(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240625BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20240625BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20240625BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1339 500
G02F1/1337
G02F1/1333
(21)【出願番号】P 2022577135
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2021008385
(87)【国際公開番号】W WO2022005236
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0082159
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507443(JP,A)
【文献】特表2018-520372(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0026026(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0042927(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1339
G02F 1/1337
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面に粘着剤層または接着剤層が形成されている第1基板;
第1表面を有し、前記第1表面が前記第1基板の第1表面と対向するように配置されている第2基板;および
前記第1基板および前記第2基板の間に存在する液晶層を含み、
前記第1基板および前記第2基板の間隔が隔壁型スペーサによって維持されており、
前記液晶層はツイスト配向を具現できるように形成されており、
前記ツイスト配向で前記液晶層のピッチに対する前記液晶層の厚さの比率が2.8を超過し、10以下であ
り、
前記隔壁型スペーサのピッチの前記液晶層のピッチに対する比率が50~500の範囲内にある、光変調デバイス。
【請求項2】
前記第1基板には配向膜が形成されていない、請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
前記隔壁型スペーサはハニカム形スペーサ、四角形スペーサまたはランダム形スペーサである、請求項1または請求項2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記隔壁型スペーサのピッチは100μm~1,000μmの範囲内にある、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
前記液晶層の厚さが0.1μm~50μmの範囲内にある、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
前記隔壁型スペーサのピッチの前記液晶層の厚さに対する比率が10~100の範囲内にある、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
前記液晶層は液晶化合物およびキラルドーパントを含む、請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項8】
前記液晶層は二色性染料を追加で含む、請求項
7に記載の光変調デバイス。
【請求項9】
前記第2基板の第1表面には液晶配向膜が形成されている、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項10】
前記液晶配向膜は垂直配向膜または水平配向膜である、請求項
9に記載の光変調デバイス。
【請求項11】
前記第2基板には液晶配向膜が形成されていない、請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項12】
電圧未印加時にツイスト配向である、請求項1~請求項
11のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項13】
電圧未印加時に最小透過度を示す、請求項1~請求項
12のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項14】
請求項1~請求項
13のいずれか一項に記載の光変調デバイスを含む、ウインドウ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年7月3日付提出された大韓民国特許出願第10-2020-0082159号に基づいた優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
光変調デバイスは少なくとも2つ以上の異なる状態間をスイッチングできるデバイスである。このようなデバイスは例えば、メガネやサングラスなどのアイウェア(eyewear)、モバイル機器、仮想現実(VR;Virtual Reality)用機器、増強現実(AR;Augmented Reality)用機器のようなウェアラブル(wearable)デバイスまたは車両のサンルーフや建物のガラスなどに適用されるウインドウ(いわゆるsmart window)等に使われるなど、その用途が次第に拡大している。
【0004】
前記光変調デバイスのうちゲストホスト液晶システムを利用したデバイスは、液晶層のホスト分子に対して二色性染料をゲスト分子として混合し、液晶に加えられる電圧によってホスト分子およびゲスト分子の配列を変化させて液晶層の光吸収率を変化させる。
【0005】
このようなゲスト-ホスト液晶システムでは、透過度可変範囲(例えば、透過状態の透過率の遮断状態での透過率に対する比率)を広げるための方法としては添加されるゲスト分子である二色性染料の量を増やす方法がある。しかし、公知の二色性染料はホスト分子である液晶化合物に対する溶解度が高くないため、二色性染料の量を増やすことによって透過度可変範囲を広げることは限界がある。
【0006】
一方、ゲストホスト液晶システムにキラルドーパントを添加する方式で透過度可変範囲を広げる方式も考慮することができる。しかし、この方法においても透過度可変範囲を広げるためには多量のキラルドーパントが添加されなければならないが、このように添加されたキラルドーパントによって液晶欠陥が発生し、視認性に問題が発生する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は光変調デバイスを提供することを目的とする。本出願は、広い透過度可変範囲を示しながらも、液晶の欠陥や視認性の低下がない光変調デバイスおよびその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で言及する物性のうち測定温度が結果に影響を及ぼす物性は、特に別途に言及しない限り、常温で測定した結果である。
【0009】
本明細書で用語常温は特に加温または減温されていない状態の温度であって、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上であり、約27℃以下の温度を意味し得る。また、特に別途に規定しない限り、本明細書で言及する温度の単位は摂氏(℃)である。
【0010】
本明細書で言及する物性のうち測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に別途に言及しない限り、常圧で測定した結果である。
【0011】
用語常圧は加圧または減圧されていない自然そのままの圧力であり、通常大気圧水準の約1気圧程度を意味する。
【0012】
本明細書で測定湿度が結果に影響を及ぼす物性の場合、該当物性は前記常温および/または常圧状態で特に調節されていない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0013】
本明細書で角度を定義する用語のうち垂直、平行、直交または水平などは目的効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、平行、直交または水平を意味し、前記垂直、平行、直交または水平の範囲は製造誤差(error)または偏差(variation)等の誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は約±15度以内の誤差、約±10度以内の誤差または約±5度以内の誤差を含むことができる。
【0014】
本出願は光変調デバイスに関する。用語光変調デバイスは、2個以上の異なる光の状態の間をスイッチングできるデバイスを意味し得る。前記で異なる光の状態は少なくとも透過率、反射率、色相および/またはヘイズが異なる状態を意味し得る。
【0015】
本出願の光変調デバイスは互いに対向するように配置された第1基板と第2基板を含み、また、前記第1および第2基板の間に液晶層を含むことができる。前記で第1基板と第2基板はそれぞれ第1表面を有し、互いの第1表面が対向するように第1および第2基板が配置されていてもよい。本出願で用語第1または第2基板の第1表面は前記第1または第2基板の任意の一つの主表面を意味し、第2表面は前記第1または第2基板で前記第1表面の反対側の表面を意味する。
【0016】
後述するように、前記第1基板の第1表面には粘着剤層または接着剤層が形成されていてもよい。
