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特許7508279ベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/04 20060101AFI20240624BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
F28D15/04 B
F28D15/02 101H
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020098034
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021188887
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高田 早紀
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/065969(WO,A1)
【文献】特開2011-122813(JP,A)
【文献】特開2019-128143(JP,A)
【文献】特開2007-266153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
H01L 23/34-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属板の第1面と第2金属板の内面との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、
前記第1金属板は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼で形成され、
前記第2金属板は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金またはステンレス鋼で形成され、
前記第1金属板は、
前記第1面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、
前記第1面から前記第2金属板の前記内面に向かって突出し、頂面が前記第2金属板の前記内面に当接する少なくとも1つ以上の第1突出部と、
前記第1突出部の頂部の一部に設けられ、前記第2金属板の前記内面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の第1異形部を備える第1異形部群と
を有し、
前記第1異形部群は、
前記第1突出部の前記頂面から前記第2金属板の前記内面に向かって突出し、レーザー加工してなる、頂面側の前記第1異形部を備え、前記第2金属板は、前記内面に設けられ、前記頂面側の第1異形部と対向する凹部を有する、および/または
前記第1突出部の前記頂部の側面に設けられ、隣接する前記第1突出部の側面に向かって突出し、レーザー加工してなる、頂部側面側の前記第1異形部を備える
ことを特徴とするベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記第1異形部群は、前記第1突出部の前記頂面と前記第1突出部の側面との間の角部に設けられ、前記頂面と前記第1突出部の前記側面とに連結する角部側の前記第1異形部をさらに備える、請求項1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
前記第2金属板は、
前記内面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、
前記内面から前記第1金属板の前記第1面に向かって突出し、頂面が前記第1金属板の前記第1突出部の前記頂面に当接する少なくとも1つ以上の突出部と、
前記突出部の頂部の一部に設けられ、前記第1金属板の前記第1突出部の前記頂面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える第2金属板異形部群と、
を有する、請求項1または2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
前記第1金属板の前記第1面と対向する第2面側に接合される第3金属板をさらに有し、前記凹部流路の少なくとも1つ以上が前記第1金属板の前記第1面から前記第2面まで貫通する、請求項1~のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
前記第1金属板は、
前記第2面から前記第3金属板の内面に向かって突出し、頂面が前記第3金属板の前記内面に当接する少なくとも1つ以上の第2突出部と、
前記第2突出部の頂部の一部に設けられ、前記第3金属板の前記内面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の第2異形部を備える第2異形部群と、
をさらに有する、請求項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項6】
前記第3金属板は、
前記内面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、
前記内面から前記第1金属板の前記第2面に向かって突出し、頂面が前記第1金属板の前記第2突出部の前記頂面に当接する少なくとも1つ以上の突出部と、
前記突出部の頂部の一部に設けられ、前記第1金属板の前記第2突出部の前記頂面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える第3金属板異形部群と、
を有する、請求項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項7】
前記第1金属板は、少なくとも前記第1面に溶接部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項8】
