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特許7508770積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物およびその製造方法、並びに、導電性ペースト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物およびその製造方法、並びに、導電性ペースト
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240625BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240625BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01B1/22 A
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 311D
H01G4/30 201D
H01B13/00 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019199060
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072223
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】納谷 匡邦
(72)【発明者】
【氏名】科野 孝典
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087434(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150438(WO,A1)
【文献】特開2010-153486(JP,A)
【文献】特開2007-220551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
H01G 4/30
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、セラミック粉末とを備え、前記導電性粉末の、走査型電子顕微鏡の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下であり、該導電性粉末の前記平均粒子径に対する前記セラミック粉末の走査型電子顕微鏡の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径における、個数基準の粒度分布での平均粒子径の比が0.1以上0.3未満であり、かつ、該セラミック粉末の前記平均粒子径は、0.03μm以上0.05μm以下であり、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下であ
前記導電性粉末が、Ni、Pd、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末であり、および、
前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末からなり、かつ、前記ペロブスカイト型酸化物がチタン酸バリウムである、
積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記導電性粉末の前記平均粒子径に対する前記セラミック粉末の前記平均粒子径の比は、0.15以上0.25以下である、請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記導電性粉末が、Ni粉末である、請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
導電性ペースト組成物とバインダーとを備える導電性ペーストであって、
前記導電性ペースト組成物が請求項1~のいずれかに記載の導電性ペースト組成物からなり、
該導電性ペースト組成物の含有量が、該導電性ペーストの総質量に対して、40質量%以上60質量%以下である、
積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト。
【請求項5】
導電性粉末を準備する工程、
セラミック粉末を準備する工程、
前記セラミック粉末を分散化処理する工程、および、
前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程と、
を備え、
前記導電性粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.15μm以上0.25μm以下である導電性粉末を選択し、
前記セラミック粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が、該導電性粉末の前記平均粒子径に対して、その平均粒子径の比が0.1以上0.3未満であり、かつ、該セラミック粉末の前記平均粒子径が、0.03μm以上0.05μm以下であるセラミック粉末を選択し、
前記導電性粉末が、Ni、Pd、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末であり、
前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末からなり、かつ、前記ペロブスカイト型酸化物がチタン酸バリウムであり、および、
