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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240625BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240625BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B7/06
B32B27/00 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020020133
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021123079
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藪下 諭
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 和則
(72)【発明者】
【氏名】中村 一
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174220(JP,A)
【文献】特開2002-194307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0163096(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、
前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、
前記第二の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第三層と、
を備え
前記第二層は粘着層及び基材層を備え、前記第二層における前記粘着層が前記第一の面側に設けられており、前記第一層は粘着層及び基材層を備え、前記第一層における前記粘着層が前記第二の面側に設けられており、
前記第三層の材質が、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリエチレンテレフタレートである積層フィルム。
【請求項2】
マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、
前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、
を備え、
前記第二層の引張弾性率は、1000MPa~4000MPaであり、
前記第二層は粘着層及び基材層を備え、前記第二層における前記粘着層が前記第一の面側に設けられており、前記第一層は粘着層及び基材層を備え、前記第一層における前記粘着層が前記第二の面側に設けられている積層フィルム。
【請求項3】
前記第二層の引張弾性率は、1000MPa~4000MPaである請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記第三層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力A)は、前記第二層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以下である請求項1又は請求項3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記第三層が剥離されて露出した前記第一層の前記第二の面に銅板を貼り付けた後に、前記第一層が前記銅板から剥離されるときの剥離力(剥離力C)は、前記第二層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以上である請求項1、請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記第一層の厚さは、20μm~70μmである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記第一層の引張弾性率は、200MPa~1000MPaである請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
部材を部分的に塗装、メッキ、エッチング等する際にマスキングフィルムが用いられる場合がある。例えば、部材に打ち抜き加工等が施されたマスキングフィルムを貼り付けて部材の非塗装部、非メッキ部、非エッチング部等をマスクし、その後に塗装、メッキ、エッチング等する。
【0003】
より具体的には、フレキシブルプリント基板の接続端子部等を部分メッキする際に、非メッキ部分をマスクするために用い、引張弾性率が1~250kg/mmである層(A層)と200~700kg/mmである層(B層)からなる2層以上の多層フィルムを支持体とし、前記支持体のA層側に粘着剤層を設けてなることを特徴とするメッキマスク用保護フィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-140393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のマスキングフィルムに打ち抜き加工等を施してマスクパターンを形成した場合、
