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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 5/00 20240101AFI20240624BHJP
   H01P 3/02 20060101ALI20240624BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
H04B5/00
H01P3/02
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020145920
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040948
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋幸
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩一
(72)【発明者】
【氏名】菊地 大輔
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-359582(JP,A)
【文献】特開2017-099190(JP,A)
【文献】特開平10-293826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/00
H01P 3/02
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アンテナと、
前記第1アンテナに接続され、前記第1アンテナで高周波の第1電磁波を受信する通信装置と、
第2アンテナと、
前記第2アンテナに接続され、送信する情報で変調された高周波の第1電磁波を前記第2アンテナで送信するモジュールと、
ケーブルにおいて当該ケーブルの長手方向に設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナと電磁結合する導体と、
を備え、
前記第2アンテナは、前記第1電磁波を前記導体に伝搬させ、
前記第1アンテナは、前記導体で伝搬される前記第1電磁波を受信し、
前記第1アンテナと前記第2アンテナの少なくとも一方は、前記導体と非接触であり、
前記通信装置は、高周波の第2電磁波を前記第1アンテナで送信し、
前記第2アンテナは、前記導体で伝搬された前記第2電磁波を受信し、
前記モジュールは、前記第2アンテナが受信した前記第2電磁波を整流した電力で駆動する
通信システム。
【請求項2】
前記第1電磁波は、前記第2アンテナと前記導体との電磁結合により励振されて伝搬される請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第2電磁波は、前記第1アンテナと前記導体との電磁結合により前記ケーブルの表面近傍で励振されて伝搬される
請求項に記載の通信システム。
【請求項4】
前記導体は1層である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記第1アンテナは、線状の第1導体と、前記第1導体と平行で線状の第2導体と、前記第1導体及び前記第2導体に連なる折り返し部を有し、
前記第1導体から前記折り返し部に向かって流れる電流の方向は、前記折り返し部から前記第2導体へ流れる電流の方向と逆方向である
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記第1アンテナは、前記導体で伝搬される電磁波の進行方向に交差する面に沿った領域を有する請求項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記第1アンテナは、前記ケーブルから離れている
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記第1アンテナから前記導体までの距離は前記第2電磁波の波長の1/4以下である
請求項に記載の通信システム。
【請求項9】
前記第1アンテナは、少なくとも一部が平行な環状の形状である
請求項に記載の通信システム。
【請求項10】
前記導体から前記第1電磁波及び前記第2電磁波の波長の1/10以下の距離に配置され、前記第1電磁波及び前記第2電磁波が前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを含む範囲にわたって共振するように前記導体の共振周波数を調整する調整器
を備える請求項に記載の通信システム。
【請求項11】
前記調整器が前記第2アンテナと一体化している
請求項1に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
