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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/01 20060101AFI20240625BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G03G15/01 114
G03G21/00 370
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020116364
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014164
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】村上 昌俊
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/01
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単色の顕色材により形成される各色画像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置であって、
前記各色画像の重ね合わせ処理に用いられる無端状回転体の少なくとも一つである転写ベルトにおいて前記各色画像の重ね合わせを行うときに生じうる当該各色画像の位置ずれを補正する補正動作に用いられる補正値を算出するための補正用パターンを、前記各色画像の搬送方向に沿うように、前記転写ベルトに形成するパターン形成手段と、
前記転写ベルトに形成された前記補正用パターンを検出するパターン検出手段と、
前記補正用パターンの検出結果に基づいて前記補正値を算出する補正値算出手段と、を有し、
前記パターン形成手段が形成する前記補正用パターンは、前記各色画像の搬送方向である副走査方向において交互に繰り返して形成される二つの組パターンを含み、
当該二つの組パターンの内の第一組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第二パターンと、を有し、
当該二つの組パターンの内の第二組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第三パターンと、を有し、
前記第一パターンは、前記搬送方向に対する直交方向に伸びる直線により形成される直線パターンであり、
前記第二パターンは、前記直交方向に伸びる直線であって、前記第一パターンとは異なる色で形成される直線パターンであり、
前記第三パターンは、搬送方向及び前記直交方向に対し傾斜する直線であって、前記第一パターンとは異なる色の直線パターンであり、
前記第一組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔と、前記第二組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔は、異なる間隔であり、
前記第一組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔が、前記第二組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔よりも短い、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
外部から入力される画像情報に基づいて発光が制御される光源からの光により静電潜像が形成される像担持体を有し、前記無端状回転体に前記像担持体を含む、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記像担持体の表面を帯電させる帯電ローラを有し、前記無端状回転体に前記帯電ローラを含む、
請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記無端状回転体には、前記転写ベルトを含む各無端状回転体の回転駆動のための動力を伝達する動力伝達手段を含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記パターン形成手段が前記位置ずれの生じていない理想状態において、前記パターン形成手段が前記補正用パターンを形成した場合、当該補正用パターンを構成する第一組パターンに含まれる第二パターンと、当該補正用パターンを構成する第二組パターンに含まれる第三パターンの形成位置は、二つの前記第一パターンの中央位置になる、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記パターン形成手段は、前記第一組パターンと前記第二組パターンのそれぞれに含まれる前記第一パターンをいずれも同色の前記顕色材により形成する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記パターン形成手段は、前記第一パターンの形成に基準色を用い、
前記パターン検出手段は、前記基準色により形成された前記第一パターンを、他の色で形成される前記各色画像の位置合わせの基準位置として、前記補正値を算出する、
請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記基準色は黒色とする、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記パターン形成手段が前記位置ずれの生じていない理想状態で形成する前記補正用パターンは、繰り返し形成される前記組パターンの形成間隔が等間隔である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記パターン形成手段は、前記第一組パターンに含まれる前記第二パターンと前記第一パターンを異なる色で形成する、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記パターン形成手段は、前記補正動作の1サイクルにおいて、前記補正用パターンに含まれる前記第二パターンを前記カラー画像に用いられる前記各色画像に対応する全色を用いて形成する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記パターン形成手段は、前記補正動作の1サイクルにおいて、前記補正用パターンに含まれる前記第二パターン及び前記第三パターンの色を二色以上用いるとき、前記各色画像を形成する画像形成手段の前記搬送方向の上流側からの並び順に合わせて、前記第二パターン及び前記第三パターンの色の並び順を決定する、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記第二パターンが前記組パターンに含まれる補正用パターンの場合、前記補正動作の1サイクルにおいて前記パターン形成手段が形成する前記補正用パターンに含まれる第二パターン及び第三パターンが二色以上あるとき、前記第一組パターンと、前記搬送方向の前後に配置される前記第二組パターンとのそれぞれに含まれる前記第二パターンの色が互いに異なる二組の組パターンの間に、前記第一パターンと同色である前記第三パターンが配置される、請求項11又は12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
単色の顕色材により形成される各色画像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成方法であって、
前記各色画像の重ね合わせ処理に用いられる無端状回転体の少なくとも一つである転写ベルトにおいて前記各色画像の重ね合わせを行うときに生じうる当該各色画像の位置ずれを補正する補正動作に用いられる補正値を算出するための補正用パターンを、前記各色画像の搬送方向に沿うように、前記転写ベルトに形成し、
前記転写ベルトに形成された前記補正用パターンを検出し、
前記補正用パターンの検出結果に基づいて前記補正値を算出して前記補正動作を実行するとき、
前記補正用パターンの形成において、
前記補正用パターンは、前記各色画像の搬送方向である副走査方向において交互に繰り返して形成される二つの組パターンを含み、
当該二つの組パターンの内の第一組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第二パターンと、を有し、
当該二つの組パターンの内の第二組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第三パターンと、を有し、
前記第一パターンは、前記搬送方向に対する直交方向に伸びる直線により形成される直線パターンであり、
前記第二パターンは、前記直交方向に伸びる直線であって、前記第一パターンとは異なる色で形成される直線パターンであり、
前記第三パターンは、搬送方向及び前記直交方向に対し傾斜する直線であって、前記第一パターンとは異なる色の直線パターンであり、
前記第一組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔と、前記第二組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔は、異なる間隔であり、