前記第1金属板は、側面に溶接部を有する、請求項1~のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のベーパーチャンバの製造方法であって、
前記凹部流路と前記第1異形部群とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有することを特徴とするベーパーチャンバの製造方法。
【請求項10】
前記レーザー加工工程の後に、少なくとも前記第1金属板と前記第2金属板とをレーザーで溶接するレーザー溶接工程をさらに有する、請求項に記載のベーパーチャンバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン、デジタルカメラ、携帯電話などの電気・電子機器に搭載されている半導体素子などの電子部品は、高性能化に伴う高密度搭載などによって、発熱量が増大する傾向にある。電気・電子機器を長時間にわたって正常に駆動するためには、電子部品を効率よく冷却する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1金属シートと、第1金属シートに積層された第2金属シートと、蒸気流路部および液流路部を有する密封空間とを備えるベーパーチャンバが記載されている。特許文献1のベーパーチャンバでは、液流路部は、各々が第1方向に延びて液状の作動液が通る複数の主流溝を有し、互いに隣り合う一対の主流溝の間に、連絡溝を介して第1方向に配列された複数の液流路凸部を含む凸部列が設けられ、連絡溝は、対応する一対の主流溝を連通し、連絡溝の幅は、主流溝の幅よりも大きい。
【0004】
しかしながら、特許文献1のベーパーチャンバでは、ベーパーチャンバの厚み方向に流れるための液相の作動流体の推進力が小さいため、ベーパーチャンバの冷却性能は不十分である。また、金属シート同士が拡散接合によって接合されているので、金属シート同士の接触部分の全面が接合されていると考えられる。そのため、ベーパーチャンバが長期間に亘って熱を受けると、金属シート全体が歪む可能性がある。また、ベーパーチャンバの流路部は、エッチング液を用いたエッチング加工で形成され、金属シート同士は、拡散接合で接合される。このように、流路部の形成工程と金属シートの接合工程とが全く異なる手法で行われているため、ベーパーチャンバの製造に時間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2019/065969号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、優れた熱輸送特性を有するベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 第1金属板の第1面と第2金属板の内面との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、前記第1金属板は、前記第1面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、前記第1面から前記第2金属板の前記内面に向かって突出し、頂面が前記第2金属板の前記内面に当接する少なくとも1つ以上の第1突出部と、前記第1突出部の頂部の一部に設けられ、前記第2金属板の前記内面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の第1異形部を備える第1異形部群とを有することを特徴とするベーパーチャンバ。
[2] 前記第1異形部群は、前記第1突出部の前記頂面から前記第2金属板の前記内面に向かって突出する頂面側の前記第1異形部を備え、前記第2金属板は、前記内面に設けられ、前記頂面側の第1異形部と対向する凹部を有する、上記[1]に記載のベーパーチャンバ。
[3] 前記第1異形部群は、前記第1突出部の前記頂面と前記第1突出部の側面との間の角部に設けられ、前記頂面と前記第1突出部の前記側面とに連結する角部側の前記第1異形部を備える、上記[1]または[2]に記載のベーパーチャンバ。
[4] 前記第1異形部群は、前記第1突出部の前記頂部の側面に設けられ、隣接する前記第1突出部の側面に向かって突出する頂部側面側の前記第1異形部を備える、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[5] 前記第2金属板は、前記内面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、前記内面から前記第1金属板の前記第1面に向かって突出し、頂面が前記第1金属板の前記第1突出部の前記頂面に当接する少なくとも1つ以上の突出部と、前記突出部の頂部の一部に設けられ、前記第1金属板の前記第1突出部の前記頂面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える第2金属板異形部群と、を有する、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[6] 前記第1金属板の前記第1面と対向する第2面側に接合される第3金属板をさらに有し、前記凹部流路の少なくとも1つ以上が前記第1金属板の前記第1面から前記第2面まで貫通する、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[7] 前記第1金属板は、前記第2面から前記第3金属板の内面に向かって突出し、頂面が前記第3金属板の前記内面に当接する少なくとも1つ以上の第2突出部と、前記第2突出部の頂部の一部に設けられ、前記第3金属板の前記内面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の第2異形部を備える第2異形部群と、をさらに有する、上記[6]に記載のベーパーチャンバ。
