(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-24
(45)【発行日】2024-07-02
(54)【発明の名称】硬化性シリコーン組成物、その硬化物、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20240625BHJP
C08K 5/549 20060101ALI20240625BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20240625BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240625BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240625BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240625BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240625BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K5/549
C09J183/07
C08J5/18 CFH
C09J7/30
C08K3/013
B32B27/00 L
B32B27/00 101
(21)【出願番号】P 2021511425
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2020012030
(87)【国際公開番号】W WO2020203307
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2019066557
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-274007(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030288(WO,A1)
【文献】特表2017-512224(JP,A)
【文献】国際公開第2018/084012(WO,A1)
【文献】特表2018-519369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09J 7/00-7/50
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A1)分子全体としてホットメルト性を有さず、SiO
4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の
40~90モル%含有するオルガノポリシロキサン樹脂
であって、
(A1-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO
4/2
で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の40~90モル%含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
および、
(A1-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO
4/2
で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の40~90モル%含有するオルガノポリシロキサン樹脂からなるオルガノポリシロキサン樹脂
の混合物であり、(A1-1)成分および(A1-2)成分を89.6:10.4~25:75の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有する25℃において液状の直鎖
状のオルガノポリシロキサン、
(B)シラトラン誘導体およびカルバシラトラン誘導体から選ばれる1種類以上の接着付与剤
であって、
下記構造式(1):
【化1】
{式(1)中、R
1
は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、R
2
は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4 -Si(OR5 )
x
R6
(3-x)
(式中、R4 は二価有機基であり、R5 は炭素原子数1~10のアルキル基であり、R6 は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、xは1、2、または3である。)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R
2
の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基であり、R
3
は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、アシロキシアルキル基、およびアルケニル基からなる群から選択される基である。}で表されるシラトラン誘導体、および、
下記構造式(2):
【化2】
{式(2)中、R
1
はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり、R
2
は同じかまたは異なる一般式:
【化3】
(式中、R
4
はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R
5
は一価炭化水素基であり、R
6
はアルキル基であり、R
7
はアルキレン基であり、R
8
はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R
3
は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体から選ばれる1種類以上である、接着付与剤、
(C)硬化剤、および
(D)機能性無機フィラー、
を含有してなり、
(D)成分の含有量が、組成物全体に対し
て10体積%以上であり、
25℃では固体で200℃以下の温度でホットメルト性を有することを特徴とする、硬化性シリコーン組成物。
【請求項2】
25℃における貯蔵弾性率が500MPa以下である硬化物を形成する事を特徴とする請求項1に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項3】
JIS K 6251-2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定の方法により測定される引張り伸び率が50%以上である硬化物を形成する事を特徴とする請求項1,2いずれかに記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項4】
(A2)成分が、
(A2-1)下記構造式:
R
4
3SiO(SiR
4
2O)
kSiR
4
3
(式中、各R
4は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のR
4の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである、請求項1~
3のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項5】
(A)成分が、
(A1)(A1-1)成分および(A1-2)成分を
89.6:10.4~25:75の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂 100質量部、
(A1-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO
4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の
40~90モル%含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
(A1-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO
4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の
40~90モル%含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2-1)下記構造式:
R
4
3SiO(SiR
4
2O)
kSiR
4
3
(式中、各R
4は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のR
4の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサン 10~200質量部
からなる混合物である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項6】
(A1)成分が平均一次粒子径が1~10μmである真球状の樹脂微粒子である請求項1~
5のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項7】
(C)成分が、以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
であり、本組成物の硬化に必要な量含有していることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項8】
(D)成分が補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、またはこれらの少なくとも2種の混合物である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項9】
粒状、ペレット状またはシート状である、請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物。
【請求項10】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物からなる、実質的に平坦な、厚さ10~1000μmの硬化性シリコーン組成物シート。
【請求項11】
請求項
10の硬化性シリコーン組成物シートである、フィルム状接着剤。
【請求項12】
請求項
10の硬化性シリコーン組成物シート、および
当該硬化性シリコーン組成物シートの片面または両面に、当該硬化性シリコーン組成物シートと対向する剥離面を備えたシート状基材を有する、剥離性積層体。
【請求項13】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる、硬化物。
【請求項14】
請求項
13に記載の硬化物の半導体装置用部材としての使用。
【請求項15】
請求項
13に記載の硬化物を有する半導体装置。
【請求項16】
硬化性シリコーン組成
物を、50℃を超えない温度条件下で混合することにより粒状化することを特徴とする、請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を粒状とする製造方法。
【請求項17】
下記工程(I)~(III)から少なくともなる硬化物の成型方法。
(I)請求項
9に記載のペレット状又はシート状の硬化性シリコーン組成物を100℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた液状の硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【請求項18】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、半導体素子のオーバーモールド成型及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程を含む、請求項
17の硬化物の成型方法。
【請求項19】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物を硬化させてなる硬化物により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程を含む、請求項
18の硬化物の成型方法。
【請求項20】
以下の工程を備えることを特徴とする、請求項
11に記載の硬化性シリコーン組成物シートの製造方法。
工程1:請求項1~
8のいずれか1項に記載の硬化性シリコーン組成物の各原料成分を50℃以上の温度で混合する工程
工程2:工程1で得た混合物を、加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便な製造方法で得ることができ、ホットメルト性を有し、かつ、難接着の基材に対しても強固に接着する粒状、ペレット、シートのいずれかの形態を取る硬化性シリコーン組成に関する。さらに、本発明は、当該のシリコーン組成物からなる硬化物、この硬化物の成型方法、この硬化物を備える半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性シリコーン組成物は、硬化して、優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、透明性を有する硬化物を形成することから、幅広い産業分野で利用されている。こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物は、一般に、他の有機材料と比較し変色しにくく、また、物理的物性の低下が小さいため、光学材料および半導体装置の封止剤としても適している。
【0003】
近年の半導体デバイス産業では難接着材料であるニッケルや金を基板として使用するのがトレンドであり、デバイスを封止するために使用される優れた耐熱性と低い線膨張係数を有した材料にこれらの基材に強固に接着する特性が求められている。本出願人は、特許文献1および特許文献2において、比較的柔らかく、柔軟性にすぐれた硬化物を得られる成型用のホットメルト性の硬化性シリコーン組成物を提案している。しかしながら、これらの組成物は、機能性無機フィラーを多量に含有する組成であるので、金やニッケル等の難接着性の基材に接着し難い場合があり、改善の余地を残している。
【0004】
一方、特許文献3にはホットメルト性を有しないシリコーン系接着剤にシラトラン誘導体を添加することで低温硬化時の接着性の改善を報告している。また、特許文献4の実施例には機能性無機フィラーを含まないホットメルト性のシリコーンにシラトラン誘導体を含むシラン系の接着付与剤を添加した接着剤組成物が開示されているが、一般的なシラン化合物とシラトラン誘導体を比較した時のシラトラン誘導体の優位性に関して、なんら記載も示唆もなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2018/030287号パンフレット
【文献】国際公開第2018/030286号パンフレット
【文献】特開2001-19933号公報
【文献】特開2006-274007号公報(特許4849814)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ホットメルト性を有し、機能性無機フィラーを大量に含有しても、溶融特性に優れ、取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、難接着材料に強く接着する硬化物を形成可能な硬化性シリコーン組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、このような硬化性シリコーン組成物を粒状、ペレット状、シート状のいずれかの形態で効率よく製造する方法を提供することにある。さらに、本発明は、こうした硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる半導体装置用部材、当該硬化物を有する半導体装置、および、硬化物の成型方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
鋭意検討の結果、本発明者らは、
(A1)分子全体としてホットメルト性を有さず、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有する25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)シラトラン誘導体およびカルバシラトラン誘導体から選ばれる1種類以上の接着付与剤、
