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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】シート搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240626BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
B65H5/06 H
G03G15/00 407
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020074122
(22)【出願日】2020-04-17
(65)【公開番号】P2021169364
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明宏
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-136431(JP,A)
【文献】特開2011-190030(JP,A)
【文献】特開2007-276229(JP,A)
【文献】特開2011-126686(JP,A)
【文献】特開2018-002359(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0004144(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 5/02
B65H 5/06
B65H 5/22
B65H 11/00-11/02
B65H 29/12-29/24
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の搬送ローラと、前記第1の搬送ローラに対向する第2の搬送ローラと、
前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力を調整する回転軸と、
前記回転軸に備わる付勢力調整部材と、を備えた、シートを搬送するシート搬送装置であって、
前記回転軸の回転により、前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢力の変更、および、付勢力の回避を行い、
手差し搬送部材と、
前記手差し搬送部材に対して接離し、シートを載置する載置部とを有し、
前記回転軸の回転により、前記載置部が前記手差し搬送部材に対する接離方向に移動可能に設けられることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラから離間する方向へ引っ張る引張部材をさらに備え、前記引張部材は、前記付勢部材の付勢力の減圧または回避時に、前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラから離間させる請求項記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記第2の搬送ローラの軸部に連結され、前記引張部材の引張力を前記第2の搬送ローラに伝達する連結部材を備えた請求項記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記付勢力調整部材は、前記回転軸の径を周方向に変化させる突起部を有し、
前記突起部が当接し、前記付勢部材を伸縮させる被当接部材を備えた請求項1からいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記第2の搬送ローラの軸部に連結され、引張部材の引張力を前記第2の搬送ローラに伝達する連結部材を備えた請求項記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記被当接部材と前記連結部材との一方に、前記第2の搬送ローラの前記第1の搬送ローラに対する接離方向に延在する孔部が設けられ、前記被当接部材と前記連結部材との他方に、前記孔部に挿入され、前記孔部内で前記接離方向へ移動可能な挿入部が設けられた、請求項記載のシート搬送装置。
【請求項7】
第1の搬送ローラと、前記第1の搬送ローラに対向する第2の搬送ローラと、
前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢部材と、
前記付勢部材の付勢力を調整する回転軸と、
前記回転軸に備わる付勢力調整部材と、を備えた、シートを搬送するシート搬送装置であって、
前記回転軸の回転により、前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢力の変更、および、付勢力の回避を行い、
前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラから離間する方向へ引っ張る引張部材を備え、