離れた位置にある装置と通信を行う発明として、例えば特許文献1~3に開示された発明がある。特許文献1に開示されている発明は、ケーブルを識別するデータを記憶して非接触でデータを読み書きできる情報記憶素子をケーブルに沿って連続して複数配設し、リーダから無線で情報記憶素子へ給電し、給電された情報記憶素子のデータを読み出している。特許文献2に開示されている発明は、誘電体層を挟んで位置する帯状のストリップ導体と帯状のグランド導体で構成されたリーダアンテナにリーダを接続し、リーダアンテナ上にある物品に設けられた無線タグへリーダアンテナを介して電磁界結合による無線通信を行って無線タグから情報を読み出しており、リーダアンテナの長手方向のどの位置においても無線タグと通信が可能となっている。特許文献3に開示されている発明は、狭間領域を挟んで位置するメッシュ状の第1導体部と第1導体部に平行な平板状の第2導体部とで構成された信号伝達装置に対し、一対の電極に接続された通信機器を近接させて信号伝達装置から通信機器へ給電し、給電された通信機器が信号伝達装置を介して通信を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-146068号公報
【文献】特開2015-95064号公報
【文献】特開2007-82178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明では、ケーブルに沿って情報記憶素子を複数配設しなければならず、複数の情報記憶素子へのデータの書き込みや複数の情報記憶素子の配設に多大な手間がかかる。特許文献2に開示された発明では、リーダアンテナとして、誘電体層を挟んでストリップ導体とグランド導体とを設置する必要があり、アンテナの設置に手間がかかる。特許文献3に開示された発明では、信号伝達装置の設置において、狭間領域を挟んで第1導体部と第2導体部を設置する必要があり、設置に手間がかかる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ケーブル近傍に設置されて情報を送信するモジュールから離れた位置でもモジュールから送信される情報を取得可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る通信システムは、第1アンテナと、前記第1アンテナに接続され、前記第1アンテナで高周波の第1電磁波を受信する通信装置と、第2アンテナと、前記第2アンテナに接続され、送信する情報で変調された高周波の第1電磁波を前記第2アンテナで送信するモジュールと、ケーブルにおいて当該ケーブルの長手方向に設けられ、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナと電磁結合する導体と、を備え、前記第2アンテナは、前記第1電磁波を前記導体に伝搬させ、前記第1アンテナは、前記導体で伝搬される前記第1電磁波を受信し、前記第1アンテナと前記第2アンテナの少なくとも一方は、前記導体と非接触であることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1電磁波は、前記第2アンテナと前記導体との電磁結合により励振されて伝搬されることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記通信装置は、高周波の第2電磁波を前記第1アンテナで送信し、前記第2アンテナは、前記導体で伝搬された前記第2電磁波を受信し、前記モジュールは、前記第2アンテナが受信した前記第2電磁波を整流した電力で駆動することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第2電磁波は、前記第1アンテナと前記導体との電磁結合により前記ケーブルの表面近傍で励振されて伝搬されることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記導体は1層であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1アンテナは、線状の第1導体と、前記第1導体と平行で線状の第2導体と、前記第1導体及び前記第2導体に連なる折り返し部を有し、前記第1導体から前記折り返し部に向かって流れる電流の方向は、前記折り返し部から前記第2導体へ流れる電流の方向と逆方向であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1アンテナは、前記導体で伝搬される電磁波の進行方向に交差する面に沿った領域を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1アンテナは、前記ケーブルから離れていることを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1アンテナから前記導体までの距離は前記第2電磁波の波長の1/4以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記第1アンテナは、少なくとも一部が平行な環状の形状であることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記導体から前記第1電磁波及び前記第2電磁波の波長の1/