前記第一組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔が、前記第二組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔よりも短い、
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、タンデム式と呼ばれるものが知られている。タンデム式のカラー画像形成装置は、複数の異なる色の顕色材(トナー)に対応する感光体に対して光書込制御技術を用いて静電潜像を形成し、静電戦象に対して各色の顕色材を付着させて現像して各色画像を形成する。そして、転写体に各色画像を重ね合わせるように転写することで所定のカラー画像を形成させる。
【0003】
タンデム式のカラー画像形成装置において、各色画像の重ね合わせ位置がずれると、完成させるカラー画像に「色ずれ」が生ずる。したがって、高解像度かつ高品質の画像形成を要求される昨今においては、各色画像の重ね合わせ位置のずれ、すなわち「位置ずれ」を抑制するにあたり、高い精度での抑制が求められている。
【0004】
位置ずれの発生原因は多々あるが、主なものは、各色画像の転写プロセスを含む画像形成プロセスを実行するために動作する物理的な構成にある。すなわち、各色画像を転写して重ね合わせる中間転写ベルトなどにおける動作のゆらぎ、例えば回転駆動の速度変動によって位置ずれが発生すると考えられる。なお、転写プロセスを含む画像形成プロセスを実行するにあたり、多数の無端状の回転体が用いられる。例えば、感光体や感光体を帯電させる帯電ローラ、転写体としての中間転写ベルト、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像を記録媒体に転写させる転写ローラ、及びこれらを回転させるための駆動機構に用いられるギヤ等である。これら多数の無端状回転体の回転動作(回転タイミングや回転速度)が、いずれも理想的に調整された状態であって、理想状態が維持され続けられるならば位置ずれの発生は抑制可能と考えられるが、現実的には、各無端状回転体の回転動作には「ゆらぎ」があり回転速度は周期的に変動する。したがって、無端状回転体の速度変動による位置ずれの発生を前提として、これを抑制する技術が必要となる。
【0005】
そこで、従来から、位置ずれを抑制する目的で、特定の画像パターンから成る検知パターンを、画像形成プロセスを実行して転写体上に形成し、この検知パターンをセンサが検知した結果に基づいて、実際の各色画像を転写させる動作の制御を補正する技術が用いられてきた。この場合、中間転写ベルトに対して、周期的に生ずる速度変動の影響を打ち消せるように全長に渡って検知パターンを形成し、その検出結果を平均化して補正値を算出する。すなわち1周期分が最長となる中間転写ベルトに形成された検知パターンを全て検出してから補正値を算出するので、補正値の算出に時間がかかり、位置ずれの抑制制御において効率の面で課題を有していた。
【0006】
そこで、本願出願人は、検知パターンを繰り返して形成する間隔を最適化することで検知パターンの形成長を短くしても、周期的な速度変動の影響を抑制できる技術を開発し、これを開示した(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の技術によれば、上記の従来例のように中間転写ベルトの1周期分に渡って検知パターンを形成することなく、検知パターンを「横線斜線(横線)」の組と、「斜線(横線)横線」の同一の組を近傍に(連続的に)形成することで、検知パターンの全長を短くしても、位置ずれを精度よく補正できる。この場合、主走査方向の補正のために「横線斜線」のパターンを検出する必要がある。
【0008】
特許文献1に開示された技術であれば、従来例よりも効率的に位置ずれの抑制を図ることができるが近傍の同一の組の検知パターンを形成しなければならないという制約を含む。この制約があっても、副走査方向の補正精度の向上の観点に着目した場合は、横線パターンを連続して形成すればよい。しかし、この制約により、斜線パターンの形成位置が離れることで主走査方向の補正精度が低下する、影響が生ずる。
【0009】
したがって、特許文献1において開示されている検知パターンの形成の仕方を用いても、一度の位置ずれ補正動作で主走査方向及び副走査方向の書き出し位置のずれ(レジストずれ)の両方を適切に補正するには課題がある。
【0010】
本発明は、位置ずれ補正値の算出時に生じる無端状の構成要素(回転体)の周期的な速度変動の影響を効果的に抑制し、かつ一度の補正動作で高い位置合わせ精度を発揮する画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態は、単色の顕色材により形成される各色画像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置であって、前記各色画像の重ね合わせ処理に用いられる無端状回転体の少なくとも一つである転写ベルトにおいて前記各色画像の重ね合わせを行うときに生じうる当該各色画像の位置ずれを補正する補正動作に用いられる補正値を算出するための補正用パターンを、前記各色画像の搬送方向に沿うように、前記転写ベルトに形成するパターン形成手段と、前記転写ベルトに形成された前記補正用パターンを検出するパターン検出手段と、前記補正用パターンの検出結果に基づいて前記補正値を算出する補正値算出手段と、を有し、前記各色画像の搬送方向である副走査方向において交互に繰り返して形成される二つの組パターンを含み、当該二つの組パターンの内の第一組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第二パターンと、を有し、当該二つの組パターンの内の第二組パターンは、前記搬送方向に沿った所定の間隔を開けて配置される二つの第一パターンと、これら二つの第一パターンの間に配置される一つの第三パターンと、を有し、前記第一パターンは、前記搬送方向に対する直交方向に伸びる直線により形成される直線パターンであり、前記第二パターンは、前記直交方向に伸びる直線であって、前記第一パターンとは異なる色で形成される直線パターンであり、前記第三パターンは、搬送方向及び前記直交方向に対し傾斜する直線であって、前記第一パターンとは異なる色の直線パターンであり、前記第一組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔と、前記第二組パターンを構成するときの前記二つの前記第一パターンの形成間隔は、異なる間隔であり、前記第一組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔が、前記第二組パターンに係る前記第一パターンの形成間隔よりも短い、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、位置ずれ補正値の算出時に生じる無端状の構成要素(回転体)の周期的な速度変動の影響を効果的に抑制し、かつ一度の補正動作で高い位置合わせ精度を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る画像形成装置の実施形態としてのMFPの概略図。
図2】上記MFPが備える光書込制御装置の構成を示す概略図。
図3】上記MFPが備える制御系のハードウェアブロック図。
図4】上記MFPの機能構成図。
図5】上記光書込制御装置の制御ブロックの実施形態を示す機能ブロック図。
図6】本発明に係る課題を説明するための、(a)中間転写ベルトの例、(b)中間転写ベルトの揺らぎの例、を示す図。
図7】中間転写ベルトの揺らぎを例示したグラフ。
図8】上記MFPにおける転写位置ずれの補正用パターンの比較例としての第一従来例における補正用パターン
図9】上記MFPにおける転写位置ずれの補正用パターンの比較例としての第二従来例における補正用パターンの形成例を示す図。
図10】周期的に速度変動を生じさせる無端状回転体の周長をn分割した位置に相当する形成位置に第二従来例を形成した例を示す図。
図11】周期的な速度変動と、第二従来例の形成位置との関係について説明する図。
図12】本発明に係る課題に関連する中間転写ベルトの速度変動の様子を例示したグラフ。
図13】本発明に係る課題に対する第二従来例での対応を説明する図。
図14】上記MFPにおいて形成される補正用パターンの第一例を示す図。
図15】上記MFPにおいて形成される補正用パターンの第二例を示す図。
図16】上記MFPにおいて形成される補正用パターンの第三例を示す図。
図17】上記MFPにおいて形成される補正用パターンの概要を説明する図。
