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特許7509512不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20240625BHJP
   D04H 1/4326 20120101ALI20240625BHJP
【FI】
C08G73/14
D04H1/4326
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017149182
(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公開番号】P2019026771
(43)【公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 篤
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】▲吉▼澤 英一
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-237047(JP,A)
【文献】特開2006-169691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0132632(US,A1)
【文献】特開2007-56440(JP,A)
【文献】特開2007-59388(JP,A)
【文献】特開2009-248000(JP,A)
【文献】特開2008-682(JP,A)
【文献】特開2012-11388(JP,A)
【文献】国際公開第2009/099039(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/171345(WO,A1)
【文献】特開平7-70277(JP,A)
【文献】特開平8-218223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00-73/26
C08L1/00-101/16
D04H1/00-13/02
CA(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)数平均分子量が20,000~35,000のポリアミドイミド樹脂と、(B)ジメチルアセトアミドとを含む、不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドイミド樹脂が、ジイソシアネート化合物と、三塩基酸無水物及び/又は三塩基酸ハライドを含む酸成分との反応によって得られる樹脂を含む、請求項1に記載の不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項3】
前記ジイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアレートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項2に記載の不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含む、請求項2又は3に記載の不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項5】
前記酸成分が、トリメリット酸無水物を含有する芳香族三塩基酸無水物を含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物。
【請求項6】
ジイソシアネート化合物と、三塩基酸無水物及び/又は三塩基酸ハライドを含む酸成分とを、ジメチルアセトアミドを含む有機溶媒中で反応させ、数平均分子量が20,000~35,000のポリアミドイミド樹脂を含む反応液を得ること、
前記ポリアミドイミド樹脂を含む反応液をそのまま不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物として用いて不織布を形成すること
を含む不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、ポリアミドイミド樹脂組成物に関し、より詳細には、不織布の製造に好適に使用できるポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、様々な分野で使用することができ、例えば、電池用セパレーター、各種フィルターとして使用されている。不織布は、例えば、その用途及び使用目的に応じて選択された材料を用いる紡糸工程を経て製造される。例えば、電池用セパレーターの用途では、優れた耐熱性が要求される。また、高温環境下で使用されるフィルターの用途においても、優れた耐熱性が要求され、これらの使用形態の多様化から耐熱性のさらなる向上が望まれている。これに対し、優れた耐熱性を有し、かつ耐薬品性及び耐溶剤性にも優れるポリアミドイミド樹脂が繊維材料又は不織布材料として注目されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4797863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリアミドイミド樹脂の良溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)が広く使用されているが、近年、環境保全及び安全衛生の観点から、NMPの使用に関する規制が厳しくなっている。また、NMPは、沸点が200℃以上と高いことから、乾燥性が悪く、紡糸後の繊維のべたつき、さらに不織布製造時には繊維同士の溶着ムラなどの不具合が生じやすい。したがって、NMPと同等にポリアミドイミド樹脂を溶解可能でありながら、比較的低い温度で良好な乾燥性が得られる有機溶媒を使用した、不織布の製造に適したポリアミドイミド樹脂組成物が望まれている。