10以下の距離に配置され、前記第1電磁波及び前記第2電磁波が前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを含む範囲にわたって共振するように前記導体の共振周波数を調整する調整器を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る通信システムは、前記調整器が前記第1アンテナと前記第2アンテナの少なくとも一方と一体化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ケーブル近傍に設置されて情報を送信するモジュールから離れた位置でもモジュールから送信される情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るケーブルの断面図である。
図3図3は、実施形態に係る通信装置の構成を示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る通信モジュールの構成を示すブロック図ある。
図5図5は、第2実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図6図6は、第3実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図7図7は、変形例に係るアンテナの構成を示す図である。
図8図8は、変形例に係るアンテナの構成を示す図である。
図9図9は、変形例に係るアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
[第1実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る通信システム1Aの構成を示す図である。通信システム1Aは、例えば管路内に設置されたケーブル60に係る情報を取得するシステムである。通信システム1Aは、通信装置10、アンテナ20A、通信モジュール30、アンテナ40及びバラン50を含む。
【0022】
ケーブル60は、例えば複数の光ファイバ心線を束ねたケーブルである。図2にケーブル60の断面を示す。スペーサ62は、可撓性を有する樹脂で形成されている。スペーサ62の外周には、複数の溝が周方向に所定の間隔を空けてスペーサ62の長手方向に対して例えば螺旋状に設けられている。この溝には、複数の4心テープ心線63が収容される。4心テープ心線63は、4本のファイバ素線を平行に並べ、樹脂で被覆した心線である。また、スペーサ62の中心には、スペーサ62の長手方向にテンションメンバ61が埋設されている。テンションメンバ61は、ケーブル60の敷設時にかかる張力から4心テープ心線63を守る部材である。テンションメンバ61は、鋼線やFRP等からなり、ケーブル60に掛かる外力から内部の4心テープ心線63を保護する。
【0023】
スペーサ62の外周には、押さえ巻きテープ64が縦添えや螺旋巻などで巻き付けられており、押さえ巻きテープ64の外周には内装シース65が設けられている。内装シース65は、樹脂製であり、例えば押出成形で形成される。また、内装シース65の外周には、ステンレスで形成されたステンレステープ66が縦添え巻きで巻き付けられている。ステンレステープ66は、一層であるが、二層以上であってもよい。ステンレステープ66は、ケーブル60の引張強度を確保し、ケーブル60に難燃性、遮水性、遮蔽性等を付与する部材である。ステンレステープ66の外周には、外被67が設けられている。外被67は樹脂製であり、例えば、カーボンブラック等を添加したポリエチレンやポリオレフィンなどの樹脂が適用可能である。
【0024】
通信装置10は、ケーブル60の外部の状態を示す情報の取得と、通信モジュール30へ電磁結合方式で電力供給を行う装置である。通信装置10は、バラン50を介してアンテナ20Aに接続されている。通信装置10が供給する交流電力は、バラン50、アンテナ20A、ケーブル60及びアンテナ40を介して通信モジュール30へ供給される。また、通信装置10は、通信モジュール30からアンテナ40、ケーブル60、アンテナ20A及びバラン50を介して送信される情報を取得する。
【0025】
図3は、通信装置10の構成を示すブロック図である。通信装置10は、制御部101、電池102、結合部103及びタッチパネル104を備える。電池102は、通信装置10の電源であり、例えば二次電池である。なお、電池102は、二次電池に限定されるものではなく、一次電池であってもよい。タッチパネル104は、通信装置10を操作するためのGUI(Graphical User Interface)や通信モジュール30から取得した情報等を表示する機能と、表示画面の押下に応じて各種操作のための信号を出力する機能とを兼ね備える入出力インターフェースである。詳細には、タッチパネル104は、制御部101の制御に基づいて、通信装置10を操作するための各種GUIと、通信モジュール30から取得した情報を表示する。また、タッチパネル104は、GUIや画像等を表示する表示画面に対して操作者が押下した位置及び押下した長さに応じた信号を、制御部101に対して出力する。制御部101は、タッチパネル104から出力された信号に応じて各種処理を行う。