図18】本発明に係る画像形成方法の実施形態を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る画像形成装置および画像形成方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明の特徴は、各色画像を重ね合わせてカラー画像を形成する画像形成装置において、各色画像の重ね合わせ時の位置ずれを補正するために用いられる「検知パターンの形成の仕方」にある。検知パターンは、光書込プロセスを介して転写体に形成される画像であり、これをセンサで検知した結果を用いて光書込プロセスにおける書込位置の補正をする補正値を算出するために用いられる。すなわち、本発明に係る画像形成装置は、特徴ある形成の仕方による検知パターンを用いて、位置ずれを効果的に抑制するための補正値を高精度で算出できる機能を備える。
【0015】
ここで「検知パターンの形成の仕方」とは、検知パターンを形成するにあたり、検知パターンを構成する要素の形状、配列、色及びこれらの組み合わせ方をいう。言い換えると、検知パターンは、複数の画像要素の組み合わせにより構成される。したがって、検知パターンの形成とは、位置ずれを効果的に抑制するための補正値を高精度で算出できるように、形状や色の異なる画像要素を特定の配列の仕方に基づいて形成することをいう。
【0016】
[検知パターンの概要]
まず、本発明に係る画像形成装置において形成される検知パターンの概略について説明する。図17に示す図形は、本実施形態に係る検知パターンとしての補正用パターン500の構成要素の例である。補正用パターン500は、複数の線画像の組み合わせによって形成される。
【0017】
補正用パターン500は、記録媒体の搬送方向である副走査方向に対する直交方向としての主走査方向に伸びる直線からなり、副走査方向に沿って配置される基準色で形成される第一パターンとしての基準パターン511と、同じく、主走査方向に伸びる直線からなり、補正対象色で形成される第二パターンとしての横線パターン512と、主走査方向(及び副走査方向)に対して傾斜する直線であって、補正対象色で形成される第三パターンとしての斜線パターン513と、を含んで形成される。
【0018】
また、第一パターン、第二パターン及び第三パターンの組み合わせの仕方によって、第一組パターン521と、第二組パターン522に区別される。第一組パターン521は、二つの基準パターン511と第二パターンとしての横線パターン512が搬送方向としての副走査方向に沿って配置されていて、二つの基準パターン511の間に第二パターンとしての横線パターン512が配置されて一組の検知パターンとして構成される。第二組パターン522は、同じく二つの基準パターン511と第三パターンとしての斜線パターン513が副走査方向に沿って配置されていて、二つの基準パターン511の間に第三パターンとしての斜線パターン513が配置されて一組の検知パターンとして構成される。これら一組の検知パターンは、副走査方向に沿って適宜配置されて形成される。
【0019】
第一組パターン521と第二組パターン522のいずれにおいても、二つの基準パターン511が用いて構成される。この基準パターン511を形成するときに用いられる顕色材の色は、基準色として設定された色である。基準色は例えば黒色である。すなわち、第一組パターン521と第二組パターン522に用いられる複数の基準パターン511はいずれも「黒」で形成されるものとする。
【0020】
第一組パターン521に含まれる横線パターン512と、第二組パターン522に含まれる斜線パターン513を形成するときに用いられる顕色材の色は、補正対象色である。ここで、補正対象色は、後述するように、顕色材の色として用いられる黄色(Y)、マゼンタ色(M)、シアン色(C)、黒色(K)のいずれかである。例えば、マゼンタ色に関する位置ずれを抑制するための補正値の算出に用いられる補正用パターン500であれば、基準色(黒)の基準パターン511の間に補正対象色(マゼンタ色)の横線パターン512が配置された第一組パターン521と、基準色(黒)の基準パターン511の間に補正対象色(マゼンタ色)の斜線パターン513が配置された第二組パターン522と、によって構成される。
【0021】
なお、第一組パターン521は、主走査方向に伸びている直線が副走査方向に沿って3本並んで形成されるパターンであって、漢数字の「三」に類似する形状を有するので、「三パターン」と称されることがある。また、第二組パターン522は、主走査方向に伸びている直線を副走査方向において間隔を開けて並べて、その2本の直線の間に斜線が配置されるパターンであって、ローマ字の「Z」に類似する形状を有するので「Zパターン」と称されることがある。
【0022】
以下、本実施形態を説明するに際し、第二組パターン522を単に「Zパターン」と表記することがある。また、第一組パターン521を単に「三パターン」と表記することがある。
【0023】
図15に示した横線パターン512と斜線パターン513は、本実施形態においてマゼンタ色を現すものとして用いる点線で描画されている。なお、基準パターン511は、基準色で形成されるものであって、本実施形態では黒色を基準色とするが、これに限定されるものではない。なお、本実施形態において黒色は直線で描画することとする。
【0024】
本発明に係る画像形成装置では、位置合わせ処理は繰り返し実行可能なものである。そこで、位置合わせ処理の1サイクル、すなわち、一度の補正動作を実行するときに用いられる検知パターンに着目した場合、基準パターン511は同一の色(基準色)で形成される。そして、基準パターン511の間に配置される横線パターン512と斜線パターン513は、同一の補正対象色で形成される。
【0025】
なお、「一回の位置合わせ処理」とは、位置ずれを補正するための補正値を算出するためのパターン検知処理および算出された補正値を用いて行うパターン形成処理をいう。基準パターン511の色を一回の位置合わせにおいて同一色とすることで、無端状回転体の回転速度の変動により、基準パターン511の形成位置のずれの位相成分を共通化することができる。ずれの位相成分を共通化することで、位置合わせ精度を向上させることができる。
【0026】
また、二色以上の基準パターン511を用いると基準パターン511の色を変えるときにパターン間隔をあける必要が生ずるところ、同一色の基準パターン511を用いることで、間隔を設ける必要が無くなる。したがって、第一組パターン521と第二組パターン522を組み合わせて構成される補正用パターン500を形成する長さ(パターン全長)を短くすることができる。
【0027】
[画像形成装置の実施形態]
続いて、本発明に係る光書込装置を含む画像形成装置について説明する。図1は、本発明に係る画像形成装置の実施形態としての複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)の構成を示す構成図である。図1に示すように、MFP100は、無端状回転体の一つであり、各色画像が転写される転写体である中間転写ベルト105に沿って、各色に対応する画像形成手段としての画像形成部106が並べられている。図1に示したMFP100は、タンデムタイプと呼ばれるものである。なお、中間転写ベルト105は、画像が形成される記録媒体の搬送手段であって、中間転写ベルト105の回転方向が、中間転写ベルト105に形成された補正用パターン500の搬送方向である。
【0028】
画像形成部106は、電子写真プロセス部であって各色の画像の形成に用いられる構成を備えている。具体的には、黄色(Y)の画像の形成に用いられる黄画像形成部106Y、マゼンタ色(M)の画像の形成に用いられるマゼンタ画像形成部106M、シアン色(C)の画像の形成に用いられるシアン画像形成部106C、黒色(K)の画像の形成に用いられる黒画像形成部106Kを備えている。以降、これらを総じて画像形成部106とする。画像形成部106は、中間転写ベルト105の回転動作方向(転写された画像の搬送方向)に沿って配置されている。なお、画像形成部106は、静電潜像を現像するときに用いられる顕色材(トナー)の色が異なるだけで、その内部構成はいずれも共通である。
【0029】
以下、黄画像形成部106Yについて具体的に説明するが、他の色に対応する各構成要素に関する具体的な説明は、黄画像形成部106Yの各構成要素に付したYに替えて、M、C、Kによって区別した符号を図に表示するにとどめ、説明を省略する。
【0030】
中間転写ベルト105は、中間転写手段であって、駆動ローラ108と従動ローラ107とに架け渡されたエンドレスのベルト部材、すなわち無端状回転体である。中間転写ベルト105に、画像形成部106から各色画像が転写されて、フルカラー画像が形成される。駆動ローラ108は、駆動モータと駆動ギヤなどによって回転駆動する。従動ローラ107は、駆動ローラ108の駆動力によって回転する中間転写ベルト105によって回転する。駆動ローラ108、これを駆動する駆動モータ、駆動ローラ108の駆動に従って回転する従動ローラ107は、中間転写ベルト105を回転させる駆動手段として機能する。
【0031】
中間転写ベルト105を挟んで駆動ローラ108と対向する位置に転写ローラ119が配置されている。転写ローラ119は、記録媒体である用紙104を中間転写ベルト105に押し当てるように圧力を付与する二次転写部を構成する。給紙トレイ101から供給された用紙104は、転写ローラ119からの押圧により中間転写ベルト105に押し当てられて搬送され、中間転写ベルト105に形成されているカラー画像を用紙104に転写させる。
