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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】消臭性組成物及び消臭性構造物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
A61L9/01 K
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020081947
(22)【出願日】2020-05-07
(65)【公開番号】P2021045528
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2019165177
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹本 有光
(72)【発明者】
【氏名】薛 剣飛
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】坪井 裕基
【審査官】太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-253797(JP,A)
【文献】特開2018-108360(JP,A)
【文献】特開2001-096149(JP,A)
【文献】特開2010-253409(JP,A)
【文献】特開2018-187405(JP,A)
【文献】特開2016-146908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00 - 9/22
B01J 20/00 - 20/28
B01J 20/30 - 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体、及びポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンからなる群から選択される少なくとも1種以上の水溶性ポリマーが基材に担持されてなることを特徴とする消臭性構造物であって、
構造物の基材が、木綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維及びこれらの混合繊維からなる織物、編物、不織布、糸、ロープ、紐状の繊維状物である消臭性構造物。
【化1】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。複数のRは同一又は相異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体が、Rが水素原子であり、nが1~4の整数であるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体を1種以上含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の消臭性構造物。
【請求項3】
シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする請求項1記載の消臭性構造物。
【請求項4】
シランカップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、及びアクリル基からなる群から選択される少なくとも1種以上の官能基を有することを特徴とする請求項に記載の消臭性構造物。
【請求項5】
一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体、及びポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミンからなる群から選択される少なくとも1種以上の水溶性ポリマーを含有し、シランカップリング剤をさらに含有してもよい消臭性組成物を、木綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維及びこれらの混合繊維からなる織物、編物、不織布、糸、ロープ、紐状の繊維状物からなる、基材に担持することを特徴とする請求項1~4に記載の消臭性構造物の製造方法。
【請求項6】
請求項1~4に記載の消臭性構造物を使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性組成物及び消臭性構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等のアルデヒド類は、生活環境における代表的な臭気物質であり、臭い閾値が極めて低いために低濃度でも不快臭の原因となる。これらのアルデヒド類は屋内や自動車内において合成樹脂、合板、タバコの煙等から発生し、シックハウス症候群やシックカー症候群の原因となることが知られている。また、これらのアルデヒド類は発癌性も疑われており、人が日常的にこれらに曝されると、健康を害するリスクがある。そのため、厚生労働省により室内濃度指針値として、アセトアルデヒドは0.03ppm、ホルムアルデヒドは0.08ppmと規定されている。したがって、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に除去する手段が求められている。
【0003】
アセトアルデヒドやホルムアルデヒド等の低級アルデヒドは沸点が低いため、消臭剤として汎用されるシリカゲルや活性炭等の無機系多孔質材では捕捉効率が低い。そこで、ヒドラジン誘導体、アミン、アミノ酸、又は尿素誘導体等からなるアルデヒド捕捉剤とアルデヒド類を化学反応させることによりアルデヒド類を捕捉する方法が開示されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
しかしながら、これら特許文献に記載の方法は、捕捉効率が必ずしも十分ではなく、また、樹脂や繊維をはじめとする基材へ塗布した捕捉剤が、水洗や洗濯によって溶出し、性能が低下するなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-358536号公報
【文献】特開平11-4879号公報
【文献】特開2012-120708公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、水洗や洗濯をした場合でも、優れたアルデヒド捕捉効果を示す消臭性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の消臭性組成物が、耐水性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の実施形態を含むものである。
【0009】
[1]下記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩、及び水溶性ポリマーを含有することを特徴とする消臭性組成物。
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。nは1~6の整数を表す。複数のRは同一又は相異なっていてもよい。)
[2]前記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体が、Rが水素原子であり、nが1~4の整数であるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体を1種以上含有するものであることを特徴とする上記[1]に記載の消臭性組成物。
【0012】
[3]水溶性ポリマーが、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコール、及びその変性物からなる群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の消臭性組成物。
【0013】
[4]シランカップリング剤をさらに含有することを特徴とする上記[1]~[3]に記載の消臭性組成物。
【0014】
[5]シランカップリング剤が、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、及びアクリル基からなる群から選択される少なくとも1種以上の官能基を有することを特徴とする上記[4]に記載の消臭性組成物。
【0015】
[6]上記[1]~[5]に記載の消臭性組成物を使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【0016】
[7]上記[1]~[5]に記載の消臭性組成物を含むことを特徴とする消臭性構造物。
【0017】
[8]構造物の基材が、合成繊維、半合成繊維、天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維及びこれらの混合繊維からなる織物、編物、不織布、糸、ロープ、紐状の繊維状物;樹脂、天然ゴム、合成ゴムからなるシート状物;樹脂、天然ゴム、合成ゴムからなるスポンジ状物;又は木材、合板、石膏からなるボード状物であることを特徴とする上記[7]に記載の消臭性構造物。
【0018】
