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特許7508683凝固卵白様食品、加工食品及び凝固卵白様食品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-21
(45)【発行日】2024-07-01
(54)【発明の名称】凝固卵白様食品、加工食品及び凝固卵白様食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240624BHJP
【FI】
A23L15/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023205038
(22)【出願日】2023-12-05
【審査請求日】2024-03-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沼田 夏美
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0305484(US,A1)
【文献】特許第5991354(JP,B2)
【文献】特許第7274677(JP,B1)
【文献】特許第7318152(JP,B1)
【文献】特開2019-103466(JP,A)
【文献】特開昭63-137663(JP,A)
【文献】特開2005-073525(JP,A)
【文献】特開2023-112209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵白を生換算で20質量%以上60質量%以下含有する凝固卵白様食品であって、
エンドウ豆澱粉と、
タピオカ澱粉と、
水分と、を含有し、
前記凝固卵白様食品における前記エンドウ豆澱粉と前記タピオカ澱粉の合計の含有量は、5質量%以上18質量%以下であり、
前記エンドウ豆澱粉に対する前記タピオカ澱粉の質量比は、0.2以上3.5以下である、
凝固卵白様食品。
【請求項2】
前記凝固卵白様食品における前記タピオカ澱粉の含有量は、1.5質量%以上である、
請求項1に記載の凝固卵白様食品。
【請求項3】
前記凝固卵白様食品における前記エンドウ豆澱粉の含有量は、10質量%以下である、
請求項1に記載の凝固卵白様食品。
【請求項4】
前記凝固卵白様食品における前記水分の含有量は、70質量%以上である、
請求項1に記載の凝固卵白様食品。
【請求項5】
食塩を0.05質量%以上1質量%以下含有する、
請求項1に記載の凝固卵白様食品。
【請求項6】
細断された茹で卵様の形状を有する、
請求項1に記載の凝固卵白様食品。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の凝固卵白様食品を含有する加工食品。
【請求項8】
卵白を生換算で20質量%以上60質量%以下含有する凝固卵白様食品の製造方法であって、
卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を混合して混合物を調製する工程と、
調製された前記混合物を75℃以上で加熱する工程と、を含み、
前記混合物における前記エンドウ豆澱粉と前記タピオカ澱粉の合計の含有量が、5質量%以上18質量%以下であり、
前記混合物における前記エンドウ豆澱粉に対する前記タピオカ澱粉の質量比が、0.2以上3.5以下である、
凝固卵白様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白の含有量を所定の範囲に制限した凝固卵白様食品及びそれを含む加工食品、並びに凝固卵白様食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液卵白を加熱凝固させゲル状にした凝固卵白は、茹で卵としてそのまま食されることに加えて、タマゴサラダ、タマゴスプレッド、タマゴフィリング、タルタルソース等の加工食品にも広く使用されている。一方、従来より、液卵白のみからなる凝固卵白の加工及び保存における問題を解決する等の観点から、卵白に加えて澱粉等を加えたスラリーを加熱凝固させた凝固卵白が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-73537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該技術分野においては、食感を本物の凝固卵白に近づける点、及び、澱粉特有の風味として違和感の原因となる澱粉臭を抑える点、が主な課題である。また、近年、鶏卵の供給量や価格の変動等により、卵白の含有量を制限しつつも、上記課題をより高い基準で両立した凝固卵白様食品が求められている。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、卵白の含有量を所定の範囲に制限しつつも、本物の凝固卵白に近い食感、及び澱粉臭が抑えられた風味を有する凝固卵白様食品及びそれを含む加工食品、並びに凝固卵白様食品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、凝固卵白の代替物について鋭意研究を重ねた。