打ち抜き加工時等のマスクパターン形成時に発生する異物がマスキングフィルムの表面に付着するおそれがある。マスキングフィルムの表面に異物が付着すると、マスキングフィルムを貼り付ける被着体が汚れたり、マスキングフィルムの効果が低減したりするおそれがある。
【0006】
また、従来のマスキングフィルムに打ち抜き加工等を施してマスクパターンを形成しながらマスキングフィルムをロール部材等に巻き取る場合、マスキングフィルムが張力により伸びるため、パターン部の加工精度が低下したり、被着体に貼り付ける際のパターン部の位置精度が低下したりするおそれがある。
【0007】
本開示の一態様は、マスキングフィルムを備え、マスクパターンの形成時にマスキングフィルムの表面に異物が付着することが抑制可能な積層フィルムを提供することである。
本開示の他の一態様は、マスキングフィルムを備え、マスクパターン形成後に被着体に貼り付けた際のパターン部の位置精度に優れる積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、前記第二の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第三層と、を備える積層フィルム。
<2> マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、を備え、前記第二層の引張弾性率は、1000MPa~4000MPaである積層フィルム。
<3> 前記第二層の引張弾性率は、1000MPa~4000MPaである<1>に記載の積層フィルム。
<4> 前記第三層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力A)は、前記第二層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以下である<1>又は<3>に記載の積層フィルム。
<5> 前記第三層が剥離されて露出した前記第一層の前記第二の面に銅板を貼り付けた後に、前記第一層が前記銅板から剥離されるときの剥離力(剥離力C)は、前記第二層が前記第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以上である<1>、<3>及び<4>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<6> 前記第一層の厚さは、20μm~70μmである<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
<7> 前記第一層の引張弾性率は、200MPa~1000MPaである<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、マスキングフィルムを備え、マスクパターンの形成時にマスキングフィルムの表面に異物が付着することが抑制可能な積層フィルムを提供することができる。
本開示の他の一態様によれば、マスキングフィルムを備え、マスクパターン形成後に被着体に貼り付けた際のパターン部の位置精度に優れる積層フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第一実施形態の積層フィルムの概略構成図である。
図2】第一実施形態の積層フィルムの使用方法の一例を示す概略図である。
図3】第二実施形態の積層フィルムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。各実施形態に記載の構成は適宜組み合わせてもよい。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「第一層から剥離可能な第二層」とは、第一層が破損したりせず、その形状を維持したまま、第二層を剥離することができることを意味する。
本開示において「第一層から剥離可能な第三層」とは、第一層が破損したりせず、その形状を維持したまま、第三層を剥離することができることを意味する。
【0013】
<第一実施形態>
[積層フィルム]
第一実施形態の積層フィルムは、マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、前記第二の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第三層と、を備える。
【0014】
第一実施形態の積層フィルムは、第二層と第三層との間にマスキングフィルムである第一層を備える。そのため、積層フィルムに対して第二層、第一層及び第三層が積層された方向に打ち抜き加工等を施した際、打ち抜き加工時等のマスクパターン形成時に発生する異物がマスキングフィルムの表面(例えば、第一層の第一の面及び第二の面)に付着することが抑制できる。これにより、例えば、マスクパターン形成後のマスキングフィルムを、第三層を剥離してから被着体に貼り付けた際に被着体が汚れることが抑制され、また、マスキングフィルムに異物が付着していることに起因するマスキングの効果低減を抑制することができる。
【0015】
積層フィルムは、例えば、積層フィルムから第二層を剥離してマスキングフィルムである第一層の第一の面を被着体に貼り付けた後、第三層を剥離して使用してもよく、積層フィルムから第三層を剥離してマスキングフィルムである第一層の第二の面を被着体に貼り付けた後、第二層を剥離して使用してもよい。
【0016】