(C)硬化剤、および
(D)機能性無機フィラー、
を含有してなり、
(D)成分の含有量が、組成物全体に対して少なくとも10体積%以上であり、
25℃では固体で200℃以下の温度でホットメルト性を有することを特徴とする、硬化性シリコーン組成物。により上記課題を解決できる事を見出し、本発明に到達した。なお、上記の硬化性シリコーン組成物は、ペレット状またはシート状であってよい。
【0008】
さらに、当該硬化性シリコーン組成物は、粒状、ペレット状またはシート状であってよい。
【0009】
上記の硬化性シリコーン組成物は、実質的に平坦な厚さ10~1000μmの硬化性シリコーン組成物シートの形態であってよい。
【0010】
また、上記の硬化性シリコーン組成物は、以下の構成を備える剥離性積層体に用いることができる。すなわち、上記の硬化性シリコーン組成物シート、および当該硬化性シリコーン組成物シートの片面または両面に、当該硬化性シリコーン組成物シートと対向する剥離面を備えたシート状基材を有する、剥離性積層体の形態であってよい。このような硬化性シリコーン組成物シートは、フィルム状またはシート状のシリコーン接着剤として使用してもよい。
【0011】
本発明の硬化性シリコーン組成物は硬化物の形態で利用可能であり、半導体装置用部材として利用することができる。
【0012】
本発明の硬化性シリコーン組成物およびその硬化物は、半導体装置に用いることができ、当該硬化物により封止材、光反射材等を形成してなる、パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤上に実装された半導体装置が提供される。特に、本発明の硬化性シリコーン組成物は溶融時のギャップフィル性に優れ、その硬化物は室温~高温における柔軟性に優れ、強靭であるため、いわゆるモールドアンダーフィルやウェハモールディングにより半導体素子が一括封止された半導体装置や、変形(折り曲げ等)を利用の前提とするフレキシブル回路基板上で本硬化物により半導体素子が封止された封止後半導体素子基盤が好適に提供される。
【0013】
本発明の硬化性シリコーン組成物の成型方法は、少なくとも以下の工程を含む。
(I)前記のペレット状またはシート状の硬化性シリコーン組成物を100℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程 又は 型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程; および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
なお、上記の成型方法は、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型を含み、本発明の硬化性シリコーン組成物はこれらの成型用材料として好適に用いられる。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物は、硬化物により、半導体素子のオーバーモールド及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程である、いわゆるモールドアンダーフィル方式や、半導体素子を搭載した半導体ウェハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙を充填するオーバーモールド成型であり、8インチは12インチなどの比較的大きなウェハを一括封止してもよいウェハモールディング方式の成型用材料として、好適に用いることができる。
【0014】
特に、本発明の硬化性シリコーン組成物、特に、ペレット状またはシート状である硬化性シリコーン組成物は、半導体基板(ウェハ含む)の大面積封止に利用できる。さらに、本発明の硬化性シリコーン組成物をシート状に成型してなるシートは、ダイアタッチフィルム、フレキシブルデバイスの封止、二つの違う基材を接着する応力緩和層等に使用することができる。
【0015】
同様に、本発明者らは、以下の工程を備えることを特徴とする、硬化性シリコーン組成物シートの製造方法を提供する。
工程1:上記の硬化性シリコーン組成物の各原料成分を50℃以上の温度で混合する工程
工程2:工程1で得た混合物を、加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
【発明の効果】
【0016】
本発明の硬化性シリコーン組成物は、ホットメルト性を有し、取扱い作業性および硬化特性に優れると共に、難接着性の基材に対しても強固に接着する硬化物を形成することができる。また、このような硬化性シリコーン組成物は、簡便な混合工程のみで生産することができ、効率よく製造することができる。また、本発明の硬化物は、半導体装置の部材として有用であり、本発明の成型方法を用いることで、これらの硬化物を用途に合わせて効率よく製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[硬化性シリコーン組成物]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、
(A1)分子全体としてホットメルト性を有さず、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有する25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
(B)シラトラン誘導体およびカルバシラトラン誘導体から選ばれる1種類以上の接着付与剤、
(C)硬化剤、および
(D)機能性無機フィラー、
を含有してなり、25℃では固体で200℃以下の温度でホットメルト性を有することを特徴とする。なお、本発明において、特に記載がない場合、「ホットメルト性を有する」とは軟化点が50℃以上であり、150℃において溶融粘度(好適には、1000Pa・s未満の溶融粘度)を有し、流動する性質を有することをいう。一方で、軟化点が200℃以上の場合、成形用途などの一般的な使用温度以上なので、「ホットメルト性は有さない」と定義する。
【0018】
以下、組成物の各成分および任意成分について説明する。なお、本発明において、「平均粒子径」とは別に定義しない限り、粒子の一次平均粒子径を意味するものとする。
【0019】
(A)成分は、本組成物の主剤であり、本組成物にホットメルト性を与える成分である。また、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性基を有するため、(C)成分である硬化剤により硬化する。硬化反応としてはヒドロシリル化反応又はラジカル反応などが挙げられる。は
【0020】
(A)成分中のヒドロシリル化反応性基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基、およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このヒドロシリル化反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基を有することが好ましい。
【0021】
(A)成分中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。
【0022】
また、(A)成分中のラジカル反応性基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基、4-アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3-メタクリロキシプロピル基、4-メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基;およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このラジカル反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。(A)成分は、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有することが好ましい。
【0023】
(A)成分中のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。特に、メチル基、水酸基が好ましい。
【0024】
本発明において、(A)成分は、(A1)成分であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂と(A2)成分である直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンとの混合物とする必要がある。これは、混合物とせずそれぞれの成分単体で使用してもホットメルト性を発現しないからである。
【0025】
すなわち、(A)成分は具体的には、
(A1)分子全体としてホットメルト性を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、および
(A2)25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するもの
の混合物である。以下、これらの成分について説明する。
【0026】
[(A1)成分]
(A1)成分は、(A2)成分と共に使用される本組成物の主剤の一つであり、単独ではホットメルト性を有しないSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂またはそれを含むオルガノポリシロキサン樹脂の混合物である。
【0027】
(A1)成分は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A1)成分である樹脂がそれ単独では200℃以下の温度において加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。(A1)成分において、このような物性は特に構造的に制限されるものではないが、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、後述する硬化物の加熱エージング(高温)下における耐着色性が低下する場合がある。好適には、(A1)成分中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基およびビニル基等のアルケニル基から選ばれる基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル~100モル%がメチル基であることが好ましく、80~100モル%がメチル基あることがより好ましく、88~100モル%がメチル基あり、その他のケイ素原子に結合した官能基がビニル基等のアルケニル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A1)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該(A1)成分中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0028】
(A1)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内にSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。これらの分岐シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、特に、40~90モル%の範囲であることが好ましい。また、Rは一価有機基であり、好適には炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、技術的効果の見地から、Rにはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。また、任意で、その生産工程において発生する揮発性成分が除去されていてもよい。当該除去の程度は、上記の200℃下で1時間暴露した時の質量減少率と同義であり、同質量減少率が2.0質量%以下となるように、オルガノポリシロキサン樹脂から揮発性の低分子量成分が除去されていることが特に好ましい。
【0029】
(A1)成分は炭素-炭素二重結合基を含む反応性官能基を含有することは必須ではなく、その場合、(A)成分の反応性官能基は後述の(A2)成分から供給されることになる。後述の(D)成分である機能性無機フィラーの含有量が多い場合、得られる硬化物の弾性率が高くなる傾向にあるため、(A1)は炭素-炭素二重結合基を含まない方が良く、逆に(D)成分の含有量が少ない場合は得られる硬化物の弾性率を好適な値とするために(A1)成分は炭素-炭素二重結合を含むことが好ましい。すなわち、(A1)成分は、下記の(A1-1)成分と、(A1-2)成分を組み合わせることで適宜炭素―炭素二重結合基の量を制御することがが好ましい。
【0030】
[(A1-1)成分]
本発明の、(A1-1)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有しない非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0031】
(A1-1)成分は分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、本成分を、(A1)成分の全部又は一部として、(A2)成分である直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンと所定の量的範囲で併用することで、組成物全体としてのホットメルト性を実現する成分である。
【0032】
(A1-1)成分は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A1-1)成分である樹脂がそれ単独では200℃以下の温度で加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味し、既に(A1)成分において説明したとおりである。
【0033】
好適には、(A1-1)成分中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル%以上がメチル基であることが好ましく、80モル%以上がメチル基あることがより好ましく、88モル%以上がメチル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A1-1)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該(A1-1)成分中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0034】
(A1-1)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有しないので、それ自体では、硬化物を形成しないが、組成物全体としてのホットメルト性の改善や硬化物に対する補強効果を有し、硬化性を有する(A)成分の一部として使用することができる。
【0035】
(A1-1)成分は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内に分岐シロキサン単位であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有ることを特徴とする。好適には、当該シロキサン単位は、全シロキサン単位の30モル%以上であり40モル%以上、特に、40~65モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0036】
好適には、(A1-1)成分は、下記平均単位式:
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(R2O1/2)e
(式中、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基;各R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0.20≦d≦0.65、0≦e≦0.05、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0037】
