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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】樹脂封止型電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240625BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
B29C45/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020184409
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074405
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 一銘
(72)【発明者】
【氏名】藤森 亮利
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-106879(JP,A)
【文献】特開2012-069870(JP,A)
【文献】特開2019-104212(JP,A)
【文献】特開2018-084444(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0168183(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/00-3/26
H05K 5/00-5/06
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品本体を樹脂ハウジングによって封止してなる樹脂封止型電子部品であって、
前記樹脂ハウジングは、前記電子部品本体を収容する収容空間を挟んで第1の方向に並ぶ一対の樹脂部材と、前記一対の樹脂部材のそれぞれの少なくとも一部を覆うように成形されたモールド樹脂からなる封止部材とを備え、
前記一対の樹脂部材のうち一方の樹脂部材の一部と他方の樹脂部材の一部とが、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に並び、前記モールド樹脂が前記収容空間に入り込むことを抑止する抑止構造を形成
前記一方の樹脂部材に設けられた突起と前記他方の樹脂部材に設けられた突起との隙間の少なくとも一部が、前記モールド樹脂が前記収容空間側に流れる場合の下流側ほど前記第2の方向において前記収容空間から離れるように形成されている、
樹脂封止型電子部品。
【請求項2】
前記一方の樹脂部材に形成された凹部に前記他方の樹脂部材の前記突起が収容されている、
請求項に記載の樹脂封止型電子部品。
【請求項3】
前記一方の樹脂部材の前記一部と前記他方の樹脂部材の前記一部との間を前記モールド樹脂が前記収容空間側に流れる場合の流路が、鋭角又は直角に折れ曲がる屈曲部を有する、
請求項1又は2に記載の樹脂封止型電子部品。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか1項に記載の樹脂封止型電子部品の製造方法であって、
前記一対の樹脂部材を、前記収容空間に前記電子部品本体を収容して金型内に配置する配置工程と、
前記金型内に溶融した前記モールド樹脂を注入して前記封止部材を成形する射出成形工程とを有し、
前記射出成形工程において、前記一方の樹脂部材の前記一部と前記他方の樹脂部材の前記一部のうち、前記第2の方向において前記収容空間から遠い側に位置する前記一部が、溶融した前記モールド樹脂の流体圧によって前記収容空間側に押し付けられる、
樹脂封止型電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品本体を樹脂ハウジングによって封止してなる樹脂封止型電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品本体を樹脂ハウジングによって封止してなる樹脂封止型電子部品が、例えば自動車において駆動源の駆動力を伝達するシャフトのトルクを検出するためのトルクセンサとして用いられている。本出願人は、このようなトルクセンサとして、特許文献1に記載されたものを提案している。
【0003】
特許文献1に記載されたトルクセンサは、樹脂製のボビンに絶縁電線を巻き付けてなる電子部品本体としてのコイル部材と、コイル部材を覆うように樹脂をモールドして形成されたインナーモールドと、インナーモールドを覆うように樹脂をモールドして形成されたアウターモールドと、を有して構成されている。ボビンの外周面には、検出対象であるシャフトの軸方向に対して一方側及び他方側にそれぞれ45°傾斜して互いに交差する複数の傾斜溝が形成されており、これらの傾斜溝に絶縁電線が収容されている。コイル部材をインナーモールド及びアウターモールドで覆うことにより、耐環境性が向上し、例えば潤滑油や泥水等に晒される部位にもトルクセンサを配置することが可能となる。
【0004】
また、本出願人は、積層された複数のフレキシブル基板のそれぞれに設けられた配線パターンによって検出コイルを形成したトルクセンサを提案している(特許文献2参照)。このように検出コイルを形成することにより、特許文献1に記載されたもののようにボビンに絶縁電線を巻き付ける必要がなく、低コスト化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-85814号公報