前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程において、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下となるようにする、
導電性ペースト組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極を形成するために用いられる導電性ペースト組成物およびその製造方法、並びに該組成物を用いた導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ(MLCC)は、酸化チタン(TiO)やチタン酸バリウム(BaTiO)などからなる誘電体層と電極層とを、多数積層したチップタイプのセラミックコンデンサである。セラミックが持つ優れた高周波特性などのメリットを活かし、かつ、小型で大容量を実現できるため、積層セラミックコンデンサは、電子回路の広い範囲で使用されている。特に、大容量の積層セラミックコンデンサは、バイパス、デカップリング、平滑、バックアップなどの用途まで広い範囲に適用されている。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、一般的に次のように製造される。まず、セラミック誘電体層を形成するために、セラミック粉末からなる誘電体粉末とポリビニルブチラールなどの有機バインダーからなる誘電体グリーンシート上に、ニッケル粉末など金属粉末からなる導電性粉末、樹脂バインダーおよび溶剤を含むビヒクルに分散させた導電性ペーストを、所定のパターンで印刷し、乾燥することにより溶剤を除去して、乾燥膜を形成する。次に、導電性ペーストが印刷された誘電体グリーンシートを多層に積み重ねた状態で加熱圧着して、誘電体層と内部電極層とを一体化した後に、切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて、500℃以下の温度で脱バインダーを行う。その後、内部電極が酸化しないように還元雰囲気中にて、1300℃程度の温度で積層体の加熱焼成を行う。さらに、得られた焼成チップに外部電となる金属ペーストを塗布し、焼成した後に、外部電極上にニッケルおよびスズの2層めっきなどを施して、積層セラミックコンデンサを完成させる。
【0004】
近年、積層セラミックコンデンサには、さらなる小型化および大容量化が求められており、たとえば、ニッケルなどを用いた内部電極については連続性の優れた電極膜の薄層化が、セラミック誘電体材料を用いた誘電体層については高誘電率化および薄層化が、それぞれ検討されている。誘電体層については、すでに2.0μm以下の厚さが実現されている。電極膜については、その厚さを1.0μm以下とすることが望まれている。
【0005】
このような内部電極を構成する電極膜の薄層化を実現するために、近年、導電性ペーストに用いられる導電性粉末として、小粒径のニッケル粉末などの金属粉末が用いられている。
【0006】
金属粉末は、グリーンシートを構成するセラミック粉末に比べて融点が低く、焼成工程において焼結し、収縮しながら緻密な電極膜に変化する。これに対して、セラミック粉末は、金属粉末より融点が高く、金属粉末が焼結した後に焼結し収縮する。このため、電極膜は誘電体層から剥離しやすく、これに起因して電極膜の不連続化が生じやすい。
【0007】
この焼結温度の不一致を解消するために、共材と呼ばれる、グリーンシートに使用されている誘電体粉末と同じ誘電体粉末を内部電極ペーストに添加する方法が用いられている。
【0008】
これにより、導電性ペースト中の金属粉末同士の接触が阻害され、金属粉末の焼結を遅らせることが可能となる。
【0009】
たとえば、導電性粉末としてニッケル粉末が用いられる場合、積層セラミックコンデンサの小型化に伴って、従来の平均粒子径が0.4μmのニッケル粉末に代替して、平均粒子径が0.2μmのニッケル粉末が使用されている。このニッケル粉末の小粒径化に伴い、共材による焼結遅延の制御が困難となる事象が増加しつつある。
【0010】
すなわち、粒子径が小さいニッケル粉末は、焼結開始が早くなる傾向にある。このため、焼成段階において、ニッケルの焼結粒子が、これら焼結粒子同士の連結を失って、焼成後に、それぞれが島状に孤立する過焼結状態が生じやすい。このような過焼結状態が生じると、内部電極層の膜切れが多くなって、内部電極としての面積が減少して、静電容量が低くなる状態、あるいは、最悪の場合には、静電容量がまったく得られない状態となって、製品としての歩留まりが著しく悪化するという問題が生ずる。
【0011】
また、薄層化に伴って生じやすくなる、積層セラミックコンデンサのショート不良を抑制する観点から、内部電極層にはその表面粗さを小さくすることが求められており、導電性粉末の小粒径化に伴って、共材である誘電体粉末についても小粒径化する傾向にある。
【0012】
共材である誘電体粉末が小粒径化すると、共材そのものの焼結開始温度が低下してしまう。このように、小粒径化した共材がより低い焼結温度で焼結してしまうため、共材によるニッケル粉末の焼結を抑制する効果が失われてしまう。これにより、導電性粉末同士の接触の阻害効果がより低い温度で失われるため、導電性粉末の焼結が低い温度で促進されて、内部電極層の連続性が失われてしまう。
【0013】