[8] 前記第3金属板は、前記内面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、前記内面から前記第1金属板の前記第2面に向かって突出し、頂面が前記第1金属板の前記第2突出部の前記頂面に当接する少なくとも1つ以上の突出部と、前記突出部の頂部の一部に設けられ、前記第1金属板の前記第2突出部の前記頂面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える第3金属板異形部群と、を有する、上記[7]に記載のベーパーチャンバ。
[9] 前記第1金属板は、少なくとも前記第1面に溶接部を有する、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[10] 前記第1金属板は、側面に溶接部を有する、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[11] 上記[1]~[10]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバの製造方法であって、前記凹部流路と前記第1異形部群とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有することを特徴とするベーパーチャンバの製造方法。
[12] 前記レーザー加工工程の後に、少なくとも前記第1金属板と前記第2金属板とをレーザーで溶接するレーザー溶接工程をさらに有する、上記[11]に記載のベーパーチャンバの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、優れた熱輸送特性を有するベーパーチャンバおよびベーパーチャンバの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、第1実施形態のベーパーチャンバの他の例を示す斜視図である。
図4図4は、図1のベーパーチャンバの溶接部の一例を示す概略図である。
図5図5は、図1のベーパーチャンバの溶接部の他の例を示す概略図である。
図6図6は、第2実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。
図7図7は、図6のB-B線断面図である。
図8図8は、第2実施形態のベーパーチャンバの他の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0011】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ベーパーチャンバの内部構造に着目し、ベーパーチャンバの厚み方向に流れるための液相の作動流体の推進力を増加することによって、ベーパーチャンバ内の液相および気相の作業流体を効率的に循環させて、熱輸送特性の向上を図った。
【0012】
実施形態のベーパーチャンバは、第1金属板の第1面と第2金属板の内面との間に形成される内部空間に作動流体を有するベーパーチャンバであって、前記第1金属板は、前記第1面に設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路と、前記第1面から前記第2金属板の前記内面に向かって突出し、頂面が前記第2金属板の前記内面に当接する少なくとも1つ以上の第1突出部と、前記第1突出部の頂部の一部に設けられ、前記第2金属板の前記内面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の第1異形部を備える第1異形部群とを有する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。図2は、図1のA-A線断面図である。図1では、便宜上、ベーパーチャンバの内部構造がわかるように部分的に透過した状態を示している。また、図2では、液相の作動流体F(L)の流れる方向を黒塗り矢印で示している。
【0014】
図1~2に示すように、第1実施形態のベーパーチャンバ1は、第1金属板10および第2金属板20を有する。第1金属板10の第1面10aおよび第2金属板20の内面20aが対向するように、第1金属板10および第2金属板20が接合される。すなわち、第1金属シート10および第2金属シート20は内部が閉じられている。また、ベーパーチャンバ1は、第1金属板10の第1面10aおよび第2金属板20の内面20aの間に形成される内部空間Sに作動流体を有する。内部空間Sは、第1金属板10および第2金属板20によって密閉されている。ベーパーチャンバ1の内部に設けられる内部空間Sには、作動流体が封入されている。
【0015】
内部空間Sに封入されている作動流体は、ベーパーチャンバ1の冷却性能の観点から、純水、エタノール、メタノール、アセトン、フッ素系溶媒などが挙げられる。
【0016】
ベーパーチャンバ1を構成する第1金属板10は、第1金属板10の第1面10aに設けられる少なくとも1つ以上の凹部流路11と、第1金属板10の第1面10aから突出する少なくとも1つ以上の第1突出部12と、第1突出部12の一部に設けられる第1異形部群13とを有する。
【0017】
図1に示すように、凹部流路11は、第1金属板10の第1面10a側に設けられ、第1面10aと対向する第2面10bに向かって凹んでいる。例えば、複数の凹部流路11は、所定の方向に延在する。
【0018】
第1金属板10の第1面10a側に設けられる第1突出部12は、第1金属板10の第1面10aから第2金属板20の内面20aに向かって突出する。第1突出部12の頂面121は、第2金属板20の内面20aに当接する。凹部流路11の延在方向に沿って、第1突出部12は延在する。
【0019】
