IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越半導体株式会社の特許一覧

特許7509092ドレッシングプレート及びドレッシング方法
<>
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図1
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図2
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図3
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図4
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図5
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図6A
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図6B
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図7
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図8
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図9
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図10
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図11
  • 特許-ドレッシングプレート及びドレッシング方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】ドレッシングプレート及びドレッシング方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/017 20120101AFI20240625BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240625BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20240625BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
B24B37/08
H01L21/304 621A
H01L21/304 622M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021110435
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2023007543
(43)【公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335016(JP,A)
【文献】特開2003-117823(JP,A)
【文献】特開2007-118146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/017
B24B 53/12
B24B 37/08
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間に挟み、前記上定盤側研磨布及び/又は前記下定盤側研磨布をドレッシングするためのドレッシングプレートであって、
上面又は下面にダイヤモンド粒子が配置された円盤状のダイヤ固定プレートと、
該ダイヤ固定プレートの外周部に固定された可撓性のラバーからなる円環状の接続部材と、
該接続部材に固定され、前記接続部材を介して前記ダイヤ固定プレートに接続された円環状の支持プレートとを備えるものであることを特徴とするドレッシングプレート。
【請求項2】
前記ドレッシングプレートを前記下定盤側研磨布の上に配置したときに、荷重をかけない状態において、前記ダイヤ固定プレートの下面と前記下定盤側研磨布との間に空間が形成されるものであることを特徴とする請求項1に記載のドレッシングプレート。
【請求項3】
上定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記上面に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであり、
下定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記下面に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のドレッシングプレート。
【請求項4】
前記上定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記上面に設けられた環状の突出部に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであり、
前記下定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記下面に設けられた環状の突出部に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであることを特徴とする請求項3に記載のドレッシングプレート。
【請求項5】
両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間にドレッシングプレートを挟み、前記上定盤側研磨布及び/又は前記下定盤側研磨布をドレッシングするドレッシング方法であって、
請求項1から4のいずれか一項に記載のドレッシングプレートを用い、
該ドレッシングプレートの自公転を行わず、かつ、前記上定盤及び前記下定盤の回転を行いながらドレッシングすることを特徴とするドレッシング方法。
【請求項6】
