(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】亀裂検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/22 20060101AFI20240626BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20240626BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
G01B11/22 Z
G01N21/956 A
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2021013537
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍太郎
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-76651(JP,A)
【文献】特開2017-133997(JP,A)
【文献】特開2019-158811(JP,A)
【文献】特開2011-191285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00 - 11/30
G01N 21/84 - 21/958
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出装置であって、
前記被加工物の実質屈折率を取得する屈折率取得手段と、
前記被加工物に検出光を照射したときに前記被加工物にて反射された前記検出光の反射光に基づき、前記亀裂が形成された前記被加工物の上面高さ位置を検出する上面検出手段と、
前記屈折率取得手段が取得した前記実質屈折率と、前記上面検出手段が検出した前記上面高さ位置とに基づいて、前記被加工物の下面高さ位置を検出する下面検出手段と、
前記下面検出手段が検出した前記下面高さ位置を基準位置として、前記被加工物の内部に形成された前記亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出手段と、
を備える亀裂検出装置。
【請求項2】
前記検出光を前記被加工物に向けて集光する集光レンズと、
前記集光レンズにより集光される前記検出光の集光点を前記被加工物の厚さ方向に移動させる集光点移動手段と、
前記被加工物からの前記検出光の反射光を受光する光検出手段と、
を備え、
前記屈折率取得手段は、前記亀裂が形成される前の前記被加工物に向けて前記集光レンズで集光し、かつ前記集光点移動手段により前記検出光の集光点を前記被加工物の厚さ方向に移動させた場合の前記光検出手段の受光結果に基づき、前記実質屈折率を求める、
請求項1に記載の亀裂検出装置。
【請求項3】
前記屈折率取得手段は、前記光検出手段によって検出される前記反射光の2つのピーク位置の差を示す前記集光点の移動量に基づき、前記実質屈折率を求める、
請求項2に記載の亀裂検出装置。
【請求項4】
前記屈折率取得手段は、前記集光点の移動量をdとし、前記被加工物の厚さをDとした場合、前記実質屈折率nを次式(1)により求める、
請求項3に記載の亀裂検出装置。
n=D/d ・・・(1)
【請求項5】
前記下面検出手段は、前記上面検出手段が検出した前記上面高さ位置をTとした場合、前記下面高さ位置Bを次式(2)により求める、
請求項4に記載の亀裂検出装置。
B=T+D/n ・・・(2)
【請求項6】
前記上面検出手段は、前記亀裂検出手段の検出が行われる場合における前記集光レンズと前記被加工物との位置関係と同一の位置関係で前記上面高さ位置の検出を行う、
請求項2から5のいずれか1項に記載の亀裂検出装置。
【請求項7】
被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出方法であって、
前記被加工物の実質屈折率を取得する屈折率取得ステップと、
前記被加工物に検出光を照射したときに前記被加工物にて反射された前記検出光の反射光に基づき、前記亀裂が形成された前記被加工物の上面高さ位置を検出する上面検出ステップと、
前記屈折率取得ステップで取得した前記実質屈折率と、前記上面検出ステップで検出した前記上面高さ位置とに基づいて、前記被加工物の下面高さ位置を検出する下面検出ステップと、
前記下面検出ステップで検出した前記下面高さ位置を基準位置として、前記被加工物の
内部に形成された前記亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出ステップと、
を備える亀裂検出方法。
【請求項8】
前記屈折率取得ステップにおいて、前記亀裂が形成される前の前記被加工物に向けて前記検出光を集光し、かつ前記検出光の集光点を前記被加工物の厚さ方向に移動させた場合に、前記被加工物からの前記検出光の反射光を検出した結果に基づき、前記実質屈折率を求める、
請求項7に記載の亀裂検出方法。
【請求項9】
前記屈折率取得ステップにおいて、前記反射光の2つのピーク位置の差を示す前記集光点の移動量に基づき、前記実質屈折率を求める、
請求項8に記載の亀裂検出方法。
【請求項10】
前記屈折率取得ステップにおいて、前記集光点の移動量をdとし、前記被加工物の厚さをDとした場合、前記実質屈折率nを次式(1)により求める、
請求項9に記載の亀裂検出方法。
n=D/d ・・・(1)
【請求項11】
前記下面検出ステップにおいて、前記上面検出ステップにおいて検出した前記上面高さ位置をTとした場合、前記下面高さ位置Bを次式(2)により求める、
請求項10に記載の亀裂検出方法。
B=T+D/n ・・・(2)
【請求項12】
前記上面検出ステップにおいて、前記亀裂検出ステップが行われる場合における前記集光レンズと前記被加工物との位置関係と同一の位置関係で前記上面高さ位置の検出を行う、
請求項7から11のいずれか1項に記載の亀裂検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亀裂検出装置及び方法に係り、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを非破壊で検出する亀裂検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハ等の被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を分割予定ラインに沿って照射し、分割予定ラインに沿って被加工物内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザ加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンド又はブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分断される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、レーザ加工装置により被加工物にレーザ加工領域を形成すると、レーザ加工領域から被加工物の厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。被加工物の内部に形成された亀裂は、被加工物を分断する際の起点となるため、その亀裂の伸展度合いが被加工物の分断後のチップの品質に影響を与える。