上記の平均単位式において、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。ここで、1分子中の全R1の70モル%以上がメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、88モル%以上がメチル基であることが、工業生産上および発明の技術的効果の見地から、特に好ましい。一方、R1はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、(A)成分自体がホットメルト性となって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。
【0038】
式中、R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該R2を含む官能基R2O1/2は、(A2-1-1)成分中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0039】
式中、aは、一般式:R1
3SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が低くなりすぎない。
【0040】
式中、bは、一般式:R1
2SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、bは0であってよく、かつ好ましい。
【0041】
式中、cは、一般式:R1SiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.70、好ましくは0≦c≦0.60を満たす。cが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつ好ましい。
【0042】
式中、dは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.20≦d≦0.65であることが必要であり、0.40≦d≦0.65であることが好ましく、0.50≦d≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能でき、得られる硬化物の機械的強度に優れ、かつ、組成物全体としてべたつきのない、取扱作業性の良好な組成物が実現できる。
【0043】
式中、eは一般式:R2O1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0044】
(A1-1)成分は、上記の特徴を有するオルガノポリシロキサン樹脂であるが、取り扱い性を向上させるために、微粒子化しても良い。具体的には、レーザー回折・散乱法等を用いて測定される平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子の形状が好ましい。かかる微粒子成分を用いることで、本組成物を粒状、ペレット状、シート状のいずれかの形態として生産する時の取り扱い作業性が向上する。また、微粒子状の(A1-1)成分を得る際に、後述の硬化反応性の(A1-2)成分を混合したものを粒子化してもよく、また、後述する(C)成分、例えば、ヒドロシリル化反応触媒等を(A1)成分と共に微粒子化してもよく、かつ、好ましい。
【0045】
上記のオルガノポリシロキサン樹脂を微粒子化する方法としては、例えば、前記オルガノポリシロキサンを、粉砕機を用いて粉砕する方法や、溶剤存在下において直接微粒子化する方法が挙げられる。粉砕機は限定されないが、例えば、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ターボミル、遊星ミルが挙げられる。また、前記シリコーンを溶剤存在下において直接微粒子化する方法としては、例えば、スプレードライヤーによるスプレー、あるいは2軸混練機やベルトドライヤーによる微粒子化が挙げられる。本発明においては、スプレードライヤーによるスプレーにより得られた真球状のホットメルト性オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を用いることが、室温での取り扱い性、製造時の効率および組成物の取扱い作業性の見地から特に好ましい。
【0046】
スプレードライヤー等の使用により、真球状で、かつ、平均一次粒子径が1~500μmである(A1-1)成分を製造することができる。なお、スプレードライヤーの加熱・乾燥温度は、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の耐熱性等に基づいて適宜設定する必要がある。なお、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の二次凝集を防止するため、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の温度をそのガラス転移温度以下に制御することが好ましい。このようにして得られたオルガノポリシロキサン樹脂微粒子は、サイクロン、バッグフィルター等で回収できる。
【0047】
均一な(A1-1)成分を得る目的で、上記工程において、硬化反応を阻害しない範囲内で溶剤を用いてもよい。溶剤は限定されないが、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が例示される。
【0048】
[(A1-2)成分]
(A1-2)成分は、好適には、下記平均単位式:
(R1
3SiO1/2)a(R1
2SiO2/2)b(R1SiO3/2)c(SiO4/2)d(R2O1/2)e
(式中、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全R1の1~12モル%がアルケニル基であり;各R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0≦d≦0.65、0≦e≦0.05、但し、c+d>0.20、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0049】
上記の平均単位式において、各R1は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中の全R1の1~12モル%がアルケニル基で、好ましくは1分子中の全R1の2~10モル%がアルケニル基である。アルケニル基の含有量が前記範囲の下限未満では、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が不十分となる場合がある。他方、アルケニル基の含有量が前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、各R1はメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、発明の技術的効果の見地から、R1はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、(A1-2)成分自体がホットメルト性となって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物において、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0050】
式中、R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該R2を含む官能基R2O1/2は、(A1-2)成分中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0051】
式中、aは一般式:R1
3SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度、伸び率等)が低くなりすぎない。
【0052】
式中、bは一般式:R1
2SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。
【0053】
式中、cは、一般式:R3SiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.80、好ましくは0≦c≦0.75を満たす。cが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない、タックフリーの組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつ好ましい。
【0054】
式中、dは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.00≦d≦0.65であることが必要であり、0.20≦d≦0.65であることが好ましく、0.25≦d≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現でき、得られる硬化物は十分な柔軟性を有するためである。
【0055】
本発明において、cまたはdは0であってよいが、c+d>0.20であることが必要である。c+dの値が前記下限未満では、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現できず、本発明の技術的効果が十分に達成できない場合がある。
【0056】
式中、eは一般式:R2O1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0057】
(A1-2)成分は、上記の特徴を有するオルガノポリシロキサン樹脂であるが、(A1-1)成分同様、取り扱い性を向上させるために、微粒子化しても良い。具体的には、レーザー回折・散乱法等を用いて測定される平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子の形状が好ましく、かかる微粒子成分を用いることで、本組成物を粒状、ペレット状、シート状のいずれかの形態として生産する時の取り扱い作業性が向上する。また、微粒子状の(A1-2)成分を得る際に、後述の硬化反応性の(A1-1)成分を混合したものを粒子化してもよく、また、後述する(C)成分、例えば、ヒドロシリル化反応触媒等を(A1)成分と共に微粒子化してもよく、かつ、好ましい。なお、微粒子化の方法は(A1-1)成分と同様である。
【0058】
また、(A1-1)成分と(A1-2)成分の量的比率は、後述の(D)成分の配合量に寄るのは前述の通りである。(A1-1)成分と(A1-2)成分の好適な質量比は100:0~25:75の範囲であってよく、100:0~60:40の範囲であることが好ましく、より好ましくは100:0~55:45である。(A1-1)成分はそれ自体硬化性を有しないが、本組成物においては(A1-2)成分を少量添加して併用することで、本組成物から成る硬化物の高温においての弾性率を制御することが可能であり、本組成物に後述の機能性無機フィラーを添加する場合は、その添加量と(A1-2)成分の使用量を適宜調節することで、好適な弾性率並びに柔軟性を達成することが可能となる。例えば、機能性無機フィラーの添加量が多い場合や可能な限り得られる硬化物の弾性率を低減させたい場合などは、(A1-2)成分は添加せず、(A1-1)成分のみで組成物を配合することも可能である。
【0059】
[(A1)成分における揮発性の低分子量成分の除去]
(A1-1)成分や(A1-2)成分はその生産工程において、揮発性の低分子量成分が生成する。具体的にはM4Qの構造体であり、Mユニット(R3
3SiO1/2)とQユニット(SiO4/2)からなるオルガノポリシロキサン樹脂を重合するときに副生成物として現れる。本構造体は本発明の組成物からなる硬化物の硬度を著しく下げる効果がある。当該のオルガノポリシロキサン樹脂は相溶性の高い有機溶剤の存在下重合され、かかる有機溶剤を減圧乾燥等により取り除くことで個体状のオルガノポリシロキサン樹脂を得るが、M4Qの構造体は当該のオルガノポリシロキサン樹脂と相互溶解性が高く、有機溶剤を取り除くような乾燥条件では除去することはできない。本構造体は200℃以上の温度に短時間暴露すると除去できる事は知られていたが、半導体等の基材と一体成型した後に、高温に暴露して除去すると硬化物の体積減少並びに顕著な硬度上昇が起こり、成型物の寸法が変化し、反りなどが発生してしまう。このため、本発明の用途に適用するためには基材との成型工程の前、つまり、原料の時点でM4Qの構造体を除去しておく必要がある。
【0060】
本構造体を除去する方法としては二軸混錬機にて前述の有機溶剤と一緒に取り除く方法や、後述の方法にて粒子状のオルガノポリシロキサン樹脂とした後に、オーブンなどで乾燥して取り除く方法などが挙げられる。
【0061】
より具体的には、(A1-1)成分や(A1-2)成分は有機溶剤の存在下で生産され、揮発成分は合成中に副生成物として現れる。得られた粗原料であるオルガノポリシロキサン樹脂を、200度程度の高温で短時間処理することで揮発成分は除去できるので、200℃程度に設定した二軸混錬機などで(A1-1)成分や(A1-2)成分から有機溶剤と揮発成分を同時に除去することが可能である。また、(A1-1)成分や(A1-2)成分を球状の粉体として取り扱う場合、スプレードライヤーにて有機溶剤を除去することで粉体化は可能であるが、この処方では揮発成分を取り除くことはできない。得られた粉体を120℃程度の低温で24時間処理すると粉体が凝集化することなく揮発成分を除去することができる。
【0062】
[(A2)成分]
(A2)成分は、(A1)成分と共に使用される本組成物の主剤の一つであり、25℃において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するものである。このような硬化反応性の鎖状オルガノポリシロキサンは、前述の固体状オルガノポリシロキサン樹脂と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。
【0063】
(A2)成分は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要であり、(A1)成分が炭素-炭素二重結合を有しない場合、(A)成分の硬化反応性基は(A2)成分から供給される。炭素-炭素二重結合は、ヒドロシリル化反応性、ラジカル反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、前記同様の基が例示され、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0064】
(A2)成分は、25℃(室温)において液状の直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、室温で固体状の(A1)成分と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。その構造は、少数の分岐のシロキサン単位(例えば、一般式:R4SiO3/2で表されるT単位(R4は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるQ単位)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよいが、好適には、
(A2-1)下記構造式:
R4
3SiO(SiR4
2O)kSiR4
3
(式中、各R4は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のR4の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。好適には、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0065】
式中、各R4は独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中のR4の少なくとも2個がアルケニル基、好ましくはビニル基である。また、各R4はメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、全てのR4のうち、少なくとも2個がアルケニル基であり、残りのR4がメチル基であることが好ましい。なお、発明の技術的効果の見地から、R4はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。特に好適には、分子鎖両末端に一つずつビニル基等のアルケニル基を有し、他のR4がメチル基であるものが好ましい。
【0066】