上定盤側研磨布用のドレッシングプレートと下定盤側研磨布用のドレッシングプレートとを交互に配置してドレッシングすることを特徴とする請求項5に記載のドレッシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間に挟み、研磨布のドレッシングを行うためのドレッシングプレート及びこのようなドレッシングプレートを用いたドレッシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
両面研磨装置は通常、不織布や発泡ウレタン等からなる研磨布が貼付された上定盤と下定盤を具備し、中心部にはサンギア、外周部にはインターナルギアがそれぞれ配置された遊星歯車構造を有する、いわゆる4way方式のものが用いられている。シリコンウェーハを研磨する場合には、キャリアに形成されたウェーハ保持孔の内部にウェーハを挿入・保持する。上定盤側から研磨スラリーをウェーハに供給し、上下の定盤を回転させて、上定盤と下定盤の対向する研磨布をウェーハの表裏両面に押し付けながら、キャリアをサンギアとインターナルギアとの間で自公転運動させることで各ウェーハの両面を同時に研磨することができる。
【0003】
両面研磨装置はウェーハの両面を同時に研磨することができるが、同じ研磨布を用いて研磨を続けているとウェーハ形状が徐々に変化してしまうという問題がある。これは主に研磨布のライフに起因しており、研磨布の圧縮率の変化や目詰まり等が影響している。そこで、ウェーハ形状の変化を防ぐため、研磨布表面のドレッシングが研磨布交換後や所定のインターバルで(定期的に)行われている。
【0004】
ドレッシングは、従来、ダイヤモンド等の砥石が電着や接着剤でプレートに固定されたダイヤモンドドレッサーを用いて行ってきた。このようなダイヤモンドドレッサーを上定盤と下定盤との間に、ダイヤモンドが固定された面を上定盤側と下定盤側に交互に仕込み、通常の研磨と同じように装置を稼動させることで、上下両方の研磨布が同時にドレッシングされる。これにより、研磨布の表面を削り取る、又は、粗化して、研磨布のスラリーの保持性を良好にして研磨能力を維持させることができる。このようなドレッシングにより研磨布の目詰まり等の経時変化を抑制し研磨布の表面状態を良好に維持することで、取り代やフラットネス精度維持を行い、高平坦度なウェーハを安定的に得ることができる。
【0005】
特許文献1ではダイヤモンドドレッサーが研磨布に対して均一な目立てを行うことができるように、ドレス面がドレッシングを行うときに定盤形状に応じて角度が調整されて研磨布に接触するドレッシング装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-090142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図9に従来のドレッシングプレート20の上面図及び断面図、図10に従来のドレッシングプレート20を用いてドレッシングを行うときのドレッシングプレート20と研磨パッドの断面図を示す。従来のドレッシングプレート20は、プレート21の片面のみに電着や接着剤等で粒子状のダイヤモンド粒子4が直接固定されたもののほか、ペレットタイプのものをプレートに固定したものがある。なお、ダイヤモンド粒子4の番手は♯60~♯500のもので、非配列タイプや配列タイプがある。
【0008】
ドレッシングプレート20は、外周にインターナルギアピン30とサンギアピン31に接する歯車形状を有しており、ドレッシングプレートの自重で下定盤(又は下定盤側研磨布)に接触するものである。このようなドレッシングプレート20は、上定盤側研磨布3A、下定盤側研磨布3Bに対応するように反転させて使用する(図10(a)、(b))。そして、図11に示すように、このようなドレッシングプレート20を配置した両面研磨装置200を用いて、硬質発泡ウレタンパッドなどの上定盤側研磨布3A、下定盤側研磨布3Bの表面を目立てることを目的に、ダイヤモンド粒子4が片面に装備されたドレッシングプレート20で上定盤1及び下定盤2にそれぞれ貼り付けられた上定盤側研磨布3A、下定盤側研磨布3Bを同時にドレッシングしている。研磨布のドレッシングは研磨布立ち上げ時と、ある一定間隔で加工と加工の間に行っている。
【0009】
定盤自体の形状は、通常、上定盤側が凸形状で下定盤が凹形状であるため、ドレッシングの進行により研磨布の形状は、上定盤側は凸形状が弱く平坦になり、下定盤側は凹形状が弱く平坦になる。このようにドレッシングにより研磨布の形状が変化するために、ウェーハ研磨時の荷重分布が研磨布のライフ初期と研磨布のライフ末期では異なり、同一条件で研磨を行っても、研磨加工後のウェーハの形状が異なってしまう問題がある。
【0010】
本発明者は、研磨布の形状がドレッシングによって変化するのは、ドレッシングプレートが定盤形状に倣うことがないために、研磨布をダイヤモンドにより削り込むことで研磨布の形状が変化してしまうためである点に着目し鋭意検討を行い、本発明を完成した。
【0011】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑止し、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得るために、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なドレッシングプレート及びドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なドレッシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間に挟み、前記上定盤側研磨布及び/又は前記下定盤側研磨布をドレッシングするためのドレッシングプレートであって、上面又は下面にダイヤモンド粒子が配置された円盤状のダイヤ固定プレートと、該ダイヤ固定プレートの外周部に固定された可撓性のラバーからなる円環状の接続部材と、該接続部材に固定され、前記接続部材を介して前記ダイヤ固定プレートに接続された円環状の支持プレートとを備えるものであるドレッシングプレートを提供する。
【0013】
