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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】レーザー加工方法及びレーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/00 20140101AFI20240625BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20240625BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/082
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023183585
(22)【出願日】2023-10-25
(65)【公開番号】P2024076965
(43)【公開日】2024-06-06
【審査請求日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2022187982
(32)【優先日】2022-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】芹沢 敬一
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-147072(JP,A)
【文献】特開2022-130978(JP,A)
【文献】特開2022-129829(JP,A)
【文献】特開2022-86838(JP,A)
【文献】特開2000-202656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工方法であって、
前記第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、
前記第2の対象物をレーザー加工する場合、前記検知手段により前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知する第2の検知工程と、
前記第1の検知工程で前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の検知工程で前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、
集光手段の有効径内において、前記決定工程で決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して加工終了位置まで前記レーザー光を照射する照射工程と、
を含むレーザー加工方法。
【請求項2】
距離L1は、複数の対象物の距離の平均値L1aveであり、
前記平均値L1aveは、前記距離L1の最小値L1minと、前記距離L1の最大値L1maxとを少なくとも含む平均値である、請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記最小値L1minと、前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0とが、次式(I)をみたす、請求項2に記載のレーザー加工方法。
L0≦L1min ・・・(I)
【請求項4】
前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0と、前記最小値L1minと、前記最大値L1maxとが、次式(II)をみたす、請求項2に記載のレーザー加工方法。
L1min≦L0≦L1max ・・・(II)
【請求項5】
前記第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで複数の前記レーザー光で加工する場合、
前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0と、前記第1の対象物と前記第2の対象物との距離L1とが、次式(III)をみたす、請求項1に記載のレーザー加工方法。
L0≦N・L1 ・・・(III)
(但し、式中、Nは、レーザー光の数を表し、2以上の整数である。)
【請求項6】
前記対象物が、容器である、請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工装置であって、
少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物の順に搬送する搬送手段と、
前記レーザー光で前記対象物を加工する加工手段と、
前記対象物を検知する検知手段と、
前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記第1の対象物をレーザー加工する場合、前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、前記第2の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで前記レーザー光で加工する場合、前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知し、
前記決定手段は、前記検知手段により前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の前記加工開始位置を決定し、
前記加工手段は、集光手段の有効径内において、前記決定手段により決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して前記加工終了位置まで前記レーザー光を照射するレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法及びレーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被加工物の搬送速度が異なる場合であっても、被加工物を加工することができる被加工物の加工方法が開示されている。しかしながら、特許文献1は、対象物を高精度に加工することについては考慮されておらず、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で対象物を加工する際に、第1の対象物の加工終了時点から第2の対象物の加工開始時間を十分に確保できないことがあり、加工不良品が生じてしまうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の一態様は、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で対象物を加工する際に、加工不良品の発生を抑制できるレーザー加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、
少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工方法であって、
前記第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、
前記第2の対象物をレーザー加工する場合、前記検知手段により前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知する第2の検知工程と、
前記第1の検知工程で前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の検知工程で前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、
集光手段の有効径内において、前記決定工程で決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して加工終了位置まで前記レーザー光を照射する照射工程と、
を含むレーザー加工方法である。
【0005】
本発明の他の態様は、
少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工装置であって、
少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物の順に搬送する搬送手段と、
前記レーザー光で前記対象物を加工する加工手段と、
前記対象物を検知する検知手段と、
前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記第1の対象物をレーザー加工する場合、前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、前記第2の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで前記レーザー光で加工する場合、前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知し、
前記決定手段は、前記検知手段により第1の対象物を検知した時間から前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の前記加工開始位置を決定し、
前記加工手段は、集光手段の有効径内において、前記決定手段により決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して前記加工終了位置まで前記レーザー光を照射するレーザー加工装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で対象物を加工する際に、加工不良品の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係るレーザー加工装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、レーザー加工装置における集光手段の一例を示す概略図である。