【0004】
このため、レーザ加工装置によりレーザ加工領域を形成した後、割断プロセスの前において、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出することにより、割断プロセスにおけるチップへの分断の良否を予測することが可能となる。
【0005】
特許文献1には、被加工物に対して検出光を偏射照明して、被加工物からの反射光を受光することにより、被加工物の内部に形成された亀裂の深さを検出する亀裂検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
被加工物の厚さ方向における亀裂の位置(深さ位置)を取得するためには、被加工物の厚さ方向の界面、つまり、上面及び下面の位置を得る必要がある。特許文献1は、コンフォーカルフォーカス機構を用いて被加工物の上面及び下面の位置を検出する技術を開示する。すなわち、被加工物の厚さ方向において対物レンズに対する被加工物の相対位置を変化させつつ被加工物の下面から上面までを検出光で照射し、被加工物により反射された反射光を検出すると、対物レンズの集光点の位置が反射面となる被加工物の上面及び下面の位置と一致した位置で反射光の検出信号のレベルは鋭いピークを示す。これらのピークに対応する位置を被加工物の上面及び下面の位置として検出する。
【0008】
しかし、レーザ加工により被加工物の内部に亀裂がある位置で被加工物の下面を検出する場合、亀裂によって検出光が反射されるために下面に対応するピークが乱れることがある。つまり、亀裂がある位置では、正しく下面の位置を検出できない恐れがある。
【0009】
そのため、亀裂がない位置で被加工物の上面及び下面の位置を検出した後、亀裂がある位置で亀裂検出を行うために、被加工物と対物レンズとの相対位置を変更させる動作が必要となるという問題があった。この問題は亀裂検出の効率を低下させる一因であった。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、亀裂がある位置であっても、被加工物の下面の位置を正確に検出することができ、延いては効率的に亀裂の深さ位置を検出することができる亀裂検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、一態様に係る、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出装置は、被加工物の実質屈折率を取得する屈折率取得手段と、被加工物に検出光を照射したときに被加工物にて反射された検出光の反射光に基づき、亀裂が形成され被加工物の上面高さ位置を検出する上面検出手段と、屈折率取得手段が取得した実質屈折率と、上面検出手段が検出した上面高さ位置とに基づいて、被加工物の下面高さ位置を検出する下面検出手段と、下面検出手段が検出した下面高さ位置を基準位置として、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出手段と、を備える。
【0012】
界面検出において、被加工物の上面は亀裂の影響を受けないため、亀裂がある位置であっても下面と比べてより正確に上面の位置を検出することができる。第1の態様に係る亀裂検出装置によれば、亀裂が形成された被加工物の2つの界面のうち、検出が容易な上面高さ位置を検出し、検出が難しい下面高さ位置については実質屈折率を用いて算出するため、亀裂がある位置で界面検出を行うことができる。
【0013】
これにより、亀裂がない位置で界面検出を行った後、亀裂がある位置で亀裂検出を行うために被加工物と対物レンズとの相対位置を変更させる動作が不要になる。ひいては、亀裂検出装置の効率を向上させることができる。
【0014】
また、一般的に検出光の強度分布は一様ではなく、典型的には光軸を中心とするガウス分布であるため、対物レンズの実質開口数が変化する。そのため、被加工物の実際の屈折率(実質屈折率)は被加工物の基板材の屈折率(例えば被加工物がシリコンウェーハである場合、シリコンの屈折率)とは一致しないことが多い。上記の亀裂検出装置では、屈折率取得手段により被加工物の実質屈折率を取得するため、その実質屈折率を用いて正確に界面の位置を算出することが可能となる。
【0015】
好ましくは、上記態様に係る亀裂検出装置は、検出光を被加工物に向けて集光する集光レンズと、集光レンズにより集光される検出光の集光点を被加工物の厚さ方向に移動させる集光点移動手段と、被加工物からの検出光の反射光を受光する光検出手段と、を備え、屈折率取得手段は、亀裂が形成される前の被加工物に向けて集光レンズで集光し、かつ集光点移動手段により検出光の集光点を被加工物の厚さ方向に移動させた場合の光検出手段の受光結果に基づき、実質屈折率を求める。
【0016】
ここで、屈折率取得手段は、界面検出に用いられる集光レンズ、集光点移動手段及び光検出手段とを、実質屈折率を取得するためにも用いてもよい。これにより、亀裂検出装置のコストの増加を抑えることが可能となる。
【0017】
好ましくは、屈折率取得手段は、光検出手段によって検出される反射光の2つのピーク位置の差を示す集光点の移動量に基づき、実質屈折率を求める。
【0018】
好ましくは、屈折率取得手段は、集光点の移動量をdとし、被加工物の厚さをDとした場合、実質屈折率nを次式(1)により求める。
【0019】
n=D/d ・・・(1)
好ましくは、下面検出手段は、上面検出手段が検出した上面高さ位置をTとした場合、
下面高さ位置Bを次式(2)により求める。
【0020】
B=T+D/n ・・・(2)
好ましくは、上面検出手段は、亀裂検出手段の検出が行われる場合における前記集光レンズと前記被加工物との位置関係と同一の位置関係で上面高さ位置の検出を行う。同一の位置関係で界面検出と亀裂検出とを行うことができるため、亀裂の深さ位置をより良い精度で検出することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の別の一態様に係る、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出方法は、被加工物の実質屈折率を取得する屈折率取得ステップと、被加工物に検出光を照射したときに被加工物にて反射された検出光の反射光に基づき、亀裂が形成された被加工物の上面高さ位置を検出する上面検出ステップと、屈折率取得ステップで取得した実質屈折率と、上面検出ステップで検出した上面高さ位置とに基づいて、被加工物の下面高さ位置を検出する下面検出ステップと、下面検出ステップで検出した下面高さ位置を基準位置として、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出ステップと、を備える。この亀裂検出方法は、上記亀裂検出装置と同様の効果を実現することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、亀裂がある位置でも、被加工物の界面の位置を正確に検出することができる。延いては亀裂の深さ位置の検出を効率的に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図3】
図3は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図4】
図4は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
【
図5】