このため、小粒径のニッケル粉末などの金属粉末を導電性粉末として用いた場合でも、導電性粉末同士の焼結を阻害および制御して、内部電極層の不連続化を抑制する方法が求められている。
【0014】
これに対して、たとえば、特開昭57-030308号公報には、卑金属粉末の表面に、共材となる誘電体磁器粉末を予め吸着させておき、これを有機質ビヒクル中に分散させることで、焼成時における卑金属粉末の異状粒成長を抑制して、空孔のない緻密な安定した電極が形成されるとされている。
【0015】
また、特開2016-033962号公報には、内部電極の連続性を確保し、静電容量のばらつきを抑制し、誘電損失を小さくする観点から、セラミック粉末と導電性粉末とバインダー樹脂を含む導電性ペーストであって、比表面積をBET法に基づいて算出した平均粒子径が0.1μm~0.4μmである導電性粉末と、比表面積をBET法に基づいて算出した平均粒子径が0.01μm~0.1μmであるセラミック粉末を有し、表面に導電性ペーストを印刷したグリーンシート用セラミック粉末とバインダー樹脂を含むグリーンシートを積層して形成した積層体を焼成する際に、焼成条件が脱バインダー焼成過程後の焼成最高温度までの昇温勾配とニッケル粉末100重量部に対するセラミック粉末の添加量が、特定の関係を有する、導電性ペーストが提案されている。具体的には、前記平均粒子径が0.2μmであるニッケル粉末を100重量部と、前記平均粒子径が0.06μmのチタン酸バリウム粉末を前記昇温勾配との関係に応じて、5重量部~25重量部の範囲にある任意の量とを含む導電性ペーストが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開昭57-030308号公報
【文献】特開2016-033962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特開昭57-030308号公報に記載の方法については、小粒径化したニッケル粉末などの金属粉末に適用することが困難である。
【0018】
特開2016-033962号公報では、導電性粉末とセラミック粉末のそれぞれについて適用可能な平均粒子径の範囲についての開示はあるが、導電性粉末の平均粒子径とセラミック粉末の平均粒子径との関係についての具体的な提案はなされていない。
【0019】
また、特開2016-033962号公報に記載の導電性ペーストにおいては、比表面積をBET法に基づいて、導電性粉末とセラミック粉末の平均粒子径を算出している。ここで、導電性ペースト組成物を作製する際の導電性粉末とセラミック粉末の混合および分散工程においては、最初にセラミック粉末の分散化処理を行い、その後で、導電性粉末と分散化処理後のセラミック粉末についての混合および分散化処理を行う。これは、セラミック粉末の粒径が小さいため、最初から導電性粉末との混合とともに、混合および分散化処理を行うと、セラミック粉末の分散不足となって、セラミック粉末の凝集体が内部電極層に存在して、積層セラミックコンデンサのショート不良などが生ずる可能性があるためである。
【0020】
分散化処理においては、ビーズミルなどを用いた機械的解砕が行われるが、その際に、セラミック粉末の分散のみならず、セラミック粉末に欠けや割れが生ずる。
【0021】
この場合、セラミック粉末が所望の比表面積から外れる、すなわち、所望の平均粒子径から外れることとなり、所定の平均粒子径の導電性粉末に対して適切な平均粒子径のセラミック粉末を選択したことにならず、所望の特性を有する積層セラミックコンデンサが得られない可能性がある。
【0022】
本発明は、積層セラミックコンデンサの内部電極層の用途において、導電性ペーストの過焼結を抑制して、焼結時の電極途切れを抑制することができ、焼結後の内部電極層の被覆率を高くすることを可能とする、積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物および導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者らは、小粒径のニッケル粉末を用いた際の内部電極膜の連続性を向上させる手段について、鋭意、検討した結果、ニッケル粉末の粒子径と共材の粒子径との関係に関して、次のような知見を得た。
【0024】
すなわち、(1)導電性粉末および共材の平均粒子径として、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径を用いる、(2)導電性粉末の平均粒子径と共材の平均粒子径との比を所定範囲に規制する、および、(3)導電性粉末と共材の含有比率を所定範囲に調整することにより、導電性粉末および共材を小粒径化させた場合でも、導電性粉末の過焼結を抑制することができ、もって、焼結時の電極途切れを抑制して、焼結後の被覆率を高くすることが可能となるとの知見を得られた。本発明者らは、このような知見に基づいて、本発明を完成したものである。
【0025】
本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物は、導電性粉末と、セラミック粉末とを備え、前記導電性粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.12μm以上0.3μm以下であり、該導電性粉末の前記平均粒子径に対する前記セラミック粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径の比が0.1以上0.3未満であり、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下であることを特徴とする。