【0026】
結合部103は、電磁結合方式による電力伝送のための回路や電磁結合方式による通信モジュール30との通信のための復調回路を備えており、制御部101に接続されている。結合部103は、バラン50を介してアンテナ20Aに接続される。結合部103は、例えば、電力供給のために高周波信号を出力し、電磁結合方式による給電で通信モジュール30へ電力供給を行う。結合部103が出力する高周波信号は、高周波の第2電磁波の一例である。また、結合部103は、出力した高周波信号を変調して通信モジュール30から送信される情報を復調回路で復調する。なお、結合部103が出力する高周波信号の周波数は、本実施形態では例えば13.56MHzであるが、13.56MHz以外の周波数であってもよい。
【0027】
制御部101は、演算部と記憶部とを備えている。制御部101は、電池102から供給される電力で駆動される。演算部は、通信装置10の機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、FPGA(field-programmable gate array)、又はCPUとFPGAとの両方で構成される。記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)とRAM(Random Access Memory)を備えている。このROMは、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータなどを格納している。また、このRAMは、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果を格納するスペースとして使用される。プログラムを実行中の制御部101は、タッチパネル104で行われるオペレータの操作に応じて結合部103を制御し、通信モジュール30へ電力供給を行う。また、制御部101は、通信モジュール30が送信した情報を取得し、取得した情報をタッチパネル104で表示する。
【0028】
図1に戻り、アンテナ20Aは、板状導体21A、線状導体22A、線状導体23A、コンデンサC1及びコイルL1で環状に構成されている。アンテナ20Aは、第1アンテナの一例である。板状の導体である板状導体21Aは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置され、線状の導体である線状導体22Aと線状導体23Aは、ケーブル60の長手方向に直交する方向、即ち、ケーブル60の径方向に沿って平行に配置されている。この平行に配置された線状導体22A、23Aで囲まれる領域は、ステンレステープ66で伝搬される高周波信号の進行方向に交差する面に沿った領域の一例である。線状導体22Aと線状導体23Aの間隔は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/4以下であることが好ましい。コイルL1の一端は、板状導体21Aに接続されている線状導体22Aに接続され、コイルL1の他端は、バラン50を介して通信装置10に接続されている。コンデンサC1の一端は、板状導体21Aに接続され、コンデンサC1の他端は、線状導体23Aに接続されている。線状導体23Aは、バラン50を介して通信装置10に接続されている。なお、結合部103が出力する高周波信号にステンレステープ66が共振するように、線状導体22A、23Aの長さ、線状導体22Aと線状導体23Aの間隔、コイルL1のインダクタンス、コンデンサC1の静電容量が設定される。なお、アンテナ20Aにおいては、板状導体21Aを線状の導体に替えた構成としてもよい。
【0029】
結合部103からバラン50を介してアンテナ20Aに高周波信号が供給されると、アンテナ20Aにおいては、図1に示す矢印の方向で電流が流れる。具体的には、アンテナ20Aにおいては、まず、コイルL1から線状導体22Aに電流が流れる。線状導体22Aを流れる電流は、板状導体21Aで折り返し、コンデンサC1から線状導体23Aへ流れる。板状導体21Aにおいて、線状導体22Aが接続されている部分と線状導体23Aが接続されている部分の間は、線状導体23Aに流れる電流の方向を線状導体22Aに流れる電流の方向と逆方向にする折り返し部の一例である。
【0030】
高周波信号が供給された板状導体21Aは、ケーブル60のステンレステープ66に電磁結合し、高周波信号は、板状導体21Aに電磁結合したステンレステープ66に沿って伝搬する。即ち、ステンレステープ66は、高周波信号を伝搬する導体として機能する。ここで、板状導体21Aからステンレステープ66までの距離は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/4以下であるのが好ましく、高周波信号の波長の1/10以下であるのがより好ましい。
【0031】