前記付勢力調整部材は、前記回転軸の径を周方向に変化させる突起部を有し、 前記突起部が当接し、前記付勢部材を伸縮させる被当接部材を備え、
前記第2の搬送ローラの軸部に連結され、前記引張部材の引張力を前記第2の搬送ローラに伝達する連結部材を備え、
前記被当接部材と前記連結部材との一方に、前記第2の搬送ローラの前記第1の搬送ローラに対する接離方向に延在する孔部が設けられ、前記被当接部材と前記連結部材との他方に、前記孔部に挿入され、前記孔部内で前記接離方向へ移動可能な挿入部が設けられたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
前記突起部は、前記回転軸の方向に複数設けられる請求項からいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記突起部の位相を検知する検知部を備えた請求項からいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記検知部を複数備えた請求項記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記付勢部材は、前記第2の搬送ローラの前記第1の搬送ローラに対する接離方向へ伸縮可能なバネである請求項1から10いずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
請求項1から11いずれか1項に記載のシート搬送装置と、
前記シートに画像を形成する作像部と、
画像形成後の前記シートを機外に排出する排出部とを備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙などのシートを搬送するシート搬送装置には、ローラ同士のニップ部に用紙を挟持して回転することで、用紙を下流側へ搬送する構成のものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1(特開2011-190030号公報)のロール紙給送装置には、給送駆動ローラと給送従動ローラとからなる一対の搬送ローラが設けられる。そして、偏心カムにより、給送駆動ローラの給送従動ローラに対する押圧荷重を変更し、ローラ間のニップ圧を調整することができる。
【0004】
上記のように搬送ローラ対ではローラ同士のニップ部のニップ圧を変更できる。しかしニップ圧の変更ではローラ間に詰まったシート、特に破けて切り離された小型シートを取り除く場合には困難であり、ローラ同士を離間させたい場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ローラ間のニップ圧の調整およびローラ同士の離間を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、第1の搬送ローラと、前記第1の搬送ローラに対向する第2の搬送ローラと、前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢部材と、前記付勢部材の付勢力を調整する回転軸と、前記回転軸に備わる付勢力調整部材と、を備えた、シートを搬送するシート搬送装置であって、前記回転軸の回転により、前記第2の搬送ローラを前記第1の搬送ローラ側に付勢する付勢力の変更、および、付勢力の回避を行い、手差し搬送部材と、前記手差し搬送部材に対して接離し、シートを載置する載置部とを有し、前記回転軸の回転により、前記載置部が前記手差し搬送部材に対する接離方向に移動可能に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
ローラ間のニップ圧の調整およびローラ同士の離間を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るプリンタを示す概略模式図である。
図2】同プリンタにおける感光体とその周囲の構成を拡大して示す拡大模式図である。
図3】本体給紙部と手差し給紙部の主要構成を示す斜視図である。
図4】同本体給紙部及び同手差し給紙部における駆動系の構成を示す斜視図である。
図5】同本体給紙部及び同手差し給紙部における給紙経路を示す図である。
図6】本体給紙部からの給紙搬送を行う場合の制御動作の手順を示すフロー図である。
図7】手差し給紙部から手差しトレイを取り外した状態の外観斜視図である。
図8】手差し給紙部の主要部を示す斜視図である。
図9】手差し底板が手差し給紙ローラから離間した状態を示す斜視図である。
図10】手差し底板が手差し給紙ローラに当接した状態を示す斜視図である。
図11】手差し給紙時の制御手順を示すフロー図である。
図12】中継ローラ対のニップ部に(a)薄紙が挟まれた状態と(b)厚紙が挟まれた状態を示す図である。
