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特許7509513リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240625BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
H01M4/525
C01G53/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017223441
(22)【出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2019096424
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-10-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 康孝
(72)【発明者】
【氏名】川上 裕二
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 知倫
【合議体】
【審判長】岩間 直純
【審判官】畑中 博幸
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115380(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/141258(WO,A1)
【文献】特開2014-220232(JP,A)
【文献】特開2013-020736(JP,A)
【文献】特開2013-171744(JP,A)
【文献】特開2003-267732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルとリチウムとを少なくとも含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、炭素含有量が0.042質量%以上0.25質量%以下で且つ体積平均粒径MVが10μm以上26μm以下のニッケル化合物粉末と体積平均粒径MVが10μm以上26μm以下(10μmを除く)のリチウム化合物粉末との混合物を焼成処理する焼成工程と、前記焼成工程で得たリチウムニッケル複合酸化物粉末を水洗処理する水洗工程と、前記水洗処理後のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比を、前記水洗処理前のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比で除した値が0.95を超えているか否かを判断する工程とを有し、
前記値が0.95以下の場合は、前記ニッケル化合物粉末に体積平均粒径MVがより小さいものを採用するか、前記ニッケル化合物粉末により高い温度で焙焼処理したものを用いるか、前記焼成処理時の雰囲気ガスの酸素濃度をより高くするか、前記焼成処理時の最高焼成温度をより高温にするか、又は前記最高焼成温度の保持時間をより長くすることで、前記値が0.95を超えるように前記焼成工程の条件の調整を行うことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケル化合物粉末がニッケル酸化物またはニッケル水酸化物の粉末である、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記リチウム化合物粉末が水酸化リチウムまたは水酸化リチウム水和物の粉末である、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記ニッケル化合物粉末と前記リチウム化合物粉末との混合物を焼成処理する際の雰囲気ガスの酸素濃度が60容量%以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記ニッケル化合物粉末が、ニッケルとその他遷移金属との複合酸化物または複合水酸化物の粉末を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程における最高焼成温度が650℃以上850℃以下であり、かつ該最高焼成温度での保持時間が2時間以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記焼成工程の前に、前記ニッケル化合物粉末を焙焼温度500℃以上800℃以下で焙焼してニッケル酸化物粉末とする前処理工程を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記リチウムニッケル複合酸化物は、一般式LiNi1-y-z(式中、MはCoおよびMnの中からから選ばれた少なくとも1種の元素であり、NはAl、Ti、Nb、V、Mg、WおよびMoの中から選ばれた少なくとも1種の元素であり、xは0.90~1.10、yは0.05~0.35、Zは0.005~0.05である)で表される、請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法に関し、特に、リチウムニッケル複合酸化物からなる高出力のリチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット端末等の小型情報端末の急速な生産拡大に伴い、高容量な二次電池としてリチウムイオン二次電池の需要が急激に伸びている。リチウムイオン二次電池は小型で高いエネルギー密度を有することから小型情報端末用電源としてすでに広く利用されているが、ハイブリッド自動車や電気自動車などに搭載される大型電源としての利用を目指した研究開発も進められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に用いる正極活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物が広く用いられており、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO)が従前から主に使用されている。しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物の原料には希産で高価なコバルト化合物が用いられるため、正極活物質の原料コストがかさんでリチウムイオン二次電池の価格が高くなる要因になっている。この極活物質の原料コストを下げ、より安価なリチウムイオン二次電池の製造を実現することは、現在普及している小型情報端末や車載用二次電池の低コスト化につながるうえ、将来の大型電源へのリチウムイオン二次電池の搭載を可能とすることから、工業的に大きな意義を有している。
【0004】
そこで、リチウムイオン二次電池用正極活物質として使用できる他のリチウム遷移金属複合酸化物として、リチウムニッケル複合酸化物(LiNiO)が注目されている。リチウムニッケル複合酸化物は、現在主流のリチウムコバルト複合酸化物と比較すると質量当たりの充放電容量が大きく、原料であるニッケル化合物がコバルト化合物と比べて安価で、かつ安定して入手可能であるといった利点を有している。そのため、次世代の正極活物質として期待され、活発に研究開発が続けられている。
【0005】
しかしながら、リチウムニッケル複合酸化物は、リチウムコバルト複合酸化物に比べて結晶中からの酸素の脱離による分解温度が低いため、リチウム化合物とニッケル化合物との合成反応の温度が上げられず、反応を十分に進めて結晶性を整ったものにするためには焼成時間を長くせざるを得ず、工業的に量産する際の生産性に劣るという問題点を有している。
