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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】導電性粘着シート
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/22 20060101AFI20240625BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240625BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240625BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240625BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01B1/22 D
C09J7/38
C09J11/08
C09J11/04
C09J153/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020212268
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098708
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 雪花
(72)【発明者】
【氏名】山川 大輔
【審査官】岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-4034(JP,A)
【文献】特開2008-195904(JP,A)
【文献】特開2017-57256(JP,A)
【文献】特開2003-129012(JP,A)
【文献】特開2020-33427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C09J 7/38
C09J 11/08
C09J 11/04
C09J 153/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)と、導電性フィラー(C)と、を含有する粘着剤層を有する導電性粘着テープであって、
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体(A1)及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記粘着付与樹脂(B)は、1種又は2種以上の石油系樹脂を少なくとも含み、
前記粘着剤層は、炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の重量の変化率が5重量%以下である導電性粘着シート。
【請求項2】
前記粘着付与樹脂(B)が、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)100質量部に対して5質量部~100質量部で含まれる、請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
前記石油系樹脂が、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、及び脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂からなる群から選択される石油樹脂を含むである、請求項1又は2に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)に占めるジブロック体の割合(ジブロック比率)が80質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、前記ビニル芳香族共重合体(A)の全質量に対して、下記化学式(1)で示される構造単位を50質量%以下で含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【数1】
【請求項6】
前記導電性フィラー(C)の含有量が、前記導電性フィラー(C)を除く粘着剤組成物の全固形分100質量部に対して5~50質量部である、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項7】
前記導電性粘着テープの粘着剤層の平均厚みが前記導電性フィラー(C)の粒子径d40以上粒子径d70以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性粘着シートはその取扱いの容易さから、電気又は電子機器等から輻射する不要な漏洩電磁波のシールド用、他の電気又は電子機器から発生する有害な空間電磁波のシールド用、静電気帯電防止のアース用などに使用されており、近年は電池の電極固定用途への展開も検討されている。
【0003】
前記導電性粘着シートとしては、例えば、導電性基材上に、金属フィラーを粘着性物質中に分散させた導電性粘着剤からなる粘着剤層を有する導電性粘着シートが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、粘着性樹脂及び炭素系フィラーを含む粘着剤層を有する導電性粘着シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-53102号公報
【文献】国際公開2016/051829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1又は2に記載の導電性粘着シートは、電池の電極固定用途において電解液に接触した場合に粘着剤層が膨潤しやすく、膨潤により被着面からの浮きや剥がれ等の不具合が生じてしまい、安定した接着性と導電性を発現できない問題がある。
【0006】
本発明は、優れた接着性と導電性を有し、更に高い耐電解液性を有する導電性粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
<1> ビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)と、導電性フィラー(C)と、を含有する粘着剤層を有する導電性粘着テープであって、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体(A1)及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記粘着付与樹脂(B)は、1種又は2種以上の石油系樹脂(b)を含み、前記粘着剤層は、炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の重量の変化率が5重量%以下である導電性粘着シートである。
<2> 前記粘着付与樹脂(B)が、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)100質量部に対して5質量部~100質量部で含まれる、前記<1>に記載の導電性粘着シートである。
<3> 前記石油系樹脂(b)が、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂及び脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂からなる群から選択される石油樹脂である、前記<1>または<2>に記載の導電性粘着シートである。
<4> 前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)に占めるジブロック体の割合(ジブロック比率)が80質量%以下である、前記<1>から<3>に導電性粘着テープである。
<5> 前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)のスチレン含有量が50質量%以下である、前記<1>から<4>に記載の導電性粘着シートである。
<6> 前記導電性フィラー(C)の含有量が、前記導電性フィラー(C)を除く粘着剤組成物の全固形分100質量部に対して5~50質量部である、前記<1>から<5>に記載の導電性粘着シートである。