図13】手差しカム軸を示す斜視図である。
図14】中継従動ローラが取り付けられる手差し給紙部のフレームを示す斜視図である。
図15図14の手差し給紙部のフレームに、中継従動ローラ等を取り付けた状態を示す斜視図である。
図16】手差しカム軸およびその周辺の構成を示す斜視図で、カム検知フィラーの検知状態の図である。
図17】手差しカム軸およびその周辺の構成を示す斜視図で、カム検知フィラーの非検知状態の図である。
図18】手差しカム軸およびその周辺の構成を示す平面図である。
図19】手差しカム軸およびその周辺の構成を示す斜視図である。
図20】厚紙設定の中継ローラ対およびその周辺の部材を示す断面図である。
図21】普通紙設定の中継ローラ対およびその周辺の部材を示す断面図である。
図22】離間設定の中継ローラ対およびその周辺の部材を示す断面図である。
図23】中継ローラ対の離間状態を示す斜視図である。
図24】本体給紙厚紙モードのフロー図である。
図25】スイッチが設けられない構成の本体給紙普通紙モードのフロー図である。
図26】スイッチが設けられた構成の本体給紙普通紙モードのフロー図である。
図27】手差し給紙と本体給紙を判別するフロー図である。
図28】実施形態に係るプリンタにおける異常停止時の処理手順を示すフロー図である。
図29】実施形態に係るプリンタにおける異常停止解除時の処理手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の給紙装置について、画像形成装置の一例としてのLEDプリンタに適用した実施形態を、図面を参照して説明する。但し、画像形成装置はLEDプリンタに限定されるものではなく、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0011】
以下の実施形態では「シートあるいは記録媒体」として「用紙」を例示するが、「シートあるいは記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「シートあるいは記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0012】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、用紙と称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0013】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の模様や色を媒体に付与することも含まれる。
【0014】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例としてLEDプリンタを示す概略模式図である。プリンタ100は、シート搬送装置としての給紙装置50を備える。給紙装置50は、本体給紙部40と手差し給紙部30とを備え、異なる複数の給紙経路を搬送ガイドにより形成している。本体給紙部40は、用紙収容手段としての本体給紙トレイ91、給紙ローラ41、分離パッド48、本体給紙底板92、中継ローラ対42等を備える。手差し給紙部30は、手差し給紙トレイ31、手差し給紙ローラ32、分離パッド33、手差し底板34(図3参照)等を備える。その他、本体給紙部40は、後述する加圧バネ37b(図5参照)、付勢力調整機構60(図13参照)、支持プレート71(図16参照)、連結部材72(図16参照)、フィラーセンサ65c(図16参照)、スイッチSW(図16参照)等を備える。
【0015】
図1に示す本体給紙トレイ91は、本体筐体120に対して着脱可能に構成される。本体給紙トレイ91の内部には、複数の用紙Pが束状に収容されている。
【0016】
本体給紙トレイ91の用紙Pは、本体給紙ローラ41の回転駆動によって本体給紙トレイ91から送り出され、本体給紙ローラ41と分離パッド48との分離ニップにおいて、最上位用紙が分離されて送り出され、第1のシート搬送路である本体給紙路R1内に至る。その後、用紙Pは上方の搬送ローラ対である中継ローラ対42の搬送ニップに挟持されて、本体給紙路R1内を搬送方向の上流側から下流側へと搬送される。なお搬送ローラ対は少なくともどちらか一方がベルトの搬送体であってもよい。
【0017】
本体給紙路R1の下流端は、共通搬送路R3に連通しており、共通搬送路R3には、レジストローラ対43が配設されている。レジストローラ対43の搬送方向上流側に、用紙Pを検知するレジストセンサ49が配置されている。
【0018】
用紙Pは、レジストセンサ49での検知により停止中のレジストローラ対43のニップに先端を突き当てた状態で搬送が一時中止される。その突き当ての際、用紙Pのスキューが補正される。なお、レジストセンサ49は、イニシャル動作や装置異常停止解除時の残用紙の確認動作などにも利用される。