その結果、生換算で20質量%以上60質量%以下の卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を含有し、かつ、凝固卵白様食品におけるエンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計の含有量を5質量%以上18質量%以下、エンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比を0.2以上3.5以下とすることで、卵白の含有量を制限しつつ、本物の凝固卵白に近い食感、及び澱粉臭が抑えられた風味を両立することができることに想到し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)卵白を生換算で20質量%以上60質量%以下含有する凝固卵白様食品であって、
エンドウ豆澱粉と、
タピオカ澱粉と、
水分と、を含有し、
前記凝固卵白様食品における前記エンドウ豆澱粉と前記タピオカ澱粉の合計の含有量は、5質量%以上18質量%以下であり、
前記エンドウ豆澱粉に対する前記タピオカ澱粉の質量比は、0.2以上3.5以下である、
凝固卵白様食品、
(2)前記凝固卵白様食品における前記タピオカ澱粉の含有量は、1.5質量%以上である、
(1)に記載の凝固卵白様食品、
(3)前記凝固卵白様食品における前記エンドウ豆澱粉の含有量は、10質量%以下である、
(1)又は(2)に記載の凝固卵白様食品、
(4)前記凝固卵白様食品における前記水分の含有量は、70質量%以上である、
(1)から(3)のいずれか一つに記載の凝固卵白様食品、
(5)食塩を0.05質量%以上1質量%以下含有する、
(1)から(4)のいずれか一つに記載の凝固卵白様食品、
(6)細断された茹で卵様の形状を有する、
(1)から(5)のいずれか一つに記載の凝固卵白様食品、
(7)(1)から(6)のいずれか一つに記載の凝固卵白様食品を含有する加工食品、
(8)卵白を生換算で20質量%以上60質量%以下含有する凝固卵白様食品の製造方法であって、
卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を混合して混合物を調製する工程と、
調製された前記混合物を75℃以上で加熱する工程と、を含み、
前記混合物における前記エンドウ豆澱粉と前記タピオカ澱粉の合計の含有量が、5質量%以上18質量%以下であり、
前記混合物における前記エンドウ豆澱粉に対する前記タピオカ澱粉の質量比が、0.2以上3.5以下である、
凝固卵白様食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、卵白の含有量を所定の範囲に制限しつつも、本物の凝固卵白に近い食感、及び澱粉臭が抑えられた風味を有する凝固卵白様食品及びそれを含む加工食品、並びに凝固卵白様食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。また、本発明において、「含有量」とは、明記しない限り、凝固卵白様食品全体における含有量を意味し、計算値でも分析値でもよいし、配合量であってもよい。
【0010】
<凝固卵白様食品>
本発明の凝固卵白様食品は、生換算で20質量%以上60質量%以下の卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を含有し、エンドウ豆澱粉及びタピオカ澱粉の合計の含有量と、エンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比が所定の範囲であることを特徴とする。上記構成の凝固卵白様食品は、本物の凝固卵白と近い食感、及び澱粉臭が抑えられた風味を有し、凝固卵白の代替物として用いることができる。本発明において「本物の凝固卵白と近い食感」とは、本物の凝固卵白と類似する食感をいうものとし、「澱粉臭が抑えられた風味」とは、澱粉臭がない、または凝固卵白様食品として許容範囲である風味をいうものとする。なお、本発明において、「風味」とは、喫食するときに感じられる香りと味を総合したものをいう。
【0011】
<凝固卵白>