<7> 前記導電性粘着テープの粘着剤層の平均厚みが前記導電性フィラー(C)の粒子径d40以上粒子径d70以下である、前記<1>から<6>に記載の導電性粘着シートである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、優れた接着性と導電性を有し、更に高い耐電解液性を有する導電性粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の導電性粘着シートの一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の導電性粘着シートの他の一例を示す概略断面図である。
図3】本発明の導電性粘着シートの他の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.導電性粘着シート
本発明の導電性粘着シートは、粘着剤層を有し、前記粘着剤層は、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)と、導電性フィラー(C)とを含有する。また、上記粘着剤層において、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体(A1)及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、前記粘着付与樹脂(B)は石油系樹脂(b)を含む。さらに、炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の前記粘着剤層の重量の変化率(以下、膨潤率と称する場合がある。)が5重量%以下である。
【0011】
導電性粘着シートが電解液に接触すると、上記導電性粘着シートの粘着剤層の組成によっては、粘着剤層内に電解液が入り膨潤しやすいという問題がある。シートが膨潤すると、被着面から浮きや剥がれ等が生じてしまい、被着体を十分に固定できない、導電性が十分に発揮できない等の不具合が生じる。一方、電解液に対する耐膨潤性を高めるために粘着剤層のメインポリマーを調整すると初期の接着力が十分に得られず、膨張による不具合と同様に、被着体を十分に固定できない、導電性が十分に発揮できない等の不具合が生じる。これに対し本発明の導電性粘着シートは、上述のような特徴を有することで、優れた接着性及び導電性を発揮し、更に電解液に浸漬しても重量変化率が小さく浸漬後の浮きや剥がれ等が生じにくいため、高い耐電解液性を有することができる。接着性及び導電性と耐電解液性との両立、特に接着性と耐電解液性との両立が可能となる理由については明らかではないが、粘着剤層に含まれるビニル芳香族ブロック共重合体と石油系樹脂を含む粘着付与樹脂とにより、低極性且つ相分離構造が形成されることで、粘着シートとして必要な接着性を維持したまま、高い耐電解液性を発現できると推量される。
【0012】
詳述すれば、本発明の導電性粘着シートは、炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の前記粘着剤層の重量の変化率(膨潤率)が5重量%以下であればよく、中でも4質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。炭酸プロピレンは、電解液、特にリチウム電池等の電池の電解液として汎用されており、炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率が上記の範囲内にあることで、本発明の導電性粘着シートは、電解液に浸漬した場合においても同様に膨潤による重量変化を抑制することができ、耐電解液性を発揮することが可能となる。
【0013】
導電性粘着シートを電解液に浸漬すると、粘着剤層内に電解液が入り込むことで膨潤するため、電解液への浸漬による粘着剤層の膨潤の程度が、導電性粘着シート全体の膨潤に寄与する。そのため、炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率(膨潤率)を上記の範囲内にすることで、電解液への浸漬による粘着剤層の膨潤を抑制し、本発明の導電性粘着シート全体で良好な耐電解液性を発揮することが可能となる。これにより、本発明の導電性粘着シートを用いた物品を電解液に浸漬させた場合であっても、被着面からのシートの浮きや剥がれを防ぐことができる。
【0014】
炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率(膨潤率)は、以下の方法により求めることができる。本発明の導電性粘着シートが、粘着剤層のみからなる形態、すなわち基材レス導電性両面粘着シートの場合は、まず、導電粘着シートの剥離ライナーを剥がしたもの(粘着剤層のみ)を重ね合わせて、長さ10mm、幅10mm、厚さ1mmにしたものを試験片とした。次に、予め上記試験片の浸漬前の質量(G1)を測定しておき、炭酸プロピレン中に23℃50%RH環境下で1週間浸漬した後、試験片表面に残存した炭酸プロピレンを拭き取り、23℃で4時間乾燥した後の質量(G2)を測定し、以下の式に従って算出される。
炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率(膨潤率[重量%])={(G2/G1)×100}-100
【0015】
一方、本発明の導電性粘着シートが、導電性基材の片面又は両面に粘着剤層を有する形態、すなわち基材付き導電性粘着シートの場合は、まず基材付き導電粘着シートから粘着剤層を除去し、導電性基材のみを用意する。導電性基材の長さ10mm、幅10mmにおける重量(G3)を測定した後、基材の重量(G3)の測定に使用した基材付き導電粘着シートと同じものを用い、剥離ライナーを剥がした基材付き導電粘着シートの厚さ(T1)を測定する。次に、上記基材付き導電粘着シートの剥離ライナーを剥がしたものを重ね合わせて、長さ10mm、幅10mm、厚さ約10mm(T2)にしたものを試験片とした。次に、予め上記試験片の浸漬前の質量(G1)を測定しておき、炭酸プロピレン中に23℃50%RH環境下で1週間浸漬した後、試験片表面に残存した炭酸プロピレンを拭き取り、23℃で4時間乾燥した後の質量(G2)を測定し、以下の式に従って算出される。
炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率(膨潤率[重量%])={(G2-(G3×T2/T1))/(G1-(G3×T2/T1))×100}-100
【0016】
前記導電性粘着シートは、前記粘着剤層以外にも、導電性基材及び剥離ライナーを有することが好ましく、本発明の目的を損なわない範囲において、中間層、下塗り層等のその他の層を有していてもよい。
【0017】
本発明の導電性粘着シートにおける「シート」とは、粘着剤層のみからなる形態、少なくとも1層の粘着剤層を導電性基材上又は剥離ライナー上に有する形態を意味し、例えば、毎葉、ロール状、薄板状、又は帯状(テープ状)等のすべての製品形態を含む。
「導電性粘着シート」は、「導電性粘着テープ」、「導電性粘着フィルム」と称することもあるが、以下では、「導電性粘着シート」に統一して説明する。なお、導電性粘着シートにおける粘着剤層の表面を「粘着面」と称する場合がある。
【0018】
本発明の導電性粘着シートは、シートの両面が粘着面となっている両面粘着型であってもよいし、シートの片面のみが粘着面となっている片面粘着型であってもよい。
【0019】
両面粘着型の導電性粘着シートとしては、金属箔等の導電性基材を備えていない、いわゆる基材レス導電性両面粘着シートであってもよいし、前記導電性基材を備えている、いわゆる基材付き導電性両面粘着シートであってもよい。
【0020】
前記基材レス導電性両面粘着シートとしては、例えば、図1に示すように、粘着剤層2のみからなる導電性粘着シート10が挙げられる。
前記基材付き導電性両面粘着シートとしては、例えば、図2に示すように、導電性基材1の両面にそれぞれ粘着剤層2が形成された導電性粘着シート10が挙げられる。
【0021】