【0005】
ポリアミドイミド樹脂を溶解可能であり、かつ比較的低い沸点を有する有機溶媒として、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)等がある。しかし、DMAC、DMF等の有機溶媒を用いて合成して得たポリアミドイミド樹脂は、NMPを用いて合成して得たポリアミドイミド樹脂と比較して、機械的強度、耐熱性などの特性が低くなる傾向がある。一方、一般的に、ポリアミドイミド樹脂の耐熱性を高めると、樹脂の溶解性が低下しやすい傾向があり、耐熱性と溶解性とのバランスを調整することは難しい。そのため、ポリアミドイミド樹脂溶液を使用して繊維及び不織布を製造する場合、ポリアミドイミド樹脂の耐熱性を高めると、樹脂の溶解性が低下しやすいことから、紡糸時に不具合が生じやすい。このようなことから、耐熱性に優れた不織布の実現に向けて、ポリアミドイミド樹脂組成物のさらなる開発が望まれている。
【0006】
したがって、本発明の実施形態は、NMPと同等にポリアミドイミド樹脂を溶解可能であり、乾燥性に優れた有機溶媒を含み、かつ優れた耐熱性を有する不織布の製造に好適に使用できるポリアミドイミド樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
不織布は、紡糸によって得た繊維を、織らずに、絡み合わせてシート状に成形したものであり、成形は、熱を加えるか、機械的又は化学的な処理を加えることによって実施される。本発明者らは、種々の検討の中で、耐熱性を有する不織布を構成するためには、繊維材料に使用する樹脂として、270℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が好適であることを見出した。そして、数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂と、ジメチルアセトアミドとを含む樹脂組成物を構成することによって、耐熱性と溶解性との良好なバランスを得ることができ、不織布の製造に好適に使用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の実施形態は、(A)数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂と、(B)ジメチルアセトアミドとを含む、不織布製造用ポリアミドイミド樹脂組成物に関する。
他の実施形態は、上記ポリアミドイミド樹脂組成物を用いて形成された不織布に関する。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態によれば、優れた耐熱性が要求される不織布の製造に好適に使用できるポリアミドイミド樹脂組成物を提供することができる。上記ポリアミドイミド樹脂組成物は、溶媒としてジメチルアセトアミドを含むため、環境保全及び安全衛生の観点でも好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施形態について説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
1.ポリアミドイミド樹脂組成物
電池用セパレーター、燃料排ガスフィルター等の高温環境下で使用される耐熱フィルターの用途に不織布を使用する場合、充分な耐熱性を得る観点から、樹脂は270℃以上のガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。なお、本明細書で記載するTgは、TMA(Thermal Mechanical Analysis)法に従い測定して得た値を意味し、詳細は実施例で後述する。樹脂のTgは、275℃以上がより好ましく、280℃以上がさらに好ましい。
これに対し、一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂組成物は、(A)数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂と、(B)溶媒としてジメチルアセトアミドとを少なくとも含む。上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物によれば、数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂を使用することで、270℃以上のTgを得ることが容易であり、かつジメチルアセトアミドへの優れた溶解性を得ることもできる。そのため、上記ポリアミドイミド樹脂組成物を使用して、耐熱性に優れた不織布を効率良く製造することができる。不織布は、例えば、電池用セパレーター、及び耐熱フィルター等の高い耐熱性が要求される用途に好適に使用できる。以下、ポリアミドイミド樹脂組成物の構成成分について、説明する。以下の説明では、ポリアミドイミド樹脂組成物を「樹脂組成物」と称すこともある。
【0011】
<ポリアミドイミド樹脂>
成分(A)のポリアミドイミド樹脂は、ジイソシアネート化合物と、酸成分としての三塩基酸無水物又は三塩基酸ハライドとを反応させて得られる樹脂である。ここで、各原料化合物は、各々、任意に複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
ジイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアレート等が挙げられる。反応性の観点からは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを用いることが好ましい。
【0013】
一実施形態においてポリアミドイミド樹脂は、ジイソシアネートに加えてジアミン化合物を一部に使用してもよい。ジアミン化合物としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0014】
