(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ハロアルケン発泡ポリウレタン製造用のポリオール系配合液
(51)【国際特許分類】
C08G 18/18 20060101AFI20240625BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20240625BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20240625BHJP
【FI】
C08G18/18
C08G18/00 H
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020055404
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2019058437
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】徳本 勝美
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】ポーランド国特許発明第118230(PL,B1)
【文献】特表2007-516339(JP,A)
【文献】ITO, Isoo et al.,Studies on Diphenylmethane derivatives. V. Synthesis and pharmacology of N-alkylaminopropyl-1,1-diphenylmethylamine and Nalkylaminopropyl- 1,2-diphenylethylamine derivatives,Yakugaku Zasshi,日本,1975年,95(4),383-389
【文献】SURREY, Alexander R.,The Preparation of 4-thiazolidones. III. The reaction of methyl thioglycolate with benzylidene dialkylaminoalkylamines,Journal of the American Chemical Society,米国,1949年,71,3105-3107
【文献】Mkhitaryan, A. G.,Reactions of aziridine, its dimer, 2,2-dimethyl-aziridine dimer, and β,β-bis-N-aziridinoethylamine with aromatic aldehydes and dialdehydes,Bulletin of the Russian Academy of Sciences Division of Chemical Science,1992年,41(9),1665-1671
【文献】LIN, Hong-Wei,Synthesis and Crystal Structures of Two Zinc(II) Complexes with the Schiff Bases 2-[(3-Diethylaminopropylimino)methyl]phenol and 1-[(3- Diethylaminopropylimino)methyl]naphthalen-2-ol,Synthesis and Reactivity in Inorganic, Metal-Organic, and Nano-Metal Chemistry,2009年,39(2),73-77
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08G 101/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、ヒドロハロオレフィン及び下記式(1)
【化1】
(式中、Ar
1は、置換基を有していてもよい炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族基を表す。
R
1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R
2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR
2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含有するポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液組成物。
【請求項2】
-NR
2R
2で表される基が、ジエチルアミノ基、エチル(n-プロピル)アミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、又はモルホリノ基であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
2が共にエチル基である(すなわち、-NR
2R
2で表される基が、ジエチルアミノ基である)ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
Ar
1が、置換基を有していてもよいフェニル基であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
Ar
1が、下記式(2)乃至(6)のいずれかで表される基であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】
(式中、*は、式(1)における連結部位を表す。R
1、R
2、及びnは、式(1)と同義である。なお、式(1)と式(5)が結合する場合、R
1、R
2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
【請求項6】
ヒドロハロオレフィンが、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロブテン、ヒドロクロロプロペン、又はヒドロクロロブテンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
ヒドロハロオレフィンが、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、又はクロロテトラフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ヒドロハロオレフィンが、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
ヒドロハロオレフィンが、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の組成物とポリイソシアネート化合物とを反応させることを特徴とする、ポリウレタンフォームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームを製造する際に用いるポリオール系配合液に関する。さらに詳しくは、ポリオール、ヒドロハロオレフィン類、及び特定のアミン触媒を含む、貯蔵安定性に優れるポリオール系配合液、及びそのポリオール系配合液と有機ポリイソシアネートとを用いたポリウレタンフォームの製造法に関する。
【0002】