【0026】
前記導電性粉末の前記平均粒子径に対する前記セラミック粉末の前記平均粒子径の比は、0.15以上0.25以下であることが好ましい。
【0027】
前記導電性粉末の前記平均粒子径は、0.15μm以上0.25μm以下であることが好ましい。
【0028】
前記セラミック粉末の前記平均粒子径は、0.02μm以上0.07μm以下であることが好ましく、0.03μm以上0.05μm以下であることがより好ましい。
【0029】
前記導電性粉末が、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末であることが好ましい。
【0030】
前記セラミック粉末が、ペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末からなることが好ましい。
【0031】
本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペーストは、導電性ペースト組成物とバインダーとを備え、前記導電性ペースト組成物が本発明の導電性ペースト組成物からなり、該導電性ペースト組成物の含有量が、該導電性ペーストの総質量に対して、40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする。
【0032】
本発明の導電性ペースト組成物の製造方法は、
導電性粉末を準備する工程、
セラミック粉末を準備する工程、
前記セラミック粉末を分散化処理する工程、および、
前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程と、
を備え、
前記導電性粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.12μm以上0.3μm以下である導電性粉末を選択し、
前記セラミック粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が、該導電性粉末の前記平均粒子径に対して、その平均粒子径の比が0.1以上0.3未満となるセラミック粉末を選択し、
前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程において、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下となるようにする、
ことを特徴とする。
【0033】
前記セラミック粉末の前記平均粒子径を、前記導電性粉末の前記平均粒子径に対して0.15以上0.25以下とすることが好ましい。
【0034】
前記導電性粉末の前記平均粒子径を、0.15μm以上0.25μm以下とすることが好ましい。
【0035】
前記セラミック粉末の前記平均粒子径を、0.02μm以上0.07μm以下とすることが好ましく、0.03μm以上0.05μm以下とすることがより好ましい。
【0036】
前記導電性粉末として、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を用いることが好ましい。
【0037】
前記セラミック粉末として、ペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明の導電性ペーストを用いることにより、積層セラミックコンデンサの製造時における、導電性粉末の過焼結が抑制され、焼結時の電極途切れが防止されるため、焼結後の内部電極層による被覆率を高くすることができる。したがって、従来の導電性ペーストを用いた場合との比較において、内部電極層の膜厚をより薄くすることが可能となることから、積層セラミックコンデンサのさらなる小型化および大容量化を実現でき、その製品寿命および信頼性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例3で得られた焼成膜の走査型電子顕微鏡(SEM)による撮像を示す。
図2】比較例3で得られた焼成膜の走査型電子顕微鏡(SEM)による撮像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1.積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物およびその製造方法
本発明の第1態様は、積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物に関する。
【0041】
本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物は、導電性粉末と、セラミック粉末とを備え、前記導電性粉末は、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.12μm以上0.3μm以下であり、該導電性粉末の前記平均粒子径に対する前記セラミック粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径の比が0.1以上0.3未満であり、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下であることを特徴とする。
【0042】
[導電性粉末]