また、片面粘着型の導電性粘着シートとしては、例えば、図3に示すように、金属箔等の導電性基材1の片面に、粘着剤層2が形成された導電性粘着シート10が挙げられる。図1図3において、粘着剤層2中に含まれる導電性フィラー3、4が模式的に示されている。図1~3に示される粘着剤層2では、2種以上の導電性フィラー3,4を含有しているが、1種の導電性フィラーのみを含有しても良い。なお、図示を省略しているが、図1図3において、粘着剤層2の表面には、剥離ライナーを有することが好ましい。
【0022】
<粘着剤層>
粘着剤層は、導電性粘着シートの粘着面を提供しつつ、導電性(電気伝導性)を備える層である。粘着剤層の粘着面が、被着体に貼り付けられると、導体等の被着体と粘着剤層との間の電気的導通が確保される。
【0023】
本発明における前記粘着剤層は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体(A1)及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含むビニル芳香族ブロック共重合体(A)と、1種または2種以上の石油系樹脂(b)を含む粘着付与樹脂(B)と、導電性フィラー(C)とを含有する。換言すれば、上記粘着剤層は、上記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び上記粘着付与樹脂(B)を少なくとも含有する粘着剤と、導電性フィラー(C)とを含有する粘着剤組成物(以下、導電性粘着剤組成物と称する場合がある。)により構成される。上記粘着剤層は、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)、粘着付与樹脂(B)、及び導電性フィラー(C)を少なくとも含有すればよいが、更に必要に応じてその他の成分を含有することができる。そして、本発明における粘着剤層は、炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の重量の変化率(膨潤率)が所定の範囲内にある。
【0024】
<<粘着剤>>
前記粘着剤層を構成する粘着剤は、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)と、粘着付与樹脂(B)とを少なくとも含有し、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体(A1)及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。また、粘着付与樹脂(B)は石油系樹脂(b)を1種又は2種以上含有する。上記粘着剤は、上述の化合物の他に更に必要に応じてその他の成分を含有することができる。
【0025】
-ビニル芳香族ブロック共重合体(A)-
ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、芳香族ビニル化合物(a1)と共役ジエン化合物(a2)とのブロック共重合体及びその水添物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。中でもビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0026】
前記芳香族ビニル化合物(a1)としては、下記化学式(1)で示される構造単位を有することを特徴する。特にスチレン樹脂が好適に使用できる。
【0027】
【化1】
【0028】
前記ビニル芳香族共重合体(A)は、前記ビニル芳香族共重合体(A)の全質量に対して、化学式(1)で示される構造単位を50質量%以下で有するものを使用することが好ましく、40質量%以下で有するものを使用することがより好ましく、30質量%以下で有するものを使用することが更に好ましい。これにより、優れた接着性と耐電解液性を両立できる。また、前記ビニル芳香族共重合体(A)は、前記ビニル芳香族共重合体(A)の全質量に対して、化学式(1)で示される構造単位を5質量%以上で有するものが好ましく、中でも10質量%以上、特に15質量%以上で有するものが好ましい。粘着性能の発現に必要な凝集力を十分に発揮可能となるからである。
【0029】
前記共役ジエン化合物(a2)としては、任意の脂肪族炭化水素樹脂を使用することができ、特に、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、エチレン、プロピレン等が好適に使用できる。
【0030】
ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、ビニル芳香族ジブロック共重合体(A1)及びビニル芳香族トリブロック共重合体(A2)並びにこれらの水添物からなる群から選ばれる1種又は2種以上の共重合体を含むことが好ましい。ビニル芳香族ジブロック共重合体(A1)としては、スチレン系ジブロック共重合体が好ましく用いられ、具体的にはスチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-エチレンブチレン共重合体、スチレン-エチレンプロピレン共重合体等が挙げられる。また、ビニル芳香族トリブロック共重合体(A2)としては、スチレン系トリブロック共重合体が好ましく用いられ、具体的にはスチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)等が挙げられる。また、ビニル芳香族ジブロック共重合体(A1)又はビニル芳香族トリブロック共重合体(A2)の水添物としては、例えばスチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)等が挙げられる。
【0031】
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)に占めるジブロック体(A1)の割合(ジブロック比率)は、80質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることが更に好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。これにより、優れた接着性と耐電解液性を両立できる。
【0032】
また、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、東ソー社製SC-8020、高分子量カラムTSKgelGMHHR-H、溶媒:テトラヒドロフラン)が1万~80万の範囲であるものを使用することが好ましく、3万~50万の範囲であるものを使用することがより好ましく、5万~30万の範囲であるものを使用することがよりいっそう好ましい。上記範囲内の分子量であることで、接着性と耐電解液性を両立した粘着テープを得る上で好ましい。
【0033】
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)は、例えば、線状構造や分岐構造または多分岐構造などの単一構造のものを使用することが出来るが、異なる構造のものを混合して使用することも可能である。線状構造が豊富なスチレン系樹脂を粘着層に使用した際は本発明の粘着テープに優れた接着性能を与える。一方、分岐構造や多分岐構造でありながら分子末端にスチレンブロックを配したものは擬似的架橋構造を取ることができ、優れた凝集力を与えることができるため、高い保持力を与えることができる。これらは必要な特性にあわせて混合して使用することが好ましい。
【0034】
前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)の製造方法は特に限定されることは無く、従来既知の製造方法が適用できる。
【0035】
-粘着付与樹脂(B)-
前記粘着付与樹脂(B)は、石油系樹脂(b)を1種又は2種以上含有する。石油系樹脂(b)は、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)、特にスチレン系樹脂と相溶しやすく、粘着剤及び本発明の導電性粘着シートが優れた耐電解液性を発揮することができ、更に、初期接着力及び熱耐久性をより一層向上させることができるからである。
【0036】