【0019】
レジストローラ対43は、用紙Pを転写ニップで、潜像担持体としての感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで回転駆動を開始し、用紙Pを転写ニップに向けて送り出す。この際、用紙Pを挟持している中継ローラ対42が同時に回転駆動を開始して、一時中止していた用紙Pの搬送を再開する。
【0020】
本プリンタ100の本体筐体120には、手差し給紙トレイ31、手差し搬送部材としての手差し給紙ローラ32、分離パッド33、載置部としての手差し底板34、底板カム35などを備えた手差しシート搬送部としての手差し給紙部30が設けられている。手差し給紙部30の詳細は後述する。
【0021】
手差し給紙部30の手差し給紙トレイ31に手差しされた用紙Pは、手差し給紙ローラ32の回転駆動によって手差し給紙トレイ31から第2のシート搬送路(手差しシート搬送路)である手差し給紙路R2へ送り出される。手差し給紙路R2の下流端は、本体給紙路R1の下流端とともに共通搬送路R3に合流している。
【0022】
手差し給紙ローラ32によって送り出された用紙Pは、手差し給紙路R2内において、手差し給紙ローラ32と分離パッド33との当接による分離ニップを経た後に、共通搬送路R3へ送り込まれ、レジストローラ対43へと搬送される。その後、本体給紙トレイ91から送り出される用紙Pと同様に、レジストローラ対43を経た後に転写ニップに送られる。
【0023】
図2は、本プリンタ100における作像部20の構成を拡大して示す拡大模式図である。作像部20は、図中時計回り方向に回転駆動せしめられるドラム状の感光体1と、感光体1の周囲に、クリーニングブレード2、回収スクリュウ3、帯電ローラ4、帯電クリーニングローラ5、スクレーパ6、潜像書込装置7、現像装置8、転写ローラ10などを備える。
【0024】
導電性ゴムローラ部を具備する帯電ローラ4は、感光体1に接触しながら回転して帯電ニップを形成している。この帯電ローラ4には、帯電用電源から電圧が印加されている。これにより、帯電ニップにおいて、感光体1の表面と帯電ローラ4の表面との間に生じる帯電バイアスによって、感光体1の表面が一様に帯電せしめられる。
【0025】
潜像書込装置7は、LEDアレイを具備しており、感光体1の一様帯電した表面に対してLED光による光書き込みを行う。感光体1の一様帯電された表面部分のうち、書き込み光が照射された領域の電位が減衰し、感光体1の表面に静電潜像が形成される。
【0026】
静電潜像は、感光体1の回転に伴って、現像装置8に対向する現像領域を通過する。現像装置8は、循環搬送部や現像部を有しており、循環搬送部には、トナーと磁性キャリアとを含有する現像剤を収容している。
【0027】
循環搬送部は、現像ローラ8aに供給するための現像剤を搬送する第一スクリュウ8bや、第一スクリュウ8bの直下に位置する独立した空間で現像剤を搬送する第二スクリュウ8cを有している。更には、第二スクリュウ8cから第一スクリュウ8bへの現像剤の受け渡しを行うための傾斜スクリュウ8dも有している。
【0028】
現像ローラ8a、第一スクリュウ8b及び第二スクリュウ8cは、互いに平行な姿勢で配設されている。これに対し、傾斜スクリュウ8dは、それらから傾いた姿勢で配設されている。
【0029】
第一スクリュウ8bは、自らの回転駆動に伴って現像剤を同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。この際、第一スクリュウ8bは、自身に対向配設された現像ローラ8aに一部の現像剤を供給する。第一スクリュウ8bによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、第二スクリュウ8cの上に落とし込まれる。
【0030】
第二スクリュウ8cは、現像ローラ8aから使用済みの現像剤を受け取りながら、受け取った現像剤を自らの回転駆動に伴って同図の紙面に直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送する。第二スクリュウ8cによって同図の紙面に直交する方向における手前側の端部付近まで搬送された現像剤は、傾斜スクリュウ8dに受け渡される。そして、傾斜スクリュウ8dの回転駆動に伴って、同図の紙面に直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送された後、同方向における奥側の端部付近で、第一スクリュウ8bに受け渡される。
【0031】
現像ローラ8aは、筒状の非磁性部材からなる回転可能な現像スリーブと、現像スリーブに連れ回らないようにスリーブ内に固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第一スクリュウ8bによって搬送されている現像剤の一部をマグネットローラの磁力によって現像スリーブの表面で汲み上げる。
