(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】コバルトCMPのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240624BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
(21)【出願番号】P 2021532102
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 US2019061247
(87)【国際公開番号】W WO2020117438
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500397411
【氏名又は名称】シーエムシー マテリアルズ リミティド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド フン ロー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ローマン エー.イバノフ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン グランビーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ウォルフ
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190413(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061656(WO,A1)
【文献】特表2017-525797(JP,A)
【文献】国際公開第2018/056122(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コバルト含有基板を研磨するための化学機械研磨組成物であって、
水系液体キャリアと、
前記液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、前記カチオン性シリカ研削粒子が、
6超のpHで少なくとも20mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子を含む、カチオン性シリカ研削粒子と、
トリアゾール化合物であって、
前記トリアゾール化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンおよび1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンから選択されたトリアゾールピリジン化合物であるトリアゾール化合物と、を含み、
前記研磨組成物が
、6超のpHを有する、研磨組成物。
【請求項2】
前記トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンである、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
約50~約500ppmの前記トリアゾールピリジン化合物を含む、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記研磨組成物が、過化合物酸化剤(per-compound oxidizer)を実質的に含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
約6~約8のpHを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記カチオン性シリカ研削粒子が、約9超の等電点を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
約2質量パーセント未満の前記カチオン性シリカ研削粒子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
コバルト層を含む基板を化学機械研磨する方法であって、
(a)
(i)水系液体キャリア、
(ii)前記液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、前記カチオン性シリカ研削粒子が、
6超のpHで少なくとも20mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子を含む、カチオン性シリカ研削粒子、
(iii))トリアゾール化合物であって、
前記トリアゾール化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンおよび1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンから選択されたトリアゾールピリジン化合物であるトリアゾール化合物、を含む研磨組成物に前記基板を接触させることであって、
前記研磨組成物が
、6超のpHを有する、前記基板を接触させることと、
(b)前記研磨組成物を前記基板に対して動かすことと、
(c)前記基板を研削して、前記基板から前記コバルト
層の一部分を除去し、それによって前記基板を研磨することと、を含む、方法。
【請求項9】
前記トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記研磨組成物が、約50~約500ppmの前記トリアゾールピリジン化合物を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記研磨組成物が、過化合物酸化剤を実質的に含まない、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記研磨組成物が、約6~約8のpHを有する、請求項
8に記載の方法。
【請求項13】
前記カチオン性シリカ研削粒子が、約9超の等電点を有する、請求項
8に記載の方法。
【請求項14】
約2質量パーセント未満の前記カチオン性シリカ研削粒子を含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、誘電体層をさらに含み、前記(c)の研削が、前記基板から前記誘電体層の一部分をも除去する、請求項
8に記載の方法。
【請求項16】
(c)の前記誘電体層の除去速度が、(c)のコバルトの除去速度よりも高い、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記誘電体層が、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)である、請求項