三塩基酸無水物としては、特に限定されないが、好ましくは芳香族三塩基酸無水物が用いられ、なかでもトリメリット酸無水物が好ましい。三塩基酸ハライドも特に限定はされないが、三塩基酸クロライド、さらには芳香族三塩基酸クロライドが好ましく、トリメリット酸無水物クロライド(無水トリメリット酸クロリド)等が挙げられる。環境への負荷を軽減させる観点から、トリメリット酸無水物等を用いることが好ましい。
【0015】
酸成分としては、上記の三塩基酸無水物(又は三塩基酸ハライド)の他に、ジカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物等の飽和又は不飽和多塩基酸を、ポリアミドイミド樹脂の特性を損なわない範囲で用いることができる。
ジカルボン酸としては、特に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、及びセバシン酸等が挙げられる。テトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、及びビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いられるほか、複数種を任意の組み合わせで使用してもよい。
三塩基酸以外のカルボン酸(ジカルボン酸とテトラカルボン酸)の総量は、ポリアミドイミド樹脂の特性を保つ観点から、全カルボン酸中に0~50モル%の範囲で使用されるのが好ましく、0~30モル%の範囲であることがより好ましい。
【0016】
ジイソシアネート(及びジアミン)と酸成分(三塩基酸無水物又は三塩基酸無水物ハライドと必要に応じて使用するジカルボン酸及びテトラカルボン酸二無水物の合計量)の使用比率は、生成されるポリアミドイミド樹脂の分子量及び架橋度の観点から、酸成分の総量1.0モルに対してジイソシアネート化合物(及びジアミン化合物)を0.8~1.1モルとすることが好ましく、0.95~1.08モルとすることがより好ましく、特に、1.0~1.08モルとすることが一層好ましい。
【0017】
一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、末端イソシアネート基がブロック剤(末端ブロック剤)で処理されたブロック化ポリアミドイミド樹脂であってもよい。使用可能な末端ブロック剤の一例として、アルコール、オキシム、及びラクタムが挙げられる。ポリアミドイミド樹脂組成物において、ブロック化ポリアミド樹脂を使用した場合、加水分解による分解が抑制され、経時安定性が向上するため、優れた耐熱性を得ることが容易となる。
【0018】
一実施形態においてポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、紡糸工程での機械的強度を確保する観点から5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましく、15,000以上であることがさらに好ましい。また、不織布の形態に成形された時に、所望とする耐熱性を確保する観点から、20,000以上であることが好ましい。一方、溶媒への溶解性を確保し、かつ紡糸工程に適した粘度が容易に得られる観点からは、数平均分子量は50,000以下であることが好ましく、45,000以下であることがより好ましく、40,000以下がさらに好ましい。
一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、20,000~35,000の範囲であることが好ましい。上記範囲内の数平均分子量を有するポリアミドイミド樹脂を使用した場合、耐熱性と溶解性との良好なバランスを得ることが容易となり、紡糸工程を良好に実施することが可能となる。
【0019】
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、樹脂合成時にサンプルリングして、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により、標準ポリスチレンの検量線を用いて測定し、目的とする数平均分子量になるまで合成を継続することにより、上記好ましい範囲に管理することができる。GPCの測定条件については後述する。
【0020】
上述のポリアミドイミド樹脂は、その機能を十分に発揮させるために、樹脂組成物中に1~50質量%含まれることが好ましい。複数種のポリアミドイミド樹脂を組み合わせて使用してもよく、ブロック化ポリアミドイミド樹脂を一部に含んでいてもよい。
【0021】
樹脂組成物中におけるポリアミドイミド樹脂の量は、適宜設定することができ、特に限定はされない。好ましい一実施形態において、他の成分とのバランスの観点から、樹脂組成物中におけるポリアミドイミド樹脂の量は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましい。一方、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。樹脂組成物中のポリアミドイミド樹脂の量を上記範囲内に調整することによって、紡糸時に十分な強度を有する繊維を得ることが容易となり、また流動性の低下等を抑制し作業性を良好に維持することができる。
【0022】
<ジメチルアセトアミド>
ポリアミドイミド樹脂組成物は、溶媒として成分(B)のジメチルアセトアミドを含む。ポリアミドイミド樹脂組成物は、本発明による効果を低下させない範囲で、ジメチルアセトアミド以外の溶媒を含んでいてもよい。
【0023】