第1金属板10が具備する第1異形部群13は、延在する第1突出部12の頂部12aの一部に設けられる。第1異形部群13は、少なくとも1つ以上の第1異形部(例えば13a、13b、13cなど)を備える。第1異形部は、第2金属板20の内面20aとの間に隙間S1を形成する。
【0020】
図2に示すように、第1異形部は、第1突出部12の頂部12aの形状と明確に異なる。そのため、第1異形部と第2金属板20の内面20aとの間には、隙間S1が設けられる。一方で、第1異形部を備えない頂部12aでは、頂面121と第2金属板の内面20aとが当接している。このように、第1異形部を備える頂部12aでは、隙間S1を介して、第1異形部と第2金属板の内面20aとが対向している。また、第1異形部を備える頂部12aにおいて、第1異形部と第2金属板の内面20aとが当接している状態であっても、当該当接状態は局所的であり、当該当接面積は、第1異形部を備えない頂部12aの頂面121と第2金属板の内面20aとの当接面積に比べて小さい。
【0021】
上記のように、第1異形部群13によって形成される隙間S1の形状は、第1異形部を備えない頂部12aの頂面121と第2金属板の内面20aとの間の当接隙間と明確に異なる。隙間S1は、液相の作動流体に働く毛細管現象のように、液相の作動流体が流れる推進力を液相の作動流体に与える。具体的には、隙間S1は、ベーパーチャンバ1の厚み方向、すなわち第1突出部12の高さ方向に流れるための液相の作動流体の流れの推進力を発揮する。矢印F(L)で示すように、第1突出部12の側面12bに点在している液滴などの液相の作動流体は、隙間S1に容易に浸入できるため、第2金属板20の内面20aに容易に移動できる。
【0022】
このように、第1金属板10の第1異形部群13と第2金属板20の内面との間に形成される隙間S1が内部空間Sに設けられると、液相の作動流体が突出部12の側面12bから第2金属板20の内面20aに容易に流れる。そのため、ベーパーチャンバ1の厚み方向に沿って流れる液相の作動流体の流れの乱れが抑制されて、液相の作動流体がベーパーチャンバ1の厚み方向にも良好に流れる。ベーパーチャンバ1の厚み方向と垂直な方向である面内方向に沿った作動流体の良好な循環流れに加えて、ベーパーチャンバ1の厚み方向にも液相の作動流体が良好に流れるので、内部空間S内での熱輸送が向上する。そのため、ベーパーチャンバ1は優れた熱輸送特性を有することができる。
【0023】
さらに、第1異形部群13によって隙間S1が内部空間Sに設けられると、作動流体は、ベーパーチャンバ1の厚み方向およびベーパーチャンバ1の面内方向に沿って、良好に流れる。例えば図1に示すベーパーチャンバ1が紙面上で90度傾く状態や上下反対になる状態など、ベーパーチャンバ1がどのような姿勢であっても、作動流体の循環流れは良好である。このように、ベーパーチャンバ1の配置状態に依存せずに、液相および気相の作動流体の循環の流れが良好であるため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性は優れている。
【0024】
上記のような液相の作動流体が流れる推進力を液相の作動流体に与える隙間S1をベーパーチャンバ1内に設けることができれば、第1異形部群13は、延在する頂部12aの全体に亘って配置されてもよいし、局所的に配置されてもよい。また、第1金属板10が複数の第1異形部を有する場合、同じ理由から、複数の第1異形部の形状は、全て同じでもよいし、一部同じでもよいし、全て異なってもよい。
【0025】
また、第1異形部群13は、第1突出部12の頂面121から第2金属板20の内面20aに向かって突出する頂面側の第1異形部13aを備え、第2金属板20は、内面20aに設けられ、頂面側の第1異形部13aと対向する凹部25を有することが好ましい。
【0026】
図2に示すように、頂面側の第1異形部13aと内面20aや凹部25との間には、隙間S1が形成される。隙間S1は、第1突出部12の頂面121側に設けられる。隙間S1をベーパーチャンバ1内に設けることができれば、頂面側の第1異形部13aは、第2金属板20の内面20aの凹部25に対して、接触してもよいし、非接触でもよい。同様の理由から、凹部25の形状についても限定されるものではない。
【0027】
第1金属板10が複数の第1異形部13aを有する場合、複数の第1異形部13aは、点在してもよいし、凝集してもよいし、連結してもよいし、これらが組み合わされた状態でもよい。
【0028】
第1金属板10が頂面側の第1異形部13aを有し、第2金属板20が凹部25を有すると、頂面側の第1異形部13aと凹部25との間に形成される隙間S1は、ベーパーチャンバ1の厚み方向に流れるための液相の作動流体の流れの推進力をさらに効率的に液相の作動流体に与える。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0029】
また、第1異形部群13は、第1突出部12の頂面121と第1突出部12の側面12bとの間の角部12cに設けられ、頂面121と第1突出部12の側面12bとに連結する角部側の第1異形部13bを備えることが好ましい。
【0030】
角部側の第1異形部13bは、第1突出部12の頂面121から第1突出部12の側面12bに亘って傾斜する。角部側の第1異形部13bは、第2金属板20の内面20aと当接せずに、非接触である。そのため、角部側の第1異形部13bと第2金属板20の内面20aとの間には、隙間S1が形成される。隙間S1は第1突出部12の角部12c側に設けられる。
【0031】
一方で、角部側の第1異形部13bを備えない第1突出部12では、第1突出部12の角部12cは、傾斜せずに、第2金属板20の内面20aと当接している。そのため、第1突出部12の角部12c側には、隙間S1が形成されない。
【0032】
