(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ロボット用構造体
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
B25J19/00 A
(21)【出願番号】P 2021009698
(22)【出願日】2021-01-25
【審査請求日】2023-11-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)令和2年12月15日「第21回 公益社団法人 計測自動制御学会 システムインテグレーション部門講演会 SI2020」の予稿集をダウンロードするウェブサイト(https://www.sice-si.org/conf/si2020/online_pass/proceedings.html)にて「形状記憶ポリマーとジャミング転移現象を用いた可変剛性リンクの基礎検討」を公開
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼嶋 一登
(72)【発明者】
【氏名】今澤 俊貴
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-300189(JP,A)
【文献】特開2011-148037(JP,A)
【文献】特開2014-200853(JP,A)
【文献】特開2020-97066(JP,A)
【文献】特開昭61-100394(JP,A)
【文献】特開2004-90193(JP,A)
【文献】特開2006-255872(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0089708(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟化状態と硬化状態とが選択可能な材料により形成された充填部が、伸縮性を有する被覆部に収容された構造本体部と、
前記被覆部の基端部から先端部の方向に、前記充填部の中を延び、外力により変形可能な形状記憶材により形成された骨格部と、
前記充填部の軟化状態と硬化状態とを選択的に指示する駆動部とを備えたロボット用構造体。
【請求項2】
前記充填部は、粒状体が充填されて形成され、
前記駆動部は、前記粒状体を軟化状態とするときには、前記被覆部に送気し、硬化状態とするときには、前記被覆部を脱気する請求項1記載のロボット用構造体。
【請求項3】
前記駆動部は、前記骨格部を初期状態に復帰させるときに、前記被覆部に送気して前記被覆部を初期状態より膨張させる請求項2記載のロボット用構造体。
【請求項4】
前記構造本体部は、前記被覆部内の基端部から延びて先端部に接続された伸長抑止部を備えた請求項3記載のロボット用構造体。
【請求項5】
前記駆動部は、前記形状記憶材の温度を調整する温度調整部を備えた請求項1から4のいずれかの項に記載のロボット用構造体。
【請求項6】
前記形状記憶材は、形状記憶ポリマーであり、
前記温度調整部は、前記形状記憶ポリマーを低剛性状態または復帰状態とするときにはガラス転移点より高く加熱し、高剛性状態とするときにはガラス転移点より低く冷却する請求項5記載のロボット用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットのグリッパとして機能したり、リンクとして機能したりすることが可能なロボット用構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒状媒体のジャミング転移現象を応用して、接触部を軟質化した状態で物に接触させ、次に接触部を硬質化して物を掴む、ロボットのグリッパとして機能するものが、非特許文献1,2にて開示されている。
また、可変剛性機構として、例えば、回動制限機構を利用したものが、特許文献1にて開示されている。
この特許文献1に記載の回転制限機構および三次元線状可変剛性機構には、胴体部と、胴体部の一端に設けられた第1の接合部と、胴体部の他端に設けられた第2の接合部を有し、第2の接合部は他の回動制限機構の第1の接合部と、他の回動制限機構との接合面と垂直な軸を中心に回動可能に接合し、第2の接合部は回動を制限するロック機構を有する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】E.Brown,N.Rodenberg,J.Amend,A.Mozeika,E.Steltz,M.R.Zakin,H.Lipson,H.M.Jaeger:Universal robotic gripper based on the jamming of granular material, Proceedings of the National Academy of Sciences,107(44) pp.18809-18814(2010)