また、本発明は、ポリオール系配合液の貯蔵安定性向上に寄与するアミン化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネートの反応により製造することができるが、典型的なものとして、アミン触媒、発泡剤、及び界面活性剤などを含有するポリオール系配合液と有機ポリイソシアネートとを反応させる製造方法を挙げることができる。当該ポリウレタン樹脂の製造方法においては、ポリオール系配合液と有機ポリイソシアネートとを混合接触させ、迅速に発泡成型反応を行わせることが重要である。例えば、断熱用ポリウレタン樹脂の吹き付け工法では、壁面等にスプレー塗布した混合液が迅速に発泡成形反応を開始することによって良好なポリウレタン発泡樹脂断熱層が得られる。
【0004】
近年、上記の発泡剤について、地球温暖化係数が低いヒドロフルオロオレフィン類(HFO類)及びヒドロクロロフルオロオレフィン類(HCFO類)を含むヒドロハロオレフィンが利用され始めている。このような発泡剤の具体例として、ヒドロフルオロオレフィンとしては、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(HFO-1336mzz)が、ヒドロクロロフルオロオレフィンとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)が挙げられる。
【0005】
これらの発泡剤については、前記のアミン触媒の作用を受けて、経時的に分解することが知られており、その分解に伴ってポリオール系配合組成物と有機ポリイソシアネートとの反応が遅くなることが知られている。このため、ヒドロハロオレフィン系発泡剤を含むポリオール系配合液については長期貯蔵が困難であり、産業上の利用が困難であるとの課題があった。
【0006】
上記課題を解決する方法として、有機酸含有アミン触媒を用いる例(特許文献1)と、立体障害アミン触媒を用いる例(特許文献2)が提案されている。
【0007】
また、上記課題とは無関係であるが、イミン結合および第3級アミンを含有する触媒が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2011-500893号公報
【文献】国際公開第2009/048807号
【文献】特表2007-516339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の有機酸含有アミン触媒を用いる例では、ポリオール系配合組成物の貯蔵安定性が十分改善されていないという課題がある。
【0010】
特許文献2に記載の立体障害アミン触媒を用いる例では、迅速に発泡成形反応が進まないという課題があり、吹き付け工法において液垂れをもたらすという問題を抱えている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の第3級アミン類とアルデヒドの反応生成物からなるアミン触媒を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液、前記ポリオール系配合液を用いたポリウレタンフォームの製造方法、又は前記ポリオール系配合液に用いることができるアミン化合物に関する。
[1] ポリオール、ヒドロハロオレフィン及び下記式(1)
【0013】
【0014】
(式中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族基を表す。
R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含有するポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液組成物。
[2] -NR2R2で表される基が、ジエチルアミノ基、エチル(n-プロピル)アミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、又はモルホリノ基であることを特徴とする、[1]に記載の組成物。
[3] R2が共にエチル基である(すなわち、-NR2R2で表される基が、ジエチルアミノ基である)ことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] Ar1が、置換基を有していてもよいフェニル基であることを特徴とする、[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の組成物。
[5] Ar1が、下記式(2)乃至(6)のいずれかで表される基であることを特徴とする、[1]乃至[3]のいずれか1項に記載の組成物。
【0015】
【0016】
(式中、*は、式(1)における連結部位を表す。R1、R2、及びnは、式(1)と同義である。なお、式(1)と式(5)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
[6] ヒドロハロオレフィンが、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロブテン、ヒドロクロロプロペン、又はヒドロクロロブテンであることを特徴とする、[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[7] ヒドロハロオレフィンが、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、又はクロロテトラフルオロプロペンであることを特徴とする、[1]乃至[5]のいずれか1項に記載の組成物。
[8] ヒドロハロオレフィンが、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1,3-テトラフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン、1,1,1,2-テトラフルオロプロペン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンであることを特徴とする、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[9] ヒドロハロオレフィンが、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンであることを特徴とする、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[10] [1]乃至[9]のいずれか一項に記載の組成物とポリイソシアネート化合物とを反応させることを特徴とする、ポリウレタンフォームの製造方法。
[11] 下記式(1’)
【0017】
【0018】
【0019】
(式(1’)中、Ar1は、上記式(2)乃至(6)のいずれかで表される基を表す。
式(2)乃至(6)中、*は、式(1’)における連結部位を表す。
式中、R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
Ar1が式(2)乃至(5)のいずれかの場合、nは、各々独立して、0又は1を表し、Ar1が式(6)の場合、nは、1を表す。
なお、式(1’)と式(5)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
で表される化合物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の触媒は、驚くべきことに、従来技術の一つである有機酸含有アミン触媒と比べ、ヒドロハロオレフィンを含むポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液の貯蔵安定性を顕著に高めることができる。また、本発明の触媒組成物は、従来技術の一つである立体障害アミン触媒と比べ、泡化活性が顕著に高いため、迅速な発泡反応を開始することができ、吹き付け工法における液垂れを抑制することができる。