式中、kは、20~5,000、好ましくは30~3,000、特に好ましくは45~800の数である。kが前記の範囲の下限以上であれば、室温でべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。他方、kが前記の範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。
【0067】
[非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を含む混合物]
上記の(A1-1)成分、(A1-2)成分および(A2-1)成分からなる本発明の(A)成分として使用する場合、(A1)(A1-1)成分および(A1-2)成分を100:0~25:75の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂(総和) 100質量部に対して、(A2-1)成分の使用量が、10~200質量部の範囲が好ましい。ここで、硬化反応性基である炭素-炭素二重結合は(A1-2)成分及び(A2-2)成分から供給されるが、官能基の量は後述の(D)成分の種類及び添加量により適宜制御する必要がある。特に、組成物中の(D)成分の添加量が30体積%以上の場合、組成物中のシリコーン成分100gあたりの0.05~1.50モル%の炭素-炭素二重結合を含んでいることが好ましい。前記下限未満では、硬化性および硬化速度が低下する場合がある。また、前記上限を超えると、特に、当該組成物に機能性フィラーを大量に配合した場合に、硬化物が著しく脆化してしまう場合がある。
【0068】
上記の(A1-1,-2)成分と(A2)成分の組み合わせについては限定されるものではないが、後述の(D)成分の種類、添加量により適宜調整できる。(D)成分の添加量が多い場合、得られる組成物の溶融特性を向上させるために、(A1-1,2)成分か(A2)成分のどちらかは比較的分子量の低いもの使用するのが好ましいが、低分子量の(A2)成分を使用すると(A1)成分の種類に問わず、得られる硬化物の柔軟性及び強靭性は低下する傾向にある。このため、低分子量の(A1-1,-2)と高分子量の(A2)成分を組み合わせることが好ましい。一方で、(D)成分の添加量が少ない場合は、高分子量の(A1-1,-2)と高分子量の(A2)成分を組み合わせることで得られる組成物の表面のべたつきを押さえることができる。
【0069】
(B)成分は本発明の特徴である接着付与剤であり、シラトラン誘導体およびカルバシラトラン誘導体から選ばれる1種類以上の成分である。当該成分は、本組成において、特異的に難接着性の基材に対する硬化接着性を劇的に改善することができる。
【0070】
シラトラン誘導体は、上記の特許文献3(特開2001-019933号公報)に開示されており、
下記構造式(1):
【化1】
(1)
{式(1)中、R1 は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、R2 は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4 -Si(OR5 )x R6(3-x)(式中、R4 は二価有機基であり、R5 は炭素原子数1~10のアルキル基であり、R6 は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、xは1、2、または3である。)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R2 の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基であり、R3 は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、アシロキシアルキル基、およびアルケニル基からなる群から選択される基である。}で表されるシラトラン誘導体である。
【0071】
式中のR1は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、特に、R1としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。また、上式中のR2は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4-Si(OR5)xR6
(3-x)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R2の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基である。R2のアルキル基としては、メチル基等が例示される。また、R2のアルコキシシリル基含有有機基において、式中のR4は二価有機基であり、アルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基が例示され、特に、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシペンチレン基であることが好ましい。また、式中のR5は炭素原子数1~10のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基である。また、式中のR6は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは、メチル基である。また、式中のxは1、2、または3であり、好ましくは、3である。
【0072】
このようなR2のアルコキシシリル基含有有機基としては、次のような基が例示される。
-(CH2)2Si(OCH3)3-(CH2)2Si(OCH3)2CH3
-(CH2)3Si(OC2H5)3-(CH2)3Si(OC2H5)(CH3)2
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3
-CH2O(CH2)3Si(OCH3)2CH3
-CH2O(CH2)3Si(OC2H5)2CH3
-CH2OCH2Si(OCH3)3-CH2OCH2Si(OCH3)(CH3)2
【0073】
上式中のR3は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、およびアシロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一種の基であり、R3の一価炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基が例示され、R3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示され、R3のグリシドキシアルキル基としては、3-グリシドキシプロピル基が例示され、R3のオキシラニルアルキル基としては、4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基が例示され、R3のアシロキシアルキル基としては、アセトキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基が例示される。特に、R3としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であることが好ましく、さらには、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、メチル基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基が特に好適に例示される。
【0074】
このようなシラトラン誘導体として、次のような化合物が例示される。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【0075】
カルバシラトラン誘導体は、特開平10-195085号公報に記載の方法により、アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを反応させる際、特に、アルコール交換反応により環化させてなる、一般式:
【化13】
{式中、R
1はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり、R
2は同じかまたは異なる一般式:
【化14】
(式中、R
4はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R
5は一価炭化水素基であり、R
6はアルキル基であり、R
7はアルキレン基であり、R
8はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R
3は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体である。このようなカルバシラトラン誘導体として、以下の構造で表される1分子中にケイ素原子結合アルコキシ基またはケイ素原子結合アルケニル基を有するカルバシラトラン誘導体が好適に例示される。
【化15】
(式中、Rcはメトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基である。)
【0076】
(B)成分の使用量は、特に制限されるものではないが、難接着基材への接着性改善の見地から、好適には、組成物全体の0.1~1.0質量%の範囲であり、0.2~1.0質量%の範囲がより好ましい。また、(B)成分の配合量は、(A1)成分の和 100質量部に対して、0.1~50質量部の範囲であってよく、0.1~40質量部の範囲であってよい。
【0077】
[(C)成分]
(C)成分は、上記の(A)成分を硬化させるための硬化剤であり、具体的には、以下の(c1)または(c2)から選ばれる1種類以上の硬化剤である。なお、これらの硬化剤は2種類以上を併用してもよく、たとえば、(c1)成分と(c2)成分を共に含む硬化系であってもよい。
(c1)有機過酸化物
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒
【0078】
(c1)有機過酸化物は加熱により、上記の(A)成分を硬化させる成分であり、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、および過酸化カーボネート類が例示される。
【0079】
過酸化アルキル類としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、tert-ブチルクミル、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0080】
過酸化ジアシル類としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイドが例示される。
【0081】
過酸化エステル類としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオデカノエート、tert-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルパーオキシル-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシイソブチレート、ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert-アミルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシ-3,5,5―トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-ブチルパーオキシトリメチルアディペートが例示される。
【0082】
過酸化カーボネート類としては、ジ-3-メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4-tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチルパーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネートが例示される。
【0083】
この有機過酸化物は、その半減期が10時間である温度が90℃以上、あるいは95℃以上であるものが好ましい。このような有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリパーオキソナンが例示される。
【0084】
(c1)有機過酸化物の含有量は限定されないが、(A)成分(100質量部)に対して、0.05~10質量部の範囲内、あるいは0.10~5.0質量部の範囲内であることが好ましい。
【0085】
(c2)分子内に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンおよびヒドロシリル化反応触媒は、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンがヒドロシリル化反応触媒の存在下、(A)成分中の炭素-炭素二重結合と付加反応(ヒドロシリル化反応)することにより、組成物を硬化させる成分である。
【0086】
架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造は特に限定されず、直鎖状、分岐鎖状、環状または樹脂状であってよい。すなわち、(c2)成分は、HR2SiO1/2で表されるハイドロジェンオルガノシロキシ単位(DH単位、Rは独立に一価有機基)を主たる構成単位として、その末端にHR2SiO1/2で表されるハイドロジェンジオルガノシロキシ単位(MH単位、Rは独立に一価有機基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであってよい。特に、後述する成型工程以外の用途の場合、本硬化性シリコーン組成物が前記のDH単位等からなる鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであっても、実用上十分な硬化が可能である。
【0087】
一方、本硬化性シリコーン組成物を成形工程に使用する場合、本組成物中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性官能基の含有量が少ないので、硬化速度およびその成形性および硬化性の見地から、オルガノハイドロジェンポリシロキサンはRSiO3/2で表されるモノオルガノシロキシ単位(T単位、Rは一価有機基又はケイ素原子結合水素原子)またはSiO4/2で表されるシロキシ単位(Q単位)である分岐単位を含み、かつ、分子内に少なくとも2個のHR2SiO1/2で表されるハイドロジェンジオルガノシロキシ単位(MH単位、Rは独立に一価有機基)を有する、分子末端にMH単位を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂が好ましい。
【0088】
特に好適なオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均単位式:
(R5
3SiO1/2)l(R6
2SiO2/2)m(R6SiO3/2)n(SiO4/2)p(R2O1/2)q
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂である。
【0089】
式中、各R5は同じか又は異なる、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基もしくは水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも2個のR5は水素原子である。水素原子以外のR5である一価炭化水素基は、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。工業的見地からは、メチル基またはフェニル基が好ましい。
【0090】
式中、R6は脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~10の一価炭化水素基であり、上記の一価炭化水素基と同様の基が例示される。一方、R2は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、R2のアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該R2を含む官能基R2O1/2は、同成分中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0091】
