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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】石油樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/14 20060101AFI20240625BHJP
   C08F 236/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08F4/14
C08F236/00 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020120006
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016982
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃幸
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-152093(JP,A)
【文献】特表2016-519197(JP,A)
【文献】特表2003-511526(JP,A)
【文献】特開2015-054892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三フッ化ホウ素錯体触媒を用い石油類の熱分解及び/又は精製により得られる炭化水素留分より石油樹脂を製造する際に、少なくとも気体状の三フッ化ホウ素1モルに対し、配位子となる液状の含酸素有機化合物1.0~3.5モルをスタティックミキサーにて気液接触混合し、三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程、を有する製造方法とすることを特徴とする石油樹脂の製造方法。
【請求項2】
含酸素有機化合物が、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類及びフェノール類からなる群より選ばれる少なくとも1種の含酸素有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項3】
管内流速0.1~15m/秒、温度0~50℃の範囲でスタティックミキサーにて気液接触混合を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項4】
スタティックミキサーが、エレメント10~40の範囲を有するスタティックミキサーであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項5】
スタティックミキサーが、内径(d)と長さ(L)との比(L/d)が2~200のものであることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項6】
炭化水素留分、気体状のフッ化ホウ素及び含酸素有機化合物を連続で供給する石油樹脂の連続製造方法であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の石油樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油樹脂の製造方法に関するものであり、更に詳しくは、石油樹脂の製造工程中に、三フッ化ホウ素と配位子から三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程を有することから、重合収率や色相の改善された石油樹脂を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分を原料油として、含酸素有機化合物を配位子とした三フッ化ホウ素錯体触媒の存在下に重合を行い、石油樹脂を製造する方法は工業的に実施されている。その際、三フッ化ホウ素錯体触媒として、市販の三フッ化ホウ素フェノール錯体、三フッ化ホウ素ブタノール錯体などが一般的には用いられる。
【0003】
そして、重合収率や樹脂色相の改良方法として、複数の配位子から成る三フッ化ホウ素錯体触媒を用いることが提案されている(例えば特許文献1~3参照)。
【0004】
また、原料油と配位子の混合物に三フッ化ホウ素ガスを吹き込み、重合反応器内にて三フッ化ホウ素錯体触媒の調製と重合とを同時に実施する、石油樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6083196号
【文献】特許第6083224号
【文献】特許第6179095号
【文献】特開昭56-106912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来、石油樹脂の製造においては、一般的に三フッ化ホウ素錯体触媒を触媒タンクにて長期保管を行うことが必要であった。そして、その際に三フッ化ホウ素錯体触媒の組成や濃度が変化して、触媒活性の低下や樹脂品質の低下に繋がっていた。この課題は、特許文献1~3に提案の複数の配位子から成る三フッ化ホウ素錯体触媒においても解決されないものであった。
【0007】
また、特許文献4に提案の重合器に原料と配位子と三フッ化ホウ素ガスを供給し、三フッ化ホウ素錯体触媒の調製とそれを用いた重合を同時に実施する方法においては、原料中に含まれる水分や不純物なども配位子となり所望しない三フッ化ホウ素錯体を形成するため、目的とする三フッ化ホウ素錯体触媒の収率や純度の低下を誘引し、石油樹脂の収率や品質を低下させる原因となるという課題を有するものであった。
【0008】
そこで、より重合収率や色相の改善された石油樹脂を製造する方法の出現が切望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に関して、鋭意検討した結果、三フッ化ホウ素錯体触媒を用い石油樹脂を製造する際に、三フッ化ホウ素と含酸素有機化合物とを接触混合し、三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程を付随した石油樹脂の製造方法とすることにより、高純度の三フッ化ホウ素錯体触媒が得られ、該高純度三フッ化ホウ素錯体触媒により、重合収率や色相の改善された石油樹脂の製造方法となることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、三フッ化ホウ素錯体触媒を用い石油類の熱分解及び/又は精製により得られる炭化水素留分より石油樹脂を製造する際に、少なくとも気体状の三フッ化ホウ素1モルに対し、液状の含酸素有機化合物1.0~3.5モルをスタティックミキサーにて気液接触混合し、三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程、を有する製造方法とすることを特徴とする石油樹脂の製造方法に関するものである。