【0021】
以上の理由から、本発明の触媒組成物を用いれば、ポリオール系配合液を長期保存することが可能で、なおかつ良質なハロアルケン発泡ポリウレタンを製造することができるという格別な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明は、ポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液組成物であって、ポリオール、ヒドロハロオレフィン及び下記式(1)
【0024】
【0025】
(式中、Ar1は、置換基を有していてもよい炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族基を表す。
R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
nは、0又は1を表す。)
で表される化合物を含有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明のポリオール系配合液組成物における上記式(1)で表される化合物については、以下の通りである。
【0027】
上記のR1における炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,2-ジイル基、2-メチルプロパン-1,3-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘキサン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,4-ジイル基、ヘキサン-1,3-ジイル基、又はヘキサン-1,2-ジイル基等を挙げることができる。
【0028】
上記のR1については、貯蔵安定性の効果に優れる点で、エチレン基、又はプロパン-1,3-ジイル基であることが好ましく、プロパン-1,3-ジイル基であることがより好ましい。
【0029】
上記のR2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
【0030】
前記の炭素数2~4のアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、又はtert-ブチル基等を挙げることができる。
【0031】
前記の炭素数2~4のヒドロキシアルキル基については、特に限定するものではないが、例えば、ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシプロピル基、又は4-ヒドロキシブチル基等を挙げることができる。
【0032】
2つのR2が互いに結合して形成される、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環としては、特に限定するものではないが、ピロリジニル基(ピロリジン環)、又はモルホリノ基(モルホリン環)等を挙げることができる。
【0033】
当該R2については、貯蔵安定性の効果に優れる点で、各々独立して、エチル基、ヒドロキシエチル基、又はn-プロピル基であることが好ましく、-NR2R2で表される基としては、ジエチルアミノ基、エチル(n-プロピル)アミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、又はモルホリノ基であることが好ましく、ジエチルアミノ基である(すなわち、2つのR2が共にエチル基である)ことがより好ましい。
【0034】
上記のAr1における置換基を有していてもよい炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族基は、総炭素数が3~20の基を表し、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有していてもよい総炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい総炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環のヘテロ芳香族基を挙げることができる。
【0035】
上記の芳香族基、芳香族炭化水素基、又はヘテロ芳香族基が有していてもよい置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ビニル基、アリル基、メトキシ基、エトキシ基、tert-ブトキシ基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、フェニル基、トシル基、ベンジル基、ピリジル基、エポキシ基、グリシジル基、グリシジルエーテル基、カルボキシ基、メトキシカルボキシ基、エトキシカルボキシ基、カルバモイル基、ニトロ基、アミノ基、イソシアネート基、ホルミル基、スルホ基、ニトリル基、アセチル基、メルカプト基、フッ素基、塩素基、臭素基、ヨウ素基、トリフルオロメチルスルホニル基、又はp-トルエンスルホニル基等を挙げることができる。
【0036】
前記の置換基を有していてもよい総炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環の芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基、トリル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、クメニル基、ドデシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ホルミルフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルオキシフェニル基、エトキシカルボニルオキシフェニル基、カルバモイルフェニル基、ニトリル基、ヒドロキシフェニル基、ビフェニリル基(2-ビフェニリル基、3-ビフェニリル基、4-ビフェニリル基)、ターフェニリル基、ナフチル基、フェニルナフチル基、ナフチルフェニル基、アントラセニル基、又はアントリル基等が挙げられる。
【0037】
前記の置換基を有していてもよい総炭素数3~20の単環、連結環、又は縮環のヘテロ芳香族基としては、特に限定するものではないが、例えば、フラニル基、イミダゾリル基、チエニル基、ピリジル基、メチルピリジル基、又はフェニルピリジル基等を例示することができる。
【0038】
Ar1については、貯蔵安定性に優れる点で、置換基を有していてもよい総炭素数が20以下のフェニル基であることが好ましく、フェニル基(該基は、総炭素数が6~20の範囲で、メチル基、フェニル基、メトキシ基、ホルミル基、カルボキシ基、メトキシカルボキシ基、エトキシカルボキシ基、カルバモイル基、ニトリル基、ヒドロキシ基、又は-(CH=CH)n-CH=N-CH2-CH2-R1-N(R2)2で表される基(n、R1、及びR2は式(1)におけるn、R1、及びR2と同義)で置換されていていてもよい)であることがより好ましく、下記式(2)乃至(6)のいずれかで表される基であることがより好ましい。
【0039】
【0040】
(式中、*は、式(1)における連結部位を表す。R1、R2、及びnは、式(1)と同義である。なお、式(1)と式(5)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