【文献】N.G.Cheng,M.B.Lobovsky,S.J.Keating,A.M.Setapen,K.I.Gero,A.E.Hosoi,K.D.Iagnemma:Design and Analysis of a Robust,Low-cost,Highly Articulated manipulator enabled by jamming of granular media,2012 IEEE International Conference on Robotics and Automation,pp.4328-4333 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非特許文献1では、ロボットのグリッパとして機能するものであるが、リンクとして機能するものではない。
【0006】
また、非特許文献2のマニピュレータは、グリッパとして機能させたり、リンクとして機能させたりできるものである。
非特許文献2のマニピュレータは、円筒状のシリコーン膜にコーヒーの粒体が充填されたセグメントが複数連接され、モーターにより引っ張られる張力ケーブルにより各セグメントを曲げている。セグメントは、マニピュレータの全体的な柔軟性を維持するのに十分な柔らかさを保ちながら、各セグメントの曲げ動作を抑制して精度を向上させるために、長さ方向に沿った低剛性の圧縮ばねを備えている。また、圧縮ばねは、コーヒー粒体が詰まっていない軟化状態のときにセグメントを初期状態の位置に復帰する要素としても機能する。
【0007】
従って、内部のばねの復元力を利用して各セグメントを初期状態に戻す際には、低剛性の圧縮ばねでは、すぐには初期状態に復帰できず、初期状態に復帰させることは容易ではない。
【0008】
特許文献1に記載の回転制限機構および三次元線状可変剛性機構では、柔軟性を持つロボットアームとしても使用することができ、伸縮方向も含め任意に曲げた状態を維持できるようであるが、構成が複雑であり、グリッパとしては機能させることができない。
【0009】
ロボティクスの分野では柔らかいロボットを扱う「ソフトロボティクス」が、国内外で注目を集めている。例えば、少子高齢化社会へと急激に進むなかで、ロボットは、介護・福祉などの分野にさまざまな形で適用され、従来の産業用ロボットと異なり、人と接したときのお互いの損傷が少ないように、柔軟な関節や皮膚が必要とされる。しかし、ロボットを柔らかくすると、動きの精度を上げることが難しくなり、大きな力を得ようとすると、柔軟性が低下する。すなわち、工場と日常生活で使用するロボットには求められる仕様が異なり、異なったロボット開発が必要である。
【0010】
そこで本発明は、柔軟性を有しながら高い精度を求めることができ、グリッパとして機能するだけでなく、リンクとしても機能させることができ、容易に初期状態に復帰させことができるロボット用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のロボット用構造体は、軟化状態と硬化状態とが選択可能な材料により形成された充填部が、伸縮性を有する被覆部に収容された構造本体部と、前記被覆部の基端部から先端部の方向に、前記充填部の中を延び、外力により変形可能な形状記憶材により形成された骨格部と、前記充填部の軟化状態と硬化状態とを選択的に指示する駆動部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明のロボット用構造体によれば、構造本体部の被覆部に収容され、軟化状態と硬化状態とが選択可能な材料により形成された充填部の中を、外力により変形可能な形状記憶材料により形成された骨格部が延びている。そのため、骨格部を変形させ、充填部を硬化状態とすれば、構造本体部を自在に変形させることができるので、ワークをグリップしたり、リンクとして構造本体部の向きを正確に変えたり、ワークを引っ掛けたりすることができる。また、充填部を軟化状態にし、骨格部を形状記憶した状態に戻せば、構造本体部を初期状態に容易に戻すことが可能である。
【0013】
前記充填部は、粒状体が充填されて形成され、前記駆動部は、前記粒状体を軟化状態とするときには、前記被覆部に送気し、硬化状態とするときには、前記被覆部を脱気することができる。駆動部が被覆部に送気すると被覆部が膨張し、充填部を形成する粒状体同士の間に隙間ができるため、構造本体部を軟化状態とすることができる。また、駆動部が被覆部を脱気すると被覆部が収縮して、粒状体同士が密接した状態となるため、構造本体部を硬化状態とすることができる。
【0014】
前記駆動部は、前記骨格部を初期状態に復帰させるときに、前記被覆部に送気して前記被覆部を初期状態より膨張させることができる。被覆部を初期状態より膨張させることにより、充填部を形成する粒状体の間隔が更に拡がるため、骨格部の復帰を早めることができる。
【0015】
前記構造本体部は、前記被覆部内の基端部から延びて先端部に接続された伸長抑止部を備えたものとすることができる。被覆部を初期状態より膨張させるときに、先端部が偏って膨らむことを、伸長抑止部が先端部を引っ張ることで抑止することができる。