式中、l、m、n及びpは、以下を満たす数である:0.1≦l≦0.80、0≦m≦0.5、0≦n≦0.8、0≦p≦0.6、0≦q≦0.05、但し、n+p>0.1、かつl+m+n+p=1。ここで、本組成物を成形工程で使用する場合、(d2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂は具体的には、MHMT樹脂、MHMTTH樹脂、MHMTQ樹脂、MHMQ樹脂、MHMTTHQ、MHQ樹脂が好ましい。
【0092】
特に好適には、(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、
(H(CH3)2SiO1/2)l1(SiO4/2)p1
で表される、MHQ樹脂である。ここで、l1+p1=1であり、0.1≦l1≦0.80かつ、0.20≦p1≦0.90であることが好ましい。
【0093】
同様に、(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖末端がケイ素原子結合水素原子またはトリメチルシロキシ基により封鎖された、直鎖状のジオルガノポリロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサンまたはジオルガノポリシロキサン-オルガノハイドロジェンシロキサンコポリマーを含むものであってもよい。これらの直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのシロキサン重合度は特に限定されるものではないが、2~200の範囲であり、5~100の範囲であることが好ましい。
【0094】
(c2)成分の一部であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であり、(A)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基(例えば、ビニル基等のアルケニル基)に対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5以上となる量であり、0.5~20の範囲となる量が好ましい。特に(c2)成分が上記のオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂を含む場合、(A)成分中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基に対する、当該オルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂中の珪素原子結合水素原子のモル比が0.5~20の範囲となる量、あるいは1.0~10の範囲となる量であることが好ましい。
【0095】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒としては、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒が例示され、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンであることが好ましく、当該錯体のアルケニルシロキサン溶液の形態で添加することが好ましい。加えて、取扱作業性および組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0096】
(c2)成分の一部であるヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、組成物全体に対して、金属原子が質量単位で0.01~500ppmの範囲内となる量、0.01~100ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0097】
特に好適な(c2)成分は、(c2-1)前記平均単位式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン樹脂およびヒドロシリル化反応触媒を少なくとも含むものである。
【0098】
上記のヒドロシリル化反応触媒を(C)成分の一部として用いる時は、本硬化性シリコーン組成物の保存安定性の観点から(A1-1)成分や(A1-2)成分などのオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を生産するときに、当該微粒子中に含有させておくことが好ましい。ただし、微粒子を構成する混合物全体が単独で硬化反応性とならないことが好ましい。
【0099】
本発明の硬化性シリコーン組成物は上記の(A)~(C)成分に加えて、組成物全体の室温におけるべたつきの問題を改善でき、加熱溶融(ホットメルト)後の高温下において硬化した場合、硬化物に所望の機能を有し、室温から高温で硬質性および強靭性に優れた硬化物を与える見地から、さらに(D)機能性無機フィラーを含有する。
【0100】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は機能性無機フィラーであり、軟化点を有さないか又は50℃以下では軟化しない少なくとも1種のフィラーであることが好ましく、本組成物の取扱い作業性を向上し、本組成物の硬化物に機械的特性やその他の特性を付与する成分であってもよい。(D)成分としては、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示され、無機フィラーが好ましい。この無機フィラーとしては、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示される。また、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラーが例示される。なお、これらのフィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、紡錘状、扁平状、針状、不定形等であってよい。
【0101】
本組成物を封止剤、保護剤、接着剤、光反射材等の用途で使用する場合には、硬化物に機械的強度を付与し、保護性または接着性を向上させることから、(D)成分として補強性フィラーを配合することが好ましい。この補強性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、石英、炭酸カルシウム、ケイ藻土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛が例示される。また、これらの補強性フィラーを、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等のシロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。さらに、補強性フィラーとして、メタケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ロックウール、ガラスファイバー等の繊維状フィラーを用いてもよい。
【0102】
(D)成分はどの様な粒子径のものを用いても良いが、組成物にギャップフィル性を付与したい場合は、平均粒子径が10μm以下のものを使用するのが好ましく、他方で、機能性付与の観点から(D)成分の添加量を可能な限り上げたい場合は、フィラーのパッキング性を向上させるために、異なる粒子径のものを組み合わせる事が好ましい。
【0103】
本組成物において、得られる組成物の溶融特性を改善するために、(D)成分の表面処理を行っても良い。(D)成分は特定の表面処理剤、特に、(D)成分全体の質量に対して、0.1~2.0質量%、0.1~1.0質量%、0.2~0.8質量%の表面処理剤により処理されてなることが好ましい。上記の処理量の表面処理剤により(D)成分を処理することにより、組成物中に高体積%での(D)成分を安定的に配合することができる利点がある。また、表面処理方法は任意であり、機械力を用いた均一混合法(乾式)、溶媒による湿式混合法等、所望の方法を用いることができる。
【0104】
これらの表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等であってよいが、特に、以下に述べるシリコーン系の表面処理剤であることが好ましい。なお、(D)成分の表面処理剤として、メチルトリメトキシシランやフェニルトリメトキシシラン等のシラン系の表面処理剤を選択した場合、組成物全体のホットメルト性を損なう場合があるほか、(D)成分を前記の体積%の含有量まで安定的に配合できない場合がある。また、オクチル基等の長鎖アルキル基を有するアルキルトリアルコキシシランを表面処理剤として選択した場合、組成物のホットメルト性および(D)成分の配合安定性を維持できる傾向があるが、本発明の組成物を硬化して得られる硬化物の強度が悪化し、ひび割れや成型不良の原因となる場合がある。
【0105】
一方、(B)成分であるシラトラン誘導体およびカルバシラトラン誘導体はこれらのシラン化合物と同様にアルコキシ基を有しているが、ここで述べている表面処理剤と混在しても組成物の溶融特性や硬化物の強度を悪化させる影響はなく、上記の表面処理剤と併用または混在させても悪影響を生じない利点がある。
【0106】
ここで、表面処理剤である有機ケイ素化合物の例として、シラン、シラザン、シロキサン、又は同様物などの低分子量有機ケイ素化合物、及びポリシロキサン、ポリカルボシロキサン、又は同様物などの有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーである。好ましいシランの例は、いわゆるシランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤の代表例としては、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン又は同様物など)、有機官能基含有トリアルコキシシラン(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、又は同様物など)である。好ましいシロキサン及びポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化(single-terminated)ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化ジメチルビニル単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化有機官能基単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル両末端化(doubly terminated)ポリジメチルシロキサン、有機官能基両末端化ポリジメチルシロキサン、又は同様物が挙げられる。シロキサンを使用するとき、シロキサン結合の数nは、好ましくは2~150の範囲である。好ましいシラザンの例は、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシラザン、又は同様物である。好ましいポリカルボシロキサンの例は、ポリマー主鎖内にSi-C-C-Si結合を有するポリマーである。
【0107】
特に好適なシリコーン系の表面処理剤は、例えば、分子内に少なくとも一つのポリシロキサン構造および加水分解性シリル基を有するシリコーン系の表面処理剤が挙げられる。最も好適には、分子内に少なくとも一つのポリシロキサン構造および加水分解性シリル基を有するシリコーン系の表面処理剤の使用が好ましく、
構造式(1):
R´n(RO)3-nSiO-(R´2SiO)m-SiR´n(RO)3-n
または
構造式(2):
R´3SiO-(R´2SiO)m-SiR´n(RO)3-n
で表される直鎖状のアルコキシシリル末端を有するオルガノポリシロキサン類が例示できる。式中、Rは水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基(=メチル基、エチル基またはプロピル基)であり、R´は各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。nは0~2の範囲の数であり、mは2~200の範囲の数であり、mは2~150の範囲の数でもよい。
【0108】
(D)成分は、前述の(A1-1,-2)成分に該当しないシリコーン微粒子を含んでもよく、応力緩和特性等を改善、あるいは所望により調整することができる。シリコーン微粒子は、非反応性のシリコーンレジン微粒子およびシリコーンエラストマー微粒子が挙げられるが、柔軟性または応力緩和特性の改善の見地から、シリコーンエラストマー微粒子が好適に例示される。
【0109】
シリコーンエラストマー微粒子は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物である。シリコーンエラストマー微粒子は、ヒドロシリル化反応やシラノール基の縮合反応等によるジオルガノポリシロキサンの架橋反応により調製することができ、中でも、側鎖又は末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖又は末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー微粒子は、球状、扁平状、及び不定形状等種々の形状を取りうるが、分散性の点から球状であることが好ましく、中でも真球状であることがより好ましい。こうしたシリコーンエラストマー微粒子の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「トレフィルEシリーズ」、「EPパウダーシリーズ」、信越化学工業社製の「KMPシリーズ」等を挙げることができる。
なお、シリコーンエラストマー微粒子は、表面処理がされていてもよい。表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、シリカ、酸化チタン等の無機酸化物、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等が挙げられる。
【0110】
また、本組成物をLEDの波長変換材料に用いる場合には、光半導体素子からの発光波長を変換するため、(D)成分として蛍光体を配合してもよい。この蛍光体としては、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。酸化物系蛍光体としては、セリウムイオンを包含するイットリウム、アルミニウム、ガーネット系のYAG系緑色~黄色発光蛍光体;セリウムイオンを包含するテルビウム、アルミニウム、ガーネット系のTAG系黄色発光蛍光体;セリウムやユーロピウムイオンを包含するシリケート系緑色~黄色発光蛍光体が例示される。また、酸窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するケイ素、アルミニウム、酸素、窒素系のサイアロン系赤色~緑色発光蛍光体が例示される。窒化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するカルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、ケイ素、窒素系のカズン系赤色発光蛍光体が例示される。硫化物系蛍光体としては、銅イオンやアルミニウムイオンを包含するZnS系緑色発色蛍光体が例示される。酸硫化物系蛍光体としては、ユーロピウムイオンを包含するY2O2S系赤色発光蛍光体が例示される。本組成物では、これらの蛍光体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0111】
さらに、本組成物には、硬化物に熱伝導性または電気伝導性を付与するため、熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーを含有してもよい。この熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーとしては、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の金属化合物;グラファイト、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末が好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末が好ましい。
【0112】
(D)成分の含有量は限定されないが、得られる硬化物への機能性付与の観点から組成物全体の少なくとも10体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは30体積%以上、特に好適には30~90体積%の範囲内である。