16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
タングステンプラグおよびインターコネクト、および銅インターコネクトプロセス、ならびにデュアルダマシンプロセスは、従来の半導体デバイスのトランジスタを接続する金属ワイヤのネットワークを形成するために長い間用いられてきたバックエンド配線(BEOL)プロセスである。これらのプロセスでは、誘電体材料(例えば、TEOS)に形成された開口部に、タングステンまたは銅の金属が堆積される。化学機械研磨(CMP)を使用して、誘電体から余分なタングステンまたは銅を除去し、それによって誘導体内にタングステンまたは銅のプラグおよび/またはインターコネクトを形成する。中間層誘電体(ILD)材料(例えば、TEOS)を金属インターコネクトレベル間に堆積して、レベル間の電気絶縁を提供する。
【0002】
トランジスタサイズが縮小し続けるにつれて、従来のインターコネクト技術の使用はますます困難になっている。近年、銅インターコネクトにおけるタンタル/窒化タンタルバリアスタックに代わる有力な候補として、コバルトが浮上している。また、コバルトは、複数のBEOL用途におけるタングステン金属の代替品として積極的に調査されている。バリア層、ならびに/またはタングステンプラグおよび/もしくはインターコネクトの代替品としてのコバルトの導入の潜在性を考慮すると、コバルト含有基板を平坦化することが可能なCMPスラリーの必要性が浮上している。
【0003】
一般に、タングステン、銅、または他の金属層を除去するために製造されている市販のCMPスラリーは、特に高度なノードデバイスにおいて、コバルトを研磨するには不適切である。例えば、Coは、化学的に活性である傾向があり、CMPプロセス中にさまざまな腐食の問題を受けやすい場合がある。対応するコバルト腐食を引き起こさずに、コバルト膜を除去し、および/またはコバルト含有基板を効果的に平坦化することができるCMPスラリーが必要である。
【発明の概要】
【0004】
コバルト層を有する基板を研磨するための化学機械研磨組成物が、開示される。研磨組成物は、水系液体キャリアと、液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、研磨組成物中で少なくとも10mVのゼータ電位を有する、カチオン性シリカ研削粒子と、トリアゾール化合物であって、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物ではない、トリアゾール化合物と、を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなり、研磨組成物が、約6超のpHを有する。一実施形態では、シリカ研削粒子は、コロイダルシリカ粒子を含み、トリアゾール化合物は、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジンなどのトリアゾールピリジン化合物を含む。コバルト層を含む基板を化学機械研磨するための方法が、さらに開示される。方法は、上述の研磨組成物に基板を接触させることと、研磨組成物を基板に対して動かすことと、基板を研削して基板からコバルトの一部分を除去し、それによって基板を研磨することと、を含み得る。方法は、基板から誘電体層の一部分を除去することをさらに含み得る。
【発明を実施するための形態】
【0005】
コバルト層を有する基板を研磨するための化学機械研磨組成物が、開示される。研磨組成物は、水系液体キャリア、液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子、およびトリアゾール化合物を含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。研磨組成物は、約6超のpHを有し、カチオン性シリカ研削粒子は、研磨組成物中で少なくとも10mVのゼータ電位を有する。トリアゾール化合物は、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物ではない。一実施形態では、シリカ研削粒子は、アミノシラン化合物で処理されたコロイダルシリカ粒子を含み、トリアゾール化合物は、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジンなどのトリアゾールピリジン化合物を含む。
【0006】
開示のCMP組成物は、バルクコバルト除去および/またはコバルトバフCMP操作に有利に利用することができることが理解されるであろう。バルク除去操作では、より高いコバルト除去速度を必要とし得、バフ操作ではより低い欠陥レベル、および/またはより厳重な腐食制御を必要とし得る。開示のCMP組成物は、単一ステップのコバルトCMP操作にも有利に利用することができる。開示の実施形態は、コバルトバフ操作に特によく適している可能性があるが、それらは、任意の特定のコバルトCMP操作に限定されることを意図していない。
【0007】
研磨組成物は、液体キャリア中に懸濁された金属酸化物粒子を含む研削材を含有する。研削材としては、例えば、コロイダルシリカ粒子および/またはヒュームドシリカ粒子を含む、実質的に好適な金属酸化物粒子を挙げることができる。本明細書で使用されるコロイダルシリカ粒子という用語は、一般に、構造的に異なる粒子を生成する熱処理プロセスまたは火炎加水分解プロセスではなく、むしろ湿式プロセスを介して調製されるシリカ粒子を指す。このようなコロイダルシリカ粒子は、凝集していても凝集していなくてもよい。非凝集粒子は、球形またはほぼ球形の形状の個別の粒子であるが、他の形状(一般に、楕円形、正方形、または長方形の断面など)を持つこともできる。凝集粒子は、複数の離散粒子がクラスター化または結合して、一般に不規則な形状の凝集体を形成する粒子である。
【0008】
コロイダルシリカは、ゾルゲル法またはケイ酸塩イオン交換などによる、当業者に既知の任意の方法を使用して調製することができる、沈殿または凝集-重合シリカであり得る。凝集-重合シリカ粒子は、多くの場合、Si(OH)4を凝集させて実質的に球形の粒子を形成することによって調製される。前駆体Si(OH)4は、例えば、高純度アルコキシシランの加水分解によって、またはケイ酸水溶液の酸性化によって得ることができる。このような研削粒子は、例えば、米国特許第5,230,833号に従って調製してもよいか、または例えば、EKA Chemicals、Fuso Chemical Company、Nalco、DuPont、Bayer、Applied Research、Nissan Chemical、およびClariantを含む、多くの商業的供給業者のうちのいずれかから入手してもよい。
【0009】