【0006】
このリチウムニッケル複合酸化物の製造方法については、特許文献1~4にリチウム化合物とニッケル化合物とを混合して熱処理する方法が開示されており、電池特性の向上などを目的に、合成反応の時間や温度、および合成反応時の雰囲気ガス組成などを最適化することが提案されている。また、特許文献5~7にはリチウム遷移金属複合酸化物の焼成による合成法について多数の提案がなされている。さらに、特許文献8には、水洗工程により正極活物質の特性を向上させる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平07-114915号公報
【文献】特開平11-111290号公報
【文献】特開2000-133249号公報
【文献】特開2007-119266号公報
【文献】特開2002-170562号公報
【文献】特開2000-173599号公報
【文献】特開2008-117729号公報
【文献】特開2011-146309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1~8の技術では、電池性能に優れたリチウムイオン二次電池用の正極活物質を工業的に安定して量産するのは困難であった。本発明は上記の従来の状況に鑑みてなされたものであり、高出力が得られるリチウムイオン二次電池用の正極活物質として、電池性能に優れたリチウムニッケル複合酸化物を工業的に安定して量産することが可能な製造方法で提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために正極活物質の合成に関する研究を進めた結果、ニッケル化合物とリチウム化合物とを有する粉末原料を焼成処理してリチウムニッケル複合酸化物を生成する焼成工程と、該焼成工程後に該複合酸化物を水洗処理する水洗工程とからなる正極活物質の製造方法において、該水洗処理前後の該複合酸化物中に含まれるリチウムの物質量の比を管理することで、安定した電池性能を有する正極活物質を工業的に量産できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、ニッケルとリチウムとを少なくとも含むリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法であって、炭素含有量が0.042質量%以上0.25質量%以下で且つ体積平均粒径MVが10μm以上26μm以下のニッケル化合物粉末と体積平均粒径MVが10μm以上26μm以下(10μmを除く)のリチウム化合物粉末との混合物を焼成処理する焼成工程と、前記焼成工程で得たリチウムニッケル複合酸化物粉末を水洗処理する水洗工程と、前記水洗処理後のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比を、前記水洗処理前のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比で除した値が0.95を超えているか否かを判断する工程とを有し、前記値が0.95以下の場合は、前記ニッケル化合物粉末に体積平均粒径MVがより小さいものを採用するか、前記ニッケル化合物粉末により高い温度で焙焼処理したものを用いるか、前記焼成処理時の雰囲気ガスの酸素濃度をより高くするか、前記焼成処理時の最高焼成温度をより高温にするか、又は前記最高焼成温度の保持時間をより長くすることで、前記値が0.95を超えるように前記焼成工程の条件の調整を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定した電池性能を有する正極活物質を工業的に量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
図2】電池評価用に作製した本発明の実施例のコイン型電池の概略の斜視図および断面図である。
図3】本発明の実施例で作製した様々なリチウムニッケル複合酸化物の水洗処理前後のリチウムメタル比の比と初期放電容量とをプロットしたグラフである。
図4】本発明の実施例で作製した様々なリチウムニッケル複合酸化物の水洗処理前後のリチウムメタル比の比と正極抵抗とをプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法の実施形態について詳細に説明する。この本発明の実施形態の正極活物質の製造方法は、ニッケル化合物粉末とリチウム化合物粉末との混合物を焼成処理する焼成工程と、この焼成工程で得たリチウムニッケル複合酸化物粉末を水洗処理する水洗工程とを有している。リチウムイオン二次電池用の正極活物質に用いるリチウムニッケル複合酸化物粉末を工業的に生産する場合、一般的に、ニッケル化合物粉末とリチウム化合物粉末との混合物をセラミック製の焼成容器に充填した後、この混合物が充填された容器をローラーハースキルンやプッシャー炉などの連続焼成炉の中に連続的に送り込んで所定の温度および所定の時間で焼成処理することが行われている。これにより、合成反応が生じて該混合物からリチウムニッケル複合酸化物粉末が生成する。
【0015】
上記の工業的な生産に用いる焼成容器としては、一般的に、内寸が100mm(L)×100mm(W)×20mm(H)~500mm(L)×500mm(W)×120mm(H)の範囲にあるセラミックス製の角型容器が使用され、この容器内に原料としてのリチウム化合物粉末とニッケル化合物粉末との混合物を、底面からの高さが10~110mmの範囲内に収まるように充填することが行われている。
【0016】
上記の焼成工程の生産性を向上するためには、連続焼成炉内における焼成容器の搬送速度を速めて焼成処理時間を短縮したり、焼成容器内の混合物の充填量を多くしたりして、単位時間あたりの焼成処理量を増加することが考えられる。しかし、搬送速度が速すぎるとニッケル化合物粉末とリチウム化合物粉末との合成反応の時間が足りず、リチウムニッケル複合酸化物粉末を構成する粒子の結晶成長が不十分になって電池性能が劣化する問題が生じうる。一方、焼成容器内の混合物の充填量が多すぎると該容器に充填した混合物の表面部から底部までの深さが深くなりすぎ、該底部の混合物にまで反応に必要な酸素が十分に行き渡らなくなる。その結果、下記式1に示すような合成反応が良好に進行しにくくなり、リチウムニッケル複合酸化物の合成が不十分になって、放電容量の低下などの問題が発生しうる。
【0017】
[式1]
NiO+LiOH+1/4O→LiNiO+1/2H
【0018】
従って、正極活物質として優れた電池性能を発揮するリチウムニッケル複合酸化物粉末を合成するには、ニッケル化合物粉末とリチウム化合物粉末との反応に必要な酸素を、これらの混合物の全体に亘って、特に焼成容器の底部にまで十分行き渡らせることが望ましい。これに関し、本発明者らは、ニッケル化合物粉末とリチウム化合物粉末との反応においては、焼成工程における全ての温度範囲で酸素を混合物全体に十分に行き渡らせる必要はなく、上記の反応にとって重要な温度領域、具体的には混合物の焼成処理時の焼成温度が450℃以上650℃以下の温度領域において、焼成容器内の該混合物の深さに応じた酸素拡散時間を確保できれば上記混合物内に酸素を十分に行き渡らせることができ、該焼成容器内に充填する混合物の量が多くなって該容器内において混合物の表面部から底部までの深さが深くなっても、電池性能に優れたリチウムニッケル複合酸化物の粉末が得られるとの知見を得た。
