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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】光学式膜厚測定装置および研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20240624BHJP
   G01B 11/06 20060101ALI20240624BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20240624BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20240624BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240624BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240624BHJP
【FI】
B24B37/013
G01B11/06 G
B24B49/04 Z
B24B37/10
H01L21/304 622S
B24B49/12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020168845
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061077
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】木下 将毅
(72)【発明者】
【氏名】金馬 利文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 良和
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽一
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-088021(JP,A)
【文献】国際公開第2001/20304(WO,A2)
【文献】特開2020-104191(JP,A)
【文献】特開2019-024036(JP,A)
【文献】特開2003-197587(JP,A)
【文献】実開平02-086128(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 49/04
B24B 49/12
G01B 11/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピースの研磨装置に設置される光学式膜厚測定装置であって、
光源と、
前記光源に連結された投光用光ファイバーケーブルと、
ワークピースからの反射光を受ける受光用光ファイバーケーブルと、
前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、
前記反射光の強度の測定データから前記ワークピースの膜厚を算出するデータ処理部と、
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルを囲むケーブルハウジングと、
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルに隣接する流体流路を形成する流路構造体を備え、
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルのそれぞれの先端部は、前記ケーブルハウジングおよび前記流路構造体により支持されており、
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルのそれぞれの先端部は、前記ケーブルハウジングの内面と前記流路構造体の外面の両方に接触している、光学式膜厚測定装置。
【請求項2】
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは接着剤により互いに接着されている、請求項1に記載の光学式膜厚測定装置。
【請求項3】
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングおよび前記流路構造体のうちの少なくとも一方に接着剤により固定されている、請求項1または2に記載の光学式膜厚測定装置。
【請求項4】
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングと前記流路構造体との間の空間を満たす充填材によって保持されている、請求項1に記載の光学式膜厚測定装置。
【請求項5】
前記光学式膜厚測定装置は、前記流路構造体に接続されたバッファタンクをさらに備えており、前記流体流路は前記バッファタンクの内部に連通している、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学式膜厚測定装置。
【請求項6】
前記光学式膜厚測定装置は、内部にドレイン流路を有するドレイン構造体をさらに備えており、
前記ドレイン構造体は、前記ケーブルハウジング内に配置されており、
前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルのそれぞれの先端部は、前記ドレイン構造体の外面に接触している、請求項1に記載の光学式膜厚測定装置。
【請求項7】
研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、
ワークピースを前記研磨パッドに押し付けるように構成された研磨ヘッドと、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の光学式膜厚測定装置を備えている、研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースの膜厚を測定する光学式膜厚測定装置に関し、特にワークピースを研磨パッド上で研磨しながら、ワークピースの膜厚を測定する光学式膜厚測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの研磨は、一般に、化学機械研磨装置(CMP装置)を用いて行われる。このCMP装置は、研磨テーブル上に貼り付けられた研磨パッドに研磨液を供給しながら、ウェーハを研磨パッドに摺接させることによりウェーハの表面を研磨するように構成される。ウェーハの研磨は、その表面を構成する膜(絶縁膜、金属膜、シリコン層など)の厚さが所定の目標値に達したときに終了される。したがって、ウェーハの研磨中は、膜厚が測定される。
【0003】