式(1)において、nは、各々独立して、0又は1を表すが、貯蔵安定性に優れる点で、0であることが好ましい。
【0041】
式(1)で表される化合物において、上記の式(4)、(5)、及び(6)については、工業的製造に適するという点で、それぞれ、下記式(4’)、(5’)、及び(6’)であることが好ましい。
【0042】
【0043】
(式中、*は、式(1)における連結部位を表す。R1、R2、及びnは、式(1)と同義である。なお、式(1)と式(5’)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5’)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
本発明のポリオール系配合液組成物におけるポリオールについては、特に限定するものではないが、例えば、一般公知のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリマーポリオールが挙げられる。当該ポリオールについては、単独で用いることもできるし、混合物として用いることもできる。
【0044】
公知のポリエステルポリオールとしては、通常、二塩基酸(例えば、アジピン酸、フタル酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、リシノール酸等)とヒドロキシ化合物(例えば、グリコール等)の重合反応物が挙げられる。当該ポリエステルポリオールの具体例としては、特に限定するものではないが、例えば、DMT(テレフタル酸ジメチル)製造残査、又は無水フタル酸製造残査を出発原料とするポリエステルポリオール、ナイロン製造時の廃物、TMP(トリメチロールプロパン)製造時の廃物、ペンタエリスリトール製造時の廃物、又はフタル酸系ポリエステル製造時の廃物から誘導されるポリエステルポリオール等が挙げられる。
【0045】
公知のポリエーテルポリオールとしては、多価アルコール(例えば、グリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等)、脂肪族アミン化合物(例えば、アンモニア、エチレンジアミン、エタノールアミン等)、又は芳香族アミン化合物(例えば、トルエンジアミン、ジフェニルメタン-4、4’-ジアミン等)にエチレンオキシドやプロピレンオキシドを反応させて得られるものが例示できる。
【0046】
公知のポリマーポリオールとしては、上記のポリエーテルポリオールとエチレン性不飽和単量体(例えば、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等)をラジカル重合触媒の存在下に反応させて得られるものが挙げられる。
【0047】
これらのポリオールの内、硬質ポリウレタンフォームの製造に適するという点で、ポリエーテル又はポリエステルポリオールが好ましい。また、硬質ポリウレタンフォームの製造に適するという点で、当該ポリオールの平均官能価は4~8であることが好ましく、当該ポリオールの平均ヒドロキシル価は200~800mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは300~700mgKOH/gである。
【0048】
上記のポリオール系配合液組成物におけるヒドロハロオフレフィンについては、特に限定するものではないが、例えば、その地球温暖化係数(GWP;Global Warmng Potential)が、150以下であるものが好ましく、より好ましくは100以下であり、さらにより好ましくは75以下である。
【0049】
本発明に用いられるヒドロハロオレフィンについては、特に限定するものではないが、例えば、そのオゾン破壊係数(ODP;Ozone Depletion Potential)が、0.05以下であるものが好ましく、より好ましくは0.02以下であり、さらにより好ましくは約0である。
【0050】
本発明に用いられるヒドロハロオレフィンは、特に限定するものではないが、ポリウレタンフォームの断熱性能の観点から、好ましくは、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロブテン、ヒドロクロロプロペン、又はヒドロクロロブテンである。より好ましくは、トリフルオロプロペン、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロプロペン、クロロジフルオロプロペン、又はクロロテトラフルオロプロペンが挙げられる。より好ましくは、テトラフルオロプロペン、ペンタフルオロプロペン、又はクロロトリフルオロプロペンが挙げられる。より好ましくは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,1,1-トリフルオロプロペン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225zc)、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロブト-2-エン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yc)、1,1,1,2,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225yez)、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd)、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又は1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン(HFO-1336mzz)である。特に好ましくは、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HFCO-1233zd(E))である。なお、以上例示したヒドロハロオレフィンについては、単独で用いることもできるし、2種以上の混合物として用いることもできる。また、以上例示したヒドロハロオレフィンについては、全ての構造異性体、幾何異性体、及び立体異性体を包含するものである。
【0051】
本発明に使用される発泡剤としては、特に限定するものではないが、上記ヒドロハロオレフィンが挙げられる。その他に、発泡剤としては、水、ギ酸、イソシアネートと反応するとCO2を発生する有機酸、炭化水素、エーテル、ハロゲン化エーテル、ペンタフルオロブタン、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、トランス-1,2-ジクロロエチレン、ギ酸メチル、1-クロロ-1,2,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジフルオロメタン、ジフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1-ジフルオロエタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、又はシクロペンタンが挙げられる。なお、例示した発泡剤については、単独で用いることもできるし、複数を混合して用いることもできる。
【0052】
発泡剤は通常、ポリオール系配合液組成物中に、ポリオール系配合液組成物の重量の1重量%から50重量%存在することが好ましく、より好ましくは3重量%から30重量%であり、より好ましくは5重量%から20重量%の量である。