【文献】特開2017-49124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献2に記載された複数のフレキシブル基板をモールド樹脂からなる封止部材よって封止してトルクセンサを構成すれば、耐環境性に優れた低コストなトルクセンサを得ることができる。しかし、複数のフレキシブル基板を直接的にモールド樹脂によって封止することとすれば、封止部材の成形時におけるモールド樹脂の流体圧によってフレキシブル基板が変形してしまい、検出コイルが適切な形状に形成されなかったり、断線が発生してしまう等のおそれがある。
【0007】
また、この対策として、予め成形された一対の樹脂部材を組み合わせて形成される収容空間に複数のフレキシブル基板を収容した状態で、これら一対の樹脂部材のそれぞれの少なくとも一部を覆うようにモールド樹脂を成形することが考えられる。しかし、この場合でも、封止部材の成形時に多くの溶融したモールド樹脂が一対の樹脂部材の隙間から収容空間内に侵入してしまうと、フレキシブル基板の変形や損傷が発生するおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、モールド樹脂からなる封止部材を含む樹脂ハウジングによって電子部品本体を封止しながらも、溶融したモールド樹脂によって電子部品本体に変形や損傷等が発生してしまうことを抑制することが可能な樹脂封止型電子部品、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、電子部品本体を樹脂ハウジングによって封止してなる樹脂封止型電子部品であって、前記樹脂ハウジングは、前記電子部品本体を収容する収容空間を挟んで第1の方向に並ぶ一対の樹脂部材と、前記一対の樹脂部材のそれぞれの少なくとも一部を覆うように成形されたモールド樹脂からなる封止部材とを備え、前記一対の樹脂部材のうち一方の樹脂部材の一部と他方の樹脂部材の一部とが、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に並び、前記モールド樹脂が前記収容空間に入り込むことを抑止する抑止構造を形成する、樹脂封止型電子部品を提供する。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記樹脂封止型電子部品の製造方法であって、前記一対の樹脂部材を、前記収容空間に前記電子部品本体を収容して金型内に配置する配置工程と、前記金型内に溶融した前記モールド樹脂を注入して前記封止部材を成形する射出成形工程とを有し、前記射出成形工程において、前記一方の樹脂部材の前記一部と前記他方の樹脂部材の前記一部のうち、前記第2の方向において前記収容空間から遠い側に位置する前記一部が、溶融した前記モールド樹脂の流体圧によって前記収容空間側に押し付けられる、樹脂封止型電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る樹脂封止型電子部品及びその製造方法によれば、モールド樹脂からなる封止部材を含む樹脂ハウジングによって電子部品本体を封止しながらも、溶融したモールド樹脂によって電子部品本体に変形や損傷等が発生してしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る樹脂封止型電子部品の一例としてのトルクセンサを示す外観斜視図である。
図2図1のA-A線断面におけるトルクセンサの断面をトルクの検出対象であるシャフトと共に示す断面斜視図である。
図3】(a)は、トルクセンサの一部を拡大して示す断面図である。(b)は、第2のフレキシブル基板の一方の面に設けられた配線パターンを示す平面図である。(c)は、第2のフレキシブル基板の他方の面に設けられた配線パターンを示す平面図である。
図4】(a)は、第1の樹脂部材を示す全体斜視図である。(b)は、第1の樹脂部材の一部を示す部分斜視図である。
図5】(a)は、第2の樹脂部材を断面で示す断面斜視図である。(b)は、第2の樹脂部材の一部を示す部分斜視図である。
図6】(a)及び(b)は、上型及び下型を有する金型を用いて封止部材を成形する前後の状態を示す説明図である。
図7】比較例に係るトルクセンサの射出成形工程を示す断面図である。
図8】(a)及び(b)は、第1及び第2の変形例に係るトルクセンサの一部を示す断面図である。
図9】(a)乃至(c)は、第3乃至第5の変形例に係るトルクセンサの一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る樹脂封止型電子部品の一例としてのトルクセンサ1を示す外観斜視図である。図2は、図1のA-A線断面におけるトルクセンサ1の断面をトルクの検出対象であるシャフト8と共に示す断面斜視図である。トルクセンサ1は、例えば自動車に搭載され、シャフト8によって伝達されるトルクを検出する。シャフト8は、回転軸線Oを中心として回転し、エンジン等の駆動源の駆動力を伝達する。
【0014】
トルクセンサ1は、電子部品本体である円筒状の検出部2を樹脂ハウジング3によって封止して構成されている。ここで、封止とは、トルクセンサ1の使用時において、液体や粉塵等の異物が樹脂ハウジング3の外部から侵入して検出部2に触れないようにすることをいう。検出部2は、シャフト8によって伝達されるトルクの大きさに応じた電気信号を、樹脂ハウジング3から導出されたケーブル7によって不図示の制御装置に出力する。ケーブル7は、一対の信号線71,72を含む複数の電線を有し、これら複数の電線をシース73によって一括して覆って構成されている。
【0015】
シャフト8は、磁歪効果を有する強磁性体である。磁歪とは、強磁性体に磁場を印加して磁化させると形状に歪(ひずみ)が現れる現象である。そして、この現象を逆に利用し、形状の歪によって発生する磁界を検出部2で検出することで、シャフト8に作用するトルクを検出することができる。シャフト8としては、例えばクロム鋼、クロムモリブデン鋼、又はニッケルクロムモリブデン鋼等のクロムを含有するクロム鋼からなる軸状体に浸炭焼入れ及び焼戻し処理を施し、さらにショットピーニングを施したものを好適に用いることができる。