アンテナ20Aにおいては、ケーブル60に近接する導体を線状の導体に比べて面積が大きい板状導体21Aとしているため、ステンレステープ66に近接する導体が線状の導体である場合と比較すると、ステンレステープ66との電磁結合が強くなる。また、アンテナ20Aにおいては、板状導体21Aを跨いで線状導体22Aを流れる電流の方向と線状導体23Aを流れる電流の方向とが逆方向となるため、アンテナ20Aから空間への電磁波の放射を抑えることができる。
【0032】
図1に戻り、アンテナ40は、板状の導体である板状導体41、コンデンサC2及びコイルL2で構成されている。アンテナ40は、第2アンテナの一例である。コイルL2の一端は、板状導体41に接続され、コイルL2の他端は、通信モジュール30に接続されている。コンデンサC2の一端は、板状導体41に接続され、コンデンサC2の他端は、通信モジュール30に接続されている。板状導体41は、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置される。板状導体41からケーブル60までの距離は、通信装置10がアンテナ20Aで出力する高周波信号の波長の1/10以下であるのが好ましい。
【0033】
通信モジュール30は、ケーブル60の外部の状態を検知するモジュールである。通信モジュール30は、例えば管路内に設置されているケーブル60の外周面に配置され、アンテナ40に接続されている。通信モジュール30は、アンテナ40を介して供給される電力で駆動し、ケーブル60の外部の状態を示す情報を、アンテナ40を介して送信する。
【0034】
図4は、通信モジュール30の構成を示すブロック図である。通信モジュール30は、モジュール制御部301、整流部302、蓄電部303、安定化電源304、センサ305及び変調部306を有する。
【0035】
整流部302は、ステンレステープ66からアンテナ40を介して供給される交流電力を整流して直流電力に変換して出力する。蓄電部303は、例えば、二次電池、スーパキャパシタ、電解コンデンサ等によって構成され、整流部302から出力される脈流電流を平滑化して出力する。安定化電源304は、例えば、DC-DCコンバータ等によって構成され、蓄電部303から出力される直流電力を所定の電圧に降圧または昇圧して出力する。センサ305は、例えば、温度を検知する温度センサである。センサ305は、温度を検知し、検知した温度に応じた信号をモジュール制御部301出力する。変調部306は、電磁結合方式による通信のための変調回路を備えており、モジュール制御部301接続されている。
【0036】
モジュール制御部301は、演算部と記憶部とを備えている。モジュール制御部301は、安定化電源304から供給される電力で駆動する。演算部は、通信モジュール30の機能の実現のための各種演算処理を行うものであり、例えばCPU、FPGA、又はCPUとFPGAとの両方で構成される。記憶部は、例えばROMとRAMを備えている。このROMは、演算部が演算処理を行うために使用する各種プログラムやデータ、通信モジュール30を一意に識別する識別子などを格納している。また、このRAMは、演算部が演算処理を行う際の作業スペースや演算部の演算処理の結果を格納するスペースとして使用される。プログラムを実行中のモジュール制御部301は、予め記憶部に記憶されている前述の識別子を、変調部306を制御して送信する。また、モジュール制御部301は、センサ305から供給される信号が表す温度を示す情報を、変調部306を制御して送信する。
【0037】
次に通信システム1Aの動作について説明する。オペレータは、管路内に設置されたケーブル60の外部の温度を測定するため、例えばマンホール内においてアンテナ20Aをケーブル60に近づける。通信装置10は、オペレータがタッチパネル104に対して行った操作に応じて、結合部103から高周波信号を出力する。結合部103から出力された高周波信号は、バラン50からアンテナ20Aを介してステンレステープ66に伝搬し、ステンレステープ66に沿って伝搬する。ステンレステープ66を伝搬した高周波信号は、アンテナ40で受信される。
【0038】
アンテナ40で受信された高周波信号は、整流部302、蓄電部303及び安定化電源304により所定電圧の直流電力に変換され、この直流電力により、モジュール制御部301が駆動する。駆動したモジュール制御部301は、センサ305から供給される信号を取得する。モジュール制御部301は、センサ305から供給される信号を取得すると、記憶部が記憶している識別子と、センサ305から取得した信号が表す温度を送信する。具体的には、モジュール制御部301は、取得した信号が表す温度と、記憶部が記憶している識別子をデジタル化された情報に変換し、アンテナ40に伝搬される高周波信号をデジタル化された情報に基づいて変調することにより温度と識別子を送信する。
【0039】