図3図3は、対象物である容器本体の性状変化の一例を示す説明図である。
図4図4は、第1の実施形態に係るレーザー加工方法における、第1の対象物の加工開始位置の一例を示す概略図である。
図5図5は、第1の対象物の加工終了状態の一例を示す概略図である。
図6図6は、第1の実施形態に係るレーザー加工方法における加工開始位置から加工終了位置までの距離L0の条件を示す概略図である。
図7図7は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態の一例を示す概略図である。
図9図9は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態の他の一例を示す概略図である。
図10図10は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態の他の一例を示す概略図である。
図11図11は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態の他の一例を示す概略図である。
図12図12は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、レンズ有効径L3と最小値L1minの関係の一例を示す概略図である。
図13図13は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、レンズ有効径L3と最大値L1maxの関係の一例を示す概略図である。
図14図14は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、複数のレーザー装置を搬送方向に配置した場合の対象物の配置の一例を示す概略図である。
図15図15は、複数のレーザー装置を用いた第3の実施形態に係るレーザー加工方法における、対象物の配置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0009】
(レーザー加工方法及びレーザー加工装置)
本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法は、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工方法であって、
前記第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、
前記第2の対象物をレーザー加工する場合、前記検知手段により前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知する第2の検知工程と、
前記第1の検知工程で前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の検知工程で前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、
集光手段の有効径内において、前記決定工程で決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して前記加工終了位置まで前記レーザー光を照射する照射工程と、
を含む。
【0010】
本発明の一実施形態に係るレーザー加工装置は、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工装置であって、
少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物の順に搬送する搬送手段と、
前記レーザー光で前記対象物を加工する加工手段と、
前記対象物を検知する検知手段と、
前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記第1の対象物をレーザー加工する場合、前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、前記第2の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで前記レーザー光で加工する場合、前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知し、
前記決定手段は、前記検知手段により第1の対象物を検知した時間から前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の前記加工開始位置を決定し、
前記加工手段は、集光手段の有効径内において、前記決定手段により決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して前記加工終了位置まで前記レーザー光を照射する。
【0011】
一実施形態に係るレーザー加工方法では、第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、第2の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第2の対象物を検知する第2の検知工程と、第1の検知工程で第1の対象物を検知した時間から第2の検知工程で第2の対象物を検知するまでの時間と、第1の対象物及び第2の対象物の搬送速度とから第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、集光手段の有効径内において、第2の対象物の加工開始位置にレーザー光を走査して加工終了位置までレーザー光を照射する照射工程と、を含む。これにより、一実施形態に係るレーザー加工方法によれば、第1の対象物と第2の対象物との距離L1(以下、「距離L1」と称することがある)にばらつきが生じた場合でも、距離L1のばらつきを吸収して、距離L1のばらつきの影響を受けずにレーザー加工を行うことができるので、不良品の発生を抑制できる。また、距離L1のばらつきを吸収すると、その吸収分だけレンズ有効径を大きくすることが必要となるが、その場合でもレンズ有効径内において距離L1のばらつきの影響を受けずにレーザー加工を行うことができるので、非加工時間が一定になり、生産性の大幅な向上が図れる。
【0012】
なお、距離L1は、隣接する第1の対象物と第2の対象物との中心間の最短距離を表す。
【0013】
従来技術では、集光手段がレンズである場合、レンズの焦点距離、レンズ有効径、ビーム径等の様々な制約がある中で、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物がこの順に搬送され、距離L1にばらつきが生じた場合でも、距離L1のばらつきの影響を受けずに、搬送されている対象物に追従させながら連続的にレーザー加工を行うことは実現できていない。
【0014】
一般に、パルスレーザー加工は、下記の数式(1)及び(2)で定義される。即ち、1パルスあたりのパルスエネルギーEは、平均出力Pを繰返し周波数νで除算した値であり、フルエンスFは、パルスエネルギーEをビームスポット径面積Sで除算した値である。
P=E・ν ・・・数式(1)
(但し、数式(1)中、Pは平均出力[単位:W]、Eはパルスエネルギー[単位:J]、νは繰返し周波数[単位:Hz]を表す。)
【0015】
F=E/S ・・・数式(2)
(但し、数式(2)中、Fはフルエンス[単位:J/cm]、Sはビームスポット径面積[単位:cm]、Eはパルスエネルギー[単位:J]を表す。)
【0016】
レーザー加工に用いられるパラメータは、数式(1)及び数式(2)から、使用するレーザー諸元と加工時のビームスポット径とにより定義される。
【0017】
パルス幅は、1パルスのレーザー光が対象物に照射されている時間を表す。ナノ秒(1×10-9秒)オーダーのパルス幅では、対象物の吸光スペクトルに応じた熱変性によるレーザー加工が行われる。ピコ秒(10-12秒)以下のオーダーのパルス幅では、対象物の熱変性に加えて、使用するレーザー光の波長の1/2~1/3の多光子吸収と呼ばれる同時に複数の光子が吸収されることによって、電子及び原子の状態が高いエネルギー準位に遷移する現象が発生する。その結果、固体状態の対象物は、溶融状態を経ることなく昇華され、加工痕を得ることができる。
【0018】
狙いの加工径dは、下記の数式(3)より、入射ビーム半径ωと照射レーザーのパルスエネルギーEに依存する。
=2・ω ・ln(F/Fth) ・・・数式(3)
(但し、数式(3)中、dは加工径[cm]、ωは入射ビーム半径[単位:cm]、Fはフルエンス[単位:J/cm]、Fthは加工閾値[単位:J/cm]を表す。)
【0019】
一実施形態に係るレーザー加工方法においては、搬送されている対象物に追従させながらレーザー加工することを前提としている。そのため、対象物が搬送されながらレーザー加工される加工距離においてレーザー光が照射される必要がある。
【0020】
レーザー光の照射範囲(レンズ有効径)とレンズ焦点距離とはトレードオフの関係にあることから、例えば、レンズの設計上、短焦点距離のレンズにおいて、広いレンズ有効径を有することは不可能である。
【0021】
また、レーザー加工の要求仕様の一つに解像度がある。要求される解像度を満足するためには、解像度相当となる加工径dが必要になる。例えば、解像度が600dpiであれば、加工径dは42.3μmとなる。必要な加工径dを得るため、数式(3)から必要な入射ビーム半径ωが算出され、レンズ焦点距離が決定される。レンズ焦点距離が決定されると、レンズ有効径L3も決定される。