膜厚測定装置の例として、光をウェーハの表面に導き、ウェーハからの反射光に含まれる光学情報を解析することにより膜厚を測定する光学式膜厚測定装置がある。この光学式膜厚測定装置は、研磨テーブル内に配置された投光用光ファイバーケーブルおよび受光用光ファイバーケーブルを備えている。投光用光ファイバーケーブルから発せられた光は、研磨パッドの通孔を通ってウェーハに導かれ、ウェーハからの反射光は、再び通孔を通って受光用光ファイバーケーブルに到達する。光学式膜厚測定装置は、受光用光ファイバーケーブルによって受けた反射光のスペクトルに基づいて、ウェーハの膜厚を決定する。
【0004】
ウェーハの研磨中は、研磨液が研磨パッド上に供給される。研磨液は研磨パッドの通孔に流入し、光の進行を妨げる。そこで、光の通路を確保するために、研磨テーブル内から純水が通孔に供給される。通孔は純水で満たされ、通孔に侵入した研磨液および研磨屑は、純水とともにドレインラインを通って排出される。通孔に形成された純水の流れは、光の通路を確保し、精度の高い膜厚測定を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-165627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、純水は、研磨パッドの通孔に向かって流れるときに、研磨テーブル内に配置された投光用光ファイバーケーブルおよび受光用光ファイバーケーブルに接触する。この純水の流れは、投光用光ファイバーケーブルおよび受光用光ファイバーケーブルを変位または振動させることがある。このような光ファイバーケーブルの変位または振動は、反射光のスペクトルを変化させてしまう。最近では、ウェーハの膜厚測定に対して高い精度が要求されており、従来の光学式膜厚測定装置は、そのような高い膜厚精度の要求を満たさないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、純水などの流体を研磨パッドの通孔に流すときに、光ファイバーケーブルに対する流体の流れの影響を排除し、高い膜厚測定精度を達成することができる光学式膜厚測定装置を提供する。また、本発明は、そのような光学式膜厚測定装置を備えた研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、ワークピースの研磨装置に設置される光学式膜厚測定装置であって、光源と、前記光源に連結された投光用光ファイバーケーブルと、ワークピースからの反射光を受ける受光用光ファイバーケーブルと、前記反射光の各波長での強度を測定する分光器と、前記反射光の強度の測定データから前記ワークピースの膜厚を算出するデータ処理部と、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルを囲むケーブルハウジングと、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルに隣接する流体流路を形成する流路構造体を備え、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングおよび前記流路構造体のうちの少なくとも一方により支持されている、光学式膜厚測定装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルのそれぞれの先端部は、前記ケーブルハウジングおよび前記流路構造体のうちの少なくとも一方に接触している。
一態様では、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは接着剤により互いに接着されている。
一態様では、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングおよび前記流路構造体のうちの少なくとも一方に接着剤により固定されている。
一態様では、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングと前記流路構造体との間に挟まれている。
一態様では、前記投光用光ファイバーケーブルおよび前記受光用光ファイバーケーブルは、前記ケーブルハウジングと前記流路構造体との間の空間を満たす充填材によって保持されている。
一態様では、前記光学式膜厚測定装置は、前記流路構造体に接続されたバッファタンクをさらに備えており、前記流体流路は前記バッファタンクの内部に連通している。
【0010】
一態様では、研磨パッドを支持するための研磨テーブルと、ワークピースを前記研磨パッドに押し付けるように構成された研磨ヘッドと、上記光学式膜厚測定装置を備えている、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、投光用光ファイバーケーブルおよび受光用光ファイバーケーブルは、ケーブルハウジングおよび流路構造体のうちの少なくとも一方により支持される。したがって、純水などの流体が流体流路を流れても、流体の流れは、光ファイバーケーブルを変位させたり、振動させたりしない。結果として、光学式膜厚測定装置は、ワークピースの膜厚を高い精度で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】ワークピースからの反射光のスペクトルの一例を示す図である。
図3図1に示すケーブルハウジングおよび流路構造体の拡大断面図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置の他の実施形態を示す断面図である。
図6】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図7】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図8】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図9】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図10】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図11】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図12】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図13】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図14】光ファイバーケーブル、ケーブルハウジング、および流路構造体の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨液(例えばスラリー)を研磨パッド2の研磨面2aに供給する研磨液供給ノズル5と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6を備えている。