【0011】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の石油樹脂の製造方法は、三フッ化ホウ素錯体触媒を用い炭化水素留分の重合を行い、石油樹脂を製造する際に、少なくとも気体状の三フッ化ホウ素1モルに対し、液状の含酸素有機化合物1.0~3.5モルをスタティックミキサーにて気液接触混合し、三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程、を有する製造方法とするものである。
【0013】
ここで、気体状の三フッ化ホウ素とは、常温常圧で気体状を示す三フッ化ホウ素であればよく、その純度としては99wt%以上のものであることが好ましく、特に純度99.5wt%以上のものであることが好ましい。
【0014】
また、含酸素有機化合物とは、三フッ化ホウ素錯体触媒において配位子となるものであり、該含酸素有機化合物としては、メタノール,エタノール,1-プロパノール,2-プロパノール,1-ブタノール,2-ブタノール,イソブタノール,t-ブタノール,1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル,ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸,プロピオン酸,ヒドロキシ安息香酸,安息香酸等のカルボン酸類、フェノール,アルキルフェノール,レゾルシン,等のフェノール類、等を挙げることができる。
【0015】
三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する際の該三フッ化ホウ素と該含酸素有機化合物との割合は、三フッ化ホウ素1モルに対して、含酸素有機化合物1.0~3.5モルの範囲であり、該範囲とすることにより、重合収率に優れ、得られる石油樹脂が色相に優れるものとなる。ここで、含酸素有機化合物のモル比が1.0モル未満である場合、含酸素有機化合物が不足し、錯体を形成しない三フッ化ホウ素が発生してロスとなるばかりか、悪影響を及ぼし得られる石油樹脂は色調に劣るものとなる。一方、3.5モルを超える場合、充分な性能を発現する触媒とはならず、充分な重合収率が得られない。なお、三フッ化ホウ素の供給量は、後述する石油類の熱分解及び/又は精製により得られる炭化水素留分である原料油に対して0.01~1質量%の範囲内とすることが好ましく、特に0.02~0.7質量%の範囲内、さらに0.03~0.5質量%の範囲内とすることが好ましい。
【0016】
本発明の製造方法においては、三フッ化ホウ素錯体触媒はスタティックミキサーにおいて調製されるものである。その際に、気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物のそれぞれをスタティックミキサーの上流側に供給し、スタティックミキサー入口では気体状の三フッ化ホウ素の連続相に、含酸素有機化合物の液体が分散した状態でスタティックミキサーに供給される。そして、スタティックミキサー内で気液接触混合を繰り返し、出口では液状の三フッ化ホウ素錯体が触媒として調製される。
【0017】
三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する際の条件としては、三フッ化ホウ素錯体の調製が可能であれば如何なる条件であってもよく、効率的な三フッ化ホウ素錯体の調製が可能となることからスタティックミキサー入口においては、気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物との混合物の管内流速を0.1~15m/秒とすることが好ましい。また、三フッ化ホウ素と含酸素有機化合物の錯化反応は発熱反応のため、スタティックミキサー出口温度を0~50℃の範囲に保持できる条件、例えば除熱を行うことが好ましい。
【0018】
本発明におけるスタティックミキサーとは、駆動部のないラインミキサーと称されるものであり、気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物の高い気液接触効率を有するものであれば、特に限定されない。そして、スタティックミキサーは、流体の流れを乱すために、1個のスタティックミキサーの内部が複数の部材(以下、「エレメント」という場合がある)で構成されている。例えば、平板を捩ったエレメントを、角度を変えて交互に配置する等して、流体の流れを乱すことができる。スタティックミキサーのエレメント数は、スタティックミキサー出口で液状の三フッ化ホウ素錯体を得ることができれば特に限定されないが、10~40の範囲が好ましい。
【0019】
さらに、本発明におけるスタティックミキサーは、混合が充分で三フッ化ホウ素の錯化が効率的に進行すると共に、圧力損失の課題が発生しにくいことから内径(d)と長さ(L)との比(L/d)が2~200であることが好ましく、5~100であることがより好ましい。
【0020】
スタティックミキサーにより調製された三フッ化ホウ素錯体触媒をそのままで、石油樹脂の製造方法に適用(in situ)する製造方法、例えば石油類の熱分解及び/又は精製により得られる炭化水素留分を原料油とした重合反応に、上記した三フッ化ホウ素錯体触媒の調製工程を付随・適用することにより、分子量、軟化点、色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造することができる。
【0021】
その際の原料油としては、例えば石油類の熱分解及び/又は精製により得られる、沸点範囲20~110℃のC5留分、沸点範囲140~280℃のC9留分、等を挙げることができる。
【0022】
該C5留分としては、一般的に石油類の熱分解及び/又は精製により得られる沸点範囲20~110℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばイソプレン、トランス-1,3-ペンタジエン、シス-1,3-ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4~6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4~6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素;これらの混合物、等が挙げられる。
【0023】
該C9留分としては、一般的に石油類の熱分解及び/又は精製により得られる沸点範囲140~280℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、インデンのアルキル誘導体等に代表される炭素数8~10のビニル芳香族炭化水素類;炭素数10以上のオレフィン類;炭素数9以上の飽和芳香族類;ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン類;これらの混合物、等が挙げられる。