【0022】
一実施形態に係るレーザー加工方法では、第1の対象物をレーザー加工する場合、第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、第2の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第2の対象物を検知し、検知された時間から第2の対象物を検知するまでの時間と、第1の対象物及び第2の対象物の搬送速度とから第2の対象物の加工開始位置を決定し、集光手段の有効径内において、第2の対象物の加工開始位置にレーザー光を走査して加工終了位置までレーザー光を照射する必要がある。
【0023】
また、一実施形態に係るレーザー加工方法では、第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置までレーザー光で加工する場合、第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置までの距離L0(単位:mm)が、第1の対象物と第2の対象物との距離L1(以下、「距離L0」と称することがある)(単位:mm)以下であり(次式(i)参照)、かつ距離L0がレンズ有効径L3未満である(次式(ii)参照)ことが好ましい。一実施形態に係るレーザー加工方法では、次式(i)及び(ii)をみたすことによって、第1の対象物の加工終了時点から第2の対象物の加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、対象物の位置情報、及び対象物の姿勢情報等を適正に補正することが可能となり、加工不良品の発生を抑制できる。
L0≦L1 ・・・(i)
L0<L3 ・・・(ii)
【0024】
なお、距離L0は、加工開始位置の第1の対象物と加工終了位置の第1の対象物の中心間の最短距離を表す。
【0025】
また、所望の焦点距離のレンズにて、レンズ有効径L3を満足させることが好ましい。
【0026】
一実施形態において、距離L1は、複数の対象物の距離の平均値L1aveであり、平均値L1aveは、距離L1の最小値L1min(単位:mm)と、距離L1の最大値L1max(単位:mm)とを少なくとも含む平均値である。
【0027】
一実施形態において、最小値L1minと、距離L0とが、次式(I)をみたすことが好ましい。
L0≦L1min ・・・(I)
【0028】
上記の式(I)をみたすと、距離L1が必ず距離L0より大きいため、第1の対象物の加工終了時点から第2の対象物の加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、対象物の位置情報、及び対象物の姿勢情報等を適正に補正することが可能となり、加工不良品の発生を抑制できる。
【0029】
一実施形態において、最小値L1minと、距離L0と、最大値L1maxとが、次式(II)をみたすことが好ましい。
L1min≦L0≦L1max ・・・(II)
【0030】
上記の式(II)をみたすと、複数の対象物のばらつきから距離L0より小さいL1条件が発生する。従来の方法であれば、第2の対象物の加工開始位置を通り過ぎているため加工ができず、生産性が落ちる。しかしながら、一実施形態に係るレーザー加工方法では、検知手段にて、第1の対象物と第2の対象物の間の距離を測定することができると共に、既知である搬送速度から第1の対象物加工終了時に第2の対象物位置を算出できる。そのため、ばらつきを含んだ距離L1が発生した際にも、加工可能となり加工不良品の発生を抑制できる。
【0031】
一実施形態において、第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで複数のレーザー光で加工する場合、距離L0(単位:mm)と距離L1(単位:mm)とが、次式(III)をみたすことが好ましい。
L0≦N・L1 ・・・(III)
(但し、式中、Nは、レーザー光の数を表し、2以上の整数である。)
【0032】
上記の式(III)をみたすと、複数のレーザー光を用いる場合でも、第1の対象物の加工終了時点から第2の対象物の加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、対象物の位置情報、及び対象物の姿勢情報を適正に補正することが可能となり、加工不良品の発生を抑制できる。
【0033】
<対象物>
対象物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、容器が好ましい。容器は、容器本体と、収容物を容器本体内に密閉するキャップとを有する。
【0034】
-容器本体-
容器本体としては、その材質、形状、大きさ、構造、色等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
容器本体の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、透明な樹脂又は透明なガラスがより好ましく、透明な樹脂が特に好ましい。
【0036】
容器本体の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリブチレンアジペート/テレフタレート(PBAT)、ポリエチレンテレフタレートサクシネート、ポリエチレン(PE)、ポリプロビレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、エポキシ、バイオポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ乳酸ブレンド(PBAT)、スターチブレンドポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレートサクシネート、ポリ乳酸(PLA)、ポリヒドロキシプチレート/ヒドロキシヘキサノエート(PHBH)、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)、バイオPET30、バイオポリアミド(PA)610,410,510、バイオPA1012,10T、バイオPA11T,MXD10、バイオポリカーポネート、バイオポリウレタン、バイオPE、バイオPET100、バイオPA11、バイオPA1010等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境負荷の点から、ポリビニルアルコール、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等の生分解樹脂が好ましい。
【0037】
容器本体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円柱状、四角柱状、箱状、錐体状、ボトル状等が挙げられる。これらの中でも、マーキング精度の点から、円柱状が好ましい。容器本体がボトル状の形状を有する場合、ボトル状の容器本体は、口部と、口部に連結された肩部と、肩部に連結された胴部と、胴部に連結された底部とを備えてよい。
【0038】
容器本体の大きさとしては、特に制限はなく、容器の用途に応じて適宜選択することができる。
【0039】
容器本体の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
【0040】
容器本体の色としては、例えば、無色透明、有色透明、有色不透明等が挙げられる。これらの中でも、無色透明が好ましい。
【0041】
-キャップ-
キャップは、その材質、形状、大きさ、構造、色等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
キャップの材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂、ガラス、金属、セラミックス等が挙げられる。これらの中でも、成形性の点から樹脂が好ましい。
【0043】
キャップの樹脂としては、上記容器の本体の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0044】
キャップの形状及び大きさとしては、容器本体の開口部を封じる(閉封する)ことができる形状及び大きさであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できる。
【0045】
キャップの構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、開封した時に容器本体から離れる第1の部分と、容器本体に残る第2の部分とを有することが好ましい。
【0046】
第1の部分の側面には、開封時に手が滑らないように、表面に凹凸形状が形成されていることが好ましい。第2の部分の側面には、凹凸形状は形成されておらず、表面は平坦であることが好ましい。
【0047】
キャップの色としては、例えば、有色不透明、有色透明等が挙げられる。これらの中でも、像の読み取り性の点から有色不透明が好ましい。
【0048】
-収容物-
収容物としては、例えば、液体、気体、粒状固形物等が挙げられる。
【0049】
液体としては、例えば、水、お茶、コーヒー、紅茶、清涼飲料水、液体洗剤、液体化粧料等が挙げられる。収容物が液体飲料である場合には、透明、白色、黒色、茶色、又は黄色等の色を有していることが多い。
【0050】
気体としては、例えば、酸素、水素、窒素等が挙げられる。
【0051】
粒状固形物としては、例えば、果肉、野菜、ナタデココ、タピオカ、ゼリー、コンニャク等の細片又は粒子、粉末洗剤、化粧料等が挙げられる。