本発明において、凝固卵白とは、一般に食用に供される鳥類の卵の卵白を完全に加熱凝固させゲル状にしたものをいい、具体的には、目視で観察したとき凝固卵白の表面だけでなく中身も凝固し、全体において凝固していない部分、即ち、半熟状の部分がほとんど観察されない状態にあるものをいう。本発明の凝固卵白様食品は、例えば、茹で卵の卵白部様の食品であるとよい。ここでいう「茹で卵」は、一般に食用に供される鳥類の殻付き卵をボイルして卵白部を完全に凝固させたものをいう。このような凝固卵白は、歯で押圧した際の柔らかさと、抵抗感として感じられる歯応えとのバランスが良好であるという特徴を有する。さらに、凝固卵白は、口腔内で圧縮されつつも歯や舌の動きに柔らかく沿うように変形する弾力感や、つるっとした滑らかさなども有し、特有の複雑な食感を有する。加えて、凝固卵白は、卵白特有の癖の少ない風味を有し、澱粉様の風味を有するものではない。本発明の凝固卵白様食品は、後述するように、卵白の含有量を制限して澱粉を含有しつつも、凝固卵白特有の複雑な食感を再現できるとともに、澱粉特有の風味(澱粉臭)を抑制して凝固卵白らしい風味を活かすことができる。
【0012】
<卵白>
本発明の加熱凝固卵白は、卵白を含有する。本発明の卵白は、一般に食用に供される鳥類の卵を割卵し卵黄を分離して得られる未調製の液卵白でもよいし、未調製の液卵白に所定の処理を施したものでもよい。所定の処理の例としては、食塩や糖質等の添加、低温殺菌等の殺菌処理、冷凍及び解凍、乾燥及び水戻し、脱糖処理等が挙げられる。これらの処理は、1種のみ行ってもよいし、2種以上を組み合わせて行ってもよい。
【0013】
<卵白の含有量>
本発明において、凝固卵白様食品における卵白の含有量(以下「A」とも称する)は、生換算で20質量%以上60質量%以下である。なお、「生換算における含有量」とは、凝固卵白様食品に含まれる卵白成分が、未調製の液卵白として配合されていた場合の含有量をいう。卵白の生換算における含有量(A)を上記範囲とすることで、卵白特有の風味を残しつつ、卵白の使用量を制限して、卵の供給量や価格の変動の影響を低減することができる。また、卵白の生換算における含有量(A)は、卵白特有の風味を得る観点から、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上であり、卵白の使用量を効果的に制限する観点から、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0014】
<エンドウ豆澱粉>
本発明において、エンドウ豆澱粉とは、エンドウ豆を原料とする澱粉をいう。本発明におけるエンドウ豆澱粉は、エンドウ豆から精製された未加工澱粉でもよいし、未加工澱粉を加工した加工澱粉でもよい。加工澱粉としては、例えば、漂白澱粉、油脂加工澱粉、湿熱処理澱粉、酸処理澱粉、アルカリ処理澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉等が挙げられる。また、エンドウ豆澱粉は、製造適性の観点からβ澱粉であることが好ましい。エンドウ豆澱粉により、凝固卵白に近い柔らかさ、歯応え、及び弾力感等を有する凝固卵白様食品を得ることができる。さらに、エンドウ豆澱粉は、水分に添加した場合に白濁し得るため、凝固卵白様の白い色味を付与しやすいという利点もある。なお、エンドウ豆澱粉は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
<エンドウ豆澱粉の含有量>
本発明の凝固卵白様食品において、エンドウ豆澱粉の含有量(以下「B」とも称する)は、後述する合計の含有量及び質量比の条件を満たすように設定されればよいが、以下のような範囲に設定されることが好ましい。エンドウ豆澱粉の含有量(B)の下限は、柔らかすぎず適度な歯応えと弾力感を付与する観点から、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3.5質量%以上である。エンドウ豆澱粉の含有量(B)の上限は、硬すぎる食感を抑制しつつ、澱粉臭を抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0016】
<タピオカ澱粉>
本発明において、タピオカ澱粉とは、キャッサバの根茎を原料とする澱粉をいう。本発明におけるタピオカ澱粉は、未加工澱粉でもよいし、未加工澱粉を加工した加工澱粉でもよい。また、タピオカ澱粉は、製造適性の観点からβ澱粉であることが好ましい。タピオカ澱粉により、凝固卵白様食品を保存した際の離水を抑制することができる。加えて、タピオカ澱粉をエンドウ豆澱粉と併用することにより、凝固卵白様食品の歯応えや弾力感、滑らかさを高め、澱粉臭を抑えることができる。なお、タピオカ澱粉は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0017】
<タピオカ澱粉の含有量>
本発明の凝固卵白様食品において、タピオカ澱粉の含有量(以下「C」とも称する)は、後述する合計の含有量及び質量比の条件を満たすように設定されればよいが、以下のような範囲に設定されることが好ましい。タピオカ澱粉の含有量(C)の下限は、食感の向上や澱粉臭の抑制、離水防止といった作用を効果的に発揮させる観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上である。タピオカ澱粉の含有量(C)の上限は、凝固卵白とは異なる食感を抑制する観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下である。