このようなドレッシングプレートによれば、ドレッシングプレートが定盤形状に倣った圧力分布で研磨布を研削することができるものであるため、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なものとなる。そして、ドレッシングの回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨布の形状の変化が小さいため、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることができるものとなる。
【0014】
このとき、前記ドレッシングプレートを前記下定盤側研磨布の上に配置したときに、荷重をかけない状態において、前記ダイヤ固定プレートの下面と前記下定盤側研磨布との間に空間が形成されるものであるドレッシングプレートとすることができる。
【0015】
これにより、より効果的に定盤の形状に追随することができるものとなる。
【0016】
このとき、上定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記上面に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであり、下定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記下面に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであるドレッシングプレートとすることができる。
【0017】
上定盤側研磨布用と下定盤側研磨布用とで異なる構造のドレッシングプレートとすることで、より効果的に定盤の形状に追随することができるとともに、より確実にドレッシングを行うことができるものとなる。
【0018】
このとき、前記上定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記上面に設けられた環状の突出部に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであり、前記下定盤側研磨布用の前記ドレッシングプレートは、前記ダイヤ固定プレートの前記下面に設けられた環状の突出部に前記ダイヤモンド粒子が配置されたものであるドレッシングプレートとすることができる。
【0019】
これにより、より安定して効果的にドレッシングを行うことができるものとなる。
【0020】
このとき、両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間にドレッシングプレートを挟み、前記上定盤側研磨布及び/又は前記下定盤側研磨布をドレッシングするドレッシング方法であって、上述のドレッシングプレートを用い、該ドレッシングプレートの自公転を行わず、かつ、前記上定盤及び前記下定盤の回転を行いながらドレッシングするドレッシング方法を提供する。
【0021】
これにより、ドレッシングプレートが定盤形状に倣った圧力分布で研磨布を研削することができ、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能となり、ドレッシングの回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨布の形状の変化を小さくできるため、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることが可能となる。
【0022】
このとき、上定盤側研磨布用のドレッシングプレートと下定盤側研磨布用のドレッシングプレートとを交互に配置してドレッシングするドレッシング方法とすることができる。
【0023】
これにより、より安定してより均一なドレッシングを行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明のドレッシングプレートによれば、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なものとなる。そして、ドレッシングの回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨布の形状の変化が小さいため、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることができるものとなる。また、本発明のドレッシング方法によれば、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能となり、ドレッシングの回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨布の形状の変化が小さいため、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る上定盤側研磨布用ドレッシングプレートの上面図及び断面図を示す。
図2】本発明に係る上定盤側研磨布用ドレッシングプレートの局所拡大断面図を示す。
図3】本発明に係る下定盤側研磨布用ドレッシングプレートの下面図及び断面図を示す。
図4】本発明に係る下定盤側研磨布用ドレッシングプレートの局所拡大図を示す。
図5】本発明に係るドレッシングプレートを配置した両面研磨装置を示す。
図6A】実施例1の結果(研磨布形状と研磨ウェーハ形状)を示す。
図6B】比較例1の結果(研磨布形状と研磨ウェーハ形状)を示す。
図7】実施例2の研磨ウェーハのフラットネスの評価結果を示す。
図8】比較例2の研磨ウェーハのフラットネスの評価結果を示す。
図9】従来のドレッシングプレートを示す。
図10】従来のドレッシングプレートの使用状態を示す。
図11】従来のドレッシングプレートを配置した両面研磨装置を示す。
図12】ドレッシングプレートを配置する部分を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
上述のように、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑止し、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得るために、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なドレッシングプレートが求められていた。
