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特許7509117監視方法、監視プログラム、監視装置、ウェーハの製造方法、及びウェーハ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】監視方法、監視プログラム、監視装置、ウェーハの製造方法、及びウェーハ
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240625BHJP
【FI】
G05B23/02 302S
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021178291
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067232
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2021-10-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】谷川 満里奈
(72)【発明者】
【氏名】表 秀一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正太
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179264(WO,A1)
【文献】特開2008-226006(JP,A)
【文献】特開2021-163054(JP,A)
【文献】特開2015-088078(JP,A)
【文献】特開2020-008997(JP,A)
【文献】特開2017-120504(JP,A)
【文献】特開2019-101495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工装置として、外周研削装置、ワイヤソー装置、ラップ装置、両面研磨装置、片面研磨装置、単結晶引上装置、若しくは洗浄装置の少なくとも1つを含む半導体用シリコンウェーハの製造工程、又は、付帯設備として、純水供給設備、冷却水供給設備、薬液供給設備、若しくはスラリー供給設備の少なくとも1つを含む、半導体用シリコンウェーハの製造工程における、複数の監視対象の工程から取得した、複数の加工データを含む工程データを、前記監視対象毎に生成した、局所部分空間法、VQC(Vector Quantization Clustering)法、又はPLS(Partial Least Square regression)法のいずれかの前記複数の加工データを解析するための解析モデルに適用して得られる解析結果に基づいて前記工程の状態を監視する監視方法であって、
前記工程データのうち第1評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって第1統計値を算出するステップと、
前記工程データのうち前記第1評価区間の後の第2評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって第2統計値を算出するステップと、
前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率を算出して出力するステップと
を含み、
前記解析モデルは、前記第1評価区間のデータを適用するときと前記第2評価区間のデータを適用するときとで変更されていない固定化されたモデルである、監視方法。
【請求項2】
前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率が所定値以上である場合に前記工程の状態に関するアラームを出力するステップを更に含む、請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
前記第2評価区間より前の期間を学習区間として設定するステップと、
前記工程データのうち前記学習区間のデータに基づいて前記解析モデルを生成するステップと
を更に含む、請求項1又は2に記載の監視方法。
【請求項4】
前記第2評価区間を変更する場合に前記学習区間を変更して前記解析モデルを生成しなおすステップを更に含む、請求項に記載の監視方法。
【請求項5】
前記第1評価区間を前記学習区間より前の期間に設定するステップを更に含む、請求項又はに記載の監視方法。
【請求項6】
前記第1評価区間を前記学習区間より後の期間に設定するステップを更に含む、請求項又はに記載の監視方法。
【請求項7】
前記工程データとして、加工装置又は付帯設備を含む複数の監視対象それぞれの工程データを取得するステップを更に含み、
前記第1統計値を算出するステップにおいて、前記各監視対象の工程データのうち前記第1評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって前記第1統計値を算出し、
前記第2統計値を算出するステップにおいて、前記各監視対象の工程データのうち前記第2評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって前記第2統計値を算出し、
前記比率を算出して出力するステップにおいて、前記各監視対象の工程データに基づいて算出した前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率を算出して出力する、請求項1からまでのいずれか一項に記載の監視方法。