【0016】
樹脂ハウジング3は、第1及び第2の樹脂部材4,5と、第1及び第2の樹脂部材4,5のそれぞれの少なくとも一部を覆うように成形されたモールド樹脂からなる封止部材6とを備えている。検出部2は、一対の樹脂部材4,5の間に形成される収容空間30に収容されている。収容空間30は、シャフト8を囲むように、環状に形成されている。
【0017】
図3(a)は、トルクセンサ1の一部を拡大して示す断面図である。検出部2は、積層された第1乃至第3のフレキシブル基板21~23を有して構成されている。第1のフレキシブル基板21及び第3のフレキシブル基板23の片面、及び第2のフレキシブル基板22の両面には、それぞれ銅箔からなる配線パターン211,231,221,222が設けられており、第2のフレキシブル基板22が第1のフレキシブル基板21と第3のフレキシブル基板23との間に配置されている。第1乃至第3のフレキシブル基板21~23は、環状に湾曲して収容空間30に収容されている。
【0018】
第2のフレキシブル基板22の一方の面と第1のフレキシブル基板21における配線パターン211が設けられていない面との間、及び第2のフレキシブル基板22の他方の面と第3のフレキシブル基板23における配線パターン231が設けられていない面との間には、それぞれ接着層241,242が設けられ、これらの接着層241,242によって第1乃至第3のフレキシブル基板21~23が一体化されている。また、第1のフレキシブル基板21における配線パターン211が設けられた面、及び第3のフレキシブル基板23における配線パターン231が設けられた面には、それぞれ接着層243,244によって保護膜としてのカバーレイ25,26が接合されている。
【0019】
第1乃至第3のフレキシブル基板21~23の配線パターン211,221,222,231は、シャフト8の歪によって発生する磁界を検出するためのコイルを形成している。第1乃至第3のフレキシブル基板21~23には、それぞれ複数の端子部が設けられており、一部の端子部は、信号線71,72に接続されている。
【0020】
図3(b)は、第2のフレキシブル基板22の一方の面22aに設けられた配線パターン221を示す平面図である。図3(c)は、第2のフレキシブル基板22の他方の面22bに設けられた配線パターン222を示す平面図である。第2のフレキシブル基板22の一方の面22aには、10個の検出コイル221a~221jが配線パターン221によって形成され、第2のフレキシブル基板22の他方の面22bには、10個の検出コイル222a~222jが配線パターン222によって形成されている。
【0021】
また、第2のフレキシブル基板22には、図3(b)及び(c)に黒丸で示す複数のビア(via)V、及び複数の端子部224a~224dが設けられている。それぞれのビアVは、第2のフレキシブル基板22の一方の面22aの配線パターン221と他方の面22bの配線パターン222とを接続すると共に、これらの配線パターン221,222と、第1及び第3のフレキシブル基板21,23の配線パターン211,213との接続のためにも用いられている。
【0022】
図4(a)は、第1の樹脂部材4を示す全体斜視図であり、図4(b)は、第1の樹脂部材4の一部を示す部分斜視図である。図5(a)は、第2の樹脂部材5を断面で示す断面斜視図であり、図5(b)は、第2の樹脂部材5の一部を示す部分斜視図である。図6(a)及び(b)は、上型91及び下型92を有する金型9を用いて封止部材6を成形する前後の状態を示す説明図である。
【0023】
第1及び第2の樹脂部材4,5は、予め射出成形によって形成され、互いに組み合わされて収容空間30を形成する。封止部材6を成形する際には、収容空間30に検出部2を収容した状態で第1及び第2の樹脂部材4,5を上型91と下型92との間に配置し、上型91に設けられた注入孔910からキャビティ90内に溶融した樹脂を注入する。本実施の形態では、上型91に一つ以上の注入孔910が設けられている。本実施の形態では、三つの注入孔910が上型91に設けられており、成形された封止部材6の端面6a(図1参照)には、それぞれの注入孔910に対応する三つの注入痕31~33(図1参照)が形成される。
【0024】
以下の説明では、シャフト8の回転軸線Oと平行な方向を軸方向といい、回転軸線Oに対して垂直な方向を径方向という。本実施の形態では、径方向が本発明の「第1の方向」に、軸方向が「第2の方向」に、それぞれ相当し、軸方向(第1の方向)と径方向(第2の方向)とが互いに垂直に交差している。また、以下の説明では、便宜上、軸方向の一側を上方といい、軸方向の他側を下方というが、この上方及び下方は、必ずしもトルクセンサ1の使用状態における鉛直方向の上下を示すものではない。
【0025】
第1の樹脂部材4は、円筒状に形成された内側円筒部41と、内側円筒部41の上端部付近から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42と、内側円筒部41の下方に設けられた底板部43と、ケーブル7の信号線71,72を導く第1のガイド部44とを一体に有している。内側円筒部41は、内周面41aがシャフト8に対向する。内側円筒部41の外周面41bは、第1の蓋部42よりも下方にあたる部分が検出部2に対向している。第1の蓋部42及び底板部43は、内側円筒部41の外周面41bから径方向外方に向かって突出して環状に形成されている。第1のガイド部44は、底板部43の外縁からさらに径方向外方に突出して形成されている。