【0032】
黄画像形成部106Yは、像担持体としての感光体ドラム109Y、この感光体ドラム109Yの周囲に配置された帯電ローラである帯電ローラ110Y、光書込制御装置111、現像器112Y、感光体クリーナ、除電器113Y等から構成されている。光書込制御装置111は、各色に対応する感光体ドラム109Y、109M、109C、109K(以下、総じて「感光体ドラム109」と表記する)に対して光を照射するように構成されている。
【0033】
画像形成に際し、感光体ドラム109Yの外周面は、暗中にて帯電ローラ110Yにより一様に帯電された後、光書込制御装置111からの黄色画像に対応した光源からの光により書き込みが行われ、静電潜像が形成される。現像器112Yは、この静電潜像を黄色トナーにより可視像化し、このことにより感光体ドラム109Y上に黄色のトナー画像が形成される。
【0034】
このトナー画像は、感光体ドラム109Yと中間転写ベルト105とが当接若しくは最も接近する位置(転写位置)で、転写器115Yの働きにより中間転写ベルト105に転写される。この転写により、中間転写ベルト105上に黄色のトナー画像が転写される。トナー画像の転写が終了した感光体ドラム109Yは、外周面に残留した不要なトナーを感光体クリーナにより払拭された後、除電器113Yにより除電され、次の画像形成のために待機する。
【0035】
以上のようにして、黄画像形成部106Yにより中間転写ベルト105上に転写された黄色のトナー画像は、中間転写ベルト105のローラ駆動により次のマゼンタ画像形成部106Mに搬送される。この搬送方向が副走査方向であり、副走査方向と直交し、中間転写ベルト105の幅方向(図1における奥行き方向)が主走査方向である。マゼンタ画像形成部106Mでは、黄画像形成部106Yでの画像形成プロセスと同様のプロセスにより感光体ドラム109M上にマゼンタ色のトナー画像が形成され、そのトナー画像が既に転写されている形成されている黄色のトナー画像に重ね合うように転写される。
【0036】
中間転写ベルト105に転写された黄色のトナー画像とマゼンタ色のトナー画像が重ね合わされたトナー画像は、さらに次のシアン画像形成部106C、黒画像形成部106Kに搬送される。そして、同様の動作により、感光体ドラム109C上に形成されたシアン色のトナー画像と、感光体ドラム109K上に形成された黒色のトナー画像が、既に転写されているトナー画像(黄色とマゼンタ色が重ね合ったトナー画像)に重畳される。こうして、中間転写ベルト105上にカラーの中間転写画像が形成される。
【0037】
給紙トレイ101に収納された用紙104は最も上のものから順に送り出され、レジストローラ103によって一度止められ、画像形成部106における画像形成のタイミングに応じて中間転写ベルト105からの画像の転写位置に送り出される。その搬送経路が中間転写ベルト105と接触する位置若しくは最も接近する位置において、中間転写ベルト105上に形成された中間転写画像がその用紙104に転写されてカラー画像が形成される。画像が形成された用紙104は更に搬送され、定着器116にて画像を定着された後、MFP100の外部に排出される。
【0038】
以上の構成を備えるMFP100は、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kの軸間距離の誤差、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kの平行度誤差、光書込制御装置111内でのLEDA130の設置誤差、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kへの静電潜像の書き込みタイミング誤差等を原因として、本来重ならなければならない各色のトナー画像が重ならず、各色間で位置ずれ(色ずれ)が生ずる。したがって、MFP100が備える無端状回転体の回転速度の変動の影響によって、トナー画像の重ね合わせ位置の位置ずれが生じ、記録媒体に形成される画像の色ずれを発生させることになる。
【0039】
MFP100は、位置ずれを補正するために形成される補正用パターン500を検知するためのパターン検知センサ117を備えている。パターン検知センサ117は、例えば、光の反射を利用した光学センサ(TMセンサ)である。パターン検知センサ117は、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kによって中間転写ベルト105にトナー画像として転写された補正用パターン500を読み取るセンサである。パターン検知センサ117は、中間転写ベルト105の表面に描画された補正用パターン500を照らす光を照射する発光素子と、補正用パターン500からの反射光を受光するための受光素子と、を含む。図1に示すように、パターン検知センサ117は、感光体ドラム109Y、109M、109C及び109Kよりも、用紙104の搬送方向における下流側に設置されていて、中間転写ベルト105による用紙104の搬送方向との直交方向(いわゆる主走査方向)に沿って複数個が同一の基板上に支持されている。
【0040】
パターン検知センサ117において、発光素子から出射された光が中間転写ベルト105の表面で反射されて受光素子で受光されて出力する出力電圧は、補正用パターン500において反射した光に基づく出力電圧よりも大きくなる。このパターン検知センサ117の出力電圧を検知することで、中間転写ベルト105に形成されている補正用パターン500の形成位置を検知する。一方、光書込制御装置111におけるトナー画像の形成タイミングに基づき、中間転写ベルト105上の補正用パターン500の形成位置は特定可能である。したがって、パターン検知センサ117による補正用パターン500の検知結果と、中間転写ベルト105に対する補正用パターン500の形成位置を比較することにより、各色のトナー画像(各色画像)が理想位置に対してずれているときは、その「位置ずれ量」を算出できる。そして、位置ずれ量に基づいて、位置ずれを抑制するために光書込制御装置111における各色画像の形成時の動作を補正するための補正値を算出することができる。補正値を算出し補正を行う補正動作は所定のタイミングにおいて実行される。パターン検知センサ117の詳細及び位置ずれ補正の態様については、後に詳述する。なお、MFP100は、後述するCPU10をはじめとした情報処理機能を実現するための構成を含み、そのような構成によって制御されて動作する。
【0041】
また、MFP100には、中間転写ベルト105に転写されたトナー画像によって描画された補正用パターン500のトナーを除去し、中間転写ベルト105によって搬送される用紙104が汚れないようにするため、ベルトクリーナ118が設けられている。ベルトクリーナ118は、図1に示すように、駆動ローラ108の下流側であって、感光体ドラム109よりも上流側に配置されていて、中間転写ベルト105に押し当てられたクリーニングブレードである。ベルトクリーナ118は、中間転写ベルト105の表面に付着したトナーを掻きとる顕色材除去部である。
【0042】
[光書込装置の概要]
次に、本実施形態に係るMFP100に搭載される光書込制御装置111について説明する。図2は、本実施形態に係る光書込制御装置111と感光体ドラム109との配置関係を示す図である。図2に示すように、各色の感光体ドラム109Y、109M、109C、109K各々に照射される照射光は、光源としてのLEDA(Light-emitting diode Array)130Y、130M、130C、130K(以降、総じてLEDA130とする)から照射される。なお、本実施形態に係る光書込制御装置111においては、光源としてLD(Laser Diode)を用いることもできる。したがって、光源として用いる構成は、本実施形態に係る光書込制御に対応可能なものであれば、その種類は問わない。
【0043】
LEDA130は、発光素子であるLEDが、感光体ドラム109の主走査方向に並べられて構成されている。光書込制御装置111に含まれる制御部は、主走査方向に並べられている各々のLEDの点灯/消灯状態を、後述するコントローラ20から入力された描画情報に基づいて主走査ライン毎に制御することにより、感光体ドラム109の表面を選択的に露光し、静電潜像を形成する。
【0044】
[画像形成装置の制御系のハードウェア構成]
次に、本発明に係る光書込装置を含む画像形成装置の制御系を構成するハードウェア構成の例について、図3を用いて説明する。本実施形態に係るMFP100の制御系は、情報処理装置であるPC(Personal Computer)と同様の構成に加えて、画像形成を実行する画像処理エンジン13を備える。即ち、本実施形態に係るMFP100は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)11、ROM(Read Only Memory)12、画像処理エンジン13、HDD(Hard Disk Drive)14及びI/F(Interface)15がシステムバス18を介して接続されている。また、I/F15にはLCD(Liquid Crystal Display)16、操作部17、パターン検知センサ117が接続されている。