【0028】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間に挟み、前記上定盤側研磨布及び/又は前記下定盤側研磨布をドレッシングするためのドレッシングプレートであって、上面又は下面にダイヤモンド粒子が配置された円盤状のダイヤ固定プレートと、該ダイヤ固定プレートの外周部に固定された可撓性のラバーからなる円環状の接続部材と、該接続部材に固定され、前記接続部材を介して前記ダイヤ固定プレートに接続された円環状の支持プレートとを備えるドレッシングプレートにより、ドレッシングによる研磨布の形状の変化を抑えることが可能なものとなること、そして、ドレッシングの回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨布の形状の変化が小さいため、加工するウェーハの研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることができるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0029】
以下、図面を参照して説明する。
【0030】
(両面研磨装置)
まず、本発明に係る両面研磨装置について説明する。図5に、本発明に係るドレッシングプレートを配置した両面研磨装置100を示す。図5に示されるように、本発明に係る両面研磨装置100は、上定盤1及び下定盤2と、上定盤1及び下定盤2のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布3A及び下定盤側研磨布3Bと、上定盤側研磨布3A及び下定盤側研磨布3Bの間に挟むようにして配置された本発明に係るドレッシングプレート10を備えている。図5にはドレッシングプレート10として、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aと、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bとが配置された例が示されている。なお、図5はドレッシングを行うときの両面研磨装置を示しているが、ウェーハの研磨を行う場合には、ドレッシングプレート10(10A、10B)に代えて加工対象のウェーハを配置する。
【0031】
[ドレッシングプレート]
次に、本発明に係るドレッシングプレートについて説明する。本発明に係るドレッシングプレート10は、ドレッシングプレートが定盤の形状に倣った圧力分布で研削することが出来るようにするために、上面又は下面にダイヤモンド粒子が配置された円盤状のダイヤ固定プレートと、接続部材に固定され、前記接続部材を介して前記ダイヤ固定プレートに接続された円環状の支持プレートとを、可撓性のラバーからなる円環状の接続部材により接続したものである。本発明においては、上定盤側研磨布3Aをドレッシングするドレッシングプレートと上定盤側研磨布3Bをドレッシングするドレッシングプレートは、従来のように同一形状の物を表裏反転させて仕込むのではなく、それぞれに適した構造のものとすることが好ましい。
【0032】
(上定盤側研磨布用のドレッシングプレート)
図1に上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aの上面図及び断面図を示す。図2に上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aの局所拡大断面図を示す。
【0033】
図1に示すように、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aは、円盤状のダイヤ固定プレート11A、円環状の接続部材12A、円環状の支持プレート13Aを備えている。ダイヤ固定プレート11Aの上面にはダイヤモンド粒子4が配置されている。接続部材12Aは可撓性のラバーからなるものであるが、ダイヤ固定プレート11A、支持プレート13Aを構成する材料は特に限定されず、従来のドレッシングプレートと同様の材料を用いることができる。接続部材12Aは可撓性のラバーであれば特に限定されないが、例えばショアA硬度が85度以上のものを使用することができ、内部に布などの芯材を有しているものでもよい。ダイヤモンド粒子4の番手は♯60~♯500のものとすることができる。
【0034】
ダイヤモンド粒子4は、図1図2に示すように、ダイヤ固定プレート11Aの上面に設けられた環状の突出部14Aに配置することが好ましい。これにより、より安定して効果的にドレッシングを行うことができるものとなる。
【0035】
図2に示すように、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aを下定盤側研磨布3Bの上に配置したときに、荷重をかけない状態において、ダイヤ固定プレート11Aの下面と下定盤側研磨布3Bとの間に空間15Aが形成されるものであることが好ましい。これにより、上定盤の形状への追随性がより効果的なものとなる。この場合、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aを両面研磨装置100に配置したときに、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aに荷重がかかっていない状態では、上面のダイヤモンド粒子4は上定盤側研磨布3Aに接触しているが、強く押し込まれていない状態であり、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aのダイヤ固定プレート11Aの下面は下定盤側研磨布3Bに接触せず、浮いているような状態となる。このため、円環状の接続部材12Aが撓んで上定盤1の形状へ追随して変形するときの空間的余裕が確保できる。
【0036】
(下定盤側研磨布用のドレッシングプレート)
図3に下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bの下面図及び断面図を示す。図4に下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bの局所拡大断面図を示す。なお、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aと同様の事項については適宜説明を省略することがある。