【0052】
<搬送工程及び搬送手段>
搬送工程は、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物をこの順に搬送する工程であり、搬送手段により行われる。
【0053】
搬送手段としては、例えば、ベルトコンベア等が挙げられる。
【0054】
搬送手段による対象物の搬送速度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0055】
<決定工程及び決定手段>
決定工程は、検知工程で第1の対象物を検知した時間から第2の対象物を検知するまでの時間と、第1の対象物及び第2の対象物の搬送速度とから第2の対象物の加工開始位置を決定する工程であり、決定手段により行われる。これにより、距離L1にばらつきが生じた場合でも、決定工程によって距離L1のばらつきを吸収することができるので、加工不良品の発生を抑制できる。
【0056】
<検知工程及び検知手段>
検知工程は、対象物の位置を検知する工程であり、検知手段により実施される。
【0057】
検知手段は、第1の対象物をレーザー加工する場合、第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、第2の対象物をレーザー加工する場合、第2の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する。
【0058】
検知手段としては、投光部及び受光部を備えている。
【0059】
投光部は、透過型でもよいし、反射型でもよい。
【0060】
検知方法のタイプは、特に問わない。
【0061】
検知手段としては、対象物の透過度又は形状等によって様々な手段を用いることができる。また、検知手段は、複合して用いてもよい。
【0062】
検知工程は、第1の検知工程と、第2の検知工程を含む。
【0063】
第1の検知工程は、第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する。
【0064】
第2の検知工程は、第2の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第2の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する。
【0065】
<加工工程及び加工手段>
加工工程は、レーザー光で対象物を加工する工程であり、加工手段により行われる。
【0066】
加工手段としては、例えば、レーザー光源と、走査手段と、集光手段とを有する。
【0067】
レーザー光源は、レーザー光を発する光源である。レーザー光源は、レーザー装置の中に含まれる。レーザー光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザー、半導体レーザー等が挙げられる。
【0068】
レーザー光源は、一定のピーク強度を有する短パルスレーザー光を繰り返し出力できる。
【0069】
短パルスレーザー光は、ピーク強度が一定の複数のパルスを含むパルス列から構成される。なお、短パルスレーザー光は、ナノ秒(1×10-9秒)以下のパルス幅を有するものを意味する。短パルスレーザー光のパルス幅は、フェムト秒(10-15秒)オーダーからピコ秒(10-12秒)オーダーであることが好ましい。短パルスレーザー光の繰り返し周波数は、10kHz~1MHzであることが好ましく、500kHz~1MHzであることがより好ましい。
【0070】
<走査手段>
走査手段は、レーザー光源から入射するレーザー光を所定の方向に走査する手段である。走査手段としては、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー、ポリゴンスキャナ等の回転多面鏡等が挙げられる。
【0071】
<集光手段>
集光手段は、レーザー光を集光する。集光手段としては、例えば、走査手段により走査されるレーザー光の走査速度を一定にすると共に、対象物の少なくとも何れかの所定位置に、レーザー光を収束させるレンズ等を用いることができる。このようなレンズとしては、例えば、fθレンズ、アークサインレンズ等が挙げられる。
【0072】
<照射工程>
照射工程は、集光手段の有効径内において、決定工程で決定した第2の対象物の加工開始位置にレーザー光を走査して加工終了位置までレーザー光を照射する工程である。なお、集光手段の有効径とは、レーザー光の照射範囲を意味し、レーザー光が通り抜けることができる集光レンズの直径である。一枚のレンズに単純化すると、その一枚レンズの直径(=最大径)が有効径になる。
【0073】
<その他の手段>
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、制御手段等が挙げられる。
【0074】
前記制御手段としては、前記各手段の動きを制御することができる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の機器が挙げられる。
【0075】
ここで、一実施形態に係るレーザー加工方法及びレーザー加工装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。また、下記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、一実施形態に係るレーザー加工方法及びレーザー加工装置を実施する上で好ましい、数、位置、形状等にすることができる。
【0076】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るレーザー加工装置の一例を示す概略図である。図1に示すように、レーザー加工装置10は、光学系として、レーザー装置11、ビームエキスパンダ12、走査手段13、照射制御手段14、集光手段15、検知手段16を備え、対象物18にレーザー光20を照射する。
【0077】
なお、図1では、対象物18の搬送方向をX方向とし、対象物18の搬送方向に対して直交する方向であって、レーザー光20の進行方向とは異なる方向をY方向とする。図1は、対象物18が搬送方向(X方向)の下流側に搬送速度Vで搬送される状態を示す。図1の矢印は、レーザー光20が対象物18へ照射される際の光学系及び対象物18の搬送方向を表している。
【0078】
対象物18は、搬送されながら、レーザー装置11から出射したレーザー光20に照射される。
【0079】
対象物18は、レーザー光20が照射されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、容器であることが好ましい。対象物18が樹脂製の容器である場合には、レーザー光20により容器における容器本体の性状の変化をもたらすものが好ましい。
【0080】
レーザー装置11は、レーザー光20を射出する装置である。レーザー装置11は、レーザー光20が照射された対象物18の基材の表面及び内部の少なくともいずれかの性状を変化させるために好適な出力(光強度)のレーザー光20を射出する。
【0081】
レーザー光20の種類は、特に制限はないが、強度の観点から、パルスレーザーが好ましい。
【0082】
レーザー装置11は、レーザー光20の射出のオン又はオフの制御、射出周波数の制御、及び光強度の制御等をできる。レーザー装置11の一例として、例えば、波長が355nm、レーザー光20のパルス幅が10ピコ秒、平均出力が30W~50Wのレーザー装置を用いることができる。
【0083】
対象物18における基材の性状を変化させる領域でのレーザー光20の直径は、1μm~200μmであることが好ましい。
【0084】
図1では、レーザー装置11が1つであるが、複数のレーザー装置11で備えられていてもよい。複数のレーザー装置11を用いる場合、レーザー装置11毎に、オン又はオフの制御、射出周波数の制御及び光強度制御等を独立に行えるようにしてもよい。
【0085】
ビームエキスパンダ12は、レーザー光を拡大する。レーザー装置11から射出された平行光のレーザー光20は、ビームエキスパンダ12により直径が拡大され、走査手段13に入射する。
【0086】
走査手段13は、レーザー光20を走査する。走査手段13は、ミラー13a及びミラー13bを有する。ミラー13a及びミラー13bは、モーター等の駆動部により反射角度を変化させる機能を備えている。
【0087】
ミラー13aは、その反射角度を変化させることで、入射するレーザー光20をX方向に走査する走査ミラーである。ミラー13aには、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー等を用いることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、ミラー13a及びミラー13bがレーザー光20をX方向に一次元走査する例を示すが、これに限定されるものではない。例えば、ミラー13a及びミラー13bは、直交する2方向に反射角度を変化させる走査ミラーを用いて、レーザー光20をXY方向に二次元走査してもよい。
【0089】
ミラー13a及びミラー13bにより走査されるレーザー光20は、対象物18における基材の表面又は内部の少なくとも一方に照射される。
【0090】
照射制御手段14は、レーザー出力を制御する信号をレーザー装置11へ出力し、レーザー光20を走査する信号をミラー13bへ出力する。
【0091】
照射制御手段14は、検知手段16の一部である受光部16bに接続して受光部16bを制御し、演算記憶処理を行うことができる。
【0092】