【0018】
<水分>
本発明の凝固卵白様食品に含まれる水分は、清水由来の水分に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で選択された材料由来の水分を含んでいてもよい。このような水分を含む材料としては、例えば、液卵白、植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルク、オーツミルク等)、果汁、野菜汁、液状調味料等が挙げられる。
【0019】
<水分の含有量>
本発明の凝固卵白様食品において、水分の含有量(以下「D」とも称する)の下限は、凝固卵白と異なる食感及び風味になることを抑制する観点から、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。水分の含有量(D)の上限は、柔らかすぎる食感を抑制する観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
【0020】
<凝固卵白様食品におけるエンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計の含有量(B+C)>
本発明の凝固卵白様食品において、エンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計の含有量(B+C)は、5質量%以上18質量%以下である。当該含有量は、以下「B+C」とも称する。B+Cを5質量%以上とすることで、適度に柔らかく、歯応えや弾力感のある好ましい食感の凝固卵白様食品を得ることができる。また、B+Cを18質量%以下とすることで、ざらざらした食感や凝固卵白の風味とは異なる澱粉臭等を抑制することができる。さらに、B+Cの下限は、凝固卵白により近い食感を得る観点から、好ましくは6質量%以上、より好ましくは7質量%以上である。また、B+Cの上限は、より滑らかで凝固卵白に近い食感とし、澱粉臭をより効果的に抑制する観点から、好ましくは15質量%以下、より好ましくは13.5質量%以下である。
【0021】
<エンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比(C/B)>
本発明の凝固卵白様食品において、エンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比は、0.2以上3.5以下である。当該質量比は、凝固卵白様食品における、エンドウ豆澱粉の含有量(B)に対するタピオカ澱粉の含有量(C)の比率として算出することができ、以下「C/B」とも称する。C/Bを0.2以上とすることで、適度に柔らかく、歯応えや弾力感のある好ましい食感の凝固卵白様食品を得ることができ、さらに澱粉臭を抑制することができる。C/Bを3.5以下とすることで、適度に柔らかく、歯応えや弾力感のある好ましい食感の凝固卵白様食品を得ることができる。さらに、C/Bの下限は、好ましい食感の付与及び澱粉臭の抑制等の作用をより効果的に得つつ、離水を防止する観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上である。また、C/Bの上限は、凝固卵白により近い食感を得る観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下である。
【0022】
<食塩>
本発明の凝固卵白様食品は、さらに食塩を含有するとよい。これにより、凝固卵白様食品に、本物の凝固卵白に近い食味を付与することができる。本発明の凝固卵白様食品において、食塩の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0023】
<澱粉以外の増粘多糖類>
本発明の凝固卵白様食品は、澱粉の作用を損なわない範囲内で、澱粉以外の増粘多糖類を含有していてもよい。このような増粘多糖類としては、ガム質、セルロース誘導体、ペクチン、カードラン、プルラン、マンナン、寒天等が挙げられる。ガム質としては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、カラギーナン、ローカストビーンガム、タラガム、グアガム、アラビアガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム等が挙げられる。セルロース誘導体としては、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。なお、増粘多糖類は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の凝固卵白様食品は、上記増粘多糖類のうち、ガム質を含有していることが好ましく、例えばキサンタンガムを含有していることが好ましい。また、本発明の凝固卵白様食品は、澱粉による上述の作用を効果的に発揮させる観点から、セルロース誘導体、カードラン又はマンナンの少なくともいずれか一つを含有していないことが好ましく、これらのいずれも含有していないことがより好ましい。本発明の凝固卵白様食品において、澱粉以外の増粘多糖類の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0024】