[9]構造物の基材が、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、フッ素系繊維、アラミド系繊維、サルフォン系繊維等の合成繊維、レーヨン、アセテート繊維等の半合成繊維、木綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維及びこれらの混合繊維からなる織物、編物、不織布、糸、ロープ、紐状の繊維状物;ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴムからなるシート状物;ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴムからなるスポンジ状物;又は木材、合板、石膏からなるボード状物であることを特徴とする上記[7]又は[8]に記載の消臭性構造物。
【0019】
[10]上記[1]~[5]に記載の消臭性組成物を1種以上の基材に担持することを特徴とする上記[7]~[9]に記載の消臭性構造物の製造方法。
【0020】
[11]上記[7]~[9]に記載の消臭性構造物を使用することを特徴とするアルデヒドの除去方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の消臭性組成物は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉することができる。その結果、人体に有害なアルデヒド類の低減に有効であり、生活環境改善の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明の消臭性組成物は、上記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩、及び水溶性ポリマーを含有することを特徴とする。
【0024】
上記一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体において、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等を例示することができる。nは1~6の整数を表す。アルデヒド捕捉能が高い点で、Rは水素原子が好ましく、nは1~4の整数が好ましい。
【0025】
O-置換ヒドロキシルアミン誘導体(1)は、一部又は全てが無機酸又は有機酸との化学的に許容される塩となっていてもよい。塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、過塩素酸塩、ケイ酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、安息香酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられ、安価である点で無機酸塩が好ましく、塩酸塩がさらに好ましい。
【0026】
O-置換ヒドロキシルアミン誘導体(1)は、分子内にカルボキシ基を有するため、当該カルボキシ基が分子内のアルコキシアミノ基と分子内塩を形成してもよい。また、当該カルボキシ基の一部又は全てがカルボン酸塩となっていてもよい。カルボン酸塩の種類としては、特に限定されないが、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0027】
上記の消臭性組成物中の水溶性ポリマーは、特に限定するものではないが、例えば、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド、ポリジアリルアミン、ポリアミジン、ポリビニルイミダゾリン、ポリアクリレート等のカチオン性ポリマー、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリチオフェン等のアニオン性ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等の非イオン性ポリマー、でんぷん、キトサン、ポリフェノール等の天然系ポリマーが挙げられる。これらの中でも被着体との密着性及び耐水性に優れることから、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0028】
水溶性ポリマーの変性物としては、上記カチオン性ポリマーの塩酸塩や硫酸塩、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体などが挙げられる。被着体との密着性の点で、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体が好ましい。
【0029】
上記の消臭性組成物は、シランカップリング剤を含むことができる。シランカップリング剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を含有するシランカップリング剤、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシ基を含有するシランカップリング剤、p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル基を含有するシランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のメタクリル基を含有するシランカップリング剤、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基を含有するシランカップリング剤、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を含有するシランカップリング剤、3-ウレイドプロピルトリアルコシシシラン等のウレイド基を含有するシランカップリング剤、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を含有するシランカップリング剤、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート基を含有するシランカップリング剤、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基を含有するシランカップリング剤が挙げられる。これらの中でも、被着体及び消臭剤との密着性に優れることから、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、ビニル基、及びアクリル基を含有するシランカップリング剤が好ましい。
【0030】
本発明の消臭性組成物は、溶媒を含むことができ、特に限定するものではないが、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの中でも、消臭性に優れることから水が好ましい。
【0031】
本発明の消臭性組成物を得る方法としては、公知の方法であればいかなる方法でも用いることができ、特に限定するものではないが、例えば、溶媒中に所定量のO-置換ヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩、水溶性ポリマー、及びシランカップリング剤を加え、撹拌して溶解することにより、消臭性組成物を得る方法等を挙げることができる。
【0032】
本発明の消臭性組成物の使用方法としては、特に限定するものではないが、例えば、基材へ担持、塗布、スプレーして使用する方法、臭気発生源にスプレーする方法等を挙げることができる。
【0033】
本発明の消臭性組成物を基材へ担持することにより、消臭性構造物とすることができる。本発明の消臭性構造物の基材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、フッ素系繊維、アラミド系繊維、サルフォン系繊維等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の半合成繊維、木綿、羊毛、絹、麻等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等及びこれらの混合繊維からなる織物、編物、不織布、糸、ロープ、紐等の繊維状物、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等からなるシート状物やスポンジ状物、又は木材、合板、石膏等からなるボード状物等が挙げられる。
【0034】
本発明の消臭性構造物は、目的、用途に応じて任意の用途で使用することができる。用途は特に限定されないが、例えば、衣類用、カーテン用、カーペット用、壁装材用、自動車内装材用、家具用等の用途で使用することができる。
【0035】
本発明の消臭性構造物の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば、一般式(1)で表されるO-置換ヒドロキシルアミン誘導体又はその化学的に許容される塩、水溶性ポリマー、及びシランカップリング剤を含む消臭性組成物を基材に担持する方法が挙げられる。
【0036】
消臭性組成物を基材に担持する方法としては、特に限定されないが、例えば、上記した基材へ消臭性組成物を塗布する方法、上記した基材を消臭性組成物へ浸す方法等が挙げられる。