図5は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(
図2に対応)。
【
図6】
図6は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(
図3に対応)。
【
図7】
図7は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(
図4に対応)。
【
図8】
図8は、被加工物からの反射光が対物レンズ瞳に到達する経路を説明するための図である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る界面検出及び亀裂検出の特徴部分に関する制御部の機能構成を示したブロック図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る界面測定方法の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、対物レンズの移動量と検出信号のレベルとの関係を示すグラフの一例である。
【
図12】
図12は、屈折率が集光点の位置に与える影響を説明する図である。
【
図13】
図13は、本実施形態における下面の位置検出を説明する図である。
【
図14】
図14は、本実施形態に係る界面測定方法を適用して行う亀裂検出について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る亀裂検出装置及び方法の実施の形態について説明する。まず、亀裂検出装置の概要について説明する。
【0025】
[亀裂検出装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示すブロック図である。
【0026】
亀裂検出装置10は、被加工物であるウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(不図示)と組み合わせて使用される装置であり、例えば、レーザ加工装置の加工ヘッドと一体的に移動可能に設けられる。以下の説明では、亀裂検出装置10に係る構成要素について説明し、レーザ加工装置の構成については説明を省略する。
【0027】
本実施形態に係る亀裂検出装置10は、シリコンウェーハ等のウェーハWに対して検出光L1を照射し、ウェーハWからの反射光L2を検出することで、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する。なお、以下の説明では、ウェーハWが載置されるステージ510をXY平面と平行な平面とし、Z方向をウェーハWの厚さ方向とする3次元直交座標系を用いる。また、
図1において、ウェーハWの下面Wa(ステージ510に接する面)がウェーハWの表面(デバイス面)となり、ウェーハWの上面WbがウェーハWの裏面(デバイス面とは反対側の面)となるように、ウェーハWはステージ510上に載置される。
【0028】
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置10は、光源部100、照明光学系200、界面検出用光学系300、亀裂検出用光学系400、制御部500、集光点位置移動機構502、対物レンズ504、操作部506及び表示部508を含んでいる。
【0029】
光源部100は、検出光L1を出射する。検出光L1は、ウェーハWの界面位置の検出、及びウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出に用いられる。ここで、ウェーハWがシリコンウェーハの場合、検出光L1としては、ウェーハWに対して透過性を有する光、例えば、波長1,000nm以上の赤外光を用いる。
【0030】
光源部100は、光源102A、102B及び102C並びにハーフミラー104を含んでいる。光源102A、102B及び102C並びにハーフミラー104は、対物レンズ504のレンズ光軸と同軸の主光軸AXに沿って配置されている。
【0031】
光源102A、102B及び102Cは、主光軸AXに沿って検出光L1を出射する。光源102A、102B及び102Cとしては、例えば、レーザ光源(赤外線レーザ光源、レーザーダイオード)、又はLED(Light Emitting Diode)光源を用いることができる。
【0032】
光源102Aは、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aの略全面を照明することが可能なレーザ開口を有している。光源102Aは、後述の界面検出に用いられる。
【0033】
光源102B及び102Cは、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aのうち、主光軸AX(レンズ光軸)から偏心した一部のみを照明することが可能なレーザ開口をそれぞれ有している。光源102B及び102Cは、後述の亀裂検出に用いられる。
【0034】
なお、本実施形態では、界面検出用の開口(光源102A)と亀裂検出用の開口(光源102B及び102C)を別々に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの開口を兼用して、遮光手段を用いて界面検出用の開口と亀裂検出用の開口とを切り替えてもよい。
【0035】
ハーフミラー104は、界面検出用の光源102Aから出射される検出光L1を反射し、亀裂検出用の光源102B及び102Cから出射される検出光L1を透過させる。以下
、図示は省略するが、光源102A、102B及び102Cから出射される検出光L1をそれぞれL1(A)、L1(B)及びL1(C)とする。
【0036】
なお、本実施形態では、ハーフミラー104に代えて、全反射ミラー又はダイクロイックミラーを用いることも可能である。この場合、界面検出時に光路上のハーフミラー104の位置にミラーを挿入し、亀裂検出時に光路からミラーを退避させればよい。
【0037】
光源102A、102B及び102Cは、それぞれ制御部500と接続されており、制御部500により光源102A、102B及び102Cの出射制御が行われる。
【0038】
制御部500は、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、PLC(Programmable Logic Controller)等により実現される。制御部500は、亀裂検出装置10の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、制御プログラムを格納するストレージデバイス(例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)及びCPUの作業領域として使用可能なSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を含んでいる。制御部500は、操作部506を介して操作者による操作入力を受け付け、操作入力に応じた制御信号を亀裂検出装置10の各部に送信して各部の動作を制御する。
【0039】
操作部506は、操作者による操作入力を受け付ける手段であり、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネル等を含んでいる。
【0040】