その他の溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、及びN-アセチルモルホリン等から選ばれる一種以上の極性溶媒、又は水を用いることができる。さらに、助溶媒として、アニソール、ジエチルエーテル、エチレングリコール等のエーテル化合物;アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンノン、シクロペンタノン等のケトン化合物;キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;エタノール、2-プロパノール等のアルコールを任意に用いても良い。
【0024】
溶媒としてジメチルアセトアミド以外の溶媒を使用して混合溶媒とする場合、混合溶媒中のジメチルアセトアミドの含有量は、好ましい実施形態の効果を充分に発揮させるために、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0025】
<その他の成分>
ポリアミドイミド樹脂組成物は、上記(A)ポリアミドイミド樹脂、及び(B)ジメチルアセトアミドに加えて、その使用目的に応じて任意の成分を含むことができる。
【0026】
一実施形態において、水系の樹脂組成物を構成する場合、ポリアミドイミド樹脂の水への溶解性を高めるために、樹脂組成物は塩基性化合物を含むことが好ましい。塩基性化合物は、ポリアミドイミド樹脂に含まれるカルボキシル基と反応して塩を形成することで、樹脂の水への溶解性を高めることができる。塩基性化合物として、アルキルアミン類、又はアルカノールアミン類を好ましく使用することができる。塩基性化合物以外に、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の苛性アルカリ、又はアンモニア水等を併用してもよい。
【0027】
塩基性化合物は、ポリアミドイミド樹脂中に含まれるカルボキシル基及び開環させた酸無水物基を合わせた酸価に対して、樹脂の水溶化を容易とし、かつ、塗膜の強度を向上させる観点から、2.5~10当量用いることが好ましく、4当量以上用いることがより好ましく、8当量以下であることがより好ましい。
なお、上記酸価は、以下の方法で得ることができる。まず、ポリアミドイミド樹脂組成物を約0.5g採取し、これに1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンを約0.15g加え、さらにN-メチル-2-ピロリドン約60gとイオン交換水約1mLを加え、ポリアミドイミド樹脂が完全に溶解するまで攪拌する。これを、0.05モル/Lのエタノール性水酸化カリウム溶液を使用して電位差滴定装置で滴定し、ポリアミドイミド樹脂中の、カルボキシル基及び酸無水物基を開環させたカルボキシル基を合わせた酸価を得る。
【0028】
ポリアミドイミド樹脂と塩基性化合物との塩形成は、水を含むポリアミドイミド樹脂組成物に塩基性化合物を添加してもよいし、水を含まない、ポリアミドイミド樹脂の有機溶媒溶液に塩基性化合物を添加した後に、水を加えてもよい。塩を形成させる温度は、0℃~200℃であることが好ましく、40℃~130℃の範囲であることが一層好ましい。
【0029】
ポリアミドイミド樹脂組成物は、各種器材に対するコート剤、成形品材料等、様々な用途に使用することができる。一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂組成物は、繊維材料として好適に使用することができ、特に不織布材料としてより好ましく使用することができる。
これらの用途及び使用形態に応じて、ポリアミドイミド樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、充填材、消泡剤、防腐剤、界面活性剤、増粘剤等の任意成分を更に含んでもよい。一実施形態において、上記樹脂組成物は、ポリアミドイミド樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。例えば、必要に応じて、フッ素樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物等を、単独で又は混合して用いることができる。
例えば、フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-パーフルオロビニルエーテル共重合体、又は四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体を好ましく使用することができる。これらの複数種を組み合わせて使用してもよい。樹脂組成物にフッ素樹脂を追加した場合、非粘着性、耐食性、耐熱性及び耐薬品性等の特性を付与することが容易となる。
【0030】
エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等)、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、可撓性エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、アミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、ビキシレノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ化合物を、単独で使用しても、複数種を組み合わせて使用してもよい。
なお、エポキシ化合物は単独で添加してポリアミドイミド樹脂と反応させてもよいが、成形後にエポキシ化合物の未反応物が残留しにくいように、硬化剤又は硬化促進剤等と共に添加してもよい。
【0031】
イソシアネート化合物としては、デュラネート等のヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されるポリイソシアネートなどが挙げられる。このポリイソシアネートの質量平均分子量は500~9000であることが好ましく、より好ましくは1000~5000である。