【0037】
基材への消臭性組成物の担持量は、目的に応じて任意に調節可能であり、特に限定するものではないが、消臭性組成物が0.1~10g/mの範囲が好ましく、0.5~5g/mの範囲がさらに好ましい。
【実施例
【0038】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。なお、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0039】
本実施例で用いた分析機器、評価方法を以下に列記する。
【0040】
<アセトアルデヒド捕捉試験>
消臭性組成物を塗布したさらし布(縦10cm、横10cm)を5Lのテドラーバッグに封入した後、アセトアルデヒド濃度が約14ppmの窒素ガス3Lを加えた。室温で2時間静置後、テドラーバック内のガスを2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を担持したカートリッジ(富士フィルム和光純薬株式会社製、プレセップ-C DNPH)に吸着させた。このカートリッジをアセトニトリルで処理し、DNPH-アルデヒド縮合体を溶出させた。続いて、溶出液を液体クロマトグラフ(アジレント・テクノロジー社製、Agilent 1220 Infinity LC)を用いてアセトアルデヒド濃度を定量した。さらに、アルデヒド捕捉率を下式から算出した。
【0041】
アセトアルデヒド捕捉率[%]=[(アセトアルデヒド初濃度-残存アセトアルデヒド濃度)÷アセトアルデヒド初濃度]×100
実施例1
ポリエチレン製容器に、(アミノオキシ)酢酸0.75g、ポリエチレンイミン(A-1、日本触媒株式会社製、P-1000、分子量7万、30%水溶液)2.50g、蒸留水96.75gを混合し、消臭性組成物を得た。
【0042】
得られた消臭性組成物をさらし布(吉田織物製、綿100%)へ塗布し、熱風式乾燥機(アドバンテック株式会社製、DRJ433DA)を用いて、80℃で5分間乾燥することにより、消臭性組成物を約0.75g/m塗布したさらし布を得た。
【0043】
次いで、得られたさらし布を公知の洗濯耐久性の試験法(JIS L 0217 103法)に準拠して、洗濯を5回繰り返すことにより、さらし布に洗濯を施した。
【0044】
続いて、洗濯前後のさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例2
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリエチレンイミン(A-2、日本触媒株式会社製、HM-2000、分子量3万)0.75gを用い、蒸留水98.50gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0046】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表1に示す。
【0047】
比較例1
ポリエチレンイミン(A-1)を添加せず、蒸留水99.25gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0048】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
(アミノオキシ)酢酸を添加せず、蒸留水99.25gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0050】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例3
(アミノオキシ)酢酸0.75g、ポリエチレンイミン(A-1)2.50g、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(エポキシ系、信越化学工業株式会社製、KBM-402)0.75g、蒸留水96.00gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0053】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表2に示す。
【0054】
実施例4
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリエチレンイミン(A-2)0.75gを用い、蒸留水97.75gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0055】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表2に示す。
【0056】
比較例3
(アミノオキシ)酢酸及びポリエチレンイミン(A-1)を添加せず、蒸留水99.25gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0057】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表2に示す。
【0058】
比較例4
ポリエチレンイミン(A-1)を添加せず、蒸留水98.50gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0059】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例5
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリエチレンイミン(A-3、BASF社製、Lupasol-P、分子量75万、50%水溶液)1.5gを用い、蒸留水97.75gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0062】
実施例6
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体(B-1、三菱ケミカル株式会社製、PVAM-0595B、分子量6万、12%水溶液)6.25gを用い、蒸留水93gとした以外は、実施例1と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0063】
実施例7
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリエチレンイミン(A-3)1.5gを用い、蒸留水97.00gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0064】
実施例8
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体(B-1)6.25gを用い、蒸留水92.25gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0065】
実施例9
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体(B-2、三菱ケミカル株式会社製、PVAM-0570B、分子量10万、23%水溶液)3.26gを用い、蒸留水95.24gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0066】
実施例10
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリアリルアミン(C-1、ニットーボーメディカル株式会社製、PAA-15、分子量1.5万、15%水溶液)5.0gを用い、蒸留水93.5gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0067】
実施例11
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリアリルアミン(C-2、ニットーボーメディカル株式会社製、PAA-50、分子量50万、10%水溶液)7.5gを用い、蒸留水91.0gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0068】
実施例12
ポリエチレンイミン(A-1)の代わりに、ポリビニルアミン・N-ビニルホルムアミド共重合体(B-2)3.26g、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(エポキシ系)の代わりに、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(エポキシ系D-2、信越化学工業株式会社製、KBM-403)0.75gを用い、蒸留水95.24gとした以外は、実施例3と同様の方法で消臭性組成物を得た。
【0069】
得られた消臭性組成物をさらし布に塗布、洗濯を施し、得られたさらし布を用いて、アセトアルデヒド捕捉試験を実施した。結果を表3、表4に示す。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の消臭性組成物は、アルデヒド類を速やかに且つ持続的に捕捉することができる。その結果、人体に有害なアルデヒド類の低減に有効であり、生活環境改善の効果を奏する。