【0037】
図3に示すように、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bは、円盤状のダイヤ固定プレート11B、円環状の接続部材12B、円環状の支持プレート13Bを備えている。ダイヤ固定プレート11Bの下面にはダイヤモンド粒子4が配置されている。
【0038】
このとき、図3図4に示すように、ダイヤモンド粒子4は、ダイヤ固定プレート11Bの下面に設けられた環状の突出部14Bに配置することが好ましい。これにより、より安定して効果的にドレッシングを行うことができるものとなる。
【0039】
図4に示すように、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bを下定盤側研磨布3Bの上に配置したときに、荷重をかけない状態において、ダイヤ固定プレート11Bの下面と下定盤側研磨布3Bとの間に空間15Bが形成されるものであることが好ましい。これにより、下定盤の形状への追随性がより効果的なものとなる。この場合、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bを両面研磨装置100に配置したときに、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bに荷重がかかっていない状態では、下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bの上面は上定盤側研磨布3Aに接触しているが、下面のダイヤモンド粒子4は下定盤側研磨布3Bに接触しない位置で浮いた状態となっており、強く押し込まれていない状態となる。このため、円環状の接続部材12Bが撓んで下定盤2の形状へ追随して変形するときの空間的余裕が確保できる。
【0040】
ダイヤ固定プレート11A,11Bと接続部材12A,12Bと支持プレート13A,13Bとを連結する構造としては、支持プレート13A,13Bが接続部材12A,12Bでダイヤ固定プレート11A,11Bを吊るような構造になっていることが好ましい。
【0041】
なお、円盤状のダイヤ固定プレート11A,11B、円環状の接続部材12A,12B、円環状の支持プレート13A,13Bをそれぞれ固定する方法は特に限定されない。例えば、ビス止めなどにより固定、連結することができる。
【0042】
(ドレッシング方法)
次に、本発明に係るドレッシング方法について説明する。両面研磨装置の上定盤及び下定盤のそれぞれに貼付された上定盤側研磨布及び下定盤側研磨布の間にドレッシングプレートを挟み、上定盤側研磨布及び/又は下定盤側研磨布をドレッシングする場合に、本発明のドレッシング方法においては、上述の本発明に係るドレッシングプレートを用いるが、ドレッシングプレートの自公転を行わず、かつ、上定盤及び下定盤の回転を行いながらドレッシングする。インターナルギヤとサンギヤの回転を停止させ、ドレッシングプレートの自公転を行わないことで、定盤形状を平均化させる効果が少なくなり、本発明に係るドレッシングプレート10(10A,10B)により定盤形状に倣ったダイヤモンドと研磨布の当たりが実現できる。
【0043】
ドレッシングは、上定盤側研磨布、下定盤側研磨布のどちらか一方だけを行っても良いが、上述の上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aと下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bの両方を用いて、同時に、上定盤側研磨布3A及び下定盤側研磨布3Bのドレッシングを行うことが好ましい。この場合、上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aと下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bとを交互に配置してドレッシングすることが好ましい。具体的には、図12に示す設置場所P1、P3に上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aを配置し、設置場所P2、P4に下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bを配置することができる。なお、配置するドレッシングプレートの数は特に限定されない。
【0044】
ドレッシングの条件は特に限定されないが、一例として、2枚の上定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Aと2枚の下定盤側研磨布用のドレッシングプレート10Bを定盤間に交互に仕込む場合、インターナルギアとサンギアの回転を停止させて、60~100g/cmの荷重で、上下定盤回転を5~20rpmとして、純水を供給しながらドレッシングを行うことができる。
【実施例
【0045】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0046】
[実施例1、比較例1]
まず、実施例1として本発明に係るドレッシングプレートを使用してドレッシングを行った場合と、比較例1として従来のドレッシングプレートを使用してドレッシングを行った場合について、ドレッシング初期と末期の研磨布の形状の違い、及び、研磨を行ったウェーハの形状評価(断面形状、GBIR)について評価、比較した。
【0047】
(実施例1)
実施例1で使用したドレッシングプレートは、ダイヤ固定プレートと支持プレートをゴム硬度(ショアA硬度)85°以上で布製芯材入りのダイヤフラム(接続部材)を介してビス止されたものを用いた。ダイヤ固定プレートには、環状の突出部にダイヤモンドがドーナツ状に直接固定されたものを用いた。上定盤側用のドレッシングプレートは、ダイヤ固定プレートのダイヤモンドが付いていない面が下定盤パッドに接しないように中空状態でダイヤ固定プレートが保持されるものを用いた。下定盤側用のドレッシングプレートは、ダイヤ固定プレートのダイヤモンドが付いている面が下定盤パッドに接しないように中空状態でダイヤ固定プレートが保持されるものを用いた。上定盤側用のドレッシングプレート2枚と下定盤側用のドレッシングプレート2枚を交互に上下定盤間に仕込み、インターナルギアとサンギアの回転を停止させ、ドレッシングプレートの自公転を行わず、上定盤の回転数を5.2rpm、下定盤の回転数を16.0rpmとして回転を行い、荷重100g/cmで、純水を供給しながらドレッシングを行った。