積層フィルムは、打ち抜き加工等によりパターン部が少なくとも第一層に形成された積層フィルムであってもよく、打ち抜き加工等によりパターン部が第一層から第三層にそれぞれ形成された積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムは、第二層及び第一層が打ち抜き加工され、第三層がハーフカットされた積層フィルムであってもよく、第三層及び第一層が打ち抜き加工され、第二層がハーフカットされた積層フィルムであってもよい。第二層がハーフカットされている場合、積層フィルムから第二層を剥離する際に、第三層及び第一層の打ち抜かれた部分も剥離される構成であってもよく、第三層がハーフカットされている場合、積層フィルムから第三層を剥離する際に、第二層及び第一層の打ち抜かれた部分も剥離される構成であってもよい。
積層フィルムは、ロール部材等により巻き取られたフィルムであってもよい。
【0017】
(第一層)
第一実施形態の積層フィルムは、マスキングフィルムであり、第一の面及び第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層を備える。
第一の面及び第二の面はそれぞれ第一層の主面であってもよい。
第一層の主面とは、第一層が有する面の内、最も面積の大きい一対の面を指す。
【0018】
第一層の引張弾性率は、被着体表面の凹凸への追従性と剥離性の観点から、200MPa~1000MPaであることが好ましく、400MPa~800MPaであることがより好ましい。
本開示において、各層の引張弾性率は、JIS K 7161(1994)に基づいて25℃にて測定される値である。
【0019】
第一層の材質としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の高分子材料が挙げられ、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましい。
【0020】
第一層の厚さは、20μm~70μmであることが好ましく、20μm~50μmであることがより好ましい。第一層の厚さが20μm以上であることにより、他の層を剥離した際に形状が好適に維持される傾向にあり、第一層の厚さが70μm以下であることにより、塗装時のパターン部のエッジ部分の液だまり、塗装膜厚精度の低下、メッキ処理時の気泡だまりによるメッキ品質の低下、被着体表面の凹凸への追従不足によるパターン部のエッジ部分からの処理液の染み込み等が抑制される傾向にある。
各層の厚さは、例えば、レーザ顕微鏡を用いて各層の断面を観察し、測定した任意の3箇所の厚さの算術平均値として求められる。
【0021】
第一層は、第一の面及び第二の面の一方の面である被着体と貼り付けられる面側に粘着層を備えていてもよく、例えば、基材層と粘着層とを備える構成であってもよい。
【0022】
第一層が基材層と粘着層とを備える場合、基材層の材質としては、前述の第一層の材質と同様の材質が挙げられる。基材層の厚さは、10μm~50μmであることが好ましい。粘着層の厚さは、1μm~20μmであることが好ましい。
【0023】
粘着層に用いられる粘着剤としては、一般的に用いられるアクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤及びこれらの混合系粘着剤が挙げられる。粘着層は、粘着剤以外の成分を含んでいてもよく、架橋剤、粘着付与剤等を含んでいてもよい。
【0024】
粘着層を形成する方法としては、例えば、粘着剤を有機溶剤に溶解して粘度を調整した粘着剤組成物を基材層に塗工し、次いで塗工した粘着剤組成物を乾燥させる方法が挙げられる。その他の方法として、溶融させた粘着剤を基材層に塗工する方法、水に分散させた粘着剤を基材層に塗工する方法等が挙げられる。
【0025】
(第二層)
第一実施形態の積層フィルムは、第一の面に設けられた第一層から剥離可能な第二層を備える。第二層は、後述する第三層が剥離された第一実施形態の積層フィルムを第一層の第二の面を介して被着体に被着させた後で剥離される層であってもよい。
【0026】
第二層の引張弾性率は、打ち抜き加工等を施してマスクパターンを形成する際のパターン部の加工精度及び被着体に貼り付ける際のパターン部の位置精度を向上させる観点から、1000MPa~4000MPaであることが好ましく、2500MPa~4000MPaであることがより好ましい。
【0027】
第二層の材質としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の高分子材料が挙げられ、中でもポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が好ましい。
【0028】
第二層の厚さは、20μm~100μmであることが好ましく、25μm~50μmであることがより好ましい。
【0029】
第二層は、第一層の第一の面と貼り付けられる側に粘着層を備えていてもよく、例えば、基材層と粘着層とを備える構成であってもよい。
【0030】
第二層が基材層と粘着層とを備える場合、基材層の材質としては、前述の第二層の材質と同様の材質が挙げられる。基材層の厚さは、10μm~80μmであることが好ましい。粘着層の厚さは、1μm~20μmであることが好ましく、粘着層に用いられる粘着剤及び粘着層を形成する方法は、前述の(第一層)の項目にて説明した通りである。
【0031】
(第三層)
第一実施形態の積層フィルムは、第二の面に設けられた第一層から剥離可能な第三層を備える。第三層は、第二層よりも先に剥離される層であってもよく、第一実施形態の積層フィルムを第一層の第二の面を介して被着体に被着させる前に剥離される層であってもよい。