集光手段15は、レーザー光を集光する。集光手段15は、ミラー13a及びミラー13bにより走査されるレーザー光20の走査速度を一定にすると共に、対象物18における基材の表面又は内部の少なくとも一方の所定位置に、レーザー光20を収束させるレンズである。集光手段15として、例えば、走査速度を一定に保つfθレンズ、アークサインレンズ等のレンズを用いることができる。なお、集光手段15は、複数のレンズの組み合わせにより構成されてもよい。
【0093】
対象物18における基材の性状を変化させる領域で、レーザー光20のビームスポット径が最小になるように、集光手段15は、配置されることが好ましい。
【0094】
図2は、レーザー加工装置10における集光手段15の一例を示す概略図である。レンズ有効径L3とレーザー光20の走査との関係については、集光手段15のレンズ有効径L3内において、対象物18のレーザー加工を行う。即ち、集光手段のレンズ有効径L3を示す鎖線の範囲内でレーザー光20をミラー13bで走査させて対象物18に照射し、対象物18のレーザー加工を行う。
【0095】
レーザー加工に必要なエネルギーを得るには、照射されるレーザー光20のビーム径が小さいほどエネルギーが収束するので、レーザー加工し易くなる。一方、レーザー光20のビーム径が大きいほどレーザー加工し難くなる。ビーム径は、レンズ焦点距離によって変化するため、レンズ焦点距離が長いほどレンズ有効径が広くなる。一方、レンズ焦点距離が短いほどレンズ有効径が狭くなる。したがって、レンズ有効径とレンズ焦点距離とは、トレードオフの関係にあることから、レンズ焦点距離とレンズ有効径とのバランスを図りながら設計することが重要である。
【0096】
図1に示すように、検知手段16は、対象物18の位置を検知する。検知手段16は、投光部16a及び受光部16bを有する。投光部16a及び受光部16bは、レーザー装置11より搬送方向の上流側で対象物18の位置を検知する。
【0097】
検知手段16は、透過型でもよいし、反射型でもよく、検知手段16の検知方法のタイプは、特に問わない。反射型の場合は、検知手段16は、投光部16aから対象物18に光を投光する。検知手段16は、受光部16bでの位置や光が受光されるまでの時間に基づいて対象物18の位置を検知する。透過型の場合、検知手段16は、投光部16aから対象物18に光を投光し、透過した光を受光部16bで受光して対象物の位置を検知する。
【0098】
各種センサの設置位置と、対象物18の搬送場所及び搬送速度Vは、既知のパラメータとなるため、これらの既存パラメータからレーザー光20の照射のタイミングを決定できる。
【0099】
対象物18である容器本体である場合に、対象物18をレーザ加工した時の対象物18の性状変化の一例を説明する。図3は、対象物18である容器本体の性状変化の一例を示す説明図である。図3(a)に示すように、対象物18である容器本体の表面の一部にレーザー光20を照射して、容器本体の表面の一部を蒸散させることで、容器本体の表面に凹部形状が形成される。図3(b)に示すように、対象物18である容器本体の表面の一部にレーザー光20を照射して、容器本体の表面の一部を溶融させることで、容器本体の表面には凹部形状が形成され、図3(a)よりも凹部の周縁部が盛り上がった形状に形成される。図3(c)に示すようには、対象物である容器本体の表面の一部にレーザー光20を照射して、容器本体の表面の一部を結晶化させることで容器本体の表面の一部は結晶化状態に変化させられる。図3(d)に示すように、対象物である容器本体の表面の一部にレーザー光20を照射して、容器本体の内部又は表面に気泡を発生させることで、容器本体の表面近傍の内部又は表面の一部を発泡状態に変化させられる。図3の(a)~(d)に示すように、対象物である容器本体にレーザー光20を照射することで、容器本体の性状は変化させることができる。
【0100】
このように、対象物である容器本体の表面の一部の形状を変化させたり、容器本体の表面の一部の結晶化又は容器本体の内部の発泡の形成等の容器本体の性質を変化させたりすることで、容器本体の表面又は内部に性状の変化をもたらすことができる。
【0101】
図3(a)及び(b)に示すように、対象物である容器本体の表面の一部を蒸散させて凹部形状を形成する方法として、例えば、波長が355nm~1,064nm、パルス幅が10fs~500nsのパルスレーザーを照射する方法がある。これにより、レーザー光が照射された部分の容器本体の表面の一部が蒸散し、容器本体の表面の一部に微小な凹部が形成される。
【0102】
また、波長が355nm~1,064nmのCW(Continuous Wave)レーザー光を容器本体の表面の一部に照射して、容器本体の表面の一部を溶融させることで、容器本体の表面の一部に凹部を形成することもできる。また、容器本体の表面の一部が溶融した後もレーザー光を照射し続けることで、図3(d)に示すように、容器本体の内部及び表面が発泡し、白濁化させることができる。
【0103】
図3(c)に示すように、容器本体の表面の一部を結晶化状態に変化させる場合、例えば、容器本体をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂とし、波長が355nm~1,064nmのCWレーザー光を照射して、容器本体の温度を一気に上げ、その後、レーザーパワーを弱くしていく等により徐冷していく方法等がある。これにより、容器本体の表面の一部のPET樹脂を結晶化状態にすることができ、白濁化させることができる。なお、温度を上げた後、レーザー光を消灯する等により急冷すると、PET樹脂は非晶質状態になり、透明になる。
【0104】
なお、対象物の容器本体の性状の変化は、図3の(a)~(d)に示すものに限定されない。樹脂材料で構成された容器本体の、黄変、酸化反応又は表面改質等により容器本体の性状を変化させてもよい。
【0105】
また、照射されたレーザー光20を吸収して光エネルギーを熱エネルギーに変換する吸収剤(変換材)を事前に容器本体に塗布し、吸収剤により変換された熱エネルギーにより、容器本体に凹部又は凸部を形成する加熱制御を行うこともできる。容器本体に凹部又は凸部を形成することにより、文字、記号、図形等を表現できる。
【0106】
図1に示す第1の実施形態に係るレーザー加工装置を用いて、対象物18をレーザー加工する第1の実施形態に係るレーザー加工方法を説明する。図4は、第1の実施形態に係るレーザー加工方法における、第1の対象物の加工開始位置を示す概略図である。なお、図4では、図1に示す対象物18のうち、第1の対象物を第1の対象物18aとし、第2の対象物を第2の対象物18bとし、第1の対象物18a及び第2の対象物18bをまとめて、対象物18ともいう。
【0107】
第1の実施形態においては、第1の対象物18aの加工開始位置から加工終了位置までレーザー加工する場合、加工開始位置から加工終了位置までの距離L0(単位:mm)と、第1の対象物18aと第2の対象物18bとの距離L1(単位:mm)とが、次式(i)をみたす。
L0≦L1 ・・・(i)
【0108】
第1の実施形態に係るレーザー加工方法によると、第1の対象物18aの加工終了時点から第2の対象物18bの加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、対象物18の位置情報、及び対象物18の姿勢情報等を適正に補正することができるため、加工不良品の発生を抑制できる。
【0109】
図4に示すように、第1の対象物18a及び第2の対象物18bがこの順に搬送方向(図4中の矢印方向)に搬送される。図4では、実線が、第1の対象物18aの加工開始位置を示し、破線が、第1の対象物18aの加工終了位置を示す。二点鎖線が、レンズ中心を示す(以下、他の図も同様である。)。距離L0は、第1の対象物18aの加工開始位置から加工終了位置までの距離を示し、距離L1は、第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離を示す。
【0110】
図5は、第1の対象物18aの加工終了状態の一例を示す概略図である。図5に示すように、第1の対象物18a及び第2の対象物18bに続き、第3の対象物18cが搬送方向に搬送される。第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離L1と、第2の対象物18b及び第3の対象物18cの距離L1は、等しくなっている。図5では、第1の対象物18aの加工終了時点では、第2の対象物18bは、第1の対象物18aの加工開始位置よりも、上流側に位置している状態を示す。この位置関係が保たれることにより、対象物の搬送速度をV[m/s]、待機距離をL2[m]とすると、第1の対象物18aをレーザー加工した後、第2の対象物18bをレーザー加工するまでの時間は、対象物の待機距離L2を対象物の搬送速度Vで除した値(L2/V[s])となる。
【0111】
また、ガルバノミラーが加工終了位置から加工開始位置までジャンプする時間をt1[s]とし、対象物18の位置及び対象物18の姿勢を検知した後に、検知した対象物18の位置及び対象物18の姿勢に合わせた加工データの演算時間をt2[s]とすると、それぞれの処理時間の最大は、t1・L2[s]及びt2・L2[s]となる。
【0112】
搬送手段側の対象物の配置精度によって、第1の対象物18aと第2の対象物18bとの距離L1にばらつきが生じる。距離L0>距離L1となる場合には、待機距離L2は0未満(待機距離L2<0)となる。レーザー加工装置10は、検知手段16を備えているため、検知手段16の通過時の第1の対象物18aと第2の対象物18bとの間の時間t3[s]と搬送速度V[m/s]から待機時間L2[s]を算出できる。即ち、搬送速度V[m/s]に時間t3[s]を乗することで待機距離L2[m]が求められ、求められた待機距離L2[m]を搬送速度V[m/s]で除することで、待機時間L2[s]が求められる。