【請求項8】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の監視方法をプロセッサに実行させる監視プログラム。
【請求項9】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の監視方法を実行する制御部を備える監視装置。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか一項に記載の監視方法を実行することによって監視したウェーハの加工装置でウェーハを加工するステップを含む、ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、監視方法、監視プログラム、監視装置、ウェーハの製造方法、及びウェーハに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント等の設備において、モデル化した学習データを用いて異常測度を算出して異常を検知する方法が知られている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-145846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の装置を監視する場合、各装置で異常測度に基づく異常の検知基準が異なることによって、監視が複雑化する。監視の複雑化は、装置の異常に対する対応の遅れ、又は、対応漏れを引き起こし得る。その結果、装置で加工される製品、又は、装置が運転を補助する加工装置で加工される製品の品質に影響が及ぼされる。製品の品質向上が求められる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、装置の異常を容易に検知する、監視方法、監視プログラム、監視装置、ウェーハの製造方法、及びウェーハを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本開示の一実施形態は、以下のとおりである。
[1]工程から取得した工程データを解析モデルに適用して得られる解析結果に基づいて前記工程の状態を監視する監視方法であって、
前記工程データのうち第1評価区間のデータを解析モデルに適用することによって第1統計値を算出するステップと、
前記工程データのうち前記第1評価区間の後の第2評価区間のデータを解析モデルに適用することによって第2統計値を算出するステップと、
前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率を算出して出力するステップと
を含む監視方法。
[2]前記工程データとして、加工装置又は付帯設備を含む複数の監視対象それぞれの工程データを取得するステップを更に含み、
前記第1統計値を算出するステップにおいて、前記各監視対象の工程データのうち前記第1評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって前記第1統計値を算出し、
前記第2統計値を算出するステップにおいて、前記各監視対象の工程データのうち前記第2評価区間のデータを前記解析モデルに適用することによって前記第2統計値を算出し、
前記比率を算出して出力するステップにおいて、前記各監視対象の工程データに基づいて算出した前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率を算出して出力する、上記[1]に記載の監視方法。
[3]前記第1統計値に対する前記第2統計値の比率が所定値以上である場合に前記工程の状態に関するアラームを出力することを更に含む、上記[1]又は[2]に記載の監視方法。
[4]前記第2評価区間より前の期間を学習区間として設定するステップと、
前記工程データのうち前記学習区間のデータに基づいて前記解析モデルを生成するステップと
を更に含む、上記[1]から[3]までのいずれか一項に記載の監視方法。
[5]前記第2評価区間を変更する場合に前記学習区間を変更して前記解析モデルを生成しなおすステップを更に含む、上記[4]に記載の監視方法。
[6]前記第1評価区間を前記学習区間より前の期間に設定するステップを更に含む、上記[4]又は[5]に記載の監視方法。
[7]前記第1評価区間を前記学習区間より後の期間に設定するステップを更に含む、上記[4]又は[5]に記載の監視方法。
[8]上記[1]から[7]までのいずれか一項に記載の監視方法をプロセッサに実行させる監視プログラム。
[9]上記[1]から[7]までのいずれか一項に記載の監視方法を実行する制御部を備える監視装置。
[10]上記[1]から[7]までのいずれか一項に記載の監視方法を実行することによって監視したウェーハの加工装置でウェーハを加工するステップを含む、ウェーハの製造方法。
[11]上記[1]から[7]までのいずれか一項に記載の監視方法を実行することによって監視したウェーハの加工装置で加工したウェーハ。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る監視方法、監視プログラム、監視装置、ウェーハの製造方法、及びウェーハによれば、製品の品質が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態に係る監視システムの構成例を示すブロック図である。
図2】比較例に係る学習区間及び評価区間の設定を示す表である。
図3】比較例に係る装置が算出した統計値の例を示すグラフである。
図4】監視装置が設定する学習区間及び評価区間の一例を示す表である。
図5】監視装置が算出した統計値比率の例を示すグラフである。