表示部508は、亀裂検出装置10の操作のための操作GUI(Graphical User Interface)及び画像(例えば、亀裂の検出結果等)を表示する装置である。表示部508としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0041】
照明光学系200は、光源部100から出射された検出光L1を対物レンズ504に導光する。照明光学系200は、リレーレンズ202及び206と、ミラー204(例えば、全反射ミラー)とを含んでいる。
【0042】
光源部100から出射された検出光L1は、リレーレンズ202を透過して、ミラー204により反射されて光路が折り曲げられる。ミラー204によって反射された検出光L1は、リレーレンズ206を透過した後、ハーフミラー304及びハーフミラー302によって順次反射されて対物レンズ504に向けて出射される。
【0043】
ウェーハWによって反射されてハーフミラー302を透過して戻ってきた戻り光(観察光)は、観察光学系600(例えば、フォトディテクタ等)を用いて観察可能となっている。なお、観察光学系600を用いない場合には、ハーフミラー302に代えてダイクロイックミラー又は全反射ミラーを用いることができる。
【0044】
対物レンズ504は、照明光学系200から出射された検出光L1をウェーハWに集光(合焦)させる。対物レンズ504は、ウェーハWに対向する位置に配置され、主光軸AXと同軸に配置される。
【0045】
集光点位置移動機構502は、検出光L1の集光点の位置をZ方向(対物レンズ504の光軸方向)に変化させる。集光点位置移動機構502は、対物レンズ504をZ方向に移動させるアクチュエータを含む。ここで、例としてピエゾアクチュエータを用いる場合について説明するが、任意のアクチュエータを用いることができる。集光点位置移動機構502は、制御部500の制御に従ってピエゾアクチュエータを駆動することにより、対物レンズ504をZ方向に移動させる。これにより、対物レンズ504とウェーハWとの
Z方向の相対距離を変化させて、検出光L1の集光点のZ方向における位置を調整(微調整)することができる。
【0046】
また、集光点位置移動機構502は、ステージ510に対して亀裂検出装置10をZ方向に移動させるZ駆動機構を含んでいてもよい。Z駆動機構は、亀裂検出装置10をZ方向に移動させることにより、ピエゾアクチュエータよりも大きな調整幅で、対物レンズ504とウェーハWとのZ方向の位置合わせ(粗調整)を行う。
【0047】
上記のように、Z駆動機構による集光点の位置調整(粗調整)と、ピエゾアクチュエータによる集光点の位置調整(微調整)とを組み合わせる場合、ピエゾアクチュエータのみの場合に比べて、検出光L1の集光点のZ方向の位置の調整の自由度(調整幅)が広がる。これにより、様々な厚さのウェーハWに対して亀裂検出等が可能となる。
【0048】
なお、Z駆動機構は、ステージ510をZ方向に駆動させる機構であってもよいし、亀裂検出装置10とステージ510の両方をZ方向に駆動させる機構であってもよい。また、Z駆動機構は、レーザ加工装置の加工ヘッドを移動させる駆動機構を兼ねていてもよい。
【0049】
対物レンズ504によって集光され、ウェーハWによって反射された反射光L2は、界面検出用光学系300及び亀裂検出用光学系400に導光され、それぞれ、ウェーハWの界面検出及び亀裂の検出に用いられる。
【0050】
[亀裂検出の手順]
本実施形態では、レーザ加工に先立って、界面検出用光学系300を用いて亀裂Kが形成されていないウェーハW(以下、未加工のウェーハWと称する)の上面Wb(ウェーハWの裏面)と下面Wa(ウェーハWの表面(デバイス面))との界面を検出し、その検出結果を利用して実質屈折率nを取得する(事前測定)。そして、レーザ加工によりウェーハWの内部に亀裂Kが形成された後、亀裂Kが形成されたウェーハWについて界面検出用光学系300を用いてウェーハWの上面Wbの界面位置を検出する(本測定)。ウェーハWの上面Wbは亀裂Kの影響を受けないため、亀裂Kがある位置であっても界面検出によってこの位置Tは正確に検出することができる。
【0051】
更に、事前測定において取得した実質屈折率n及び本測定において検出した上面Wb(ウェーハWの裏面)の界面位置に基づいて下面Wa(ウェーハWの表面;ステージ510に接する面)の界面位置を算出する。これにより、亀裂Kがある位置では界面検出用光学系300を用いて検出することが困難な下面Waの界面位置を、正確に検出することができる。そして、算出されたウェーハWの下面Waの界面位置を基準として、亀裂検出用光学系400を用いて亀裂深さを検出する。
【0052】
以下では、亀裂検出装置10におけるウェーハWの界面検出及び亀裂検出の基本的な部分を説明した後、本実施形態に係る界面検出及び亀裂検出の特徴部分を詳しく説明する。
【0053】
[界面検出用光学系]
まず、ウェーハWの界面検出について説明する。
【0054】
界面検出用光学系300は、ウェーハWの界面(上面Wb又は下面Wa)の検出を行うための光学系であり、ハーフミラー302、ハーフミラー304、リレーレンズ306、ハーフミラー308及び光検出器310を含んでいる。
【0055】
ウェーハWの界面として、ウェーハWの界面(上面Wb又は下面Wa)を検出するとき
には、制御部500は、光源102Aを発光させて、検出光L1(A)をウェーハWに照射する。
【0056】
光源102Aからの検出光L1(A)は、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aと略同じ大きさの開口を有するレーザ光であり、ハーフミラー304及びハーフミラー302によって順次反射されて対物レンズ504に導光される。検出光L1(A)は、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aの略全面に照射される。
【0057】
ここで、検出光L1(A)がウェーハWにより反射された反射光をL2(A)とする。反射光L2(A)は、ハーフミラー302によって反射され、ハーフミラー304を透過した後リレーレンズ306に導光される。リレーレンズ306を透過した反射光L2(A)は、ハーフミラー308によって反射されて光検出器310に導光される。
【0058】
光検出器310は、ウェーハWからの反射光L2(A)を受光して、ウェーハWの界面の検出を行うための装置であり、検出器本体310A及びピンホールパネル310Bを含んでいる。
【0059】
検出器本体310Aとしては、受光した光を電気信号に変換して制御部500に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)又は赤外線カメラ等を用いることができる。
【0060】
ピンホールパネル310Bには、入射光の一部を透過させるためのピンホールが形成されている。ピンホールパネル310Bは、検出器本体310Aの受光面に対して上流側に配置されており、ピンホールパネル310Bのピンホールが反射光L2(A)の光軸上に位置するように配置されている。ピンホールパネル310Bのピンホールの位置は、対物レンズ504の集光点(前側焦点位置)と光学的に共役関係にある(コンフォーカルピンホール)。また、ピンホールパネル310Bのピンホールの大きさは、対物レンズ504の回折限界程度に調整されている。
【0061】