【0014】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、ヘッドシャフト10とともに研磨ヘッド1は回転可能である。ヘッドシャフト10は、ベルト等の連結手段17を介して研磨ヘッドモータ18に連結されており、この研磨ヘッドモータ18によってヘッドシャフト10が回転されるようになっている。このヘッドシャフト10の回転により、研磨ヘッド1が矢印で示す方向に回転する。研磨テーブル3のテーブルシャフト3aはテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0015】
研磨装置は、研磨装置の動作を制御する動作制御部35を備えている。動作制御部35は、少なくとも1台のコンピュータから構成されている。動作制御部35は、プログラムが格納された記憶装置35aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置35bを備えている。記憶装置35aは、RAMなどの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置35bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部35の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0016】
研磨装置は、ワークピースWの膜厚を測定する光学的膜厚測定装置40を備えている。光学的膜厚測定装置40は、光学センサヘッド41と、光源44と、分光器47と、データ処理部49を備えている。光学センサヘッド41、光源44、および分光器47は研磨テーブル3に取り付けられており、研磨テーブル3および研磨パッド2とともに一体に回転する。光学センサヘッド41の位置は、研磨テーブル3および研磨パッド2が一回転するたびに研磨パッド2上のワークピースWの表面を横切る位置である。光学センサヘッド41は、光源44および分光器47に接続されており、分光器47はデータ処理部49に接続されている。
【0017】
光源44は光学センサヘッド41に光を送り、光学センサヘッド41は光をワークピースWに向けて放つ。ワークピースWからの反射光は光学センサヘッド41に受けられ、分光器47に送られる。分光器47は反射光をその波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定する。分光器47は、反射光の強度の測定データをデータ処理部49に送る。データ処理部49は、反射光の強度の測定データから反射光のスペクトルを生成する。このスペクトルは、反射光の強度と波長との関係を示し、スペクトルの形状はワークピースWの膜厚に従って変化する。データ処理部49は、スペクトルからワークピースWの膜厚を算出する。
【0018】
ワークピースWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。ワークピースWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2上に研磨液が存在した状態で研磨パッド2の研磨面2aに研磨ヘッド1によって押し付けられる。ワークピースWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0019】
ワークピースWの研磨中、光学センサヘッド41は、研磨テーブル3が一回転するたびに、研磨パッド2上のワークピースWの表面を横切りながら、ワークピースW上の複数の測定点に光を照射し、ワークピースWからの反射光を受ける。データ処理部49は、反射光の強度の測定データからワークピースWの膜厚を算出する。
【0020】
以下、光学的膜厚測定装置40の詳細について説明する。光学的膜厚測定装置40は、光源44から発せられた光をワークピースWの表面に導く投光用光ファイバーケーブル51と、ワークピースWからの反射光を受け、反射光を分光器47に送る受光用光ファイバーケーブル52を備えている。投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル52の先端は、研磨テーブル3内に位置している。投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル52の先端は、光をワークピースWの表面に導き、かつワークピースWからの反射光を受ける光学センサヘッド41を構成する。投光用光ファイバーケーブル51の他端は光源44に連結され、受光用光ファイバーケーブル52の他端は分光器47に連結されている。分光器47は、ワークピースWからの反射光を波長に従って分解し、所定の波長範囲に亘って反射光の強度を測定するように構成されている。
【0021】
研磨テーブル3は、その上面で開口するドレイン流路60を有している。研磨パッド2は、光学センサヘッド41およびドレイン流路60に対応する位置にある通孔61を有している。光学センサヘッド41およびドレイン流路60は通孔61に連通し、通孔61は研磨面2aで開口している。投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル52の先端から構成される光学センサヘッド41は、通孔61の下方に位置している。
【0022】
光源44には、キセノンフラッシュランプなどのパルス点灯光源が使用される。投光用光ファイバーケーブル51は、光源44によって発せられた光をワークピースWの表面まで導く光伝送部である。投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52の先端は、研磨テーブル3内に位置しており、ワークピースWの被研磨面の近傍に位置している。投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52の各先端から構成される光学センサヘッド41は、研磨ヘッド1に保持されたワークピースWを向いて配置される。研磨テーブル3が回転するたびに、ワークピースWの複数の測定点に光が照射される。本実施形態では、1つの光学センサヘッド41のみが設けられているが、複数の光学センサヘッド41が設けられてもよい。
【0023】
ワークピースWの研磨中、光は光学センサヘッド41から通孔61を通ってワークピースWに導かれ、ワークピースWからの反射光は通孔61を通って光学センサヘッド41によって受けられる。分光器47は、各波長での反射光の強度を所定の波長範囲に亘って測定し、得られた測定データをデータ処理部49に送る。この測定データは、ワークピースWの膜厚に従って変化する膜厚信号である。データ処理部49は、波長ごとの光の強度を表わすスペクトルを測定データから生成し、さらにスペクトルからワークピースWの膜厚を決定する。
【0024】