【0045】
CPU10は制御手段であり、MFP100全体の動作を制御する。RAM11は、情報の高速な読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU10が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM12は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、ファームウェア等のプログラムが格納されている。画像処理エンジン13は、MFP100において実際に画像形成を実行するために動作する構成を含む。
【0046】
HDD14は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(Operating System)や各種の制御プログラム、アプリケーションプログラム等が格納されている。I/F15は、システムバス18と各種のハードウェアやネットワーク等を接続し制御する。LCD16は、ユーザがMFP100の状態を確認するための視覚的ユーザインタフェースである。操作部17は、キーボードやマウス等、ユーザがMFP100に情報を入力するためのユーザインタフェースである。
【0047】
このようなハードウェア構成において、ROM12やHDD14等の記録媒体に格納されたプログラムがRAM11に読み出され、CPU10がそれらのプログラムに従って演算を行うことにより、ソフトウェア制御部が構成される。このようにして構成されたソフトウェア制御部と、ハードウェアとの組み合わせによって、本実施形態に係るMFP100の機能を実現する機能ブロックが構成される。なお、図3に表したハードウェア構成は一例であって、本実施形態に係るMFP100のハードウェア構成は、以下において説明する機能構成を実現できるハードウェアであれば、図3の構成に限定されない。
【0048】
[画像形成装置の機能構成]
次に、図4を参照して、本実施形態に係るMFP100の機能構成について説明する。図4は、本実施形態に係るMFP100の機能構成を示すブロック図である。MFP100は、コントローラ20、ADF(Auto Documennt Feeder:原稿自動搬送装置)21、スキャナユニット22、排紙トレイ23、ディスプレイパネル24、給紙テーブル25、プリントエンジン26、排紙トレイ27及びネットワークI/F28を有する。
【0049】
また、コントローラ20は、主制御部30、エンジン制御部31、入出力制御部32、画像処理部33及び操作表示制御部34を有する。また、MFP100は、スキャナユニット22、プリントエンジン26を有する複合機として構成されている。なお、図4においては、電気的接続を実線の矢印で示しており、記録媒体の流れを破線の矢印で示している。
【0050】
ディスプレイパネル24は、MFP100の状態を視覚的に表示する出力インタフェースであると共に、タッチパネルとしてユーザがMFP100を直接操作し若しくはMFP100に対して情報を入力する際の入力インタフェース(操作部)でもある。ネットワークI/F28は、MFP100がネットワークを介して他の機器と通信するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)やUSB(Universal Serial Bus)インタフェースが用いられる。
【0051】
コントローラ20は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成される。具体的には、ROM12や不揮発性メモリ並びにHDD14等の制御プログラムが、RAM11等の揮発性メモリ(以下、メモリ)にロードされ、それらのプログラムに従ったCPU10の演算によって構成されるソフトウェア制御部と集積回路などのハードウェアとによってコントローラ20が構成される。コントローラ20は、MFP100全体を制御する制御部として機能する。
【0052】
主制御部30は、コントローラ20に含まれる各部を制御する役割を担い、コントローラ20の各部に命令を与える。エンジン制御部31は、プリントエンジン26やスキャナユニット22等を制御若しくは駆動する駆動手段としての役割を担う。入出力制御部32は、ネットワークI/F28を介して入力される信号や命令を主制御部30に入力する。また、主制御部30は、入出力制御部32を制御し、ネットワークI/F28を介して他の機器にアクセスする。
【0053】
画像処理部33は、主制御部30の制御に従い、入力された印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成する。この描画情報とは、画像形成部であるプリントエンジン26が画像形成動作において形成すべき画像を描画するための情報である。また、印刷ジョブに含まれる印刷情報とは、PC等の情報処理装置にインストールされたプリンタドライバによってMFP100が認識可能な形式に変換された画像情報である。操作表示制御部34は、ディスプレイパネル24に情報表示を行い若しくはディスプレイパネル24を介して入力された情報を主制御部30に通知する。
【0054】
MFP100がプリンタとして動作する場合は、まず、入出力制御部32がネットワークI/F28を介して印刷ジョブを受信する。入出力制御部32は、受信した印刷ジョブを主制御部30に転送する。主制御部30は、印刷ジョブを受信すると、画像処理部33を制御して、印刷ジョブに含まれる印刷情報に基づいて描画情報を生成させる。
【0055】
画像処理部33によって描画情報が生成されると、エンジン制御部31は、生成された描画情報に基づいてプリントエンジン26を制御し、給紙テーブル25から搬送される記録媒体に対して画像形成を実行する。即ち、プリントエンジン26が画像形成部として機能する。プリントエンジン26によって画像形成が施された記録媒体は排紙トレイ27に排出される。
【0056】
画像処理部33によって生成された画像情報は、ユーザの指示に応じてそのままHDD14等に格納され、若しくは入出力制御部32及びネットワークI/F28を介して外部の装置に送信される。即ち、ADF21及びエンジン制御部31が画像入力部として機能する。
【0057】
また、MFP100が複写機として動作する場合は、エンジン制御部31がスキャナユニット22から受信した撮像情報若しくは画像処理部33が生成した画像情報に基づき、画像処理部33が描画情報を生成する。その描画情報に基づいてプリンタ動作の場合と同様に、エンジン制御部31がプリントエンジン26を駆動する。
【0058】
[光書込装置の制御ブロック]
次に、本実施形態に係る光書込制御装置111の制御ブロックについて、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る光書込制御装置111を制御する光書込制御部120の機能構成と、LEDA130及びパターン検知センサ117との関係を示す図である。
【0059】
図5に示すように、本実施形態に係る光書込制御部120は、発光制御部121、カウント部122、センサ制御部123、補正値算出部124、基準値記憶部125及び補正値記憶部126を含む。光書込制御部120が、光源であるLEDA130を制御して感光体上に静電潜像を形成させる光書き込み制御装置として機能する。
【0060】
なお、光書込制御部120は、MFP100のコントローラ20と同様に、ROM12若しくはHDD14に記憶されている制御プログラムがRAM11にロードされ、CPU10の演算処理に従って動作することにより構成される。
【0061】
発光制御部121は、コントローラ20のエンジン制御部31から入力される画像情報に基づいてLEDA130を制御する光源制御部である。即ち、発光制御部121が、画素情報取得部としても機能する。発光制御部121は、所定のライン周期でLEDA130を発光させることにより、感光体ドラム109への光書き込みを実現する。
【0062】
発光制御部121がLEDA130を発光制御するライン周期は画像形成装置1の出力解像度によって定まるが、上述したように用紙の搬送速度との比率に応じて副走査方向に変倍を行う場合、発光制御部121がライン周期を調整することによって副走査方向の変倍を行う。
【0063】
また、発光制御部121は、エンジン制御部31から入力される描画情報に基づいてLEDA130を駆動する他、上述した描画パラメータ補正の処理において補正用パターン500を描画するために、LEDA130を発光制御する。
【0064】
図2において説明したように、LEDA130は各々の色に対応して複数設けられる。したがって、発光制御部121も、図5に示すように、複数のLEDA130各々に対応するように複数設けられる。描画パラメータ補正処理のうち、位置ずれ補正動作としての位置ずれ補正処理の結果生成される補正値は、図5に示す補正値記憶部126に色ずれ補正値として記憶される。
【0065】