【0113】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、ホットメルト性の微粒子、硬化遅延剤や接着付与剤を含有してもよい。
【0114】
(A)成分以外のホットメルト性の微粒子としては、各種のホットメルト性の合成樹脂、ワックス類、脂肪酸金属塩等から選ばれる1種類以上が使用できる。当該ワックス成分は、高温(150℃)において低い動粘度を呈し、流動性に優れた溶融物を形成する。また、前記(A)~(D)成分と併用することにより、本組成物からなる溶融物内のワックス成分は、高温下で組成物全体に速やかに広がることにより、溶融した組成物が適用された基材面と組成物全体の粘度を低下させると共に、基材および溶融組成物の表面摩擦を急激に低下させ、組成物全体の流動性を大幅に上昇させる効果を呈する。このため、他の成分の総量に対して、ごく少量添加するだけで、溶融組成物の粘度および流動性を大きく改善することができる。
【0115】
ワックス成分は、上記の滴点及び溶融時の動粘度の条件を満たす限り、パラフィン等の石油系ワックス類であってもよいが、本発明の技術的効果の見地から、脂肪酸金属塩やエリスリトール誘導体の脂肪酸エステルからなるホットメルト成分であることが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、イソノナン酸等の高級脂肪酸の金属塩やペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、グリセリントリ-18-ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトールフルステアレートが特に好ましい。ここで、上記の脂肪酸金属塩の種類も特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;または亜鉛塩が好適に例示される。
【0116】
ワックス成分として、特に好適には、遊離脂肪酸量が5.0%以下、特に好ましくは4.0%以下であり、0.05~3.5%の脂肪酸金属塩やエリスリトール誘導体である。このような成分として、例えば、少なくとも1種以上のステアリン酸金属塩やが例示される。具体的には、ステアリン酸カルシウム(融点150℃)、ステアリン酸亜鉛(融点120℃)、およびステアリン酸マグネシウム(融点130℃)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(融点60-70℃)、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル(融点55-61℃)、ペンタエリスリトールフルステアレート(融点62-67℃)等から選ばれる、融点が150℃以下のホットメルト成分の使用が最も好ましい。
【0117】
ワックス成分の使用量は、組成物全体を100質量部とした場合、その含有量が0.01~5.0質量部の範囲であり、0.01~3.5質量部、0.01~3.0質量部であってよい。ワックス成分の使用量が前記の上限を超えると、本発明の硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の接着性および機械的強度が不十分となる場合がある。また、使用量が前記の下限未満では、加熱溶融時の十分な流動性が実現できない場合がある。
【0118】
硬化遅延剤としては、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。この硬化遅延剤の含有量は限定されないが、本組成物に対して、質量単位で、10~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0119】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0120】
[硬化物の貯蔵弾性率]
具体的には、上記組成物を硬化してなる硬化物は、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が500MPa以下である。かかる硬化物は柔軟であり、半導体基盤等の基材への密着性と追従性に優れ、かつ、近年導入が進んでいるフレキシブル半導体基盤のように変形を前提とした半導体素子の封止用途であっても、封止した半導体素子の破損あるいは剥離、ボイド等の欠陥の発生が抑制される。なお、特に高い伸びおよび変形に対する追従性が求められる用途にあっては、25℃における貯蔵弾性率(G')の値が400MPa以下、さらには300MPa以下であることが好ましい。
【0121】
[硬化物の引っ張り伸び率]
さらに、本発明の組成物を硬化してなる硬化物は、JIS K 6251-2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定の方法により測定される引張り伸び率が30%以上である必要がある。かかる硬化物は柔軟であり、半導体基盤等の基材への密着性と追従性に優れ、かつ、近年導入が進んでいるフレキシブル半導体基盤のように変形を前提とした半導体素子の封止用途であっても、封止した半導体素子の破損あるいは剥離、ボイド等の欠陥の発生が抑制される。なお、特に高い伸びおよび変形に対する追従性が求められる用途にあっては、引張り伸び率を40%以上、さらには50%以上であることが好ましい。
【0122】
[本組成物の使用]
本組成物はその製造工程により、粒状、ペレット状、シート状のいずれかの形態を取ることができる。ペレット状として使用する場合、粒状とした本組成物を打錠成型することで効率良く生産することが可能である。なお、「ペレット」は、「タブレット」とも言うことがある。ペレットの形状は限定されないが、通常、球状、楕円球状あるいは円柱状である。また、ペレットの大きさは限定されないが、例えば、500μm以上の平均粒子径または円相当径を有する。
【0123】
本組成物はシート状に成型して使用しても良い。例えば、平均厚みが100~1000μmの硬化性シリコーン組成物からなるシートは、ホットメルト性を有し、高温下で加熱硬化性を有するので、特にコンプレッション成型等に用いる場合、取扱作業性および溶融特性に優れる点で有利である。この様なシート状の組成物は前記方法で得られた硬化性粒状組成物を低温で一軸または二軸の連続混練機により一体化した後に、2本ロールなどを通して所定の厚みにして生産しても良い。
【0124】
[積層体およびフィルム接着剤としての使用]
本組成物はシート状にして使用することができ、特に、剥離層を備える2枚のフィルム状基材間に、上記の硬化性シリコーン組成物からなるシート状部材を含む構造を有する、積層体として使用可能である。
【0125】
このような剥離性積層体の製造方法は特に制限されないが、
工程1:上記の硬化性シリコーン組成物の構成成分を混合する工程
工程2:工程1で得た混合物を、加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
を備える硬化性シリコーンシートの製造方法により達成することができ、任意で工程4等において、冷却又は温度調節機能を有するロールを使用してもよく、工程4の後に、得られた硬化性シリコーンシートを含む積層体を裁断する工程を有していてもよい。
【0126】
フィルム状基材の種類は特には限定されるものではなく、ポリエステルフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム等を適宜使用することができる。シート状基材は非多孔性であることが好ましい。
【0127】
剥離層は、硬化性シリコーン組成物からなるシート状部材をフィルム状基材から容易に剥離するために必要な構成であり、剥離ライナー、セパレーター、離型層或いは剥離コーティング層と呼ばれることもある。好適には、剥離層は、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、又は、フルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明の硬化反応性シリコーン粘着剤組成物又はその硬化物からなる接着材層と付着しにくい基材それ自体であってもよい。特に本発明の積層体においては、剥離層として、フルオロシリコーン系剥離剤を硬化させてなる剥離層の使用が好ましい。
【0128】
上記の積層体は、例えば、硬化性シリコーン組成物からなるシート状部材を被着体に適用後に、当該未硬化状態のシート状部材を、フィルム状基材から剥離することにより使用することができる。
【0129】
ここで、硬化性シリコーン組成物からなるシート状部材は、厚みが1mm以下であり、フィルム状接着剤であってよい。すなわち、前記の積層体は、基材フィルムにより保持された剥離性のフィルム状接着剤を含むものであってよく、かつ、好ましい。フィルム状接着剤は、ホットメルト性を有するため、半導体部材の仮固定等に用いる接着剤であってよく、ダイアタッチフィルムとして使用してもよい。
【0130】
また、硬化性シリコーン組成物からなるシート状部材をそのままコンプレッション成型やプレス成型などで、基材と一体成型しても良く、この時、片面のフィルム状基材を残したまま成型を行い、成型時の金型への付着を防ぐ離型フィルムとして使用しても良い。
【0131】
本組成物は、25℃において非流動性である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、ペレットまたはタブレット等に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、表面粘着性が低いからである。
【0132】
本組成物の軟化点は100℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0133】
本組成物は高温・高圧下で(すなわち成型工程において)急激に粘度が低下する傾向があり、有用な溶融粘度の値としては同様の高温・高圧下で測定した値を用いることが好ましい。従って、本組成物の溶融粘度はレオメーターなどの回転粘度計で測定するよりも高化式フローテスター(島津製作所(株)製)を用いて高圧下測定することが好ましい。具体的には本組成物は、150℃の溶融粘度が200Pa・s以下、より好ましくは150以下であることが好ましい。これは、本組成物をホットメルト後、25℃に冷却した後の基材への密着性が良好であるからである。
【0134】
[粒状の硬化性シリコーン組成物の製造方法]
本組成物は、(A)成分~(D)成分、さらにその他任意の成分を、(A)成分の軟化点未満の温度で粉体混合することにより粒状の組成物として製造することができる。本製造方法で用いる粉体混合機は限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーが例示され、好ましくは、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーである。
【0135】
[硬化性シリコーンシートの製造方法]
本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、ホットメルト性を有するものであり、オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤および機能性フィラーを含む硬化性シリコーン組成物からなることを特徴とし、本発明の製造方法は、以下の工程1~4を含むものである。
工程1:硬化性シリコーン組成物の構成成分を混合する工程
工程2:工程1で得た混合物を、50℃以上の温度にて加熱溶融しながら混練する工程
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程
工程4:工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程
ここで、「ホットメルト性を有する」とは軟化点が50℃~200℃の範囲内であり、加熱により軟化ないし流動する性質を有することをいう。また、本発明にかかる硬化性シリコーンシートは、その構成成分であるオルガノポリシロキサン樹脂のホットメルト性に関わらず、オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤および機能性フィラーからなる混合物がホットメルト性を有すればよい。
【0136】
[工程1]
上記の工程1は硬化性シリコーン組成物の構成成分である、オルガノポリシロキサン樹脂(好適には微粒子の状態)、硬化剤および機能性フィラーを含む硬化性粒状シリコーン組成物の混合工程である。これら各成分については、上記のとおりである。
【0137】
工程1により与えられる混合物は、硬化性粒状シリコーン組成物であり、混合物全体として、ホットメルト性を有する。一方、当該混合物は、25℃において非流動性である。ここで、非流動性とは、無負荷の状態で変形・流動しないことを意味し、好適には、ペレットまたはタブレット等に成型した場合に、25℃かつ無負荷の状態で変形・流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成型した本組成物を置き、無負荷または一定の加重をかけても、実質的に変形・流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での形状保持性が良好で、表面粘着性が低いからである。
【0138】
工程1により与えられる混合物の軟化点は200℃以下であり、150℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、組成物の変形量を測定した場合、高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0139】
工程1により与えられる混合物の軟化点が200℃以下であり、後述する工程2において混合物全体を当該混合物の軟化点以上の温度に加熱することにより、混合物を加熱溶融して一定の流動性を与えることができる。当該軟化物または溶融物を成型することで硬化性粒状シリコーン組成物からなり、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを得ることができる。
【0140】
オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤および機能性フィラー、さらにその他任意の成分を、混合する工程は、特に制限されるものではないが、混合物全体、好適には、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子の軟化点未満の温度で粉体混合することにより製造することができる。本製造方法で用いる粉体混合機は限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーが例示され、好ましくは、ラボミルサー、小型粉砕機、ヘンシェルミキサーである。
【0141】
[工程2]
工程2は、工程1で得た混合物を、加熱溶融しながら混練する工程であり、加熱溶融性を有する混合物をその軟化点以上の温度、好適には、50℃~200℃の温度範囲で加熱混練することで、組成物全体が溶融乃至軟化し、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子、硬化剤および機能性フィラーを全体に均一分散することができる。当該混合物を、工程3を経て工程4において、当該混合物をシート状に加圧成型した場合、一回の加圧で均一な薄層状の成型シートを形成することができ、成型不良やシート字体の亀裂を回避できる実益がある。一方、温度が前記下限未満では、軟化が不十分となって、機械力を用いても各成分が全体に均一分散した溶融乃至軟化した混合物を得ることが困難となる場合があり、このような混合物を工程3を経て工程4において、当該混合物をシート状に加圧成型しても、均一な薄層状の成型シートを形成できず、シートの破損・亀裂の原因となる場合がある。逆に、温度が前記上限を超えると、硬化剤が混合時に反応して、全体が著しい増粘又は硬化してホットメルト性を失い、硬化物を形成してしまう場合があるため、好ましくない。このため、(C)成分にヒドロシリル化触媒を使用する場合は熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を使用することが好ましい。