通信モジュール30から送信される変調された高周波信号は、ステンレステープ66を伝搬し、アンテナ20Aで受信される。通信モジュール30から送信される変調された高周波信号は、第1電磁波の一例である。アンテナ20Aで受信された高周波信号は、バラン50を介して結合部103で受信される。結合部103は、バラン50を介して供給される高周波信号を復調し、通信モジュール30が送信した情報を取得する。制御部101は、結合部103で復調された情報を取得し、取得した情報に含まれる識別子と温度をタッチパネル104で表示する。
【0040】
例えば、ステンレステープ66を介さず、空間を介して通信装置10と通信モジュール30とを電磁結合方式により結合して電力伝送と情報通信を行う場合、アンテナから出力される電波は、アンテナからの距離の二乗に反比例して減衰するため、遠距離での電力供給及び情報通信を小さな電力で行うことが困難となる。
【0041】
一方、本実施形態によれば、アンテナ20Aにおいては、板状導体21Aを跨いで線状導体22Aを流れる電流の方向と線状導体23Aを流れる電流の方向とが逆方向となるため、アンテナ20Aから空間への高周波信号の放射を抑え、ステンレステープ66へ高周波信号を伝搬させることができる。また、通信装置10から出力される高周波信号がステンレステープ66と共振することにより、ステンレステープ66を介して高周波信号が遠距離に伝搬するため、通信装置10から遠い位置にある通信モジュール30と通信を行うことが可能となり、ケーブル60においてオペレータが近づくことができない位置にある部分について、センサ305での測定結果を得ることができる。
【0042】
なお、図1においては、一つの通信モジュール30と一つのアンテナ40の組を図示しているが、通信システム1Aに含まれる通信モジュール30とアンテナ40の組の数は、一組に限定されるものではなく、複数組の通信モジュール30とアンテナ40を、間隔を開けてケーブル60に沿って配置してもよい。
【0043】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。図5は、第2実施形態に係る通信システム1Bの構成を示す図である。通信システム1Bは、アンテナ20Aに替えてアンテナ20Bを備える点で第1実施形態の通信システム1Aと相違する。他の構成については、通信システム1Aと同じであるため、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、第1実施形態との相違点について説明する。
【0044】
アンテナ20Bは、線状導体22B、線状導体23B、コンデンサC3及びコイルL3で環状に構成されている。アンテナ20Bは、第1アンテナの一例である。線状の導体である線状導体22Bと、線状の導体である線状導体23Bは、互いに少なくとも一部が平行となるように配置されている。線状導体22Bと線状導体23Bにおいて平行な部分の長さは、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/2以下であるのが好ましい。また、線状導体22Bと線状導体23Bにおいて平行な部分の間隔は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/4以下であることが好ましい。コイルL3の一端は、線状導体22Bに接続され、コイルL3の他端は、バラン50を介して通信装置10に接続されている。コンデンサC3の一端は、線状導体22Bに接続され、コンデンサC3の他端は、線状導体23Bの一端に接続されている。線状導体23Bの他端は、バラン50を介して通信装置10に接続されている。
【0045】
通信装置10からバラン50を介してアンテナ20Bに高周波信号が供給されると、アンテナ20Bにおいては、図5に示す矢印の方向で電流が流れる。具体的には、アンテナ20Bにおいては、まず、コイルL3から線状導体22Bに電流が流れる。線状導体22Bを流れる電流は、コンデンサC3を介して折り返し、コンデンサC3から線状導体23Bへ流れる。図5において破線で囲まれた折り返し部24Bは、線状導体23Bに流れる電流の方向を線状導体22Bに流れる電流の方向と逆方向にする折り返し部の一例である。
【0046】
アンテナ20Bは、ケーブル60のステンレステープ66に電磁結合し、結合部103から出力された高周波信号は、アンテナ20Bに電磁結合したステンレステープ66に沿って伝搬する。ここで、アンテナ20Bからステンレステープ66までの距離は、結合部103が出力する高周波信号の波長以下であればよいが、線状導体22Bと線状導体23Bの平行部分の長さより短く、且つ結合部103が出力する高周波信号の波長の1/4以下であるのが好ましく、高周波信号の波長の1/10以下であるのがより好ましい。
【0047】
また、結合部103が出力する高周波信号にステンレステープ66が共振するように、線状導体22Bと線状導体23Bの長さ、線状導体22Bと線状導体23Bの間隔、コイルL3のインダクタンス、コンデンサC3の静電容量を設定するのが好ましい。なお、図5においては、線状導体22Bと線状導体23Bにおいて互いに平行な部分について、ケーブル60の長手方向に沿うように配置した例を示しているが、線状導体22Bと線状導体23Bにおいて互いに平行な部分は、ケーブル60の長手方向に垂直な方向に沿うように配置してもよい。