【0113】
待機距離L2が0未満(待機距離L2<0)となる場合には、対象物18へのレーザー加工は実施されず、対象物18はそのまま下流側へ搬送されていき、下流の検査装置にて不合格品と判定され、出荷されない。
【0114】
図6は、第1の実施形態に係るレーザー加工方法における加工開始位置から加工終了位置までの距離L0の条件を示す概略図である。図6に示すように、レンズ有効径L3とし、加工幅Wとすると、距離L0の最大距離L0maxは、L3+W(=L3+1/2・W+1/2・W)となる。加工幅Wは、レンズ有効径L3であるため、最大距離L0maxは、2×L3となる。例えば、f920レンズでは、レンズ有効径L3が470mmであるため、最大距離L0maxは、940mm(=470mm×2)となる。一方、距離L0の最小距離L0minは、対象物を追従加工しない条件であるため、最小距離L0minは、0mmである。
【0115】
<第2の実施形態>
第2の実施形態に係るレーザー加工方法は、第2の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により第2の対象物を検知する検知工程と、検知工程において第1の対象物が検知された時間から第2の対象物を検知するまでの時間と、第1の対象物及び第2の対象物の搬送速度とから第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、集光手段の有効径内において、第2の対象物の加工開始位置にレーザー光を走査して加工終了位置までレーザー光を照射する照射工程とを含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0116】
第2の実施形態に係るレーザー加工方法によると、距離L1にばらつきが生じた場合でも、距離L1のばらつきを吸収して、距離L1のばらつきの影響を受けずにレーザー加工を行うことができ、不良品の発生を低減できる。また、距離L1のばらつきを吸収すると、その吸収分だけレンズ有効径を大きくすることが必要となるが、その場合でもレンズ有効径内において距離L1のばらつきの影響を受けずにレーザー加工を行うことができるので、非加工時間が一定になり、生産性の大幅な向上を実現できる。
【0117】
以下、第2の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第2の実施形態において、既に説明した第1の実施の形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0118】
図7は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下、図7を参照して、図1の照射制御手段14において実行される第2の実施形態に係るレーザー加工方法の処理の流れについて説明する。図7の処理の流れは、第1の対象物18a、第2の対象物18bと順に搬送される中で繰り返し実行され、一部工程は並行して実行される。
【0119】
以下、第2の対象物18bを中心に説明し、ステップS1で第1の対象物18aが検知され、ステップS2において第1の対象物18aの検知位置及び搬送速度より加工開始位置を決定し、ステップS3で照射工程、ステップS4の搬送工程は行われているものとして説明する。この第1の対象物18aの加工の流れに続き、第2の対象物18bの検知を開始すべくステップS1へ戻る。
【0120】
ステップS1では、レーザー加工装置10の検知手段16により第2の対象物18bを検知すると、処理をステップS2に移行する。
【0121】
ステップS2では、前段の流れの工程において第1の対象物18aを検知した時間から第2の対象物18bを検知するまでの時間と、第1の対象物18a及び第2の対象物18bの搬送速度とから第2の対象物18bの加工開始位置を決定すると、処理をステップS3に移行する。
【0122】
ステップS3では、レーザー加工装置10における集光手段の有効径内において、走査手段により第2の対象物18bの加工開始位置にレーザー光20を走査して加工終了位置までレーザー光20を照射すると、処理をステップS4に移行する。
【0123】
ステップS4では、レーザー加工装置10における搬送手段により第2の対象物18bを所定の位置へ搬送する。第2の対象物18bに続き、第3の対象物18c(図8参照)があれば、再びステップS1に戻って、処理を行う。第2の対象物18bの後に第3の対象物18cがなければ、本処理を終了する。
【0124】
図7に示すフローチャートは、具体的には、以下のように実施されることが好ましい。図7のステップS1の検知工程は、第1の対象物18aをレーザー加工する場合、検知手段により第1の対象物18aが所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、第2の対象物18bをレーザー加工する場合、検知手段により第2の対象物18bが所定位置に搬送されたことを検知する第2の検知工程とを含む。図7のステップS2の決定工程は、第1の検知工程で第1の対象物18aを検知した時間から第2の検知工程で第2の対象物18bを検知するまでの時間と、第1の対象物18a及び第2の対象物18bの搬送速度とから第2の対象物18bの加工開始位置を決定する。図7のステップS3の照射工程は、集光手段の有効径内において、決定工程で決定した第2の対象物18bの加工開始位置にレーザー光20を走査して加工終了位置までレーザー光20を照射する。
【0125】
第2の実施形態に係るレーザー加工方法において、第1の対象物18aと第2の対象物18bとの距離L1は、複数の対象物18の距離の平均値L1ave[m]であり、平均値L1aveは、距離L1の最小値L1min[mm]と、距離L1の最大値L1max[mm]とを少なくとも含む平均値である。
【0126】
最小値L1minと、距離L0と、最大値L1maxとは、次式(II)をみたすことが好ましい。
L1min≦L0≦L1max ・・・(II)
【0127】
これにより、複数の対象物18のばらつきから距離L0より小さいL1条件が発生する。従来であれば、第2の対象物18bの加工開始位置を通り過ぎているため加工ができず、生産性が落ちる。しかしながら、第2の実施形態に係るレーザー加工方法は、検知手段16にて、第1の対象物18aと第2の対象物18bの間の距離を測定することができると共に、既知である搬送速度から第1の対象物18aの加工終了時に第2の対象物18bの位置を算出できる。そのため、第2の実施形態に係るレーザー加工方法は、ばらつきを含んだ距離L1が発生した際にも、加工可能となるため、不良品の発生を抑制できる。
【0128】
第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態等の一例を図8に示す。図8の(a)及び(b)は、第1の対象物18a及び第2の対象物18bがこの順に搬送方向として矢印方向に搬送される。図8では、実線が、第1の対象物18aの加工開始位置が示し、破線が、第1の対象物18aの加工終了位置を示し、二点鎖線が、レンズ中心を示す(以下、他の図も同様である)。
【0129】
図8(a)は、最小値L1minが第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離の最小値を示し、最小値L1min≦距離L0となる条件を示す。
【0130】
図8(b)は、第1の対象物18a及び第2の対象物18bに続き、第3の対象物18cが搬送方向に搬送される状態を示す。最小値L1minは、第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離の最小値であり、L1は、第2の対象物18bと第3の対象物18cの距離を示す。第1の対象物18aの加工終了時には、第2の対象物18bは、第1の対象物18aの加工開始位置よりも、下流側に位置している(図8の(b)参照)。
【0131】
搬送手段の搬送速度V[m/s]は、一定である。このため、検知手段16にて第1の対象物18aの位置を検知した後、第2の対象物18bを検知する時間をモニタすることによって、第2の対象物18bの加工開始位置を特定できる。即ち、第1の対象物18aの検知とレーザー光20が次に照射加工する対象物である第2の対象物18bの検知に応じて、第2の対象物18bの加工開始位置を特定し、レーザー照射加工を制御できる。
【0132】
第2の実施形態に係るレーザー加工方法における加工状態の他の一例を図9図11に示す。図9の(a)及び(b)に示すように、特定された第2の対象物18bの加工開始位置にレーザー光20を走査して、加工終了位置まで第2の対象物18bにレーザー光20を照射してレーザー加工を行う。その結果、距離L1のばらつきを吸収した分だけレンズ有効径L3は大きくなるが、距離L1のばらつきの影響を受けることなく、レンズ有効径L3内においてレーザー加工が可能となる。
【0133】
図10の(a)及び(b)に示すように、図10の(a)及び(b)では、第1の対象物18a及び第2の対象物18bが搬送方向(図10中の矢印方向)に搬送される。図10(a)は、最大値L1maxが第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離の最大値を示し、最大値L1maxが距離L0以上(L0≦L1max)となる条件を示す。
【0134】