【0026】
第1の蓋部42と底板部43とは、収容空間30を挟んで軸方向に並んでいる。第1の蓋部42は、図4(b)に示すように、軸方向に沿った断面の形状が台形状であり、その一部が上方に向かって突出する第1の突起421となっている。第1の突起421と内側円筒部41との間には、第1の凹部40が環状に形成されている。第1の蓋部42において底板部43と向かい合う下面42aは、内側円筒部41の外周面41bに対して垂直である。第1の蓋部42は、外径側ほど軸方向の厚みが大きくなっており、下面42aの軸方向の反対面にあたる上面42bは、外径側ほど下面42aとの間隔が広くなるように、径方向に対して傾斜している。
【0027】
第1の蓋部42の外周面42cは、内側円筒部41の外周面41bと平行である。第1の突起421は、軸方向に沿った断面において、上面42b及び外周面42cが鋭角の角度θをなす略三角形状に形成されている。角度θの望ましい範囲は、30°以上かつ60°以下であり、本実施の形態では、一例として、角度θが45°である。
【0028】
第2の樹脂部材5は、円筒状に形成された外側円筒部51と、外側円筒部51の上方に設けられた第2の蓋部52と、ケーブル7の信号線71,72を導く第2のガイド部53とを一体に有している。外側円筒部51は、内周面51aが検出部2に対向し、外周面51bが封止部材6に覆われる。第2の蓋部52は、外側円筒部51の内周面51aから径方向内方に向かって突出して環状に形成されている。第2のガイド部53は、外側円筒部51の外周面51bから径方向外方に突出して形成されている。
【0029】
第1の樹脂部材4及び第2の樹脂部材5は、内側円筒部41と外側円筒部51とが、収容空間30を挟んで径方向に並んで配置される。また、第1のガイド部44と第2のガイド部53とは、互いに組み合わされてシース73を挟み、シース73から延びる信号線71,72を収容空間30側に案内する。第1のガイド部44及び第2のガイド部53は、樹脂ハウジング3からケーブル7が導出される端部を除き、略全体が封止部材6に覆われる。
【0030】
第2の蓋部52は、軸方向の厚さが一定で外側円筒部51と連続して形成された環状の基部521と、基部521の径方向内側に設けられた環状の堰部522とを有している。堰部522は、封止部材6の成形時において、第1の樹脂部材4との隙間からの溶融樹脂の収容空間30側への流れを堰き止める機能を有している。溶融樹脂は、封止部材6を構成するモールド樹脂が加熱されて液状化した樹脂である。
【0031】
第2の蓋部52の上面52aは、基部521及び堰部522にわたり、軸方向に対して垂直な段差のない環状平面に形成されている。上型91の複数の注入孔910は、この上面52aに対向する位置に開口しており、封止部材6となる溶融樹脂が注入孔910から上面52aに向かって注入される。
【0032】
堰部522は、図5(b)に示すように、軸方向に沿った断面の形状が台形状であり、その一部が下方に向かって突出する第2の突起523となっている。
第2の突起523と第1の突起421とは、軸方向に沿って並ぶ。上面52aの反対面にあたる堰部522の下面522aは、内径側ほど上面52aとの間隔が広くなるように、径方向に対して傾斜している。基部521の軸方向の厚さは、第2の蓋部52における内径側の端部の軸方向の厚さ(堰部522の最大厚さ)よりも厚い。基部521の下面521aは、外側円筒部51の内周面51aに対して垂直な環状の平面であり、基部521の内周面521bは、径方向に対して垂直に形成されている。第2の突起523と基部521との間には、第2の凹部50が環状に形成されている。
【0033】
堰部522の内周面522bは、外側円筒部51の内周面51aと平行である。第2の突起523は、軸方向に沿った断面において、下面522a及び内周面522bが鋭角の角度θをなす略三角形状に形成されている。角度θは、第1の蓋部42の第1の突起421における角度θと同角度であり、第1の樹脂部材4と第2の樹脂部材5とが組み合わされたとき、第1の凹部40に第2の突起523が収容されると共に第2の凹部50に第1の突起421が収容され、第1の蓋部42の上面42bと堰部522の下面522aとが互いに平行に向かい合う。また、堰部522の内周面522bと内側円筒部41の外周面41bにおける第1の蓋部42よりも上方にあたる部分、及び第1の蓋部42の外周面42cと基部521の内周面521bは、径方向沿って互いに平行に向かい合う。なお、角度θは必ずしも角度θと同角度でなくともよく、角度θが例えば角度θ±10°の範囲であればよい。
【0034】
図6(a)に示すように、第1及び第2の樹脂部材4,5の寸法公差によっては、堰部522の内周面522bと内側円筒部41の外周面41aとの間の第1隙間S、第1の蓋部42の上面42bと堰部522の下面522aとの第2隙間S、及び第1の蓋部42の外周面42cと基部521の内周面521bとの第3隙間Sのそれぞれの幅が、溶融樹脂が流動し得る程度の幅(例えば0.1mm)以上になる場合がある。そして、溶融樹脂が収容空間30内に侵入すると、溶融樹脂の圧力によって第1乃至第3のフレキシブル基板21~23が変形したり、ビアVの周辺で断線が発生する等、検出部2の破損が発生するおそれがある。
【0035】