第1金属板10が複数の第1異形部13bを有する場合、複数の第1異形部13bは、点在してもよいし、連結してもよいし、これらが組み合わされた状態でもよい。また、第1金属板10が1つの第1異形部13bを有する場合、延在する頂部12aの全体に亘って、第1異形部13bが延在してもよい。
【0033】
第1金属板10が角部側の第1異形部13bを有すると、角部側の第1異形部13bと第2金属板20の内面20aとの間に形成される隙間S1は、ベーパーチャンバ1の厚み方向に流れるための液相の作動流体の流れの推進力をさらに効率的に液相の作動流体に与える。また、液相の作動流体の濡れ性も向上する。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0034】
また、第1異形部群13は、第1突出部12の頂部12aの側面122に設けられ、隣接する第1突出部12の側面12bに向かって突出する頂部側面側の第1異形部13cを備えることが好ましい。
【0035】
頂部側面側の第1異形部13cは、第1突出部12の頂部12aの側面122から突出する。第1異形部13cの側面は、第2金属板20の内面20aと当接せずに、非接触である。そのため、頂部側面側の第1異形部13cと第2金属板20の内面20aとの間には、隙間S1が形成される。隙間S1は第1突出部12の頂部側面側に設けられる。
【0036】
一方で、頂部側面側の第1異形部13cを備えない第1突出部12では、頂部側面側の第1異形部13cに相当する構成を備えていない。そのため、第1異形部13cを備えない第1突出部12の頂部側面側には、隙間S1が形成されない。
【0037】
第1金属板10が複数の第1異形部13cを有する場合、複数の第1異形部13cは、点在してもよいし、凝集してもよいし、連結してもよいし、これらが組み合わされた状態でもよい。
【0038】
第1金属板10が頂部側面側の第1異形部13cを有すると、頂部側面側の第1異形部13cの側面と第2金属板20の内面20aとの間に形成される隙間S1は、ベーパーチャンバ1の厚み方向に流れるための液相の作動流体の流れの推進力をさらに効率的に液相の作動流体に与える。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0039】
第1異形部群13を構成する第1異形部と第2金属板20の内面20aとの間に設けられる隙間S1の形状は、第1異形部の種類に応じて、異なる。様々な種類の第1異形部と内面20aとによって形成される隙間S1の中でも、上記のように、頂面側の第1異形部13a、角部側の第1異形部13b、および頂部側面側の第1異形部13cと内面20aとによって形成される隙間S1は、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性をさらに向上する。
【0040】
頂面側の第1異形部13a、角部側の第1異形部13b、および頂部側面側の第1異形部13cの存在割合や配置状態は、ベーパーチャンバ1の所望の特定に応じて、適宜設定される。
【0041】
また、凹部流路11は、溝幅wよりも溝深さdが長いことが好ましい。凹部流路11の溝深さdが凹部流路11の溝幅wよりも長いと、隙間S1の発揮する作動流体の流れの推進力が増加する。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0042】
また、凹部流路11の溝幅wと溝深さdは、アスペクト比(d/w)が大きいと熱輸送特性が良く、逆に小さいと凹部流路11を加工しやすい。熱輸送特性と加工性のバランスから、d/wは、好ましくは0.1以上10.0以下、より好ましくは0.5以上2.0以下、さらに好ましくは0.75以上1.3以下である。
【0043】
また、第1金属板10が複数の凹部流路11を備える場合、複数の凹部流路11は、互いに平行に延在することが好ましい。複数の凹部流路11が平行に延在する場合、隣り合う凹部流路11の溝間隔pは、好ましくは10μm以上1000μm以下、より好ましくは20μm以上500μm以下、さらに好ましくは50μm以上200μm以下である。凹部流路11の溝間隔pは、隣り合う凹部流路11の溝幅の中心線間の距離である。
【0044】
このようなベーパーチャンバ1の熱輸送特性を向上する凹部流路11、第1突出部12および第1異形部群13の形成、特に頂面側の第1異形部13a、角部側の第1異形部13bおよび頂部側面側の第1異形部13cを有する第1異形部群13の形成には、レーザーを用いた加工が好ましく、その中でもファイバレーザーを用いた加工がより好ましい。レーザーによる加工では、凹部流路11、第1突出部12および第1異形部群13について、所望の形状に短時間で形成できる共に、凹部流路11および第1突出部12を形成しながら第1異形部群13を同時に形成できる。そのため、ベーパーチャンバ1を短時間で容易に製造できる。
【0045】
仮にベーパーチャンバ1を従来の方法で製造する場合には、エッチング液を用いたエッチング加工で凹部流路11などを形成する工程や、第1異形部群13を形成する工程など、凹部流路11、第1突出部12および第1異形部群13を異なる工程で形成する必要がある。そのため、このような製造方法は、煩雑であり、時間がかかる。
【0046】
また、第1金属板10および第2金属板20を構成する材料は、高い熱伝導率やレーザーによる加工容易性などの観点から、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼が好ましい。その中でも、軽量化を図る目的のためには、アルミニウム、アルミニウム合金がより好ましく、機械的強度を高める目的のためには、ステンレス鋼がより好ましい。また、使用環境に応じて、第1金属板10および第2金属板20には、スズ、スズ合金、チタン、チタン合金、ニッケル、ニッケル合金などを使用してもよい。
【0047】
また、例えば第2金属板20の外面20bには、不図示の発熱体が装着される。ベーパーチャンバ1と発熱体とが熱的に接続されると、発熱体がベーパーチャンバによって冷却される。発熱体は、例えば半導体素子など、稼動中に熱を発生する電子部品のような部材である。