【0032】
現像スリーブの表面に担持された現像剤は、現像スリーブの回転に伴って搬送され、現像スリーブとドクターブレードとの対向位置を通過する際に、その層厚が規制される。その後、感光体1に対向する現像領域で、感光体1の表面に摺擦しながら搬送される。
【0033】
現像スリーブには、トナーや感光体1の一様帯電電位(地肌部電位)と同極性の現像バイアスが印加されている。この現像バイアスの絶対値は、潜像電位の絶対値よりも大きく、かつ、地肌部電位の絶対値よりも小さくなっている。
【0034】
このため、現像領域においては、感光体1の静電潜像と現像スリーブとの間にトナーを現像スリーブ側から感光体1側へ静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。この一方で、感光体1の地肌部と現像スリーブとの間には、トナーを感光体1側から現像スリーブ側へ静電移動させる地肌ポテンシャルが作用する。これにより、現像領域では、感光体1の静電潜像にトナーが選択的に付着して静電潜像が現像される。
【0035】
現像領域を通過した現像剤は、現像スリーブの回転に伴って、現像スリーブと第二スクリュウ8cとの対向領域に進入する。この対向領域では、マグネットローラに具備される複数の磁極のうち、互いに同極性である2つの磁極によって反発磁界が形成されている。対向領域に進入した現像剤は、反発磁界の作用によって現像スリーブ表面から離脱して、第二スクリュウ8cに回収される。
【0036】
傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤は、現像ローラ8aから回収された現像剤を含有しており、その現像剤は現像領域で現像に寄与していることからトナー濃度が低下している。現像装置8は、傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤のトナー濃度を検知するトナー濃度センサを具備している。CPU等の半導体回路からなる制御部51は、トナー濃度センサによる検知結果に基づいて、必要に応じて、傾斜スクリュウ8dによって搬送される現像剤にトナーを補給するための補給動作信号を出力する。
【0037】
現像装置8の上方には、トナーカートリッジ9が配設されている。このトナーカートリッジ9は、内部に収容しているトナーを、回転軸部材9aに固定されたアジテータ9bによって撹拌している。そして、トナー補給部材9cが制御部51から出力される補給動作信号に応じて回転駆動されることで、回転駆動量に応じた量のトナーを現像装置8の傾斜スクリュウ8dに補給する。
【0038】
現像によって感光体1上に形成されたトナー像は、感光体1の回転に伴って、感光体1と転写ローラ10とが当接する転写ニップに進入する。転写ローラ10には、感光体1の潜像電位とは逆極性の電圧が印加されており、これにより、転写ニップ内には転写バイアスが形成されている。
【0039】
上述したように、図1のレジストローラ対43は、用紙Pを転写ニップ内で感光体1上のトナー像に重ね合わせうるタイミングで転写ニップに向けて送り出す。転写ニップでトナー像に密着せしめられた用紙には、転写バイアスや転写ニップ圧の作用により、感光体1上のトナー像が転写される。
【0040】
図2のように転写ニップを通過した後の感光体1の表面には、用紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。転写残トナーは、感光体1に当接しているクリーニングブレード2によって感光体1の表面から掻き落とされた後、回収スクリュウ3により搬送され、廃トナーボトルへと送られる。
【0041】
クリーニングブレード2によってクリーニングされた感光体1の表面は、除電手段によって除電された後、帯電ローラ4によって再び一様に帯電せしめられる。感光体1の表面に当接している帯電ローラ4には、トナー添加剤や、クリーニングブレード2で除去し切れなかったトナーなどの異物が付着する。
【0042】
この異物は、帯電ローラ4に当接している帯電クリーニングローラ5に転移した後、帯電クリーニングローラ5に当接しているスクレーパ6によって帯電クリーニングローラ5の表面から掻き落とされる。掻き落とされた異物は、上述した回収スクリュウ3の上に落下する。
【0043】
図1において、感光体1と転写ローラ10とが当接する転写ニップを通過した用紙Pは、定着装置44に送られる。定着装置44は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ44aと、これに向けて押圧される加圧ローラ44bとの当接によって定着ニップを形成している。
【0044】