【0019】
より具体的に説明すると、リチウム化合物の種類にもよるが、焼成温度450℃以上650℃以下の温度領域において、リチウム化合物とニッケル化合物との固相-固相反応や液相-固相反応が最も顕著に進行するので、この温度領域において混合物全体に反応に必要な酸素が十分に行き渡るようにすることで、十分に反応したリチウムニッケル複合酸化物の粉末を得ることが可能になる。なお、上記の焼成温度は例えば炉内に設けた温度計で測定することができる。
【0020】
例えば、原料として水酸化リチウム粉末とニッケル複合酸化物粉末との混合物を用意し、この混合物の温度を徐々に上げていった場合、リチウムニッケル複合酸化物の合成反応は450℃付近から開始する。また、水酸化リチウムの融点である460℃付近を超えると、水酸化リチウムが溶融しながらニッケル複合酸化物と反応することになる。この温度領域において焼成容器の底部にまで十分に酸素が行き渡らない場合、未反応の溶融水酸化リチウムがセラミック製の焼成容器と反応してしまい、ニッケル複合酸化物と反応する水酸化リチウムの量が実質的に不足する。その結果、生成したリチウムニッケル複合酸化物中に、リチウム欠損部位が存在して、電池性能の低下を招くこととなる。従って、焼成処理時の焼成温度が、水酸化リチウムが溶融して十分な反応速度が得られる温度領域である450℃以上になると、上記混合物に酸素を十分に供給して顕著に反応を進行させることが重要になる。
【0021】
一方、焼成温度が650℃に到達した時点で未反応の水酸化リチウムとニッケル複合酸化物が依然として存在し、かつそれらへの酸素供給が不足している場合には、下記式2の副反応が発生し、生成するリチウムニッケル複合酸化物結晶中に、電池反応時にリチウムイオンの移動を妨げる異相が生じるため、電池性能の劣化を招くことになる。
【0022】
[式2]
8NiO+2LiOH+1/2O→LiNi10+H
【0023】
なお、上記のように焼成温度が450℃以上650℃以下の温度領域内であれば、所定の焼成温度に保持した場合と、例えば一定の昇温速度で焼成温度を変化させた場合とでは効果にほとんど差異はなく、いずれも同様の効果を得ることができる。また、上記の式1の反応は基本的に酸素を必要とする反応であるから、焼成時の雰囲気ガスは酸素濃度20容量%程度の空気でもよいが、より酸素濃度の高い酸素富化空気であるのが好ましい。この酸素富化空気の酸素濃度は、例えば空気と酸素の混合割合を適宜調整することで60容量%以上にするのが好ましく、80容量%以上にするのがより好ましい。
【0024】
高い電池性能を発揮させるべくリチウムニッケル複合酸化物の合成において十分な結晶性を確保するためには、焼成工程における最高焼成温度は650℃以上850℃以下とすることが好ましく、この該最高焼成温度での保持時間は2時間以上であることが好ましい。この最高焼成温度が650℃未満の場合や、当該最高焼成温度が650℃以上であってもその保持時間が2時間未満の場合は、得られたリチウムニッケル複合酸化物の結晶性が不十分になる場合がある。一方、上記の最高焼成温度が850℃を超えると、生成したリチウムニッケル複合酸化物が酸素の放出を伴う分解反応を開始し、層状構造が乱れて電池性能を悪化させてしまう場合がある。
【0025】
上記の最高焼成温度が650℃未満でも、長時間かけて焼成すれば、リチウムニッケル複合酸化物には十分な結晶性が得られ、電池性能を損なわずに合成することが可能であるが、工業的な生産性を考慮した場合は24時間を超えるような焼成時間は好ましくない。従って、混合物の入った焼成容器が焼成炉内を通過する時間、すなわち、加熱開始から最高焼成温度までの昇温およびその最高焼成温での保持を経由して冷却が完了するまでの時間は、24時間以下とすることが好ましい。
【0026】
なお、リチウム化合物として結晶水を有する水酸化リチウムを用いる場合、温度を急激に上昇させると、焼成容器内の混合物の温度が不均一となり、合成反応も均一にならない場合があるため、加熱開始から最高焼成温度での保持完了までの焼成時間を12時間以上かけるのが好ましい。一方、無水物の水酸化リチウムを用いることにより、上記の加熱開始から保持完了までの時間を12時間未満にすることができる。
【0027】
上記のニッケル化合物およびリチウム化合物からのリチウムニッケル複合酸化物の合成反応が十分に進行したか否かを判断する指標として、本発明者らは、リチウムニッケル複合酸化物粉末を所定の条件で水洗処理したとき、この水洗処理後のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比を、該水洗処理前のリチウムニッケル複合酸化物粉末中のリチウム以外の遷移金属の総物質量に対するリチウムの物質量の比で除した値(以下、水洗処理前後のリチウムメタル比の比とも称する)を用いることが有効であることを見出した。なお、物質量とはSI単位においてモルで表示される物理量であり、ICP発光分光分析装置等で測定することができる。
【0028】
リチウムニッケル複合酸化物の製造においては、通常、ニッケル化合物に含まれるニッケルおよび添加遷移金属元素の物質量1モルに対して、リチウム化合物中のリチウムの物質量は1モルよりも過剰となるように混合して焼成する。これは、リチウムニッケル複合酸化物の合成反応においてはリチウムの物質量がニッケルおよび添加遷移金属元素の物質量よりも少ないと、リチウムニッケル複合酸化物結晶中のリチウム部位にリチウム欠損が生じ、十分な充放電容量を確保できなくなるとともに、リチウム欠損部位が充放電反応の抵抗層として働き、二次電池の電池抵抗を大きくするおそれがあるからである。
【0029】
よって、十分なリチウムニッケル複合酸化物の合成反応が起こっても、合成反応後のリチウムニッケル複合酸化物にはなお余剰のリチウム化合物が存在し、その大部分はリチウムニッケル複合酸化物粒子の表面およびその近傍に存在する。この粒子表面およびその近傍の余剰のリチウム化合物は水洗処理によって除去されやすいため、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は通常1より小さくなる。
【0030】
一方、この水洗処理前後のリチウムメタル比の比が1に近く、すなわち水洗処理前後のリチウムメタル比にほとんど差がない場合は合成反応後のリチウムニッケル複合酸化物の粒子表面に存在する余剰のリチウムが少ないと考えることができ、これは原料に用いたリチウムのほとんどがニッケル化合物粒子内に固溶して十分に反応し、ほぼ化学量論通りにリチウムニッケル複合酸化物の合成反応が進行したためと考えることができる。
【0031】
従って、本発明の実施形態のリチウムニッケル複合酸化物からなる正極活物質の製造方法では、水洗処理前後のリチウムメタル比の比が0.95を超えるように調整している。このリチウムメタル比の比は、より優れた電池特性を得るためには0.99以上が好ましく、0.995以上がより好ましい。なお、水洗処理前後のリチウムメタル比の比の上限としては、上述のように通常は1より小さくなるが、リチウムニッケル複合酸化物の合成が不十分な場合はニッケルおよび添加遷移金属元素の溶出が起こることがあり、この場合は1より大きくなることがある。よって、合成反応が十分に行われたリチウムニッケル複合酸化物では水洗前後のリチウムメタル比の比は1を超えることはない。
【0032】