本実施の形態では、第2の突起523と第1の突起421とが軸方向に重なり合ってラビリンス構造を形成することで、第1隙間S、第2隙間S、及び第3隙間Sを含む流路Sを介して溶融樹脂が収容空間30内に入り込むことを抑止している。このラビリンス構造は、溶融樹脂が流路Sを収容空間30側に流れる際の経路を複雑化することで、溶融樹脂が収容空間30に入り込むことを抑止する抑止構造である。より具体的には、第1及び第2の樹脂部材4,5の軸方向断面において、第1隙間Sと第2隙間Sとが角度θで鋭角に折れ曲がり、第2隙間Sと第3隙間Sとが角度θで鋭角に折れ曲がる(流路Sが蛇行する)ことで、第1隙間Sから第2隙間Sへ溶融樹脂が流れる場合の流動抵抗、及び第2隙間Sから第3隙間Sへ溶融樹脂が流れる場合の流動抵抗が大きくなり、溶融樹脂が収容空間30内に入り込むことが抑止されている。すなわち、本実施の形態では、溶融樹脂が第1の樹脂部材4と第2の樹脂部材5との間を収容空間30側に流れる場合の流路Sが、鋭角に折れ曲がる二箇所の屈曲部S01,S02を有している。
【0036】
第1の蓋部42の上面42b及び堰部522の下面522aは、第2隙間Sを介して互いに向かい合う対向面であり、第2隙間Sは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の下流側ほど、軸方向において収容空間30から離れるように傾斜して形成されている。なお、本実施の形態では、第2隙間Sの全体が、下流側にあたる第3隙間S側ほど収容空間30から離れるように傾斜しているが、これに限らず、第2隙間Sの少なくとも一部が、第1隙間S側から第3隙間S側に向かうほど収容空間30から離れるように傾斜していればよい。
【0037】
また、本実施の形態では、軸方向において第1の突起421よりも収容空間30から遠い側にある第2の突起523が、図6(b)に示すように、溶融樹脂の流体圧によって第1の突起421に向かって押し付けられることで第2隙間Sが狭くなり、収容空間30側への溶融樹脂の流れがより確実に抑止される。注入孔910は、その開口の少なくとも一部が第2の蓋部52と軸方向に並ぶように形成されており、注入孔910から注入された溶融樹脂の圧力が直接的に第2の蓋部52の上面52aに作用する。そして、この圧力によって第2の蓋部52が変形し、第2の突起523が第1の蓋部42の上面42bに押し付けられる。
【0038】
図6(b)では、第2の突起523が第1の蓋部42の上面42bに当接した状態で封止部材6が形成された状態を図示しているが、第2の突起523が第1の蓋部42の上面42bに接しなくてもよく、溶融樹脂が注入された後に第2の蓋部52が元の形状に復元してもよい。注入孔910内の溶融樹脂は、固化した後に取り除かれ、その痕跡が注入痕31~33となる。
【0039】
(トルクセンサ1の製造方法)
次に、トルクセンサ1の製造方法について説明する。トルクセンサ1は、第1の樹脂部材4、第2の樹脂部材5、及び検出部2を形成し、検出部2にケーブル7を接続する準備工程と、収容空間30に検出部2を収容した第1及び第2の樹脂部材4,5を金型9内に配置する配置工程と、金型9内に溶融樹脂を注入して封止部材6を成形する射出成形工程とによって製造される。射出成形工程では、前述のように、第2の突起523が溶融樹脂の流体圧によって第1の突起421に向かって押し付けられ、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路を塞ぐ。
【0040】
(比較例)
図7は、比較例に係るトルクセンサの射出成形工程を示す断面図である。図7において、上記の実施の形態において説明したものと共通する部材等については、図6等に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0041】
このトルクセンサは、第1の樹脂部材4Aと第2の樹脂部材5Aとを有し、第1の樹脂部材4Aの内側円筒部41と第2の樹脂部材5Aの外側円筒部51との間の収容空間30に検出部2が収容されている。第1の樹脂部材4Aは、上記の実施の形態に係る第1の蓋部42に相当する部分を有していない。第2の樹脂部材5Aは、外側円筒部51の上端部から径方向内方に向かって突出する蓋部52Aを有している。蓋部52Aは、環状かつ平板状に形成されており、その内周面52Aaが内側円筒部41の外周面41bに環状の隙間Sを介して対向している。
【0042】
このような構成では、上型91の注入孔910から注入された溶融樹脂が隙間Sを軸方向に流動して収容空間30に入り込みやすく、検出部2に損傷が発生しやすい。これに対し、上記の実施の形態では、第2の突起523と第1の突起421とが軸方向に並んでラビリンス構造を形成することで、第1隙間S、第2隙間S、及び第3隙間Sを含む流路Sを介して溶融樹脂が収容空間30内に入り込むことを抑止することができる。
【0043】
[変形例]
次に、図8及び図9を参照し、実施の形態の変形例について説明する。図8及び図9において、上記の実施の形態において説明したものと共通する部材等については、図6等に付したものと同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図8及び図9では、収容空間30に収容された検出部2の図示を省略している。図8及び図9に示す各変形例に係るトルクセンサ1B~1Fは、図6に示した金型9を用いて封止部材6が成形される。
【0044】
図8(a)は、第1の変形例に係るトルクセンサ1Bの一部を示す断面図である。トルクセンサ1Bは、樹脂ハウジング3Bが第1及び第2の樹脂部材4B,5Bならびに封止部材6からなり、第1の樹脂部材4Bが内側円筒部41から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42Bを有し、第2の樹脂部材5Bが外側円筒部51から径方向内方に突出して設けられた第2の蓋部52Bを有している。第1の蓋部42B及び第2の蓋部52Bは、共に環状かつ平板状に形成されている。
【0045】