熱処理シリカは、好適な原料蒸気(四塩化ケイ素など)が水素および酸素の火炎で燃焼される、火炎加水分解プロセスを介して生成される。ほぼ球形の融解した粒子が燃焼プロセスで形成され、その直径は、プロセスパラメータを介して変動し得る。一般に一次粒子と呼ばれるこれらの融解した球体は、それらの接触点で衝突を受けることによって互いに融合して、分岐した三次元の鎖様の凝集体を形成する。ヒュームドシリカ研削材は、例えばCabot Corporation、Evonic、Wacker Chemieを含む、多くの供給業者から市販されている。
【0010】
研削粒子は、実質的に任意の好適な粒径を有し得る。液体キャリアに懸濁された粒子の粒径は、さまざまな手段を使用して業界で定義され得る。例えば、粒径は、粒子を取り囲む最小の球体の直径として定義され得、例えば、CPS Disc Centrifuge、Model DC24000HR(CPS Instruments、ルイジアナ州、プレーリービルから入手可能)またはMalvern Instruments(登録商標)から入手可能なZetasizer(登録商標)を含む多くの市販の機器を使用して測定され得る。研削粒子は、約5nm以上(例えば、約10nm以上、約20nm以上、または約30nm以上)の平均粒径を有し得る。研削粒子は、約200nm以下(例えば、約160nm以下、約140nm以下、約120nm以下、または約100nm以下)の平均粒径を有し得る。したがって、研削粒子は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される範囲の平均粒径を有し得ることが理解されるであろう。例えば、研削粒子は、約5nm~約200nm(例えば、約10nm~約160nm、約20nm~約140nm、約20nm~約120nm、または約20nm~約100nm)の範囲の平均粒径を有し得る。
【0011】
研磨組成物は、実質的に任意の好適な量の研削粒子を含むことができる。研磨組成物が含む研削材が少なすぎる場合、組成物は十分な除去速度を呈さない可能性がある。対照的に、研磨組成物に含まれる研削材が多すぎる場合、研磨組成物は、望ましくない研磨性能を呈し得、かつ/または費用効果がない可能性があり、かつ/または安定性に欠ける可能性がある。研磨組成物は、約0.01質量%以上(例えば、約0.05質量%以上)の研削粒子を含み得る。研磨組成物は、約0.1質量%以上(例えば、約0.2質量%以上、約0.3質量%以上、または0.5質量%以上)の研削粒子を含み得る。研磨組成物中の研削粒子の濃度は、一般に、約20質量%未満、より典型的には約10質量%以下(例えば、約5質量%以下、約3質量%以下、約2質量%以下、または約1.5質量%以下、または約1質量%以下)である。研削粒子は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される濃度で、研磨組成物中に存在し得ることが理解されるであろう。例えば、研磨組成物中の研削粒子の濃度は、約0.01質量%~約20質量%、より好ましくは約0.05質量%~約10質量%(例えば、約0.1質量%~約5質量%、約0.1質量%~約3質量%、約0.1質量%~約2質量%、約0.2質量%~約2質量%、約0.2質量%~約1.5質量%、または約0.2質量%~約1質量%)の範囲であり得る。
【0012】
研削粒子がシリカ(コロイダルシリカまたは熱処理シリカなど)を含む実施形態では、シリカ粒子は、研磨組成物中で正電荷を有し得る。シリカ粒子などの分散粒子上の電荷は、当技術分野では一般にゼータ電位(または界面動電位)と呼ばれている。粒子のゼータ電位とは、粒子を取り巻くイオンの電荷と研磨組成物のバルク溶液の電荷との間の電位差を指す(例えば、液体キャリアとその中に溶解した任意の他の成分)。したがって、正電荷を有するシリカ研削粒子(すなわち、カチオン性シリカ研削粒子)は、それらの動作pHで正のゼータ電位を有するであろう。ゼータ電位は典型的には、水性媒体のpHに依存する。所与の組成物では、粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロになるpHとして定義される。等電点から離れてpHが増加または減少すると、それに応じて表面電荷(および、したがってゼータ電位)が減少または増加する(負または正のゼータ電位値に)。開示の研磨組成物中などに分散した研削粒子のゼータ電位は、Malvern Instrumentsから入手可能なZetasizer、Brookhaven Instrumentsから入手可能なZetaPlus Zeta Potential Analyzer、および/またはDispersion Technologies Inc.から入手可能な電気音響分光計などの市販の機器を使用して得ることができる。
【0013】
ある特定の実施形態では、カチオン性シリカ研削粒子は、pH7超の等電点を有する。例えば、研削粒子は、pH8超(例えば、pH8.5超またはpH9超)の等電点を有し得る。以下より詳述されるように、研削粒子は、アミノシラン化合物などの窒素含有化合物で処理されたコロイダルシリカ粒子を任意選択で含み得る。
【0014】
ある特定の実施形態では、カチオン性シリカ研削粒子は、研磨組成物中で、(例えば、約6超のpHで、または約6~約8の範囲のpHで)約10mV以上(例えば、約15mV以上、約20mV以上、約25mV以上、または約30mV以上)のゼータ電位を有する。カチオン性シリカ研削粒子は、研磨組成物中で、(例えば、約6超のpHで、または約6~約8の範囲のpHで)約50mV以下(例えば、約45mV以下、または約40mV以下)のゼータ電位を有し得る。カチオン性シリカ研削粒子は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される範囲のゼータ電位を有し得ることが理解されるであろう。例えば、カチオン性シリカ研削粒子は、研磨組成物中で、(約6超のpHで、または約6~約8の範囲のpHで)約10mV~約50mV(例えば、約10mV~約45mV、または約20mV~約40mV)の範囲のゼータ電位を有し得る。
【0015】
ある特定の実施形態では、処理された研削粒子が研磨組成物中で(例えば、約6超、約7超、約7.5超、または約8超のpHで)約10mV以上(例えば、約15mV以上、約20mV以上、約25mV以上、または約30mV以上)のゼータ電位を有するように、カチオン性シリカ研削粒子は、アミノシラン化合物で処理されたコロイダルシリカ粒子を含み得る。ある特定のこれらの実施形態では、研削粒子は、第4級アミノシラン化合物で処理されたコロイダルシリカ粒子を含む。このようなカチオン性コロイダルシリカ粒子は、例えば、各々参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第7,994,057号および同第第9,028,572号、または米国特許第9,382,450号に開示されるように、粒子を少なくとも1つのアミノシラン化合物で処理することによって得ることができる。また、研磨組成物中で約10mV以上のゼータ電位を有するコロイダルシリカ粒子は、参照により本明細書に完全に組み込まれる、同一出願人による米国特許第9,422,456号に開示されるように、コロイダルシリカ粒子にアミノシラン化合物などの化学種を組み込むことを介して得ることができる。