【0032】
第三層の材質としては特に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。第三層では、第一層の第二の面と対面する面に離型処理が施されていてもよい。
【0033】
第三層の厚さは、40μm~100μmであることが好ましく、40μm~75μmであることがより好ましい。
【0034】
第一実施形態の積層フィルムでは、第三層が第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力A)は、第二層が第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以下であることが好ましく、剥離力Aは剥離力Bよりも小さいことがより好ましい。これにより、第一実施形態の積層フィルムの第三層が第一層から剥離されるときに、第二層が第一層から剥離されて第二層と第一層との間に浮きが生じることが抑制される。
本開示において、剥離力Aは、幅25mmの積層フィルムを準備し、引張試験機を用いて、引張速度200mm/min及び温度23℃の条件で、第三層を第一層との界面に対して90°の方向に引っ張ることで第三層と第一層との間を剥離させた際の剥離強度の最大値である。
剥離力B及び後述の剥離力Cについても同様の方法により測定することができる。
なお、剥離力Aは、第三層を第一層から剥離するときの剥離強度の最大値であり、剥離力Bは、第二層を第一層から剥離するときの剥離強度の最大値であり、剥離力Cは、第一層を被着体である銅板から剥離するときの剥離強度の最大値である。
【0035】
第一実施形態の積層フィルムでは、第三層が剥離されて露出した第一層の第二の面に銅板を貼り付けた後に、第一層が銅板から剥離されるときの剥離力(剥離力C)は、第二層が第一層から剥離されるときの剥離力(剥離力B)以上であることが好ましく、剥離力Cは剥離力Bよりも大きいことがより好ましい。これにより、第一層の第二の面に被着体である銅板を貼り付けた後に第二層が第一層から剥離されるときに、第一層が被着体から剥離されて第一層と被着体との間に浮きが生じることが抑制される。
【0036】
第一実施形態の積層フィルムでは、剥離力C≧剥離力B≧剥離力Aを満たしてもよく、剥離力C>剥離力B>剥離力Aを満たしていてもよい。
【0037】
例えば、剥離力Aは、0.10N/25mm~0.40N/25mmであってもよく、剥離力Bは、0.20N/25mm~0.60N/25mmであってもよく、剥離力Cは、0.30N/25mm~1.00N/25mmであってもよい。剥離力Aが0.10N/25mm以上であることにより、積層フィルムを打ち抜き加工した際に、第一層と第三層との間に剥離による浮きが生じにくく、浮きの部分に異物が混入することも好適に抑制できる。
【0038】
剥離力A、剥離力B及び剥離力Cのそれぞれは、例えば、第一層及び第二層にそれぞれ粘着層を設け、各粘着層の組成を調節することで適宜調節してもよく、第三層について、第一層の第二の面と対面する面に離型処理を施して適宜調節してもよい。
【0039】
(積層フィルムを用いた基材の処理方法1)
以下、第一実施形態の積層フィルムを用いた基材の処理方法1について説明する。積層フィルムを用いた基材の処理方法1は、第一実施形態の積層フィルムを準備する工程と、前記積層フィルムの前記第一層にマスクパターンを形成する工程と、前記第一層から第三層を剥離する工程と、前記第一層の前記第二の面に基材を貼り付ける工程と、前記第一層から前記第二層を剥離する工程と、前記マスクパターンを形成する工程により前記第一層に形成されたパターン部の形状に対応する表面処理を前記基材に行う工程と、を有する。この処理方法1により、パターン部の形状に対応する表面処理が施された基材を製造できる。
【0040】
前述のマスクパターンを形成する工程では、積層フィルムに対して第二層、第一層及び第三層が積層された方向に打ち抜き加工等を施すことによって、第一層にマスクパターンを形成してもよい。
【0041】
打ち抜き加工等を施すことによって、第一層にマスクパターンを形成する場合、第一層の第二の面に異物が付着することを抑制する観点から、前述のマスクパターンを形成する工程の後に、第一層から第三層を剥離する工程を行うことが好ましい。
【0042】
第一層の厚さを薄くしても形状を好適に維持しやすい観点から、前述の基材を貼り付ける工程の後に、前述の第二層を剥離する工程を行うことが好ましい。
【0043】
基材は、前述の被着体に対応する。基材の材質としては、具体的には、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス、真鍮等の金属板、金属条材、金属箔等;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、塩化ビニル、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂板、樹脂シート等;プリント基板などが挙げられる。
【0044】
パターン部の形状に対応する表面処理としては、特に限定されず、塗装、メッキ、エッチング等が挙げられる。
【0045】
(積層フィルムを用いた基材の処理方法2)