図6】局所部分空間法に基づく解析モデルを用いて比較例に係る装置が算出した統計値の例を示すグラフである。
図7】局所部分空間法に基づく解析モデルを用いて監視装置が算出した統計値比率の例を示すグラフである。
図8】VQC法に基づく解析モデルを用いて比較例に係る装置が算出した統計値の例を示すグラフである。
図9】VQC法に基づく解析モデルを用いて監視装置が算出した統計値比率の例を示すグラフである。
図10】本開示の一実施形態に係る監視方法の手順例を示すフローチャートである。
図11】第1評価区間を固定する例を示す表である。
図12】前の解析動作の第2評価区間と次の解析動作の第1評価区間とが異なる区間に設定される例を示す表である。
図13】第1評価区間が学習区間よりも前の区間に設定される例を示す表である。
図14】解析動作毎に学習区間を移動させる例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(監視システム1の構成例)
以下、本開示の一実施形態に係る監視システム1が図面を参照して説明される。図1に示されるように、監視システム1は、監視装置20と、記憶装置30とを備える。監視装置20は、製品を製造する工程に設置されている加工装置10又は付帯設備40等の装置の状態を監視する。加工装置10は、製品を加工する。付帯設備40は、加工装置10に冷却水又はスラリー等の補助材料を供給したり工程の温度又は湿度等を制御したりする。付帯設備40は、工程の温度若しくは湿度、又は、冷却水の温度等を測定するセンサを含む。加工装置10又は付帯設備40等の装置は、監視対象とも称される。監視対象は、監視対象自身の状態を表すデータを出力する。監視対象の状態を表すデータは、工程データとも称される。記憶装置30は、監視対象から工程データを取得し、格納する。監視装置20は、工程データを記憶装置30から取得し、工程データに基づいて監視対象の状態を判定する。監視装置20は、工程データを監視対象から取得してもよい。
【0010】
工程データは、加工装置10における構成部の動作状態を表す加工データを含んでよい。加工データとしては、例えば、回転速度、送り速度、変位、圧力、張力、温度、振動等が挙げられる。工程データは、付帯設備40が供給する補助材料の供給量、流量、濃度又は温度等の状態を表す付帯データを含んでよい。付帯データは、付帯設備40で測定された工程の圧力、振動、温度又は湿度等のデータを含んでよい。
【0011】
本実施形態において、製品は半導体用シリコンウェーハであるとする。監視対象は、ウェーハ製造工程に設置されているとする。加工装置10は、例えば、外周研削装置、ワイヤソー装置、ラップ装置、DSP(両面研磨装置)、SMP(片面研磨装置)、単結晶引上げ装置、又は洗浄装置等であってよい。付帯設備40は、例えば、純水供給設備、冷却水供給設備、薬液供給設備又はスラリー供給設備等であってよい。本発明は、半導体用シリコンウェーハの製造時の装置の監視に好適に用いることができる。
【0012】
監視装置20は、制御部22を備える。制御部22は、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。プロセッサは、制御部22の種々の機能を実現するプログラムを実行しうる。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。
【0013】
監視装置20は、出力部24を更に備える。出力部24は、例えば、画像又は文字若しくは図形等の視覚情報を出力する表示デバイスを含んでよい。表示デバイスは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ若しくは無機ELディスプレイ、又は、PDP(Plasma Display Panel)等を含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらのディスプレイに限られず、他の種々の方式のディスプレイを含んで構成されてよい。表示デバイスは、LED(Light Emitting Diode)又はLD(Laser Diode)等の発光デバイスを含んで構成されてよい。表示デバイスは、これらに限られず他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。出力部24は、例えば、音声等の聴覚情報を出力するスピーカ等の音声出力デバイスを含んでよい。出力部24は、これらに限られず他の種々のデバイスを含んで構成されてよい。
【0014】
監視装置20は、記憶部を更に備えてよい。記憶部は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んでよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んでもよい。記憶部は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含んでよい。記憶部は、各種情報及び制御部22で実行されるプログラム等を格納する。記憶部は、制御部22のワークメモリとして機能してよい。記憶部の少なくとも一部は、制御部22に含まれてよい。
【0015】