特に、接着性と耐電解液性とを両立させるために、石油系樹脂(b1)は常温で固形状である石油樹脂を使用することが好ましく、中でも軟化点が80℃以上の石油系樹脂を使用することが好ましい。粘着剤層が軟化点の高い石油系樹脂(b1)を含むことにより、優れた耐電解液性、初期接着性、及び熱耐久性を備えた粘着剤及び導電性粘着シートを得ることができる。石油系樹脂(b1)の軟化点は、中でも80℃~160℃の範囲内が好ましく、90℃~150℃の範囲内が更に好ましく、一層優れた耐電解液性と接着性とを発現でき、さらに熱耐久性にも優れることから100℃~130℃の範囲内がより好ましい。前記軟化点は、JISK2207に規定の方法(乾球式)で測定された値を指す。
【0037】
前記石油系樹脂(b1)は、例えば常温(23℃)で固体状のものを使用することが好ましく、例えば脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂、これらの水素添加物(例えば脂環族系炭化水素樹脂、脂肪族・脂環族系炭化水素樹脂)、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の石油樹脂を好適に使用することができる。
【0038】
前記脂肪族系炭化水素樹脂としては、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等から得られるC系石油樹脂を好ましく使用することができ、例えば、エスコレッツ1202、1304、1401(東燃化学合同会社製)、ウイングタック95(グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー製)、クイントンK100、R100、F100(日本ゼオン株式会社製)、ピコタック95、ピコペール100(理化ハーキュレス製)等を使用することができる。
【0039】
前記芳香族系石油樹脂としては、インデン、メチルインデン、ビニルトルエン、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等から得られるC系石油樹脂を好ましく使用することができる。
【0040】
前記脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂としては、前記したC系石油樹脂とC系石油樹脂との共重合体であるC系/C系石油樹脂を好ましく使用することができ、例えば、エスコレッツ2101(トーネックス製)、クイントンG115(日本ゼオン製)、ハーコタック1149(理化ハーキュレス製)等を使用することができる。
【0041】
前記脂環族系炭化水素樹脂としては、前記したC系石油樹脂に水素添加して得られる水添C系石油樹脂が挙げられ、例えば、エスコレッツ5300(トーネックス製)、アルコンP-100(荒川化学工業製)、リガライトR101(理化ファインテク製)等を使用することができる。また、脂肪族・脂環族系炭化水素樹脂としては、前記したC系/C系石油樹脂に水素添加して得られる水添C系/C系石油樹脂が挙げられる。
【0042】
中でも前記石油系樹脂(b1)が、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂及び脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂からなる群から選択される石油樹脂を1種又は2種以上含むことが好ましく、脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂がより好ましい。前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)との相溶性が高く、凝集性が高まり、優れた接着性と耐電解液性を発現できるからである。
【0043】
さらに前記粘着付与樹脂(B)は、前記石油系樹脂(b1)として、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂及び脂肪族・芳香族共重合系炭化水素樹脂からなる群から選択される石油樹脂の他に、他の石油樹脂を含んでいても良い。
【0044】
前記粘着付与樹脂(B)としては、前記石油系樹脂(b1)を少なくとも含有するが、前記石油系樹脂(b1)以外の樹脂(b2)を含有しても良い。石油系樹脂(b1)以外の樹脂(b2)としては、例えば、石油系樹脂以外の汎用の粘着付与樹脂(b21)が挙げられ、具体的には重合ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン-フェノール樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂(b21)を使用することができる。ビニル芳香族ブロック共重合体(A)と石油系樹脂との併用による本発明の効果を損なわないために、樹脂(b21)は、常温で固形状であることが好ましく、中でも軟化点が80℃以上であること好ましく、上述した石油系樹脂(b1)の軟化点の好ましい範囲と同じ範囲内に軟化点を有することが好ましい。
【0045】
また、石油系樹脂(b1)以外の樹脂(b2)として、ポリブテンやポリイソブチレン等の樹脂(b22)を含んでいても良い。これらの樹脂は、通常、液状又は半固形状の樹脂であり、軟化剤としても機能することができる。
【0046】
前記粘着付与樹脂(B)に含まれる石油系樹脂(b1)の総量は、前記粘着付与樹脂(B)100質量%中50質量%以上が好ましく、中でも70質量%以上が好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、特に100質量%、すなわち、粘着付与樹脂(B)が、石油系樹脂(b1)のみを含むことが好ましい。粘着付与樹脂(B)に占める石油系樹脂(b1)の割合を上記の範囲とすることで、ビニル芳香族ブロック共重合体(A)と粘着付与樹脂(B)との相溶性が良好となり、高く優れた接着性と優れた耐電解液性とを達成できるからである。
【0047】
前記粘着付与樹脂(B)は、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)100質量部に対して5質量部~100質量部の範囲で使用することが好ましく、10質量部~90質量部の範囲で使用することがより好ましく、20質量部~80質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、30質量部~70質量部の範囲で使用することがより一層優れた接着性と優れた耐電解液性を両立した導電性粘着シートを得るうえでより好ましい。
【0048】
前記粘着付与樹脂(B)が1種又は2種以上の石油系樹脂(b1)である場合、上記石油系樹脂(b1)の総量は、前記ビニル芳香族ブロック共重合体(A)100質量部に対して5質量部~100質量部の範囲であることが好ましく、7質量部~90質量部の範囲であることがより好ましく、10質量部~80質量部の範囲であることが、より一層優れた接着性と優れた耐電解液性を両立した導電性粘着シートを得るうえでより好ましい。
【0049】
また、前記粘着付与樹脂(B)としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い標準ポリスチレン換算で測定された重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、東ソー社製SC-8020、高分子量カラムTSKgelGMHHR-H、溶媒:テトラヒドロフラン)が100以上10万以下であるものを使用することが好ましく、200~5万の範囲であるものを使用することがより好ましく、300~1万の範囲であるものを使用することがよりいっそう好ましい。上記範囲内の分子量であることで、接着性と耐電解液性を両立した粘着テープを得る上で好ましい。
【0050】
-その他の成分-
粘着剤は、上述のビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)を少なく含有し、必要に応じて任意の成分を含有することができる。すなわち、上記粘着剤層は、上述のビニル芳香族ブロック共重合体(A)及び粘着付与樹脂(B)、並びに後述する導電性フィラー(C)に加えて、任意の成分を含有することができる。任意の成分としては、例えば、老化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、可塑剤、軟化剤、難燃剤、金属不活性剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機系充填剤などが挙げられる。