【0048】
(比較例1)
従来のドレッシングプレートとして、図9に示すような同一形状の一体型ドレッシングプレートを4枚使用し、上定盤側研磨布用と下定盤側研磨布用となるように、ドレッシングプレートを交互に反転させて配置し、ドレッシングプレートの自公転及び上定盤及び下定盤の回転を行いながらドレッシングを行った。
【0049】
(研磨パッド形状測定)
ドレッシング後の研磨パッド形状測定条件は以下のとおり。
測定機 : 日立造船(株)製真直度形状測定機(HSS)
測定方法 : 上定盤側研磨パッドに触診針を接触させて、定盤外周から内側に向かって動かし、反対面の定盤外周まで測定を行い上定盤側の形状を測定する。次に触診針を反転させ下定盤側に接触させ同様に測定を行う。
【0050】
ドレッシング後の研磨パッド形状を測定した後に、ドレッシング前のウェーハ研磨条件と同一条件で加工を行い、フラットネスの測定を行った。
【0051】
(研磨加工)
装置 : 不二越機械製両面研磨機
加工ウェーハ : 直径300mm、Si、P-、面方位(100)
加工部材 : 発泡ウレタンタイプ研磨パッド
研磨スラリー : KOHベースコロイダルシリカ
【0052】
(フラットネス測定)
評価装置 : 黒田精工社製フラットネス測定機、Nanometoro300TT-A
【0053】
(結果)
図6Aに実施例1、図6Bに比較例1の結果(研磨布の形状と研磨ウェーハ形状)を示す。図6A図6Bにおいて、研磨パッド形状の評価結果である定盤半径方向の形状プロファイルは、上側のプロファイルが下定盤側、下側のプロファイルが上定盤側の形状を示している。実施例1の場合は、図6Aに示すようにドレッシング初期と末期で研磨パッドの形状の変化が抑制されている。すなわち、本発明に係るドレッシングプレートを使用してドレッシングを行えば、研磨パッドの形状の変化を抑制できることがわかる。一方、図6Bに示すように、比較例1のように従来のドレッシングプレートを使用してドレッシングを行った場合には、ドレッシング初期と末期で研磨パッドの形状が大きく異なることがわかる。
【0054】
また、図6A図6Bに示されるように、ドレッシング初期と末期のそれぞれの場合について実際にウェーハを研磨した結果、比較例1のドレッシング末期の場合にウェーハの断面形状が大きな凹状分布となったのに対して、実施例1の場合にはドレッシング初期と末期の場合とで大きな違いは見られなかった。このことは、GBIRの数値からも確認できた。
【0055】
比較例1では、ドレッシングの回数が増えることで、上下定盤に貼り付けた研磨パッドの形状が、上定盤側は凸形状から平坦方向に形状変化し、下定盤側も凹形状から平坦方向に形状変化する。この形状変化により、初期時に加工ウェーハの平坦度が良い加工条件に設定しても、ドレッシングの進行により加工後ウェーハの平坦度が悪化する傾向であった。一方、実施例1では、ドレッシング回数が増えても上下定盤に貼り付けた研磨パッド形状の変化は小さく、加工するウェーハ研磨条件を調整しなくとも平坦なウェーハ形状を得ることができた。
【0056】
[実施例2、比較例2]
次に、ドレッシングの違いによる加工ウェーハのフラットネス(GBIR)を評価した。実際の加工対象ウェーハを用いて両面研磨を行い、研磨後のウェーハ形状(断面形状)を測定し、比較した。実施例2、比較例2では、それぞれ、実施例1、比較例1と同様にしてドレッシングを行った。実施例2、比較例2で共通の条件を以下に示す。
【0057】
(ドレッシング)
ドレッシング回数を多くした場合の影響を評価するための加速試験として、ドレッシング時間を1min、250min(2水準)とした。
【0058】
上記のように所定の時間ドレッシングを行った後に、ドレッシング前のウェーハ研磨条件と同一条件で加工を行い、ウェーハのフラットネス測定を行った。
【0059】
(研磨加工)
装置 : 不二越機械製両面研磨機
加工ウェーハ : 直径300mm、Si、P-、面方位(100)
加工部材 : 発泡ウレタンタイプ研磨パッド
研磨スラリー : KOHベースコロイダルシリカ
【0060】
(フラットネス測定)
評価装置 : KLA社製フラットネス測定機、WaferSight2
評価条件 Edge Ex.=2mm
【0061】
実施例2のフラットネスの評価結果を図7に、比較例2のフラットネスの評価結果を図8に示す。図7,8に示されるように、従来のドレッシング方法を用いた比較例2では、ドレッシングが1minの場合でも実施例2よりGBIRのばらつきが大きかった。そして、ドレッシングを250minまで加速させることにより、GBIRの値、バラツキともに悪化することがわかる。一方、本発明のドレッシング方法を用いた実施例2では、ドレッシング時間に影響を受けずGBIRが安定しており、バラツキも小さいことがわかる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0063】
1…上定盤、 2…下定盤、
3A…上定盤側研磨布、 3B…下定盤側研磨布、 4…ダイヤモンド粒子、
10…ドレッシングプレート(本発明例)、
10A…上定盤側研磨布用ドレッシングプレート、
10B…下定盤側研磨布用ドレッシングプレート、
11A,11B…ダイヤ固定プレート、
12A,12B…接続部材、
13A,13B…支持プレート、
14A、14B…突出部、 15A、15B…空間、
20…ドレッシングプレート(従来例)、 21…プレート
30…インターナルギアピン、 31…サンギアピン、
100…ドレッシング時の両面研磨機(本発明例)、
200…ドレッシング時の両面研磨機(従来例)。
P1、P2、P3、P4…ドレッシングプレートの配置位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12