定着ニップに挟み込まれた用紙Pの表面には、加熱や加圧の作用によってトナー像が定着せしめられる。その後、定着装置44を通過した用紙Pは、排紙路R4を経た後、排出部としての排紙ローラ対46の排紙ニップに挟み込まれる。
【0045】
本プリンタは、用紙Pの片面だけに画像を形成する片面モードと、用紙Pの両面に画像を形成する両面モードとを切り替えて実行することができる。片面モードの場合や、両面モードであって既に用紙の両面に画像を形成している場合には、排紙ローラ対46が正転駆動を続けることで、排紙路R4内の用紙Pを機外に排出する。排出された用紙Pは、本体筐体120の上面に設けられたスタック部にスタックされる。
【0046】
一方、両面モードであって、かつ用紙Pの片面だけにしか画像を形成していない場合には、排紙ローラ対46の排紙ニップに用紙Pの後端部が進入したタイミングで、排紙ローラ対46が逆転駆動される。このとき、排紙路R4の下流端付近に配設された切換爪47が作動して、排紙路R4を塞ぐとともに、反転再送路R5の入口を開く。
【0047】
排紙ローラ対46の逆転駆動によって逆戻りを開始した用紙Pは、反転再送路R5内に送り込まれる。反転再送路R5の下流端は、共通搬送路R3のレジストローラ対43の上流側に合流しており、反転再送路R5内を搬送された後、共通搬送路R3のレジストローラ対43へと再送される。その後、転写ニップでもう一方の面にもトナー像が転写された後、定着装置44と排紙路R4と排紙ローラ対46とを経て機外に排出される。
【0048】
次に、用紙Pの給紙に関する構成及び動作について説明する。図3は、本体給紙トレイ91(図1参照)から用紙Pの給紙を行う本体給紙部と、手差し給紙トレイ31から用紙Pの給紙を行う手差し給紙部30との主要構成を示す斜視図である。図4は、本体給紙部及び手差し給紙部30における駆動系の構成を示す本プリンタの奥側から見た斜視図である。
【0049】
本体給紙部及び手差し給紙部30における駆動系は、図3に示すように、単一のメインモータ61からの駆動力を、本体給紙ローラ41、中継ローラ対42、手差し給紙ローラ32及び底板カム35に分配して駆動する構成となっている。具体的には、図4に示すように、メインモータ61のモータ軸61aから出力される駆動力が、各アイドラギヤ等を介して、本体給紙ローラ41が設けられる給紙ローラ軸62、中継ローラ対42が設けられる中継ローラ軸63、手差し給紙ローラ32が設けられる手差し給紙ローラ軸64、及び、底板カム35が設けられる、回転軸としての手差しカム軸65に伝達されるように構成されている。
【0050】
給紙ローラ軸62、中継ローラ軸63、手差し給紙ローラ軸64及び手差しカム軸65は、それぞれ、駆動力の伝達をONOFFするためのクラッチ62a,63a,64a,65aが設けられている。各クラッチへの通電をONにすると、駆動力が伝達されて各軸62,63,64,65が回転駆動し、各クラッチへの通電をOFFにすると、駆動力の伝達が遮断され、各軸62,63,64,65は回転駆動しない。
【0051】
なお、メインモータ61からの駆動力は、クラッチを介して、レジストローラ対43にも伝達されている。本実施形態では、メインモータ61の駆動力を用い、図1の制御部51によって各クラッチのONOFF制御をすることにより、用紙Pの給紙搬送を実現している。
【0052】
図5は、本体給紙部及び手差し給紙部30における給紙経路を説明するための説明図である。図6は、本体給紙部からの給紙搬送を行う場合のフローチャートである。まず、本体給紙部からの給紙搬送を行う場合について、図5図6を参照して説明する。
【0053】
本体給紙底板92は、本体給紙ローラ41に向けて上方へ付勢されているため、本体給紙ローラ41は本体給紙底板92上の用紙束の状態で載置されている複数の用紙Pのうちの最上位の用紙Pに当接している。本体給紙部からの給紙搬送を開始する場合、制御部51は図6のフローチャートに示すように、まずイニシャル動作が完了しているかどうかを確認し(S1)、イニシャル動作が完了していないとき(S1のNo)は、イニシャル動作を開始する(S2)。
【0054】
イニシャル動作の完了後(S1のYes)、制御部51は、メインモータ61をONにした後(S3)、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをONにする(S4)。これにより、本体給紙ローラ41が回転駆動し、本体給紙トレイ91内の最上位の用紙Pが分離パッド48側へ送り出される。
【0055】
このとき、最上位の用紙Pと一緒に上から2番目以降の用紙が送り出されても、2番目以降の用紙は分離パッド48との摩擦力によって搬送が阻害され、最上位の用紙Pのみが分離パッド48を通過し得る。なお、本体給紙部からの給紙搬送中は、手差し給紙部30からの給紙搬送は行われないので、手差し給紙クラッチ64aや手差し底板カムクラッチ65aはOFFの状態のままである。
【0056】