【0017】
また、前記第1および第2基板の間隔はいわゆる隔壁型スペーサによって維持されていてもよい。
【0018】
図1は、本出願の一つの態様に係る光変調デバイスを例示的に示す。第1実施例に係る光変調デバイスは第1基板101、液晶層300および第2基板201を順に含む。前記第1基板101は第1表面に粘着剤層または接着剤層103が形成されていてもよい。後述するように、前記液晶層300は液晶化合物とキラルドーパントを含むことができる。
図1のように前記第2基板201は第1表面に液晶配向膜203が存在し得る。他の態様では前記液晶配向膜203は存在しなくてもよい。
図1で前記第1基板および第2基板は互いの第1表面が対向するように対向配置されており、前記第1基板および第2基板の間隔は隔壁型スペーサ400により維持されている。
【0019】
図2は、本出願の他の態様に係る光変調デバイスを例示的に示す。
図2の光変調デバイスは
図1のデバイスと類似の構造を有するが、第2基板201に液晶配向膜が形成されていない。
図2の構造でも前記第1および第2基板の間隔は隔壁型スペーサ400により維持されている。
【0020】
本出願の光変調デバイスは、少なくともツイスト配向を具現するように構成されていてもよい。このようなツイスト配向状態は電圧未印加状態で具現されるか、あるいは電圧印加状態で具現され得る。
【0021】
液晶層は前記ツイスト配向と異なる配向の間をスイッチングできるように構成され得る。例えば、電圧未印加状態で前記ツイスト配向が具現されるのであれば、電圧の印加によって前記異なる配向にスイッチングされ得、電圧印加状態でツイスト配向が具現されるのであれば、電圧の除去によって電圧未印加状態で異なる配向にスイッチングされ得る。
【0022】
一つの例示で前記液晶層は、前記ツイスト配向状態での液晶層のピッチpに対する前記液晶層の厚さ(cell gap、d)の比率(d/p)が2.8を超過し、10以下となるように構成され得る。このようなd/pの比率は液晶層に存在するキラルドーパントの比率と液晶層の厚さの調節を通じて調節が可能である。このようなd/pを示す液晶層の間隔を隔壁型スペーサで維持することによって、広い透過度可変範囲を有し、視認性の低下と液晶欠陥がない光変調デバイスを提供することができる。
【0023】
前記d/pは他の例示で2.9以上、3以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、4以上、4.1以上、4.2以上、4.3以上、4.4以上、4.5以上、4.6以上、4.7以上または4.8以上であるか、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、5.7以下、5.5以下、5.4以下、5.3以下、5.2以下、5.1以下、5.0以下、4.9以下、4.7以下、4.5以下または4以下程度であってもよい。
【0024】
本出願の光変調デバイスは透過モードと遮断モードの間をスイッチングできるように設計され得る。前記光変調デバイスのスイッチングは、外部信号の印加、例えば電圧信号の印加の有無により調節することができる。一例示で前述したツイスト配向で前記遮断モードが具現され、前記ツイスト配向とは異なる配向で透過モードが具現され得る。
【0025】
本出願の光変調デバイスは、対向配置された2個の基板と前記基板の間に位置した液晶層を有する構造を基本単位で含むことができる。前記基本単位は液晶セルとも呼ばれ得る。通常的に第1および第2基板の両側の液晶層に向かう表面すべてに液晶配向膜が形成されるが、第1基板上に粘着剤層または接着剤層を形成することによって、特定用途(例えば、smart windowやeye wear)で非常に有用な液晶化合物の配向状態が得られ得る。したがって、本出願の光変調デバイスの第1基板には液晶配向膜が形成されなくてもよい。また、光変調デバイスの第1基板および第2基板のうちいずれか一つの基板には第1および第2基板の間隔(cell gap)を維持するスペーサが存在するが、第1基板上に粘着剤層または接着剤層を形成する場合、前記スペーサに前記粘着剤層または接着剤層が付着して第1および第2基板の合着力を大幅に改善することができる。
【0026】
本明細書で基板の第1表面は基板の主表面とその反対側の表面のうちいずれか一表面を意味し、第2表面は基板の主表面とその反対側の表面のうち他の一表面を意味する。また、前記で主表面は基板の表面のうち最も面積が大きい表面を意味し得る。
【0027】
前記第1基板および第2基板としては、特に制限なく公知の基板素材が使われ得る。例えば、基板としてはガラス基板、結晶性または非結晶性シリコーン基板または石英基板などの無機基板やプラスチック基板などを使うことができる。プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose)基板;ノルボルネン誘導体基板などのCOP(cyclo olefin copolymer)基板;PMMA(poly(methyl methacrylate)基板;PC(polycarbonate)基板;PE(polyethylene)基板;PP(polypropylene)基板;PVA(polyvinyl alcohol)基板;DAC(diacetyl cellulose)基板;Pac(Polyacrylate)基板;PES(poly ether sulfone)基板;PEEK(polyetheretherketon)基板;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)基板;PEN(polyethylenemaphthatlate)基板;PET(polyethyleneterephtalate)基板などのポリエステル基板;PI(polyimide)基板;PSF(polysulfone)基板;PAR(polyarylate)基板または非晶質フッ素樹脂などを含む基板を使用できるがこれに制限されるものではない。このような基板の厚さは特に制限されず、適切な範囲で選択され得る。
【0028】
本出願の光変調デバイスは第1基板の第1表面に粘着剤層または接着剤層が形成されていてもよい。一例示で前記第1表面に形成された粘着剤層または接着剤層の面積(A)の前記第1表面の面積(B)に対する比率(百分率)(=100×A/B)は、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上または95%以上程度であり得る。前記比率(百分率)(=100×A/B)の上限には特に制限がなく、例えば、約100%程度であり得る。
【0029】
前記粘着剤層または接着剤層は光学的に透明であり得る。前記粘着剤層または接着剤層は可視光領域、例えば380nm~780nm波長に対する平均透過度が約80%以上、85%以上、90%以上または95%以上であり得る。
【0030】
前記接着剤層または粘着剤層としては特に制限なく公知の素材が使われ得、例えば、いわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)として知られているものを使うことができる。本発明者らはこのようなOCAまたはOCR素材が液晶化合物に対して一定の水準の配向力を示すことを確認したし、このような配向力が特定用途(前述したsmart windowやeye wearなど)に非常に適合な配向状態を具現することを確認した。
【0031】
前記粘着剤層または接着剤層の種類は特に制限されず、液晶に対する耐汚染性が強い粘着剤または接着剤を使えば充分である。前述した通り、粘着剤層としては業界でいわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)として公知になっている多様な類型の粘着剤を使うことができ、前記粘着剤は付着対象が合着される前に硬化する特徴がある。このような粘着剤としては例えば、アクリル系、シリコーン系、エポキシ系またはウレタン系の粘着剤が使われ得る。接着剤層としては業界でいわゆるOCR(Opticall Clear Resin)として公知になっている多様な類型の接着剤を使うことができ、前記接着剤は付着対象が合着された後に硬化する特徴がある。このような接着剤は基板にコーティングされて熱またはUVで半硬化された後に光変調デバイスが製作された後、熱またはUVで完全硬化となり得る。粘着剤層または接着剤層は液晶配向膜と組み合わせられて液晶化合物の適合な配向を誘導することができる。
【0032】
一つの例示で、前記粘着剤層または接着剤層は液晶分子に対する液晶配向力および付着力を同時に有する液晶配向性粘着剤層または接着剤層であり得る。例えば、前記粘着剤または接着剤は垂直配向性や水平配向性粘着剤または接着剤であり得る。本明細書で、垂直配向性粘着剤または接着剤は隣接する液晶化合物に対して垂直配向力を付与するとともに、上部基板と下部基板を接着させることができる付着力を有する粘着剤または接着剤を意味し得る。本明細書で、水平配向性粘着剤または接着剤は隣接する液晶化合物に対して水平配向力を付与するとともに、上部基板と下部基板を接着させることができる付着力を有する粘着剤または接着剤を意味し得る。
【0033】
垂直配向性粘着剤または接着剤に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角度は80度~90度、85度~90度または87度~90度の範囲内であり得、水平配向性粘着剤または接着剤に対する隣接する液晶化合物のプレチルト角度は0度~10度、0度~5度、0度~3度の範囲内であり得る。本出願の一実施例によると、前記粘着剤または接着剤としては垂直配向性粘着剤または接着剤を使うことができる。