【0016】
前記駆動部は、前記形状記憶材の温度を調整する温度調整部を備えたものとすることができる。温度調整部が形状記憶材の温度調整することで、外力による骨格部の変形を元の状態に復帰させることができる。
【0017】
前記形状記憶材は、形状記憶ポリマーであり、前記温度調整部は、前記形状記憶ポリマーを低剛性状態または復帰状態とするときにはガラス転移点より高く加熱し、高剛性状態とするときにはガラス転移点より低く冷却するものとすることができる。形状記憶ポリマーにより骨格部を形成することで、温度調整により低剛性状態または復帰状態としたり、高剛性状態としたりすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のロボット構造体によれば、構造本体部を自在に変形させることができ、ワークをグリップしたり、リンクとして構造本体部の向きを正確に変えたり、ワークを引っ掛けたりすることができる。よって、本発明のロボット構造体は、柔軟性を有しながら高い精度を求めることができ、グリッパとして機能するだけでなく、リンクとしても機能させることができ、更に、容易に初期状態に復帰させことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態に係るロボット用構造体を示す図である。
【
図2】
図1に示すロボット用構造体の骨格部の図である。
【
図3】
図1に示すロボット用構造体の動作および使用状態を説明するための図である。
【
図4】
図1に示すロボット用構造体の他の使用状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態に係るロボット用構造体を図面に基づいて説明する。
図1に示すロボット用構造体10は、ロボットのグリッパとして使用したり、リンクとして使用したりすることができるものである。ロボット用構造体10は、構造本体部20と、骨格部30と、駆動部40とを備えている。
【0021】
構造本体部20は、軟化状態と硬化状態とが選択可能な材料により形成された充填部21と、充填部21が収容され、伸縮性を有する被覆部22と、被覆部22内の基端部22bから延びて先端部22fに接続された伸長抑止部23と、被覆部22および骨格部30とを支持する支持部24とを備えている。
【0022】
充填部21は、粒状体により形成されている。粒状体は、粒径が0.1mm~4mmのものとすることができる。本実施の形態では、粒状体として、例えば、コーヒー豆を挽くことで粒径が0.6±0.7mm(平均±標準偏差)の粉体を使用している。
【0023】
被覆部22は、基端部22bに開口部が形成され、先端部22fが閉鎖された筒状に形成されている。被覆部22は、支持部24の環状凹部24aにバンド24bが巻回されていることで、支持部24に固定されている。被覆部22は、充填部21に対して軟化状態と硬化状態とのいずかれを選択したときでも外部に漏れ出ず、骨格部30の形状に伸縮して変形することができる。本実施の形態では、被覆部22は、シリコーンゴムにより形成されている。
【0024】
伸長抑止部23は、骨格部30を変形させる際の加熱に対して耐熱性があり、変形自在であるが、伸長不可なものであれば使用できる。伸長抑止部23は、例えば、各種の布や糸、紐、金属製のワイヤ、各種のフィルムとすることができる。
【0025】
支持部24は、被覆部22に充填部21が充填された状態で、被覆部22の基端部22bの開口縁部が接続されていると共に、骨格部30の基端部30bが接続されている。
【0026】
骨格部30は、構造本体部20が軟質状態であるときに構造本体部20を支持する。骨格部30は、被覆部22の基端部22bから先端部22fの方向に、充填部21の中を延び、変形可能な材料により形成されている。
骨格部30は、変形するものであれば使用することができるが、本実施の形態では、形状記憶材料の一例である形状記憶ポリマーK(SMP:Shape Memory Polymer)とすることができる。形状記憶ポリマーKは、板状に形成されている。例えば、SMPテクノロジーズ社のMP4510が使用できる。骨格部30には、ヒーターH(
図2参照)が埋め込まれている。
【0027】
図1に示すように、駆動部40は、骨格部30を加熱するヒーターHに通電する温度調整部41と、骨格部30の温度を測定するセンサ部42と、被覆部22に送気したり脱気したりする気体調整部43と、制御部44とを備えている。
【0028】
温度調整部41は、センサ部42からの温度情報に基づいて、骨格部30としての形状記憶ポリマーKを、ガラス転移温度Tgより高い温度に、ヒーターHにより加熱するものである。本実施の形態における形状記憶ポリマーKは、Tgが45℃のものを使用しているため、ヒーターHにより70℃となるよう加熱している。
【0029】