図10の(b)は、第1の対象物18a及び第2の対象物18bに続き、第3の対象物18cが搬送方向に搬送される状態を示す。L1maxは、第1の対象物18a及び第2の対象物18bの距離の最大値であり、距離L1は第2の対象物18bと第3の対象物18cの距離を示す。
【0135】
第1の対象物18aの加工終了時には、第2の対象物18bは、第1の対象物18aの加工開始位置よりも、上流側に位置している(図10の(b)参照)。
【0136】
搬送手段の搬送速度V[m/s]は、一定であるため、検知手段16にて第1の対象物18aを検知した後、第2の対象物18bの検知時間を検知することによって、第2の対象物18bの加工開始位置が特定できる。
【0137】
図11の(a)及び(b)に示すように、特定された第2の対象物18bの加工開始位置にレーザー光20を走査して、加工終了位置まで第2の対象物18bにレーザー光20を照射してレーザー加工を行う。その結果、距離L1のばらつきを吸収した分だけレンズ有効径L3は大きくなるが、距離L1のばらつきの影響を受けることなく、レンズ有効径L3内においてレーザー加工が可能となる。
【0138】
図12は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、レンズ有効径L3と最小値L1minの関係の一例を示す概略図である。図12の(a)及び(b)は、レンズ有効径L3と最小値L1minとの関係を示す。なお、最小値L1minは、図12の(a)に示すように、隣接する第1の対象物18aと第2の対象物18bの最短距離である対象物の径Dとなる。このとき、第1の対象物18aに隣接している第2の対象物18bをレーザー加工するために必要な距離L0は、図12の(b)に示すように、以下の数式(4)のとおりである。なお、数式(4)中のδは、以下の数式(5)より求められる。
L0=δ+L3/2+W/2 ・・・数式(4)
δ=D-L0/2 ・・・数式(5)
【0139】
図12の(b)中の二点鎖線は、レンズ中心を表す。図12の(b)において、第1の対象物18aは、加工終了位置に存在する。最小値L1minは、第1の対象物18aと第2の対象物18bとが接触していることを意味する。この状態での第2の対象物18bの中心とレンズ中心との間の距離をδとする。
【0140】
数式(4)及び(5)から、以下の数式(4)'が導かれる。
L0=D-L0/2+L3/2+W/2 ・・・数式(4)'
【0141】
レンズ有効径L3は、下記の数式(6)に示す通り表せる。
L3=3・L0-2・D-W ・・・数式(6)
【0142】
図13は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、レンズ有効径L3と最大値L1maxの関係の一例を示す概略図である。図13の(a)及び(b)に、レンズ有効径L3と、第1の対象物18aと第2の対象物18bとの距離L1の最大値L1maxとの関係を示す。なお、最大値L1maxは、第3の対象物18cと第2の対象物18bとが隣接する状態における第2の対象物18bと第1の対象物18aとの最大距離である。
【0143】
図13の(b)に示すように、最大値L1maxは、第2の対象物18bが第3の対象物18cに接する状態が最大となり、下記の数式(7)に示す通り表せる。最大値L1maxでは、第2の対象物18bと第3の対象物18cは接触しており、第1の対象物18aと第3の対象物18cとの距離は、2・距離L1となり、下記の数式(8)に示す通り表せる。
L1max=W/2+L3/2+L0/2 ・・・数式(7)
2・L1=D+L1max ・・・数式(8)
【0144】
図13の(b)に示す状態の場合には、第2の対象物18bの書き出しが可能となるレンズ有効径L3が必要となる。上記の数式(8)より、最大値L1maxを消去すると、下記数式(9)が導出される。
L3=4・L1-L0-2・D-W ・・・数式(9)
【0145】
最大加工幅Wmax=対象物の径Dとなるため、レンズ有効径L3は、以下の数式(10)の通り表せる。
L3=4・L1-L0-3・D ・・・数式(10)
【0146】
図13の(a)及び(b)では、距離L1は距離L0よりも大きい(距離L1>距離L0)ことから、必要となるレンズ有効径L3は、上記数式(10)をみたす必要がある。
【0147】
例えば、f920レンズにおけるレンズ有効径L3は470mm、距離L1は160m、対象物の径Dは20mmであることから、距離L0は70mmである。f920レンズは、加工用レンズとしては、ビーム径が大きいレンズである。そこで、より高精細なレーザー加工が必要な場合は、f100レンズ等の焦点距離の短いレンズを用いることが好ましい。しかし、焦点距離が短いレンズは、レンズ有効径L3が狭くなるので、上記数式(10)をみたす範囲で、距離L1及び距離L0を変えることにより、所望のレーザー加工を行うことができる。
【0148】
図14は、第2の実施形態に係るレーザー加工方法における、複数のレーザー装置を搬送方向に配置した場合の対象物の配置の一例を示す図である。図14の(a)は、複数台のレーザー装置11を搬送方向に配置し、レーザー加工する場合、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a1(1-1st)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18b1(2-1st)とのそれぞれの加工開始位置を表す。
【0149】
図14の(b)は、図14の(a)の第1の対象物18a1(1-1st)及び第2の対象物18b1(2-1st)が距離L0分だけ移動した状態を表す。図14の(b)は、複数台のレーザー装置11のそれぞれのレーザー光によって、2番目にレーザー加工される1台目の第1の対象物18a2(1-2nd)及び2台目の第2の対象物18b2(2-2nd)のそれぞれの加工開始位置を表す。
【0150】
図14に示すように、複数のレーザー装置11を搬送方向に配置する場合、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a1(1-1st)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18b1(2-1st)とは、それぞれ加工開始位置のレーザー光20の位置に対して、待機距離L2だけ離れた位置に搬送されている必要がある。
【0151】
また、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a2(1-2nd)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18b2(2-2nd)とも、それぞれ加工開始位置のレーザー光20の位置に対して、待機距離L2だけ離れた位置に搬送されている必要がある。
【0152】
このとき、複数台のレーザー装置11をN台(但し、Nは、2以上の整数)とし、同じレーザー装置11でレーザー加工される距離L0とした時、図14の(a)に示すように、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a1(1-1st)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18b1(2-1st)とは、L1/Nだけ離れた位置に配置されている。また、図14の(b)に示すように、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a2(1-2nd)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18b2(2-2nd)とも、L1/Nだけ離れた位置に配置されている。
【0153】
よって、本実施形態に係るレーザー加工方法は、複数台のレーザー装置11をN台(但し、Nは、2以上の整数)とし、同じレーザー装置11でレーザー加工される距離L0とした時、距離L0/Nをみたし、上記数式(6)又は数式(7)をみたす、これにより、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18aと、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第2の対象物18bとは、それぞれ加工開始位置のレーザー光20の位置に対して、待機距離L2だけ離れた位置に搬送できる。このため、本実施形態に係るレーザー加工方法は、複数台のレーザー装置11を用いて、複数の対象物18をレーザー加工できる。このとき、各レーザー装置11のレーザー光軸間隔を距離L1とすることによって、必要なレンズ有効径L3を最小とすることができる。
【0154】
<第3の実施形態>
第3の実施形態に係るレーザー加工方法は、少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、複数のレーザー光で複数の対象物を加工するレーザー加工方法であって、第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで複数のレーザー光で加工する場合、加工開始位置から加工終了位置までの距離L0[mm]と、第1の対象物と第2の対象物との距離L1[mm]とが、次式(III)をみたす。
L0≦N・L1 ・・・(III)
(但し、Nは、レーザー光の数を表し、2以上の整数である。)
【0155】
本実施形態に係るレーザー加工方法によると、複数のレーザー光20を用いて複数の第1の対象物18a及び第2の対象物18bを含む複数の対象物18をレーザ加工する場合でも、複数の第1の対象物18aの加工終了時点から複数の第2の対象物18bの加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、複数の対象物18の位置情報、及び複数の対象物18の姿勢情報を適正に補正できるので、加工不良品の発生を抑制できる。