監視装置20は、加工装置10又は記憶装置30との間でデータを送受信する通信部を更に備えてもよい。通信部は、加工装置10又は記憶装置30と通信可能に接続される。通信部は、加工装置10又は記憶装置30とネットワークを介して通信可能に接続されてよい。通信部は、加工装置10又は記憶装置30と有線又は無線で通信可能に接続されてよい。通信部は、ネットワーク又は加工装置10若しくは記憶装置30と接続する通信モジュールを備えてよい。通信モジュールは、LAN(Local Area Network)等の通信インタフェースを備えてよい。通信モジュールは、4G又は5G等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。通信部が実行する通信方式は、上述の例に限られず、他の種々の方式を含んでもよい。通信部の少なくとも一部は、制御部22に含まれてよい。
【0016】
記憶装置30は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んでよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んでもよい。記憶装置30は、監視対象から工程データを取得して格納する。記憶装置30は、格納した工程データを監視装置20からの要求に応じて監視装置20に出力する。
【0017】
(監視装置20の動作例)
監視装置20は、工程データを局所部分空間法等の多変量解析によって統計的に解析し、解析結果を表す統計値を算出する。監視装置20は、2つの期間それぞれで取得された工程データの解析結果を表す2つの統計値を算出する。監視装置20は、2つの統計値の比率を算出して出力する。ユーザである作業者は、2つの統計値の比率の値に基づいて工程の状態を監視できる。以下、監視装置20の動作例が具体的に説明される。
【0018】
<解析モデルの生成>
監視装置20の制御部22は、記憶装置30に格納されている工程データを取得する。制御部22は、監視対象から工程データを取得してもよい。制御部22は、取得した工程データを統計的に解析するために用いる解析モデルを、任意の期間における監視対象の工程データに基づいて生成する。解析モデルは、入力された工程データを統計的に解析することによって算出される統計値を出力するように構成される。解析モデルは、解析モデルが解析対象とする工程データの分布の中で、入力された工程データが分布の中央に近いか又は分布から外れているかを表す数値を統計値として出力する。
【0019】
制御部22は、監視対象の状態が正常あるいは異常にかかわらず、工程データに基づいて解析モデルを生成してよいが、監視対象の状態が正常であった期間の工程データに基づいて解析モデルを生成することが好ましい。監視対象の状態が正常であった期間は、工程で異常が発生していなかったと認められる期間として定められてよい。監視対象の状態が正常であった期間は、監視対象において加工された製品が正常であったと認められる期間として定められてよい。監視対象の状態が正常であった期間は、ユーザによって任意に指定された期間であってもよい。
【0020】
制御部22は、例えば局所部分空間法、VQC(Vector Quantization Clustering)法、MT(Maharanobis-Taguchi)法又はPLS(Partial Least Square regression)法等の工程データを解析するための種々の手法に基づく解析モデルを生成してよい。制御部22は、回帰分析等によって工程データの相関関係を推定し、相関関係の推定結果に基づいて解析モデルを生成してよい。制御部22は、工程データを教師データとする機械学習を実行することによって学習済みモデルとしての解析モデルを生成してよい。解析モデルを生成するために用いる工程データが取得された期間は、学習区間とも称される。
【0021】
<工程データの統計値の算出>
制御部22は、任意の期間における監視対象の工程データを解析モデルに入力する。解析モデルに入力する工程データが取得された期間は、評価区間とも称される。つまり、制御部22は、評価区間における監視対象の工程データを解析モデルに入力する。制御部22は、解析モデルから、評価区間における監視対象の工程データの統計値を取得する。
【0022】
制御部22は、評価区間として、第1評価区間及び第2評価区間の2つの区間を設定する。制御部22は、第2評価区間として監視対象の状態を判定する期間を設定する。本実施形態において、制御部22は、第2評価区間として最新の工程データを取得した期間を設定する。制御部22は、第1評価区間として、第2評価区間よりも前の任意の期間を設定してよい。逆に言えば、制御部22は、第2評価区間として、第1評価区間よりも後の任意の期間を設定してよい。第1評価区間及び第2評価区間は、互いに重複しないように設定される。また、第1評価区間と第2評価区間の2つの区間の長さは異なっていても良いが、同じ長さであることが好ましい。第1評価区間は、監視対象の状態が正常あるいは異常にかかわらず設定されてよい。第1評価区間は、第2評価区間の監視対象の状態を監視対象の状態が正常である状態(第1評価区間)からの変化でみることができるように、監視対象の状態が正常であった期間に設定することが好ましい。
【0023】
制御部22は、第1評価区間及び第2評価区間それぞれにおける監視対象の工程データを解析モデルに入力し、第1評価区間及び第2評価区間それぞれにおける監視対象の工程データの統計値を取得する。第1評価区間における監視対象の工程データの統計値は、第1統計値とも称される。第2評価区間における監視対象の工程データの統計値は、第2統計値とも称される。
【0024】
制御部22は、第1統計値に対する第2統計値の比率を算出する。第1統計値に対する第2統計値の比率は、統計値比率とも称される。具体的に、制御部22は、第2統計値を第1統計値で除算する。制御部22は、算出した比率を出力部24によって出力する。ユーザである作業者は、出力部24から出力された比率の値に基づいて、監視対象の状態を判定できる。