以下、第一実施形態の積層フィルムを用いた基材の処理方法2について説明する。積層フィルムを用いた基材の処理方法2は、少なくとも前記第一層にマスクパターンを有する第一実施形態の積層フィルムを準備する工程と、前記第一層から第三層を剥離する工程と、前記第一層の前記第二の面に基材を貼り付ける工程と、前記第一層から前記第二層を剥離する工程と、前記マスクパターンを形成する工程により前記第一層に形成されたパターン部の形状に対応する表面処理を前記基材に行う工程と、を有する。この処理方法2により、パターン部の形状に対応する表面処理が施された基材を製造できる。
処理方法2は、第一実施形態の積層フィルムを準備する工程として第一層にマスクパターンを有する第一実施形態の積層フィルムを準備する工程を有し、前記積層フィルムの前記第一層にマスクパターンを形成する工程を有さない点で、前述の処理方法1と相違し、その他は処理方法1と同様である。
【0046】
第一層にマスクパターンを有する第一実施形態の積層フィルムを準備する工程では、第一層にマスクパターンを有する第一実施形態の積層フィルムを外部から入手してもよく、第一実施形態の積層フィルムの第一層にマスクパターンを形成してもよい。
【0047】
以下、図1及び図2を用いて、第一実施形態の積層フィルムの具体的構成について説明する。図1は、第一実施形態の積層フィルムの概略構成図であり、図2は、第一実施形態の積層フィルムの使用方法の一例を示す概略図である。
【0048】
図1及び図2(a)に示すように、積層フィルム10は、第三層3、マスキングフィルムである第一層1、及び第二層2をこの順に備える。第一層1は粘着層を備え、第一層1の粘着層側の面が第三層3に貼り付けられていてもよく、第二層2は粘着層を備え、第二層2の粘着層側の面が第一層1に貼り付けられていてもよい。
【0049】
図2(b)では、第二層2側から第二層2及び第一層1が打ち抜き加工され、かつ第三層3がハーフカットされた後、第三層3を第一層1から剥離することにより、第一層1及び第二層2における打ち抜かれた部位4、5、並びにハーフカットされた第三層13を積層フィルム10から剥離している。これにより、打ち抜き部を有する第一層11及び打ち抜き部を有する第二層12を備える積層フィルムが得られる。
【0050】
次に、図2(c)に示すように、打ち抜き部を有する第一層11の第二の面に被着体6を貼り付ける。
【0051】
そして、打ち抜き部を有する第一層11から打ち抜き部を有する第二層12を剥離することによって、図2(d)に示すように、打ち抜き部を有する第一層11及び被着体6を備える積層体を得る。
【0052】
打ち抜き部を有する第一層11及び被着体6を備える積層体について、塗装、メッキ、エッチング等を行う。これにより、図2(e)に示すように、被着体6について、第一層11の打ち抜き部と対面していた箇所に塗装、メッキ、エッチング等の処理が施され、処理部7を備える被着体16が得られる。
【0053】
<第二実施形態>
[積層フィルム]
第二実施形態の積層フィルムは、マスキングフィルムであり、第一の面及び前記第一の面と反対側に位置する第二の面を有する第一層と、前記第一の面に設けられた前記第一層から剥離可能な第二層と、を備え、前記第二層の引張弾性率は、1000MPa~4000MPaである。
【0054】
第二の実施形態の積層フィルムについて、第一の実施形態の積層フィルムと共通する好ましい形態については、その説明を省略する。
【0055】
第二実施形態の積層フィルムは、第一層から剥離可能であり、引張弾性率が1000MPa~4000MPaである第二層を備える。これにより、積層フィルムに打ち抜き加工等を施してマスクパターンを形成しながら積層フィルムをロール等に巻き取る場合、積層フィルムが張力により伸びることが抑制されるため、パターン部の加工精度が低下することが抑制され、被着体に貼り付ける際のパターン部の位置精度が低下することが抑制される。
【0056】
以下、図3を用いて、第二実施形態の積層フィルムの具体的構成について説明する。図3は、第二実施形態の積層フィルムの概略構成図である。
【0057】
図3に示すように、積層フィルム20は、マスキングフィルムである第一層21及び第二層22をこの順に備える。第二層22は粘着層を備え、第二層22の粘着層側の面が第一層21に貼り付けられていてもよい。
【実施例
【0058】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
[実験例1]
(積層フィルムの作製)
表1に示す基材層(材質:ポリプロピレン、PP)及び粘着層を備えるマスキングフィルムを作製し、表1に示す基材層(材質:ポリエチレンテレフタレート、PET)及び粘着層を備える第二層を作製し、表1に示す第三層を準備した。
マスキングフィルムの粘着層及び第二層の粘着層は、それぞれ基材層に表1に示す粘着層成分を希釈した粘着剤組成物を塗布及び乾燥して作製した。次に、第一層の粘着層が形成されていない面側に、第二層の粘着層が形成されている面を25℃、0.40MPaの条件で貼り付け、第一層の粘着層が形成されている面側に、第三層を25℃、0.40MPaの条件で貼り付けることにより、積層フィルムを作製した。
【0060】
[実験例2]
第一層及び第三層を表1に示す通りに変更した以外は、実験例1と同様にして積層フィルムを作製した。
【0061】
[実験例3]
第二層を表1に示す通りに変更した以外は、実験例1と同様にして積層フィルムを作製した。
【0062】
[実験例4]
第一層及び第二層を表1に示す通りに変更した以外は、実験例1と同様にして積層フィルムを作製した。