【0051】
<<導電性フィラー(C)>>
上記粘着剤層に含有される前記導電性フィラー(C)としては、金属粉やカーボン等の導電性を有する粒子であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
前記金属粒子としては、例えば、ニッケル、鉄、クロム、コバルト、アルミニウム、アンチモン、モリブデン、銅、銀、白金、金等の金属、半田、ステンレス等の合金などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ニッケル、銅、銀が好ましく、カルボニル法で製造したニッケル粉がより好ましい。
【0053】
カルボニル法で製造したニッケル粉としては、例えば、Vale社製のNi123(球状)、Vale社製のNi255(フィラメント状)などが挙げられる。
【0054】
金属粒子の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、球状、フィラメント状(数珠状)、フレーク状(薄片状)、スパイク状(毬栗状)などが挙げられる。これらの中でも、粘着力の確保、及び粘着剤層中における金属粒子による導電路の形成し易さの観点から、球状又はフィラメント状が好ましい。
【0055】
金属粒子の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粒子径d40は5μm以上30μm以下が好ましく、10μm以上20μm以下がより好ましい。また、粒子径d70は10μm以上50μm以下が好ましく、20μm以上40μm以下がより好ましい。
【0056】
前記粒子径d40は体積粒度分布における40%累積体積粒子径を指し、前記粒子径d70は粒度分布における70%累積体積粒子径を指し、レーザー解析・散乱法により測定される値である。測定装置としては、例えば、日機装株式会社製マイクロトラックMT3000II、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定器SALD-3000などが挙げられる。
【0057】
前記数値範囲の粒子径d40及びd70に調整する方法としては、例えば、金属粒子をジェットミルで粉砕する方法や篩等による篩分け法などが挙げられる。
【0058】
本発明においては、粘着剤層の平均厚みが前記導電性フィラー(C)の粒子径d40以上粒子径d70以下であることが好ましい。これにより、本発明の導電性粘着シートは、高い接着力と優れた導電性とを両立することができる。
【0059】
前記導電性フィラー(C)の含有量は、導電性フィラー(C)を除く粘着剤組成物の固形分100質量部に対して、5~50質量部であり、7質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部以上30質量部以下がより好ましい。金属粒子の含有量を上記範囲にすることで、高い接着力と優れた導電性とを両立することができる。
【0060】
<<粘着剤層>>
上記粘着剤層の厚みは、好ましくは3μm以上であり、5μmであり、10μm以上である。また上記厚みは好ましくは50μm以下であり、40μm以下であり、30μm以下である。上記粘着剤層の厚みを上記の範囲内とすることで、耐電解液性を発揮することができ、また、優れた接着性及び導電性と薄型とを両立することができる。
【0061】
<任意の構成>
本発明は、上述した粘着剤層を少なくとも有すればよいが、必要に応じて任意の構成を有することができる。
【0062】
-導電性基材-
本発明の導電性粘着シートが、導電性基材の片面又は両面に粘着剤層を有する場合、上記導電性基材としては、金属箔基材や湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された導電性基材などを好適に用いることができる。
金属箔の材質としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、錫、又はこれらの合金などが挙げられる。これらの中でも、銅を含有する導電性基材が好ましく、銅箔が導電性、加工性、及びコストの点からより好ましい。
【0063】
銅箔には防錆処理を施すことが好ましい。防錆処理の種類としては、有機防錆と無機防錆が挙げられるが、そのなかでも、クロメート処理による無機防錆が最も好ましい。市販の電解銅箔としては、福田金属箔粉工業株式会社製CF-T9FZ-HS-12(12μm:クロメート処理)やCF-T9FZ-HS-9(9μm:クロメート処理)などが挙げられる。市販の圧延銅箔としては、日本製箔株式会社製TCU-H-8-RT(8μm:有機防錆処理)、JX日鉱日石金属株式会社製BAY-64T-DT(35μm:クロメート処理)などが挙げられる。
【0064】
上記湿式のポリエステル系不織布基材にメッキが施された導電性基材としては、当該メッキとして無電解金属メッキを使用したものである。メッキする金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、白金、アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、導電性及びコストの点から、銅又はニッケルが好ましい。
【0065】
導電性基材の厚さは、1μm以上40μm以下が好ましく、3μm以上35μm以下がより好ましく、6μm以上25μm以下が更に好ましい。上記数値範囲であれば、薄型化が可能であり、かつ加工性に優れるため好ましい。
【0066】
-剥離ライナー-
本発明の導電性粘着シートは、粘着剤層の表面に剥離ライナーを有していてもよい。剥離ライナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クラフト紙、グラシン紙、上質紙等の紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン(OPP、CPP)、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルム、前記紙類と樹脂フィルムを積層したラミネート紙、前記紙類にクレーやポリビニルアルコールなどで目止め処理を施したものの片面もしくは両面に、シリコーン系樹脂等の剥離処理を施したものなどが挙げられる。
【0067】
<導電性粘着シートのその他特徴>
本発明の導電性粘着シートは、導電性基材を備えていない、いわゆる基材レス導電性粘着シートであってもよいし、導電性基材を備えている、いわゆる基材付き導電性粘着シートであってもよい。
【0068】
基材レス導電性粘着シートは、粘着剤層のみからなり、粘着剤層の平均厚さが導電性粘着シートの総厚さとなる。基材レス導電性粘着シートは剥離ライナー上に形成され、使用時まで剥離ライナーが被覆されている。
【0069】
基材レス導電性粘着シートの平均厚さ(粘着剤層の平均厚さ)は、50μm以下が好ましく、5μm以上30μm以下がより好ましく、10μm以上25μm以下が更に好ましい。上記数値範囲にある場合に、優れた接着性及び導電性と薄型とを両立することができる。
【0070】
基材付き導電性粘着シートの総厚さは、100μm以下が好ましく、65μm以下がより好ましく、50μm以下が更に好ましい。上記範囲にあることで、接着性及び導電性を確保しつつ、導電性粘着シートの薄型化を図ることができ、携帯電子機器の薄型化に貢献できる。基材付き導電性粘着シートの総厚さは小さいほど望ましいが、その下限は特に限定されず、例えば10μm以上とすることができ、20μm以上が更に好ましく、30μm以上がより好ましい。なお、導電性粘着シートの総厚みとは、剥離ライナーを含まない導電性粘着シート自体の厚みである。
【0071】
本発明の導電性粘着シートは、該導電性粘着シートを温度23℃、湿度50%RHの環境下で、ステンレス板(SUS板)に対し、2kgのローラーを使用して圧着回数一往復で圧着し、1時間静置した後の300mm/minでの180度剥離接着力は、5N/25mm以上であることが好ましい。上記範囲内であると、剥がれを抑制しやすく、また、製造工程における貼り合わせ不良品において導電性粘着シートの剥離が可能となる。中でも10N/25mm以上が好ましく、15N/25mm以上がより好ましい。
【0072】