【0053】
発泡剤については、その全量が上記のヒドロハロオレフィンであっても、前記のヒドロハロオレフィンとその他の発泡剤の混合物であってもよい。ヒドロハロオレフィンをその他の発泡剤との混合物として用いる場合は、ヒドロハロオレフィンの含有量は、発泡剤の重量の5重量%から90重量%であることが好ましく、より好ましくは7重量%から80重量%であり、より好ましくは10重量%から70重量%である。逆に、ヒドロハロオレフィン以外の発泡剤の含有量は、発泡剤の重量の95重量%から10重量%であることが好ましく、より好ましくは93重量%から20重量%であり、より好ましくは90重量%から30重量%である。
【0054】
本発明のポリオール系配合液組成物において、式(1)で表される化合物の含有量は、ポリオールを100重量部としたとき、0.1~100重量部とすることが可能であるが、好ましくは0.1~50重量部であり、さらに好ましくは0.1~10重量部である。
【0055】
本発明のポリオール系配合液組成物において、ヒドロハロオレフィンの含有量は、ポリオールを100重量部としたとき、0.1~100重量部とすることが可能であるが、ポリウレタンフォームの断熱性能の観点から、好ましくは0.1~50重量部であり、より好ましくは0.1~20重量部である。
【0056】
本発明のポリオール系配合液組成物については、上記以外の成分を含んでいてもよく、特に限定するものではないが、例えば、4級アンモニウム化合物、有機金属触媒化合物、整泡剤、架橋剤、鎖延長剤、溶媒、着色剤、難燃剤、老化防止剤、その他公知の添加剤等を挙げることができる。
【0057】
上記の4級アンモニウム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、テトラメチルアンモニウムクロライド等のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物、水酸化テトラメチルアンモニウム塩等のテトラアルキルアンモニウム水酸化物、テトラメチルアンモニウム酢酸塩、テトラメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のテトラアルキルアンモニウム有機酸塩類、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムギ酸塩、2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム2-エチルヘキサン酸塩等のヒドロキシアルキルアンモニウム有機酸塩類が挙げられる。
【0058】
前記の有機金属触媒化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジクロライド、ジオクチル錫ジラウレート、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。
【0059】
前記の整泡剤としては、特に限定するものではないが、例えば、公知のシリコーン整泡剤を例示することができ、より具体的には例えば、オルガノシロキサン-ポリオキシアルキレン共重合体、又はシリコーン-グリース共重合体等の非イオン系界面活性剤を例示することできる。これらのシリコーン整泡剤については、単独で用いることもできるし、混合物として用いることもできる。
【0060】
上記の架橋剤、鎖延長剤、又は溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、グリセリン等の低分子量の多価アルコール類、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子量のアミンポリオール類、又はエチレンジアミン、キシリレンジアミン、メチレンビスオルソクロルアニリン等のポリアミン類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオール類等を挙げることができる。
【0061】
このように記載した添加剤の種類や、ポリオール系配合液組成物における含有量については、一般的に使用される範囲で使用することが好ましい。
【0062】
なお、第4級アンモニウム塩触媒の含有量については、特に限定するものではないが、ポリオールを100重量部としたとき、0.1~100重量部とすることができる。
【0063】
架橋剤、鎖延長剤、又は溶媒の含有量については、特に限定するものではないが、ポリオールを100重量部としたとき、70重量部以下であることが好ましい。
【0064】
本発明のポリオール系配合液組成物は、ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリウレタン樹脂を製造することができる。当該ポリウレタン樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、硬質ポリウレタンフォーム又はイソシアヌレート変性硬質ポリウレタンフォーム等が挙げられる。
【0065】
上記のポリイソシアネートとしては、公知のポリイソシアネートを例示することができ、より具体的には、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、TDI誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、MDI誘導体、ナフチレンジイソシアネート、又はキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート類、又はそれらとポリオールとの反応による遊離イソシアネート含有プレポリマー類、カルボジイミド変性等の変性ポリイソシアネート類、さらには、それらの混合ポリイソシアネート等が例示できる。
【0066】
トルエンジイソシアネート(TDI)としては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート又は2,6-トルエンジイソシアネートを例示することができ、これらについては単独で用いても混合物で用いてもよい。TDI誘導体としては、例えば、TDIとポリオールの反応生成物である末端イソシアネート基を有するTDIプレポリマーを挙げることができる。
【0067】
ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート又は4,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートを例示することができ、これらについては単独で用いても混合物で用いてもよい。MDI誘導体としては、例えば、MDIの重合体であるポリフェニルポリメチレンジイソシアネート、又はMDIとポリオールの反応生成物である末端イソシアネート基を有するMDIプレポリマーを挙げることができる。
【0068】
これらの内、硬質ポリウレタンフォームの製造に適する点で、MDI又はMDI誘導体が好ましく、これらは混合して使用しても差支えない。
【0069】
硬質ポリウレタンフォームは、通常、高度に架橋された独立気泡構造を有し、可逆変形不可能なフォームであり、軟質及び半硬質フォームとは全く異なる性質を有する。硬質フォームの物性は、特に限定されるものではないが、一般的には、密度が20~100kg/m3の範囲であることが好ましく、圧縮強度が0.5~10kgf/cm2(50~1000kPa)の範囲であることが好ましい。
【0070】