【0025】
制御部22は、第1評価区間及び第2評価区間それぞれにおいて、さらに細かい区間に分けて各区間の統計値を算出してよい。制御部22は、各区間の統計値について平均化等の統計処理を実行し、第1評価区間及び第2評価区間それぞれの統計値として算出してよい。
【0026】
(比較例との対比)
比較例として、評価区間として2つの区間ではなく1つの区間だけが設定される構成が説明される。図2に示されるように、比較例に係る装置は、01番から10番までの10個の区間を学習区間に設定する。学習区間は、網掛けのハッチングで表されている。比較例に係る装置は、設定した学習区間の工程データについて学習動作を実行する。比較例に係る装置は、11番の区間を評価区間に設定する。評価区間は、右上がり斜線のハッチングで表されている。比較例に係る装置は、設定した評価区間(11番の区間)を更に細かく分けた区間の工程データについて1回目の解析動作(「解析1」と表示されている。)を実行し、各区間の統計値を算出する。比較例に係る装置は、12番の区間を評価区間に設定し、評価区間(12番の区間)を更に細かく分けた区間の工程データについて2回目の解析動作(「解析2」と表示されている。)を実行し、各区間の統計値を算出する。比較例に係る装置は、更に13番の区間を評価区間に設定し、評価区間(13番の区間)を更に細かく分けた区間の工程データについて3回目の解析動作(「解析3」と表示されている。)を実行し、各区間の統計値を算出する。
【0027】
比較例の各評価区間を更に細かく分けた区間について算出された統計値が図3のグラフとして示される。図3のグラフの横軸は、評価区間の工程データが取得された時刻を示す。横軸に沿って、各回の解析動作(グラフの横軸にそれぞれ「解析1」、「解析2」及び「解析3」と表示されている。)の対象となる評価区間が表示されている。縦軸は、各区間で算出された統計値を示す。各回の解析動作で算出された統計値は、評価区間を更に細かく分けた区間で算出された複数の値がプロットされている。図3のグラフにおいて、各回の解析動作によって算出された各区間の統計値と、統計値を算出した区間に対応する時刻との関係が示されている。
【0028】
一方で、本実施形態に係る監視装置20の制御部22は、第1評価区間及び第2評価区間それぞれについて第1統計値及び第2統計値を算出する。図4に示されるように、制御部22は、01番から10番までの10個の区間を学習区間に設定する。学習区間は、網掛けのハッチングで表されている。制御部22は、設定された学習区間の工程データについて学習動作を実行する。制御部22は、1回目の解析動作(「解析1」と表示されている。)を実行するために、11番の区間を第1評価区間に設定し、12番の区間を第2評価区間に設定する。第1評価区間は、右上がり斜線のハッチングで表されている。第2評価区間は、右下がり斜線のハッチングで表されている。制御部22は、設定した第1評価区間(11番の区間)を更に細かく分けた区間の工程データについて解析し、統計値を算出する。また、制御部22は、1回目の解析動作として、設定した第2評価区間(12番の区間)を更に細かく分けた区間の工程データについて解析し、統計値を算出する。制御部22は、12番の区間を第1評価区間に設定し、13番の区間を第2評価区間に設定し、2回目の解析動作(「解析2」と表示されている。)を実行する。制御部22は、13番の区間を第1評価区間に設定し、14番の区間を第2評価区間に設定し、3回目の解析動作(「解析3」と表示されている。)を実行する。制御部22は、同様に4回目以降の解析動作を実行してよい。
【0029】
制御部22は、各回の解析動作によって得られた統計値に基づいて統計値比率を算出する。具体的に、制御部22は、1回目の解析動作において第1評価区間を細かく分けた区間それぞれについて算出した統計値に対して平均化等の統計処理を実行することによって第1統計値を算出する。また、制御部22は、第2評価区間を細かく分けた区間それぞれについて算出した統計値に対して平均化等の統計処理を実行することによって第2統計値を算出する。制御部22は、第2統計値を第1統計値で除算することによって統計値比率を算出する。
【0030】
統計値比率の算出結果の例が図5のグラフとして示される。図5のグラフの横軸は、第2評価区間の工程データが取得された時刻を示す。第2評価区間の工程データが取得された時刻は、第2評価区間の開始時刻であってもよいし終了時刻であってもよいし区間の途中の時刻であってもよい。縦軸は、各回の解析動作によって算出された統計値比率を示す。本実施形態において、制御部22は、第2評価区間を1日単位で設定する。つまり、制御部22は、1日単位で工程データを解析して統計値比率を算出する。図5のグラフにおいて、各回の解析動作(グラフの横軸にそれぞれ「解析1」、「解析2」及び「解析3」と表示されている。)によって算出された統計値比率の変化が示されている。本実施形態において評価区間は、1日単位で設定されたが、1日より長い単位(例えば数日単位)で設定されてよいし、1日より短い単位(例えば数時間単位又は数分単位)で設定されてもよい。
【0031】
比較例と本実施形態とが対比して説明される。比較例において、評価区間における監視対象の工程データの統計値が算出される。しかし、第1統計値に対する第2統計値の比率は算出されない。一方で、本実施形態において、制御部22は、第1統計値に対する第2統計値の比率(統計値比率)を算出する。
【0032】