【0032】
メラミン化合物としては、特に制限はないが、例えば、メラミンにホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等を反応させたメチロール基含有化合物が挙げられる。このメチロール基は、炭素原子数1~6個のアルコールによりエーテル化されているものが好ましい。
【0033】
好ましい一実施形態において、樹脂組成物はエポキシ化合物(エポキシ樹脂)をさらに含む。エポキシ化合物を配合することにより、ポリアミドイミド樹脂組成物の熱的、機械的、電気的特性をより向上させることができる。
【0034】
樹脂組成物に含まれるエポキシ化合物、イソシアネート化合物、及びメラミン化合物の各配合量は、ポリアミドイミド樹脂100質量部に対して、それぞれ、例えば1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましい。一方、ポリアミドイミド樹脂組成物の耐熱性と強度を保持する観点から、上記配合量は、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0035】
一実施形態において、樹脂組成物を用いて不織布を製造する場合、樹脂組成物は、必要に応じて界面活性剤を含有していることが好ましい。界面活性剤としては、特に制限されるものではないが、樹脂組成物が均一に混合して紡糸後に繊維が乾燥するまで分層又は分相を起こさず、かつ、繊維が集合してなる不織布を構成した時に多くの残留物が残らないものが好ましい。
【0036】
界面活性剤の含有量は、特に制限されるのもではないが、樹脂組成物の均一な混合状態を保ち、かつ、不織布の製造時に悪影響を与えないようにするために、樹脂組成物中に0.01~10質量%であるのが好ましく、0.5~5質量%であるのがより好ましい。
【0037】
樹脂組成物は、不織布の耐水性等を向上させるために充填材を含んでいてもよい。充填材の種類は、その耐水性や耐薬品性等を考慮し、不織布の用途に応じて選択することができ、水に溶解しないものであることが好ましい。具体的には、充填材としては、金属粉、金属酸化物(酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等)、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粒子、セラミックス、炭化珪素、酸化珪素、弗化カルシウム、カーボンブラック、グラフアイト、マイカ、及び硫酸バリウム等を挙げることができる。これらは、各々が単独で用いられるほか、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0038】
2.ポリアミドイミド樹脂の製造方法
ポリアミドイミド樹脂の製造方法は、ジイソシアネート化合物と、三塩基酸無水物及び/又は三塩基酸ハライドとを、有機溶媒中で反応させる重合工程を含む。好ましい実施形態において、有機溶媒は、ジメチルアセトアミドを含む。使用する原料化合物については、上記ポリアミドイミド樹脂組成物の項において説明したとおりである。
ブロック化ポリアミドイミド樹脂を製造する場合、上記重合工程に加えて、ポリアミドイミド樹脂末端イソシアネート基をアルコール等のブロック剤でブロックする工程をさらに含む。後述するが、重合工程とブロック化工程は、別工程で行ってもよいが、両工程を同時に、つまり重合とブロック化を同時に行ってもよい。
【0039】
重合工程において、ジメチルアセトアミド、又はジメチルアセトアミドを含む溶媒を重合溶媒(合成溶媒)として用いることができ、その場合は、得られた重合溶液をそのままポリアミドイミド樹脂組成物として、不織布の材料等に用いることができる。すなわち、ジメチルアセトアミドは、合成溶媒及び後述する希釈溶媒の双方に使用される。ジメチルアセトアミド以外の溶媒については、上記ポリアミドイミド樹脂組成物の項において説明したとおりである。
【0040】
重合時に用いる溶媒の使用量には、特に制限はないが、ジイソシアネート成分(及びジアミン成分)と酸成分の総量100質量部に対して50~500質量部とすることが、樹脂の溶解性の観点から好ましい。
反応温度は、特に限定されず、一般に80~180℃の温度であることが好ましい。
重合反応は、空気中の水分の影響を低減するため、窒素等の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0041】
ポリアミドイミド樹脂は、例えば、次の手順で製造することができる。
(1)酸成分、及びジイソシアネート成分(及びジアミン成分)を一度に使用し、反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(2)酸成分と、ジイソシアネート成分(及びジアミン成分)の過剰量とを反応させて、末端にイソシアネート基又はアミノ基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、酸成分を追加して末端のイソシアネート基(及びアミノ基)と反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
(3)酸成分の過剰量と、ジイソシアネート成分(及びジアミン成分)とを反応させて、末端に酸又は酸無水物基を有するアミドイミドオリゴマーを合成した後、ジイソシアネート成分及び/又はジアミン成分を追加して末端の酸又は酸無水物基と反応させてポリアミドイミド樹脂を合成する方法。
【0042】
ブロック化ポリアミドイミド樹脂を合成する場合、ブロック化工程は、ブロック剤を樹脂の合成中に反応させて、上記重合工程とブロック化工程とを同時に行うようにしてもよいし、重合工程後の樹脂にブロック剤を反応させてもよい。前者の場合は、重合溶媒中にブロック剤を添加しておけばよい。