この水洗処理前後のリチウムメタル比の比が0.95以下の場合は、前段の焼成処理の条件を適宜調整することで0.95を超えるようにすることができる。例えば、原料のニッケル化合物粉末に体積平均粒径MVがより小さいものを採用してもよいし、原料のニッケル化合物粉末により高い温度で焙焼処理したものを用いてもよい。あるいは、焼成処理時の雰囲気ガスの酸素濃度をより高くしたり、焼成処理時の最高焼成温度をより高温にしたり、該最高焼成温度の保持時間をより長くしたりしてもよい。
【0033】
本発明の正極活物質の製造方法の実施形態において、原料として用いるニッケル化合物粉末は特に限定はないが、ニッケル水酸化物またはニッケル酸化物が、反応中に水以外の副反応物を生成しにくいという観点から好ましい。このニッケル化合物粉末は体積平均粒径MVが3μm以上26μm以下が好ましく、8μm以上21μm以下がより好ましく、10μm以上16μm以下が最も好ましい。一方、ニッケル化合物粉末の嵩密度は、0.5g/ml以上2.2g/ml以下であることが好ましい。
【0034】
上記のニッケル化合物粉末の体積平均粒径MVが3μm未満では、得られる正極活物質物の粒径が小さくなりすぎ、極板製造時に十分な充填密度が得られず、二次電池の単位容積あたりの正極活物質量が少ないため電池容量が低下するおそれがある。逆に、上記のニッケル化合物粉末の体積平均粒径MVが26μmを超えると、正極活物質粒子間、あるいは正極活物質粒子と導電助剤との間の接点が少なくなりすぎ、正極の抵抗が上昇して電池容量が低下するおそれがある。
【0035】
また、ニッケル化合物粉末の嵩密度が0.5g/ml未満では、焼成時に焼成容器に充填する際の嵩密度が小さくなりすぎ、焼成容器当たりの充填量が少ないため生産性が著しく低下するおそれがある。逆に、上記嵩密度が2.2g/mlを超えると、リチウム化合物の粉末との混合物が密に詰まることで混合物中への酸素の拡散が進みにくくなり、焼成に必要な時間が延びて生産性を低下させるおそれがある。
【0036】
上記のニッケル化合物粉末は炭素含有量が0.25質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.07質量%以下であることが最も好ましい。上記のようにニッケル化合物中の炭素含有量を0.25質量%以下に抑えることによって、ニッケル化合物中に効率よくリチウムを固溶させることが可能となり、正極活物質の出力特性を大幅に向上させることができる。このようにリチウムの固溶が効率的になる理由については明確ではないが、本発明者らは、ニッケル化合物に粉末に含まれる炭素分は主としてニッケル炭酸塩あるいはニッケル炭化物によるものと考えられ、これらは水酸化ニッケルあるいは酸化ニッケルに比べてリチウム化合物との反応性に劣るためと推測している。
【0037】
本発明の実施形態の正極活物質の製造方法においては、原料にニッケル水酸化物を用いる場合は、上記の焼成工程の前にニッケル化合物粉末を好適には焙焼温度500℃以上800℃以下で焙焼してニッケル酸化物粉末とする前処理工程を有するのが好ましい。このように焼成処理の前に焙焼処理を施すことによって、上記のニッケル化合物粉末の炭素含有量を低減することも可能になる。なお、上記の焙焼温度は例えば炉内に設けた温度計で測定することができる。
【0038】
原料として用いる上記リチウム化合物粉末も特に限定はないが、水酸化リチウムもしくは炭酸リチウムまたはそれらの混合物が好ましく、ニッケル化合物との反応を考慮すると融点が480℃付近にある水酸化リチウム無水物または水酸化リチウム一水塩がより好ましく、生産性を考慮すると水酸化リチウム無水物が特に好ましい。水酸化リチウムが溶融し、ニッケル複合酸化物と固液反応することでより、均一に反応が進むからである。
【0039】
また、リチウムニッケル複合酸化物の合成反応は基本的に固相反応であるため、原料として用いるリチウム化合物粉末とニッケル化合物粉末とが均一に混合されている方が合成反応が進みやすく、そのためにはリチウム化合物粉末の粒度はニッケル化合物粉末の粒度に近いことが好ましい。前述したようにニッケル化合物粉末の好ましい粒度は、体積平均粒径MVが3μm以上26μm以下であるので、リチウム化合物粉末の体積平均粒径MVは26μm以下であることが好ましく、21μm以下がより好ましく、16μm以下が最も好ましい。しかしながら、リチウム化合物粉末の粒度が5μm以下になると粉砕に必要なエネルギーが大きくなりすぎてコストアップ要因になるとともに、原料混合物の嵩密度が小さくなりすぎ、焼成時に大きな炉容積が必要となるため、現実的にはリチウム化合物粉末の体積平均粒径MVは5μm以上が好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0040】
本発明の正極活物質の製造方法の実施形態においては、焼成によって得られたリチウムニッケル複合酸化物粉末を水洗処理することで、前述したように当該粒子表面およびその近傍の余剰のリチウムが除去され、高容量で安全性が高いリチウムイオン二次電池用正極活物質となる。この水洗処理の条件は特に限定はなく、公知の水洗技術を用いることができるが、以下の方法で水洗処理するのが好ましい。
【0041】
すなわち、まず撹拌機付き容器内に貯められた好ましくは10~15℃程度の水1質量部に対して、好適には0.5~2質量部の、より好適には0.75質量部のリチウムニッケル複合酸化物粉末を添加して好適には15~60分程度、より好適には30分程度撹拌することで、リチウムニッケル複合酸化物粒子の表面およびその近傍の余剰のリチウムを十分に除去する。この水洗処理後のスラリーは、一般的な方法で固液分離および乾燥すればよい。上記のリチウムニッケル複合酸化物粉末の添加量が2質量部を超えると、上記スラリーの粘度が高くなりすぎるため攪拌が困難になるばかりか、スラリー中のアルカリが高くなって化学平衡の影響を受けて付着物の溶解速度が遅くなったり、剥離が起きても粉末からの分離が難しくなったりすることがある。
【0042】
逆に、上記リチウムニッケル複合酸化物粉末の添加量が0.5質量部未満では、スラリー濃度が希薄過ぎるため、リチウムの溶出が促進されて正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物粒子の結晶格子中からのリチウムの脱離が生じるようになり、その結果、結晶が崩れやすくなるばかりか、スラリー中の高pHの水溶液が大気中の炭酸ガスを吸収して炭酸リチウムを再析出する。
【0043】
上記水洗処理に使用する水には特に限定はないが、電気伝導率10μS/cm未満の純水が好ましく、1μS/cm以下の純水がより好ましい。すなわち、電気伝導率10μS/cm未満の純水を使用することにより、正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物粒子に不純物が付着して電池性能が低下するのを防止することが可能となる。上記スラリーの固液分離後は、粒子表面に残存する付着水が少ないことが好ましい。付着水が多いと、当該付着水中に溶解したリチウムが再析出し、後段の乾燥処理後に残存してリチウムニッケル複合酸化物粉末の表面に存在するリチウム量が増加する。従って水洗処理後の固液分離に用いる固液分離装置には、遠心分離機、フィルタープレスなどの固液分離後の固形分の含水率を低く抑えることができるものが好ましい。
【0044】