【0024】
該原料油として、該C5留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族系石油樹脂と称されるものとなる。また、該C9留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。該C5留分と該C9留分の混合物(その際の混合割合は任意である。)を用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族/芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。
【0025】
そして、石油樹脂を製造する際には、スタティックミキサーを用いて気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物とから三フッ化ホウ素錯体触媒を調製し、原料油に対して供給し、重合を行うこと以外の如何なる制限を受けることはなく、例えば原料油に該三フッ化ホウ素錯体触媒を加え加熱し重合することにより石油樹脂を製造することができる。その際の重合温度としては、任意であり、特に色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造できることから、0~100℃が好ましく、特に0~80℃であることが好ましい。重合時間としては、0.1~10時間の範囲が好ましい。反応圧力は大気圧~1MPaが好ましい。また、特に生産効率に優れる製造方法となることから、スタティックミキサーを用いて気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物とから連続的に三フッ化ホウ素錯体触媒を調製すると共に、重合反応場に連続的に供給する原料油に対して連続的に供給し、重合反応を行う連続製造方法とすることが好ましい。
【0026】
本発明の石油樹脂の製造方法においては、重合反応後は、塩基による中和処理により触媒を除去し、溶媒及び未反応モノマーを留去して石油樹脂として回収・製造することが来出る。
【0027】
そして、得られる石油樹脂は、色相および重合収率に優れることを特徴とするものであり、特に色相10以下、全モノマーの重合収率が40%以上であることが好ましい。また、軟化点60~160℃、特に70~150℃を有するものであることが好ましい。特に加工性に優れるものとなることから重量平均分子量(Mw)500~5000である石油樹脂が好ましい。
【発明の効果】
【0028】
スタティックミキサーを用い気体状の三フッ化ホウ素と液状の含酸素有機化合物から三フッ化ホウ素錯体触媒を調製する工程を有することから、高純度の三フッ化ホウ素錯体触媒の調製と石油樹脂の製造を一貫して実施することで、重合収率、樹脂色相の優れる石油樹脂を製造することができる。
【実施例
【0029】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例において用いた原料油、得られた石油樹脂の分析方法は下記の通りである。
【0030】
<原料油>
ナフサの分解・精製により得られた沸点範囲140~280℃のC9留分(表1)、沸点範囲20~110℃のC5留分(表2)のそれぞれの組成を表1~2に示す。なお、表1~2中のDCPDはジシクロペンタジエン、CPDはシクロペンタジエンの略記である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
<三フッ化ホウ素錯体触媒及びその原料>
三フッ化ホウ素:(ステラケミファ(株)製)、純度99.7%
三フッ化ホウ素フェノール錯体:三フッ化ホウ素30重量%(ステラケミファ(株)製)。
三フッ化ホウ素ブタノール錯体:三フッ化ホウ素30重量%(ステラケミファ(株)製)。
フェノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)。
1-ブタノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)。
2-プロパノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)。
【0034】
~分析方法~
<各原料油中の成分分析>
JIS K-0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法を用いて分析した。
<重合収率の測定>
仕込み原料と重合後に得られる石油樹脂の重量を秤量し、原料に対する石油樹脂の比率を重合収率とした。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリスチレンを標準物質とし、JIS K-0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
<軟化点の測定>
JIS K-2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
<色相(ガードナー)の測定>
得られた石油樹脂を50重量%トルエン溶液として、ASTM D-1544-63Tに従って測定した。
【0035】
実施例1
上流部にガス供給口と混合槽を設置した液体供給口とを有するスタティックミキサーと共に、別途原料油の混合槽をも設置する重合槽を有し、さらに該重合槽の下流部には重合反応後の重合液を中和するための中和槽、及びその後の未反応油を蒸留除去するための濃縮器のそれぞれを有する連続製造装置にて石油樹脂の製造を行った。
【0036】
スタティックミキサーのガス供給口に三フッ化ホウ素を0.75g/分(11mmol/分)で供給すると共に、フェノールを1.96g/分(21mmol/分)、1-ブタノール0.45g/分(6mmol/分)を混合槽に供給し混合液を2.41g/分の条件にてスタティックミキサーA(L/D=100mm/3.4mm=29、エレメント数17)に供給し、三フッ化ホウ素錯体の調製を行った。その際の条件を表3に示す通りとすると共に、スタティックミキサーの出口温度は冷却により25℃とした。スタティックミキサー出口からは三フッ化ホウ素錯体の均一液体が吐出され、三フッ化ホウ素錯体触媒として3.16g/分で重合槽へ供給した。
【0037】
一方、表2に示すC5留分を192g/分と表1に示すC9留分を108g/分の条件にて原料油の混合槽に供給し混合原料油とし、該混合原料を300g/分で重合槽へ供給することにより石油樹脂の重合を行った。その際、重合温度を40℃、滞留時間を2時間とした。
【0038】
そして、重合後の重合液を303.16g/分で連続的に重合槽から中和槽に移送し、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、濃縮器に移送し油相の未反応油を蒸留して石油樹脂を得た。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は41%であり、色相も8と優れるものであった。