図2に示すヒーターHは、形状記憶ポリマーKの基端部30bから、2本の電熱線が平行を維持しながら、連続したクランク状に蛇行しながら先端部30fに向かって延びて、先端部30f側にて短絡している。本実施の形態では、ヒーターHは、長さL1が54mm、幅L2が26mm、平行の間隔L3が3mmに形成されている。
【0030】
センサ部42は、熱電対とすることができ、配線42wが支持部24を貫通して制御部44に接続されている。
気体調整部43は、被覆部22内に連通し、支持部24を貫通する配管43pが接続されている。
制御部44は、センサ部42からの温度情報に基づいて温度調整部41に骨格部30の高剛性状態と低剛性状態とを選択的に指示し、気体調整部43に対して軟化状態と硬化状態とを選択的に指示する。
【0031】
以上のように構成された本発明の実施の形態に係るロボット用構造体10の動作および使用状態を図面に基づいて説明する。なお、骨格部30の初期状態は、まっすぐ延びた状態である。
図3に示すように、まず、ロボット用構造体10の初期状態(S1状態)は、被覆部22内の気圧Pは、大気圧P
Hである(P=P
H)。また、骨格部30の温度Tはガラス転移点の温度Tgより低い温度である(T<Tg)。従って、充填部21は、粒状であることから軟化状態であり、骨格部30は、弾性変形可能な状態であるが高剛性状態である。骨格部30の初期状態はまっすぐに延びた状態である。
【0032】
次に、
図1に示す駆動部40の制御部44から変形状態が指示されると、温度調整部41が、骨格部30を温度Tgより高温になるようヒーターHにより加熱する(T>Tg)。この加熱は、センサ部42(
図1参照)からの信号に基づいて、温度調整部41による加熱がT>Tgとなるまで続けられる。
【0033】
また、
図3に示す被覆部22内の気圧Pは大気圧P
Hのままである(P=P
H)。従って、充填部21を形成する粒状体同士の間に隙間があるため、粒状体は被覆部22内を移動することができるので、軟化状態である。そして、軟化状態の充填部21の中で、温度Tgより高く加熱された骨格部30は、ゴム状態のような低剛性状態に変化する。例えば、SMPテクノロジーズ社のMP4510では、弾性率を1350MPaから4.5MPaまで変化させることができる。従って、外力Fを加えると、骨格部30は、その外力Fに応じて変形する(S2状態)。従って、複雑な形状でも変形させることが可能である。
【0034】
次に、
図1に示す駆動部40の制御部44からの指示により硬化状態が気体調整部43に指示される。そうすると、気体調整部43が、
図3に示すように、配管43pを通じて被覆部22を脱気する(P=P
L)。被覆部22内が脱気されることで、被覆部22が収縮し、充填部21を粒状体同士の隙間が無くなり、密接した状態となることで、ジャミング転移現象が生じ、構造本体部20が硬化状態に変化する。
【0035】
また、温度調整部41が、骨格部30を温度Tgより低温になるように冷却する(T<Tg)。骨格部30が温度Tgより低温になることで高剛性状態に変化する。そのため、S3状態では、充填部21および骨格部30の両方が硬化状態となることで、構造本体部20が外力により変形した状態のまま形状が維持される(S3状態)。
【0036】
従って、S2状態のときに、外力Fにより折れ曲がることで凹部ができたロボット用構造体10(構造本体部20)に、ワークW1を位置させ、挟み込んだ状態とすれば、S3状態にて、ワークW1を保持することができる。
【0037】
最後に、
図1に示す気体調整部43が被覆部22に送気する。例えば、大気圧に戻す(P=P
H)。また、温度調整部41が、骨格部30を温度Tgより高温になるよう加熱する(T>Tg)。そうすることで、
図3に示すように、被覆部22が膨張し、充填部21によるジャミング転移現象が解消して、構造本体部20が軟化状態となり、骨格部30が低剛性状態に変化する。そうすることで、骨格部30の記憶された形状への変形が自在となる。従って、初期状態であるS1状態と同じ、骨格部30がまっすぐ延びた状態へ復帰する(S4状態)。
【0038】
このように、骨格部30が低剛性状態に変化して初期状態に復帰する際に、まず、気体調整部43が被覆部22へ送気して、被覆部22内を初期状態と同じ大気圧として充填部21を軟化状態としている。そして、外力により変形し、温度調整部41により加熱された骨格部30を初期状態に復帰させる。このとき、気体調整部43が被覆部22に更に送気することで、被覆部22が大気圧以上に加圧されることで、被覆部22が初期状態より更に膨張する。そうすることで、充填部21を形成する粉体の間隔が初期状態より拡がるので、骨格部30への初期状態への変形が加速される。従って、骨格部30の復帰時間を短縮することができる。
【0039】
被覆部22内を大気圧以上の気圧とすることで、被覆部22が初期状態より膨張する際に、
図1に示す被覆部22の先端部22f部分が他の箇所より偏って膨張して、構造本体部20全体の長さが大きく長くなるおそれがある。