本発明の導電性ペースト組成物における導電性粉末としては、Ni(ニッケル)、Pd(パラジウム)、Pt(プラチナ)、Au(金)、Ag(銀)、Cu(銅)、およびこれらを主成分とする合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を用いることができる。
【0043】
特に、積層セラミックコンデンサの内部電極用の用途においては、誘電体グリーンシートと同時に焼成されるため、Ni粉末、Niを主成分とする合金粉末、Pd粉末、Pdを主成分とする合金粉末が好適に用いられる。特に、製造コストの観点から、Ni粉末、Niを主成分とする合金粉末を用いることがより好ましい。
【0044】
導電性粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径は、0.12μm以上0.3μm以下である。
【0045】
具体的には、導電性粉末の、面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)により、導電性粒子の写真を撮影し、このSEM写真における1000個以上の導電性粉末について、画像処理装置により、それぞれの導電性粒子の大きさ(面積)を測定し、当該測定値から、それぞれの導電性粒子の面積円相当径(Heywood径)を算出し、すべての導電性粒子の面積円相当径を個数基準の粒度分布に換算し、得られた結果から求められる。
【0046】
導電性粉末の前記平均粒子径を、0.3μm以下とするのは、導電性粉末、特にNi粉末は、その前記平均粒子径が0.3μmを超えると、凝集により粒子径が1μmを超える粗大粒子が含まれる場合があり、このような粗大粒子は、導電性ペーストから得られる乾燥膜や焼成後の金属膜の平滑性を阻害してしまうため、内部電極層の薄層化が困難になるためである。
【0047】
導電性粉末の前記平均粒子径が0.12μm未満となると、この組成物を用いて得られる導電性ペーストの焼成時に、導電性粉末の焼結を制御する効果が得られにくくなるため、得られる内部電極層の連続性が低くなってしまう場合がある。
【0048】
このような観点からは、導電性粉末の前記平均粒子径は、0.15μm以上0.25μm以下であることがより好ましい。
【0049】
なお、本発明において、Ni粉末を含む、導電性粉末については、上記の特性を有する限り、その製造方法は限定されることはない。
【0050】
[導電性粉末の平均粒子径に対するセラミック粉末の平均粒子径の比]
セラミック粉末は、Ni粉末などの導電性粉末の焼結挙動をコントロールするために用いられる。すなわち、導電性粉末のみで電極膜を形成させた場合には、焼結が早く進行して、電極途切れと呼ばれる現象が起きるため、セラミック粉末を添加することにより、全体としての焼結を遅らせることを可能にしている。ただし、セラミック粉末は電極として機能することがないため、できるだけ少量のセラミック粉末を用いて、導電性粉末の焼結をコントロールすることが望ましい。
【0051】
本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペースト組成物において、導電性粉末の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径の比は、0.1以上0.3未満となるように規制される。
【0052】
セラミック粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径は、導電性粉末と同様に求められる。
【0053】
セラミック粉末について、その前記平均粒子径を、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布から求めることにより、セラミック粉末の分散化処理の工程におけるセラミック粉末の欠けや割れに起因する比表面積のずれに基づく、所望の平均粒子径と実際の平均粒子径とのズレを抑制することが可能となる。このため、導電性粒子の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の前記平均粒子径の比を適切に制御することが可能となり、もって、本発明における所望の特性を有する積層セラミックコンデンサの構築を可能とする、所望の導電性ペースト組成物および積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペーストを得ることが可能となる。
【0054】
導電性粒子同士を接触させないためには、導電性粒子間にセラミック粉末が多く存在する状態の方がその効果があると考えられるため、同じ量であれば、セラミック粉末の平均粒子径が小さく、セラミック粉末の数が多いほどよいと考えられる。しかしながら、導電性粉末の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の前記平均粒子径の比が、0.1未満では、セラミック粉末の粒子径が小さいほど焼結が低温度で起こることから、導電性粒子間に存在していたセラミック粉末が過焼結してその粒子径が巨大化して導電性粒子間に存在することができなくなり、導電性粒子の焼結挙動コントロール性を失う。このように、セラミック粉末による導電性粉末同士の焼結を遅延させる効果が小さくなり、導電性粉末の焼結を適切に制御できず、内部電極層と誘電体層(グリーンシート)の焼結収縮挙動がミスマッチとなって、内部電極層が連続性の低い電極膜により構成されてしまう。
【0055】