【0016】
例示的なカチオン性コロイダルシリカ粒子は、カチオン性コロイダルシリカ粒子を得るための任意の好適な処理方法を使用して処理することができることが理解されるであろう。例えば、第4級アミノシラン化合物およびコロイダルシリカを、研磨組成物の他の成分のうちの一部または全てと同時に添加してもよい。あるいは、コロイダルシリカは、研磨組成物中で他の成分と混合する前に、第4級アミノシラン化合物で(例えば、コロイダルシリカとアミノシランとの混合物を加熱することを介して)処理してもよい。
【0017】
ある特定の実施形態では、カチオン性シリカ研削粒子は、永久正電荷を有し得る。永久正電荷とは、例えば、フラッシング、希釈、濾過などによって、シリカ粒子の正電荷が容易に可逆的でないことを意味する。永久正電荷は、例えば、カチオン性化合物をコロイダルシリカと共有結合した結果であり得る。永久正電荷は、例えば、カチオン性化合物とコロイダルシリカ間の静電相互作用の結果であり得る可逆的な正電荷とは対照的である。
【0018】
それにもかかわらず、本明細書で使用される場合、少なくとも10mVの永久正電荷とは、コロイダルシリカ粒子のゼータ電位が、以下の3ステップの限外濾過試験後に10mV超のままであることを意味する。ある体積の研磨組成物(例えば、200ml)を、Millipore Ultracell再生セルロース限外濾過ディスク(例えば、1000,000ダルトンのMWカットオフおよび6.3nmの細孔サイズを有する)に通過させる。残った分散液(限外濾過ディスクによって保持される分散液)を収集し、元の容量までpH調整した脱イオン水を補充する。硝酸などの好適な無機酸を使用して、脱イオン水により、研磨組成物を元のpHにpH調整する。合計3回の限外濾過サイクルで、この手順を繰り返す(各サイクルは、限外濾過ステップおよび補充ステップを含む)。次いで、三重に限外濾過し補充した研磨組成物のゼータ電位を測定し、元の研磨組成物のゼータ電位と比較する。この3ステップの限外濾過試験は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許第9,422,456号の実施例10にさらに詳述される。
【0019】
液体キャリアを使用して、研磨される基板の表面への研削材および任意の任意選択の化学添加剤の塗布を促進する(例えば、平坦化)。液体キャリアは、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノールなど)、エーテル(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、水、およびこれらの混合物を含む任意の好適なキャリア(例えば、溶媒)であり得る。好ましくは、液体キャリアは、水、より好ましくは脱イオン水を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0020】
研磨組成物は、一般に中性であり、約5~約9の範囲のpHを有する。例えば、研磨組成物は、1気圧および25℃で測定すると、約6以上(例えば、約6.5以上、約7以上、または約7.5以上)のpHを有し得る。研磨組成物は、さらに約9以下(例えば、約8以下、または約7.5以下)のpHを有し得る。したがって、研磨組成物は、上の任意の2つの終点によって制限される範囲のpHを有し得る。例えば、pHは、約6~約9(例えば、約6~約8、約6.5~約8、約7~約8.5、または約7~約8)の範囲であり得る。研磨組成物のpHは、任意の好適な手段により達成および/または維持され得る。研磨組成物は、実質的に任意の好適なpH調整剤または緩衝系を含み得る。例えば、好適なpH調整剤としては、硝酸、硫酸、リン酸など、ならびに酢酸および乳酸などの有機酸を挙げることができる。好適な緩衝剤としては、リン酸塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
【0021】
研磨組成物は、コバルトエッチングおよび/または腐食の抑制剤をさらに含む。コバルト金属は、酸性および中性の環境で腐食を受けやすいことが知られている。コバルト抑制剤は、CMP組成物中のコバルト金属の溶解(溶解)速度を低減することを意図する。ある特定の実施形態では、コバルト抑制剤は、トリアゾール化合物を含む。好ましいトリアゾール化合物としては、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-c]ピリジン、および2-(1,2,4-トリアゾール-3-イル)ピリジンなどのトリアゾールピリジン(TAP)化合物が挙げられる。最も好ましい銅抑制剤は、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンである。1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンの構造を以下に示す。
【化1】
【0022】
コバルト抑制剤は、トリアゾールピリジン化合物などのトリアゾール化合物を含み得るが、コバルト抑制剤は、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物(ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、または1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノールなど)を含まないことが理解されるであろう。ベンゾトリアゾール(BTA)は、市販の銅CMPスラリーで一般に使用されている、周知の非常に効果的な銅腐食抑制剤である。以下の実施例1に示されるように、BTAおよびある特定のBTA化合物は、CMP研磨組成物においてコバルト抑制剤として機能し得る。しかしながら、BTAまたはBTA化合物の使用は、少なくとも以下の理由のために、CMP研磨組成物において不利であり得ることが見出されている。これらの化合物は、コバルト基板に強く付着する有機膜を形成すると考えられている(この膜は、おそらくコバルトの腐食を抑制する)。この強く付着した膜の存在は、(膜の除去が困難であることが証明されているので)CMP後の洗浄操作後にウェハ上に有機表面残留物の欠陥を大量に生じることが見出されている。アルカリ性洗浄剤を使用する、複数回のCMP後の洗浄ステップの後でさえも、表面欠陥が残ることが観察されている。