【0048】
図3は、第1実施形態のベーパーチャンバ1の他の例を示す斜視図である。
【0049】
図3に示すように、第2金属板20は、少なくとも1つ以上の凹部流路21と少なくとも1つ以上の突出部22と第2金属板異形部群23とを有することが好ましい。
【0050】
第2金属板20の凹部流路21は、内面20aに設けられる。第2金属板20の凹部流路21は、第1金属板10の凹部流路11と同様の構成を有する。
【0051】
突出部22は、第2金属板20の内面20aから第1金属板10の第1面10aに向かって突出し、突出部22の頂面が第1金属板10の第1突出部12の頂面121に当接する。第2金属板20の突出部22は、第1金属板10の第1突出部12と同様の構成を有する。
【0052】
第2金属板20の第2金属板異形部群23は、第2金属板20の突出部22の頂部の一部に設けられ、第1金属板10の第1突出部12の頂面121との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える。第2金属板20の第2金属板異形部群23は、第1金属板10の異形部群13と同様の構成を有する。
【0053】
第2金属板20が凹部流路21と突出部22と第2金属板異形部群23とを有すると、第2金属板異形部群23による隙間がさらに形成される。この隙間は、上記の隙間S1と同様の構成を有する。そのため、第2金属板20の突出部22の側面に点在している液滴などの液相の作動流体は、隙間に容易に浸入することによって、第1金属板10側に容易に移動できる。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性はさらに向上する。
【0054】
また、第2金属板20の凹部流路21が第1金属板10の凹部流路11と連結するため、ベーパーチャンバ1の内部空間S内での熱輸送がさらに向上する。その結果、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性がさらに向上する。
【0055】
また、第2金属板20の第2金属板異形部群23は、第1金属板10に設けられる頂面側の第1異形部13aと同様の構成を有する頂面側の異形部23a、角部側の第1異形部13bと同様の構成を有する角部側の異形部23b、および頂部側面側の第1異形部13cと同様の構成を有する頂部側面側の異形部23cの少なくとも1種の異形部を備えることが好ましい。第2金属板20の第2金属板異形部群23が当該異形部23a、23b、23cを備えると、上記のようなメカニズムにより、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性がさらに向上する。
【0056】
図4は、ベーパーチャンバ1の溶接部の一例を示す概略図である。図5は、ベーパーチャンバ1の溶接部の他の例を示す概略図である。
【0057】
図4に示すように、第1金属板10は、少なくとも第1面10aに溶接部40を有することが好ましい。すなわち、第1金属板10が外縁10cの第1面10aに溶接部40を有することによって、第1金属板10の第1面10aと第2金属板20の内面20aとが互いに溶接される。
【0058】
このような場所に設けられる溶接部40は、上記レーザーに加えて従来から採用されている半田などによって形成されることができる。このような接合方法は、第1金属板10と第2金属板20とを容易に接合できる。
【0059】
また、図5に示すように、第1金属板10は側面に溶接部40を有することが好ましい。すなわち、第1金属板10における第2金属板20側の側面と第2金属板20における第1金属板10側の側面とに溶接部40を有することによって、第1金属板10と第2金属板20とが互いに溶接される。
【0060】
ベーパーチャンバ1の側面に溶接部40が設けられると、第1金属板10の第2面10bや第2金属板20の外面20bには、溶接痕が形成されない。そのため、溶接痕を除去するような追加の加工を行わずに、ベーパーチャンバを使用可能である。このような溶接は、レーザーを用いた加工が好適であり、その中でもファイバレーザーを用いた加工がさらに好適である。
【0061】
次に、上記のベーパーチャンバ1の製造方法について説明する。
【0062】
ベーパーチャンバ1の製造方法は、凹部流路11と第1異形部群13とをレーザーで形成するレーザー加工工程を有する。レーザー加工では、凹部流路11を所望の形状に加工制御しやすく、短時間で形成できる。さらに、凹部流路11を形成することによって、第1突出部12を形成できる。さらに、凹部流路11および第1突出部12を形成しながら、第1異形部群13を同時に形成できる。レーザーの中でも、ファイバレーザーは、加工制御および短時間加工がさらに優れている。一方で、従来のベーパーチャンバで採用されているエッチング液を用いたエッチング加工では、凹部流路11と第1突出部12と第1異形部群13とを一度に形成すること自体困難である。
【0063】
また、ベーパーチャンバ1の製造方法は、レーザー加工工程の後に、少なくとも第1金属板10と第2金属板20とをレーザーで溶接するレーザー溶接工程をさらに有することが好ましい。第1金属板10および第2金属板20をレーザーで溶接することによって、内部空間Sを内部に備えるベーパーチャンバ1を容易に製造できる。レーザー加工工程で用いるレーザーとレーザー溶接工程で用いるレーザーとが同じであると、ベーパーチャンバをさらに短時間で容易に製造できる。
【0064】
具体的には、凹部流路11、第1突出部12、第1異形部群13などを備える第1金属板10の第1面10aと第2金属板20の内面20aとが互いに対向し、第1金属板10の外縁10cと金属板20の内面20aとが接触している状態の第1金属板10および第2金属板20に対して、レーザーを照射する。