第1の樹脂部材4Bの内側円筒部41と第2の樹脂部材5Bの第2の蓋部52Bとの径方向の第1隙間SB、第1の樹脂部材4Bの第1の蓋部42Bと第2の樹脂部材5Bの第2の蓋部52Bとの軸方向の第2隙間SB、及び第1の樹脂部材4Bの第1の蓋部42Bと第2の樹脂部材5Bの外側円筒部51との径方向の第3隙間SBは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路SBを構成する。流路SBは、直角に折れ曲がる屈曲部SB01を、第1隙間SBと第2隙間SBとの角部に有している。
【0046】
図8(b)は、第2の変形例に係るトルクセンサ1Cの一部を示す断面図である。トルクセンサ1Cは、樹脂ハウジング3Cが第1及び第2の樹脂部材4C,5Cならびに封止部材6からなり、第1の樹脂部材4Cが内側円筒部41から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42Cを有し、第2の樹脂部材5Cが外側円筒部51から径方向内方に突出して設けられた第2の蓋部52Cを有している。
【0047】
第1の蓋部42Cは、環状かつ平板状の第1の環板部421Cと、第1の環板部421Cの外径側の端部から上方に突出する第1の突起422Cとを有し、内側円筒部41と第1の突起422Cとの間には、第1の凹部40Cが環状に形成されている。第2の樹脂部材5Cは、環状かつ平板状の第2の環板部521Cと、第2の環板部521Cの内径側の端部から下方に突出する第2の突起522Cとを有し、外側円筒部51と第2の突起522Cとの間には、第2の凹部50Cが環状に形成されている。なお、第1の突部422C及び/又は第2の突部522Cは、図8(b)において、矩形状で図示しているが、略三角形状であっても構わず、第1の突部422C及び/又は第2の突部522Cの形状に合わせて、第2の環板部521Cや第1の環板部421Cの形状も適宜変更される。
【0048】
第1の突起422Cは、第2の環板部521Cと軸方向に並び、第2の突起522Cは、第1の環板部421Cと軸方向に並んでいる。また、第1の突起422Cと第2の突起522Cとは、径方向に並んでいる。第1の樹脂部材4Cと第2の樹脂部材5Cとが組み合わされたとき、第1の凹部40Cに第2の突起522Cが収容され、第2の凹部50Cに第1の突起422Cが収容される。
【0049】
第1の樹脂部材4Cの内側円筒部41と第2の突起522Cとの径方向の第1隙間SC、第1の環板部421Cと第2の突起522Cとの軸方向の第2隙間SC、第1の突起422Cと第2の突起522Cとの径方向の第3隙間SC、第1の突起422Cと第2の環板部521Cとの軸方向の第4隙間SC、及び第1の突起422Cと第2の樹脂部材5Cの外側円筒部51との径方向の第5隙間SCは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路SCを構成する。流路SCは、直角に折れ曲がる四つの屈曲部SC01,SC02,SC03,SC04を、第1隙間SCと第2隙間SCとの角部、第2隙間SCと第3隙間SCとの角部、第3隙間SCと第4隙間SCとの角部、及び第4隙間SCと第5隙間SCとの角部にそれぞれ有している。
【0050】
第1及び第2の変形例に係るトルクセンサ1B,1Cでは、第1の蓋部42B,42Cと第2の蓋部52B,52Cとが軸方向に並び、ラビリンス構造が形成される。このラビリンス構造は、封止部材6の成形時に溶融樹脂が収容空間30内に侵入することを抑止する抑止構造である。また、第2の蓋部52B,52Cは、第1の蓋部42B,42Cよりも軸方向において収容空間30から遠い側に位置しており、封止部材6の成形時には、溶融樹脂の流体圧によって第2の蓋部52B,52Cが第1の蓋部42B,42Cに押し付けられる。これにより、溶融樹脂の収容空間30内への侵入がより確実に抑制される。
【0051】
図9(a)は、第3の変形例に係るトルクセンサ1Dの一部を示す断面図である。トルクセンサ1Dは、樹脂ハウジング3Dが第1及び第2の樹脂部材4D,5Dならびに封止部材6からなり、第1の樹脂部材4Dが内側円筒部41から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42Dを有し、第2の樹脂部材5Dが外側円筒部51から径方向内方に突出して設けられた第2の蓋部52Dを有している。第1の蓋部42D及び第2の蓋部52Dは、共に環状かつ平板状に形成されており、軸方向に並んでラビリンス構造(封止構造)を形成している。
【0052】
第1の樹脂部材4Dの第1の蓋部42Dと第2の樹脂部材5Dの第2の蓋部52Dとの軸方向の第1隙間SD、及び第1の樹脂部材4Dの内側円筒部41と第2の樹脂部材5Dの第2の蓋部52Dとの径方向の第2隙間SDは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路SDを構成する。流路SDは、直角に折れ曲がる屈曲部SD01を、第1隙間SDと第2隙間SDとの角部に有している。
【0053】
第1の蓋部42Dは、第2の蓋部52Dよりも軸方向において収容空間30から遠い側に位置しており、第2の蓋部52D及び外側円筒部51の全体を上方から覆っている。封止部材6の成形時には、溶融樹脂の流体圧によって第1の蓋部42Dが第2の蓋部52Dに押し付けられ、収容空間30への溶融樹脂の流入を抑止する。
【0054】
図9(b)は、第4の変形例に係るトルクセンサ1Eの一部を示す断面図である。トルクセンサ1Eは、樹脂ハウジング3Eが第1及び第2の樹脂部材4E,5Eならびに封止部材6からなり、第1の樹脂部材4Eが内側円筒部41から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42Eを有し、第2の樹脂部材5Eが外側円筒部51から径方向内方に突出して設けられた第2の蓋部52Eを有している。