図2は、反射光のスペクトルの一例を示す図である。図2の縦軸は反射光の強度を表し、横軸は反射光の周波数を表す。このような反射光のスペクトルは、ワークピースWの膜の厚さに従って変化する。したがって、データ処理部49は、反射光のスペクトルからワークピースWの膜厚を決定することができる。反射光のスペクトルからワークピースWの膜厚を決定する方法には、公知の方法が使用される。例えば、データ処理部49は、反射光のスペクトルに対してフーリエ変換を実行し、得られた周波数スペクトルから膜厚を決定する。他の例では、データ処理部49は、反射光のスペクトルに最も近い形状の参照スペクトルを決定し、この決定された参照スペクトルに関連付けられた膜厚を決定する。
【0025】
光学的膜厚測定装置40は、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52を囲むケーブルハウジング55と、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52に隣接する流体流路57を形成する流路構造体58を備えている。ケーブルハウジング55および流路構造体58は、研磨テーブル3内に配置されている。流体流路57は流体供給ライン63に連結されており、ドレイン流路60はドレインライン64に連結されている。ワークピースWの研磨中は、純水などの流体は、流体供給ライン63を介して流体流路57および通孔61に供給され、流体流路57および通孔61を満たす。流体は、さらに通孔61からドレイン流路60に流れ込み、ドレインライン64を通じて排出される。研磨液は流体と共に排出され、これにより光路が確保される。
【0026】
流体供給ライン63およびドレインライン64は、研磨テーブル3のテーブルシャフト3aに連結されたロータリージョイント19に接続されており、さらに研磨テーブル3内を延びている。流体供給ライン63の一端は、流路構造体58の流体流路57に連結されている。流体供給ライン63の他端は、流体供給源66に連結されている。本実施形態では、流体には、光透過性のある液体の一例である純水が使用されているが、流体は他の光透過性のある液体であってもよく、あるいは空気、不活性ガスなどの気体であってもよい。流体供給源66は、研磨装置が設置される工場に設けられたユーティリティ供給源としての純水供給源であってもよい。
【0027】
図3は、図1に示すケーブルハウジング55および流路構造体58の拡大断面図であり、図4は、図3のA-A線断面図である。図3および図4に示すように、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52の先端部は、ケーブルハウジング55内に位置している。さらに、流体流路57を内部に有する流路構造体58もケーブルハウジング55内に位置している。投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、流路構造体58の外側に配置され、かつケーブルハウジング55の内側に配置されている。
【0028】
流路構造体58は、バッファタンク70に接続されている。より具体的には、バッファタンク70は流路構造体58の下端に接続されており、流体流路57はバッファタンク70の内部に連通している。流体供給ライン63はバッファタンク70に接続されている。したがって、流体流路57はバッファタンク70を介して流体供給ライン63に連通する。流体(例えば純水)は、バッファタンク70内に一旦溜められ、その後流体流路57に流入する。このバッファタンク70は、流体流路57に流入する流体の流量を安定させる機能を有している。
【0029】
図4に示すように、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、ケーブルハウジング55および流路構造体58の両方に支持されている(接触している)。特に、光ファイバーケーブル51,52の先端部は、ケーブルハウジング55および流路構造体58の両方に接触している。したがって、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、流体流路57から吐出された流体の流れによって変位または振動しない。特に、本実施形態では、投光用光ファイバーケーブル51の先端部および受光用光ファイバーケーブル52の先端部は、ケーブルハウジング55の内面と流路構造体58の外面との間に挟まれている。このような配置によれば、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52の位置(特にそれらの先端部の位置)を強固に固定することができる。
【0030】
本実施形態では、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、流体(例えば純水)が流れる流体流路57を形成する流路構造体58の外側に配置されている。したがって、流体流路57を流れているときの流体は、これら光ファイバーケーブル51,52に接触しない。結果として、光ファイバーケーブル51,52(特にそれらの先端部)の変位または振動が確実に防止できる。
【0031】
本実施形態では、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は接着剤(図示せず)により互いに接着されている。特に、投光用光ファイバーケーブル51の先端部および受光用光ファイバーケーブル52の先端部は接着剤により互いに接着されている。このように構成することで、光ファイバーケーブル51,52のうちの一方が、他方を拘束し、これにより光ファイバーケーブル51,52が変位または振動しにくくなる。
【0032】
投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52のそれぞれは、複数設けられてもよい。例えば、図5に示すように、ワークピースWに導く光の量を増加させるために、複数の投光用光ファイバーケーブル51を設けてもよい。複数の受光用光ファイバーケーブル52が設けられてもよい。
【0033】
投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52(特にこれらの先端部)は、ケーブルハウジング55および流路構造体58のうちの一方または両方に接着剤(図示せず)により固定されてもよい。例えば、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、ケーブルハウジング55の内面に接着剤により固定されてもよい。この場合は、これら光ファイバーケーブル51,52は、流路構造体58に接触していなくてもよい。他の例では、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、流路構造体58の外面に接着剤により固定されてもよい。この場合は、これら光ファイバーケーブル51,52は、ケーブルハウジング55に接触していなくてもよい。