【0034】
本明細書でプレチルト角度は電圧が印加されていない状態で液晶化合物の方向子が液晶配向性粘着剤または配向膜と水平な面に対してなす角度を意味し得る。本明細書で液晶化合物の方向子は液晶層の光軸(Optical axis)または遅相軸(Slow axis)を意味し得る。または液晶化合物の方向子は液晶化合物が棒(rod)の形状である場合、長軸方向を意味し得、液晶化合物が円板(discotic)の形状である場合、円板平面の法線方向と平行な軸を意味し得る。液晶層内に方向子が互いに異なる複数の液晶化合物が存在する場合に前記方向子はベクトル和であり得る。
【0035】
本出願の一実施例で、液晶に対する耐汚染性が強く、垂直配向力を有する粘着剤または接着剤としては、例えばシリコーン(Silicone)系粘着剤または接着剤を使うことができる。前記シリコーン系粘着剤または接着剤としては硬化型シリコーン化合物を含む組成物の硬化物を使うことができる。硬化型シリコーン化合物であればその表面特性上垂直配向能が示され得るため、公知になっているシリコーン粘着剤または接着剤の中で適切な種類を選択することができる。硬化型シリコーン化合物を含む組成物(以下、硬化型シリコーン組成物)の種類は特に制限されず、例えば加熱硬化型シリコーン組成物または紫外線硬化型シリコーン組成物を使うことができる。
【0036】
一つの例示で前記硬化型シリコーン組成物は付加硬化型シリコーン組成物であって、(1)分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンおよび(2)分子中に2個以上のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンを含むことができる。前記のようなシリコーン化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応によって硬化物を形成することができる。
【0037】
本出願で使用できる前記(1)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分枝鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分枝鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分枝鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分枝鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R1
2SiO2/2で表示されるシロキサン単位とR1
2R2SiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1
2R2SiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1R2SiO2/2で表示されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表示されるシロキサン単位またはR2SiO3/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0038】
前記で、R1はアルケニル基以外の炭化水素基であって、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであり得る。
【0039】
また、前記でR2はアルケニル基であって、具体的にはビニル基、アリル基、プテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などであり得る。
【0040】
本出願で使用できる前記(2)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分枝鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分枝鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分枝鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分枝鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R1
3SiO1/2で表示されるシロキサン単位とR1
2HSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1
2HSiO1/2で表示されるシロキサン単位とSiO4/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1HSiO2/2で表示されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表示されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表示されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち2以上の混合物が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記で、R1はアルケニル基以外の炭化水素基であって、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などであり得る。
【0041】
前記(2)オルガノポリシロキサンの含量は、適切な硬化がなされ得る程度に含まれるのであれば特に限定されない。例えば、前記(2)オルガノポリシロキサンは、前述した(1)オルガノポリシロキサンに含まれるアルケニル基一つに対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれ得る。このような範囲で硬化を充分に進行させて、耐熱性を確保することができる。
【0042】
前記付加硬化型シリコーン組成物は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物を追加で含むことができる。このような、白金または白金化合物の具体的な種類は特に制限されない。触媒の比率も適切な硬化がなされ得る水準に調節されればよい。
【0043】
前記付加硬化型シリコーン組成物は、貯蔵安定性、取り扱い性および作業性向上の観点で必要な適切な添加剤を適正割合でさらに含んでもよい。
【0044】
他の例示で前記シリコーン組成物は、縮合硬化型シリコーン組成物として、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマー;および(b)水酸基含有シロキサンポリマーを含むことができる。
【0045】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記の化学式1で表示される化合物であり得る。
[化学式1]
R1
aR2
bSiOc(OR3)d
化学式1でR1およびR2は、それぞれ独立的に、水素原子または置換または非置換された1価炭化水素基を表し、R3はアルキル基を表し、R1、R2およびR3がそれぞれ複数個存在する場合には互いに同一であるか異なり得、aおよびbはそれぞれ独立的に0以上、1未満の数を表し、a+bは0超過、2未満の数を表し、cは0超過、2未満の数を表し、dは0超過、4未満の数を表し、a+b+cΥ2+dは4である。
【0046】
化学式1の定義で、1価炭化水素は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであり得、このとき炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などであり得る。また、化学式1の定義で、1価炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0047】
化学式1の定義で、R3のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基の中で、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これに制限されるものではない。
【0048】
化学式1のポリマーのうち分枝状または3次架橋されたシロキサンポリマーを使うことができる。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損傷させない範囲内で、具体的には脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0049】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野の平均的な技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーにより適切な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択することができ、それを使った加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。一方、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的に応じて、適切な1官能のアルコキシシランを併用使用してもよい。
【0050】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GE東レシリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などのような、市販されているオルガノシロキサンポリマーを使うことができる。