ウェーハWにより反射された反射光L2(A)は、対物レンズ504の集光点と光学的に共役な位置にあるピンホールパネル310Bのピンホールの位置に集光する。そして、対物レンズ504の集光点が反射面となるウェーハWの上面Wbと一致した場合、検出光L1(A)の光束はウェーハWの上面Wbで反射されて、平行光束となって対物レンズ504を透過して戻ってくる。したがって、検出器本体310Aから出力される信号Sは、対物レンズ504の集光点が反射面となるウェーハWの上面Wbの位置と一致したときに鋭いピークを有することになる。
【0062】
制御部500は、光源102Aからの検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、集光点位置移動機構502により対物レンズ504とウェーハWとの間の相対距離を変化させて、検出光L1(A)の集光点の位置(すなわち、対物レンズ504の前側焦点位置)をZ方向に移動させる。これにより、検出光L1(A)の集光点がZ方向に走査される。制御部500は、検出光L1(A)の集光点がZ方向に走査されたときのウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器310により検出し、この光検出器310からの信号のピークを検出することにより、ウェーハWの上面Wbの界面位置Z(0)を検出する。
【0063】
なお、本実施形態では、コンフォーカル法を用いてウェーハWの界面検出を行うようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、非点収差法、白色干渉法等のその他の焦点検出方法を用いてもよい。
【0064】
[亀裂検出用光学系]
次に、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出について説明する。
【0065】
亀裂検出用光学系400は、リレーレンズ402、光検出器404及び406を含んでいる。
【0066】
ウェーハWの内部に形成された亀裂Kを検出するときには、制御部500は、光源102B及び102Cを発光させて、検出光L1(B)及びL1(C)(第2の検出光)をウェーハWに照射する。ここで、制御部500、亀裂検出用光学系400は、それぞれ亀裂検出手段の一部として機能する。光源102B及び102Cは、それぞれ主光軸AXからずれた位置にレーザ開口を有している。これにより、主光軸AXに対して偏心した検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWに照射される。
【0067】
検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWによりそれぞれ反射された反射光L2(B)及びL2(C)(第2の反射光)は、ハーフミラー302によって反射された後、ハーフミラー304、リレーレンズ306及びハーフミラー308を順次透過してリレーレンズ402に入射する。リレーレンズ402を透過した反射光L2(B)及びL2(C)は、光検出器404及び406により受光される。
【0068】
なお、界面検出用光学系300では、ハーフミラー308に代えて全反射ミラー又はダイクロイックミラー等を用いることも可能である。この場合、界面検出時に光路上のハーフミラー308の位置にミラーを挿入し、亀裂検出時に光路上からミラーを退避させればよい。
【0069】
光検出器404及び406は、ウェーハWからの反射光L2(B)及びL2(C)を受光して、ウェーハWの内部の亀裂Kの検出を行うための装置である。光検出器404及び406としては、受光した光を電気信号に変換して制御部500に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)又は赤外線カメラ等を用いることができる。
【0070】
光検出器404及び406は対物レンズ瞳504aと共役位置に配置され、さらに、検出光L1(B)及びL1(C)を受光するよう対物レンズ504の光軸からずれた位置に配置されている。
【0071】
図2から
図4は、ウェーハWに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図2は対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合、
図3は対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合、
図4は対物レンズ504の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。
【0072】
また、
図5から
図7は、光検出器404及び406に受光される反射光L2の様子を示した図であり、それぞれ
図2から
図4に示した場合に対応するものである。
【0073】
また、
図8は、ウェーハWからの反射光L2が対物レンズ瞳504aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、対物レンズ瞳504aの一方側(
図8の右側)の第1領域G1を通過して、ウェーハWに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0074】
図2に示すように、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は主光軸AXに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、対物レンズ瞳504aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図8に示すように、光源部100からの検出光L1が対物レンズ504を介してウェーハWに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、ウェーハ
Wの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(
図8の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳504aの第1領域G1を通過する。
【0075】
図3に示すように、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1はウェーハWの下面Waで反射し、その反射光L2は対物レンズ瞳504aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、
図8に示すように、ウェーハWの下面Waで反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(
図8の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳504aの第2領域G2を通過する。
【0076】
図4に示すように、対物レンズ504の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、反射光成分L2aと非反射光成分L2bとに分割される。反射光成分L2aは、亀裂Kで全反射した後、下面Waで反射して、対物レンズ瞳504aの検出光L1と同じ側の領域に到達し、非反射光成分L2bは、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの下面Waで反射して対物レンズ瞳504aの検出光L1と反対側の領域に到達する。すなわち、