【0142】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、後述する工程3において事前に仮成型を行った後に剥離フィルム上に積層することができ、かつ好ましい、具体的には、工程2で得た加熱溶融後の混合物の150℃での高化式フローテスターにより測定される溶融粘度が1~1,000Pasの範囲であれば、工程3において、仮成型を行うことができる。
【0143】
一方、工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、流動性に乏しい場合、工程2において、工程1で得た混合物を、その軟化点以上の温度で溶融混練して、均一な組成物の形態を得た後、仮成型を行うことなく、工程3において剥離フィルム上に積層してよい。
【0144】
工程2における混合装置は限定されず、加熱・冷却機能を備えたニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、2ロールミル、3ロールミル、ロスミキサー、ラボプラストミル等の回分(バッチ)式、加熱・冷却機能を備えた単軸押出機、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置であればよく、特に限定されないが、処理時間の効率とせん断発熱の制御能力に応じて選択される。処理時間の点で考えると、単軸押出機、2軸押出機等連続式の加熱混練装置であってもよく、ラボプラストミル等のバッチ式の混合機であってもよい。ただし、硬化性シリコーンシートの生産効率の見地から、単軸押出機、2軸押出機等連続式の加熱混練装置が好ましく使用される。
【0145】
[工程3]
工程3は、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層する工程であり、工程4において加圧成型するための予備工程である。工程2で得た混合物をフィルム間に挟み込んだ積層体を形成することで当該フィルム上からロール延伸による加圧成型を行って、シート状の成型物を得ることができ、かつ、成型後には剥離面を利用して当該シート状の成型物からフィルムのみを除去することができる。
【0146】
工程2で得た加熱溶融後の混合物は2枚のフィルム間に積層する。得られる硬化性シリコーンシートの使用形態によるが、2枚のフィルムは共に剥離面を有することが好ましく、工程3において、工程2で得た混合物は各々のフィルムの剥離面の間に積層されることが特に好ましい。このような積層形態をとる事で、工程4における加圧成型、その後の任意の裁断を経て、薄層状の硬化性シリコーンシートが剥離性フィルム間に挟持された、両面から剥離可能な積層シートを得ることができ、使用時には、形成した硬化性シリコーンシートを破損する懸念なく、両面のフィルムを引き剥がして硬化性シリコーンシートのみを露出させることができる。
【0147】
工程3で使用するフィルムの基材は特には限定されるものではなく、板紙,ダンボール紙,クレーコート紙,ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙,合成樹脂フィルム・シート,天然繊維布,合成繊維布,人工皮革布,金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム・シートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、PEN等の透明材料が好適である。
【0148】
フィルムの厚さは特に制限されないが、通常5~300μm程度である。
【0149】
フィルムは少なくとも1つの剥離層を備えており、当該剥離層が工程2で得た混合物と接触していることが好ましい。これにより、工程3および工程4を経て、加圧成型されたホットメルト性の硬化性シリコーンシートをフィルムから容易に剥離することができる。剥離層は剥離ライナー、セパレーター、離型層或いは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、又は、フルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する剥離層、基材表面に物理的に微細な凹凸を形成させたり、本発明にかかるホットメルト性の硬化性シリコーンシートと付着しにくい基材それ自体であってもよい。
【0150】
工程3において、工程2で得た混合物を、2枚のフィルム間に積層される。その工程は特に制限されるものではないが、工程2で得た混合物は、一方のフィルムの剥離層上に吐出乃至塗布されることで供給され、当該混合物上から、他方のフィルムの剥離層を貼り合わせることで積層体が形成される。この際、連続的な硬化性シリコーンシートの製造工程において、各フィルムは回転式のロールを介して工程2の混合物の供給位置に運搬され、フィルム間への積層操作が行われる。
【0151】
工程3における工程2で得た混合物のフィルム間への供給量は、その製造速度、スケールに応じて設計することができる。一例として、1~10kg/時間の供給量で、工程2で得た混合物のフィルム間に供給することができるが、いうまでもなく、これに限定されるものではない。ただし、工程3において、工程2で得た混合物をフィルム間に積層する量は、工程4において設計している硬化性シリコーンシートの平均厚みに応じて決定する必要があり、かつ、工程4において圧延加工が可能な厚みであることが必要である。
【0152】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、工程3において、工程2で得た加熱溶融後の混合物は、ダイを用いてフィルム状に成型しながら吐出され、フィルム間に積層されることが好ましい。ここで、ダイは当該混合物を仮成型するために使用され、その種類や仮成型時の厚みは特に制限されるものではないが、T型ダイを用いて、100~2000μm(=2mm)の範囲の厚みを有する略シート状となるように仮成型することができ、かつ、好ましい。
【0153】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合、上記の仮成型後に、工程4の前工程としてまたは工程4において、工程3で得た積層体全体を冷却または温度調節する工程を含むことが好ましい。これは、加熱溶融物を冷却して固体状にすることで、工程4における加圧成型を効果的に行うためである。当該冷却工程は特に制限されるものではないが、冷却ロール等によりフィルム上に供給乃至積層された混合物を空冷あるいは冷却溶媒等の冷却手段を用いて-50℃~室温の範囲内で冷却することで行うことができる。なお、温度調節の詳細については、工程4において説明する。
【0154】
他方、工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、流動性に乏しい場合、工程3において、半固体状の混合物を、仮成型を行うことなく、フィルム上に供給し、積層してよい。
【0155】
[工程4]
工程4は、上記の工程3で得た積層体をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーンシートを成型する工程であり、フィルム上から工程2で得た混合物を加圧延伸し、均一な硬化性シリコーンシートの形態に成型する工程である。
【0156】
工程4における圧延加工は、工程3で得た積層体に対して、ロール圧延等の公知の圧延方法を用いて行うことができる。特に、ロール圧延の場合、ロール間の隙間を調整することで、所望の厚さの硬化性シリコーンシートを設計することができる利点があり、例えば、平均厚みが10~2000μmの範囲でロール間の隙間を一定に調整して圧延することで、平坦性に優れ、かつ、上記のシート表面およびシート内部における欠陥の極めて少ない硬化性シリコーンシートを得ることができる。より詳細には、ロール圧延の場合、目的とするオルガノポリシロキサン硬化物フィルムの平均厚みに対して1.5~4.0倍の範囲でロール間の隙間が調整されていることが特に好ましい。
【0157】
工程4により延伸を行うことにより、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの硬化性シリコーンシートを得ることができる。工程2における加熱溶融後の混合物を、工程3により剥離性フィルム間に積層した形態でロール延伸することにより、低欠陥かつ剥離による取扱作業性に優れる、ホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートを含む剥離性積層体を得ることができる。
【0158】
[工程4における温度調節]
工程4において、工程3で得た積層体をロール間で延伸する場合、当該ロールがさらに、温度調節機能を備え、ロール圧延時に積層体全体の温度調節、必要に応じて加熱または冷却を行うことが好ましい。当該温度調節により、ロール間の間隙を安定して保ち、得られるホットメルト性の硬化性シリコーンシートの平坦性および均一性(膜厚の均一性)を改善できる実益がある。具体的な温度調節の範囲は、フィルムの耐熱性や硬化性シリコーンシートの厚さ(設計厚み)、その反応性等に応じて適宜設計可能であるが、概ね、5~150℃の範囲内である。
【0159】
[裁断工程]
工程4により、剥離性フィルム間にホットメルト性の硬化性シリコーンシートが介装された剥離性積層体を得ることができるが、任意により、当該硬化性シリコーンシートを含む積層体を裁断する工程を有してよい。また、当該硬化性シリコーンシートは、巻取り装置により巻取る工程を有してもよい。これにより、所望のサイズのホットメルト性の硬化性シリコーンシートを含む剥離性積層体を得ることができる。
【0160】
[積層体]
以上の工程により得られる積層体は、オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤および機能性フィラーからなり、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmのホットメルト性を有する硬化性シリコーンシートが、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に積層された構造を備える、積層体である。なお、当該フィルムは、共に剥離面を備えてもよく、かつ、好ましい。
【0161】
[硬化性シリコーンシート]
本発明の製造方法により得られる硬化性シリコーンシートは、オルガノポリシロキサン樹脂、硬化剤および機能性フィラーからなる硬化性シリコーン組成物であり、ホットメルト性を有し、加熱溶融性の粘着材として使用することができる。特に、当該硬化性シリコーンシートは、成形性、ギャップフィル性及び粘着力に優れ、ダイアタッチフィルムやフィルム接着剤として使用することができる。また、コンプレッション成型用またはプレス成型用の硬化性シリコーンシートとしても好適に使用することができる。
【0162】
具体的には、本発明の製造法により得られた硬化性シリコーンシートは、剥離性フィルムから引き剥がした後に、半導体等の所望の部位に配置し、凹凸や間隙に対するギャップフィル性を生かしたフィルム接着層を被着体に形成して、被着体間の仮固定、配置、及び、貼り合わせを行い、さらに、当該硬化性シリコーンシートを150℃以上に加熱して、被着体間に当該硬化性シリコーンシートの硬化物により接着させてもよい。なお、剥離性フィルムは、硬化性シリコーンシートを加熱して硬化物を形成させてから剥離してもよく、当該硬化性シリコーンシートの用途および使用方法に応じて剥離のタイミングを選択してよい。
【0163】
当該硬化性シリコーンシートはホットメルト性のため、最終硬化前に、当該シートを加熱することで、柔軟化乃至流動化し、例えば、被着体の被着面に凹凸があっても、隙間なく凹凸や間隙を充填して、接着面を形成することができる。当該硬化性シリコーンシートの加熱手段としては、例えば各種の恒温槽や、ホットプレート、電磁加熱装置、加熱ロール等を用いることができる。より効率的に貼合と加熱を行うためには、例えば電熱プレス機や、ダイアフラム方式のラミネータ、ロールラミネータなどが好ましく用いられる。
【0164】
[硬化物の成型方法]
本組成物は、次の工程(I)~(III)から少なくともなる方法により硬化することができる。
(I)本組成物を100℃以上に加熱して、溶融する工程;
(II)前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を金型に注入する工程、又は型締めにより金型に前記工程(I)で得られた硬化性シリコーン組成物を行き渡らせる工程;および
(III)前記工程(II)で注入した硬化性シリコーン組成物を硬化する工程
【0165】
本組成物は、半導体素子のオーバーモールド及びアンダーフィルを一度に行う被覆工程(いわゆる、モールドアンダーフィル法)を含む成型方法に好適に用いることができる。さらに、本組成物は、上記の特性により、単独又は複数の半導体素子を搭載した半導体ウエハ基板の表面を覆い、かつ、半導体素子の間隙が当該硬化物により充填されるようにオーバーモールド成型する被覆工程(いわゆる、ウェハモールディング)を含む成型方法に好適に用いることができる。
【0166】
上記工程において、トランスファー成型機、コンプレッション成型機、インジェクション成型機、補助ラム式成型機、スライド式成型器、二重ラム式成型機、または低圧封入用成型機等を用いることができる。特に、本発明組成物は、トランスファー成型およびコンプレッション成型により硬化物を得る目的で好適に利用できる。
【0167】
最後に、工程(III)において、工程(II)で注入(適用)した硬化性シリコーン組成物を硬化する。なお、(C)成分として有機過酸化物を用いる場合には、加熱温度は150℃以上、あるいは170℃以上であることが好ましい。
【0168】
半導体等の保護部材として好適であることから、本組成物を硬化して得られる硬化物の25℃におけるタイプDデュロメータ硬さが10以上であることが好ましい。なお、このタイプDデュロメータ硬さは、JIS K 6253-1997「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に準じてタイプDデュロメータによって求められる。
【0169】
[組成物の用途]
本組成物は、ホットメルト性を有し、溶融(ホットメルト)時の流れ性、取扱い作業性および硬化性が優れているので、半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;SiC、GaN等のパワー半導体用の封止剤やアンダーフィル剤;発光ダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタ、レーザーダイオード等の光半導体用の封止剤や光反射材;電気・電子用の接着剤、ポッティング剤、保護剤、コーティング剤として好適である。また、本組成物は、ホットメルト性を有するので、トランスファー成型、コンプレッション成型、あるいはインジェクション成型用の材料としても好適である。特に、成型時にモールドアンダーフィル法やウェハモールディング法を用いる半導体用の封止剤として用いることが好適である。さらに、本組成物をシート状にしたものは硬化性のフィルム接着剤や線膨張係数の違う2種類の基材の間の応力の緩衝層として使用する事ができる。
【0170】
[硬化物の用途]
本発明の硬化物の用途は特に制限されるものではないが、本発明組成物がホットメルト性を有し、成形性、ギャップフィル特性に優れ、かつ、硬化物は上記の室温における柔軟性、高い応力緩和特性、曲げ伸び率等を有する。このため、本組成物を硬化してなる硬化物は、半導体装置用部材として好適に利用することができ、半導体素子やICチップ等の封止材、光半導体装置の光反射材、半導体装置の接着剤・結合部材として好適に用いることができる。
【0171】
本発明の硬化物からな部材を備えた半導体装置は特に制限されるものではないが、特に、パワー半導体装置、光半導体装置およびフレキシブル回路基盤に搭載された半導体装置であることが好ましい。
【実施例】
【0172】
本発明のホットメルト性の硬化性シリコーン組成物およびその製造方法を実施例と比較例により詳細に説明する。なお、式中、Me、Viは、それぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。また、各実施例、比較例の硬化性シリコーン組成物について、その軟化点及び溶融粘度を以下の方法で測定した。また、硬化性シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製し、各種基材接着力を以下の方法で測定した。結果を表1に示した。
【0173】
[硬化性シリコーン組成物の軟化点]