<油脂>
本発明の凝固卵白様食品は、油脂を含有していなくてもよいが、適量の油脂を含有していてもよい。当該油脂としては、食用の油脂であれば特に限定されず、動物性油脂、植物性油脂、及びこれらの油脂に化学的又は酵素的処理等を施して得られる油脂等が挙げられる。また本発明における油脂は、凝固卵白に近い白色の外観を得やすくする観点から、乳化された油脂であってもよい。乳化された油脂は、別に添加された乳化剤によって乳化された油脂であってもよいし、予め乳化された乳化油脂であってもよい。油脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。凝固卵白様食品における油脂の含有量は、油っぽさを抑制する観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0025】
<その他の材料>
本発明の凝固卵白様食品は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の原料を含有することができる。このような原料としては、例えば、醤油、アミノ酸等の調味料類、果糖ぶどう糖液糖、デキストリン、糖エタノール等の上記以外の糖質、グリシン、酢酸ナトリウム等の静菌剤、有機酸、有機酸塩等のpH調整剤、保存料、酸化防止剤、香料等が挙げられる。また本発明の凝固卵白様食品は、栄養組成を本物の凝固卵白に近づける観点から、例えばタンパク質を含有しているとよく、特に植物性タンパク質を含有しているとよりよい。タンパク質は、タンパク質を含有する材料によって供給されてもよいし、原料から精製されたタンパク質を用いてもよい。植物性タンパク質の例としては、例えば、豆乳等に含まれる大豆タンパク質、アーモンドミルク等に含まれるアーモンドタンパク質、その他の豆類由来のタンパク質、野菜由来のタンパク質、穀物由来のタンパク質、果実由来のタンパク質等が挙げられる。
【0026】
<細断された茹で卵様の形状>
本発明の凝固卵白様食品は、用いられる調理品の種類に応じた大きさ及び形状を有しているとよく、例えば、細断された茹で卵様の形状であるとよい。本発明において、「細断された茹で卵様の形状」とは、フードカッター、包丁やダイサーなどで細かく切断された茹で卵のような形状をいい、定形でも不定形でもよく、具体的にはダイス状、みじん切り形状、粉砕された形状等が挙げられる。細断された茹で卵様の凝固卵白様食品は、体積に対する表面積の割合が大きいため、ソースや具材との味馴染みを向上させることができる。細断された茹で卵様の凝固卵白様食品は、板状や塊状等の凝固卵白様食品を、ダイサー、フードカッター、包丁、粉砕機、撹拌機等により細断することで調製され得る。細断された茹で卵様の凝固卵白様食品において、一つの断片のサイズは特に限定されないが、例えば一辺の寸法が、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。
【0027】
<本発明の凝固卵白様食品の作用効果>
本発明の凝固卵白様食品は、生換算で20質量%以上60質量%以下の卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を含有し、かつ、凝固卵白様食品におけるエンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計の含有量を5質量%以上18質量%以下、エンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比を0.2以上3.5以下とすることで、卵白の含有量を制限しつつ、本物の凝固卵白に近い食感、及び澱粉臭が抑えられた風味を両立することができる。具体的に、上記条件を満たす含有量のエンドウ豆澱粉により、適度な歯応えを有する凝固卵白様食品を得ることができる。またこれに、上記条件を満たす含有量のタピオカ澱粉を併用することにより、凝固卵白に近い柔らかさ、歯応え及び弾力感を有するとともに、滑らかさも有する凝固卵白様食品を得ることができる。さらに、上記条件を満たす含有量のタピオカ澱粉により、澱粉臭などの好ましくない風味を抑制された凝固卵白様食品を得ることができる。加えて、凝固卵白様食品におけるタピオカ澱粉の含有量を1.5質量%以上とすることで、保存後の離水を抑制することができる。さらに、凝固卵白様食品におけるエンドウ豆澱粉の含有量を10質量%以下とすることで、澱粉臭をより確実に抑制された風味を有する凝固卵白様食品を得ることができる。
【0028】
<凝固卵白様食品を含有する加工食品>