図8に示すように、反射光L2のうち、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2aは、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(
図8の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳504aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの下面Waで反射した非反射光成分L2bは、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(
図8の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳504aの第2領域G2を通過する。
【0077】
光検出器404及び406は、それぞれが対物レンズ瞳504aの第1領域G1及び第2領域G2と光学的に共役な位置となるように配置されている。これにより、光検出器404及び406は、それぞれ対物レンズ瞳504aの第1領域G1及び第2領域G2を通過した光を選択的に受光可能となっている。
【0078】
ここで、
図2に示す例(対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合)では、光検出器404及び406のうち、光検出器404の受光面404Cに反射光L2が入射する。このため、
図5に示すように、光検出器404の受光面404Cから出力される検出信号のレベルが光検出器406の受光面406Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0079】
一方、
図3に示す例(対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合)では、光検出器404及び406のうち、光検出器406の受光面406Cに反射光が入射する。このため、
図6に示すように、光検出器406の受光面406Cから出力される検出信号のレベルが光検出器404の受光面404Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0080】
また、
図4に示す例(対物レンズ504の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合)では、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ入射する。このため、
図7に示すように、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
【0081】
このように、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cで受光される光量は、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本実施形態では、このような性質を利用して、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0082】
具体的には、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される
検出信号の出力をそれぞれD1及びD2としたとき、対物レンズ504の集光点における亀裂Kの存在を判断するための評価値Sは、次式で表すことができる。
【0083】
S=(D1-D2)/(D1+D2) …式(1)
式(1)において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cによって受光される光量が一致するとき、対物レンズ504の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0084】
制御部500(
図1参照)は、集光点位置移動機構502(集光点変更手段)を制御して検出光L1の集光点をZ方向に移動させ、ウェーハWの下面Waの界面位置からウェーハWの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて式(1)で示される評価値Sを算出し、この評価値S及び集光点位置情報を評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0085】
[制御部の機能構成]
次に、本実施形態に係る界面検出及び亀裂検出の特徴部分に関する制御部500の機能構成について
図9を参照して説明する。
【0086】
図9に示すように、制御部500は、界面検出部520及び亀裂検出部524を備える。界面検出部520は、屈折率取得部521、上面検出部522、及び下面検出部523を備える。
【0087】
屈折率取得部(屈折率取得手段に相当)521は、事前測定において界面検出用光学系300を用いて未加工のウェーハWの上面Wb及び下面Waの界面位置を検出する。更に、屈折率取得部521は、事前測定において検出された上面Wb及び下面Waの界面位置を用いてウェーハWの実質屈折率nを算出する。
【0088】
上面検出部(上面検出手段に相当)522は、本測定において界面検出用光学系300を用いて加工後のウェーハWの上面Wbの界面位置を検出する。
【0089】
下面検出部(下面検出手段に相当)523は、屈折率取得部521により取得された実質屈折率n及び上面検出部522により検出された上面Wbの界面位置を用いて下面Waの界面位置を検出する。
【0090】
亀裂検出部524(亀裂検出手段に相当)は、下面検出部523により検出されたウェーハWの下面Waの界面位置を基準として、亀裂検出用光学系400の各光検出器404、406から出力される検出信号に基づきウェーハWの内部の亀裂Kの亀裂深さを検出する。亀裂検出部524が検出した亀裂Kの亀裂深さは、表示部508へ出力される。
【0091】
[界面検出の手順の詳細]
続いて、界面検出についてより詳しく説明する。上述のように、本実施形態では、レーザ加工に先立ってウェーハWの上面Wb及び下面Waの位置を検出することにより、ウェーハWの実質屈折率nを算出する。そして、その実質屈折率nを用いることによりレーザ加工後に亀裂Kがある位置で精度よく下面を検出することを可能にする。具体的な手順は以下のとおりである。
【0092】
図10は、本実施形態に係る界面測定方法の手順の一例を示すフローチャートである。まず、未加工のウェーハWをステージ510に載置した後、屈折率取得部521は集光点位置移動機構502によりウェーハWと対物レンズ504との相対位置を調整する(アラ
イメントを行う)(ステップS10)。
【0093】
続いて、その相対位置において、屈折率取得部521は検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、集光点位置移動機構502によってウェーハWと対物レンズ504とのZ方向の相対位置(相対距離)を変化させて、光検出器310によってウェーハWからの反射光L2(A)を検出する(事前測定)(ステップS12)。
【0094】
続いて、屈折率取得部521は光検出器310の検出信号のレベルが2つのピークを表すか否か判定する(ステップS14)。光検出器310の検出信号のレベルが2つのピークを表さない場合(ステップS14:NO)、ステップS10に戻り、屈折率取得部521は、相対位置調整及び事前測定を再度行う。