一方、セラミック粉末の焼結を遅くさせたい場合には、できるだけ粒子径の大きなセラミック粉末を用いることが効果的である。しかしながら、導電性粉末の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の前記平均粒子径の比が、0.3以上となると、同じ量であれば粒子数が減少することになるため、粒子数を増加させるためには、セラミック粉末の量を増やす必要が生ずる。このため、共材としてのセラミック粉末の量が多くなりすぎて、焼成後の電極膜の膜厚が薄くなりやすく、内部電極膜の連続性を得ることが困難となる。
【0056】
導電性粉末の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の前記平均粒子径の比は、0.12以上0.3未満の範囲にあることが好ましく、0.15以上0.25以下の範囲にあることがより好ましい。
【0057】
[セラミック粉末]
本発明の導電性ペースト組成物におけるセラミック粉末としては、ペロブスカイト型酸化物を主成分とするセラミック粉末からなることが好ましい。ペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸バリウム(BaTiO)などが挙げられる。したがって、チタン酸バリウムからなるセラミック粉末、および、チタン酸バリウムに種々の添加物を添加したセラミック粉末が好適用いられる。
【0058】
具体的には、積層セラミックコンデンサの誘電体層を形成するグリーンシートの主成分として使用されるセラミック粉末と同じ組成あるいは類似の組成とすることが好ましく、それに応じて、種々のセラミック粉末を適用すること可能である。グリーンシートのセラミック粉末と導電性ペースト組成物におけるセラミック粉末は、いずれもチタン酸バリウムを主成分とするセラミック粉末であることが好ましい。
【0059】
セラミック粉末の、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径は、0.02μm以上0.07μm以下であることが好ましい。
【0060】
走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径の定義については、導電性粉末と同様である。
【0061】
セラミック粉末の前記平均粒子径が、0.02μm未満であると、導電性粉末の焼結を遅延させる効果が比較的低温度で失われてしまうことから、内部電極層の連続性が低くなってしまう場合がある。セラミック粉末の前記平均粒子径が0.07μmを超えると、内部電極層の表面粗さが悪化して、積層セラミックコンデンサのショート不良の原因となる、並びに、セラミック粉末が導電性粉末の接触点間に入り込みにくくなり、所望の乾燥膜密度が得られない、導電性粉末の焼結開始温度を遅延する効果が低くなるといった問題が生じうる。
【0062】
セラミック粉末の前記平均粒子径は、0.03μm以上0.05μm以下であることがより好ましい。
【0063】
なお、本発明において、セラミック粉末については、上記の特性を有する限り、その製造方法は限定されることはない。セラミック粉末の製造方法については、固相法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法など種々ある。ただし、これらのうち、水熱合成法で得られたセラミック粉末は、微細でシャープな粒度分布を有するため、本発明に適用するセラミック粉末としては好ましい。
【0064】
[セラミック粉末の含有量]
本発明の導電性ペースト組成物において、セラミック粉末の含有量は、導電性粉末およびセラミック粉末の総質量(100質量%)に対して、5.5質量%以上13質量%以下である。7質量%以上12.5質量%以下であることが好ましく、9質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
【0065】
セラミック粉末の含有量が5.5質量%未満では、導電性粉末の焼結を制御できず、内部電極層の連続性が低下する。また、内部電極層と誘電体層の焼結収縮挙動のミスマッチが顕著になり、内部電極層と誘電体層との焼結温度の差が大きくなるため、焼成クラックが発生する可能性がある。
【0066】
一方、セラミック粉末の含有量が13質量%を超えると、導電性ペーストを構成するセラミック粉末のグリーンシート(誘電体層)への拡散が大きくなり、セラミック粉末による導電性粉末の焼結開始を遅延さる効果が低下し、内部電極層の連続性が低下する、並びに、内部電極層から拡散したセラミック粉末と誘電体層中のセラミック粉末との焼結により、誘電体層の厚みが膨張し、組成のずれが生じるため、誘電率が低下するなど、電気特性に悪影響を及ぼすといった問題を生じうる。
【0067】
[導電性ペースト組成物の製造方法]
本発明の導電性ペースト組成物の製造方法は、従来と同様に、導電性粉末を準備する工程、セラミック粉末を準備する工程、前記セラミック粉末を分散化処理する工程、および、前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程とを備える。
【0068】
特に、本発明の導電性ペースト組成物の製造方法では、上述したように、前記導電性粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が0.12μm以上0.3μm以下である導電性粉末を選択し、および、前記セラミック粉末を準備する工程において、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が、該導電性粉末の前記平均粒子径に対して、その平均粒子径の比が0.1以上0.3未満となるセラミック粉末を選択する。