【0051】
前記縮合硬化型シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記の化学式2で表示される化合物を使うことができる。
[化学式2]
【化1】
化学式2で、R
4およびR
5はそれぞれ独立的に、水素原子または置換または非置換された1価の炭化水素基を表し、R
4およびR
5がそれぞれ複数存在する場合には、前記は互いに同一または異なり得、nは5~2,000の整数を示す。
【0052】
化学式2の定義で、1価炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化学式1の場合と同一の炭化水素基を挙げることができる。
【0053】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造することができる。この分野の平均的な技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーにより適切なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択することができ、それを使った加水分解および縮合反応の条件も容易に制御することができる。前記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レシリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などのような、市販されている2官能オルガノシロキサンポリマーを使うことができる。
【0054】
垂直配向力を有する粘着剤または接着剤のタイプは特に制限されず、目的とする用途により適切に選択され得る。例えば固体状粘着剤または接着剤、半固体状粘着剤または接着剤、弾性粘着剤または接着剤、または液状粘着剤または接着剤を適切に選択して使うことができる。固体状粘着剤または半固体状粘着剤または弾性粘着剤はいわゆる減圧粘着剤(PSA;Pressure Sensitive Adhesive)と呼称され得、接着対象が合着される前に硬化され得る。本出願で例えば、垂直配向力を有するPSAタイプの粘着剤としてポリジメチルシロキサン粘着剤(Polydimethyl siloxane adhesive)またはポリメチルビニルシロキサン粘着剤(Polymethylvinyl siloxane adhesive)を使用することができ、垂直配向力を有するOCRタイプの接着剤としてアルコキシシリコーン接着剤(Alkoxy silicone adhesive)を使うことができるが、これに制限されるものではない。
【0055】
前記粘着剤層または接着剤層の厚さは特に制限されず、目的とする接着力の確保のための適正範囲に選択され得る。前記厚さは略1μm~50μmの範囲内であり得る。前記厚さは他の例示で2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上または10μm以上であるか、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下または10μm以下程度であってもよい。
【0056】
前記配置下で前記粘着剤層または接着剤層を含むことによって、優秀な接着力を持ちながらも特に遮断モードでの光漏洩が制御されて優秀な光学特性を示すことができる光変調デバイスを提供することができる。
【0057】
光変調デバイスで第2基板の第1表面(第1基板の第1表面と対向する表面)には、液晶配向膜が形成されてもよく、または形成されなくてもよい。液晶配向膜が形成される場合、第2基板の第1表面上に形成される配向膜の種類は特に制限はない。すなわち、前記配向膜としては目的とする初期配向を考慮して、公知の垂直あるいは水平配向膜やその他の配向膜が適用され得る。配向膜の類型もラビング配向膜のような接触式配向膜や、光配向膜のような非接触式配向膜が適用され得る。
【0058】
前記第1基板の粘着剤層または接着剤層と前記第2基板の配向膜の間には液晶層が存在することができる。前記液晶層は外部信号の印加の有無により単独であるいは他の構成要素と連係して光の透過度、反射度、ヘイズおよび/または色相などを変更できる機能性層である。本明細書で外部信号とは、液晶層内に含まれる物質、例えば光変調物質の挙動に影響を与え得る外部の要因、例えば外部電圧を意味し得る。したがって、外部信号がない状態とは、外部電圧などの印加がない状態を意味し得る。
【0059】
前記液晶層は液晶化合物を含む層であって、後述するように、液晶化合物(液晶ホスト)と二色性染料を含むいわゆるゲストホスト層や、キラルドーパントなどのその他の添加剤を液晶化合物と共に含む層も本明細書で規定する液晶層の一種である。前記液晶化合物は外部信号の印加の有無により配向方向が変わるように液晶層内に存在することができる。液晶化合物としては外部信号の印加によってその配向方向が変更され得るものであれば、すべての種類の液晶化合物を使うことができる。
【0060】
液晶層は誘電率異方性が正数または負数である液晶化合物を含むことができる。液晶の誘電率異方性の絶対値は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。用語誘電率異方性(△ε)は液晶の水平誘電率(ε//)と垂直誘電率(ε⊥)の差(ε//-ε⊥)を意味し得る。本明細書で用語水平誘電率(ε//)は液晶分子の方向子と印加電圧による電場の方向が実質的に水平となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し、垂直誘電率(ε⊥)は液晶分子の方向子と印加電圧による電場の方向が実質的に垂直となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味する。
【0061】
前述したd/p比率の達成のために、液晶層は前記液晶化合物(または液晶分子とも呼称され得る。)と共にキラルドーパントを含むことができる。キラルドーパントの含量を液晶層の厚さ(cell gap)とともに調節することによって、前記d/p比率の調節が可能である。
【0062】
液晶層に含まれるキラルドーパントとしては特に制限なく公知の化合物が適用され得る。このようなキラルドーパントとしては、液晶性、例えばネマティック規則性を損傷させず、目的とする回転(twisting)を誘導できるものであれば、特に制限されずに使われ得る。液晶分子に回転を誘導するためのキラルドーパントは、分子構造中にキラリティー(chirality)を少なくとも含む必要がある。キラル剤としては、例えば、1個または2個以上の非対称炭素(asymmetric carbon)を有する化合物、キラルアミンまたはキラルスルホキシドなどのヘテロ原子上に非対称点(asymmetric point)がある化合物またはクムレン(cumulene)またはビナフトール(binaphthol)等の軸不斉を有する光学活性である部位(axially asymmetric、optically active site)を有する化合物が例示され得る。キラル剤は例えば,分子量が1,500以下である低分子化合物であり得る。キラル剤としては、市販されるキラルネマティック液晶、例えば、Merck社で市販されるキラルドーパント液晶S-811またはBASF社のLC756等を使用してもよい。
【0063】
前記液晶層のキラルドーパントの含量は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。例えば、液晶層でキラルドーパントの含量は0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.25重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上または2.7重量%以上であり得る。液晶層のキラルドーパントの含量の上限は、例えば、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5.0重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.75重量%以下、2.5重量%以下、2.25重量%以下、2.0重量%以下、1.75重量%以下または1.5重量%以下であり得る。液晶層のキラルドーパントの含量が前記範囲を満足する場合、透過度可変特性が優秀な光変調デバイスを提供することができる。
【0064】
キラルドーパントの適用比率は、前記比率d/pを達成できるように選択される。一般的にキラルドーパントの含量(重量%)は、100/HTP(Helixcal Twisting power)Хピッチp(nm)の数式で計算され得る。前記HTPはキラルドーパントの撚りの強度を表し、前記方式を参照して目的とするピッチを考慮してキラルドーパントの含量が決定され得る。
【0065】