<製造方法>
本発明の導電性粘着シートは、例えば、剥離ライナー上又は導電性基材上に、ロールコーターやダイコーター等を用いて前記粘着剤を塗布し、乾燥することによって製造することができる。また、剥離ライナー上に形成した粘着剤層と導電性基材を貼り合せる転写法によって製造することができる。
【0073】
本発明の導電性粘着シートが、導電性基材の両面に粘着剤層を有する場合は、予め離型ライナーの表面にロールコーター等を用いて前記粘着剤を塗布し、乾燥することによって粘着剤層を形成し、次いで、前記粘着剤層を導電性基材の両面に貼り合せる転写法によって製造することができる。
【0074】
剥離ライナー上に形成した粘着剤層と導電性基材を貼り合せる際には、熱ラミネートをすることが、導電性基材と粘着剤層との優れた密着性を付与する観点から好ましい。熱ラミネートの温度は60℃以上150℃以下が好ましく、70℃以上130℃以下がより好ましく、80℃以上110℃以下が密着性と導電性基材の収縮を抑制するうえで更に好ましい。
【0075】
<用途>
本発明の導電性粘着シートは、高い耐電解液性と優れた接着性と高い導電性とを両立することができるので、例えば、リチウムイオン電池、全固体電池などに使用される電解液と接触し、更に導通が必要な電極との固定用として有用である。
【実施例
【0076】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いたビニル芳香族ブロック共重合体の重量平均分子量、及び金属粒子の粒子径d40、d70は、以下の方法で測定したものである
【0077】
<ビニル芳香族ブロック共重合体の重量平均分子量>
ビニル芳香族ブロック共重合体のGPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8329GPC)を用いて以下の測定条件で測定される、スタンダードポリスチレン換算値である。
[測定条件]
・サンプル濃度:0.5質量%(テトラヒドロフラン溶液)
・サンプル注入量:100μL
・溶離液:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0mL/分
・測定温度:40℃
・本カラム:TSKgel GMHHR-H(20)2本
・ガードカラム:TSKgel HXL-H
・検出器:示差屈折計
・スタンダードポリスチレン分子量:10,000~20,000,000(東ソー株式会社製)
【0078】
<金属粒子の粒子径d40、粒子径d70>
金属粒子の粒子径d40、粒子径d70は、体積基準の累積40%粒子径、累積70%粒子径であり、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定器SALD-3100を用い、分散媒としてイソプロパノールを使用して測定した値である。
【0079】
(粘着剤の調製例1)
-粘着剤Aの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物a(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位24質量%、前記組成物aの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が67質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Aを得た。
【0080】
(粘着剤の調製例2)
-粘着剤Bの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物b(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位25質量%、前記組成物bの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が17質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Bを得た。
【0081】
(粘着剤の調製例3)
-粘着剤Cの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物c(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位15質量%、前記組成物cの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が78質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Cを得た。
【0082】
(粘着剤の調製例4)
-粘着剤Dの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物d(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位14質量%、前記組成物dの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が12質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Dを得た。
【0083】
(粘着剤の調製例5)
-粘着剤Eの調製-
スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体e(前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位18質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Eを得た。
【0084】
(粘着剤の調製例6)
-粘着剤Fの調製-
スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体f(前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位13質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Fを得た。
【0085】
(粘着剤の調製例7)
-粘着剤Gの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物c(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位15質量%、前記組成物cの全量に対するスチレン-イソブチレンジブロック共重合体の割合が78質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)50質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Gを得た。
【0086】
(粘着剤の調製例8)
-粘着剤Hの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物c(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位15質量%、前記組成物cの全量に対するスチレン-イソブチレンジブロック共重合体の割合が78質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)25質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Hを得た。
【0087】
(粘着剤の調製例9)
-粘着剤Iの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物c(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位15質量%、前記組成物cの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が78質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)12質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Iを得た。
【0088】
(粘着剤の調製例10)
