Aが、以下:
【化16】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0058】
本発明の一実施態様では、Bが、以下:
【化17】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0059】
本発明の好ましい一実施態様では、Aが、以下:
【化18】
であり、Bが、以下:
【化19】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0060】
本発明の好ましい一実施態様では、A-Bが、以下:
【化20】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0061】
本発明の好ましい一実施態様では、Aが、以下:
【化21】
であり、Bが、以下:
【化22】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0062】
本発明の好ましい一実施態様では、A-Bが、以下:
【化23】
である、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0063】
本発明の一実施態様では、Rdが、C1-C6アルコキシである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0064】
本発明の好ましい一実施態様では、Rdが、メトキシである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0065】
本発明の一実施態様では、式Iの構造を有する化合物又は式IIの構造を有する化合物が、以下:
【化24-1】
【化24-2】
からなる群より選択される、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0066】
本発明の好ましい一実施態様では、式Iの構造を有する化合物又は式IIの構造を有する化合物が、(±)-ゴシポール、(S)-ゴシポール、(+)-アポゴシポール、(R)-(-)-ゴシポール、サブトクラックス、オバトクラックス、プロジギオシン及びウンデシルプロジギオシンからなる群より選択される、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0067】
本発明の一実施態様では、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩を含む、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0068】
本発明の一実施態様では、ククルビタシンが、ククルビタシンA、ククルビタシンB、ククルビタシンC、ククルビタシンD、ククルビタシンE、ククルビタシンF、ククルビタシンG、ククルビタシンH、ククルビタシンI、ククルビタシンJ、ククルビタシンK、ククルビタシンL、ククルビタシンM、ククルビタシンN、ククルビタシンO、ククルビタシンP、ククルビタシンQ、ククルビタシンR、ククルビタシンS、及びククルビタシンTからなる群より選択される、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0069】
本発明の好ましい一実施態様では、ククルビタシンが、ククルビタシンBである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0070】
式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩は、市販されているか、或いは公知若しくは周知の方法により又はこれに類似する方法により製造することができる。例えば、これらの化合物は、MedChem Express社から購入することができる。
【0071】
本明細書中で用いられる「細胞外小胞」とは、細胞から分泌される小胞である限り特段限定されるものではないが、例えば、Exosomes(エクソソーム)、Microvesicles(MV;微小小胞体)、Apoptotic Bodies(アポトーシス小体)等が挙げられる。
【0072】
本明細書中で用いられる「エクソソーム」とは、エンドサイト-シス・パスウエイに由来する、約20~約200nmの小胞を意味する。エクソソームの構成成分としては、例えば、タンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーティングRNA)等が挙げられる。エクソソームは、細胞間コミュニケーションを司る機能を有しうる。エクソソームのマーカー分子としては、例えば、Alix、Tsg101、テトラスパニン(CD81、CD63、CD9)、flotillin、フォスファチジルセリン等が挙げられる。
【0073】
本明細書中で用いられる「微小小胞体」とは、細胞質膜に由来する、約50~約1000nmの小胞を意味する。微小小胞体の構成成分としては、例えば、タンパク質、核酸(mRNA、miRNA、ノン・コーティングRNA等)等が挙げられる。微小小胞体は、細胞間コミュニケーションを司る機能等を有しうる。微小小胞体のマーカー分子としては、例えば、インテグリン、セレクチン、CD40、CD154等が挙げられる。
【0074】
本明細書中で用いられる「アポトーシス小体」とは、細胞質膜に由来する、約500~約2000nmの小胞を意味する。アポトーシス小体の構成成分としては、例えば、断片化された核、細胞小器官(オルガネラ)等が挙げられる。アポトーシス小体は、ファゴサイトーシスを誘導する機能等を有しうる。アポトーシス小体のマーカー分子としては、例えば、Annexin V、フォスファチジルセリン等が挙げられる。
【0075】
本発明の一実施態様では、細胞外小胞が、エクソソームである、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0076】
細胞外小胞を分泌する細胞は、細胞外小胞を分泌できる細胞である限り特段限定されるものではないが、例えば、表皮細胞(ケラチノサイト等)、色素細胞(メラノサイト等)、基底細胞、有棘細胞、顆粒細胞、角質細胞、線維芽細胞、肥満細胞等の皮膚細胞;神経幹細胞、神経膠細胞、神経細胞、ミクログリア等の脳細胞;脂肪細胞(白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞等を含む)、間葉系幹細胞等の脂肪組織由来の細胞;これら以外の、リンパ球、上皮細胞、内皮細胞、筋肉細胞、神経細胞、線維芽細胞、毛細胞、肝細胞、胃粘膜細胞、腸細胞、脾細胞、膵細胞(膵外分泌細胞等)、肺細胞、腎細胞、間葉系細胞等;組織前駆細胞;造血幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄由来のもの、胎盤組織由来のもの、臍帯組織由来のもの、歯髄由来のもの、滑膜由来のもの等を含む)、その他の組織幹細胞(体性幹細胞);等の動物由来細胞、或いは、柔組織細胞、厚角組織細胞、厚壁組織細胞、木部細胞、師部細胞、表皮細胞等の植物由来細胞が挙げられ、これらは、生体内の細胞であってもよいし、初代培養細胞であっても、継代細胞であっても、株化細胞であってもよく、これらは正常細胞であっても、ガン化又は腫瘍化した細胞を含む病変細胞であってもよい。細胞外小胞を分泌する細胞は、動物由来細胞であることが好ましく、脳細胞、脂肪組織由来の細胞、間葉系幹細胞であることがより好ましく、脂肪組織由来の細胞、間葉系幹細胞であることが更に好ましく、間葉系幹細胞であることがより更に好ましい。
【0077】
本発明の一実施態様では、動物由来細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)である。
【0078】
本発明の一実施態様では、脳細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)である。
【0079】
本発明の一実施態様では、脂肪組織由来の細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)である。
【0080】
本発明の一実施態様では、間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)である。
【0081】
本発明の組成物(或いは、化合物)は、細胞外小胞の分泌を促進することができるため、細胞外小胞が関与しうる疾患の治療及び/又は予防に使用することができる。
【0082】
細胞外小胞が関与しうる疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患等に加え、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損、脱毛症等の細胞外小胞が関与しうるその他の疾患等が挙げられる。
【0083】
本発明の一実施態様では、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損又は脱毛症を治療及び/又は予防するための、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物、使用、方法)を提供する。
【0084】
本発明の別の実施態様では、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損又は脱毛症を治療及び/又は予防するための医薬を製造するための、本明細書中に記載の化合物の使用を提供する。
【0085】
本発明の別の実施態様では、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損又は脱毛症を治療及び/又は予防するための方法であって、それを必要とする被験体に本明細書中に記載の化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0086】
神経変性疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、前頭側頭葉変性症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、ハンチントン病、ジストニア、プリオン病、多系統委縮症、レビー小体病、ポリグルタミン病等が挙げられる。
【0087】
神経障害としては、これらに限定されるものではないが、例えば、外傷性脳障害、脊髄損傷、脳梗塞による障害等が挙げられる。
【0088】