発光制御部121は、この補正値記憶部126に記憶されている過去の色ずれ補正値に基づき、LEDA130を駆動するタイミングを補正する。また、発光制御部121は、画像の主走査方向の位置を補正するため、主走査ライン毎の画像情報に基づいてLEDA130を発光させる際、1ライン分の画像情報を構成する各画素の情報と、LEDA130に含まれる各LED素子との対応関係を、補正値記憶部126に記憶されている色ずれ補正値に基づいて調整する。
【0066】
発光制御部121によるLEDA130の駆動タイミングの補正は、具体的には、エンジン制御部31から入力された描画情報に基づいてLEDA130を発光駆動するタイミングをライン周期単位で遅らせる、即ちラインをシフトさせることによって実現される。これに対して、エンジン制御部31からは、所定の周期に従って次々に描画情報が入力されるため、ラインをシフトさせて発光タイミングを遅らせるためには、入力された描画情報を保持しておき、読み出すタイミングを遅らせる必要がある。
【0067】
そのため、発光制御部121は、主走査ライン毎に入力される描画情報を保持するための記憶媒体であるラインメモリを有し、エンジン制御部31から入力された描画情報をラインメモリに記憶させることによって保持する。なお、LEDA130の駆動タイミングの補正としては、ライン周期単位での調整の他、ライン周期毎の発光タイミングの微調整も行われる。発光制御部121は、パターン形成手段を構成する。
【0068】
カウント部122は、色ずれ補正処理において、発光制御部121がLEDA130を制御して感光体ドラム109Kの露光を開始すると同時にカウントを開始する。カウント部122は、センサ制御部123が、パターン検知センサ117の出力信号に基づいて補正用パターン500を検知することにより出力する検知信号を取得する。すなわち、カウント部112は、CPU10の動作クロックをベースにした割り込み制御を実行し、センサ制御部123からの検知信号(パターン検知センサ117の出力電圧)を取得する。また、カウント部122は、検知信号を取得したタイミングにおけるカウント値を補正値算出部124に入力する。即ち、カウント部122が補正用パターン500の検知タイミングを取得する検知タイミング取得部として機能する。
【0069】
センサ制御部123は、パターン検知センサ117を制御する制御部であり、上述したように、パターン検知センサ117の出力信号に基づき、中間転写ベルト105上に形成された位置ずれ補正用パターンが、パターン検知センサ117の位置にまで到達したことを判断して検知信号を出力する。即ち、パターン検出手段としてのセンサ制御部123が、パターン検知センサ117によるパターンの検知信号を取得する検知信号取得部として機能する。
【0070】
また、センサ制御部123は、濃度補正用パターンによる濃度補正に際しては、パターン検知センサ117の出力信号の信号強度を取得し、補正値算出部124に入力する。更にセンサ制御部123は、補正用パターン500の検知結果に応じて、濃度補正用パターンの検知タイミングを調整する。センサ制御部123は、組パターン検知手段を構成する。
【0071】
補正値算出部124は、カウント部122から取得したカウント値や、センサ制御部123から取得した濃度補正用パターンの検知結果の信号強度に基づき、基準値記憶部125に記憶された位置ずれ補正用及び濃度補正用の基準値に基づいて補正値を算出する。即ち、補正値算出部124が、基準値取得部及び補正値算出部として機能する。基準値記憶部125には、このような計算に用いるための基準値が格納されている。なお、補正値は、位置ずれ補正用パターンの「ずれ方向」と「ずれ量」に基づいて算出される。補正値算出部124は、補正値算出手段を構成する。
【0072】
[周期的な速度変動の概要説明]
次に、本発明に係る画像形成装置において、解決課題とする無端状の構成要素による周期的な回転速度変動の発生要因の例について説明する。図6では、無端状の構成要素(無端状回転体)として中間転写ベルト105を例示している。しかし、課題となる回転速度変動の発生要因は、中間転写ベルト105に限るものではなく、例えば、他の構成要素(感光体ドラム109など)においても、同様に、回転体の周期的な速度変動の発生要因になる。
【0073】
図6(a)に示すように、中間転写ベルト105の一部を切って伸ばすことを想定してみる。中間転写ベルト105は、樹脂材(TPEなど)が用いられるので、図6(b)に示すように、表面に「ヨレ」や「クセ」があり、全長において平坦にならない。それ故、これを無端状回転体として回転させたときにも、回転速度が均一にならない。回転速度が均一ではない中間転写ベルト105の表面に各色画像を転写する場合、中間転写ベルト105が一周すると、これの一周前の転写位置と同じ位置に戻ることになるが、一周する間には局所的に位置ずれが生じ、この局所において、一周前の転写位置とは異なる位置になる。すなわち、中間転写ベルト105が一周する間において、局所的に、以前の周回とは異なる位置が転写位置となる「周期的に生ずる位置ずれ」が発生する。
【0074】
図7は、中間転写ベルト105の回転速度(トナー画像の搬送速度)の揺らぎを例示したグラフであって、中間転写ベルト105の一周長にわたる揺らぎを示している。図7のグラフの原点は、理想的な回転速度(目標値V)として、説明をわかりやすくするために、中間転写ベルト105の回転速度が中間転写ベルト105の一周長を一周期とするサインカーブを描くように変化するものとする。中間転写ベルト105は、画像形成処理において回転し続けるので、同じような速度変動が繰り返し生じることになる。以下、回転速度の変動に言及するときに、特に、中間転写ベルト105の一周長で一周する回転速度変動を「一次の速度変動」と表記する。
【0075】
以下、周期的な速度変動を生じさせる構成要素(無端状回転体)のうち、中間転写ベルト105に注目して説明する。なお、中間転写ベルト105と表記される箇所は、感光体ドラム109、転写ローラ119、駆動ローラ108、従動ローラ107、帯電ローラ、またはそれらの駆動ギヤなどの動力伝達手段を他の無端状回転体として代替してもよい。
【0076】
[補正用パターン500に対する第一従来例]
ここで、本実施形態に係る位置ずれ補正動作の概要について説明するにあたり、補正用パターン500に対する従来例の一つについて説明する。本例は第一従来例とする。図8は、既知の検知パターンとしての従来パターン400を例示している。なお、本実施形態に係る補正用パターン500においても、パターンを検知するための構造は同様であるから、第一従来例を説明しつつ、パターン検知動作についても例示する。従来パターン400は、発光制御部121によって制御されたLEDA130によって中間転写ベルト105に描画されるパターン画像である。例えば、副走査方向において、様々なパターン画像が並べられて位置合わせ用パターン列401として構成される。この位置合わせ用パターン列401は、主走査方向に複数並べられて構成される。
【0077】
従来パターン400は、各色に対応する線パターンにより構成されている。本明細書において、各線パターンの色の違いを表現するにあたり、点線は感光体ドラム109Yによって描画された画像を示す。また、実線は感光体ドラム109Kによって描画された画像を示す。破線は感光体ドラム109Cによって描画された画像を示す。一点鎖線は感光体ドラム109Mによって描画された画像を示す。すなわち、点線は「黄」、実線は「黒」、破線は「シアン」、一点鎖線は「マゼンタ」の各色で形成されている画像を例示する。
【0078】
位置合わせ用パターン列401は、それぞれのパターン検知センサ素子170の検出範囲を通過する位置に描画されている。位置合わせ用パターン列401を構成する線画像がパターン検知センサ素子170の検出範囲に入ると、パターン検知センサ素子170の出力電圧が降下し、線パターンが検出範囲を通り抜けると、パターン検知センサ素子170の出力電圧が上昇する。この出力電圧に基づいて、センサ制御部123が、位置ずれ補正用パターンを検知することにより出力する検知信号を取得し、カウント部122が検知信号を取得したタイミングにおけるカウント値を補正値算出部124に入力する。
【0079】
これにより、光書込制御部120は、主走査方向の複数の位置で検知パターンを構成する画像の検出を行うことが可能となり、描画される画像のスキューを補正することが可能となる。また、複数のパターン検知センサ素子170に基づく検出結果を平均することにより、補正精度を向上することができる。
【0080】
図8に示すように、位置合わせ用パターン列401は、全体位置補正用パターン411と、ドラム間隔補正用パターン412と、を含む。また、図8に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、繰り返し描画されている。
【0081】
全体位置補正用パターン411は、図8に示すように、感光体ドラム109Yによって描画された線であって主走査方向に平行な線である。全体位置補正用パターン411は、画像の全体の副走査方向のずれ、即ち用紙に対する画像の転写位置を補正するためのカウント値を得るために描画されるパターンである。また、全体位置補正用パターン411は、センサ制御部123が、ドラム間隔補正用パターン412や、後述する濃度補正用のパターンを検知する際の検知タイミングを補正するためにも用いられる。