【0048】
通信システム1Bにおいては、通信装置10は、オペレータがタッチパネル104に対して行った操作に応じて、結合部103から高周波信号を出力する。結合部103から出力された高周波信号は、バラン50からアンテナ20Bを介してステンレステープ66に伝搬し、ステンレステープ66に沿って伝搬する。ステンレステープ66を伝搬した高周波信号は、アンテナ40で受信される。
【0049】
アンテナ40で受信された高周波信号は、第1実施形態と同様に直流電力に変換され、この直流電力により、モジュール制御部301が駆動する。駆動したモジュール制御部301は、第1実施形態と同様に、センサ305から取得した信号が表す温度と、記憶部が記憶している識別子をデジタル化された情報に変換し、アンテナ40に伝搬される高周波信号をデジタル化された情報に基づいて変調することにより温度と識別子を送信する。
【0050】
通信モジュール30から送信される変調された高周波信号は、ステンレステープ66を伝搬し、アンテナ20Bで受信される。アンテナ20Bで受信された高周波信号は、バラン50を介して結合部103で受信される。結合部103は、バラン50を介して供給される高周波信号を復調し、通信モジュール30が送信した情報を取得する。制御部101は、結合部103で復調された情報を取得し、取得した情報に含まれる識別子と温度をタッチパネル104で表示する。
【0051】
本実施形態によれば、通信装置10からアンテナ20Bを介して出力される高周波信号がステンレステープ66と共振することにより、ステンレステープ66を介して高周波信号が遠距離に伝搬するため、通信装置10から遠い位置にある通信モジュール30と通信を行うことが可能となり、ケーブル60においてオペレータが近づくことができない位置にある部分について、センサ305での測定結果を得ることができる。
【0052】
なお、ケーブル60は、光ファイバ心線を束ねたケーブルではなく、例えば導体を束ねて電力を伝送するケーブルであってもよい。ケーブル60が電力を伝送するケーブルである場合、通信装置10からアンテナ20Bを介して出力される高周波信号は、ケーブル60において電力を伝送する導体と共振し、ケーブル60の導体を介して高周波信号が遠距離に伝搬する。また、ケーブル60が電力を伝送するケーブルであり、伝送する電力が高電圧である場合、アンテナ20Bをケーブル60が配設されている設備の壁面に設置してもよい。
【0053】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態について説明する。図6は、第3実施形態に係る通信システム1Cの構成を示す図である。通信システム1Cは、アンテナ70Aを備える点で第2実施形態の通信システム1Bと相違する。他の構成については、通信システム1Bと同じであるため、第2実施形態と同じ構成については同じ符号を付して説明を省略し、以下の説明においては、第2実施形態との相違点について説明する。
【0054】
アンテナ70Aは、ステンレステープ66の共振周波数を調整するためのアンテナである。アンテナ70Aは、板状導体71A、線状導体72A、抵抗R1及びコイルL4を有する。アンテナ70Aは、調整器の一例である。板状の導体である板状導体71Aは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置され、線状の導体である線状導体72Aは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置されている。抵抗R1の一端は、板状導体71Aに接続され、抵抗R1の他端は、コイルL4に接続されている。コイルL4の一端は、抵抗R1に接続され、コイルL4の他端は、線状導体72Aに接続されている。板状導体71Aとステンレステープ66との間隔は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/10以下であることが好ましい。アンテナ70Aにおいては、結合部103が出力する高周波信号にステンレステープ66が共振するように、線状導体72Aの長さ、コイルL4のインダクタンス、抵抗R1の抵抗値を設定する。
【0055】
アンテナ70Aは、結合部103から出力されてステンレステープ66を伝搬する高周波信号について、反射した高周波信号の位相を調整する。位相が調整された高周波信号は、ステンレステープ66を共振させるため、結合部103から出力された高周波信号が遠距離に伝搬し、通信装置10から遠い位置にある通信モジュール30と通信を行うことが可能となる。
【0056】
なお、通信システム1Cは、アンテナ70Aに替えて、図7に示すアンテナ70B又は図8に示すアンテナ70Cを備える構成であってもよい。
【0057】