【0023】
上述のように、コバルト抑制剤は、好ましくはトリアゾールピリジン化合物を含む。トリアゾールピリジン化合物が、ピリジン環に結合したトリアゾール基を含むことを、当業者は容易に理解するであろう。ある特定の実施形態では、ピリジン環およびトリアゾール基は、第1および第2の炭素原子を共有する(したがって、第1および第2の炭素原子で一緒に結合する)。対照的に、ベンゾトリアゾール化合物は、ベンゼン環に結合したトリアゾール基を含む。トリアゾールピリジン化合物は、ベンゼン環を含まない。
【0024】
コバルト抑制剤がベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物を含まないという上の開示は、研磨組成物がベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物を含んではならないことを意味することを意図するものではない。反対に、複数のトリアゾール化合物を含む実施形態では、トリアゾール化合物のうちの少なくとも1つが、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物ではないことが理解されるであろう。例えば、ある特定の実施形態では、研磨組成物は、上に列挙されたトリアゾール化合物コバルト抑制剤に加えて、低レベル(例えば、50ppm未満、または20ppm未満、または10ppm未満、またはさらには5ppm未満)のベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物を追加で含み得ることが理解されるであろう。
【0025】
研磨組成物中のコバルト抑制剤化合物の量は、使用される特定の化合物、酸化剤が使用されるかどうか、研磨組成物のpH、および他の要因に応じて変動し得る。好ましいコバルト抑制剤がトリアゾールピリジン化合物であり、組成物のpHが中性(例えば、約5~約9)であるとき、コバルト抑制剤は、組成物の総質量に基づいて、約10~約2000ppmの範囲の量で研磨組成物中に存在し得る。ある特定の実施形態では、研磨組成物は、約10ppm以上(例えば、約20ppm以上、約50ppm以上、または約100ppm以上)のトリアゾールピリジン化合物を含み得る。研磨組成物はまた、約2000ppm以下(例えば、約1000ppm以下、約700ppm以下、または約500ppm以下)のトリアゾールピリジン化合物を含み得る。したがって、トリアゾールピリジンコバルトエッチング抑制剤は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される濃度で、研磨組成物中に存在し得ることが理解されるであろう。例えば、研磨組成物は、約20~約1000ppm(例えば、約50~約1000ppm、約50~約500、または約100~約500ppm)のトリアゾールピリジン化合物を含み得る。
【0026】
研磨組成物は、好ましくは過化合物(per-compound)を含む酸化剤を含まない。言い換えれば、過化合物が研磨組成物中に存在せず、これが研磨組成物に意図的に添加されないことが好ましい。このような実施形態では、研磨組成物中の過化合物酸化剤(per-compound oxidizing agent)の濃度は、本質的にゼロ(例えば、1質量ppm未満、0.3質量ppm未満、または0.1質量ppm未満)である。本明細書で定義される過化合物は、少なくとも1つのペルオキシ基(-O-O-)を含有する化合物、または最も高い酸化状態のハロゲン元素を含有する化合物である。少なくとも1つのペルオキシ基を含有する化合物の例としては、限定されないが、過酸化水素、ならびに尿素過酸化水素、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過ホウ酸、過酸化ベンゾイルなどの有機過酸化物、過酢酸、およびジ-t-ブチル過酸化物、モノ過硫酸塩(SO5
=)、二過硫酸塩(S2O8
=)、および過酸化ナトリウムなどの、その付加物が挙げられる。最も高い酸化状態のハロゲン元素を含有する化合物の例としては、限定されないが、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸塩、過臭素酸、過臭素酸塩、過塩素酸、および過塩素酸塩が挙げられる。
【0027】
過化合物(過酸化水素およびその付加物を含む)は、前述のコバルト抑制剤化合物を含むトリアゾール化合物と化学的に反応することが知られている。したがって、このような過化合物の排除は、コバルト抑制剤の化学的安定性を改善し、研磨組成物のポットライフを有利に改善することができる。
【0028】
研磨組成物は、任意選択で(必ずしも必要ではないが)、過化合物を含まない酸化剤(非過化合物酸化剤)を含み得る。このような非過化合物酸化剤は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、N-オキシド化合物、オキシム化合物、およびそれらの組み合わせなどの窒素含有有機酸化剤から選択することができる。例えば、任意選択の酸化剤としては、アリールニトロ化合物、アリールニトロソ化合物、アリールN-オキシド化合物、アリールオキシム化合物、ヘテロアリールニトロ化合物、ヘテロアリールニトロソ化合物、ヘテロアリールN-オキシド化合物、ヘテロアリールオキシム化合物、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0029】
非過酸化剤を含む任意選択の実施形態では、酸化剤は、実質的に任意の好適な濃度で存在し得る。酸化剤は、約1mM以上、例えば、約5mM以上、約10mM以上、約20mM以上、約30mM以上、約40mM以上、または約50mM以上の濃度で、研磨組成物中に存在し得る。酸化剤はまた、約100mM以下、例えば、約90mM以下、約80mM以下、約70mM以下、または約60mM以下の濃度で、研磨組成物中に存在し得る。酸化剤は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される濃度で、研磨組成物中に存在し得ることが理解されるであろう。例えば、酸化剤は、約1mM~約100mM(例えば、約5~約90mM、約10mM~約80mM、約20mM~約70mM、または約20mM~約60mM)の範囲の濃度の濃度で研磨組成物中に存在し得る。
【0030】