硬化性シリコーン組成物をφ14mm×22mmの円柱状のペレットに成型した。このペレットを25℃~100℃に設定したホットプレート上に置き、100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いた後、該ペレットの変形量を測定した。高さ方向の変形量が1mm以上となった温度を軟化点とした。
【0174】
[溶融粘度]
硬化性シリコーン組成物の150℃での溶融粘度は高化式フローテスターCFT-500EX(株式会社島津製作所製)により、100kgfの加圧下、直径0.5mmのノズルを用いて測定した。
【0175】
[ダイシェア強度]
25mm×75mmの各種基材に、硬化性シリコーン組成物を約500mgづつ4ヶ所に設置した。次に、この組成物に厚さ1mmの10mm角のガラス製チップを被せ、150℃の温度条件で1kgの板により熱圧着させした状態で2時間加熱して硬化させた。その後、室温に冷却し、シェア強度測定装置(西進商事株式会社製のボンドテスターSS-100KP)によりダイシェア強度を測定した。
【0176】
[貯蔵弾性率]
硬化性シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製した。この硬化物の-50℃から250℃までの貯蔵弾性率をレオメーターARES(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて測定し、25℃における値を読み取った。表1に、25℃における測定値を示す。
【0177】
[引張伸び率]
硬化性シリコーン組成物を150℃で2時間加熱して硬化物を作製した。この硬化物の引張伸び率を、JIS K 6251-2010「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方」に規定の方法により測定した。
【0178】
以下、参考例1、2に示す方法で、ヒドロシリル化反応触媒を含むオルガノポリシロキサン樹脂を調製し、そのホットメルト性の有無を軟化点/溶融粘度の有無により評価した。また、参考例4~6に示す方法で当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を調製した。なお、参考例において、ヒドロシリル化反応触媒である白金錯体に用いる1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサンは、「1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン」と記述する。
【0179】
[参考例1]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me2ViSiO1/2)0.05(Me3SiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.375gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(1)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(1)は200℃まで加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0180】
[参考例2]
1Lのフラスコに、25℃において白色固体状で、平均単位式:
(Me3SiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂の55質量%-キシレン溶液 270.5g、および白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(白金金属の含有量=約4000ppm) 0.375gを投入し、室温(25℃)で均一に攪拌して、白金金属として質量単位で10ppm含有するオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を調製した。また、このオルガノポリシロキサン樹脂(2)は200℃まで加熱しても軟化/溶融せず、ホットメルト性を有していなかった。
【0181】
[参考例3:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)]
参考例1で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(1)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の樹脂微粒子を得た。この微粒子を120℃に設定したオーブンにて24時間エージングし真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、また、この微粒子を200℃に1時間暴露したところ、その加熱減量は0.7wt%であった。
【0182】
[参考例4:非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)]
参考例2で調製したオルガノポリシロキサン樹脂(2)のキシレン溶液を50℃においてスプレードライヤーを用いたスプレー法によりキシレンを除去しながら粒子化し、真球状の樹脂微粒子を得た。この微粒子を120℃に設定したオーブンにて24時間エージングし真球状の非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)を調製した。この微粒子を光学顕微鏡で観測したところ、粒子径が5~10μmであり、また、この微粒子を200℃に1時間暴露したところ、その加熱減量は0.8wt%であった。
【0183】
[実施例1]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 60.2g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 7.0g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.8g、
式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 0.65g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)ビニルシラトラン 1.1g、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)273.0g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0184】
[実施例2]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 60.2g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 7.0g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.8g、
式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 0.65g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
ビス(トリメトキシシリルプロポキシメチル)アリルシラトラン 1.1g、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)273.0g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0185】
[実施例3]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 56.4g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 10.3g、
式:
ViMe
2SiO(Me
2SiO)
800SiViMe
2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 33.3g、
式:
Me
3SiO(MeHSiO)
7(Me
2SiO)
6.5SiMe
3
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.57g、
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.3モルとなる量}、
以下の構造式で表されるカルバシラトラン誘導体 1.1g
【化16】
、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)205.0g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0186】
[比較例1]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 60.2g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 7.0g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.8g、
式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 0.65g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
25℃における粘度が30mPa・sである分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマーと3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの縮合反応物
1.1g、平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)273.0g、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0187】
[比較例2]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=0質量%) 60.2g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 7.0g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 32.8g、
式:
(HMe2SiO1/2)0.67(SiO4/2)0.33
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンレジン(ケイ素原子結合水素原子の含有量=0.95質量%) 0.65g
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.1モルとなる量}、
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 1.1g、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)273.0g、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0188】
[比較例3]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 56.4g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 10.3g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 33.3g、
式:
Me3SiO(MeHSiO)7(Me2SiO)6.5SiMe3
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.57g、
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.3モルとなる量}、
(Me2ViSiO1/2)0.2(MeEpSiO2/2)0.25(PhSiO3/2)0.55(HO1/2)0.005
で表されるエポキシ基含有ポリシロキサン 1.1g、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)205.0g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0189】
[比較例4]
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(2)(ビニル基含有量=0質量%) 56.4g、
非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(1)(ビニル基含有量=1.91質量%) 10.3g、
式:
ViMe2SiO(Me2SiO)800SiViMe2
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 33.3g、
式:
Me3SiO(MeHSiO)7(Me2SiO)6.5SiMe3
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン 1.57g、
{オルガノポリシロキサン樹脂微粒子粒子(1)および分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン中のビニル基1モルに対して、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子が1.3モルとなる量}、
N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン 1.1g、
平均粒子径0.44μmのアルミナ(住友化学製のAES-12)205.0g、
1-エチニル-1-シクロヘキサノール(本組成物に対して質量単位1000ppmとなる量を小型粉砕機に一括投入し、室温(25℃)で1分間攪拌を行い、均一な粒状の硬化性シリコーン組成物を調製した。また、この組成物の軟化点等の測定結果を表1に示す。
【0190】
【0191】
[総括]
本発明にかかる実施例1~3の硬化性シリコーン組成物は良好なホットメルト性を有し、どの様な基材に対しても強固に接着し、かつ、適度な柔軟さを備えた硬化物を形成した。このため、これらの硬化性シリコーン組成物を用いて得られる硬化物は、金やエポキシガラスなどが使用されることが多い半導体デバイスの封止に好適に使用できることが期待される。
【0192】
一方、本発明の組成上の要件を満たさない比較例1~4にあっては、アルミニウムには良好な接着力を示したが、比較的難接着基材とされるニッケル、金、エポキシガラスに対しては強固に接着しなかった。また、比較例1,3などのシラトラン誘導体以外のシラン化合物を用いた場合、溶融特性が悪化した。これは、比較例1、3における接着付与剤が機能性フィラーの表面処理に対して悪影響を及ぼした結果であると考察される。
【0193】
<製造例1>
上記実施例1等の粒状にした硬化性シリコーン組成物を80℃に加熱しながら、二軸押出機を用いて加熱溶融混練し、半固体状の軟化物の形態で、剥離性フィルム(株式会社タカラインコーポレーション社製、ビワライナー)上に供給量5kg/時間となるように供給し、2枚の剥離性フィルム間に積層する。続いて、当該積層体を、ロール間で延伸することで、厚さ500μmのホットメルト性の硬化性シリコーンシートが2枚の剥離性フィルム間に積層された積層体を形成させ、-15℃に設定した冷却ロールにより全体を冷却する。当該積層体において、剥離性フィルムを分離することにより、平坦かつ均質なホットメルト性の硬化性シリコーンシートを得ることができる。
【0194】
<製造例2>
上記実施例1等の粒状にした硬化性シリコーン組成物を80℃に加熱しながら、二軸押出機を用いて加熱溶融混練し、T型ダイ(開口寸法:800μm×100mm、80℃加熱)により略シート状に成型しながら、剥離性フィルム(株式会社タカラインコーポレーション社製、ビワライナー)上に供給量5kg/時間となるように供給し、-15℃に設定した冷却ロールにより全体を冷却した後に、2枚の剥離性フィルム間に積層した。続いて、当該積層体を、ロール間で延伸することで、厚さ500μmのホットメルト性の硬化性シリコーンシートが2枚の剥離性フィルム間に積層された積層体を形成する。当該積層体において、剥離性フィルムを分離することにより、平坦かつ均質なホットメルト性の硬化性シリコーンシートを得ることができる。