【0039】
比較例1
スタティックミキサーを用いず、三フッ化ホウ素錯体触媒3.16g/分の代わりに、30%三フッ化ホウ素フェノール錯体2.81g/分および30%三フッ化ホウ素ブタノール錯体0.65g/分の混合物を3.51g/分で重合槽へ供給し、重合液を303.46g/分で連続的に重合槽から中和槽に移送した以外は、実施例1と同様の方法にて石油樹脂の製造を行った。得られた石油樹脂の物性を表4に示す。重合収率は38%と低く、色相は11と悪いものであった。
【0040】
実施例2
三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表3に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を4.755g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表3に示すものするとともに、重合槽からの移送量を454.755g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は40%であり、色相7と良好であった。
【0041】
比較例2
スタティックミキサーを用いず、三フッ化ホウ素錯体触媒4.755g/分の代わりに、30%三フッ化ホウ素フェノール錯体4.21g/分および30%三フッ化ホウ素ブタノール錯体0.97g/分の混合物を5.18g/分で重合槽へ供給し、重合液を455.18g/分で連続的に重合槽から中和槽に移送した以外は、実施例2と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表4に示す。重合収率は36%と低く、色相11と悪いものであった。
【0042】
実施例3
スタティックミキサーB(L/D=310mm/9mm=34、エレメント数18)とし、三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表3に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を444g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表3に示すものするとともに、重合槽からの移送量を42444g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は42%であり、色相は7と良好であった。
【0043】
実施例4
三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表3に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を1.8g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表3に示すものするとともに、重合槽からの移送量を301.8g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は42%であり、色相は8と良好であった。
【0044】
実施例5
三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表3に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を3.98g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表3に示すものするとともに、重合槽からの移送量を303.98g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は40%であり、色相は7と良好であった。
【0045】
実施例6
三フッ化ホウ素、フェノール、2-プロパノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表3に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を3.08g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表3に示すものするとともに、重合槽からの移送量を303.08g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表3に示す。重合収率は42%であり、色相は8と良好であった。
【0046】
【表3】
【0047】
比較例3
三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表4に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を1.62g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表4に示すものするとともに、重合槽からの移送量を301.62g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表4に示す。重合収率は33%であり、色相は11と悪いものであった。
【0048】
比較例4
三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノールの供給量、スタティックミキサーの条件を表4に示すものとすると共に、三フッ化ホウ素錯体触媒の供給量を4.44g/分とし、C9留分、C5留分の供給量を表4に示すものするとともに、重合槽からの移送量を304.44g/分とした以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂の物性を表4に示す。重合収率は30%であり、色相は12と悪いものであった。
【0049】
比較例5
スタティックミキサーを用いずに、三フッ化ホウ素、フェノール、1-ブタノール、C9留分、C5留分を重合槽に同時に供給した以外は、実施例3と同じ条件で石油樹脂を製造した。得られた石油樹脂は、重合収率は40%であり、色相は12と悪いものであった。原料油中に含まれる水と三フッ化ホウ素が、色相を悪化させる三フッ化ホウ素-水錯体を副生したためと推定した。
【0050】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明によれば、調製直後の高純度の三フッ化ホウ素錯体触媒を石油樹脂の製造に利用することが可能になり、重合収率や樹脂色相が大幅に改善される。本技術を石油樹脂プロセスに応用することで原料原単位の低減、樹脂品質の改善が図られ、その産業的価値は極めて高いものである。