【0063】
[実験例5]
実験例1にて第三層を設けなかった以外は実験例1と同様にして積層フィルムを作製した。
【0064】
[実験例6]
実験例4にて第三層を設けなかった以外は実験例4と同様にして積層フィルムを作製した。
【0065】
各実験例にて作製された積層フィルムに関して、以下の特性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0066】
[剥離力A、剥離力B及び剥離力Cの測定]
幅25mmの積層フィルムを準備し、引張試験機を用いて、引張速度200mm/min及び温度23℃の条件で、第三層を第一層との界面に対して90°の方向に引っ張ることで第三層と第一層との間を剥離させた際の剥離強度の最大値を測定し、その値を剥離力Aとした。
剥離力B及び剥離力Cについても同様の方法により測定した。剥離力Cについては、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に23℃、線圧5880N/mの条件で貼り付けた積層体を用い、前述と同様の条件で測定した。
【0067】
[貼り付け時の打ち抜き部の位置精度]
得られた積層フィルム(長さ10m×幅50mm)に、第二層側からの打ち抜き加工により、長さ10mm×幅10mmであり、打ち抜き部間のピッチ(中心間距離)が30mmである打ち抜き部を形成した。次いで、実験例1~4については、積層フィルムに張力をかけた後、第三層を剥離し、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付け、実験例5及び6については、積層フィルムに張力をかけた後、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付けた。被着体に第一層を貼り付けた後の打ち抜き部の位置を確認して、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
A:打ち抜き部の形状変形が観察されず、目標の場所にマスキングフィルムである第一層を貼り付けることができた。
B:打ち抜き部の形状変形が観察される、又は、貼り付け位置が目標の場所からずれていた。
【0068】
[密着性]
実験例1~4については、得られた積層フィルムから第三層を剥離した際に第一層と第二層との界面を確認し、以下の評価基準で評価した。さらに、第三層を剥離し、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付けた後、第二層を第一層から剥離した際に第一層と被着体との界面を確認し、以下の評価基準で評価した。
実験例5及び6については、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付けた後、第二層を第一層から剥離した際に第一層と被着体との界面を確認し、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
A:第一層と第二層との界面及び第一層と被着体との界面の両方に部分的又は全面的な浮き、剥離等が見られなかった。
B:第一層と第二層との界面及び第一層と被着体との界面の少なくとも一方で部分的又は全面的な浮き、剥離等が見られた。
【0069】
[マスキング性]
得られた積層フィルム(長さ10m×幅50mm)に、第二層側からの打ち抜き加工により、長さ10mm×幅10mmであり、打ち抜き部間のピッチ(中心間距離)が30mmである打ち抜き部を形成した。次いで、実験例1~4については、第三層を剥離し、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付け、実験例5及び6については、第一層の粘着層側の面を被着体(材質:銅板)に貼り付けた。
第一層の粘着層側の面を被着体に貼り付けた後、第二層を第一層から剥離し、次いで、メッキ処理(メッキ金属:金)を行った。メッキ処理を行った後、第一層を被着体から剥離してメッキ処理面を確認して、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
A:メッキのエッジ部分での染み込み、及びメッキ面の荒れが観察されなかった。
B:メッキのエッジ部分での染み込み、及びメッキ面の荒れの少なくとも一方が観察された。
【0070】
[マスキングフィルム表面の異物付着]
得られた積層フィルム(長さ10m×幅50mm)に、第二層側からの打ち抜き加工により、長さ10mm×幅10mmであり、打ち抜き部間のピッチ(中心間距離)が30mmである打ち抜き部を形成した。その後、マスキングフィルムである第一層について、積層フィルムの第二層側とは反対側の面を観察し、以下の評価基準で評価した。
[評価基準]
A:マスキングフィルムの表面に異物が付着していなかった
B:マスキングフィルムの表面に異物が付着していた。
【0071】
【表1】
【0072】
実験例1~3及び5は、第一層の粘着層側の面を被着体に貼り付けた際の打ち抜き部の位置精度に優れていた。
また、実験例1~4は、マスキングフィルム表面への異物の付着が抑制されていた。
【符号の説明】
【0073】
1、21 第一層(マスキングフィルム)
2、22 第二層
3 第三層
6、16 被着体
7 処理部
10、20 積層フィルム
11 打ち抜き部を有する第一層
12 打ち抜き部を有する第二層
13 ハーフカットされた第三層
4、5 打ち抜かれた部位
図1
図2
図3