上記の固液分離の後段の乾燥処理の条件には特に限定はないが、上記の固液分離により得た湿潤状態の粉末ケーキに対して、炭素や硫黄の化合物成分を含有しないガス雰囲気または真空雰囲気にチャンバー内雰囲気を制御可能な乾燥機を用い、乾燥温度80℃以上550℃以下で乾燥処理するのが好ましい。このように乾燥時の乾燥温度を80℃以上とする理由は、上記水洗処理後の正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物粒子を素早く乾燥し、該粒子の表面部と内部とでリチウム濃度の勾配が起こることを防ぐためである。
【0045】
逆に、550℃以下にする理由は、正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物粒子の表面近傍では化学量論比に極めて近いか、もしくは若干リチウムが脱離して充電状態に近い状態になっていることが予想されるので、550℃を超える乾燥温度では、充電状態に近い粉末の結晶構造が崩れる契機になり、電気特性の低下を招くおそれがあるからである。この乾燥時の乾燥温度は、生産性および熱エネルギーコストをも考慮すると、120~350℃がより好ましい。なお、上記の乾燥温度は例えば乾燥機内に設けた温度計で測定することができる。
【0046】
上記した本発明の実施形態の正極活物質の製造方法により、品質の安定した正極活物質を量産することができる。また、水洗処理前後のリチウムメタル比の比が高いので、リチウムロスを抑えることができ、上記の量産性との相乗効果により、電気自動車用の電源としてリチウムイオン二次電池を普及させるために不可欠な要件である電池の低コスト化を実現することができ、その工業的価値は極めて高いといえる。なお、電気自動車用の電源とは、純粋に電気エネルギーで駆動する電気自動車のみならず、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用する、いわゆるハイブリッド車の電源として用いることをも含む。
【0047】
上記にて説明した本発明の実施形態の製造方法により、様々な種類のリチウムニッケル複合酸化物を生成することができ、それらはリチウムイオン二次電池用の正極活物質の工業的な製造に適用することが可能である。具体的には、組成式LiNi1-y-zで表されるリチウムニッケル複合酸化物を生成することができる。ここで、式中のMはCoおよびMnの中から選ばれた少なくとも1種の元素であり、NはAl、Ti、Nb、V、Mg、WおよびMoの中から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、x、y、zはそれぞれ、0.90≦x≦1.10、0.05≦y≦0.35、0.005≦z≦0.05が好ましく、y+z≦0.20であるのがより好ましい。
【0048】
上記の組成を有するリチウムニッケル複合酸化物を作製する場合は、その原料となるニッケル化合物粉末は、ニッケルとその他遷移属との複合酸化物(ニッケル複合酸化物とも称する)または複合水酸化物(ニッケル複合水酸化物とも称する)の粉末となる。これら粉末は公知の方法に基づいて作製することができ、例えば、ニッケル複合水酸化物の粉末の場合はニッケル、コバルトまたはマンガン、および添加元素Nを共沈させることにより得ることができる。
【0049】
得られたニッケル複合水酸化物の粉末をさらに酸化焙焼することにより、コバルトまたはマンガンと添加元素Nとが酸化ニッケルに固溶しているニッケル複合酸化物が得られる。なお、ニッケル酸化物とその他添加元素の酸化物とを粉砕混合するなどの方法によっても作製することは可能である。上記の本発明の実施形態の製造方法で作製したリチウムニッケル複合酸化物をリチウムイオン二次電池用の正極活物に用いた場合は、品質が安定した高出力の二次電池となる。
【0050】
上記のリチウムニッケル複合酸化物の粉末からなるリチウムイオン二次電池用正極活物質を用いて、リチウムイオン二次電池の正極を作製する方法には限定はないが、例えば以下の方法により作製することができる。すなわち、まず粉末状の正極活物質、導電材、および結着剤を混合し、必要に応じてさらに活性炭を添加し、これを粘度調整等を目的とする溶剤とともに混練して正極合材ペーストを作製する。この正極合材ペーストを構成する上記原料の配合比は、リチウムイオン二次電池の性能を決定する要素となる。溶剤を除いた正極合材の固形分の全質量を100質量部とした場合、一般のリチウムイオン二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60~95質量部とし、導電材の含有量を1~20質量部とし、結着剤の含有量を1~20質量部とすることが望ましい。
【0051】
得られた正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、これを乾燥することで溶剤を飛散させる。その際、電極密度を高めるべく、必要に応じてロールプレス等により加圧してもよい。このようにして、シート状の正極を作製することができる。得られたシート状の正極は、目的とする電池の種類やサイズに合わせて適当な大きさに裁断等を行った後、電池の組み立て工程に供される。
【0052】
上記の導電剤としては、例えば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料などを用いることができる。また、結着剤としては、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。これら正極活物質、導電材および結着剤に、電気二重層容量を増加させるため必要に応じて活性炭を分散させ、これにより得た正極合材に結着剤を溶解する溶剤を添加する。この溶剤には、例えばN-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。溶剤が添加された正極合材は、一般的な混練機で混練するのが好ましく、これにより均質な正極合材ペーストを作製することができる。
【0053】
上記の正極の対極となる負極には、金属リチウムやリチウム合金等、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に結着剤を混合し、さらに溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅等の金属箔集電体の表面に塗布してから乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。上記の負極活物質としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂等の有機化合物焼成体、コークス等の炭素物質の粉状体を用いることができる。負極結着剤としては、正極同様、PVDF等の含フッ素樹脂等を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン等の有機溶剤を用いることができる。上記の正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなり、微少な孔を多数有する薄膜を用いることができる。
【0054】