本発明の凝固卵白様食品は、凝固卵白の代替物として加工食品に用いることができる。本発明の凝固卵白様食品を含有する加工食品としては、例えば、茹で卵を用いた代表的な加工食品である、タマゴサラダ、タルタルソース、タマゴスプレッド、タマゴフィリング等が挙げられる。但し、本発明の加工食品は、本発明の凝固卵白様食品を用いたものであればこれらに限定されず、例えば、ソース、サラダ(タマゴサラダ以外のサラダを含む)、サンドイッチ、総菜パン、煮卵、カレー、シチュー、スープ、お粥、雑炊、オムレツ、ラーメン、丼の具材等であってもよい。本発明の加工食品は、本発明の凝固卵白様食品を用いて、通常の凝固卵白を用いた場合と同様の工程を経ることで製造され得る。また、本発明の加工食品は、レトルト殺菌やその他の加熱殺菌が施されたものであってもよい。本発明の加工食品は、上述の凝固卵白様食品を用いるため、凝固卵白を用いたものと近い食感及び風味を有する。
【0029】
<凝固卵白様食品の製造方法>
本発明の凝固卵白様食品の製造方法は、例えば、卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を含有する混合物を調製する工程と、調製された混合物を加熱する工程と、を含む。
【0030】
<混合物の調製工程>
本工程では、卵白と、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を混合して混合物を調製する。本工程において、エンドウ豆澱粉及びタピオカ澱粉の不均一なゲル化を抑制する観点から、混合物の調製は加熱を伴わないことが好ましい。例えば、混合物の温度は、好ましくは50℃以下、より好ましくは30℃以下であり、混合処理を円滑に行う等の観点から、好ましくは0℃以上である。本工程の混合には、例えばミキサー、ホモジナイザー等の撹拌機を用いることができる。混合物において、エンドウ豆澱粉、タピオカ澱粉等の含有量は、上述のB+C、C/Bの範囲を満たすように適宜設定される。具体的に、混合物におけるエンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計の含有量は、5質量%以上18質量%以下であり、混合物におけるエンドウ豆澱粉に対するタピオカ澱粉の質量比は、0.2以上3.5以下とする。なお、混合物は、上記材料の他、任意の材料を含んでいてもよい。
また、本工程は、気泡を除去する観点から、混合物を脱気する工程を含んでいることが好ましい。脱気処理は、混合しながら行われてもよいし、混合後に行われてもよい。具体的な脱気処理としては、例えば、真空ポンプや真空シーラーなどで容器内の空気を脱気する処理が挙げられる。
混合物の調製工程は、卵白による過度な気泡の発生を抑制する観点から、例えば、エンドウ豆澱粉、タピオカ澱粉及び水分を含有する澱粉混合物を調製する工程と、澱粉混合物に卵白を混合して混合液を調製する工程と、を含むことが好ましい。
【0031】
<澱粉混合物の調製工程>
本工程では、エンドウ豆澱粉、タピオカ澱粉及び水分を混合することで、澱粉混合物を調製する。澱粉混合物は、例えばエンドウ豆澱粉及びタピオカ澱粉の懸濁液であり、ペースト状であってもよい。本工程は加熱を伴わないことが好ましく、上述の混合物の調製工程における温度範囲で行われることが好ましい。なお、澱粉混合物は、上記材料の他、食塩や澱粉以外の増粘多糖類などの材料を含んでいてもよい。
【0032】
<卵白の混合工程>
本工程では、澱粉混合物に卵白を混合して上記混合物を調製する。本工程では、混合中、又は混合後に上述の脱気処理を行うことが好ましい。これにより、卵白の過度な気泡を抑えることができる。なお、本工程では、卵白による気泡を抑える観点から、消泡剤を添加してもよい。本工程は加熱を伴わないことが好ましく、上述の混合物の調製工程における温度範囲で行われることが好ましい。
【0033】
<加熱工程>
本工程では、調製された混合物を75℃以上に加熱する。加熱方法は特に限定されず、例えば混合物を充填して密封された容器を、湯煎、スチーム等により加熱してもよい。あるいは、混合物をトレー等の別の容器に移し、蒸煮、通電加熱、マイクロ波加熱等により加熱処理を行ってもよい。本工程における加熱温度は、卵白及び澱粉によるゲルを確実に形成する観点から、75℃以上であり、好ましくは80℃以上、より好ましくは85℃以上であり、好ましくは140℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。また、本工程における加熱時間は、容器中の混合物の形状(厚み)やゲル化の進行に応じて適宜設定することができるが、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上であり、好ましくは3時間以下、より好ましくは2時間以下である。
【実施例
【0034】
さらに、本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0035】