本発明のポリオール系配合液組成物を用いて製造されるポリウレタンフォーム製品は、種々の用途に使用できる。例えば、断熱建材、冷凍庫の断熱材、冷蔵庫の断熱材などの用途が挙げられる。
【0071】
上記した式(1)で表される化合物のうち、以下の式(1’)の範囲で限定される化合物は、本発明のポリオール系配合液組成物の貯蔵安定性を顕著に向上させることができる点で好ましい。
【0072】
【0073】
【0074】
(式(1’)中、Ar1は、上記式(2)乃至(6)のいずれかで表される基を表す。
式(2)乃至(6)中、*は、式(1’)における連結部位を表す。
式中、R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
Ar1が式(2)乃至(5)のいずれかの場合、nは、各々独立して、0又は1を表し、Ar1が式(6)の場合、nは、1を表す。
なお、式(1’)と式(5)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
式(1’)における各置換基(炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基、炭素数2~4のアルキル基、炭素数2~4のヒドロキシアルキル基、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環、又は-NR2R2で表される基等)については、式(1)における各置換基と同義であり、特に限定するものではないが、例えば、式(1)における各置換基で例示した基を例示することができる。
【0075】
式(1’)におけるAr1、R1、R2、及びn等の好ましい範囲については、式(1)において記載したAr1、R1、R2、及びn等の好ましい範囲と同じである。
【0076】
なお、工業的製造に適するという点で、上記の式(4)、(5)、及び(6)については、それぞれ、下記式(4’)、(5’)、及び(6’)であることが好ましい。
【0077】
【0078】
(式中、*は、式(1’)における連結部位を表す。
R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。
なお、式(1’)と式(5’)が結合する場合、R1、R2、及びnは、それぞれ同じであってもよいし、相異なっていてもよく、式(5’)についてはその総炭素数が20以内となるものに限る。)
以下、上記式(1’)で表される化合物の合成方法について説明する。
【0079】
上記式(1’)で表される化合物は、下記式(7)
【0080】
【0081】
【0082】
(式(7)中、Ar1は、上記式(2)、(3)、(4)、又は(6)で表される基を表す。
式(2)、(3)、(4)、及び(6)中、*は、式(7)における連結部位を表す。
Ar1が式(2)乃至(4)のいずれかの場合、nは、各々独立して、0又は1を表し、Ar1が式(6)の場合、nは、1を表す。)
で表されるアルデヒド化合物、又は下記式(8)
【0083】
【0084】
(式中、nは、各々独立して、0又は1を表す。)
で表されるアルデヒド化合物と、下記式(9)
【0085】
【0086】
(式中、R1は、炭素数2~6の直鎖、分岐、又は環状の2価アルキル基を表す。
R2は、各々独立して、炭素数2~4のアルキル基、又は炭素数2~4のヒドロキシアルキル基を表す。2つのR2は、互いに結合して、少なくとも窒素原子を含むヘテロ環を形成していてもよい。)
で表されるアミン化合物を反応させることによって製造することができる。
【0087】
式(7)で示されるアルデヒド化合物としては、特に限定するものではないが、具体的には、シリンガアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、4-アミルオキシベンズアルデヒド、p-トルアルデヒド、ベンズアルデヒド、ペリルアルデヒド、サリチルアルデヒド、4-エチルベンズアルデヒド、2,4-ジメチルベンズアルデヒド、バニリン、o-アニスアルデヒド、p-アニスアルデヒド、m-アニスアルデヒド、クミンアルデヒド、4-イソブチルベンズアルデヒド及びシンナムアルデヒドが挙げられる。入手容易性の観点から、これらのうち、サリチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、バニリン、p-アニスアルデヒド、及びシンナムアルデヒドが好ましく、特にサリチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒドがより好ましい。
【0088】
すなわち、式(7)における式(4)及び(6)については、それぞれ、下記式(4’)及び(6’)であることが好ましい。
【0089】
【0090】
(式中、*は、式(7)における連結部位を表す。)
式(8)で示されるアルデヒド化合物としては、特に限定するものではないが、具体的には、オルトフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド及びイソフタルアルデヒドが挙げられる。入手容易性の観点から、これらのうち、テレフタルアルデヒド、イソフタルアルデヒドが好ましく、イソフタルアルデヒドがより好ましい。
【0091】
すなわち、式(8)で示されるアルデヒド化合物については、下記式(8’)で示されるアルデヒド化合物であることが好ましい。
【0092】
【0093】
(式中、nは、各々独立して、0又は1を表す。)
式(9)で示されるアミン化合物としては、特に限定するものではないが、ヒドロハロオレフィンを含むポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液の貯蔵安定性向上の観点から、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、及びN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンが好ましい。さらに、触媒活性の大きさの観点から、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパンが特に好ましい。
【0094】
式(7)又は式(8)で示されるアルデヒド化合物は、文献既知の方法にて容易に製造することができる。例えば、対応アルコールを酸化反応する方法及び、対応するエステル、アミド、ニトリル化合物を還元反応する方法等が挙げられる。
【0095】
式(9)で示されるアミン化合物は、文献既知の方法にて容易に製造することができる。例えば、対応するニトリル化合物をニッケル触媒又はコバルト触媒を用いて接触水素化反応する方法等が挙げられる。
【0096】
前記のアルデヒド化合物及び前記のアミン化合物を反応させる時、それらの比率としては、特に限定するものではないが、好ましくは[ホルミル基]/[第1級アミノ基]=9/1~1/9(モル比)となる範囲であり、特に好ましくは[ホルミル基]/[第1級アミノ基]=5/1~1/5(モル比)となる範囲であり、更に好ましくは[ホルミル基]/[第1級アミノ基]=2/1~1/2(モル比)となる範囲である。
【0097】
式(1’)で表される化合物については、式(7)又は(8)で表されるアルデヒド化合物と式(9)で表されるアミン化合物を脱水縮合させることによって製造することができる。
【0098】
当該脱水縮合については、上記のアミン化合物とアルデヒド化合物を混合し、加熱することによって反応を進行させることができる。
【0099】