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものであり、この有機溶媒には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等の環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトン等の硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル等のリン化合物等から選択した1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。一方、支持塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiN(CFSO等から選択した1種、あるいはそれらの複合塩を用いることができる。上記の非水系電解液は、さらにラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤等のうちの1種以上を含んでもよい。
【0055】
上記の正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成されるリチウムイオン二次電池は、円筒型、積層型等の種々な形状にすることができる。いずれの形状に組み立てる場合においても、セパレータを介して正極および負極を積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極側の集電体と外部に通ずる正極端子との間、および負極側の集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リード等を用いて接続し、電池ケース内に密閉状態となるように収容することでリチウムイオン二次電池を完成させることができる。
【0056】
本発明の実施形態の正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、高容量で高出力となる。特により好ましい形態で得られた本発明の実施形態による正極活物質を用いたリチウムイオン二次電池は、例えば、2032型コイン電池の正極に用いた場合、165mAh/g以上の高い初期放電容量と低い正極抵抗が得られ、さらに高容量で高出力である。また、熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
【0057】
なお、上記の正極抵抗は、例えば以下の方法で測定することができる。すなわち、電気化学的評価手法として一般的な交流インピーダンス法にて電池反応の周波数依存性について測定を行うと、図1のような溶液抵抗、負極抵抗と負極容量、および正極抵抗と正極容量に基づくナイキスト線図が得られる。電極における電池反応は、電荷移動に伴う抵抗成分と電気二重層による容量成分とからなり、これらを電気回路で表すと抵抗と容量の並列回路となり、電池全体としては溶液抵抗と負極、正極の並列回路を直列に接続した等価回路で表される。
【0058】
この等価回路を用いて測定したナイキスト線図に対してフィッティング計算を行い、各抵抗成分、容量成分を見積もることができる。正極抵抗は、得られるナイキスト線図の低周波数側の半円の直径と等しい。従って、作製した正極に対して交流インピーダンス測定を行い、得られたナイキスト線図に対し等価回路でフィッティング計算することで、正極抵抗を見積もることができる。次に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例
【0059】
以下に示す方法で正極活物質を生成し、得られた正極活物質から作製した正極を有する二次電池を組み立てて、その初期放電容量および正極抵抗を測定して電池性能を評価した。上記の電池性能の評価は、図2に示すような構成の2032型コイン電池1(以下、コイン型電池と称する)を作製して行った。すなわち、この図2に示すコイン型電池1は、略円筒形状のケース2と、このケース2内に収容された電極3とから構成されている。
【0060】
ケース2は、中空かつ一端に開口部を有する正極缶2aと、中空でかつ一端に開口部を有し、この開口部を上記の正極缶2aの開口部に対向するようにして正極缶2aの内側に配置される負極缶2bとからなり、このように負極缶2bと正極缶2aとを開口部同士対向させて配置することで負極缶2bと正極缶2aとによって電極3を収容する空間が形成される。電極3は、正極3a、セパレータ4および負極3bからなり、この順に正極缶2a側から並ぶように積層することで、正極3aは正極缶2aの内面に集電体5を介して当接し、負極3bは負極缶2bの内面に集電体5を介して当接する状態でケース2内に収容することができる。なお、集電体5は正極3aとセパレータ3cとの間にも介在している。
【0061】
正極缶2aと負極缶2bとの両縁部の間にはガスケット2cが設けられており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとが互いに非接触の状態を維持しながら相対的に移動しないように固定することができる。このガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
【0062】
上記の評価用のコイン型電池1は、以下の方法で製作した。すなわち、まず正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを乳鉢にてすり潰しつつ混合し、得られた混合物を100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。作製した正極3aは真空乾燥機中120℃で12時間乾燥してから用いた。
【0063】
負極3bには、体積平均粒径MV20μmの黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンの混合物を銅箔に塗布した負極シートを直径14mmの円盤状に打ち抜いたものを用いた。セパレータ4には膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiClOを支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
【0064】
これら正極3a、負極3b、セパレータ4および電解液を用いて、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で上述したコイン型電池1を組み立てた。作製したコイン型電池1の初期放電容量および正極抵抗を、以下の方法で測定して電池性能を評価した。
【0065】
初期放電容量は、コイン型電池1を製作してから24時間室温で放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cmとしてカットオフ電圧4.3Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。
【0066】
また、コイン型電池1を充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定すると、図1に示すようなナイキストプロットが得られる。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表されるため、このナイキストプロットに基づき等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。次に、上記の正極活物質に用いた本発明の実施例のリチウムニッケル複合酸化物について具体的に説明する。
【0067】
(実施例1)