しかし、伸長抑止部23が被覆部22内の基端部22bから延びて先端部22fに接続されているため、先端部22fが伸長抑止部23により引っ張られるため、被覆部22が過度に伸長することが防止できる。
【0040】
例えば、
図4に示すロボットは、左右一対のアーム(右手R,左手L)を有している。
図4(a)に示すように、ロボットの左手Lの指は、骨格部30が内蔵された構造本体部20により形成されている。骨格部30(
図3参照)は、加熱すれば低剛性状態(S2状態)となるため、右手Rによって変形させることができる。このとき、右手Rによる変形として、骨格部30の先端部をフック状に折り曲げるものとする。
【0041】
次に、骨格部30(
図3参照)を冷却し、被覆部22内を脱気することでジャミング転移現象により硬化状態(S3状態)となるため、剛性により外部荷重を支えることができるので、
図4(b)に示すようにフック状に曲がった指によりワークW2を引っ掛けることができる。
【0042】
そして、
図4(c)に示すように、骨格部30を加熱して低剛性状態とし、被覆部22内に送気することでジャミング転移現象が解消して軟化状態(S4状態)となるため、構造本体部20(骨格部30)がまっすぐ延びた初期状態となる。
このようにロボット用構造体10は、外力によりワークに応じて適した形状に、繰り返し変形させることができるので、ロボット用構造体10を単独で使用したり、組み合わせて連結して使用したりすることができる。また、動作時間の短縮とプログラミングコストの節約に貢献する。
【0043】
以上のように、ロボット用構造体10は、軟化状態と硬化状態とを自在に変更することが可能であり、ワークを掴むグリッパとして機能させたり、外力により折り曲げられて延びる方向を正確に変えたりすることでリンクとして機能させたりすることができる。従って、ロボット用構造体10は、柔軟性を有しながら高い精度を求めることができ、グリッパとして機能するだけでなく、リンクとしても機能させることができる。
【0044】
なお、充填部21は、粒状体として、コーヒー豆を挽いた粉体とする以外に、米粒としたり、ガラスビーズ、おがくず、珪藻土としたりすることができる。
また、充填部は、軟化状態と硬化状態とが選択可能な材料として、加熱により液化状態と固体状態とが選択できる、亜鉛、スズ、ビスマス、ガリウム、インジウム、鉛などを主材とした合金などによる低融点合金とすることができる。
充填部を低融点合金としたときには、
図1に示す気体調整部43の代わりに、温度調整部とする。そして、充填部を軟化状態とするときに加熱して低融点合金を液体状態とし、充填部を硬化状態とするときには冷却して固体状態とすることで、
図3に示すS1状態~S4状態と同様に状態を変化させることができる。
【0045】
更に、骨格部30は、弾性変形可能であり、かつ形状記憶材料であるものとして形状記憶合金とすることができる。
骨格部を形状記憶合金とした場合には、S1状態の初期状態から、S2状態にて外力を加えて常温状態の骨格部を変形させ、S3状態にて充填部21を硬化状態とすることで骨格部の変形を維持させ、S4状態にて充填部21を軟化状態にして骨格部の拘束を解除すると共に、骨格部を変態温度以上に加熱することで変形を初期状態に復帰させることができる。本実施の形態において、Af(変態)点が60℃の形状記憶合金の使用が考えられる。
【0046】
また、形状記憶合金でも、例えば、変態温度が低い超弾性ワイヤとすることができる。骨格部を超弾性ワイヤとした場合には、駆動部は、変態温度が低いので、温度調整部41を省略した場合で説明する。
この場合、
図3に示す各状態において、S1状態の初期状態から、S2状態にて外力を加えることで、超弾性ワイヤにより形成された骨格部は弾性変形するため、S3状態にて充填部21を硬化状態とすることで骨格部を拘束して変形を維持させることができる。そして、S4状態にて充填部21(構造本体部20)を軟化状態とすることで骨格部の拘束を解除することで、変形を弾性復帰して初期状態に容易に戻すことができる。
【0047】
このように、骨格部を超弾性ワイヤとしても、超弾性ワイヤの変形を充填部21によるジャミング転移現象による硬化により維持することができ、ジャミング転移現象を解消することで、初期状態に復帰させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ロボットのグリッパやリンクに好適である。
【符号の説明】
【0049】
10 ロボット用構造体
20 構造本体部
21 充填部
22 被覆部
22b 基端部
22f 先端部
23 伸長抑止部
24 支持部
24a 環状凹部
24b バンド
30 骨格部
30b 基端部
30f 先端部
40 駆動部
41 温度調整部
42 センサ部
42w 配線
43 気体調整部
43p 配管
44 制御部
H ヒーター
K 形状記憶ポリマー
L1 長さ
L2 幅
L3 間隔
F 外力
R 右手
L 左手
W1,W2 ワーク