【0156】
以下、第3の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、第3の実施形態において、既に説明した第1の実施形態及び第2の実施形態と同一の構成については、同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0157】
図15は、複数のレーザー装置11を用いた第3の実施形態のレーザー加工方法における、対象物の配置の一例を示す概略図である。図15では、複数のレーザー装置11が搬送方向に配置され、1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a1(1-1st)と、2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a2(1-2nd)とが、この順に搬送されている。
【0158】
1台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a1(1-1st)及び2台目のレーザー装置11によってレーザー加工される第1の対象物18a2(1-2nd)は、それぞれ同時にレーザー加工される。
【0159】
1台目の第1の対象物18a1(1-1st)及び2台目の第1の対象物18a2(1-2nd)の加工終了時点では、1台目の第2の対象物18b1(2-1st)及び2台目の第2の対象物18b2(2-2nd)は、それぞれ1台目の第1の対象物18a1(1-1st)及び2台目の第1の対象物18a2(1-2nd)の加工開始位置よりも、上流側に位置する。この位置関係が保たれることにより、対象物18の搬送速度をV[m/s]、待機距離をL2[m]とすると、1台目の第1の対象物18a1(1-1st)及び2台目の第1の対象物18a2(1-2nd)をレーザー加工した後、1台目の第2の対象物18b1(2-1st)及び2台目の第2の対象物18b2(2-2nd)をレーザー加工するまでの時間は、それぞれ、搬送速度V[m/s]に待機距離L2[m]を乗じた値(V・L2[s])となる。
【0160】
また、ガルバノミラー等のミラー13a(走査ミラー)が加工終了位置から加工開始位置まで戻る(ジャンプする)時間t1と、対象物の位置及び対象物の姿勢を検知した後に、検知した対象物の位置及び対象物の姿勢に合わせた加工データの演算時間t2とすると、それぞれの処理時間の最大がV・L2[s]となる。
【0161】
搬送手段側の対象物の配置精度によって、第1の対象物18aと第2の対象物18bとの距離L1にばらつきが生じる。距離L0が距離L1よりも大きい(L0>L1)場合には、待機距離L2が0未満(L2<0)となる。レーザー加工装置10は、検知手段16を備えているため、検知手段16を通過時の第1の対象物18aと第2の対象物18bとの間の時間t3と搬送速度V[m/s]から待機時間L2を算出することができる。
【0162】
待機距離L2が0未満(L2<0)となる場合には、対象物18へのレーザー加工は実施されず、対象物18はそのまま下流側へ搬送されていき、下流の検査装置にて不合格品と判定され、出荷されない。
【0163】
第3の実施形態に係るレーザー加工方法においては、レーザー加工装置10がレーザー装置11を複数台備えている場合であっても、レンズ有効径L3とし、加工幅Wとすると、距離L0の最大距離L0maxは、レンズ有効径L3と加工幅Wとの和(L0max=L3+W)となる。最大の加工幅Wは、レンズ有効径L3となるため、最大距離L0maxは、レンズ有効径L3に2を乗じた値(L0max=2・L3)となる。例えば、f920レンズは、レンズ有効径L3が470mmであるため、最大距離L0maxは、940mm(=470mm×2)となる。一方、距離L0の最小距離L0minは、対象物を追従加工しない条件であるため、最小距離L0minは、0mm(L0min=0mm)である。
【0164】
よって、本実施形態に係るレーザー加工方法は、複数のレーザー光20を用いて複数の対象物18をレーザ加工する場合でも、レーザ加工を終えた複数の対象物18の加工終了時点から、次にレーザ加工を行う複数の対象物18の加工開始時間を十分に確保することができ、走査手段の走査時間、複数の対象物18の位置情報、及び複数の対象物18の姿勢情報を適正に補正できるので、加工不良品の発生を抑制できる。
【0165】
以上の通り、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更等を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0166】
本発明の実施形態の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工方法であって、
前記第1の対象物をレーザー加工する場合、検知手段により前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知する第1の検知工程と、
前記第2の対象物をレーザー加工する場合、前記検知手段により前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知する第2の検知工程と、
前記第1の検知工程で前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の検知工程で前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定工程と、
集光手段の有効径内において、前記決定工程で決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して加工終了位置まで前記レーザー光を照射する照射工程と、
を含むレーザー加工方法。
<2> 距離L1は、複数の対象物の距離の平均値L1aveであり、
前記平均値L1aveは、前記距離L1の最小値L1minと、前記距離L1の最大値L1maxとを少なくとも含む平均値である、<1>に記載のレーザー加工方法。
<3> 前記最小値L1minと、前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0とが、次式(I)をみたす、<2>に記載のレーザー加工方法。
L0≦L1min ・・・(I)
<4> 前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0と、前記最小値L1minと、前記最大値L1maxとが、次式(II)をみたす、<2>又は<3>に記載のレーザー加工方法。
L1min≦L0≦L1max ・・・(II)
<5> 前記第1の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで複数の前記レーザー光で加工する場合、
前記加工開始位置から前記加工終了位置までの距離L0と、前記第1の対象物と前記第2の対象物との距離L1とが、次式(III)をみたす、<1>~<4>の何れか一つに記載のレーザー加工方法。
L0≦N・L1 ・・・(III)
(但し、式中、Nは、レーザー光の数を表し、2以上の整数である。)
<6> 前記対象物が、容器である、<1>~<5>の何れか一つに記載のレーザー加工方法。
<7> 少なくとも第1の対象物及び第2の対象物の順に搬送し、レーザー光で前記第1の対象物及び前記第2の対象物を含む複数の対象物を加工するレーザー加工装置であって、
少なくとも前記第1の対象物及び前記第2の対象物の順に搬送する搬送手段と、
前記レーザー光で前記対象物を加工する加工手段と、
前記対象物を検知する検知手段と、
前記第2の対象物の加工開始位置を決定する決定手段と、
を有し、
前記検知手段は、前記第1の対象物をレーザー加工する場合、前記第1の対象物が所定位置に搬送されたことを検知し、前記第2の対象物の加工開始位置から加工終了位置まで前記レーザー光で加工する場合、前記第2の対象物が前記所定位置に搬送されたことを検知し、
前記決定手段は、前記検知手段により前記第1の対象物を検知した時間から前記第2の対象物を検知するまでの時間と、前記第1の対象物及び前記第2の対象物の搬送速度とから前記第2の対象物の前記加工開始位置を決定し、
前記加工手段は、集光手段の有効径内において、前記決定手段により決定した前記第2の対象物の前記加工開始位置に前記レーザー光を走査して前記加工終了位置まで前記レーザー光を照射するレーザー加工装置。
【0167】
前記<1>から<6>のいずれかに記載のレーザー加工方法、及び前記<7>に記載のレーザー加工装置によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0168】
10 レーザー加工装置
11 レーザー装置
12 ビームエキスパンダ
13 走査手段
13a ミラー
13b ミラー
14 照射制御手段
15 集光手段
16 検知手段
16a 投光部
16b 受光部
18 対象物
18a、18a1、18a2、18a1(1-1st)、18a2(1-2nd) 第1の対象物
18b、18b1、18b2、18b1(2-1st)、18b2(2-2nd) 第2の対象物
18c 第3の対象物
20 レーザー光
【先行技術文献】
【特許文献】
【0169】
【文献】特開2021-037685号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15