ガンとしては、何れの固形ガン及び血液ガンが含まれ、これらに限定されるものではないが、例えば、小細胞肺ガン、非小細胞肺ガン、乳ガン、食道ガン、胃ガン、小腸ガン、大腸ガン、結腸ガン、直腸ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、骨髄ガン、腎臓ガン(腎細胞ガン等を含む)、副甲状腺ガン、副腎ガン、尿管ガン、肝ガン、胆管ガン、子宮頸ガン、卵巣ガン(例えば、その組織型が、漿液性腺ガン、粘液性腺ガン、明細胞腺ガン等)、精巣ガン、膀胱ガン、外陰部ガン、陰茎ガン、甲状腺ガン、頭頸部ガン、頭蓋咽頭ガン、咽頭ガン、舌ガン、皮膚ガン、メルケル細胞ガン、黒色腫(悪性黒色腫等)、上皮ガン、扁平上皮細胞ガン、基底細胞ガン、小児ガン、原発不明ガン、繊維肉腫、粘膜肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原生肉腫、脊索腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、カポジ肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、精上皮腫、ウィルムス腫瘍、脳腫瘍、神経膠腫、膠芽腫、星状細胞腫、骨髄芽腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、網膜芽細胞腫、脊椎腫瘍、悪性リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫等)、単球性白血病(慢性又は急性)、慢性又は急性リンパ球性白血病、成人T細胞白血病等が挙げられる。
【0089】
心疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、心筋梗塞、虚血性心疾患、うっ血性心不全、不整脈、肥大型心筋症、拡張型心筋症、心筋炎、弁膜症等が挙げられる。
【0090】
免疫系疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、移植片対宿主病(Giebel B et al.Stem Cell Investig.2017 Oct 24;4:84等を参照)、炎症性腸疾患、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス等が挙げられる。
【0091】
腎臓疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、急性腎障害、腎炎、慢性腎臓病、糖尿病性腎症、多発性嚢胞等が挙げられる。
【0092】
線維化疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、肝線維症、肝硬変、肺線維症、特発性肺線維症、腎線維症等が挙げられる。
【0093】
代謝疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、肥満、糖尿病等が挙げられる。
【0094】
眼疾患としては、これらに限定されるものではないが、例えば、視力障害、近視、加齢黄斑変性症等が挙げられる。
【0095】
本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)は、被験体において細胞外小胞の分泌を促進するために(好ましくは、細胞外小胞が関与しうる疾患を治療又は予防するために)、被験体に直接投与してもよい。
【0096】
細胞外小胞の分泌を促進する対象となる被験体は、これらに限定されるものではないが、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類;ウサギ等のウサギ目;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄類;イヌ、ネコ等のネコ目;ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジー等の霊長類;等の哺乳動物等の動物、或いは植物が挙げられるが、好ましくは動物であり、より好ましくはげっ歯類又は霊長類であり、更に好ましくは霊長類であり、より更に好ましくはヒトである。
【0097】
本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)は、in vitro又はex vivo等で細胞等に接触させてもよい。或いは、in vitro又はex vivo等において、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)中で細胞を培養してもよい。
【0098】
したがって、本発明の一実施態様では、本明細書中に記載の組成物は、培地組成物である。
【0099】
例えば、本明細書中に記載の組成物を培地組成物として用いる場合、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩の他に、本発明の目的を達成できる限り、必要に応じて、例えば、基礎培地や、血清、成長因子、鉄源、ポリアミン、微量金属、糖類、有機酸、アミノ酸及びその誘導体、還元剤、ビタミン及びその誘導体、ステロイド、抗生物質、緩衝剤、無機塩、pH調整剤、タンパク質(酵素等を含む)、各種の活性化剤・阻害剤等の添加剤を加えることができる。基礎培地や添加剤の添加量は、本発明の目的を達成できる限り特段限定されるものではなく、当業者が適宜選択することができる。
【0100】
基礎培地としては、これらに限定されるものではないが、例えば、DMEM、EMEM、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、GMEM(Glasgow’s MEM)、RPMI-1640、α-MEM、Ham’s medium F-10、Ham’s medium F-12、Ham’s medium F12K、Medium 199、ATCC-CRCM30、DM-160、DM-201、BME、Fischer、McCoy’s 5A、Leibovitz’s L-15、RITC80-7、MCDB105、MCDB107、MCDB131、MCDB153、MCDB201、NCTC109、NCTC135、Waymouth’s MB752/1、CMRL-1066、Williams’ medium E、Brinster’s BMOC-3 medium、E8 medium(Nature Methods,2011,8,424-429)、ReproFF、ReproFF2等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
血清としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ウシ胎仔血清、仔ウシ血清、ウマ血清、ヒト血清等の哺乳類動物由来の血清が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
成長因子としては、これらに限定されるものではないが、例えば、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、トロンボポエチン(TPO)、肝細胞増殖因子(HGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGF-β)、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
鉄源としては、これらに限定されるものではないが、例えば、トランスフェリン、フェリチン、硫酸鉄(II)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
ポリアミンとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、スペルミン、スペルミジン、ノルスペルミン、ノルスペルミジン、ホモスペルミン、ホモスペルミジン、カダベリン、プトレシン、アグマチン、オルニチン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
微量金属としては、これらに限定されるものではないが、例えば、マグネシウム、亜鉛、コバルト、スズ、モリブデン、ニッケル、セレン及びその関連物質(亜セレン酸ナトリウム等を含む)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
糖類としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース、スクロース等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0107】
有機酸としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ピルビン酸、乳酸、リノレイン酸、リノール酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
アミノ酸及びその誘導体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、グリシン、L-アラニン、L-セリン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-アルギニン、L-リシン、L-アスパラギン、L-グルタミン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-メチオニン、L-システイン、L-プロリン、L-スレオニン、L-ヒスチジン、L-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-チロシン、L-カルニチン、L-オルニチン、グルタチオン(還元型を含む)等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0109】
還元剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
ビタミン及びその誘導体としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ビタミンA及びその誘導体(ビタミンA酢酸エステル等を含む)、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びその誘導体(酢酸DL-α-トコフェロール等を含む)、ビタミンK、ビオチン、葉酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
ステロイドとしては、これらに限定されるものではないが、例えば、β-エストラジオール、プロゲステロン、コルチコステロン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
抗生物質としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
緩衝剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、HEPES等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0114】
無機塩としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸銅、硝酸鉄(II)、硫酸鉄、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