当該反応については、無溶媒で行うこともできるし、溶媒中で行うこともできる。溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグライム、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン、アセトニトリル、2-ピロリドン、メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0100】
上記の反応については、触媒存在下で行うこともできる。触媒としては、特に限定するものではないが、酸触媒が好ましく、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、ホウ酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、ピロリジン、又はオルトチタン酸テトラエチル等が挙げられる。触媒添加量としては、特に限定するものではないが、アミン化合物 100重量部に対して0.01~5重量部の範囲であることが好ましく、0.2~2重量部の範囲であることがより好ましい。
【0101】
上記の反応については、反応促進の為、脱水操作の工程を行ってもよい。この際、脱水剤を添加して行うこともできる。当該脱水剤としては、特に限定するものではないが、モレキュラーシーブ、又は硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0102】
上記の反応については、液性は特に限定するものではないが、中性から弱酸性が好ましく、pH2~8がより好ましく、pH3~6がより好ましい。
【0103】
上記の反応については、連続式で行うこともできるし、バッチ式で行うこともできる。
【0104】
上記の反応については、圧力の制限は無く、減圧下でも、大気圧下でも、加圧下でも行うことができる。工業的には、加圧下であることが好ましく、特に限定するものではないが、例えば、0~10MPaG(メガパスカルゲージ)の範囲であることが好ましく、0~2MPaGの範囲であることがより好ましい。
【0105】
上記の反応については、温度の制限は無く、任意の温度で行うことができる。当該温度については、特に限定するものではないが、例えば、90~150℃の範囲であることが好ましく、100~130℃であることが好ましい。
【実施例】
【0106】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0107】
なお、本実施例で用いた分析機器及び測定方法を以下に列記する。
【0108】
[NMR測定]
測定装置:バリアン社製 Gemini200
実施例1.
100ccのナスフラスコにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン(東京化成工業社製) 13.0g(0.10mol)を仕込み、窒素置換後、シンナムアルデヒド(東京化成工業社製) 13.2g(0.10mol)を攪拌しながら1時間で滴下した。その後、室温で24時間熟成反応した後、反応液26gを得た。
【0109】
反応液の1H-NMR分析データは、以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):1.03(t、6H)、1.83(tt、2H)、2.48-2.55(m、6H)、3.54(t、2H)、6.90-6.92(m、2H)、7.31-7.38(m、3H)、7.46-7.49(m、2H)、8.04(d、1H)[ppm]。
【0110】
上記の1H‐NMR分析データは、反応液の下記構造を支持している。本化合物を(A-1)と称する。
【0111】
【0112】
実施例2.
シンナムアルデヒド 13.2g(0.10mol)に代えて、バニリン(東京化成工業社製) 15.2g(0.10mol)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、反応液を28g得た。
【0113】
反応液の1H-NMR分析データは、以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):1.03(t、6H)、1.83(dd、2H)、2.52-2.60(m、6H)、3.57(t、2H)、3.88(s、3H)、4.46(br、1H)、6.87(d、1H)、7.05(dd、1H)、7.40(s、1H)、8.15(s、1H)[ppm]
上記の1H-NMR分析データは、反応液の下記構造を支持している。本化合物を(A-2)と称する。
【0114】
【0115】
実施例3.
シンナムアルデヒド 13.2g(0.10mol)に代えて、イソフタルアルデヒド(東京化成工業社製) 13.4g(0.10mol)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、反応液を26g得た。
【0116】
反応液の1H-NMR分析データは、以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):1.05(m、6H)、1.84-1.95(m、2H)、2.55-2.62(m、6H)、3.68(m、2H)、7.45(t、0.18H)、7.58(t、0.55H)、7.74(t、0.14H)、7.80(d、0.39H)、7.94(d、0.52H)、8.00-8.03(m、0.73H)、8.16(d、0.28H)、8.22(s、0.55H)、8.33(s、0.37H)、8.38(s、0.71H)、10.07(s、0.51H)、10.12(0.25H)[ppm]
上記の1H‐NMR分析データは、反応液の下記構造を支持している。本化合物組成物を(A-3)と称する。
【0117】
【0118】
製造例1.
シンナムアルデヒド 13.2g(0.10mol)に代えて、サリチルアルデヒド(東京化成工業社製) 12.2g(0.10mol)を使用した以外は、実施例1と同様に操作を行い、反応液25gを得た。
【0119】
反応液の1H-NMR分析データは、以下の通りである。
1H-NMR(CDCl3):1.02(t、6H)、1.85(tt、2H)、2.50-2.54(m、6H)、3.63(t、2H)、6.86(dd、1H)、6.95(d、1H)、7.23(d、1H)、7.29(dd、1H)、8.35(s、1H)[ppm]
上記の1H-NMR分析データは、反応液の下記構造を支持している。本化合物を(A-4)と称する。
【0120】
【0121】
以下、ポリウレタンフォーム製造及び評価結果について、説明する。本発明に関係する原材料であって、上記の化合物以外のものとしては下記のものを用いた。
【0122】
ポリオールA: マキシモールRDK-133(芳香族ポリエステルポリオール、OH価=319mgKOH/g、川崎化成工業株式会社製)
ポリオールB: DKポリオール3776(マンニッヒ系ポリエーテルポリオール、OH価=349mgKOH/g、第一工業製薬株式会社製)
難燃剤: TMCPP(含ハロゲンリン酸エステル、大八化学工業株式会社製)
整泡剤: NIAX SILICONE L-5420(シリコーン整泡剤、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
発泡剤A: ソルスティスLBA(1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、日本ハネウェル株式会社製)
発泡剤B: 水
ポリイソシアネート液: ポリメリックMDI(東ソー株式会社製ミリオネートMR200,NCO含量=31.0%)
実施例4.