【0069】
また、前記導電性粉末と、前記分散化処理した前記セラミック粉末とを混合および分散化処理する工程において、前記セラミック粉末の含有量が、前記導電性粉末および前記セラミック粉末の総質量に対して、5.5質量%以上13質量%以下となるようにする。
【0070】
なお、それぞれの手段および数値の選択、好ましい態様並びに好適値については、その理由を含めて、上述したとおりであるため、ここでの説明は省略する。
【0071】
2.積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペースト
本発明の第2態様は、積層セラミックコンデンサ内部電極用の導電性ペーストに関する。
【0072】
本発明の積層セラミックコンデンサ内部電極用導電性ペーストは、導電性ペースト組成物とバインダーとを備える。
【0073】
[導電性ペースト組成物の含有量]
本発明の導電性ペーストでは、導電性ペースト組成物として、上述した本発明の導電性ペースト組成物が用いられるとともに、導電性ペースト組成物の含有量が、導電性ペーストの総質量(100質量%)に対して、40質量%以上60質量%以下であることを特徴とする。
【0074】
導電性ペースト組成物の含有量が40質量%未満では、導電性ペーストの印刷時の膜厚の制御が困難となる。導電性ペースト組成物の含有量が60質量%を超えると、電極膜を薄く印刷することが難しくなり、内部電極層の薄層化が困難となる。
【0075】
導電性ペースト組成物をペースト化する際に用いられるバインダーとして、有機ビヒクル、水系ビヒクルなどの公知の粘度調整剤を使用することができる。
【0076】
有機ビヒクルを構成する樹脂としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル、ポリビニルブチラールなどの有機樹脂の中から1種以上を選択して使用することができる。
【0077】
なお、導電性ペースト中の樹脂量は、1.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上6.0質量%以下であることがより好ましい。導電性ペースト中の樹脂量が1.0質量%未満では、スクリーン印刷に適した粘度を得ることが困難である。導電性ペースト中の樹脂量が8.0質量%を超えると、脱バインダー時に残留炭素量が増え、積層チップのデラミネーションを引き起こす可能性がある。
【0078】
バインダーには、樹脂成分を溶解する有機溶媒が含まれる。有機溶媒は、さらに、導電性粉末およびセラミック粉末からなる無機成分をペースト中で安定に分散させる機能と、導電性ペーストをグリーンシートへ塗布あるいは印刷した際に、これら粉末を均一に展延させる機能を有する。有機溶媒は、焼成時までには大気中に逸散する。
【0079】
このような有機溶としては、これらに限定されないが、ターピネオール(α、β、γおよびこれらの混合物)、ジヒドロターピネオール、オクタノール、デカノール、トリデカノール、フタル酸ジブチル、酢酸ブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルなどを用いることができる。
【0080】
バインダー樹脂として、水系ビヒクルを用いる場合は、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、水溶性アクリル樹脂を用いることができる。
【0081】
なお、本発明の導電性ペーストは、スクリーン印刷によりグリーンシートの表面に塗布され、加熱乾燥して有機溶の除去を行うことで、所定のパターンの乾燥膜が形成される。
【0082】
グリーンシートは、通常、0.5μm以上3μm以下の厚みを有し、ペロブスカイト型酸化物であるBaTiOを主成分として、誘電体特性や焼結性を向上させるための公知の無機添加剤が添加され、バインダー樹脂としてポリビニルブチラール樹脂と、柔軟性を保つための公知の可塑剤などが混合されて、シート状に成形されている。
【0083】
導電性ペーストの有機溶媒は、加熱乾燥されて乾燥膜が形成される過程で除去される。乾燥膜とグリーンシートが多層に積み重なられた状態で加熱圧着により一体化した積層体が形成される。積層体は、積層セラミックコンデンサの形状に裁断され、焼成過程において、800℃以下、好ましくは300℃以下の最高温度で、内部電極の酸化防止および残留炭素量の低減との両立を考慮して、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中で、加熱処理による脱バインダーが施される。脱バインダー過程の後、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、1150℃以上1300℃以下である最高温度まで昇温されて、乾燥膜の導電性粉末およびセラミック粉末、並びに、グリーンシートのセラミック粉末がそれぞれ焼結される。
【0084】