pH調整剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
タンパク質(酵素等を含む)としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ヒトアルブミン、ウシ血清アルブミン、スーパーオキシドジムスターゼ、カタラーゼ等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0117】
各種の活性化剤・阻害剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、Wnt-3a、Wnt-5a、塩化リチウム、補体分子C1q等のWntシグナル活性化剤;Y-27632、K-115(リパスジル塩酸塩水和物)、HA1077(塩酸ファスジル)等のRhoキナーゼ(ROCK)阻害剤;等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0118】
本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の組成物(好ましくは、培地組成物)(或いは、化合物)を用いる、in vitro又はex vivoで細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための方法を提供する。
【0119】
本発明の別の好ましい実施態様では、本明細書中に記載の組成物(好ましくは、培地組成物)(或いは、化合物)を細胞に接触させる工程を含む、in vitro又はex vivoで細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するための方法を提供する。
【0120】
本明細書中に記載の方法を用いることにより、例えば、培養上清中に細胞から細胞外小胞が分泌されうる。
【0121】
したがって、本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の方法により得られてなる、培養上清を提供する。
【0122】
本明細書中に記載の培養上清には、細胞外小胞が含まれうる。
【0123】
したがって、本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の培養上清から得られてなる、細胞外小胞を提供する。
【0124】
上述したとおり、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)と共にin vitro又はex vivoで細胞を培養すると、例えば培養上清中に細胞外小胞が分泌されうる。したがって、本発明の別の実施態様では、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)を用いる、in vitro又はex vivoで細胞外小胞を製造するための方法を提供する。また、本発明の好ましい別の実施態様では、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)と細胞とを接触させること(好ましくは、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)と共に細胞を培養すること)を含む、細胞外小胞を製造するための方法を提供する。
【0125】
例えば、培養上清等に細胞外小胞が含まれる場合、該細胞外小胞は、公知又は周知の方法(例えば、遠心分離、限外濾過、抗体を用いた精製、カラムを用いた精製等)により、精製、濃縮、単離等をすることができる。
【0126】
本明細書中に記載の方法により得られた細胞外小胞(又は、これを含む培養上清等)は、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患等に加え、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損、脱毛症等の細胞外小胞が関与しうるその他の疾患の治療及び/又は予防に有用でありうる。
【0127】
本発明の一実施態様では、神経疾患(神経変性疾患、神経障害等を含む)、ガン、心疾患、免疫系疾患、腎臓疾患、線維化疾患、代謝疾患、眼疾患、創傷、変形性関節症、骨損傷、筋骨格欠損又は脱毛症を治療及び/又は予防するための、本明細書中に記載の方法により得られた細胞外小胞(又は、これを含む培養上清等)を含む組成物(例えば、医薬組成物)を提供する。
【0128】
本明細書中に記載の組成物は、医薬又は化粧組成物として用いてもよい。また、本明細書中に記載の培養上清は、医薬や化粧用途に用いてもよい。或いは、例えば、公知の方法等により本明細書中に記載の培養上清から細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものや、これを製剤化等したものを医薬や化粧用途に用いてもよい。
【0129】
本明細書中に記載の組成物を例えば医薬又は化粧組成物等として用いる場合、本明細書中に記載の組成物には、これらに限定されるものではないが、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、界面活性剤等の添加剤を含むことができる。
【0130】
また、本明細書中に記載の培養上清、又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものを、例えば医薬又は化粧組成物として用いる場合、該培養上清、又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものには、これらに限定されるものではないが、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、pH調整剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、界面活性剤等の添加剤を添加してもよい。
【0131】
賦形剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、乳糖水和物、白糖、ブドウ糖、デンプン、ショ糖、結晶セルロース、マンニトール等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
滑沢剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
結合剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、アラビアゴム、結晶セルロース、白糖、マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
崩壊剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスカルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0135】
pH調整剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、酢酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸及びこれらの塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0136】
溶剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、水道水、常水、蒸留水、精製水、注射用水等の水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;アセトン;酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の単一の脂肪酸又はそのエステル;ゴマ油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、ヒマシ油、ナタネ油、ヒマワリ油等の植物性油;プロピレングリコール;マクロゴール等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0137】
溶解補助剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリエチレングリコール;プロピレングリコール;シクロデキストリン;マンニトール等の糖アルコール;安息香酸ベンジル;トリスアミノメタン;コレステロール;トリエタノールアミン;炭酸ナトリウム;クエン酸ナトリウム;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール;酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の単一の脂肪酸又はそのエステル;ゴマ油、ピーナッツ油、ヤシ油、パーム油、大豆油、オリーブ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、ヒマシ油、ナタネ油、ヒマワリ油等の植物性油等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0138】
懸濁化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、モノステアリン酸グリセリン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
等張化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、マンニトール等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
緩衝剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等、及びこれらを含有する緩衝液等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0141】
無痛化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0142】
防腐剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸カルシウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸、プロピオン酸ナトリウム、プロピオン酸カルシウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ナタマイシン、ピマリシン、ポリリジン、ナイシン、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラハイドロキシ安息香酸イソプロピル、イソプロピルパラベン等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