【0065】
例えば、第1金属板10側から第1金属板10および第2金属板20の接触部分である外縁10cにレーザーを照射してもよいし、第2金属板20側から外縁10cにレーザーを照射してもよい。このようなレーザー照射では、少なくとも第1金属板10における第1面10aの外縁10cに溶接部40が形成される。
【0066】
また、ベーパーチャンバ1の面内方向から第1金属板10および第2金属板20の接触部分にレーザーを照射してもよい。このようなレーザー照射では、第1金属板10の側面、具体的には第1金属板10の側面と第2金属板20の側面との間に溶接部40が形成される。
【0067】
また、レーザー溶接工程では、上記のレーザー照射を組み合わせてもよい。
【0068】
このように、ベーパーチャンバ1ではレーザーを用いた加工を行う。そのため、ベーパーチャンバ1の内部空間における構造である、凹部流路11、第1突出部12、第1異形部群13などを備える第1金属板10の第1面10aに対する設計の自由度が高い。
【0069】
また、第2金属板20の内面20aに設けられる凹部25は、レーザーなどによって形成してもよい。さらには、凹部25は、第1金属板10および第2金属板20の溶接時に、第1金属板10側の第1異形部13aと第2金属板20の内面20aとを接触させる力を調節することによっても、形成することができる。
【0070】
また、上記のベーパーチャンバ1は、様々な姿勢であっても良好な熱輸送特性を求められている、携帯電話などの電子機器に好適に用いられる。ベーパーチャンバ1を備える電子機器は、様々な使用状態であっても、ベーパーチャンバ1の高い熱輸送特性を有する。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、ベーパーチャンバの厚み方向に流れるための液相の作動流体の推進力は、第1異形部群などから形成される隙間S1によって増加する。第1突出部の側面に点在している液滴などの液相の作動流体は、第2金属板の内面に容易に移動できる。このように、液相の作動流体がベーパーチャンバの厚み方向に良好に流れるため、ベーパーチャンバは優れた熱輸送特性を有することができる。
【0072】
なお、上記では、図1に示すように複数の凹部流路11が互いに平行に延在する例について示したが、複数の凹部流路11は交差してもよい。第1金属板10が複数の凹部流路11を交差する交差部を有すると、内部空間S内での熱輸送がさらに向上する。そのため、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性がさらに向上する。
【0073】
また、上記では、図1に示すように複数の凹部流路11および複数の第1突出部12が互いに平行に延在する例について示したが、複数の凹部流路11および複数の第1突出部12は同心円状に延在してもよい。
【0074】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態のベーパーチャンバの一例を示す斜視図である。図7は、図6のB-B線断面図である。
【0075】
なお、以下に示す実施形態では、第1実施形態のベーパーチャンバの構成と同一の構成部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略または簡略する。
【0076】
第2実施形態のベーパーチャンバ2において、第3金属基板の構成を追加すること以外は、第1実施形態のベーパーチャンバ1の構成と基本的に同じである。そのため、ここでは、その異なる構成について主に説明する。
【0077】
図6~7に示すように、ベーパーチャンバ2は、第1金属板10の第1面10aと対向する第2面10b側に接合される第3金属板30をさらに有し、凹部流路11の少なくとも1つ以上が第1金属板10の第1面10aから第2面10bまで貫通する。第3金属板30を構成する材料は、第1金属板10や第2金属板20と同様である。
【0078】
少なくとも1つ以上の凹部流路11は、ベーパーチャンバ2の厚み方向に沿って、第1金属板10の第1面10aから第2面10bまで貫通する。凹部流路11の体積が増加するため、内部空間Sにおける熱輸送が向上し、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性が向上する。
【0079】
ベーパーチャンバ2では、第1面10aの裏面である第1金属板10の第2面10bおよび第3金属板30の内面30aが対向するように、第1金属板10および第3金属板30が接合される。すなわち、第1金属シート10および第2金属シート20は内部が閉じられている。また、ベーパーチャンバ2は、第1金属板10および第2金属板20の間および第1金属板10および第3金属板30の間、すなわち第2金属板20および第3金属板30の間に形成される内部空間Sに作動流体を有する。そのため、第2金属板20に加えて第3金属板30からもベーパーチャンバ2の熱を外部に放出でき、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性が向上する。
【0080】
また、図7に示すように、第1金属板10は、少なくとも1つ以上の第2突出部15と第2異形部群16とを有することが好ましい。
【0081】
第2突出部15は、第1金属板10の第2面10bから第3金属板30の内面30aに向かって突出し、頂面が第3金属板30の内面30aに当接する。第2突出部15は、第1突出部12と同様の構成を有する。
【0082】
第2面10b側の第2異形部群16は、第2突出部15の頂部の一部に設けられ、第3金属板30の内面30aとの間に隙間S2を形成する、少なくとも1つ以上の第2異形部を備える。第2面10b側の第2異形部群16は、第1面10a側の第1異形部群13と同様の構成を有する。
【0083】