ブロック化における末端ブロック剤の配合量は、樹脂製造時に使用する全ジイソシアネート配合量を100質量部としたときに、1.0~10.0質量部であることが好ましく、得られる樹脂組成物の貯蔵安定性の観点から2.5~5.0質量部であることがより好ましい。
【0043】
3.ポリアミドイミド樹脂組成物の製造方法
上述した(A)数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂と、(B)ジメチルアセトアミドを少なくとも含む、ポリアミドイミド樹脂組成物は、上記ポリアミドイミド樹脂の製造方法により得られたポリアミドイミド樹脂を含む反応溶液をそのまま使用して製造することができる。必要に応じて、希釈溶媒を追加してもよい。
すなわち、一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂組成物の製造方法は、
ジイソシアネート化合物と、三塩基酸無水物及び/又は三塩基酸ハライドとを、ジメチルアセトアミドを含む溶媒中で反応させる重合工程を含む。
他の実施形態において、上記製造方法は、
ジイソシアネート化合物と、三塩基酸無水物及び/又は三塩基酸ハライドとを、含む溶媒中で反応させる重合工程、及び
得られた樹脂溶液又は樹脂に、希釈溶媒を添加する工程、を含む。この実施形態において、重合工程時に使用する溶媒、及び/又は希釈溶媒は、少なくともジメチルアセトアミドを含む。
ポリアミドイミド樹脂としてブロック化ポリアミドイミド樹脂を使用する場合、重合工程と同時にブロック工程を実施しても、又はブロック工程を別途追加してもよい。また、水系の樹脂組成物を構成する場合、上記重合工程後に、塩基性化合物を用いた水溶化工程を行い、希釈溶媒として水を使用することもできる。
【0044】
4.不織布及びその製造方法
ポリアミドイミド樹脂組成物は、耐熱性に優れ、かつ樹脂組成物における樹脂の溶解性も良好であるため、繊維を製造するための各種紡糸方法を適用することができる。なかでも、特に限定するものではないが、溶媒の乾燥性が良好であるため、ポリアミドイミド樹脂組成物は乾式紡糸法に適した材料となる。ポリアミドイミド樹脂組成物を紡糸する際には、各紡糸方法に応じて適切な粘度とするために、溶媒を用いて任意に希釈することが好ましい。但し、優れた乾燥性を得る観点から、樹脂組成物は非水系であることが好ましい。
【0045】
乾燥紡糸法では、ポリアミドイミド樹脂組成物(溶液)を、紡糸ノズルを通して吐出させ、溶媒を乾燥させることによって、繊維を得ることができる。一実施形態において、紡糸によって得られた繊維の集合体を加熱下で所定の形状に成形し、繊維同士を部分的に溶着(結合)させることによって不織布を得ることができる。繊維同士の溶着は、加熱に限らず、例えば、ポリアミドイミド樹脂からなる繊維の集合体に結合用のバインダー樹脂を含む溶液を噴霧することによって実施することもできる。結合用のバインダー樹脂としては、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物等を、単独で又は混合して用いることができる。これら樹脂の詳細は、ポリアミドイミド樹脂組成物の項で説明したとおりである。
【0046】
一実施形態において、不織布は、エレクトロスピニング法(荷電紡糸法)に従い好適に製造することができる。エレクトロスピニング法は、樹脂溶液にプラスの高電圧を印加し、その樹脂溶液が、アースやマイナスに帯電した表面に噴霧される過程で繊維化を起こす方法であり、繊維径が細く、かつ構造の均一性に優れる繊維を得ることができる。また、ターゲット板に、繊維を二次元的に広がった状態で形成することができるため、紡糸後に改めて繊維を成形加工することなく、不織布を得ることができる。このように、エレクトロスピニング法によって製造された不織布は、微細繊維から構成されるため、分離性に優れた高性能な不織布を得ることが容易となる。
したがって、一実施形態において、上記実施形態のポリアミドイミド樹脂組成物(溶液)を使用し、エレクトロスピニング法に従い、不織布を製造することで、簡便な工程で、耐熱性に優れ、かつ分離性にも優れた、高い品質の不織布を得ることが可能となる。このような不織布は、様々な用途に使用することができ、例えば、優れた耐熱性が求められる電極用セパレーター、及び耐熱性フィルターとして好適に使用することができる。
【実施例
【0047】
次に、様々な実施例について説明するが、好ましい実施形態はこれらの実施例に限定されるものではなく、発明の主旨に基づいたこれら以外の多くの実施態様を含むことは言うまでもない。
【0048】
ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は以下のようにして測定した。
<数平均分子量>
GPC機種:東ソー株式会社製のHLC-8320GPC
検出器:東ソー株式会社製のRI
波長:270nm
データ処理機:ATT 8
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5×2
カラムサイズ:8mmφ×300mm
カラム温度:40℃
溶媒:DMF/THF=1/1(リットル)+リン酸0.06M+臭化リチウム0.06M 試料濃度:5mg/1mL
注入量:5μL
圧力:49kgf/cm(4.8×106Pa)
流量:1.0mL/min
【0049】
<実施例1>