図7に示すアンテナ70Bは、板状導体71B、線状導体72B、線状導体73B、抵抗R2及びコイルL5を有する。アンテナ70Bは、調整器の一例である。板状の導体である板状導体71Bは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置され、線状の導体である線状導体72B、73Bは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置されている。抵抗R2の一端は、板状導体71Bに接続され、抵抗R2の他端は、線状導体73Bに接続されている。コイルL5の一端は、板状導体71Bに接続され、コイルL5の他端は、線状導体72Bに接続されている。線状導体72B、73Bは、例えば、線状の導体をコイル状に巻いたものや、プリント基板に形成されたミアンダ配線の導電パターンである。板状導体71Bとステンレステープ66との間隔は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/10以下であることが好ましい。アンテナ70Bにおいては、結合部103が出力する高周波信号にステンレステープ66が共振するように、線状導体72B、73Bの長さ、コイルL5のインダクタンス、抵抗R2の抵抗値を設定する。
【0058】
図8に示すアンテナ70Cは、板状導体71C、線状導体72C、線状導体73C、抵抗R3及び遅延回路74Cを有する。アンテナ70Cは、調整器の一例である。板状の導体である板状導体71Cは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置され、線状の導体である線状導体72C、73Cは、長手方向がケーブル60の長手方向に沿うように配置されている。抵抗R3の一端は、板状導体71Cに接続され、抵抗R1の他端は、線状導体73Cに接続されている。遅延回路74は、板状導体71Bと線状導体72Cに接続されている。遅延回路74は、例えば、線状の導体をコイル状に巻いたものや、プリント基板に形成されたミアンダ配線の導電パターン、又はコイル、コンデンサ、抵抗の組み合わせで形成された回路である。板状導体71Cとステンレステープ66との間隔は、結合部103が出力する高周波信号の波長の1/10以下であることが好ましい。アンテナ70Cにおいては、結合部103が出力する高周波信号にステンレステープ66が共振するように、遅延回路74の遅延時間を調整する。
【0059】
なお、アンテナ70A~70Cは、ケーブル60のいずれの位置に配置してもよく、例えば、ケーブル60の端部に配置してもよい。
【0060】
また、図9に示すように、抵抗R3に替えて通信モジュール30を板状導体71Cと線状導体73Cに接続する構成としてもよい。図9に示す構成においては、板状導体71C、線状導体72C、線状導体73C及び遅延回路74Cは、アンテナ70Dを構成する。図9に示す構成によれば、アンテナ70Dは、通信モジュール30に対して高周波信号の受信と、通信モジュール30から情報の送信を行うアンテナとして機能するとともに、結合部103が出力する高周波信号とステンレステープ66を共振させる調整器として機能する。
【0061】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0062】
上述した実施形態においては、センサ305は温度センサであるが、温度センサ以外のセンサであってもよく、例えば、水を検知するセンサ、湿度を検知するセンサ、気圧を検知するセンサなどであってもよい。また、通信モジュール30は、センサ305を備えていない構成とし、電力が供給されると記憶している識別子のみを送信する構成としてもよい。
【0063】
上述した実施形態においては、ケーブル60は、管路内に設置されるケーブルであるが、ケーブル60は架空線であってもよい。
【0064】
上述した実施形態においては、結合部103に変調回路を設け、結合部103が出力する高周波信号を情報やコマンドに応じて変調回路で変調し、通信装置10から通信モジュール30へ情報やコマンドを送信する構成としてもよい。また、このように通信装置10から情報やコマンドを送信する構成においては、通信モジュール30は、送信された情報やコマンドに応じた応答を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1A、1B、1C 通信システム
10 通信装置
20A、20B アンテナ
21A 板状導体
22A、23A、22B、23B 線状導体
24B 折り返し部
30 通信モジュール
40 アンテナ
41 板状導体
50 バラン
60 ケーブル
61 テンションメンバ
62 スペーサ
63 4心テープ心線
64 押さえ巻きテープ
65 内装シース
66 ステンレステープ
67 外被
70A~70D アンテナ
71A~71C 板状導体
72A、72B、72C、73B、73C 線状導体
74C 遅延回路
101 制御部
102 電池
103 結合部
104 タッチパネル
301 モジュール制御部
302 整流部
303 蓄電部
304 安定化電源
305 センサ
306 変調部
C1~C3 コンデンサ
L1~L5 コイル
R1~R3 抵抗
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9