抗酸化剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
着色剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、黄色三二酸化鉄、黒色酸化鉄、食用黄色4号、食用赤色3号、タール色素、カラメル、酸化チタン、リボフラビン類等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0145】
甘味剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ショ糖、フルクトース等の糖類;キシリトール、ソルビトール等の糖アルコール;アスパルテーム、アセスルファカリウム、スクラロース等の人工甘味料等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0146】
界面活性剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば、ポリソルベート類、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
本明細書中に記載の組成物、又は本明細書中に記載の培養上清若しくはこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものは、上述した添加剤と共に、自体公知の方法により、例えば、錠剤、被覆錠剤、口腔内崩壊錠、チュアブル剤、丸剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、液剤(例えば、シロップ剤、注射剤、ローション剤等を含む)、懸濁剤、乳剤、ゼリー剤、貼付剤、軟膏剤、クリーム剤、吸入剤、坐剤等に製剤化することができる。これらは、経口剤であってもよいし、非経口剤であってもよい。製剤化されたものは、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、本明細書中に記載の培養上清又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものだけではなく、その目的に応じて、有益な他の成分(例えば、治療上又は化粧上有益な他の成分)を含んでもよい。
【0148】
錠剤の場合であれば、例えば、以下のようにして製剤化することができる。
式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、本明細書中に記載の培養上清又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものと、賦形剤、崩壊剤、結合剤等とを混合し、水と共に造粒する。得られた顆粒を乾燥し、該顆粒を必要に応じて粉砕する。そして、これに滑沢剤等を加えて更に混合し、これを圧縮成形することで錠剤を得ることができる。
【0149】
硬カプセル剤の場合であれば、例えば、以下のようにして製剤化することができる。
式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、本明細書中に記載の培養上清又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものと、賦形剤等とを混合し、これに滑沢剤等を加え、更に混合する。そして、得られた混合物を硬カプセル(例えば、ゼラチンカプセル等)に充填することで、硬カプセル剤を得ることができる。
【0150】
注射剤であれば、例えば、以下のようにして製剤化することができる。
式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、本明細書中に記載の培養上清又はこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したものと、溶解補助剤、水等とを混合し、ここに、pH調整剤等を加えた後、更に水を加えて所望の容量に調節する。これを、必要に応じて、ろ過、滅菌等することで、注射剤を得ることができる。
【0151】
本明細書中に記載の組成物中又はこれを製剤化したもの中の、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩の含有量は、例えば、該組成物又はこれを製剤化したもの全体に対して、約0.01~約99.9質量%、好ましくは約0.1~約80質量%、より好ましくは約1%~約50質量%であることができる。或いは、本明細書中に記載の組成物中又はこれを製剤化したもの中の、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩の含有量は、例えば、該組成物又はこれを製剤化したもの全体に対して、約0.001~約1000μmol、好ましくは約0.01~約100μmol、より好ましくは約0.1~約50μmolであることができる。
【0152】
本明細書中に記載の培養上清若しくはこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したもの、或いはこれを製剤化したもの中の細胞外小胞の含有量は、例えば、本明細書中に記載の培養上清若しくはこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したもの、或いはこれらを製剤化したもの全体に対して、約0.01~約99.9質量%、好ましくは約0.1~約80質量%、より好ましくは約1~約50質量%であることができる。
【0153】
本明細書中に記載の組成物又はこれを製剤化したものの投与量は、投与する被験体の性別、年齢、体重、健康状態、病状の程度若しくは食事;投与時間;投与方法;他の薬物との組み合わせ;その他の要因を考慮して適宜決定することができる。
本明細書中に記載の組成物又はこれを製剤化したものの投与量は、特段限定されるものではないが、例えば、式Iの構造を有する化合物、そのラセミ体若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは式IIの構造を有する化合物、若しくはその立体異性体、又はその塩、或いは、ククルビタシン、若しくはその立体異性体、又はその塩として、一日当たり約0.01~約10mg/kg体重、好ましくは約0.05~約5mg/kg体重、より好ましくは約0.1~約1mg/kg体重であることができる。これらは、単回投与してもよいし、2回以上に分けて投与してもよい。但し、必要に応じて、上述した投与量の範囲を超えてもよい。
投与スケジュールとしては、投与する被験体の性別、年齢、体重、健康状態、病状の程度若しくは食事;投与時間;投与方法;他の薬物との組み合わせ;その他の要因を考慮して決定することができるが、例えば、毎日、二日に1回、三日に1回、一週に1回、一月に1回、三月に1回、六月に1回等が挙げられる。
【0154】
本明細書中に記載の培養上清若しくはこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したもの又はこれを製剤化したものの投与量は、投与する被験体の性別、年齢、体重、健康状態、病状の程度若しくは食事;投与時間;投与方法;他の薬物との組み合わせ;その他の要因を考慮して適宜決定することができる。
本明細書中に記載の培養上清若しくはこれから細胞外小胞を精製、濃縮、単離等したもの又はこれを製剤化したものの投与量は、特段限定されるものではない。これらは、単回投与してもよいし、2回以上に分けて投与してもよい。
投与スケジュールとしては、投与する被験体の性別、年齢、体重、健康状態、病状の程度若しくは食事;投与時間;投与方法;他の薬物との組み合わせ;その他の要因を考慮して決定することができるが、例えば、毎日、二日に1回、三日に1回、一週に1回、一月に1回、三月に1回、六月に1回等が挙げられる。
【実施例】
【0155】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、これら実施例は、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0156】
[実施例1](±)-ゴシポール酢酸塩
【化25】
実施例1の化合物は、MedChem Express社製のもの(商品コード:HY-17510、CAS登録番号:12542-36-8)を用いた。
【0157】
[実施例2](S)-ゴシポール酢酸塩
【化26】
実施例2の化合物は、MedChem Express社製のもの(商品コード:HY-1546D、CAS登録番号:1189561-66-7)を用いた。
【0158】
[実施例3](+)-アポゴシポール
【化27】
実施例3の化合物は、Apex Bio社製のもの(商品コード:B4902、CAS登録番号:66389-74-0)を用いた。
【0159】
[実施例4](R)-(-)-ゴシポール
【化28】
実施例4の化合物は、Sigma社製のもの(商品コード:SML0433、CAS登録番号:90141-22-3)を用いた。
【0160】
[実施例8]サブトクラックス
【化29】
実施例8の化合物は、Apex Bio社製のもの(商品コード:A4199、CAS登録番号:1228108-65-3)を用いた。
【0161】
[実施例5]オバトクラックス メシル酸塩
【化30】
実施例5の化合物は、Santa cruz社製のもの(商品コード:sc-364221、CAS登録番号:803712-79-0)を用いた。
【0162】
[実施例6]プロジギオシン塩酸塩
【化31】
実施例6の化合物は、Sigma社製のもの(商品コード:P0103、CAS登録番号:56144-17-3)を用いた。
【0163】
[実施例7]ウンデシルプロジギオシン塩酸塩
【化32】
実施例7の化合物は、Sigma社製のもの(商品コード:SML1576、CAS登録番号:56247-02-0)を用いた。
【0164】
[実施例9]ククルビタシンB
【化33】
実施例9の化合物は、MedChem Express社製のもの(商品コード:HY-N0416、CAS登録番号:6199-67-3)を用いた。
【0165】
[試験例1:細胞外小胞の分泌促進の評価1]
<培養上清の調製>
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。次に、U-87 MG細胞(ATCC社製、HTB-14TM)を、0.03%(w/v%)SphereMax(商標)(日産化学社製)(国際公開第2016/167373号の試験例10に記載の低分子寒天含有培地組成物)及び2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有するAdvanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