無水トリメリット酸313.6g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート408.5g、及びジメチルアセトアミド882.6gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら1時間かけて徐々に昇温して90℃まで上げた。このまま3時間加熱を続けた後、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら徐々に昇温して140℃まで上げ、加熱開始から4時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液(樹脂組成物)を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液を室温まで放置した後に、外観を目視で観察したところ、均一で透明であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃/2時間)は、40質量%で、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は25,000であった。
【0050】
<実施例2>
無水トリメリット酸482.6g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート631.2g、及びジメチルアセトアミド1670.7gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら1時間かけて徐々に昇温して80℃まで上げた。このまま4時間加熱を続けた後、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら徐々に昇温して150℃まで上げ、加熱開始から5時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液(樹脂組成物)を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液を室温まで放置した後に、外観を目視で観察したところ、均一で透明であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃/2時間)は、35質量%で、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は30,000であった。
【0051】
<実施例3>
無水トリメリット酸134.5g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート78.8g、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート101.8g、及びジメチルアセトアミド585.1gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら2時間かけて徐々に昇温して100℃まで上げた。このまま2時間加熱を続けた後、反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら徐々に昇温して140℃まで上げ、加熱開始から6時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液(樹脂組成物)を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液を室温まで放置した後に、外観を目視で観察したところ、均一で透明であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃/2時間)は、32質量%であり、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は20,000であった。
【0052】
<比較例1>
無水トリメリット酸175.8g、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート229.0g、及びジメチルアセトアミド494.7gを、温度計、攪拌機、及び冷却管を備えたフラスコに入れ、乾燥させた窒素気流中で攪拌しながら1時間かけて徐々に昇温して120℃まで上げた。このまま反応により生ずる炭酸ガスの急激な発泡に注意しながら保温し、加熱開始から8時間加熱を続けた後、反応を停止させ、ポリアミドイミド樹脂溶液(樹脂組成物)を得た。このポリアミドイミド樹脂溶液を室温まで放置した後に、外観を目視で観察したところ、均一で透明であった。
このポリアミドイミド樹脂溶液の不揮発分(200℃/2時間)は、42質量%で、ポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は15,000であった。
【0053】
<ガラス転移温度(Tg)>
上記各実施例及び比較例1で得られたポリアミドイミド樹脂組成物を、ガラス板上に塗布し、80℃で30分予備乾燥させた後、270℃で30分間硬化させて得られたフィルムの約10mgを試験片として使用した。この試験片について、日立ハイテクサイエンス社製の装置名「TMA-7100」を用いて、TMA法に従い、線膨張曲線の屈曲点からTgを求めた。測定時の測定温度領域は、室温~400℃であり、昇温速度は10℃/分とした。
【0054】
測定結果を表1に示す。
【表1】
【0055】
表1から分かるように、数平均分子量が20,000以上のポリアミドイミド樹脂と、ジメチルアセトアミドとを含むポリアミドイミド樹脂組成物(実施例1~3)によれば、所望とする270℃以上のTgを実現することができる。一方、数平均分子量が20,000よりも小さいポリアミドイミド樹脂を使用した場合には、所望とするTgを実現することが困難であった。
以上のことから、本発明の一実施形態であるポリアミドイミド樹脂組成物によれば、耐熱性に優れた不織布を効率良く提供可能となることがわかる。加えて、ジメチルアセトアミドは、ポリアミドイミド樹脂の良溶媒として知られるNMPと比較して低沸点であるため乾燥性に優れ、また作業環境及び環境安全面でも優れているため、不織布の製造において様々な有益性が得られる。