液晶層は光透過度可変特性を調節するという側面で、液晶化合物と共に二色性染料を追加で含むことができ、前述した通り、このような場合の液晶層をゲストホスト液晶層(Guest Host liquid crystal layer)と呼ぶことができる。本明細書で染料は、可視光領域、例えば、400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部または全体範囲内の光を集中的に吸収および/または変形させることができる物質を意味し得、用語『二色性染料』とは、前記可視光領域の少なくとも一部または全体範囲で光の異方性吸収が可能な物質を意味し得る。本明細書で『GHLC層(Guest host liquid crystal layer)』は、液晶の配列により二色性染料が共に配列されて、二色性染料の整列方向と前記整列方向の垂直な方向に対してそれぞれ非等方性光吸収特性を示す機能性層を意味し得る。例えば、二色性染料は光の吸収率が偏光方向により変わる物質であって、長軸方向に偏光された光の吸収率が大きいとp型染料と呼称し、短軸方向に偏光された光の吸収率が大きいとn型染料と呼称することができる。一つの例示で、p型染料が使われる場合、染料の長軸方向に振動する偏光は吸収され、染料の短軸方向に振動する偏光は吸収が少ないため透過させることができる。以下、特に言及しない限り二色性染料はp型染料と仮定する。
【0066】
前記二色性染料としては例えば、いわゆるゲストホスト効果によって液晶分子の整列状態により整列され得る特性を有するものと知られている公知の染料を選択して使うことができる。このような二色性染料の例としては、アゾ染料、アントラキノン染料、メチン染料、アゾメチン染料、メロシアニン染料、ナフトキノン染料、テトラジン染料、フェニレン染料、クォテリレン染料、ベンゾチアジアゾール染料、ジケトピロロピロール染料、スクアレン染料またはパイロメテン染料などがあるが、本出願で適用可能な染料は前記に制限されるものではない。
【0067】
前記二色性染料は二色比(dichroic ratio)、すなわち二色性染料の長軸方向に平行な偏光の吸収を前記長軸方向に垂直な方向に平行な偏光の吸収で割った値が5以上、6以上または7以上である染料を使うことができる。前記染料は可視光領域の波長範囲内例えば、約380nm~700nmまたは約400nm~700nmの波長範囲内で少なくとも一部の波長またはいずれか一つの波長で前記二色比を満足することができる。前記二色比の上限は例えば20以下、18以下、16以下または14以下程度であり得る。
【0068】
前記液晶層の二色性染料の含量は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。例えば、液晶層で二色性染料の含量は0.1重量%以上、0.25重量%以上、0.5重量%以上、0.75重量%以上、1重量%以上、1.25重量%以上、1.5重量%以上、2重量%以上、2.5重量%以上または2.7重量%以上であり得る。液晶層の二色性染料の含量の上限は、例えば、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5.0重量%以下、4.0重量%以下、3.5重量%以下、3.0重量%以下、2.75重量%以下、2.5重量%以下、2.25重量%以下、2.0重量%以下、1.75重量%以下または1.5重量%以下であり得る。液晶層の二色性染料の含量が前記範囲を満足する場合、透過度可変特性が優秀な光変調デバイスを提供することができる。一つの例示で、前記範囲内で二色性染料の含量が高いほど透過度可変特性が優秀な光変調デバイスを提供することができる。
【0069】
前記液晶化合物の種類および物性は本出願の目的を考慮して適切に選択され得る。一つの例示で、前記液晶分子はネマティック(nematic)液晶またはスメクチック(smectic)液晶であり得る。ネマティック液晶は棒状の液晶分子が、位置に対する規則性はないが液晶分子の長軸方向に平行するように配列されている液晶を意味し得、スメクチック液晶は棒状の液晶分子が規則的に配列されて層をなした構造を形成し、長軸方向に規則性を有して平行するように配列されている液晶を意味し得る。本出願の一実施例によると、前記液晶分子としてはネマティック液晶を使うことができる。
【0070】
一つの例示で、前記液晶分子は非反応性液晶分子であり得る。非反応性液晶分子は、重合性基を有さない液晶分子を意味し得る。前記で重合性基としてはアクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基またはエポキシ基などが例示され得るがこれに制限されず、重合性基として知られている公知の官能基が含まれ得る。
【0071】
前記液晶分子の屈折率異方性は目的物性、例えば透過度可変特性を考慮して適切に選択され得る。本明細書で用語屈折率異方性は液晶分子の異常屈折率(extraordinary refractive index)と正常屈折率(ordinary refractive index)の差を意味し得る。前記液晶分子の屈折率異方性は、例えば0.01~0.3であり得る。前記屈折率異方性は0.01以上、0.05以上または0.07以上であり得、0.3以下、0.2以下、0.15以下または0.13以下であり得る。液晶分子の屈折率異方性が前記範囲内である場合、透過度可変特性が優秀な光変調デバイスを提供することができる。一つの例示で、前記範囲内で液晶分子の屈折率が低いほど透過度可変特性が優秀な光変調デバイスを提供することができる。
【0072】
前記液晶分子の誘電率異方性は、目的とする液晶セルの駆動方式を考慮して正の誘電率異方性または負の誘電率異方性を有することができる。本明細書で用語誘電率異方性は液晶分子の異常誘電率(εe、extraordinary dielectric anisotropy、長軸方向の誘電率)と正常誘電率(εo、ordinary dielectric anisotropy、短軸方向の誘電率)の差を意味し得る。液晶分子の誘電率異方性は例えば±40以内、±30以内、±10以内、±7以内、±5以内または±3以内の範囲内であり得る。液晶分子の誘電率異方性を前記範囲に調節すれば、光変調素子の駆動効率の側面で有利であり得る。
【0073】
前記液晶層内で前記液晶化合物の液晶分子と二色性染料の合計重量は例えば、約60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上または95重量%以上であり得、他の例示では約100重量%未満、98重量%以下または96重量%以下であり得る。
【0074】
前記液晶層は電圧印加の有無により配向状態を切り替えることができる。前記電圧は、例えば、第1および第2基板に垂直な方向に印加され得る。
【0075】
一つの例示で、前記液晶層は電圧未印加時にツイスト状態で存在することができ、電圧印加時に垂直配向状態で存在することができる。前記ツイスト配向状態でねじれ角度は例えば500度より大きくてもよい。このような液晶セルをHTN(Highly Twisted Nematic)駆動モード液晶セルと呼称することができる。前記ねじれ角度の上限は例えば3,000度以下であり得る。本明細書でねじれ角度は下記の一般式1によって計算され得る。
[一般式1]
ねじれ角度(A)=a+b×360
前記一般式1で、aはツイスト配向状態の液晶層で最も下部に存在する液晶分子の光軸と最も上部に存在する液晶分子の光軸がなす角度であり、bはピッチの個数である。
【0076】
本出願の一実施例によると、前記ねじれ角度は約550度以上、600度以上、650度以上、700度以上、750度以上、800度以上、850度以上、900度以上、950度以上、1,000度以上、1120度以上、1240度以上、1360度以上、1480度以上、1600度以上、1720度以上または1840度以上であり得る。前記ねじれ角度の下限は約2900度以下、2800度以下、2700度以下、2600度以下、2500度以下、2400度以下、2300度以下、2200度以下、2160度以下、2130度以下、2100度以下、2070度以下、2040度以下、2010度以下、1980度以下、1950度以下または1920度以下であり得る。
【0077】
本出願は前記HTN液晶駆動モードを適用して低い透過度を具現するとともに、透過度可変水準が優秀な光変調デバイスを提供することができる。
【0078】
前記ツイスト配向液晶層内で液晶分子は、光軸が仮想の螺旋軸に沿って撚れながら層をなし、配向した螺旋形の構造を有することができる。前記液晶分子の光軸は液晶分子の遅相軸を意味し得、液晶分子の遅相軸は棒状の液晶分子の場合、長軸と平行となり得る。前記螺旋軸は液晶層の厚さ方向と平行するように形成されていてもよい。本明細書で液晶層の厚さ方向は前記液晶層の最下部と最上部を最短距離で連結する仮想の線と平行な方向を意味し得る。一つの例示で前記液晶層の厚さ方向は高分子基板の面と垂直な方向に形成された仮想の線と平行な方向であり得る。
【0079】
ツイスト配向状態で液晶層の厚さdとピッチpの比率(d/p)は2.8を超過することができる。前記比率(d/p)が2.8を超過する場合、前記液晶層は電圧未印加時にツイスト状態で存在でき、このようなツイスト配向状態で液晶層内の液晶分子のねじれ角度は860度以上であり得る。このような液晶セルをHTN(Highly Twisted Nematic)駆動モード液晶セルと呼称することができる。また、前記比率(d/p)が2.8以下である場合、初期透過度の増加が発生して低い透過率を具現しようとする本出願の目的を達成できない問題があるため、前記の範囲が好ましい。
【0080】
液晶層の厚さdとピッチpの比率(d/p)が10を超過する場合、駆動電圧が増加することになるため、前記比率(d/p)の上限は10以下に調節され得る。前記d/pは他の例示で2.9以上、3以上、3.1以上、3.2以上、3.3以上、3.4以上、3.5以上、3.6以上、3.7以上、3.8以上、3.9以上、4以上、4.1以上、4.2以上、4.3以上、4.4以上、4.5以上、4.6以上、4.7以上または4.8以上であるか、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、5.7以下、5.5以下、5.4以下、5.3以下、5.2以下、5.1以下、5.0以下、4.9以下、4.7以下、4.5以下または4以下程度であってもよい。