【0055】
第1の蓋部42Eは、環状かつ平板状の第1の環板部421Eと、第1の環板部421Eの外径側の端部から下方に突出する第1の突起422Eとを有し、内側円筒部41と第1の突起422Eとの間には、凹部40Eが環状に形成されている。第2の樹脂部材5Eは、環状かつ平板状の第2の環板部521Eと、第2の環板部521Eの内径側の端部から上方に突出する第2の突起522Eとを有している。第1の突起422Eは、第2の環板部521Eと軸方向に並び、第2の突起522Eは、第1の環板部421Eと軸方向に並んでいる。また、第1の突起422Eと第2の突起522Eとは、径方向に並んでいる。第1の樹脂部材4Eと第2の樹脂部材5Eとが組み合わされたとき、凹部40Eに第2の突起522Eが収容される。なお、第2の突部522Eは、図9(b)において、矩形状で図示しているが、略三角形状であっても構わず、第2の突部522Eの形状に合わせて、第1の環板部421Eの形状も適宜変更される。
【0056】
第1の突起422Eと第2の環板部521Eとの軸方向の第1隙間SE、第1の突起422Eと第2の突起522Eとの径方向の第2隙間SE、第1の環板部421Eと第2の突起522Eとの軸方向の第3隙間SE、及び第1の樹脂部材4Eの内側円筒部41と第2の突起522Eとの径方向の第4隙間SEは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路SEを構成する。流路SEは、直角に折れ曲がる三つの屈曲部SE01,SE02,SE03を、第1隙間SEと第2隙間SEとの角部、第2隙間SEと第3隙間SEとの角部、及び第3隙間SEと第4隙間SEとの角部にそれぞれ有している。
【0057】
第1の蓋部42Eは、第2の蓋部52Eよりも軸方向において収容空間30から遠い側に位置しており、第2の蓋部52E及び外側円筒部51の全体を上方から覆っている。封止部材6の成形時には、溶融樹脂の流体圧によって第1の蓋部42Eが第2の蓋部52Eに押し付けられ、収容空間30への溶融樹脂の流入を抑止する。
【0058】
図9(c)は、第5の変形例に係るトルクセンサ1Fの一部を示す断面図である。トルクセンサ1Fは、樹脂ハウジング3Fが第1及び第2の樹脂部材4F,5Fならびに封止部材6からなり、第1の樹脂部材4Fが内側円筒部41から径方向外方に突出して設けられた第1の蓋部42Fを有し、第2の樹脂部材5Fが外側円筒部51から径方向内方に突出して設けられた第2の蓋部52Fを有している。
【0059】
第1の蓋部42Fは、内側円筒部41に連続して形成された基部421Fと、基部421Fの外側に設けられた環状の庇部422Fとを有している。基部421Fは、軸方向の厚さが一定の環状に形成されている。庇部422Fは、軸方向の厚さが基部421Fよりも薄く、基部421Fの上端部から径方向外方及び下方に向かって突出した突起である。庇部422Fの下面422Faは、外径側の端部ほど下方に位置するように傾斜している。基部421Fと庇部422Fとの間には、下方に向かって開口する環状の凹部40Fが環状に形成されている。
【0060】
第2の蓋部52Fは、外側円筒部51に連続して設けられた膨出部521Fと、膨出部521Fの内側に設けられた環状かつ平板状の環板部522Fとを有している。膨出部521Fは、内径側の端部ほど軸方向の厚さが厚く形成され、環板部522Fから上方に向かって突出した突起である。第1の樹脂部材4Fと第2の樹脂部材5Fとが組み合わされたとき、凹部40Fに膨出部521Fが収容され、膨出部521Fの上面521Faが庇部422Fの下面422Faと平行に向かい合う。環板部522Fは、軸方向の厚さが膨出部521Fの最大厚さよりも薄く形成されている。膨出部521Fの内周面521Fbと上面521Faは、第2の樹脂部材5Fの軸方向断面において鋭角をなしている。
【0061】
庇部422Fと膨出部521Fとの間の第1隙間SF、基部421Fと膨出部521Fとの径方向の第2隙間SF、基部421Fと環板部522Fとの軸方向の第3隙間SF、及び第1の樹脂部材4Fの内側円筒部41と環板部522Fとの径方向の第4隙間SFは、溶融樹脂が収容空間30側に流れる場合の流路SFを構成する。流路SFは、鋭角に折れ曲がる屈曲部SF01を第1隙間SFと第2隙間SFとの角部に有すると共に、直角に折れ曲がる二つの屈曲部SF02,SF03を、第2隙間SFと第3隙間SFとの角部、及び第3隙間SFと第4隙間SFとの角部にそれぞれ有している。
【0062】
第3乃至第5のトルクセンサ1D~1Fでは、第1の蓋部42D,42E,42Fと第2の蓋部52D,52E,52Fとが軸方向に並び、封止部材6の成形時に溶融樹脂が収容空間30内に侵入することを抑制するラビリンス構造が形成される。このラビリンス構造は、封止部材6の成形時に溶融樹脂が収容空間30内に侵入することを抑止する抑止構造である。また、第1の蓋部42D,42E,42Fは、第2の蓋部52D,52E,52Fよりも軸方向において収容空間30から遠い側に位置しており、封止部材6の成形時には、溶融樹脂の流体圧によって第1の蓋部42D,42E,42Fが第2の樹脂部材5D,5E,5Fに押し付けられる。これにより、溶融樹脂の収容空間30内への侵入がより確実に抑制される。
【0063】