【0095】
図11は、事前測定が行われたときの測定結果を示したグラフである。
図11は、ウェーハWと対物レンズ504との相対位置を変化させた場合に得られる光検出器310の検出信号を示している。
図11におけるグラフの横軸は、検出光L1(A)の集光点(対物レンズ504の集光点)の位置を示す対物レンズ504の移動量(集光点位置移動機構502のピエゾ移動量)であり、縦軸は光検出器310の検出信号のレベル(強度)である。上述のように、界面に対応する位置で光検出器310の検出信号のレベルはピークを示す。
図11に示す例では、光検出器310の検出信号のレベルのピークPb及びPtはそれぞれ下面Wa及び上面Wbに対応する。以下、ピークPb及びPtをそれぞれ下面ピーク及び上面ピークと称する。
【0096】
事前測定では、未加工のウェーハWにはまだ亀裂が形成されていないため、界面検出光学系300を用いて下面Waの位置を良好に検出することができる。なお、事前測定は、1つのウェーハWにつき1回行うだけでよい。いいかえると、1つのウェーハWの複数の位置で後述の本測定(ステップS20)を行う場合でも、事前測定を1回行うだけでよい。
【0097】
図11に示すような下面ピークPb及び上面ピークPtを有する検出信号が光検出器310により得られると(ステップS14:YES)、屈折率取得部521は、下面ピークPb及び上面ピークPtに対応する対物レンズ504の位置(対物レンズ504の移動量)B
0及びT
0を取得する。
【0098】
各ピーク間での対物レンズ504の移動量dは、B0とT0とを用いて以下の式(2)で示される。
【0099】
【0100】
この移動量dは、ウェーハWの厚さDに対応し、レーザ加工の前後で変化しない(事前測定及び後述の本測定において不変である)。屈折率取得部521は、移動量dと、ウェーハWの実際の厚さをD(既知)とを用いて、ウェーハWの実質屈折率nを以下の式(3)で算出する(ステップS16)。
【0101】
【0102】
以下、
図12を用いて実質屈折率を算出する理由について説明する。ウェーハWがない状態では検出光L1(A)は一点に集光し、対物レンズ504の瞳504aに対応する位置が検出光L1(A)の集光点の位置になる。しかし、検出光L1(A)でウェーハWを照射する場合、理論的には、検出光L1(A)はウェーハWの固有の屈折率で屈折されるため、瞳504aに対応する位置とは異なる位置で集光する。また、屈折により生じる収差の影響により集光点は一点にならず、光軸方向に沿って直線状に分散する。
【0103】
また、通常、検出光L1(A)の強度分布は一様ではなく、典型的には光軸を中心とするガウス分布であるため、対物レンズ504の実質開口数(実質NA:Numerical Aperture)が変化する。そのため、ウェーハWの実際の屈折率(実質屈折率)は、ウェーハWの基板材の屈折率(例えばシリコンウェーハの場合、シリコンの屈折率)とは異なる。さらには、ウェーハWの実際の屈折率(実質屈折率)は、ウェーハWに形成されたデバイスの層等の影響を受けることもある。これらを考慮するために、本実施形態では、事前測定によりウェーハWの実質屈折率を取得する。
【0104】
続いて、レーザ加工装置(不図示)によりウェーハWにレーザ加工を行い、ウェーハWの内部に亀裂Kを形成する(ステップS18)。その後、上面検出部522は、亀裂Kがある位置で、ステップS10及びステップS12の事前測定と同様にして、集光点位置移動機構502により対物レンズ504とレーザ加工後のウェーハWとのZ方向の相対位置を変化させながら、ウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器310により検出する(本測定)(ステップS20)。
【0105】
続いて、上面検出部522は、光検出器310の検出信号のレベルの上面ピークPtに対応する対物レンズ504の位置(対物レンズ504の移動量)Tを取得する。ウェーハWの上面Wbは亀裂Kの影響を受けないため、亀裂Kがある位置であっても界面検出によってこの位置Tを正確に検出することができる。
【0106】
上記のように移動量dは不変であるため、レーザ加工後のウェーハWの下面Waに対応する、対物レンズ504の位置Bは、以下の式(4)で示すことができる。
【0107】
【0108】
式(3)を式(4)に代入すると、位置Bを以下の式(5)で示すことができる。
【0109】
【0110】
下面検出部523は、事前測定で算出した実質屈折率nを用いて式(5)に基づいて下面ピークPbに対応する対物レンズ504の位置Bを算出する(ステップS22)。
【0111】
以下、
図13を用いて本実施形態における下面の位置検出について説明する。
図13は、例として、本実施形態に係る界面検出方法を用いてシリコンウェーハWの界面を検出した結果を模式的に示す。
図13の上段は事前測定で得られた対物レンズ504の移動量と光検出器310の検出信号のレベルとの関係を示すグラフであり、
図13の下段は本測定で得られた対物レンズ504の移動量と光検出器310の検出信号のレベルとの関係を示すグラフである。
【0112】
図13の上段のグラフに示すように、事前測定ではウェーハWに亀裂Kが形成されていないため、上面ピークPt及び下面ピークPbが明瞭に現れている。屈折率取得部521は、このグラフから、上面ピークPt及び下面ピークPbに対応する対物レンズ504の位置T
0及びB
0を取得して、実質屈折率nを算出する。
【0113】
図13の下段のグラフに示すように、本測定では上面ピークPtは明瞭に現れているが、ウェーハWの内部の亀裂Kによって検出光L1(A)が遮られるために下面ピークPbが不明瞭となる場合がある。このような場合において、例えば、下面Waの位置を取得するために、本測定で取得した上面ピークPtに対応する対物レンズ504の位置TとウェーハWの基板材であるシリコンの屈折率n
Siとを用いて下面ピークPbに対応する対物レンズ504の位置B
Siを算出した場合、先に
図12を用いて説明した理由により、位置B
Siは事前測定で得た正しい位置B
0とずれてしまう。
【0114】
そこで、本実施形態では、下面検出部523は、事前測定で算出した実質屈折率nを用いて下面ピークPbに対応する対物レンズ504の位置Bを算出する。
図13に示すように、算出された位置Bは事前測定で得た位置B
0と良好に一致する。このように、本実施形態によれば、亀裂Kがある位置でも、事前測定により得られた実質屈折率nを用いてウェーハWの下面Waの位置を正確に検出することができる。
【0115】
以下、
図14を用いて、実際に本実施形態に係る界面測定手順を適用して亀裂検出を行った結果について説明する。
図14の符号14Aは、ウェーハWの縦断面の顕微鏡画像である。符号14AではウェーハWの内部に形成された亀裂Kが観察できる。符号14Aにおいて、ウェーハWの上面Wb及び下面Waをそれぞれ点線の円で示し、亀裂Kの上端及び下端をそれぞれ実線の円で示す。
【0116】
図14の符号14Bは、符号14Aに示すような亀裂Kに対して、本実施形態に係る界面検出及び亀裂検出を行った結果を示すグラフである。符号14Bにおいて、横軸は対物レンズ504の移動量を示し、縦軸は光検出器の検出信号のレベルを示す。また、実線は界面検出用光学系300の光検出器310による検出信号を示し、界面検出結果に相当する。点線は亀裂検出用光学系400の光検出器404による検出信号を示し、亀裂検出において第1領域G1側で得た検出結果に相当する。一点鎖線は亀裂検出用光学系400の光検出器406による検出信号を示し、亀裂検出において第2領域G2側で得た検出結果に相当する。