【0081】
前記液晶層の厚さdはセルギャップ(cell gap)と同じ意味であり得る。本出願で液晶層の厚さdは0.1μm~50μmの範囲内であり得、他の例示で0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上または11.5μm以上であるか、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下または8μm以下であり得る。
【0082】
液晶層のピッチpはWedge cellを利用した計測方法で測定することができ、具体的にはD.PodolskyyなどのSimple method for accurate measurements of the cholesteric pitch using a stripe-wedge Grandjean-Cano cell(Liquid Crystals、Vol.35、No.7、July 2008、789-791)に記載された方式で測定することができる。
【0083】
前述した通り、前記比率(d/p)は、液晶層の厚さと前記液晶層内のキラルドーパント(chiral dopant)の含量調節を通じて達成することができる。
【0084】
従来ボールスペーサを使っていたゲストホスト液晶システムでは、低い透過度の具現のためにHTN液晶駆動モードを適用する場合、液晶欠陥が発生して視認性に問題が発生した。視認性問題を解決するためにキラルドーパントの含量を低くすると、遮断状態での透過度が増加して低い透過度を具現することができなかった。
【0085】
本出願の光変調デバイスは粘着剤層または接着剤層と後述する隔壁型スペーサを共に使った構造を適用することによって、HTN液晶駆動モードで液晶欠陥が発生せず、キラルドーパント含量を増加させることができるため、ピッチを減少させて透過する光の吸収を増大させることができるため、効率的に光変調デバイスの透過および遮断状態を具現することができる。
【0086】
本出願の光変調デバイスは第1基板と第2基板の間隔が隔壁型スペーサによって維持され得る。前記隔壁型スペーサとしてはハニカム(honeycomb)型、四角形の隔壁型スペーサ、三角形の隔壁型スペーサまたはランダム形スペーサが適用され得る。
【0087】
前記でハニカム型、四角形または三角形の隔壁型スペーサは公知となっている通り、基板上に形成された隔壁型スペーサの形態を基板の法線方向から観察した時に、前記隔壁型スペーサによって形成される図形がハニカム型、四角形または三角形である場合を意味する。前記ハニカム型は通常正六角形の組み合わせからなり、四角形の場合、正四角形、長方形または正四角形と長方形の組み合わせがあり得る。前記構造で六角形、四角形または三角形はそれぞれ正六角形、正四角形または正三角形であるか、そうでなくてもよい。
【0088】
また、前記でランダム形スペーサは隔壁がランダムに配置された場合であり、該当隔壁が図形を形成しないか、形成しても定形化された図形ではなくランダムに図形を形成した場合を意味する。
【0089】
前記隔壁型スペーサのピッチPは目的とする付着力やセルギャップの維持効率などを考慮して適切に選択され得る。
【0090】
例えば、前記隔壁型スペーサのピッチPは100μm~1,000μmの範囲であり得る。前記ピッチは他の例示で150μm以上、200μm以上、250μm以上、300μm以上、350μm以上、400μm以上、450μm以上、500μm以上または550μm以上であるか、950μm以下、900μm以下、850μm以下、800μm以下、750μm以下、700μm以下、650μm以下、600μm以下、550μm以下、500μm以下、450μm以下または300μm以下であってもよい。隔壁型スペーサでピッチを求める方式は公知である。例えば、隔壁型スペーサがハニカム形であれば、前記ハニカムをなす六角形で対向する辺の間隔を通じてピッチを求め、四角形または三角形である場合に四角形または三角形の辺の長さをピッチとする。前記ハニカムをなす六角形で対向する辺の間隔や四角形または三角形の辺の長さが一定でない場合には、それらの平均値をピッチと規定することができる。また、隔壁型スペーサがランダム形である場合には、各隔壁間の間隔の平均値(平均間隔)がピッチとして規定され得る。
【0091】
前記隔壁型スペーサの線幅(line width)、例えば、前記ハニカムをなす六角形や四角形の各辺の幅は、例えば約5μm~50μmの範囲内にあり得る。前記線幅は他の例示で約10μm以上、15μm以上、20μm以上または25μm以上や45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下または20μm以下であり得る。
【0092】
前記のような範囲でセルギャップが適切に維持され、基板間の付着力も優秀に維持することができる。
【0093】
一方、前記隔壁型スペーサの高さは上部基板と下部基板の間隔を考慮して調節され得る。本出願で前記隔壁型スペーサの高さは、前記液晶層の厚さ(cell gap)と略一致し、基板の面の法線方向に測定されるスペーサの寸法を意味する。例えば、前記隔壁型スペーサの高さは0.1μm~50μmの範囲内であり得、他の例示で1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上または8μm以上や45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、9μm以下または8μm以下であり得るが、これに制限されるものではない。この時、スペーサの高さが一定でない場合に前記高さは測定される最大高さ、最小高さまたは前記最大および最小高さの平均値であり得る。
【0094】
本出願で前記スペーサは隔壁形態のスペーサを製造するための通常の方式を適用して製造することができる。通常隔壁形態のスペーサは硬化型樹脂組成物を使った方式(例えば、インプリンティング方式など)で製造することができる。したがって、本出願の前記スペーサは硬化型樹脂組成物の硬化物を含むことができる。硬化型樹脂組成物としては特に制限なくスペーサ形成のために適用されている公知の種類を適用することができる。このような樹脂組成物は通常加熱硬化型樹脂組成物または光硬化型樹脂組成物、例えば紫外線硬化型樹脂組成物がある。
【0095】
加熱硬化型樹脂組成物としては例えば、シリコーン樹脂組成物、フラン樹脂組成物、ポリウレタン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、アミノ樹脂組成物、フェノール樹脂組成物、尿素樹脂組成物、ポリエステル樹脂組成物またはメラミン樹脂組成物などを使うことができるが、これに制限されるものではない。
【0096】
紫外線硬化型樹脂組成物としては、代表的にアクリル重合体、例えばポリエステルアクリレート重合体、ポリスチレンアクリレート重合体、エポキシアクリレート重合体、ポリウレタンアクリレート重合体またはポリブタジエンアクリレート重合体、シリコーンアクリレート重合体またはアルキルアクリレート重合体などを含む樹脂組成物を使うことができるが、これに制限されるものではない。他の例示では、シリコーン重合体を使って形成してもよく、スペーサをシリコーン重合体を使って形成する場合、スペーサの凹んでいる領域に残存するシリコーン重合体が垂直配向膜の役割を遂行できるため、後述するように、スペーサが存在する基板に追加の垂直配向膜を使用しなくてもよい。シリコーン重合体としては、ケイ素と酸素の結合(Si-O-Si)を主軸とする公知の重合体を使用することができ、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS、Polydimethylsiloxane)を使うことができるが、これに制限されるものではない。
【0097】
本出願はスペーサの形態、配置および/または配列方式を前記のように制御することによって、セルギャップが適切に維持され、上下のフィルム基板の接着力が優秀でありながらも、液晶の欠陥を最小化して視認性が改善された光変調デバイスを提供することができる。
【0098】
前記効果達成のために前記隔壁型スペーサと液晶層の関係が追加で調節され得る。例えば、前記光変調デバイスで前記隔壁型スペーサのピッチp1の液晶層の厚さdに対する比率(p1/d)が10~100の範囲内にあり得る。前記比率は他の例示で15以上、20以上、25以上、30以上、35以上、40以上、45以上、50以上または55以上であるか、95以下、90以下、85以下、80以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下または40以下程度であってもよい。
【0099】
また、前記光変調デバイスで前記隔壁型スペーサのピッチp1の液晶層のピッチ(ツイスト配向状態でのピッチ、p)に対する比率(p1/p)が50~500の範囲内にあり得る。前記比率は他の例示で60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上、160以上、170以上、180以上、190以上、200以上または210以上であるか、450以下、400以下、350以下、300以下、250以下、200以下または190以下程度であってもよい。
【0100】
このような範囲で目的とする光学デバイスの性能をより効果的に確保することができる。
【0101】
本出願の光変調デバイスは本出願の効果を妨害しない限り、前記第1基板および第2基板の一面にそれぞれ電極層(電極500)を追加で含むことができる。一つの例示で、第1基板の第1表面と粘着剤層または接着剤層の間および/または第2基板の第1表面と配向膜の間にそれぞれ電極層が形成されていてもよい。