【0082】
全体位置補正用パターン411を用いた全体位置補正においては、光書込制御部120が、パターン検知センサ117による全体位置補正用パターン411の読取信号に基づき、書き込み開始タイミングの補正動作を行う。
【0083】
ドラム間隔補正用パターン412は、各色の感光体ドラム109における描画タイミングのずれ、即ち、各色の画像が重ね合わせられる重ね合わせ位置を補正するためのカウント値を得るために描画されるパターンである。図8に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、横線パターン413及び斜線パターン414を含む。図8に示すように、ドラム間隔補正用パターン412は、搬送方向に直交方向の線状の画像が4本で1セットとなって構成される各色の横線パターン413と、搬送方向に対して所定の角度傾いた線状のパターンが4本で1セットなって構成される各色の斜線パターン414が交互に繰り返され、4本の横線パターン413と、4本の斜線パターン414の計8本の線画像が一組となって補整値の算出に用いられる。
【0084】
光書込制御部120は、パターン検知センサ117による、横線パターン413の読取信号に基づき、感光体ドラム109Y、109K、109M、109C各々に対する書き出し位置の副走査方向の位置ずれ補正を行う。他方、位置ずれ補正動作において、光書込制御部120は、斜線パターン414の読取信号に基づき、上記各感光体ドラムに対する書き出し位置の主走査方向の位置ずれ補正を行う。横線の画像を検知して副走査方向の書き出し位置のずれ(レジストずれ)を補正するための補正値の算出処理、及び、斜線の画像を検知して主走査方向の書き出し位置のずれ(レジストずれ)を補正するための補正値の算出処理は、本実施形態においても共通する。
【0085】
[補正用パターン500に対する第二従来例]
次に、本実施形態に係る補正用パターン500に対する別の従来例についても説明する。第二従来例は、本願出願人がすでに検討し出願したものの例である。第二従来例では、検知パターンとしての第一組パターン521と第二組パターン522を用いることで位置ずれを補正するように構成されていた。図9及び図10は、第二従来例に係る検知パターンの形成のされ方を例示する図である。図11は、第二従来例よる検知パターンと、これによって、速度変動の影響の打ち消し効果が発揮されることを説明する図である。
【0086】
第二従来例では、速度変動の一周期をn分割した場合、同一の基準線が再び形成されるまでの間隔をτ倍に設定し、繰り返し形成される線パターンの間隔に倍率パラメータτを用いる。
【0087】
図11に例示するように、第二従来例における「Zパターン」および「三パターン」の形成位置の変動と、周期的な速度変動も、検知パターンの形成位置のずれはsin関数で表現できる。そして、その強度成分と位相成分が、各次数のパラメータとなって、一次、二次、三次・・・無限の次数までの周期的な形成位置のずれの総和として表現される。
【0088】
第二従来例では、ある一組の検知パターンに着目したとき、それよりも先に形成された検知パターンの基準線(基準パターン511と同様)と、補正対象色の線(横線又は斜線)用いて位置ずれ補正値を算出する「第一の計算式」を考えることができる。また、着目した検知パターンよりも後に形成された検知パターンの基準線(基準パターン511と同様)と、補正対象色の線(横線又は斜線)用いて位置ずれ補正値を算出する「第二の計算式」を考えることができる。そして、これら二つの計算式において算出された位置ずれ補正値を平均化することにより、最終的な位置ずれ補正値を算出することができる。
【0089】
これらの計算処理を行うことにより、一つのZパターン(三パターン)で生じる周期的な形成位置のずれを「およそ」打ち消すことができる。したがって、中間転写ベルト105の一周長に渡って線パターン(補正用パターン500に相当)を形成しなくても、位置ずれを補正することが可能となるものであった。
【0090】
ここで、第一従来例と第二従来例の差異について説明する。第二従来例の場合は、中間転写ベルト105に係る一周長を「整数分割」した場合の位置に各線パターンを形成しなくても、効果を発揮する点において第一従来例とは異なる。すなわち、中間転写ベルト105に係る一周長を「実数分割」した場合の位置において各線パターンを形成した場合でも、効果を発揮する。そのため、感光体ドラム109や転写ローラ119といった、無端状の複数の回転体に起因して周期的な形成位置のずれが同時に発生したとしても、位置ずれ補正値の算出時に、それぞれの線パターンにおける周期的な形成位置のずれの影響を効果的に抑制できる。
【0091】
以上説明をした第一従来例及び第二従来例においては、中間転写ベルト105において生ずる速度変動は、一定周期において同様に生ずることを前提している。しかしながら、中間転写ベルト105のような無端状回転体において、特に回動するにあたって張力が係る構成物の場合は、回動中に伸縮することがあり、図12に例示するように、一定周期において生ずる速度変動は不規則なものとなることがある。また、駆動伝達するための駆動ギヤなどは、微小な速度変動の影響を受けやすく、想定の範囲を超えた速度変動が生ずることがある。このような不規則な速度変動などの影響を抑制できないと、特に、複数の各色画像を重ね合わせるときの位置の合わせ精度に大きく影響し、書き出し位置ずれ(レジストずれ)の補正精度を悪化させる要因になっていた。
【0092】
第二従来例の場合は、無端状回転体において生じる色間の速度変動の影響は、検知パターンの形成が離れるほど複雑化する。例えば、図13に例示するような、倍率パラメータτを「2」として形成された補正用パターン500の場合を例に説明する。この場合、繰り返し形成数k分だけ離れた位置に第一組パターン521と第二組パターン522を形成されることになる。その結果、副走査方向の位置ずれを補正するための第一組パターン521と、主走査方向の位置ずれを補正するための第二組パターン522の形成位置が、中間転写ベルト105の走行安定性が大きく異なる位置に形成されることになる。また、一組の検知パターンに含まれる基準パターン511と、補正対象色のパターンとしての斜線パターン513(マゼンタ色)との間の副走査方向の位置ずれ成分を適切に相殺できない。
【0093】
したがって、第二従来例においても、主走査方向及び副走査方向の書き出し位置ずれ(レジストずれ)を同時に補正しようとすると、補正精度を向上させることが困難となる。
【0094】
[補正用パターン500の第一実施形態]
以上を踏まえ、本実施形態に係るMFP100において形成される補正用パターン500の形成の仕方の詳細について説明する。図14は補正用パターン500の第一実施形態を示す。
【0095】
図14に例示するように、本実施形態に係る補正用パターン500は、第一組パターン521と第二組パターン522を、副走査方向において交互に繰り返して形成する。また、本実施形態に係る補正用パターン500は、第一組パターン521を構成する基準パターン511の形成間隔と、第二組パターン522を構成する基準パターン511の形成間隔が異なる。すなわち、第一組パターン521を構成する基準パターン511の形成間隔の方が、第二組パターン522を構成する基準パターン511の形成間隔よりも短い。いずれの組パターンにおいても、基準パターン511をパターン検出手段としてのセンサ制御部123が補正用パターン500の基準位置として用いる。
【0096】
なお、本実施形態に係る補正用パターン500は、無端状回転体の速度変動による各色画像の位置ずれが生じない(生じていない)理想状態で形成されるときは、隣接する二つの組パターンの間に形成される横線パターン512または斜線パターン513の形成位置が搬送方向における二つの組パターンの中央位置になる。すなわち、本実施形態に係る補正用パターン500は、無端状回転体の速度変動による各色画像の位置ずれが生じない(生じていない)理想状態で形成されるときは、繰り返し形成される組パターンの形成間隔が等間隔になる。
【0097】
第二従来例の説明でも述べたが、検知パターンの形成位置が離れるほど(形成間隔が長くなるほど)色間の速度変動の影響が複雑化する。したがって、検知パターンの形成位置は近い方が有利である。そこで、本実施形態に係る補正用パターン500のように形成すれば、第二従来例で説明した「倍率パラメータτ」の大きさを、第一組パターン521と第二組パターン522において同時に小さく設定できる。これによって、色間で生じる速度変動の影響を小さくできる。
【0098】
なお、図14においては、二本の基準パターン511と、これらの間に補正対象色で描画される横線パターン512を一組として、第一組パターン521が形成されている。そして、繰り返し形成される第一組パターン521に挟まれる位置に、補正対象色で描画される斜線パターン513が形成されている。なお、これとは異なり、二本の基準パターン511と、これらの間に補正対象色で描画される斜線パターン513を一組として、第二組パターン522を形成し、繰り返し形成される第二組パターン522に挟まれる位置に、補正対象色で描画される横線パターン512を形成してもよい。