原料のニッケル化合物粉末には、公知技術の晶析法により作成したニッケル複合水酸化物の粉末を用いた。すなわち、2mol/Lの硫酸ナトリウム水溶液を貯めた反応槽に、ニッケルとコバルトの物質量のモル比が88:9となるように調製した硫酸ニッケルおよび硫酸コバルトの2mol/L混合水溶液と、1mol/Lアルミン酸ナトリウム水溶液とを、ニッケルとコバルトとアルミニウムの物質量のモル比が88:9:3となるような投入量で攪拌しつつ連続的に滴下した。並行して、反応槽内の溶液のアンモニア濃度が5g/Lとなるように28%アンモニア水を添加し、さらに反応槽内のpHが11.5~12.5となるように40%水酸化ナトリウム水溶液を添加した。この時、目的とするニッケル複合水酸化物の粒度が得られるように反応槽内のpHを上記の40%水酸化ナトリウム水溶液の添加量で微調整しながら反応を進めた。
【0068】
生成したニッケル複合水酸化物を含むスラリーを反応槽からオーバーフローさせて回収し、これをブフナー漏斗を用いて濾過してケーキを得た。得られたケーキ1kgあたり1Lの40%水酸化ナトリウム水溶液と19Lの脱イオン水とを加え、30分間攪拌した後、ブフナー漏斗を用いて濾過してケーキを得た。得られたケーキ1kgあたり20Lの脱イオン水を加えて30分間攪拌した後、ブフナー漏斗にて濾過する洗浄処理をさらに2回繰り返し、ニッケル複合水酸化物ケーキを得た。得られたニッケル複合水酸化物ケーキを定置式熱風乾燥機に装入し、乾燥温度110℃で24時間かけて乾燥し、粉末状のニッケル複合水酸化物を得た。得られたニッケル複合水酸化物粉末は体積平均粒径MVが11.8μmであり、炭素品位は0.25質量%であった。
【0069】
もう一方の原料であるリチウム化合物粉末には水酸化リチウムを用いた。この水酸化リチウムは、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)を真空乾燥で無水化処理を施して無水水酸化リチウムとした後、これをジェットミルにて平均粒径MVが14.1μmとなるまで粉砕したものを用いた。なお、上記の粉末の体積平均粒径MVは、レーザ回折散乱法による粒度分布測定装置を用いて測定し、ニッケル複合水酸化物粉末の炭素品位は高周波燃焼-赤外線吸収法を用いて測定した。
【0070】
次に、上記の無水水酸化リチウム粉末とニッケル複合水酸化物粉末とを、リチウムとリチウム以外の遷移金属との物質量のモル比が1.020:1.000となるように量り取ってそれらを十分に混合した。得られた混合物を、内寸が280mm(L)×280mm(W)×90mm(H)のセラミックス製焼成容器に充填し、これを連続式焼成炉であるローラーハースキルンに装入して、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、炉内温度計で測定した焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で210分保持する温度パターンで焼成し、リチウムニッケル複合酸化物を合成した。
【0071】
次に、攪拌機付きの容器に貯めておいた電気伝導度1~10μS/cmの範囲内の15℃の純水1質量部に対して上記のリチウムニッケル複合酸化物を0.75質量部の割合で添加してスラリーとし、このスラリーを30分間撹拌した後、濾過により固形分を回収して、これをチャンバー内圧力0.1kPa以下の真空乾燥機に装入して機内温度110℃で12時間かけて乾燥した。このようにして試料1の正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物を得た。
【0072】
得られた試料1のリチウムニッケル複合酸化物の水洗処理前のリチウムメタル比(リチウムの物質量をリチウム以外の遷移金属元素の物質量で除した値)は1.030であり、水洗処理後のリチウムニッケル複合酸化物のリチウムメタル比は0.993であった。従って水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.964であり、0.95を上回っていた。この結果から、焼成時にほぼ化学量論通りに合成反応が進行してリチウムロスの少ないリチウムニッケル複合酸化物が生成されたと考えられる。
【0073】
得られた試料1のリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として使用することで作製した正極を有するコイン型電池1の電池特性を評価した結果、初期放電容量は203.8mAh/gであった。正極抵抗は、後述する実施例2~3を含めて作製した全ての試料の中で最も小さい正極抵抗を100とした相対値で表すと、115であった。
【0074】
さらに、無水水酸化リチウムの粉砕後粒度を14.1μmに代えてそれぞれ15.6μm、18.4μm、20.9μm、および25.3μmとした以外は上記の試料1の場合と同様にして、試料2~5のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、それらの水洗処理前後のリチウムメタル比の比を求めた。その結果、試料2~5の水洗処理前後のリチウムメタル比の比はそれぞれ0.964、0.961、0.958、および0.951であった。
【0075】
さらに試料1と同様の方法でコイン電池を作製し、電池特性を評価したところ、試料2では初期放電容量は200.9mAh/g、正極抵抗の相対値は140であり、試料3では初期放電容量は202.8mAh/g、正極抵抗の相対値は154であり、試料4では初期放電容量は200.3mAh/g、正極抵抗の相対値は205であり、試料5では初期放電容量は201.4mAh/g、正極抵抗の相対値は258であった。
【0076】
(実施例2)
実施例1と同様にして作成したニッケル複合水酸化物に対して、小型マッフル炉を用いて空気雰囲気中において焙焼温度400℃で5時間かけて焙焼し、ニッケル複合酸化物を生成した。得られたニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.8μmであり、炭素品位は0.21質量%であった。なお、無水水酸化リチウムには試料5と同じ平均粒径MV25.3μmのものを用いた。以降は実施例1と同様にして試料6のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、実施例1と同様に電池特性の評価を行った。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.950であり、初期放電容量は201.5mAh/g、正極抵抗の相対値は266であった。さらに小型マッフル炉を用いた焙焼時の焙焼温度を400℃に代えてそれぞれ500℃、650℃、700℃、および750℃にした以外は上記試料6の場合と同様にして試料7~10のリチウムニッケル複合酸化物を合成した。
【0077】