比較例及び本実施形態のいずれにおいても、解析モデルは、監視対象毎に生成される。解析モデルによって、監視対象の状態が異常であるときに算出される統計値の大きさが異なる。複数の監視対象について統計値を算出した場合に、統計値に基づいて各監視対象の状態が異常であるか判定するための基準となる値を、各監視対象について準備する必要がある。したがって、各監視対象の状態を統計値だけに基づいて簡単に判定することは難しい。
【0033】
ここで、統計値比率は、監視対象の状態の変化を表す。監視対象の状態が変化していない場合、統計値比率の値は1になる。監視対象の状態が正常であることが分かっている期間の統計値に対して、監視対象の状態を判定する対象となる期間の統計値が変化していなければ、監視対象の状態を判定する対象となる期間において監視対象の状態が正常であると判定できる。したがって、統計値比率の値が1に近い場合、監視対象の状態が正常であると判定できる。
【0034】
逆に、監視対象の状態が変化することによって統計値が大きくなる場合、統計値比率の値は1より大きい値になる。統計値が大きくなるほど監視対象の状態が異常に近づく、又は、監視対象の異常が進行するといえる。したがって、統計値比率の値が大きくなるほど監視対象の状態が異常である可能性が高いと判定できる。ユーザは、監視対象の状態が異常である可能性が高いと判定された場合、その監視対象の状態が異常であるか否かを実際に確認する。例えば純水供給設備の状態が異常である可能性が高いと判定された場合、ユーザは、純水供給設備のフィルタを確認したり交換したりしてよい。
【0035】
本実施形態に係る監視装置20は、統計値比率を算出することによって、統計値と比較する基準となる値を準備せずに監視対象の状態を簡易に判定できる。監視対象の状態を簡易に判定できることによって、監視対象の異常への対応が早期に実行され得る。また、監視対象の異常が見逃されにくい。その結果、監視対象を含む工程で加工される製品の品質が向上され得る。
【0036】
また、比較例のように統計値しか算出されない場合、ユーザが複数の監視対象の状態を判定する場合に各監視対象の状態を比較することが難しい。複数の監視対象の状態の比較について比較例と本実施形態とを対比するために、局所部分空間法に基づく解析モデルを用いて各監視対象の統計値を算出する例が説明される。装置A、装置B及び装置Cの3台の装置を監視対象として各装置の工程データを解析モデルに入力することによって、統計値が算出されるとする。
【0037】
比較例に係る装置は、図6のグラフに示されるように各装置の統計値を算出する。図6の横軸は時刻を示す。縦軸は統計値を示す。なお、網掛けのハッチングが付されている領域は、各装置の異常が検知された区間を表す。図6のグラフの範囲内で、装置の異常が検知されているときの装置Aの統計値の最大値は約4である。装置Bの統計値の最大値は約18である。装置Cの統計値の最大値は約8である。つまり、各装置の異常が検知されるときの統計値は大きく異なり、個体差がある。また、装置の異常が検知されていないときの各装置の統計値は、ほとんど変化していないものの、各装置で個体差があり異なっている。図6に例示されるように、装置の異常が検知されるときの統計値が装置毎に異なっている場合、ユーザは装置毎に異なる基準値を用いて装置の状態を判定する必要がある。
【0038】
本実施形態に係る監視装置20の制御部22は、図7のグラフに示されるように各装置の統計値比率を算出する。図7の横軸は時刻を示す。縦軸は統計値比率を示す。縦軸のスケールは、各装置で統一されている。ユーザは、統計値比率に基づいて各装置の状態を判定する場合、統計値比率が1以下の値又は1に近い値である場合に、装置の状態を正常と判定しやすい。ユーザは、統計値比率が所定値未満である場合に、装置の状態を正常と判定してもよい。ユーザは、統計値比率が所定値以上である場合に、装置の状態が異常である可能性が高いと判定してもよい。ユーザは、2回以上の解析動作において統計値比率が所定値以上である場合に、装置の状態が異常であると判定してもよい。所定値は、例えば2に設定されてよいがこれに限られない。
【0039】
ユーザは、例えば、時刻がT1で表されているときの統計値比率に基づいて、装置Aを正常と判定し、装置B及び装置Cを異常である可能性があると判定する。ユーザは、装置Bよりも統計値比率が高い装置Cを優先して、異常であるか否かを実際に確認してよい。時刻がT2で表されているときの統計値比率によれば、ユーザは、装置Cよりも統計値比率が高い装置Bを優先して、異常であるか否かを実際に確認してよい。時刻がT3で表されているときの統計値比率によれば、ユーザは、装置Aを異常である可能性があると判定し、装置B及び装置Cを正常と判定する。時刻がT4で表されているときの統計値比率によれば、ユーザは、装置A及び装置Cを異常である可能性があると判定し、装置Bを正常と判定する。
【0040】
また、ユーザは、統計値比率の値が大きい装置を発見した場合、その装置の実際の状態を確認する。ユーザは、複数の装置において統計値比率の値が大きくなった場合、統計値比率の値が大きい装置を優先して、異常であるか否かを実際に確認してもよい。統計値比率の値が大きいほど装置の状態が大きく悪化している可能性がある。
【0041】
比較例と本実施形態とを対比するための他の例として、VQC法に基づく解析モデルを用いて各監視対象の統計値を算出する例が説明される。装置A、装置B及び装置Cの3台の装置を監視対象として各装置の工程データを解析モデルに入力することによって、統計値が算出されるとする。
【0042】