また、第3乃至第4のトルクセンサ1D~1Fでは、第1の蓋部42D,42E,42Fが第2の蓋部52D,52E,52F及び外側円筒部51の全体を上方から覆っているので、第1の蓋部42D,42E,42Fと第2の蓋部52D,52E,52Fとの隙間が溶融樹脂の流れ方向に対して交差する径方向に開口し、溶融樹脂がこの隙間に入りにくくなっている。特に、第5の変形例に係るトルクセンサ1Fでは、庇部422Fの下面422Fa及び膨出部521Fの上面521Faが、収容空間30側に溶融樹脂が流れる場合の下流側ほど軸方向において収容空間30から離れるように傾斜しているので、溶融樹脂の収容空間30内への侵入がより一層確実に抑制される。
【0064】
(実施の形態及びその変形例のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0065】
[1]電子部品本体(検出部2)を樹脂ハウジング(3)によって封止してなる樹脂封止型電子部品(1,1B~1F)であって、前記樹脂ハウジング(3)は、前記電子部品本体(2)を収容する収容空間(30)を挟んで第1の方向(径方向)に並ぶ一対の樹脂部材(4,4B~4F、5,5B~5F)と、前記一対の樹脂部材(4,4B~4F、5,5B~5F)のそれぞれの少なくとも一部を覆うように成形されたモールド樹脂からなる封止部材(6)とを備え、前記一対の樹脂部材(4,4B~4F、5,5B~5F)のうち一方の樹脂部材(4,4B~4F)の一部(42,42B~42F)と他方の樹脂部材(5,5B~5F)の一部(522,52B~52F)とが、前記第1の方向に対して交差する第2の方向(軸方向)に並び、前記モールド樹脂(6)が前記収容空間(30)に入り込むことを抑止する抑止構造を形成する、樹脂封止型電子部品(1,1B~1F)。
【0066】
[2]前記一方の樹脂部材(4,4C,4E,4F)に設けられた突起(第1の突起421,第1の突起422C,第1の突起422E,庇部422F)と前記他方の樹脂部材(5,5C,5E,5F)に設けられた突起(第2の突起523,第2の突起522C,第2の突起522E,膨出部521F)との隙間(第2隙間S,第3隙間SC,第2隙間SE,第1隙間SF)の少なくとも一部が、前記モールド樹脂が前記収容空間(30)側に流れる場合の下流側ほど前記第2の方向(軸方向)において前記収容空間(30)から離れるように形成されている、上記[1]に記載の樹脂封止型電子部品(1,1C,1E,1F)。
【0067】
[3]前記一方の樹脂部材(4,4C,4E,4F)に形成された凹部(第1の凹部40,第1の凹部40C,凹部40E,凹部40F)に前記他方の樹脂部材(5,5C,5E,5F)の前記突起(第2の突起523,第2の突起522C,第2の突起522E,膨出部521F)が収容されている、上記[2]に記載の樹脂封止型電子部品(1,1C,1E,1F)。
【0068】
[4]前記一方の樹脂部材(4,4B~4F)の前記一部(42,42B~42F)と前記他方の樹脂部材(5,5B~5F)の前記一部(522,52B~52F)との間を前記モールド樹脂が前記収容空間(30)側に流れる場合の流路(S,SA~SF)が、鋭角又は直角に折れ曲がる屈曲部(S01,S02,SB01,SC01,SC02,SC03,SC04,SD01,SE01,SE02,SE03,SF01,SF02,SF03)を有する、上記[1]乃至[3]の何れかに記載の樹脂封止型電子部品(1,1B~1F)。
【0069】
[5]上記[1]乃至[4]の何れかに記載の樹脂封止型電子部品(1,1B~1F)の製造方法であって、前記一対の樹脂部材(4,4B~4F、5,5B~5F)を、前記収容空間(30)に前記電子部品本体(2)を収容して金型(9)内に配置する配置工程と、前記金型(9)内に溶融した前記モールド樹脂を注入して前記封止部材(6)を成形する射出成形工程とを有し、前記射出成形工程において、前記一方の樹脂部材(4,4B~4F)の前記一部(42,42B~42F)と前記他方の樹脂部材(5,5B~5F)の前記一部(522,52B~52F)のうち、前記第2の方向において前記収容空間(30)から遠い側に位置する前記一部(522,52B,52C,42D,42E,42F)が、溶融した前記モールド樹脂の流体圧によって前記収容空間(30)側に押し付けられる、樹脂封止型電子部品(1,1B~1F)の製造方法。
【0070】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例を説明したが、上記に記載した実施の形態及び変形例は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0071】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態及びその変形例では、本発明を樹脂封止型電子部品の一例としてのトルクセンサに適用した場合について説明したが、樹脂封止型電子部品としてはこれに限らず、何らかの電気的作用によって物理量を測定するセンサや、対象物に何らかの物理的影響を及ぼす樹脂封止型電子部品に本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,1B~1F…トルクセンサ(樹脂封止型電子部品)
2…検出部(電子部品本体)
3,3B~3F…樹脂ハウジング
30…収容空間
4,4A~4F…第1の樹脂部材
41…内側円筒部
42,42B~42F…第1の蓋部(第1の樹脂部材の一部)
421…第1の突起(第1の樹脂部材の一部)
5,5A~5F…第2の樹脂部材
51…外側円筒部
52,52A~52F…第2の蓋部(第2の樹脂部材の一部)
523…第2の突起(第2の樹脂部材の一部)
6…封止部材
9…金型
01,S02,SB01,SC01,SC02,SC03,SC04,SD01,SE01,SE02,SE03,SF01,SF02,SF03…屈曲部
,SC,SE,SF…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9