【0099】
なお、図14は、補正対象色がマゼンタ色の補正用パターン500の形成例を示しているが、当然ながら、補正対象色を黄色(Y)、シアン色(C)に入れ替えてもよい。また、基準色は黒色(K)として例示しているが、黒色(K)以外を基準として用いてもよい。また、補正用パターン500を形成するにあたり、斜線パターン513を繰り返し形成するときに、傾斜の度合いや傾斜の向きは同一ではなく異なっていてもよい。
【0100】
[補正用パターン500の第二実施形態]
次に、本実施形態に係るMFP100において形成される補正用パターン500の形成の仕方の第二実施形態について説明する。本実施形態に係るMFP100における第一の利点は、一度の補正動作で高精度に書き出し位置ずれ(レジストずれ)を補正できる点にある。そこで、図15に例示するように、補正用パターン500を、単色ではなく、連続的に各色を補正対象色として補正用パターン500を形成する場合について説明する。図15に例示するように、各色を補正対象色として、補正用パターン500を形成することにより、一度の補正動作で、各色の書き出し位置ずれ(レジストずれ)を高精度に補正できる補正値を効率的に算出することができる。これによって、各色画像の位置ずれ効果的に抑制し、かつ一度の補正動作で高い位置合わせ精度を発揮することができる。
【0101】
なお、補正用パターン500の全長を短くすることにより、位置ずれ抑制のための処理による、画像形成処理のダウンタイムを削減できる。そこで、図15に例示するように、中間転写ベルト105の回動方向の上流側からの各色の作像ステーションの並びに合わせて補正対象色を設定することで、最も効果的にダウンタイムを削減できる。
【0102】
[補正用パターン500の第三実施形態]
次に、本実施形態に係るMFP100において形成される補正用パターン500の形成の仕方の第三実施形態について説明する。本実施形態に係るMFP100における第一の利点は、一度の補正動作で高精度に書き出し位置ずれ(レジストずれ)を補正できる点にあるので、第二実施形態において説明したとおり、単色ではなく、連続的に各色を補正対象色として補正用パターン500を形成するほうが、より有利である。
【0103】
この場合、特に、連続的に検知パターンを形成するときに、三パターンとZパターンのパターン長(基準色同士の間隔)が異なる構成では、必要となる基準色(Bk)の斜線パターンを挿入する位置の制約が厳しくなる。
【0104】
そこで図16に例示するように、ある補正対象色に対応する補正用パターン500を中間転写ベルト105に描画した後に、次の補正対象色に対応する補正用パターン500を描画するまでの間に、基準色である黒色の斜線パターン514を配置すればよい。これによって、補正用パターン500の全長を、より短くすることができる。
【0105】
なお、第三実施形態は、位置ずれを補正するための組パターンの形状が、第一組パターン521の場合に限定される。仮に、組バターンの形状が第二組パターン522の場合は、補正対象色が切り替わる間に横線パターン512が挿入されることになるので、基準色(Bk)の斜線パターンを挿入する余地が無いからである。
【0106】
[画像形成方法の実施形態]
次に、本発明に係る画像形成方法の実施形態として、本実施形態に係る補正用パターン500を用いた位置合わせ処理の流れについて、図18のフローチャートを用いて説明する。図18は、位置ずれ補正を実行するために、先ず、複数組の補正用パターン(補正用パターン500)を中間転写ベルト105に形成し、これをパターン検知センサ117で検知し、検知結果に基づいて算出された前記補正値により、補正用パターン500の形成位置を制御する処理の流れである。したがって、図18に示す処理フローは、一度の位置合わせ処理を実行する時(色合わせ動作時)に形成される補正用パターン(補正用パターン500)の形成処理を例示している。
【0107】
まず、パターン検知センサ117が正常に補正用パターン500を構成する各線パターンを検知できるように校正する処理を実行する(S1801)。パターン検知センサ117が光学センサであれば、その照射量や検出信号のゲインなどを調整する処理が実行される。
【0108】
次に、S1801における校正処理が正常に実行できたか否かを判定する(S1802)。パターン検知センサ117の校正処理が正常に実行できなかったときは(S1802/NO)、処理を中断して、MFP100が備える警報通知手段を用いて異常を通知する(S1806)。
【0109】
パターン検知センサ117の校正処理が正常に実行できたときは(S1802/YES)、補正用パターン500を形成する処理が実行される(S1803)。当該処理は、光書込制御装置111の動作を制御する専用のASICが提供する検知パターン生成機能を利用する、あるいは、予め検知パターン用の画像データを用意しておき、これを用いて検知パターンを形成する。なお、検知パターン用の画像データとは、補正用パターン500を構成するZパターンと三パターンに相当する画像データである。
【0110】
続いて、補正用パターン500をパターン検知センサ117が検知し、センサ制御部123を介して補正値算出部124に算出結果を通知する(S1804)。
【0111】
続いて、補正値算出部124が、パターン検知センサ117からの検知結果に基づいて、位置ずれ補正量を算出し、算出された位置ずれ補正値を補正値記憶部126に記憶させる(S1805)。光書込制御装置111を備えるMFP100は、画像形成処理を実行するときに、補正値記憶部126に記憶されている位置ずれ補正値を用いて、画像形成位置の調整を行う。
【0112】
パターン検知センサ117の校正処理(S1801)は定期的に実行すればよく、位置合わせ処理を実行する度に行わなくてもよい。その場合、校正処理(S1801)を行わないときは、パターン形成処理(S1803)から処理を始めればよい。
【0113】
以上のように、補正用パターン500を形成し、補正用パターン500をパターン検知センサ117によるパターン検知処理を実行し、センサ制御部123を介して補正値算出部124に算出結果が通知される。これに続いて、補正値算出部124が、パターン検知センサ117からの検知結果に基づいて、位置ずれ補正量を算出し、算出された位置ずれ補正値を補正値記憶部126に記憶させる。光書込制御装置111を備えるMFP100は、画像形成処理を実行するときに、補正値記憶部126に記憶されている位置ずれ補正値を用いて、画像形成位置の調整を行うことで、一度の位置合わせ処理を実行するとき、すなわち、補正動作の1サイクルにおいて一度に形成される補正用パターン500によって、各色画像の位置ずれを精度よく抑制することができる。
【0114】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0115】
1 :画像形成装置
10 :CPU
11 :RAM
12 :ROM
13 :画像処理エンジン
14 :HDD
15 :I/F
16 :LCD
17 :操作部
18 :システムバス
20 :コントローラ
22 :スキャナユニット
23 :排紙トレイ
24 :ディスプレイパネル
25 :給紙テーブル
26 :プリントエンジン
27 :排紙トレイ
28 :ネットワークI/F
30 :主制御部
31 :エンジン制御部
32 :入出力制御部
33 :画像処理部
34 :操作表示制御部
100 :MFP
101 :給紙トレイ
103 :レジストローラ
104 :用紙
105 :中間転写ベルト
106 :画像形成部
106C :シアン画像形成部
106K :黒画像形成部
106M :マゼンタ画像形成部
106Y :黄画像形成部
107 :従動ローラ
108 :駆動ローラ
109 :感光体ドラム
109C :感光体ドラム
109K :感光体ドラム
109M :感光体ドラム
109Y :感光体ドラム
110Y :帯電ローラ
111 :光書込制御装置
112 :カウント部
112Y :現像器
113Y :除電器
115Y :転写器
116 :定着器
117 :パターン検知センサ
118 :ベルトクリーナ
119 :転写ローラ
120 :光書込制御部
121 :発光制御部
122 :カウント部
123 :センサ制御部
124 :補正値算出部
125 :基準値記憶部
126 :補正値記憶部
130 :LEDA
170 :パターン検知センサ素子
400 :従来パターン
401 :位置合わせ用パターン列
411 :全体位置補正用パターン
412 :ドラム間隔補正用パターン
413 :横線パターン
414 :斜線パターン
500 :補正用パターン
511 :基準パターン
512 :横線パターン
513 :斜線パターン
514 :斜線パターン
521 :第一組パターン
522 :第二組パターン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0116】
【文献】特開2019-211579号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18