比較例に係る装置は、図8のグラフに示されるように各装置の統計値を算出する。図8の横軸は時刻を示す。縦軸は統計値を示す。なお、網掛けのハッチングが付されている領域は、各装置の異常が検知された区間を表す。図8のグラフの範囲内で、装置の異常が検知されているときの装置Aの統計値の最大値は約700である。装置Bの統計値の最大値は約40である。装置Cの統計値の最大値は約120である。つまり、各装置の異常が検知されるときの統計値は大きく異なり、個体差がある。また、装置の異常が検知されていないときの各装置の統計値は、ほとんど変化していない又は異常が検知されているときの統計値と比較して小さい値でしか変化していないものの、各装置で個体差があり異なっている。図8に例示されるように、装置の異常が検知されるときの統計値が装置毎に異なっている場合、ユーザは装置毎に異なる基準値を用いて装置の状態を判定する必要がある。
【0043】
本実施形態に係る監視装置20の制御部22は、図9のグラフに示されるように各装置の統計値比率を算出する。図9の横軸は時刻を示す。縦軸は統計値比率を示す。縦軸のスケールは、各装置で統一されている。ユーザは、統計値比率に基づいて各装置の状態を判定する場合、統計値比率が1以下の値又は1に近い値である場合に、装置の状態を正常と判定しやすい。ユーザは、統計値比率が2未満である場合に装置の状態を正常と判定し、統計値比率が2以上である場合に装置の状態を異常である可能性が高いと判定してもよい。ユーザは、例えば、時刻がT5で表されているときの統計値比率に基づいて、装置Aを異常である可能性があると判定し、装置B及び装置Cを正常であると判定する。
【0044】
以上述べてきたように、本実施形態に係る監視装置20は、統計値比率を算出することによって、監視対象の状態を簡便に判定できる。また、ユーザが複数の監視対象の状態を確認する必要がある場合に、監視を容易にするとともに優先して確認する監視対象を決定しやすくなる。確認する監視対象に優先順位をつけることによって、監視対象の異常への対応が早期に実行され得る。また、監視対象の異常が見逃されにくい。その結果、監視対象を含む工程で加工される製品の品質が向上され得る。
【0045】
監視装置20の制御部22は、算出した統計値比率を出力部24によって出力してユーザに通知する。制御部22は、図7又は図9に例示されたグラフのように統計値比率の算出結果をグラフとして出力部24に表示させてよい。制御部22は、統計値比率の算出結果を数値の文字情報として出力部24に表示させてよい。制御部22は、算出した統計値比率の値が所定値以上である場合に、監視対象の状態が異常である可能性が高いと判定して、ディスプレイへの表示、発光、又は音等のアラームを出力部24に出力させてよい。アラームの出力によって、ユーザが監視対象の異常を見逃しにくくなる。
【0046】
制御部22は、統計値比率の算出結果の傾向が類似している監視対象を抽出してよい。ユーザは、統計値比率の算出結果の傾向が類似している監視対象に共通する要因について異常が発生しているかを優先して確認できる。監視対象に共通する要因は、例えば、加工装置10に対する冷却水、純水、スラリー、又は圧縮空気等の供給元を含んでよい。監視対象に共通する要因は、例えば、加工装置10又は付帯設備40が設置されている工程内の領域を含んでよい。監視対象に共通する要因は、これらに限られず種々の要因を含んでよい。
【0047】
(監視方法の手順例)
監視装置20の制御部22は、例えば図10に例示されるフローチャートの手順を含む監視方法を実行することによって監視対象の工程データに基づく統計値及び統計値比率を算出してよい。監視方法は、制御部22に実行させる監視プログラムとして実現されてもよい。
【0048】
制御部22は、監視対象の工程データを取得する(ステップS1)。制御部22は、学習区間を設定する(ステップS2)。制御部22は、学習区間の工程データに基づいて解析モデルを生成する(ステップS3)。制御部22は、第1評価区間及び第2評価区間を設定する(ステップS4)。制御部22は、第1評価区間の工程データを解析モデルに適用して第1統計値を算出し、第2評価区間の工程データを解析モデルに適用して第2統計値を算出する(ステップS5)。制御部22は、第2統計値を第1統計値で除算して統計値比率を算出する(ステップS6)。制御部22は、統計値比率の算出結果を出力部24に出力させる(ステップS7)。
【0049】
制御部22は、統計値比率が所定値以上であるか判定する(ステップS8)。制御部22は、統計値比率が所定値以上でない場合(ステップS8:NO)、つまり統計値比率が所定値未満である場合、図10のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部22は、統計値比率が所定値以上である場合(ステップS8:YES)、監視対象の状態が異常である可能性が高いと判定してアラームを出力部24に出力させる(ステップS9)。制御部22は、ステップS9の手順の実行後、図10のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0050】
制御部22は、ステップS7の手順の実行後、ステップS8及びS9の手順を実行せずに図10のフローチャートの手順の実行を終了してもよい。制御部22は、ステップS2及びS3の手順を実行する代わりに、あらかじめ生成された解析モデルを外部装置から取得してもよい。制御部22は、ステップS1の手順で工程データを取得する前にステップS2の手順で学習区間を設定し、設定した学習区間の工程データを取得してもよい。制御部22は、ステップS1の手順で工程データを取得する前に第1評価区間及び第2評価区間を設定し、設定した第1評価区間及び第2評価区間の工程データを取得してもよい。