【0102】
前記電極層は液晶分子の整列状態を切り替えることができるように液晶層に適切な電界を印加することができる。前記電界の方向は垂直または水平方向、例えば液晶層の厚さ方向または面方向であり得る。
【0103】
前記電極層は例えば、透明伝導性層であり得る。前記透明伝導性層は例えば、伝導性高分子、伝導性金属、伝導性ナノワイヤまたはITO(Indium Tin Oxide)等の金属酸化物などを蒸着して形成され得る。その他にも透明伝導性層を形成できる多様な素材および形成方法が公知になっており、これを制限なく適用することができる。
【0104】
本出願の光変調デバイスは必要に応じて追加の他の構成を含んでもよい。すなわち、駆動モードによっては前述した構造の光変調デバイス単独でも前述した透過モード、遮断モードの具現およびそれらの間のスイッチングが可能であるが、このようなモードの具現またはスイッチングを容易にするために追加的な構成を含むことも可能である。
【0105】
例えば、前記デバイスは前記第1および/または第2基板の第2表面に偏光層を追加で含むことができる。用語偏光層は自然光または非偏光を偏光に変化させる素子を意味し得る。一つの例示で、前記偏光層は線偏光層であり得る。線偏光層は選択的に透過する光がいずれか一方向に振動する線偏光であり、選択的に吸収または反射する光が前記線偏光の振動方向と直交する方向に振動する線偏光である場合を意味する。すなわち、前記線偏光層は面方向に互いに直交する透過軸および吸収軸または反射軸を有することができる。
【0106】
前記偏光層は吸収型偏光層または反射型偏光層であり得る。吸収型偏光層としては例えば、PVA(poly(vinyl alcohol))延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨードを染着した偏光層または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向により配列された二色性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光層を使うことができるが、これに制限されるものではない。反射型偏光層としては例えば、いわゆるDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)として公知になっている反射型偏光層やLLC(Lyotropic liquid crystal)のような液晶化合物をコーティングして形成される反射型偏光層を使うことができるが、これに制限されるものではない。
【0107】
ただし、一例示で前記光変調デバイスは前記偏光層を含まなくてもよい。
【0108】
前述した光変調デバイスは、電圧未印加時にツイスト配向状態で存在して最小透過度を示し、電圧印加時に垂直配向状態で存在して最大透過度を示すことができる。
【0109】
最大透過度を示す透過モード状態での光変調デバイスの透過率は、少なくとも20%以上、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、31%以上、32%以上、33%以上、34%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上または80%以上程度であり得る。最小透過度を示す遮断モード状態での光変調デバイスの透過率は、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下または0.3%以下であり得る。
【0110】
透過モードで透過率は高いほど有利であり、遮断モードでは透過率が低いほど有利であるため、前記透過モード状態での透過率上限と遮断モード状態の透過率下限は特に制限されない。一例示で前記透過モード状態への透過率の上限は約100%であり、遮断モード状態での透過率の下限は約0%であり得る。
【0111】
一つの例示で本出願の光変調デバイスは偏光層を含んでいない状態で前記透過率を具現することができる。
【0112】
一例示で、前記光変調デバイスで透過モード状態での透過率と遮断モード状態での透過率の差(透過モード-遮断モード)は、25%以上、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、30%以上、35%以上または40%以上であり得る。また、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下、40%以下、39%以下、38%以下、37%以下、36%以下、35%以下、34%以下、33%以下、32%以下または31%以下であってもよい。
【0113】
本出願は前記のように遮断モード状態で低い透過度を具現しながらも、透過度可変水準(透過モード状態での透過率と遮断モード状態での透過率の差)が優秀な光変調デバイスを提供することができる。
【0114】
前記言及された透過率は、後述する実施例記載方式で測定した透過率であり得る。
【0115】
前記言及された透過率および反射率は、それぞれ可視光領域、例えば、約400~700nmまたは約380~780nmの範囲内のいずれか一つの波長に対する透過率または反射率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率または反射率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率または反射率の中で最大または最小透過率または反射率であるか、前記可視光領域内の透過率の平均値または反射率の平均値であり得る。
【0116】
前記のような光変調デバイスは多様な用途に適用され得る。光変調デバイスが適用され得る用途には、建物用ガラスや車両用サンルーフなどに使われるウインドウなどがあるが、これに制限されない。例えば、ガラスまたはサンルーフなどのような建物、容器または車両などを含む密閉された空間の開口部に適用される用途や、アイウェア(eyewear)等や建具用、OLED(Organic Light Emitting Device)の遮光板などが例示され得る。前記でアイウェアの範囲には一般的なメガネ、サングラス、スポーツ用ゴーグルまたはヘルメットまたは仮想現実または増強現実体験用機器などのようなウェアラブル機器など、観察者がレンズを通じて外部を観察できるように形成されたすべてのアイウェアが含まれ得る。
【0117】
本出願の光変調デバイスが適用され得る代表的な用途には車両用サンルーフがあり得る。一つの例示で、前記光変調デバイスはそれ自体として車両用サンルーフであり得る。例えば、少なくとも一つ以上の開口部が形成されている車体を含む自動車において前記開口部に装着された前記光変調デバイスまたは車両用サンルーフを装着して使われ得る。
【0118】
サンルーフは車両の天井に存在する固定されたまたは作動(ベンティングまたはスライディング)する開口部(opening)であり、光または新鮮な空気が車両の内部に流入するようにする機能をすることができる装置を通称する意味であり得る。本出願でサンルーフの作動方式は特に制限されず、例えば手動で作動するかまたはモータで駆動することができ、サンルーフの形状、大きさまたはスタイルは目的とする用途により適切に選択され得る。例えばサンルーフは作動方式によりポップアップタイプサンルーフ、スポイラー(tile & slide)タイプサンルーフ、インビルトタイプサンルーフ、折曲げタイプサンルーフ、トップ-マウントタイプサンルーフ、パノラミックループシステムタイプサンルーフ、除去可能なルーフパネル(t-topsまたはtarga roofts)タイプサンルーフまたはソーラータイプサンルーフなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0119】
本出願の例示的なサンルーフは本出願の前記光変調デバイスを含むことができ、この場合、光変調デバイスに対する具体的な事項は前記光変調デバイスの項目で記述した内容が同一に適用され得る。
【発明の効果】
【0120】
本出願では遮断モードで低い透過率を具現するとともに、透過度可変範囲が広く、液晶欠陥や視認性低下などの問題を誘発しない光変調デバイスおよびその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【
図1】例示的な光変調デバイスの構造の模式図である。
【
図2】例示的な光変調デバイスの構造の模式図である。
【
図3】比較例1の光変調デバイスの液晶欠陥を確認するための光学写真である。
【
図4】実施例1の光変調デバイスの液晶欠陥を確認するための光学写真である。
【
図5】実施例2の光変調デバイスの液晶欠陥を確認するための光学写真である。
【
図6】液晶セルの厚さ(cell gap)を評価する内容に関連した図面である。
【
図7】液晶セルの厚さ(cell gap)を評価する内容に関連した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0122】
以下、実施例および比較例を通じて本出願をより具体的に説明するが、本出願の範囲は下記の実施例に制限されるものではない。
【0123】
1.液晶セルの厚さ(cell gap)の評価
液晶セルの厚さ、すなわちセルギャップ(cell gap)はスペクトロメータを使って下記の方式で測定した。
図6に示された通り、セルギャップ(cell gap)dを有する液晶セルの一面で光(I
I)を照射し、他の面で透過した光(I