研磨組成物は、さらに任意選択で(必ずしも必要はでないが)コバルト研磨促進剤を含み得る。コバルト促進剤は、N-ジ(カルボキシルアルキル)アミン、N-ジ(ヒドロキシアルキル)アミン、N、N-ジ(ヒドロキシアルキル)-N-カルボキシルアルキルアミン、ジカルボキシ複素環、ヘテロシクリルアルキル-α-アミノ酸、N-アミノアルキルアミノ酸、非置換複素環、アルキル置換複素環、カルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アルキルアミン、N-アミノアルキル-α-アミノ酸、およびそれらの組み合わせから選択される、任意の好適なコバルト促進剤であり得る。例えば、研磨組成物は、任意選択で、イミノ二酢酸(「IDA」)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(「ADA」)、N-メチルイミダゾール、ピコリン酸、ジピコリン酸、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸、グリシン、ビシン、トリエチルアミン(「TEA」)、エチドロン酸、N-メチルモルホリン、マロン酸、2-ピリジンスルホン酸塩、クエン酸、およびそれらの組み合わせから選択されるコバルト促進剤を含み得る。
【0031】
コバルト促進剤を含む任意選択の実施形態では、コバルト促進剤は、任意の好適な濃度で研磨組成物中に存在し得る。ある特定の任意選択の実施形態では、コバルト促進剤は、約5mM以上(例えば、約10mM以上、約20mM以上、または約40mM以上)の濃度で研磨組成物中に存在し得る。コバルト促進剤は、約100mM以下(例えば、約80mM以下、約60mM以下、または約50mM以下)の濃度で研磨組成物中に存在し得る。コバルト促進剤は、前述の終点のうちのいずれか2つによって制限される濃度で、例えば、約5mM~約100mM、約10mM~約80mM、または約20mM~約60mMの範囲で研磨組成物中に存在し得る。
【0032】
研磨組成物は、任意選択で殺生物剤をさらに含んでもよい。殺生物剤は、任意の好適な殺生物剤、例えばDow Chemical Companyから入手可能なKordek(登録商標)殺生物剤などのイソチアゾリノン殺生物剤を含み得る。研磨組成物は、任意の実質的に好適な量の殺生物剤を含み得る。例えば、ある特定の実施形態は、約1~約1000ppm、例えば、約10~約500ppmの殺生物剤を含み得る。開示の実施形態は、任意の特定の殺生物剤化合物または濃度の使用を明確に限定しない。
【0033】
研磨組成物は、その多くが当業者には既知である任意の好適な技術を使用して調製することができる。研磨組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスで調製することができる。一般に、研磨組成物は、その成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用される「成分」という用語としては、個々の成分(例えば、研削粒子、コバルト抑制剤など)が挙げられる。
【0034】
例えば、コロイダルシリカおよび第4級アミノシラン化合物は、水性液体キャリア中で混合され得る。混合物を任意選択で(例えば、約50~80℃の温度まで)加熱して、アミノシラン化合物のコロイダルシリカへの結合を促進することができる。次いで、成分を研磨組成物に組み込むことが可能な任意の方法によって、コバルト抑制剤および殺生物剤などの他の成分を添加および混合してもよい。研磨組成物はまた、CMP操作中に基板の表面で(例えば研磨パッド上で)成分を混合することによっても調製することができる。
【0035】
本発明の研磨組成物はまた、使用前に適切な量の水で希釈されることを意図した濃縮物として提供することもできる。このような実施形態では、研磨組成物濃縮物は、適切な量の水で濃縮物を希釈すると、研磨組成物の各成分が各成分について上に列挙された適切な範囲内の量で研磨組成物中に存在するような量で、研削粒子、コバルト抑制剤、任意選択の殺生物剤、および水を含み得る。例えば、等量の水(例えば、それぞれ1等量の水、2等量の水、3等量の水、4等量の水、またはさらには9等量の水)で濃縮物を希釈すると、各成分が、各成分について上に記載した範囲内の量で研磨組成物中に存在するように、研削粒子およびコバルト抑制剤は、各成分について上に列挙した濃度の約2倍(例えば、約3倍、約4倍、約5倍、または約10倍)の量で研磨組成物中に存在し得る。その上、当業者には理解されるように、濃縮物は、他の成分が少なくとも部分的にまたは完全に濃縮物中に溶解することを確実にするために、最終研磨組成物中に存在する水の適切な割合を含有することができる。
【0036】
本発明の研磨組成物を使用して、任意の基板を研磨することができるが、研磨組成物は、少なくとも1つのコバルト含有層を含む基板の研磨に特に有用である。基板は、さらに、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)、多孔質金属酸化物、多孔質もしくは非多孔質炭素ドープ酸化ケイ素、フッ素ドープ酸化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、フッ素化有機ポリマー、または他の好適な高もしくは低-k絶縁層に由来する酸化ケイ素層などの、金属酸化物を含む誘電体層を含み得る。
【0037】
本発明の研磨方法は、化学機械研磨(CMP)装置とともに使用するのに特に好適である。典型的には、装置は、使用時に運動し、軌道運動、直線運動、または円運動から生じる速度を有するプラテンと、プラテンと接触し、運転時にプラテンとともに運動する研磨パッドと、研磨パッドの表面に対して接触し、それに対して動かすことにより、基板が研磨されるように保持するキャリアとを含む。基板の研磨は、研磨パッドおよび本発明の研磨組成物に基板が接触するように配置し、次いで研磨パッドを基板に対して動かして、基板の少なくとも一部分(本明細書に記載のコバルトおよび誘電体材料など)を研削して基板を研磨することにより、行われる。
【0038】
ある特定の実施形態では、コバルトおよび誘電体材料の研磨速度が同様であると、最適な平坦化を達成することができる。例えば、ある特定の実施形態では、コバルト対誘電体材料の選択性は、約1:10~約10:1の範囲であり得る。ある特定の実施形態では、誘電体材料の研磨速度は、コバルトの研磨速度よりも高くてもよいので、コバルト対誘電体材料の選択性は、1:1未満(例えば、1:10~約1:1の範囲)であり得る。
【0039】
基板は、任意の好適な研磨パッド(例えば、研磨表面)とともに化学機械研磨組成物で平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドには、例えば、織布および不織布の研磨パッドが含まれる。さらに、好適な研磨パッドは、さまざまな密度、硬度、厚さ、圧縮率、圧縮時に反発する能力、および圧縮弾性率の任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、それらの成形製品、およびそれらの混合物を含み得る。