4cells/81μLに懸濁し、超低接着表面384ウェル黒クリアボトムプレート(Corning社製、#3827)に播種した。播種したU-87 MG細胞に、Advanced DMEM(2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有)中に調製した実施例1,5の化合物溶液 9μL(終濃度;実施例1:10μM、実施例5:5μM)を添加し、24時間培養した。その後、プレートを1200×g、4℃、1時間の遠心条件で遠心することで細胞を沈殿させ、培養上清を回収した。培養上清中に含まれる細胞外小胞の検出には、後述するTim4-CD63 ELISA法又はTim4-CD9 ELISA法を用いた。
結果を
図1A及び
図1Bに示す。
<Tim4-CD63 ELISA法>
Carbonate Buffer(71.4mM NaHCO
3、及び28.6mM Na
2CO
3を含有する溶液)中に調製した1μg/mL Tim4タンパク質を384ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific社製、#464718)に添加し、固相化した。384ウェルプレートを0.05%(v/v%)Tween20含有TBS(Tris-Buffer Saline)溶液(以下、「TBST溶液」と称することもある。)で洗浄した後に、1%(w/v%)BSAを含有するTBST溶液 50μL/wellを添加して1時間のブロッキング処理を行った。次に、上記で回収した培養上清 30μLをウェルに添加し、更に8mM CaCl
2溶液 10μLを添加することでTim4タンパク質に細胞外小胞を結合させた。この際、比較対象として、化合物未処置の培養上清(溶媒のみ、control)を同様にTim4タンパク質固相化プレートに添加した。続いて、2mM CaCl
2を含有するTBST溶液で希釈した1μg/mL Anti-human CD63 Antibody(BioLegend社製、#353014) 30μL/wellを添加し、1時間反応させた。2mM CaCl
2を含有するTBST溶液 50μL/wellを添加し、その後、TBST溶液を除去した。この操作を3回繰り返した後、2mM CaCl
2を含有するTBST溶液で希釈した80ng/mL HRP-conjugated Anti-mouse IgG(BioLegend社製、#405306) 30μL/wellを添加し、1時間反応させた。最後に、TMB溶液(ナカライテスク社製、#05298-80) 30μL/wellを添加し、30分間反応させた後、1M H
2SO
4溶液 30μL/wellを添加することで反応を停止させ、450nmの吸光度を測定することにより細胞外小胞量を定量した。化合物未処置群(control)を1とした際の相対値を算出した。
<Tim4-CD9 ELISA法>
Tim4-CD9 ELISA法は、上述したTim4-CD63 ELISA法において、1μg/mL Anti-human CD63 Antibodyを0.5μg/mL Anti-human CD9 Antibody(BioLegend社製、#312102)に置き換えた以外、同様の方法で行った。
【0166】
[試験例2:細胞傷害性の評価1]
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。U-87 MG細胞(ATCC、HTB-14TM)を、SphereMax(商標)(日産化学社製)(国際公開第2016/167373号の試験例10に記載の低分子寒天含有培地組成物)を0.03%(w/v%)含有させた2%(v/v%)Exosome-free FBS含有Advanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
4cells/81μLに懸濁し、超低接着表面384ウェル黒クリアボトムプレート(Corning社製、#3827)に播種した。播種したU-87 MG細胞にAdvanced DMEM(2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有)中に調製した実施例1,5の化合物溶液 9μL(終濃度;実施例1:10μM、実施例5:5μM)を添加し、24時間培養した。24時間後、プレートを1200×g、4℃、1時間の遠心条件で細胞を沈殿させ、20μLの培養上清を384ウェルマイクロプレート(Greiner bio-one社製、#781101)に移した。培養上清中に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)の活性は、Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST(同仁化学研究所社製、#CK12)を用いて測定した。500tests分のDye Mixtureに5mLのAssay Bufferを加えて溶解し、Working Solutionを調製した。20μLの培養上清を移した384ウェルマイクロプレートに20μLのWorking Solutionを添加し、よく混和した後に、室温で30分間呈色反応を行った。10μLのStop Solutionを添加することで反応を停止させ、490nmの吸光度を測定することで細胞傷害性を評価した。死細胞群(培養上清回収の15分前に、化合物未処置細胞に9μLのLysis Bufferを添加したサンプル(Lysed cells))及び化合物を添加せずに培養した際の培養上清も同様にLDHの活性を測定し、ポジティブコントロール(Lysed cells)の測定値を100%の細胞傷害性として、化合物による細胞傷害性を評価した。
結果を
図2に示す。
【0167】
[試験例3:細胞外小胞の分泌促進の評価2]
<培養液の調製>
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12977)を8×10
4cells/1.8mLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)中に懸濁し、6ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3516)に播種した。播種したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物溶液、又は間葉系幹細胞増殖培地2のみ(control)を200μL添加し、24時間培養した後、培養液を回収した。続いて、回収した培養液を20000×g、4℃、60分間遠心することで、細胞断片及びLarge Extracellular Vesiclesを除いた培養液を調製した。細胞外小胞の検出には、PS Capture(商標)エクソソームELISAキット(抗マウスIgG POD)(富士フイルム和光純薬社製、#297-79201)を用いた。
<PS Capture(商標) エクソソームELISAキットによる検出>
Reaction/Washing Buffer(10×)を精製水で10倍希釈したものに100分の1量のExosome Binding Enhancer(100×)を添加し、反応/洗浄液(1×)を調製した。上記で調製した培養液は、反応/洗浄液(1×)で5倍に希釈した。Exosome Capture 96ウェルプレートを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、5倍希釈した各培養液、又は細胞を培養していない間葉系幹細胞増殖培地2のみを各ウェルに添加し、マイクロプレート振とう器で振とうしながら、室温で2時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したControl Primary Antibody Anti-CD63(×100)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうしながら、室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したSecondary Antibody HRP-conjugated Anti-mouse IgG(100×)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうしながら、室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で5回洗浄した後、TMB Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で1分間振とうした後に、室温で30分間反応させた。反応終了後、Stop Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で5秒間振とうした後、Enspire(PerkinElmer社製)で450nm及び620nmの吸光度を測定し、各ウェルについて、450nmにおける吸光度から620nmにおける吸光度を減算した。
結果を、表1及び表2、並びに
図3A及び
図3Bに示す。
【0168】
【0169】
【0170】
[試験例4:細胞傷害性の評価2]
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12977)を8×10
4cells/1.8mLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)中に懸濁し、6ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3516)に播種した。播種したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物溶液、又は間葉系幹細胞増殖培地2のみ(control)を200μL添加し、24時間培養後、培養液を回収した。回収した培養液中に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)の活性は、LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ社製、MK401)を用いて以下のように測定した。Solution Aの凍結乾燥品に精製水 1mLを添加して完全に溶解させた後、250μLのSolution Aと11.25mLのSolution Bを混合し、Solution Cを調製した。回収した培養液 100μLにSolution Cを100μL添加し、室温で30分間反応させた。Enspire(PerkinElmer社製)を用いて、490nmの吸光度を測定した。
結果を、表3及び表4、並びに
図4A及び
図4Bに示す。
【0171】
【0172】
【0173】
[試験例5:細胞増殖活性の評価1]
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12977)を2×10