-粘着剤Jの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物a(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位24質量%、前記組成物aの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が67質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部、テトラックスグレード6T(ENEOS社製ポリイソブテン(PIB)、粘度平均分子量60,000)20質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Jを得た。
【0089】
(粘着剤の調製例11)
-粘着剤Kの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物a(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位24質量%、前記組成物aの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が67質量%)100質量部、クイントンG115(日本ゼオン株式会社製のC系/C系石油樹脂、軟化点115℃)40質量部、テトラックスグレード6T(ENEOS社製ポリイソブテン(PIB)、粘度平均分子量60,000)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Kを得た。
【0090】
(粘着剤の調製例12)
-粘着剤Lの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物a(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位24質量%、前記組成物aの全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が67質量%)100質量部、T-REZ RC115(ENEOS株式会社製のC系系石油樹脂、軟化点114.8℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Lを得た。
【0091】
(粘着剤の調製例13)
-粘着剤Mの調製-
スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体f(前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位13質量%)100質量部、T-REZ RC115(ENEOS株式会社製のC系系石油樹脂、軟化点114.8℃)40質量部を混合し、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Mを得た。
【0092】
(粘着剤の調製例14)
-粘着剤Qの調製-
スチレン-イソプレンブロック共重合体組成物a(スチレン-イソプレンジブロック共重合体及びスチレン-イソプレントリブロック共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位24質量%、前記組成物a全量に対するスチレン-イソプレンジブロック共重合体の割合が67質量%)100質量部を、溶媒としてトルエン100質量部に溶解させることによって粘着剤Qを得た。
【0093】
(実施例1)
<導電性粘着剤組成物Aの製造>
前記粘着剤A 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Aを作製した。
【0094】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Aを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例1の導電性粘着シートを作製した。
【0095】
(実施例2)
<導電性粘着剤組成物Bの製造>
前記粘着剤B 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Bを作製した。
【0096】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Bを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例2の導電性粘着シートを作製した。
【0097】
(実施例3)
<導電性粘着剤組成物Cの製造>
前記粘着剤C 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Cを作製した。
【0098】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Cを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例3の導電性粘着シートを作製した。
【0099】
(実施例4)
<導電性粘着剤組成物Dの製造>
前記粘着剤D 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Dを作製した。
【0100】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Dを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例4の導電性粘着シートを作製した。
【0101】
(実施例5)
<導電性粘着剤組成物Eの製造>
前記粘着剤E 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Eを作製した。
【0102】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Eを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例5の導電性粘着シートを作製した。
【0103】
(実施例6)
<導電性粘着剤組成物Fの製造>
前記粘着剤F 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Fを作製した。
【0104】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Fを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例6の導電性粘着シートを作製した。
【0105】
(実施例7)
<導電性粘着剤組成物Gの製造>
前記粘着剤G 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Gを作製した。
【0106】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Gを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例7の導電性粘着シートを作製した。
【0107】
(実施例8)
<導電性粘着剤組成物Hの製造>
前記粘着剤H 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Hを作製した。
【0108】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Hを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例8の導電性粘着シートを作製した。
【0109】
(実施例9)
<導電性粘着剤組成物Iの製造>
前記粘着剤I 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Iを作製した。
【0110】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Iを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例9の導電性粘着シートを作製した。
【0111】
(実施例10)
<導電性粘着剤組成物Jの製造>