【0117】
界面検出結果において、上面ピークPtは明瞭であるため、上面Wbの位置Tは良好に取得できる。一方、亀裂Kによって検出光L1(A)が遮られるため、下面ピークPbは不明瞭であるが、下面検出部523は、下面Waの位置Bを上述のように式(5)を用いて算出することができる。
【0118】
亀裂検出結果において、亀裂Kの上下端Kt及びKbにより検出光L1(B)及びL1(C)が半分遮られるため、光検出器404及び406の検出信号のレベルが半分になる位置(つまり、信号レベルの最大値と信号レベルの最小値の差が半分になる位置)が亀裂
端Kt及びKbの位置に相当する。亀裂検出部524は、界面検出によって取得したウェーハWの上面Wb及び下面Waの位置を用いて、ウェーハWの上面Wb及び下面Waからの亀裂端Kt及びKbの深さ位置を算出することができる。
【0119】
このように、本実施形態によれば、実質屈折率nを事前測定により取得し、その実質屈折率nを用いてウェーハWの下面Waの位置を算出するため、亀裂Kがある位置でも亀裂深さの基準位置となる界面位置、すなわちウェーハWの下面Waの位置(デバイス面の位置)を精度よく検出することができる。これにより、本測定において、亀裂Kがない位置で界面検出を行い、亀裂Kがある位置で亀裂検出を行うという無駄な動作が不要となる。加えて、亀裂検出を行う場合におけるウェーハWと対物レンズ504との位置関係と同一の位置関係で界面検出を行うことができるため、亀裂Kの深さ位置を精度よく検出することができる。
【0120】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について説明する。上記の実施形態では、レーザ加工後のウェーハWの界面検出及び亀裂検出において、界面検出部520及び亀裂検出部524は、ウェーハWの上面Wbから下面Waまで(下面Waから上面Wbでもよい)、ウェーハWの厚さ方向全体を検出光L1で走査し、検出信号のレベルの上面ピークPt及び下面ピークPbを得る。そして、検出信号のレベルに上面ピークPt及び下面ピークPbが現れない場合は、対物レンズ504とウェーハWとのアライメントずれがあるために、対物レンズ504とウェーハWとの相対位置を調整し直している(例えば、
図10のステップS14)。
【0121】
以下、変形例として、アライメントずれ等のために検出光L1の走査範囲内に下面ピークPbが現れない場合に、ウェーハWの下面Wa及び亀裂の上下端の深さ位置を算出する方法について説明する。
【0122】
上記のように、式(5)を用いてウェーハWの下面に対応する対物レンズ504の位置Bを算出するためには、ウェーハWの厚さD(既知)と、実質屈折率nと、上面ピークPtの位置T(対物レンズ504の位置)が必要である。
【0123】
変形例の場合、事前測定(
図10のステップS10)において上面ピークPtの位置Tを取得することができるが、走査範囲内に下面ピークPbが現れないため、そのウェーハWについて実質屈折率nを取得することができない。しかし、予め、同じ厚さを有する別のウェーハWのその実質屈折率nを取得しておけば、その実質屈折率nを使用することができるので、下面検出部523は、式(5)を用いてウェーハWの下面の位置B(対物レンズ504の位置B)を算出することができる。
【0124】
図15に、検出光L1の走査範囲内にウェーハWの下面ピークPbが現れない場合の光検出器310、404及び406の検出信号のグラフの一例を示す。
図14の符号14Bと同様に、
図15において、横軸は対物レンズ504の移動量を示し、縦軸は光検出器の検出信号のレベルを示す。また、実線は界面検出用光学系300の光検出器310による検出信号を示し、界面検出結果に相当する。点線は亀裂検出用光学系400の光検出器404による検出信号を示し、一点鎖線は亀裂検出用光学系400の光検出器406による検出信号を示し、これらは亀裂検出結果に相当する。
【0125】
図15のグラフでは、界面検出結果に上面ピークPtが現れているため、上面Wbに対応する対物レンズ504の位置Tが分かるが、界面検出結果には下面ピークPbが現れていない。しかし、実質屈折率n及び位置Tが得られるため、下面検出部523は式(5)から下面Waに対応する対物レンズ504の位置Bを算出することができる。
【0126】
更に、
図15のグラフでは、亀裂検出結果に検出信号の信号レベルの最大値と信号レベルの最小値の差が半分になる位置が明瞭に読み取れるため、亀裂Kの上下端Kt及びKbの位置が分かる。上記のように、ウェーハWの上面Wb及び下面Waに対応する対物レンズ504の位置T及びBが得られるので、亀裂検出部524は、亀裂Kの上下端Kt及びKbの深さ位置を算出することができる。
【0127】
このように、ウェーハWを交換した後にアライメントずれ等により界面検出結果に下面ピークPbが現れない場合であっても、同じ厚さを有する別のウェーハWの実質屈折率nを使用することにより、良好に亀裂Kの上下端Kt及びKbの深さ位置を算出することができる。
【0128】
<発明の効果>
以上説明したように、本実施形態によれば、実質屈折率を事前測定に取得し、その実質屈折率を用いてウェーハWの下面Waの位置を算出するため、亀裂Kがある位置でも亀裂深さの基準位置となる界面の位置、すなわちウェーハWの下面Waの位置(デバイス面の位置)を精度よく検出することができる。
【0129】
亀裂Kがある位置でも界面検出を行うことができるため、亀裂Kがない位置で界面検出を行った後、亀裂Kがある位置で亀裂検出を行うためにウェーハWと対物レンズ504との相対位置を変更させる動作が不要になる。延いては、亀裂の深さ位置の検出の効率を向上させることができる。
【0130】
加えて、ウェーハWと対物レンズ504との位置関係が同一の条件下で界面検出及び亀裂検出を行うことができるため、亀裂の深さ位置をより良い精度で検出することができる。
【0131】
実施形態の変形例によれば、アライメントずれ等のために検出光L1の走査範囲内に下面ピークPbが現れない場合であっても、同じ厚さを有するウェーハWについて予め取得した実質屈折率nを用いてウェーハWの下面Waに対応する対物レンズ504の位置Bを算出することができるので、ウェーハWの下面Waの位置を基準として、亀裂亀裂Kの上下端Kt及びKbの深さ位置を精度よく算出することができる。
【0132】
以上、本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0133】
10…亀裂検出装置、100…光源部、102A、102B、102C…光源、104…ハーフミラー、200…照明光学系、202…リレーレンズ、204…ミラー、206…リレーレンズ、300…界面検出用光学系、302…ハーフミラー、304…ハーフミラー、306…リレーレンズ、308…ハーフミラー、310…光検出器、400…亀裂検出用光学系、402…リレーレンズ、404、406…光検出器、500…制御部、502…集光点位置移動機構、504…対物レンズ、506…操作部、508…表示部、510…ステージ、520…界面検出部、521…屈折率取得部、522…上面検出部、523…下面検出部、524…亀裂検出機能、K…亀裂、Pt…上面ピーク、Pb…下面ピーク、Wb…上面、Wa…下面