【0034】
一実施形態では、図6に示すように、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52(特にこれらの先端部)は、ケーブルハウジング55と流路構造体58との間の空間を満たす充填材73によって保持されてもよい。図6に示す実施形態では、充填材73は、ケーブルハウジング55の内面と流路構造体58の外面との間の空間を満たしている。充填材73の例としては、パテ、シーリング材など、気密性および防水性のある材料が挙げられる。充填材73は、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52を保持し、それらの位置を固定することができる。
【0035】
一実施形態では、図7に示すように、流体の流量を上げるために、流路構造体58内の流体流路(または第1流体流路)57に加えて、ケーブルハウジング55と流路構造体58との間に流体(例えば純水)のための第2流体流路75を形成してもよい。図7に示す実施形態では、光ファイバーケーブル51,52は、ケーブルハウジング55と流路構造体58との間に挟まれるか、またはケーブルハウジング55および流路構造体58のうちの一方または両方に接着剤により固定されることが好ましい。
【0036】
図8は、光ファイバーケーブル51,52、ケーブルハウジング55、および流路構造体58の配置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図3および図4を参照して説明した実施形態であるので、その重複する説明を省略する。
【0037】
図8に示す実施形態では、流体のドレインライン64(図1参照)に接続されたドレイン構造体78がケーブルハウジング55内に配置されている。ドレイン構造体78は、その内部にドレイン流路60を有しており、ドレインライン64はドレイン流路60に連通している。このドレイン構造体78は、ケーブルハウジング55の内面に接触し、かつ流路構造体58と光ファイバーケーブル51,52に接触している。これらの光ファイバーケーブル51,52は、ケーブルハウジング55と、流路構造体58およびドレイン構造体78との間に挟まれている。したがって、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52(特にこれらの先端部)は、ケーブルハウジング55の内面、流路構造体58の外面、およびドレイン構造体78の外面に接触している(支持されている)。図9に示すように、ケーブルハウジング55は、楕円形の断面を有してもよい。
【0038】
図10は、光ファイバーケーブル51,52、ケーブルハウジング55、および流路構造体58の配置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図8を参照して説明した実施形態であるので、その重複する説明を省略する。図10に示す実施形態では、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、多角形の断面を有する2つの第1ケーブルハウジング55Aにそれぞれ囲まれている。投光用光ファイバーケーブル51、受光用光ファイバーケーブル52、および第1ケーブルハウジング55Aは、円形の断面形状を有する第2ケーブルハウジング55Bによってさらに囲まれている。2つの第1ケーブルハウジング55Aは互いに面接触しており、かつ第2ケーブルハウジング55Bの内面と、流路構造体58およびドレイン構造体78の外面に接触している。流路構造体58およびドレイン構造体78は、第1ケーブルハウジング55Aの外面と第2ケーブルハウジング55Bの内面の間に配置されている。
【0039】
図11は、光ファイバーケーブル51,52、ケーブルハウジング55、および流路構造体58の配置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図10を参照して説明した実施形態であるので、その重複する説明を省略する。図11に示す実施形態では、流路構造体58およびドレイン構造体78は、多角形の断面を有しており、第2ケーブルハウジング55Bは、楕円形の断面形状を有している。
【0040】
図12および図13に示すように、ケーブルハウジング55は、矩形状の断面を有してもよい。図12に示す実施形態では、ケーブルハウジング55、流路構造体58、およびドレイン構造体78は、矩形状の断面形状を有している。図13に示す実施形態では、ケーブルハウジング55は矩形状の断面形状を有しており、流路構造体58およびドレイン構造体78も、矩形状の断面形状を有している。
【0041】
図14に示すように、投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52のうちの一方または両方は、バンドルファイバーケーブルであってもよい。図14に示す実施形態では、投光用光ファイバーケーブル51は、複数のファイバーケーブル51aを含むバンドルファイバーケーブルである。投光用光ファイバーケーブル51を構成する複数のファイバーケーブル51aは、受光用光ファイバーケーブル52の周囲に配列されている。投光用光ファイバーケーブル51および受光用光ファイバーケーブル52は、円形の断面を有する第1ケーブルハウジング55Aに囲まれている。投光用光ファイバーケーブル51、受光用光ファイバーケーブル52、および第1ケーブルハウジング55Aは、矩形状の断面を有する第2ケーブルハウジング55Bよってさらに囲まれている。第2ケーブルハウジング55Bは、楕円などの他の断面形状を有してもよい。一実施形態では、受光用光ファイバーケーブル52がバンドルファイバーケーブルであってもよい。
【0042】
上述した実施形態は、適宜組み合わせることができる。例えば、また、図6および図7を参照して説明した充填材73は、図8乃至図13に示す実施形態にも適用可能である。
【0043】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
10 ヘッドシャフト
17 連結手段
18 研磨ヘッドモータ
19 ロータリージョイント
35 動作制御部
40 光学的膜厚測定装置
41 光学センサヘッド
44 光源
47 分光器
49 データ処理部
51 投光用光ファイバーケーブル
52 受光用光ファイバーケーブル
55 ケーブルハウジング
57 流体流路
58 流路構造体
60 ドレイン流路
61 通孔
63 流体供給ライン
64 ドレインライン
66 流体供給源
70 バッファタンク
73 充填材
75 第2流体流路
78 ドレイン構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14