【0040】
本発明は、以下の実施形態によってさらに説明される。
【0041】
実施形態(1)は、コバルト含有基板を研磨するための化学機械研磨組成物であって、研磨組成物が、(i)水系液体キャリアと、(ii)液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、カチオン性シリカ研削粒子が、少なくとも10mVのゼータ電位を有する、カチオン性シリカ研削粒子と、(iii)トリアゾール化合物であって、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物ではない、トリアゾール化合物と、を含み、研磨組成物が、約6超のpHを有する、化学機械研磨組成物を提示する。
【0042】
実施形態(2)は、トリアゾール化合物が、トリアゾールピリジン化合物である、実施形態(1)に記載の組成物を提示する。
【0043】
実施形態(3)は、トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-c]ピリジン、2-(1,2,4-トリアゾール-3-イル)ピリジン、またはそれらの混合物である、実施形態(2)に記載の組成物を提示する。
【0044】
実施形態(4)は、トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンである、実施形態(2)に記載の組成物を提示する。
【0045】
実施形態(5)は、約50~約500ppmのトリアゾールピリジン化合物を含む、実施形態(2)~(4)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0046】
実施形態(6)は、研磨組成物が、過化合物酸化剤を実質的に含まない、実施形態(1)~(5)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0047】
実施形態(7)は、約6~約8のpHを有する、実施形態(1)~(6)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0048】
実施形態(8)は、カチオン性シリカ研削粒子が、約9超の等電点を有する、実施形態(1)~(7)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0049】
実施形態(9)は、カチオン性シリカ研削粒子が、約6超のpHで少なくとも20mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子を含む、実施形態(1)~(8)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0050】
実施形態(10)は、約2質量パーセント未満のカチオン性シリカ研削粒子を含む、実施形態(1)~(9)のいずれか1つに記載の組成物を提示する。
【0051】
実施形態(11)は、コバルト層を含む基板を化学機械研磨する方法であって、(a)(i)水系液体キャリア、(ii)液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、カチオン性シリカ研削粒子が、少なくとも10mVのゼータ電位を有する、カチオン性シリカ研削粒子、(iii)トリアゾール化合物であって、ベンゾトリアゾールまたはベンゾトリアゾール化合物ではない、トリアゾール化合物、を含む研磨組成物に基板を接触させることであって、研磨組成物が、約6超のpHを有する、基板を接触させることと、(b)研磨組成物を基板に対して動かすことと、(c)基板を研削して基板からコバルト層の一部分を除去し、それによって基板を研磨することと、を含む、方法を提示する。
【0052】
実施形態(12)は、トリアゾール化合物が、トリアゾールピリジン化合物である、実施形態(11)に記載の方法を提示する。
【0053】
実施形態(13)は、トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジン、3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-c]ピリジン、2-(1,2,4-トリアゾール-3-イル)ピリジン、またはそれらの混合物である、実施形態(12)に記載の方法を提示する。
【0054】
実施形態(14)は、トリアゾールピリジン化合物が、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5,b]ピリジンである、実施形態(12)に記載の方法を提示する。
【0055】
実施形態(15)は、研磨組成物が、約50~約500ppmのトリアゾールピリジン化合物を含む、実施形態(12)~(14)のいずれか一項に記載の方法を提示する。
【0056】
実施形態(16)は、研磨組成物が、過化合物酸化剤を実質的に含まない、実施形態(11)~(15)のいずれか1つに記載の方法を提示する。
【0057】
実施形態(17)は、研磨組成物が、約6~約8のpHを有する、実施形態(11)~(16)のいずれか1つに記載の方法を提示する。
【0058】
実施形態(18)は、カチオン性シリカ研削粒子が、約9超の等電点を有する、実施形態(11)~(17)のいずれか一項に記載の方法を提示する。
【0059】
実施形態(19)は、カチオン性シリカ研削粒子が、約6超のpHで少なくとも20mVの永久正電荷を有するコロイダルシリカ粒子を含む、実施形態(11)~(18)のいずれか1つに記載の方法を提示する。
【0060】
実施形態(20)は、約2質量パーセント未満のカチオン性シリカ研削粒子を含む、実施形態(11)~(19)のいずれか1つに記載の方法を提示する。
【0061】
実施形態(21)は、基板が、誘電体層をさらに含み、(c)の研削が、基板から誘電体層の一部分をも除去する、実施形態(11)~(20)のいずれか1つに記載の方法を提示する。
【0062】
実施形態(22)は、(c)の誘電体層の除去速度が、(c)のコバルトの除去速度よりも高い、実施形態(21)に記載の方法を提示する。
【0063】
実施形態(23)は、誘電体層が、テトラエチルオルトケイ酸塩(TEOS)である、実施形態(22)に記載の方法を提示する。
【0064】