<試験例1 澱粉の種類の検討>
まず、試験例1として、異なる4種類の澱粉を用いた凝固卵白様食品のサンプルを調製し、食感、風味及び離水率の観点から好ましい澱粉の種類及び組み合わせについて検討した。
【0036】
[凝固卵白様食品の製造]
実施例1及び比較例1~4の凝固卵白様食品のサンプルを製造した。表1に示すように、各サンプルは、液卵白を40質量%含んでおり、実施例1の配合は、エンドウ豆澱粉6質量%とタピオカ澱粉4質量%とを含むものとした。一方、比較例1~4の配合は、それぞれ、エンドウ豆澱粉、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉を10質量%ずつ含むものとした。液卵白は、鶏卵を割卵して得られた未調製の液卵白とした。なお、エンドウ豆澱粉は漂白澱粉のβ澱粉、タピオカ澱粉はリン酸架橋澱粉のβ澱粉、とうもろこし澱粉は油脂加工澱粉のβ澱粉、馬鈴薯澱粉はヒドロキシプロピルリン酸架橋澱粉のβ澱粉を用いた。
【0037】
まず、表1の配合量に基づいて、清水に食塩、キサンタンガム及び澱粉を添加し、ミキサーで攪拌、均質化し、澱粉混合物を調製した。この澱粉混合物に、表1の配合量となるように液卵白を添加し、ミキサーで攪拌して、混合物を調製した。混合物を脱気しながらさらに攪拌した後、約3cmの厚さとなるように耐熱袋に充填し、約90℃で60~80分程度加熱して、実施例1及び比較例1~4のサンプルを調製した。加熱後の各サンプルは、10℃以下に冷却してから冷蔵保存した。なお、対照サンプルとして、液卵白のみを脱気しながら攪拌した後、耐熱袋に充填し、約90℃で完全に加熱凝固するまで加熱した本物の凝固卵白を調製し、同様に冷蔵保存した。
【0038】
【表1】
【0039】
[離水率の評価]
4日間冷蔵保存された各サンプルの質量を袋ごと測定し、この測定値を「全質量」とした。そして、各袋を開封してサンプルを取り出し、袋のみの質量を測定した。全質量から袋のみの質量を減じた値を、「水分除去前のサンプルの質量」とした。また、取り出されたサンプルの水分を拭き取って質量を測定し、「水分除去後のサンプルの質量」を測定した。そして、以下の式により、各サンプルの離水量及び離水率を測定した。表1に、各サンプルの離水率の結果を示す。なお、本物の凝固卵白からなる対照サンプルの離水率は1.4%であった。
(離水量(g))=(水分除去前のサンプルの質量(g))-(水分除去後のサンプルの質量(g))
(離水率(%))=(離水量(g))/(水分除去前のサンプルの質量(g))×100
【0040】
表1に示すように、実施例1のサンプルの離水率は1.8%であり、対照サンプルと同等であった。また、タピオカ澱粉を用いた比較例2、及びとうもろこし澱粉を用いた比較例3のサンプルの離水率は、対照サンプルよりも低い値であった。一方で、エンドウ豆澱粉を用いた比較例1及び馬鈴薯澱粉を用いた比較例4のサンプルの離水率は、いずれも実施例1及び対照サンプルよりも高く、これらのサンプルでは離水量が多いことがわかった。
【0041】
[食感及び風味の評価]
水分除去後のサンプルを匙で細かく裁断した。そして、8名の訓練されたパネルが各サンプルを喫食し、以下に示す採点基準に基づいて、各サンプルの食感及び喫食時に感じられる風味を採点した。食感の評価においては、各パネルが、凝固卵白特有の柔らかさ、歯応え、弾力感、滑らかさ等を総合的に判断して、本物の凝固卵白である対照サンプルとの類似性を評価した。食感の評価点は、本物の凝固卵白である対照サンプルと類似する食感を2点(最高点)とし、凝固卵白と異なる食感を1点(最低点)と設定した。風味の評価においては、各パネルが、凝固卵白とは異なる澱粉臭の強さについて、以下の基準に基づき評価した。風味の評価点は、澱粉臭がない、または凝固卵白として許容範囲であるものを2点(最高点)とし、澱粉臭が極めて強く凝固卵白食品として許容範囲外であるものを1点(最低点)と設定した。
【0042】
(食感の採点基準)
2点:対照サンプルと類似する食感を有する。
1点:対照サンプルと異なる食感を有する。
(食感の評価基準)
A:四捨五入して2点(1.5点以上2点以下)
B:四捨五入して1点(1点以上1.5点未満)
【0043】
(風味の採点基準)
2点:澱粉臭がない、または凝固卵白様食品として許容範囲である。
1点:澱粉臭が極めて強く凝固卵白様食品として許容範囲外である。
(風味の評価基準)
A:四捨五入して2点(1.5点以上2点以下)
B:四捨五入して1点(1点以上1.5点未満)
【0044】