本発明では、導電性粉末およびセラミック粉末の選択を、走査型電子顕微鏡(SEM)の撮像を画像処理することにより得られた面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径を基準に行い、導電性粉末の前記平均粒子径に対するセラミック粉末の前記平均粒子径の比を適切な範囲に規制し、かつ、その比に適切なセラミック粉末の含有量を定めている。このため、導電性粉末の前記平均粒子径が0.3μm以下である場合でも、前記導電性粉末の前記平均粒子径に対して適切に前記平均粒子径が制御されているセラミック粉末が導電性粉末の接点同士の間に適切に入り込み、導電性粉末の焼結開始を適切に遅延させる効果を発揮できる。これにより、乾燥膜の表面粗さを小さくでき、かつ、焼成時の導電性ペーストの過焼結が抑制され、焼成後の電極膜において、電極途切れが十分に抑制され、内部電極層の被覆率が高められ、さらには、積層セラミックコンデンサのショート不良が抑制されるという効果が得られる。
【実施例
【0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
[導電性粉末]
導電性粉末として、Ni粉末を用いた。種々のNi粉末について、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、6360A)を用いて撮影を行って、SEM画像を得た。これらのSEM画像から、それぞれのNi粉末の1000個以上の粒子について、画像解析式粒度分布測定ソフト(株式会社マウンテック製、Mac-View)を用いて粒子サイズを測定したのち、それぞれのNi粉末について、面積円相当径(Heywood径)を算出し、個数基準の粒度分布での平均粒子径を求めた。実施例1では、測定したNi粉末のうち、面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が、0.21μmのNi粉末を用いた。
【0087】
[セラミック粉末]
セラミック粉末として、チタン酸バリウム(BaTiO)粉末を用いた。Ni粉末と同様に、種々のチタン酸バリウム粉末について、面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径を求めた。実施例1では、測定したチタン酸バリウム粉末のうち、面積円相当径(Heywood径)における、個数基準の粒度分布での平均粒子径が、0.03μmのチタン酸バリウム粉末を用いた。
【0088】
[導電性粉末の平均粒子径に対するセラミック粉末の平均粒子径の比]
実施例1における、Ni粉末の前記平均粒子径に対するチタン酸バリウム粉末の前記平均粒子径の比は、0.14であった。
【0089】
[バインダー]
バインダーとして、エチルセルロース10%を、ターピネオール90%に溶解させて得た有機ビヒクルを用いた。
【0090】
[ペースト製造]
3本ロールミルを用いて、チタン酸バリウム粉末の含有量が、Ni粉末およびチタン酸バリウム粉末からなる導電性ペースト組成物の総質量(100質量%)に対して、9質量%となるように、かつ、Ni粉末およびチタン酸バリウム粉末の含有量の合計が、導電性ペースト全体の総質量の55質量%となるように、Ni粉末、チタン酸バリウム粉末、バインダーを混練し、導電性ペーストを作製した。この際、導電性ペースト中のエチルセルロースの量が6質量%となるようにし、組成上の不足分については、ターピネオールを添加した。
【0091】
[表面粗さRa]
スクリーン印刷機(CWP社製、810)を用いて、導電性ペーストをガラス基板上にスクリーン印刷により塗布して、80℃で10分間の乾燥を行った後、得られた乾燥膜について、接触式の表面粗さ計(株式会社東京精密製、480)を用いて、その表面粗さRaを測定した。なお、表面粗さRaが0.04μm以下の場合を合格とした。実施例1の乾燥膜の表面粗さRaは、0.03μmであった。
【0092】
[被覆率]
スクリーン印刷機(CWP社製、810)を用いて、導電性ペーストをグリーンシート(誘電体シート)上に、Ni粉末が0.6mg/cmの割合となる塗布量で印刷し、積層シートを得た。N/Hの雰囲気下、昇温速度10℃/分の割合で、1200℃まで昇温し、1200℃の焼成温度で、2時間の焼成する条件で、積層シートを焼成した。
【0093】
走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製、6360LA)を用いて、焼成膜を3000倍にて撮影し、撮影面積中の内部電極が覆っている面積を測定し、(内部電極が覆っている面積)/(撮影面積)×100にて、被覆率を算出した。なお、被覆率が75%以上のものを合格とした。実施例1の焼成膜の被覆率は、77%であった。
【0094】
実施例1において用いた導電性ペースト組成物の特性、導電性ペーストの特性、乾燥膜の表面粗さRa、焼成膜の被覆率について、表1に示す。
【0095】
[実施例2および3、比較例1~5]
Ni粉末の平均粒子径、チタン酸バリウム粉末の平均粒子径、導電性粉末の平均粒子径に対するセラミック粉末の平均粒子径の比、導電性ペースト組成物の総質量(100質量%)に対するチタン酸バリウム粉末の含有量、および、導電性ペースト組成物の含有量のいずれかを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性ペースト、乾燥膜、および焼成膜を得て、それぞれの特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0096】
なお、実施例3(被覆率:79%)および比較例3(被覆率:68%)で得られた焼成膜についての走査電子顕微鏡による撮像を図1および図2にそれぞれ示す。
【0097】
【表1】
図1
図2