3cells/90μLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)中に懸濁し、96ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3585)に播種した。播種したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物溶液、又は間葉系幹細胞増殖培地2のみ(control)を10μL添加し、24時間培養した。続いて、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製、G7570)を用いて、以下のように生細胞数の測定を行った。CellTiter-Glo(商標) BufferにCellTiter-Glo(商標) Substrateを溶解させた溶液 100μL/ウェルを、上記96ウェル細胞培養処理プレートの各ウェルに添加した後、100μLを96ウェル細胞培養処理白色プレート(Corning社製、356701)に移し、Enspire(PerkinElmer社製)で発光度を測定した。
結果を、表5及び表6、並びに
図5A及び
図5Bに示す。
【0174】
【0175】
【0176】
[試験例6:細胞外小胞の薬理評価(低酸素処理下の細胞に対する薬理評価)]
<ヒト脂肪組織由来間葉系細胞に由来する細胞外小胞の調製>
ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12977)を4×105cells/10mLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)に懸濁し、100mm細胞培養表面処理済みディッシュ(コーニング社製、#430167)に播種して、37℃、5%CO2下で4日間培養した。4日後にPBS(-)(富士フイルム和光純薬社製、#166-23555)で洗浄後、実施例2及び5の化合物を終濃度がそれぞれ2μM及び50nMとなるようにD-MEM(低グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド含有)(富士フイルム和光純薬社製、#041-29775)培地中に調製し、これを10mL添加して更に2日間培養した。対照として、ジメチルスルホキシドを同濃度含有するD-MEM(低グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド含有)培地も調製し、添加したものも用意した。2日後に、それぞれの培養上清を回収した。細胞外小胞の精製にはCapturem(商標) Exosome Isolation Kit(Cell Culture)(タカラバイオ社製、#635723)を用いた。回収した培養上清を50mLの遠沈管に移した後、2000×gで10分間遠心した。続いて、Exosome Isolation Pre-Cleaning Columnに培養上清を移し、1000×gで4分間遠心した。遠心後の培養上清をCapturem Maxiprep Exosome Isolation Columnに移し、1000×gで4分間遠心した。遠心後、Exosome Isolation Columnを新しい50mL遠沈管に移し、10mLのExosome Isolation Wash Bufferを添加して1000×gで2分間遠心した。最後にExosome Isolation Columnを新しい50mL遠沈管に移し、500μLのExosome Isolation Elution Bufferを添加して、1000×gで2分間遠心した。回収した細胞外小胞溶液を、アミコンウルトラ(Amicon Ultra)-0.5、PLGCウルトラセル(Ultracel)-10メンブレン、10kDaを用いてPBS(-)に置換した。回収した細胞外小胞溶液中に含まれる細胞外小胞の検出には、PS Capture(商標) エクソソームELISAキット(抗マウスIgG POD)(富士フイルム和光純薬社製、#297-79201)を用いた。
結果を、表7に示す。
<PS Capture(商標) エクソソームELISAキット>
Reaction/Washing Buffer(10×)を精製水で10倍に希釈して調製したReaction/Washing Buffer(1×)に、100分の1量のExosome Binding Enhancer(100×)を添加することにより、反応/洗浄液(1×)を調製した。各細胞外小胞溶液を、反応/洗浄液(1×)で400倍に希釈した。Exosome Capture 96ウェルプレートを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、5倍希釈した各細胞外小胞溶液、又は細胞を培養していない間葉系幹細胞増殖培地2(ネガティブコントロール)を各ウェルに添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で2時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したControl Primary Antibody Anti-CD63(×100)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したSecondary Antibody HRP-conjugated Anti-mouse IgG(100×)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で5回洗浄した後、TMB Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で1分間振とうさせた後に室温で30分間反応させた。反応終了後、Stop Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で5秒間振とうさせた後、Enspire(PerkinElmer社製)で450nm及び620nmの吸光度を測定した。得られた測定値をもとに、450nmの吸光度から620nmの吸光度を差し引いた値(ΔAbs)を算出した。
【0177】
【0178】
<生細胞数の評価>
H9C2細胞(ATCC社製、#CRL-1446)を、10%exosome depleted FBS(Thermo Fisher Scientific社製、#A2720803)含有D-MEM(高グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有)で50000cells/mLとなるように懸濁し、96ウェル透明平底細胞培養表面処理プレート(Corning社製、#3585)に100μL/ウェルで播種し、37℃、5%CO
2下で1日間培養した。1日後、D-MEM(高グルコース)(L-グルタミン、フェノールレッド、ピルビン酸ナトリウム含有)で調製した1M塩化コバルト溶液(富士フイルム和光純薬社製、#036-03682)を終濃度が1mMとなるように50μL/ウェルで添加し、更に37℃、5%CO
2下で1日培養した(day2)。1日後に培地を除去し、新鮮培地150μL、又は新鮮培地100μLと上記で調製した各細胞外小胞溶液50μLとを混合したものを添加し、4日間培養した(day6)。4日後、細胞生存率を測定するために、ATP試薬150μL(CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay、Promega社製)を各ウェルに添加して混合した後、10分間静置した。10分後に各ウェルから100μLを測定用のプレートに移し、Enspire(Perkin Elmer社製)にて発光強度(RLU値)を測定した。各測定値から培地のみの発光値を差し引くことで、生細胞の数を測定した。
結果を、表8及び
図6に示す。
【0179】
【0180】
[試験例7:細胞外小胞の分泌促進の評価3]
<培養液の調製>
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞又はヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12974、#C-12971)を8×10
4cells/1.8mLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)に懸濁し、6ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3516)に播種した。播種した間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物を200μL添加し、24時間培養した後に培養液を回収した。続いて、回収した培養液を20000×g、4℃、60分間遠心し、細胞断片及びLarge Extracellular Vesiclesを除いた培養液を調製した。細胞外小胞の検出には、PS Capture(商標) エクソソームELISAキット(抗マウスIgG POD)(富士フイルム和光純薬社製、#297-79201)を用いた。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の結果を表9及び
図7Aに、ヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の結果を表10及び
図7Bに示す。
<PS Capture(商標) エクソソームELISAキット>
Reaction/Washing Buffer(10×)を精製水で10倍に希釈して調製したReaction/Washing Buffer(1×)に100分の1量のExosome Binding Enhancer(100×)を添加することにより、反応/洗浄液(1×)を調製した。各培養液を、反応/洗浄液(1×)で5倍に希釈した。Exosome Capture 96ウェルプレートを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、5倍希釈した各培養液、又は細胞を培養していない間葉系幹細胞増殖培地2(ネガティブコントロール)を各ウェルに添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で2時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したControl Primary Antibody Anti-CD63(×100)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で3回洗浄した後、反応/洗浄液(1×)で1000倍希釈したSecondary Antibody HRP-conjugated Anti-mouse IgG(100×)を100μL添加し、マイクロプレート振とう器で振とうさせながら室温で1時間反応させた。反応終了後に反応液を捨て、各ウェルを300μLの反応/洗浄液(1×)で5回洗浄した後、TMB Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で1分間振とうさせた後に室温で30分間反応させた。反応終了後、Stop Solutionを100μL添加し、マイクロプレート振とう器で5秒間振とうさせた後、Enspire(PerkinElmer社製)で450nm及び620nmの吸光度を測定した。得られた測定値をもとに、450nmの吸光度から620nmの吸光度を差し引いた値を算出し、化合物未処置群(control)を1とした際の相対値を算出した。