前記粘着剤J 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Jを作製した。
【0112】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Jを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例10の導電性粘着シートを作製した。
【0113】
(実施例11)
<導電性粘着剤組成物Kの製造>
前記粘着剤K 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Kを作製した。
【0114】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Kを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例11の導電性粘着シートを作製した。
【0115】
(実施例12)
<導電性粘着剤組成物L製造>
前記粘着剤L 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Lを作製した。
【0116】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Lを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例12の導電性粘着シートを作製した。
【0117】
(実施例13)
<導電性粘着剤組成物Mの製造>
前記粘着剤M 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Mを作製した。
【0118】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Mを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、実施例13の導電性粘着シートを作製した。
【0119】
(比較例1)
<導電性粘着剤組成物Oの製造>
ニチゴーポリエスターNP-110S50EO(三菱ケミカル株式会社社製ポリエステル系粘着剤、固形分50%)100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部、バーノックNC40(DIC株式会社製、イソシアネート架橋剤、固形分40%)2質量部を配合して、導電性粘着剤組成物Oを作製した。
【0120】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Oを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、比較例1の導電性粘着シートを作製した。
【0121】
(比較例2)
<導電性粘着剤組成物Pの製造>
SKダイン1717DT(綜研化学株式会社製アクリル系粘着剤、固形分47%)100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部バーノックNC40(DIC株式会社製、イソシアネート架橋剤、固形分40%)2質量部を配合して、導電性粘着剤組成物Pを作製した。
【0122】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Pを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、比較例2の導電性粘着シートを作製した。
【0123】
(比較例3)
<導電性粘着剤組成物Qの製造>
前記粘着剤Q 100質量部(固形分)に対して、福田金属箔粉工業社製ニッケル粉NI255T(d40:17.2μm、d70:35.4μm)10質量部を配合し、トルエンで固形分濃度を30質量%に調整し、分散撹拌機で混合して、導電性粘着剤組成物Qを作製した。
【0124】
<導電性粘着シートの作製>
得られた導電性粘着剤組成物Qを剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)上に乾燥後の厚さが20μmとなるようにコンマコーターで塗工し、80℃の乾燥器中で2分間乾燥させた。次に、剥離ライナー(PET38×1、A3、ニッパ社製)に貼り合わせて、比較例3の導電性粘着シートを作製した。
【0125】
[評価]
次に、得られた実施例1~13及び比較例1~3の導電性粘着シートについて、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1~表3に示した。
【0126】
<導電性粘着シートの平均厚さの測定>
各導電性粘着シートの平均厚さは、剥離ライナーを剥がしたもの(粘着剤層のみ)の厚さを、株式会社尾崎製作所製のダイヤルシクネスゲージG型を用いて長さ方向に100mm間隔で5箇所の厚さを測定した平均値である。
【0127】
<初期接着力の評価方法>
導電性粘着シートの接着力は、JIS-Z0237(2000)の180度引き剥がし接着力の試験方法に従って下記の手順により求めた。
実施例及び比較例で得た導電性粘着シートを、幅25mmの大きさに裁断した。次に、前記導電性粘着シートの片面側の粘着剤層を、厚さ25μmのポリエステルフィルムで裏打ちした。次に、環境温度23℃及び湿度50%RHの条件下、前記裏打ちされた導電性粘着シートを、ステンレス板(SUS板)に貼付し、その上面を2kgのローラーで1往復しそれらを圧着させ、その後、上記温度下に1時間放置したものを試験片とした。前記試験片を、テンシロン万能引張試験機(オリエンテック株式会社製、RTA100)を用い、上記と同一の温度湿度条件下、で300mm/minの速度で引き剥がすことによって、180度引き剥がし接着力を測定した。前記接着力が5N/25mm以上である場合を、接着性に優れていると評価した。
【0128】
<初期導電性の評価方法>
25mm幅×25mm幅の大きさに切断した導電性粘着シートを、2枚の銅箔(厚さ35μm)の間に、貼付面積が6.25cmになるよう貼付し、23℃及び50%RHの環境下で2.0kgローラー1往復加圧し、試験片を作成した。同環境下で1時間放置後、2枚の銅箔端部に端子を接続し、抵抗率計(Loresta-GP MCP-T600、三菱化学株式会社製)を用いて10μAの電流を流し、抵抗値を測定した。なお、抵抗値が100mΩ以下である場合を導電性に優れていると評価した。
【0129】
<炭酸プロピレン浸漬後の膨潤率>
実施例及び比較例で得た導電粘着シートの剥離ライナーを剥がしたもの(粘着剤層のみ)を重ね合わせて、長さ10mm、幅10mm、厚さ1mmにしたものを試験片とした。次に、予め上記試験片の浸漬前の質量(G1)を測定しておき、炭酸プロピレン中に23℃50%RH環境で1週間浸漬した後、試験片表面に残存した炭酸プロピレンを拭き取り、23℃で4時間乾燥した後の質量(G2)を測定し、以下の式に従って炭酸プロピレンに浸漬して23℃50%RH環境で1週間放置する前後の粘着剤層の重量の変化率(膨潤率)を求めた。
炭酸プロピレンへの浸漬前後での粘着剤層の重量変化率(膨潤率[重量%])={(G2/G1)×100}-100
【0130】
<炭酸プロピレン浸漬後の浮き剥がれ>
25mm幅×25mm幅の大きさに切断した導電性粘着シートを、2枚の銅箔(厚さ35μm)の間に、貼付面積が6.25cmになるよう貼付し、23℃及び50%RHの環境下で2.0kgローラー1往復加圧し、試験片を作成した。次に、予め上記試験片を炭酸プロピレン中に23℃50%RH環境で1週間浸漬した後、試験片表面に残存した炭酸プロピレンを拭き取り、目視で浮き剥がれの有無を評価した。
【0131】
<耐電解液性>
上述した炭酸プロピレン浸漬後の膨潤率及び炭酸プロピレン浸漬後の浮き剥がれの結果から以下の評価基準に基づき耐電解液性を評価した。
[評価基準]
〇:膨潤率が0~2%未満で、浮き剥がれ無し。
△:膨潤率が2~5%以下、浮き剥がれ無し。
×:膨潤率が5%超え、且つ浮き剥がれが発生する。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【符号の説明】
【0135】
1 … 導電性基材
2 … 粘着剤層
3、4 … 導電性フィラー
10 … 導電性粘着シート
図1
図2
図3