T)を計測する。前記光の照射時には、照射角度を透過度可変層の仮想表面の法線方向と平行となるようにする。このような方式で波長別透過率を確認してみると、補強干渉などによって
図7に示されたような透過率グラフが得られ得る。
図7でX軸は波長(wavelength(nm))であり、Y軸は透過率(transmittance(%))である。
図7のように得られたグラフは、透過度可変層の厚さであるセルギャップ(cell gap)dと下記の数式Eの関係を有することになるが、下記の数式Eでκは
図7で波長λ
1と波長λ
2の間に存在するピーク(peak)の数である。すなわち、
図7のように求められたグラフから、前記κである波長λ
1と波長λ
2の間のピークの数を求め、また、前記波長λ
1およびλ
2を数式Eに代入してセルギャップdを求めることができる。
[数式E]
【数1】
【0124】
実施例1
第1表面にITO(Indium Tin Oxide)層が約30nm程度の厚さで蒸着された厚さ125μm程度のPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(第1基板)の前記ITO層上にシリコーン粘着剤層を形成した。粘着剤層はいわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)として公知になっているシリコーン粘着剤組成物(Shinetsu社、KR3700)を前記IOT層上にバーコーティングし、約150℃程度で5分の間乾燥させて、約10μm程度の厚さに形成した。
【0125】
第1表面にITO(Indium Tin Oxide)層が約30nm程度の厚さで蒸着された厚さ125μm程度のPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(第2基板)の前記ITO層上にハニカム形隔壁型スペーサとして、ハニカムを構成する正六角形(閉図形)のピッチが約450μm程度であり、高さ(cell gap)が約12μm程度であり、線幅が約30μm程度である隔壁型スペーサを形成した。したがって、前記隔壁型スペーサによって形成される閉図形(正六角形)の面積は略2.14mm2程度であった。前記隔壁型スペーサは紫外線硬化型アクリル樹脂組成物を使って通常の光リソグラフィ方式で形成した。前記スペーサ上に水平配向膜(Nissan社、SE-7492K)を約300nm程度の厚さで形成し、前記水平配向膜を一方向にラビング処理した。
【0126】
前記第2基板の水平配向膜の表面に液晶組成物をコーティングし、前記第1基板の粘着剤層を前記液晶組成物のコーティングされた面と対向するようにして合紙した。
【0127】
前記で液晶組成物としては液晶化合物(JNC社、SHN-5011XX)、キラルドーパント(HCCH社、S811)および二色性染料(black dye)を含む組成物を使った。前記キラルドーパントは液晶セル内で3.7重量%が存在するように適用したし、二色性染料は液晶セル内で3重量%が存在するように適用した。
【0128】
前記のように形成された液晶セルのピッチpは約2.5μm程度であり、セルギャップd(約12μmぐらい)とピッチpの比率(d/p)は約4.8程度であった。
【0129】
前記で液晶セルのピッチはD.Podolskyyなどの文献Simple method for accurate measurements of the cholesteric pitch using a stripe-wedge Grandjean-Cano cell(Liquid Crystals、Vol.35、No.7、July 2008、789-791)に記載された方式によりWedge cellを利用した計測方法で測定した。
【0130】
前記液晶セルは電圧未印加時のねじれ角度が1720度であるHTNモード液晶セルである。
【0131】
実施例2
スペーサとして正四角形の形態の隔壁型スペーサを適用したことを除いては実施例1と同一に液晶セルを製造した。前記正四角形の形態の隔壁型スペーサのピッチは約450μmであり、高さは約10μmであり、線幅は約30μm程度であった。
【0132】
また、形成された液晶セルのピッチpは約2.5μm程度であり、セルギャップd(約10μm)とピッチpの比率(d/p)は約4.0程度であった。
【0133】
実施例2の液晶セルも電圧未印加時のねじれ角度が1720度であるHTNモード液晶セルである。
【0134】
実施例3
下記の段階を遂行したことを除いては実施例1と同一に液晶セルを製造した。第2基板のITO(Indium Tin Oxide)層上にスペーサとして正四角形の形態の隔壁型スペーサを形成した。前記正四角形の形態の隔壁型スペーサのピッチは約350μmであり、高さは約6.3μmであり、線幅は約30μm程度であった。前記第2基板の前記隔壁型スペーサ上に配向膜を形成しないことを除いてば実施例1と同じ方式で液晶セルを製造した。
【0135】
前記液晶セルのピッチpは約1.6μm程度であり、セルギャップdとピッチpの比率(d/p)は約4.0(=約3.94)程度であった。実施例3の液晶セルも電圧未印加時のねじれ角度が1720度であるHTNモード液晶セルである。
【0136】
比較例1
配向膜形成物質として、ラビング配向膜形成物質であるポリイミド系列の垂直配向膜用物質(Nissan社、SE-5661)を使った。前記配向膜形成物質を溶媒内に約3重量%の濃度で溶解させて配向膜形成材を製造した。溶媒としては、PGME(Propylene glycol methyl ether)およびGBL(gamma-Butyrolactone)が7:3の重量比率(PGME:GBL)で混合された混合溶媒を使った。前記配向膜形成物質と溶媒の混合物内に直径が約12μm程度であるボールスペーサを全体配向膜形成材内に濃度が約1重量%程度となるように配合して配向膜形成材を製造した。
【0137】
一面にITO(Indium Tin Oxide)電極層が形成されているPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム上に前記コーティング材をバーコーターで適正厚さでコーティングした後に約130℃の温度で約10分の間熱処理して第1基板を形成した。
【0138】
第2基板としては、前記のように一面にITO(Indium Tin Oxide)電極層および公知のポリイミド水平配向膜(Nissan社、SE-7492K)が順次形成されており、スペーサは存在しないPC(polycarbonate)フィルムを使った。
【0139】
前記第2基板の水平配向膜の表面に液晶組成物をコーティングし、前記第1基板の垂直配向膜層を前記液晶組成物のコーティングされた面と対向するようにして合紙して液晶セルを製造した。液晶組成物としては液晶化合物(JNC、SHN-5011XX)、キラルドーパント(HCCH社、S811)および二色性染料(black dye)を含む組成物を使った。前記キラルドーパントは液晶セル内で約2.3重量%が存在するように含み、二色性染料は液晶セル内で約3重量%が存在するように含んだ。
【0140】
前記液晶セルの厚さdは約10μm、ピッチpは約4μm程度であり、セルギャップdとピッチpの比率(d/p)は約2.5程度であった。前記液晶セルは電圧未印加時のねじれ角度が1000度である液晶セルである。
【0141】
比較例2
セルギャップdとピッチpの比率(d/p)が約2.5程度となるように液晶セルの厚さ(d、セルギャップ)を調整したことを除いては実施例1と同一に液晶セルを製造した。
【0142】
比較例3
セルギャップdとピッチpの比率(d/p)が約12程度となるように液晶セルの厚さ(d、セルギャップ)を調整したことを除いては実施例1と同一に液晶セルを製造した。
【0143】
実験例1.
実施例と比較例で製造した液晶セルの透過度可変率を評価した。
【0144】
透過度はヘイズメーター(NDH5000SP、セコス社)を利用して、ASTM D1003規格に沿って測定した。積分球内の測定対象に380nm~780nm波長の光を入射させると、入射した光は測定対象によって拡散光(DT、拡散して出光した光の和)と直進光(PT、拡散光を排除した正面方向の出光)に分離される。前記拡散光と直進光を積分球内で受光素子に集光させてそれぞれ測定することができる。すなわち、前記過程によって全体透過光(TT)は前記拡散光(DT)と直進光(PT)の総合(DT+PT)に規定され、全体透過光は全体透過率を意味する。
【0145】
下記の表1に比較例と実施例の全体透過率を示した。遮断モードは液晶セルに電圧が印加されていない状態(0V)であり、透過モードは液晶セルに60Vの電圧が印加された状態である。
【0146】
【0147】
表1の結果から、本出願による液晶セルは遮断モード状態でさらに低い透過率を示し、かつ透過モード時に遮断モードと対比して高い透過率を示すことを確認することができる.反面、比較例1および2の液晶セルは遮断モードでの透過率が高かったし、それにより透過モード時に遮断モードと対比したときの透過率の比率が高くなかった。
【0148】
また、比較例3は、遮断モードでは低い透過率を示したものの、透過モード時に透過率が適正に確保されなかった。
【0149】
一方、
図3は、比較例1の液晶セルに対する光学写真であり、
図4および
図5はそれぞれ実施例1および2の液晶セルに対する光学写真である。図面から隔壁型スペーサを適用しない比較例1の場合、本出願の液晶セルのモードでoily streak lineのような光学的欠陥が発生して視認性に問題が発生した。
【符号の説明】
【0150】
101:第1基板
103:粘着剤層または接着剤層
201:第2基板
203:液晶配向膜
300:液晶層
400:隔壁型スペーサ
500:電極