【0181】
【0182】
【0183】
[試験例8:細胞傷害性の評価3]
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞又はヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12974、#C-12971)を8×10
4cells/1.8mLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)に懸濁し、6ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3516)に播種した。播種した間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物を200μL添加し、24時間培養した後に培養液を回収した。回収した培養液中に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)の活性を、LDH Cytotoxicity Detection Kit(タカラバイオ社製、MK401)を用いて測定した。Solution Aの凍結乾燥品に精製水1mLを添加して、完全に溶解させた後、250μLのSolution Aと11.25mLのSolution Bを混合し、Solution Cを調製した。回収した培養液100μLにSolution Cを100μL添加し、室温で30分間反応させた。Enspire(PerkinElmer社製)を用いて、490nmの吸光度を測定した。得られた測定値をもとに、化合物未処置群(control)の値を1とした際の相対値を算出した。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の結果を表11及び
図7Cに、ヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の結果を表12及び
図7Dに示す。
【0184】
【0185】
【0186】
[試験例9:細胞増殖活性の評価2]
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞又はヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞(タカラバイオ社製、#C-12974、#C-12971)を2×10
3cells/90μLとなるように間葉系幹細胞増殖培地2(タカラバイオ社製、C-28009)に懸濁し、96ウェル細胞培養処理プレート(Corning社製、3585)に播種した。播種した間葉系幹細胞に、間葉系幹細胞増殖培地2で10倍濃度に希釈した実施例1~8の化合物を10μL添加し、24時間培養した。次に、以下の方法により、CellTiter-Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製、G7570)を用いて生細胞数を測定した。
CellTiter-Glo(登録商標) BufferにCellTiter-Glo(登録商標) Substrateを溶解させた。調製した溶液を100μL/ウェルで各ウェルに添加した後、100μLを96ウェル細胞培養処理白色プレート(Corning社製、356701)に分注し、Enspire(PerkinElmer社製)で発光度を測定した。化合物未処置群(control)を1とした際の相対値を算出した。
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の結果を表13及び
図7Eに、ヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の結果を表14及び
図7Fに示す。
【0187】
【0188】
【0189】
[試験例10:細胞外小胞の分泌促進の評価4]
<培養上清の調製>
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。次に、293細胞(ATCC社製、CRL-1573TM)又は293T細胞(ATCC社製、CRL-3216TM)を2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有するAdvanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
4cells/200μLに懸濁し、接着表面96ウェルプレート(CORNING社製、#3595)に播種し、24時間の前培養を行った。24時間後、培養液を除去し、2%(v/v%)Exosome-free FBS含有するAdvanced DMEM 199.5μLと、DMSO中に調製した実施例1、5又は9の化合物0.5μL(終濃度:0~1μM)との混合液を添加し、24時間培養した。その後、培養液を1.5mLチューブに回収し、300×g、4℃、5分間の遠心条件で細胞を沈殿させ、培養上清を回収した。続いて、回収した培養上清を2000×g、4℃、20分間の遠心条件で細胞断片を沈殿させ、上清を回収した。更に、回収した上清を10000×g、4℃、30分間の条件で遠心し、上清を回収した。10000×gの遠心後の上清中に含まれる細胞外小胞の検出には、後述するTim4-ヒトCD63 ELISA法及びTim4-ヒトCD81ELISA法を用いた。
293細胞の結果を
図8Aに、293T細胞の結果を
図8Bに示す。
<Tim4-ヒトCD63 ELISA法>
Carbonate Buffer(71.4mM NaHCO
3、28.6mM Na
2CO
3を含有する溶液)中で調製した1μg/mL Tim4タンパク質を96ウェルプレート(IWAKI社製、#3801-096)に100μL/well添加し、固相化した。96ウェルプレートをTBST溶液で洗浄した後に、1%(w/v%)BSAを含有するTBST溶液 200μL/wellを添加して1時間のブロッキング処理を行った。次に、上記で回収した上清 90μLをウェルに添加し、更に20mM CaCl
2溶液 10μLを添加することでTim4タンパク質に細胞外小胞を結合させた。続いて、2mM CaCl
2を含有するTBST溶液で希釈した1μg/mL Anti-human CD63 Antibody(BioLegend社製、#353014)100μL/wellを添加し、1時間反応させた。2mM CaCl
2を含有するTBST溶液 200μL/wellを添加し、その後、TBST溶液を除去した。この操作を3回繰り返した後、2mM CaCl
2を含有するTBST溶液で希釈した80ng/mL HRP-conjugated Anti-mouse IgG(BioLegend社製、#405306)100μL/wellを添加し、1時間反応させた。最後に、TMB溶液(Nacalai tesque社製、#05298-80) 100μL/wellを添加し、30分間反応させた後、1M H
2SO
4溶液 100μL/wellを添加することで反応を停止させ、450nmの吸光度を測定することにより細胞外小胞の量を定量した。
<Tim4-ヒトCD81ELISA法>
Tim4-ヒトCD81 ELISA法は、上述したTim4-ヒトCD63 ELISA法において、1μg/mL Anti-human CD63 Antibodyを0.5μg/mL Anti-human CD81 Antibody(BioLegend社製、#349502)に置き換えた以外、同様の方法で行った。
【0190】
[試験例11:細胞外小胞の分泌促進の評価5]
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。次に、293細胞(ATCC社製、CRL-1573TM)又は293T細胞(ATCC社製、CRL-3216TM)を2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有するAdvanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
5cells/1000μLに懸濁し、接着表面12ウェルプレート(CORNING社製、#3513)に播種し、24時間の前培養を行った。24時間後、培養液を除去し、2%(v/v%)Exosome-free FBS含有するAdvanced DMEM 999μLと、DMSO中に調製した実施例1、5又は9の化合物1μL(終濃度:0~1μM)との混合液を添加し、24時間培養した。その後、培養液を1.5mLチューブに回収し、300×g、4℃、5分間の遠心条件で細胞を沈殿させ、培養上清を回収した。続いて、回収した培養上清を2000×g、4℃、20分間の遠心条件で細胞断片を沈殿させ、上清を回収した。更に、回収した上清を10000×g、4℃、30分間の条件で遠心し、上清を回収した。10000×gの遠心後の上清 500μL中に含まれる細胞外小胞の量を、ナノ粒子解析システム(Malvern Panalytical社製、#NanoSIGHT LM10)を用いて定量した。
293細胞の結果を
図8Cに、293T細胞の結果を
図8Dに示す。
【0191】
[試験例12:細胞傷害性の評価4]
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。次に、293細胞(ATCC社製、CRL-1573TM)又は293T細胞(ATCC社製、CRL-3216TM)を2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有するAdvanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
4cells/200μLに懸濁し、接着表面96ウェルプレート(CORNING社製、#3595)に播種し、24時間の前培養を行った。24時間後、培養液を除去し、2%(v/v%)Exosome-free FBS含有するAdvanced DMEM 199.5μLと、DMSO中に調製した実施例1、5又は9の化合物0.5μL(終濃度:0~1μM)との混合液を添加し、24時間培養した。その後、プレートを1200×g、4℃、1時間の遠心条件で細胞を沈殿させ、50μLの培養上清を96ウェルマイクロプレート(WATSON社製、#195-96F)に移した。培養上清中に含まれる乳酸脱水素酵素(LDH)の活性は、Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST(同仁化学研究所社製、#CK12)を用いて測定した。500tests分のDye Mixtureに5mLのAssay Bufferを加えて溶解し、Working Solutionを調製した。50μLの培養上清を移した96ウェルマイクロプレートに、50μLのWorking Solutionを添加し、よく混和した後に、室温で30分間、呈色反応を行った。25μLのStop Solutionを添加することで反応を停止させ、490nmの吸光度を測定することで、細胞傷害性を評価した。死細胞群(培養液回収の15分前に、化合物未処置細胞に20μLのLysis Bufferを添加したサンプル)及び培養液(細胞培養をしていない培養液)も同様にLDHの活性を測定し、化合物による細胞傷害性を評価した。