本発明のポリウレタンフォーム製造用触媒を用い、硬質ポリウレタンフォームを製造した。
【0123】
ポリオールA 50重量部、ポリオールB 50重量部、難燃剤 20重量部、整泡剤 1.0重量部、発泡剤A 40重量部、及び発泡剤B 1.0重量部を、秤量し、十分に攪拌混合してポリオール系配合液組成物を調整した。次いで、調整したポリオール系配合液組成物 48.6gを300mlポリエチレンカップに取り、更に触媒として上記の化合物(A-1) 6.58重量部を添加して撹拌混合し、15℃に温度調整した。なお、前記触媒添加量は、反応性が下記のゲルタイムで約30秒となるように調整したものである。15℃に温度調整したポリイソシアネート液をイソシアネートインデックス〔[イソシアネート基]/[OH基](モル比)×100)〕が110となる量だけ前記の原料配合液のカップの中に入れ、次いで、素早く攪拌機にて7000rpmで3秒間攪拌した。混合攪拌した混合液を23℃に温度調節した1Lポリエチレンカップに移し発泡中の反応性を以下に示す方法で測定した。また、得られた硬質ポリウレタンフォームについて、外観を確認し、セルの状態を記録した。
【0124】
[反応性の測定]
・クリームタイム: 泡化反応が進行し、発泡が開始する時間を目視にて測定
・ゲルタイム: 反応が進行し液状物質より、樹脂状物質に変わる時間を目視にて測定
[ポリウレタンフォームの成型状態]
○: 外観及び内部が全て正常
×: 外観又は内部に異常な部分有り。
【0125】
以下に異常を示す用語を説明する。
【0126】
セル荒れ: 気泡が合一して、粗大化していること
次に、上記のポリオール系配合組成物を密閉容器に入れて50℃で7日間又は14日間加温した後、上記と同じ発泡反応を行い、[反応性の測定]及び[ポリウレタンフォームの成型状態]の評価を行った。
【0127】
実施例5.
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりに上記の化合物(A-2) 7.09重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0128】
実施例6.
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりに上記の化合物組成物(A-3) 6.63重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0129】
実施例7.
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりに上記の化合物(A-4) 6.34重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0130】
比較例1.
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりにN,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン/ギ酸 11.1重量部/3.9重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0131】
比較例2.
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりにN,N-ジシクロヘキシルメチルアミン 20.0重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0132】
比較例3.
特許文献3(特表2007-516339号公報)の実施例2と同様の操作を行って、下記式で表される、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンとサリチルアルデヒドの付加体からなるアミン触媒(以下、化合物(A-5)と称する)を得た。
【0133】
【0134】
化合物(A-1) 6.58重量部の代わりに脱水乾燥した化合物(A-5) 3.24重量部を用いた以外は、実施例4と同様に実験操作を行い、評価データを取得した。
【0135】
これらの結果を表1~4に示す。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
表1~4より明らかなように、アルデヒド化合物とアミン化合物を組み合わせて調製した本発明のアミン触媒又はポリウレタンフォーム製造用のポリオール系配合液組成物を用いた実施例4~7では、初期発泡性(クリームタイム)が早い特長があり、貯蔵後の反応性低下が小さいという特長を示した。また、得られた硬質ポリウレタンフォームの外観が良好であった。
【0141】
比較例1は、従来公知の有機酸含有アミン触媒を含むポリオール系配合液組成物の例であるが、貯蔵後の反応性低下が大きく、尚且つ得られた硬質ポリウレタンフォームの外観が不良で、セル荒れが大きく表れた。
【0142】
比較例2は、従来公知の立体障害アミン触媒を含むポリオール系配合液組成物の例であるが、初期発泡性(クリームタイム)が遅かった。
【0143】
比較例3は、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパンとサリチルアルデヒドの付加体からなるアミン触媒を含むポリオール系配合液組成物の例であるが、貯蔵後の反応性低下が大きく、尚且つ得られた硬質ポリウレタンフォームの外観が不良で、セル荒れが大きく表れた。ジメチルアミノ基による影響が示唆される。