上記第1異形部群13が熱輸送特性を向上する理由と同様の観点から、第2異形部群16は、頂面側の第1異形部13aと同様の構成を有する頂面側の第2異形部16a、角部側の第1異形部13bと同様の構成を有する角部側の第2異形部16b、および頂部側面側の第1異形部13cと同様の構成を有する頂部側面側の第2異形部16cの少なくとも1種の異形部を備えることが好ましい。頂面側の第2異形部16a、角部側の第2異形部16b、および頂部側面側の第2異形部16cと第3金属板30の内面30aとの間に形成される隙間S2は、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性をさらに向上する。また、第3金属板30は、第2金属板20の凹部25と同様の構成を有する凹部35を内面30aに有することが好ましい。
【0084】
図8は、第2実施形態のベーパーチャンバ2の他の一例を示す斜視図である。
【0085】
図8に示すように、第3金属板30は、少なくとも1つ以上の凹部流路31と少なくとも1つ以上の突出部32と第3金属板異形部群33とを有することが好ましい。
【0086】
第3金属板30の凹部流路31は、第3金属板30の内面30aに設けられる。第3金属板30の凹部流路31は、第1金属板10の凹部流路11と同様の構成を有する。
【0087】
突出部32は、第3金属板30の内面30aから第1金属板10の第2面10bに向かって突出し、突出部32の頂面が第1金属板10の第2突出部15の頂面に当接する。第3金属板30の突出部32は、第1金属板10の第1突出部12と同様の構成を有する。
【0088】
第3金属板30の第3金属板異形部群33は、延在する第3金属板30の突出部32の頂部の一部に設けられ、第1金属板10の第2突出部15の頂面との間に隙間を形成する、少なくとも1つ以上の異形部を備える。第3金属板30の第3金属板異形部群33は、第1金属板10の異形部群13と同様の構成を有する。
【0089】
第3金属板30が凹部流路31と突出部32と第3金属板異形部群33とを有すると、第3金属板異形部群33による隙間がさらに形成される。この隙間は、上記の隙間S1と同様の構成を有する。そのため、第3金属板30の突出部32の側面に点在している液滴などの液相の作動流体は、隙間に容易に浸入することによって、第1金属板10側に容易に移動できる。そのため、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性はさらに向上する。
【0090】
また、第3金属板30の凹部流路31が第1金属板10の凹部流路11と連結するため、ベーパーチャンバ2の内部空間S内での熱輸送がさらに向上する。その結果、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性がさらに向上する。
【0091】
また、第3金属板30の第3金属板異形部群33は、第1金属板10に設けられる頂面側の第1異形部13aと同様の構成を有する頂面側の異形部33a、角部側の第1異形部13bと同様の構成を有する角部側の異形部33b、および頂部側面側の第1異形部13cと同様の構成を有する頂部側面側の異形部33cの少なくとも1種の異形部を備えることが好ましい。第3金属板30の第3金属板異形部群33が当該異形部33a、33b、33cを備えると、上記のようなメカニズムにより、ベーパーチャンバ2の熱輸送特性がさらに向上する。
【0092】
また、ベーパーチャンバ2において、第1金属板10は、外縁10cにおける第1面10aおよび第2面10bに溶接部40を有してもよい。また、第1金属板10は、側面に溶接部40を有する、すなわち、第1金属板10における第2金属板20側の側面および第2金属板20における第1金属板10側の側面、ならびに、第1金属板10における第3金属板30側の側面および第3金属板30における第1金属板10側の側面に溶接部40を有してもよい。こうして、第1金属板10および第2金属板20、ならびに第1金属板10および第3金属板30が溶接される
【0093】
以上説明した実施形態によれば、第2金属板に加えて第3金属板を有すると共に、第1金属板の第1面から第2面まで貫通する凹部流路を有するベーパーチャンバでは、凹部流路の体積が増加するため、内部空間Sにおける熱輸送が向上する。さらには、第3金属板からも熱をベーパーチャンバの外部に放出できる。そのため、ベーパーチャンバの熱輸送特性はさらに向上する。
【0094】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【符号の説明】
【0095】
1、2 ベーパーチャンバ
10 第1金属板
10a 第1金属板の第1面
10b 第1金属板の第2面
10c 第1金属板の外縁
11 凹部流路
12 第1突出部
12a 第1突出部の頂部
121 頂部の頂面
122 頂部の側面
12b 第1突出部の側面
12c 第1突出部の角部
13 第1異形部群
13a 頂面側の第1異形部
13b 角部側の第1異形部
13c 頂部側面側の第1異形部
15 第2突出部
16 第2異形部群
16a 頂面側の第2異形部
16b 角部側の第2異形部
16c 頂部側面側の第2異形部
20 第2金属板
20a 第2金属板の内面
20b 第2金属板の外面
21 凹部流路
22 第2金属板の突出部
23 第2金属板異形部群
23a 頂面側の異形部
23b 角部側の異形部
23c 頂部側面側の異形部
25 凹部
30 第3金属板
30a 第3金属板の内面
30b 第3金属板の外面
31 凹部流路
32 第3金属板の突出部
33 第3金属板異形部群
33a 頂面側の異形部
33b 角部側の異形部
33c 頂部側面側の異形部
35 凹部
40 溶接部
S 内部空間
S1、S2 隙間
F(L) 液相の作動流体の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8