実施形態(24)は、コバルト含有基板を研磨するための化学機械研磨組成物を提示する。研磨組成物は、水系液体キャリアと、液体キャリア中に分散されたカチオン性シリカ研削粒子であって、カチオン性シリカ研削粒子が、研磨組成物中で少なくとも10mVのゼータ電位を有する、カチオン性シリカ研削粒子と、トリアゾールピリジン化合物と、を含み、研磨組成物が、約6超のpHを有する。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲を限定するものとして決して解釈されるべきではない。
【0066】
実施例1
さまざまな研磨組成物を調製した(対照Aおよび実施例組成物1~12)。例示的な研磨組成物1~12は、さまざまなアゾール化合物を含んでいた。カチオン性コロイダルシリカが、0.5質量パーセントの最終濃度を有するように、対応する混合物に50nmの平均粒径を有する適切な量のカチオン性コロイダルシリカ粒子を添加することによって、13種の研磨組成物の各々を調製した。カチオン性コロイダルシリカ粒子は、米国特許第9,382,450号の実施例7に記載されるように調製された。最終組成物の各々は、1.68mMの対応するアゾール化合物、2mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、125ppmのKordek殺生物剤をpH7.1でさらに含んでいた。対照Aは、アゾール化合物を含まなかった。実施例1~12の各々で使用した特定のアゾール化合物を、表1に提供する。組成物の各々(対照Aおよび実施例1~12)は、pH7.1で約25mVのゼータ電位を有した。
【0067】
上述の研磨組成物の各々のコバルトエッチング速度を評価した。この実施例は、コバルトエッチング抑制剤としてのある特定のアゾール化合物、具体的にはトリアゾール化合物の効果を実証する。各研磨組成物のコバルトエッチング速度を得るために、研磨組成物を最初に45℃に加熱し、その後、コバルト層を有する2平方センチメートルのウェハを研磨組成物に(コバルト側を上にして)5分間浸漬した。コバルト除去速度は、研磨組成物への浸漬の前後に行った抵抗測定を介して決定した。
【0068】
コバルトエッチング速度を、表1に示す。上記のように、対照Aは、アゾール化合物を含まなかった。実施例組成物1~12の各々で使用した、具体的なアゾール化合物を、表に示す。
【表1】
【0069】
表1に記載した結果から明らかなように、実施例組成物1~8は、4Å/分以下のコバルトエッチング速度を呈し、これは、対照A(抑制剤なし)の半分未満である。組成物9~12は、対照Aのものと同様の8Å/分以上のコバルトエッチング速度を呈した。
【0070】
実施例2
この実施例では、実施例1の研磨組成物1~7の、コバルトおよびTEOSの研磨速度ならびに洗浄性(欠陥)を評価した。この実施例は、トリアゾールピリジンコバルト抑制剤を使用すると、CMP後の洗浄ステップ後の最も低い数の欠陥を生じることを実証する。コバルトおよびTEOSの研磨速度は、ブランケットコバルトおよびTEOSウェハを研磨することによって得た。1.5psiの下向きの力、93rpmのプラテン速度、および87rpmのヘッド速度で、Mirra(登録商標)CMP研磨ツールおよびFujibo H7000研磨パッドを使用して、ウェハを研磨した。スラリー流速は、200ml/分であった。研磨後、ONTRAKクリーナーでK8160-1(Cabot Microelectronicsから入手可能)を使用して、各2つのブラシボックス内で60秒間、コバルトウェハを洗浄した。欠陥カウントは、0.16μmのしきい値でSurfscanSP1を使用して収集されました。走査型電子顕微鏡を使用して欠陥の画像を収集し、得られた画像を目視検査することを通じて欠陥の分類を完了した。観察された欠陥は、主に有機表面残留物であった。コバルトおよびTEOSの研磨速度および欠陥データを、表2に示す。
【表2】
【0071】
表2に記載した結果から明らかなように、トリアゾールピリジン抑制剤を使用すると、最も少ない欠陥数を生じ、CMP後の洗浄ステップで、これらの化合物がコバルト基板からより容易に除去されることを示している。コバルト抑制剤としてベンゾトリアゾールおよびベンゾトリアゾール化合物を使用すると、コバルトの表面上に非常に多くの数の有機欠陥が生じた。複数のCMP後の洗浄ステップを用いても、欠陥数を低減することはできなかった。
【0072】
本明細書に引用された刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が個々にかつ具体的に参照により組み込まれることが示され、その全体が本明細書に記載されているのと同じ程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)本発明を説明する文脈における「a」および「an」および「the」という用語および同様の指示対象の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数および複数形の両方を包含すると解釈されるべきである。「備える」、「有する」、「含む」および「含有する」という用語は、別段の記載がない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内にある各別個の値を個々に参照する簡略方法としての役割を果たすことを単に意図しており、各別個の値は本明細書に個別に列挙されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。本明細書において提供される任意のありとあらゆる実施例、または例示的な言葉(例えば、「~等」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる言葉も、本発明の実施に必須であるとしていかなる特許請求されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0074】
本発明を行うための本発明者らに既知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書に記載される。これらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読むことにより当業者には明らかになり得る。本発明者らは、当業者がこのような変形を適切なものとして用いることを期待しており、本発明者らは本発明が本明細書に具体的に記載されたとおりではなく別の方法で実行されることを意図する。したがって、本発明は、適用法によって許容されるように、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題の全ての変形および同等物を含む。さらに、本明細書において別段の指示がない限り、または文脈で明らかに矛盾しない限り、それらの全ての可能な変形における上記の要素のあらゆる組み合わせが本発明に包含される。