表1に示すように、実施例1のサンプルは、本物の凝固卵白に近い食感を有し、澱粉臭のない風味を有していた。一方で、比較例1のサンプルは、澱粉臭のない風味を有していたものの、凝固卵白様の歯応え及び弾力感がなく、粉っぽい食感であり、凝固卵白とは異なる食感を有していた。また、比較例2のサンプルは、澱粉臭のない風味を有していたものの、もちっとして凝固卵白のような歯応えがなく、凝固卵白とは異なる食感を有していた。比較例3のサンプルは、凝固卵白に類似する柔らかさ、歯応え、弾力感、及び滑らかさを有しているものの、澱粉臭が強く、凝固卵白様食品として許容範囲外である風味を有していた。比較例4のサンプルは、澱粉臭のない風味を有していたものの、凝固卵白のような歯応えや弾力感がなく、凝固卵白とは異なる食感を有していた。
【0045】
[試験例1の総括]
以上より、試験例1の結果から、エンドウ豆澱粉及びタピオカ澱粉を含有する実施例1のサンプルは、凝固卵白に近い食感及び澱粉臭のない風味の双方が得られることがわかった。さらに、実施例1のサンプルでは、離水を抑えられることがわかった。
【0046】
<試験例2 エンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の配合量の検討>
次に、試験例2として、エンドウ豆澱粉とタピオカ澱粉の合計量及び配合比率を変更した複数の凝固卵白様食品のサンプルを調製し、各サンプルの食感、風味及び離水率について評価した。
【0047】
[凝固卵白様食品の製造]
実施例1~5及び比較例5~9の凝固卵白様食品のサンプルを製造した。なお、実施例1は、試験例1の実施例1と同一の配合のサンプルとした。表2に示すように、各サンプルは、液卵白を20質量%以上60質量%以下含むものとした。実施例1~5の配合は、上記B+Cが5質量%以上18質量%以下で、かつ、上記C/Bが0.2以上3.5以下であるという条件を満たすものとした。一方、比較例5~9の配合は、表2に示すように、上記B+Cが5質量%以上18質量%以下、又は上記C/Bが0.2以上3.5以下の少なくとも一方の条件を満たさないものとした。各サンプルは、試験例1のサンプルと同様に製造された。
【0048】
【表2】
【0049】
[離水率の評価]
実施例1~5及び比較例5~9の各サンプルの離水率を、試験例1と同様に算出した。表2に示すように、タピオカ澱粉の含有量が3質量%以上である実施例1、3、4、比較例6、8のサンプル、及びタピオカ澱粉の含有量が2質量%以上かつC/Bが0.3以上である実施例5は、いずれも離水率が2.5%未満であり、凝固卵白からなる対照サンプル(離水率1.4%)を参酌して許容範囲であった。
【0050】
[食感及び風味の評価]
実施例1~5及び比較例5~9の各サンプルの食感及び風味を、試験例1と同様の手法で、かつ、同様の評価基準を用いて評価した。表2に示すように、実施例1~5のサンプルは、本物の凝固卵白に近い食感を有し、澱粉臭のない風味を有していた。具体的に、実施例1~3、5のサンプルは、凝固卵白と近い柔らかさ、歯応え、弾力感及び滑らかさを有していることに加えて、澱粉臭のない風味を有していた。実施例4のサンプルは、タピオカ澱粉の含有量(C)が同一でエンドウ豆澱粉の含有量(B)が異なる実施例3のサンプルと比較して、滑らかと弾力感の点でやや劣るが、凝固卵白に類似する食感及び風味を有していた。また、B+Cが同一でC/Bが異なる実施例1及び2のサンプルを比較すると、実施例1のサンプルの方がより滑らかで柔らかく、凝固卵白により近い食感であった。
【0051】
一方で、比較例5~9のサンプルは、いずれも凝固卵白とは異なる食感を有していた。具体的に、比較例5及び6のサンプルは、凝固卵白よりも硬く、少しざらざらした食感で、歯応えはあるものの弾力は感じられなかった。比較例7のサンプルは、凝固卵白よりもかなり柔らかい食感で、歯応えも弾力も感じられなかった。比較例8のサンプルは、弾力はやや感じられたものの、凝固卵白よりも柔らかい食感で、歯応えはなかった。比較例9のサンプルは、粉っぽく、歯応えも弾力も感じられず、凝固卵白とは異なる食感であった。
【0052】
また、上記比較例のうち、エンドウ豆澱粉の含有量が10質量%超である比較例5及び6のサンプルは、凝固卵白特有の卵らしい風味が感じられず、凝固卵白とは異なる風味を有していた。
【0053】
[試験例2の総括]
以上より、液卵白を20質量%以上60質量%以下含み、かつ、上記B+Cが5質量%以上18質量%以下で、上記C/Bが0.2以上3.5以下であるという条件を満たす凝固卵白様食品は、本物の凝固卵白と類似する食感、及び澱粉臭がない、または凝固卵白様食品として許容範囲である風味を有することがわかった。
【要約】
【課題】卵白の含有量を所定の範囲に制限しつつも、本物の凝固卵白に近い食感及び澱粉臭が抑えられた風味を有する凝固卵白様食品及びそれを含む加工食品、並びに凝固卵白様食品の製造方法を提供する。
【解決手段】卵白を生換算で20質量%以上60質量%以下含有する凝固卵白様食品であって、エンドウ豆澱粉と、タピオカ澱粉と、水分と、を含有し、前記凝固卵白様食品における前記エンドウ豆澱粉と前記タピオカ澱粉の合計の含有量は、5質量%以上18質量%以下であり、前記エンドウ豆澱粉に対する前記タピオカ澱粉の質量比は、0.2以上3.5以下である、凝固卵白様食品。
【選択図】なし