その結果、試料7ではニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.5μm、炭素品位が0.15質量%であり、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.958、初期放電容量は208.6mAh/g、正極抵抗の相対値は222であった。試料8ではニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.6μm、炭素品位が0.066質量%であり、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.963であり、初期放電容量は207.5mAh/g、正極抵抗の相対値は169であった。試料9ではニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.5μm、炭素品位は0.042質量%であり、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.964であり、初期放電容量は209.0mAh/g、正極抵抗の相対値は166であった。試料10ではニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.5μm、炭素品位は0.029質量%であり。水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.965であり、初期放電容量は207.8mAh/g、正極抵抗の相対値は154であった。
【0078】
(実施例3)
実施例1と同様にして作成したニッケル複合水酸化物に対して、小型マッフル炉を用いて空気雰囲気中において焙焼温度650℃で5時間かけて焙焼し、ニッケル複合酸化物を生成した。得られたニッケル複合酸化物は体積平均粒径MVが11.6μmであり、炭素品位は0.066質量%であった。なお、無水水酸化リチウムには試料3と同じ平均粒径MV18.4μmのものを用いた。
【0079】
これらを実施例1と同様の条件で混合し、さらに実施例1と同様にしてセラミックス製焼成容器に装入してローラーハースキルンで焼成したが、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中において最高焼成温度550℃で330分保持する条件で焼成した。このようにして試料11のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、実施例1と同様に電池特性の評価を行った。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.941であり、初期放電容量は197.6mAh/g、正極抵抗の相対値は386であった。
【0080】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から650℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度650℃で210分保持する焼成条件でリチウムニッケル複合酸化物を合成した。以降は実施例1と同様にして試料12のリチウムニッケル複合酸化物を作製し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.970であった。また、初期放電容量は208.7mAh/g、正極抵抗の相対値は109であった。
【0081】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から750℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度750℃で210分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料13のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.971であり、初期放電容量は209.8mAh/g、正極抵抗の相対値は100であった。
【0082】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から850℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度850℃で210分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料14のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.952であり、初期放電容量は199.9mAh/g、正極抵抗の相対値は254であった。
【0083】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度50容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で210分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料15のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.938であり、初期放電容量は196.9mAh/g、正極抵抗の相対値は400であった。
【0084】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度60容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で210分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料16のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.954であり、初期放電容量は201.8mAh/g、正極抵抗の相対値は251であった。
【0085】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度70容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で210分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料17のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.957であり、初期放電容量は202.6mAh/g、正極抵抗の相対値は226であった。
【0086】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で100分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料18のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.946であり、初期放電容量は198.5mAh/g、正極抵抗の相対値は311であった。
【0087】
ローラーハースキルンにおいて、酸素濃度80容量%の雰囲気ガス中で、焼成温度を600℃から765℃まで一定の昇温速度で約100分かけて昇温し、その後、最高焼成温度765℃で150分保持する条件で焼成した以外は上記試料12の場合と同様にして試料19のリチウムニッケル複合酸化物を合成し、電池特性を評価した。その結果、水洗処理前後のリチウムメタル比の比は0.953であり、初期放電容量は199.7mAh/g、正極抵抗の相対値は262であった。
【0088】
【表1】
【0089】
上記表1の結果および図3~4から明らかなように、水洗処理前後のリチウムメタル比の比と初期放電容量および正極抵抗には相関関係があり、水洗処理前後のリチウムメタル比の比が0.95を超えれば、放電容量が大きくかつ正極抵抗の小さい正極活物質を安定的に得られることが分かる。
【符号の説明】
【0090】
1 コイン型電池
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
4 セパレータ
5 集電体
図1
図2
図3
図4