293細胞の結果を
図8Eに、293T細胞の結果を
図8Fに示す。
【0192】
[試験例13:細胞増殖活性の評価3]
10mLの非働化処理FBSと2mLの50%(w/v%)Poly(ethylene glycol)10,000溶液(Sigma-Aldrich社製、#81280)を4℃、2時間撹拌した後に、1500×g、4℃、30分間の遠心条件で細胞外小胞を沈殿させ、上清を回収することで、Exosome-free FBSを調製した。次に、293細胞(ATCC社製、CRL-1573TM)又は293T細胞(ATCC社製、CRL-3216TM)を2%(v/v%)Exosome-free FBSを含有するAdvanced DMEM(Thermo Fisher Scientific社製、#12491015)中で2×10
4cells/200μLに懸濁し、接着表面96ウェルプレート(CORNING社製、#3595)に播種し、24時間の前培養を行った。24時間後、培養液を除去し、2%(v/v%)Exosome-free FBS含有するAdvanced DMEM 199.5μLと、DMSO中に調製した実施例1、5又は9の化合物0.5μL(終濃度:0~1μM)との混合液を添加し、24時間培養した。24時間後、プレートを1200×g、4℃、1時間の遠心条件で細胞を沈殿させ培養上清を除去し、Advanced DMEM90μLと生細胞数測定試薬SF(ナカライテスク社製、#07553)10μLの混合液を添加し、30分間培養した。30分後、450nmの吸光度を測定し、細胞増殖活性を評価した。
293細胞の結果を
図8Gに、293T細胞の結果を
図8Hに示す。
【0193】
[結果]
試験例1の結果より、実施例1,5の化合物は、U-87 MG細胞からの、CD9及び/又はCD63陽性の細胞外小胞の分泌量を促進したことが分かる。特に、実施例1の化合物はCD9及び/又はCD63陽性の細胞外小胞の、実施例5の化合物はCD63陽性の細胞外小胞の分泌を強く促進したと考えられる。
試験例2の結果より、実施例1の化合物は、少なくとも約2μM以下の濃度で、実施例5の化合物は、少なくとも約50nM以下の濃度で、培養上清中のLDH量の顕著な上昇が認められなかったことから、U-87 MG細胞に対して細胞傷害性が低いものと考えられる。
したがって、実施例1,5の化合物(或いは、これを含む組成物)は、U-87 MG細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。更に、実施例1,5の化合物(或いは、)これを含む組成物)は、U-87 MG細胞に対して細胞傷害性が低いにもかかわらず、U-87 MG細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。
【0194】
試験例3,7の結果より、実施例1~8の化合物は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞からの、CD63陽性の細胞外小胞の分泌量を促進したことが分かる。
試験例4,8の結果より、実施例1~4,8の化合物は、少なくとも約2μM以下の濃度で、実施例5~7の化合物は、少なくとも約50nM以下の濃度で、培養上清中のLDH量の顕著な上昇が認められなかったことから、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に対して細胞傷害性が低いことが分かる。
試験例5,9の結果より、実施例1~4,8の化合物は、少なくとも約2μM以下の濃度で、実施例5~7の化合物は、少なくとも約50nM以下の濃度で、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の増殖活性に対して大きな影響を与えないことが分かる。
したがって、実施例1~8の化合物(或いは、これを含む組成物)は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1~8の化合物(或いは、これを含む組成物)は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に対して細胞傷害性が低いにもかかわらず、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1~8の化合物(或いは、これを含む組成物)は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の増殖に対して大きな影響を与えないにもかかわらず、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1~8の化合物(或いは、これを含む組成物)は、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞に対して細胞傷害性が低く、かつ、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞の増殖に対して大きな影響を与えないにもかかわらず、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞、及びヒト臍帯マトリックス由来間葉系幹細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。
【0195】
試験例6の結果より、実施例2,5の化合物を処置したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞から得られた細胞外小胞は、ジメチルスルホキシドを処置したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞から得られた細胞外小胞と比較して、高い吸光度が得られた。更に、実施例2,5の化合物を処置したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞から得られた細胞外小胞を処置した群は、細胞外小胞未処置群、又はジメチルスルホキシドを処置したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞から得られた細胞外小胞を処置した群と比較して、塩化コバルト処置下(即ち、低酸素処置下)のH9C2細胞の生細胞数が多いことが分かる。
したがって、実施例2,5の化合物(又はこれを含む組成物)を処置したヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞から得られた細胞外小胞は、低酸素処置下のH9C2細胞に対して細胞保護作用を有するものと考えられる。
【0196】
試験例10,11の結果より、実施例1,5,9の化合物は、293細胞及び293T細胞からの、CD63及び/又はCD81陽性の細胞外小胞の分泌量を促進したことが分かる。
試験例12の結果より、実施例1の化合物は、少なくとも約0.3μM以下の濃度で、実施例5の化合物は、少なくとも約0.03μM(30nM)以下の濃度で、実施例9の化合物は、少なくとも約1μM以下の濃度で、培養上清中のLDH量の顕著な上昇が認められなかったことから、293細胞及び293T細胞に対して細胞傷害性が低いものと考えられる。
試験例13の結果より、実施例1の化合物は、少なくとも約0.3μM以下の濃度で、実施例5の化合物は、少なくとも約0.03μM(30nM)以下の濃度で、実施例9の化合物は、少なくとも約1μM以下の濃度で、293細胞及び293T細胞の増殖活性に対して大きな影響を与えないことが分かる。
したがって、実施例1,5,9の化合物(或いは、これを含む組成物)は、293細胞及び293T細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1,5,9の化合物(或いは、これを含む組成物)は、293細胞及び293T細胞に対して細胞傷害性が低いにもかかわらず、293細胞及び293T細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1,5,9の化合物(或いは、これを含む組成物)は、293細胞及び293T細胞の増殖に対して大きな影響を与えないにもかかわらず、293細胞及び293T細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。或いは、実施例1,5,9の化合物(或いは、これを含む組成物)は、293細胞及び293T細胞に対して細胞傷害性が低く、かつ、293細胞及び293T細胞に対して大きな影響を与えないにもかかわらず、293細胞及び293T細胞からの細胞外小胞の分泌を促進するものである。
【0197】
以上、試験例1、3、7、10及び11の結果より、実施例1~9の化合物は、様々な細胞由来の細胞外小胞(好ましくは、間葉系幹細胞由来の細胞外小胞)の分泌を促進することが分かる。したがって、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)は、様々な細胞由来の細胞外小胞(好ましくは、間葉系幹細胞由来の細胞外小胞)の分泌を促進するものである。
更に、試験例2、4、8及び12の結果より、実施例1~9の化合物は、培養上清中のLDH量の顕著な上昇が認められなかった。したがって、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)は、様々な細胞に対する細胞傷害性(好ましくは、間葉系幹細胞に対する細胞傷害性)が低く、安全なものである。
更に、試験例5、9及び13の結果より、実施例1~9の化合物は、様々な細胞に対する細胞増殖活性(好ましくは、間葉系幹細胞に対する細胞増殖活性)に大きな影響を与えなかった。したがって、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)は、様々な細胞に対する細胞増殖活性(好ましくは、間葉系幹細胞に対する細胞増殖活性)に大きな影響がなく、安全なものである。
更に、試験例6の結果より、実施例2,5の化合物を処置した間葉系幹細胞(好ましくは、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞)から得られた細胞外小胞(好ましくは、エクソソーム)は、低酸素処置等のストレス下にある細胞(例えば、心臓に由来する細胞)の生細胞数を増加させた。したがって、本明細書中に記載の組成物(或いは、化合物)を処置した細胞(好ましくは、間葉系幹細胞)から得られた細胞外小胞(好ましくは、エクソソーム)は、低酸素処置等のストレス下にある細胞に対して細胞保護作用を有するものと考えられる。