【0051】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
【0052】
<学習区間の設定>
監視装置20の制御部22は、図4に示されるように、解析動作毎に、第1評価区間及び第2評価区間を両方とも移動させ、連続する期間に設定してよい。このようにすることで、統計値比率が監視対象の状態の変化率を表す。制御部22は、図11に示されるように第1評価区間を固定し、第2評価区間だけを移動させてもよい。この場合、第1評価区間と第2評価区間とが離れた期間に設定されてよい。第1評価区間を固定することによって、統計値比率が特定の時期の監視対象の状態からの変化を表す。
【0053】
制御部22は、図4に示されるように、前の解析動作において第2評価区間に設定した区間を、次の解析動作において第1評価区間に設定してよい。制御部22は、図12に示されるように、前の解析動作において第2評価区間に設定した区間とは異なる区間を、次の解析動作において第1評価区間に設定してよい。
【0054】
制御部22は、図4に示されるように、第1評価区間及び第2評価区間を両方とも学習区間よりも後の期間に設定してもよい。このようにすることで、制御部22は、学習区間が監視対象の停止又はメンテナンス等のイベント発生の前後の時期を含む場合に、監視対象の停止又はメンテナンス等のイベント発生後の期間における状態の変化を表すように統計値比率を算出できる。制御部22は、図13に示されるように、第1評価区間を学習区間よりも前の期間に設定してよい。制御部22は、第2評価区間を学習区間よりも後の期間に設定してよい。言い換えれば、制御部22は、第2評価区間より前の期間を学習区間として設定してよい。このようにすることで、制御部22は、学習区間が監視対象の停止又はメンテナンス等のイベント発生の前後の時期を含む場合に、監視対象の停止又はメンテナンス等のイベント発生の前後における状態の変化を表すように統計値比率を算出できる。
【0055】
制御部22は、第1評価区間及び第2評価区間を変更する一方で、学習区間を固定してよい。このようにすることで、解析モデルが固定化される。この場合、制御部22は、ある時期における監視対象の状態からの変化を表すように統計値比率を算出できる。制御部22は、図14に示されるように、第2評価区間を変更する場合に学習区間を変更し、変更した学習区間の工程データに基づいて解析モデルを生成しなおしてよい。例えば、制御部22は、1回目の解析動作において02番から11番までの区間を学習区間に設定して解析モデルを生成し、学習区間の前の01番の区間を第1評価区間に設定し、学習区間の後の12番の区間を第2評価区間に設定し、統計値比率を算出してよい。また、制御部22は、2回目の解析動作において03番から12番までの区間を学習区間に設定して解析モデルを生成し、学習区間の前の02番の区間を第1評価区間に設定し、学習区間の後の13番の区間を第2評価区間に設定し、統計値比率を算出してよい。このようにすることで、制御部22は、監視対象の状態の変化に応じて解析モデルを変更できる。この場合、制御部22は、最近の異常が検出されなかった期間における監視対象の状態を基準として監視対象の状態の変化を表すように統計値比率を算出できる。また、監視対象の停止又はメンテナンス等のイベント発生によってユーザが解析モデルを見直す必要がない。その結果、ユーザの作業負担が低減され得る。
【0056】
<ウェーハの製造方法及びウェーハ>
本実施形態に係る監視装置20が監視方法を実行することによって監視された加工装置10は、製品を加工するために用いられる。加工装置10が製品としてウェーハを加工することによって、ウェーハが製造される。したがって、監視装置20が監視方法を実行することによって監視された加工装置10でウェーハを加工するステップを含むウェーハの製造方法が実現される。また、監視装置20が監視方法を実行することによって監視された加工装置10で加工したウェーハが実現される。
【0057】
<監視対象が加工する製品の例>
本実施形態において、製品は、ウェーハであるとしたが、これに限られず工業部品又は材料等の種々の工業製品であってよいし、食品等の他の種々の製品であってもよい。
【0058】
<装置構成例>
監視システム1において、監視装置20は、加工装置10又は付帯設備40等の監視対象の一部に含まれてもよい。監視装置20は、加工装置10又は付帯設備40等の監視対象と互いに別体で構成されてもよい。
【0059】
監視装置20は、同じ種類の複数の加工装置10を監視してよい。監視装置20は、例えば、1号機、2号機、3号機のように番号で区別される、複数のワイヤソー装置又は複数の両面研磨装置のそれぞれを監視してよい。
【0060】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0061】
本開示に含まれるグラフは、模式的なものである。スケールなどは、現実のものと必ずしも一致しない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示に係る実施形態によれば、製品の品質が向上され得る。
【符号の説明】
【0063】
1 監視システム
10 加工装置
20 監視装置(22:制御部、24:出力部)
30 記憶装置
40 付帯設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14