その後、送り出された用紙Pは、図5中符号R1で示す本体給紙路に沿って搬送される。このとき、中継ローラ対42を構成する一方の第1の搬送ローラとしての中継駆動ローラ42aがメインモータ61からの駆動力によって回転駆動している。また、中継ローラ対42を構成する他方の第2の搬送ローラとしての中継従動ローラ42bは、図5に示すように、そのローラ軸66(第2の搬送ローラの軸部)を軸受けする軸受部37aが、付勢部材であるバネとしての加圧バネ37bによって付勢され、その付勢力により中継駆動ローラ42aに当接している。
【0057】
これにより、中継従動ローラ42bは、中継駆動ローラ42aに連れまわり回転する。本体給紙路R1を搬送される用紙Pは、中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとのニップ部に挟まれた状態(挟持された状態)で、搬送される。
【0058】
レジストローラ対43より搬送方向上流側のレジストセンサ49に用紙Pの先端が到達してレジストセンサ49がONになると(S5のYes)、所定時間経過後(例えばレジストセンサ49がONになってから100ms後)、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをOFFにして(S6)、用紙Pの搬送を一時中止する。これにより、用紙Pの先端が停止中のレジストローラ対43のニップに突き当たった状態となって、用紙Pのスキューが補正される。
【0059】
制御部51は、用紙Pを転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで(例えば本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aをOFFにしてから200ms後)、中継クラッチ63a及びレジストクラッチをONにする(S7)。これにより、レジストローラ対43及び中継ローラ対42が回転駆動を開始し、用紙Pが転写ニップに向けて搬送される。
【0060】
このとき、本体給紙クラッチ62aはOFFのままなので、本体給紙ローラ41は回転駆動しない。用紙Pの後端側がまだ本体給紙ローラ41と分離パッド48に挟持されている状態でも、本体給紙ローラ41はレジストローラ対43及び中継ローラ対42の搬送力によって搬送される用紙Pに連れまわる形で回転し、搬送を阻害することはない。そして、レジストセンサ49に用紙Pの後端が到達してレジストセンサ49がOFFになると(S8のYes)、中継クラッチ63aをOFFにして(S9)、中継ローラ対42の回転駆動を停止する。
【0061】
次に、手差し給紙部30からの給紙搬送を行う場合について、図7図11を参照して説明する。図7は、手差し給紙部30から手差し給紙トレイ31等を取り外した状態の外観斜視図である。図8は、手差し給紙部30の主要部を示す斜視図である。図9は手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間した状態を示す斜視図、図10は手差し底板34が手差し給紙ローラ32に接近した状態を示す斜視図である。図11は、手差し給紙部30からの給紙搬送を行う場合の制御動作を示すフローチャートである。
【0062】
図7に示すように、フレーム80に、分離パッド33、手差し底板34、および、中継従動ローラ42bが装着されてユニットを形成し、このユニットのフレーム80の両端部が図1の本体筐体120にネジ止めされて固定される。
【0063】
上記ユニットの手差し底板34は、図5に示すように、底板スプリング36によって手差し給紙ローラ32に向けて上方へ付勢されている。また、手差し底板34には、図8に示すように、底板カム35に対応する下方の箇所に手差し底板34の底板ガイド部34aが設けられている。
【0064】
手差しカム軸65には底板カム35が設けられる(手差しカム軸65およびその周辺の構造については後述する)。この底板カム35の回転により、手差し底板34を上方の手差し給紙ローラ32に対して接離させることができる。つまり、手差しカム軸65が回転して底板カム35が底板ガイド部34aに当接してこれを押し下げると、手差し底板34は、フレーム80(図7参照)に固定される底板スプリング36の付勢力に抗して下降し、図9に示すように、手差し給紙ローラ32から離れる。またこれとは逆に、手差しカム軸65が回転して底板カム35が底板ガイド部34aに当接しない状態になると、図10に示すように、底板スプリング36の付勢力により、手差し底板34が手差し給紙ローラ32に接近する。
【0065】
手差し給紙部30からの給紙搬送を開始する場合、制御部51は図11に示すように、まず、イニシャル動作が完了しているかどうかを確認し(S11)、イニシャル動作が完了していないとき(S11のNo)は、イニシャル動作を開始する(S12)。
【0066】
イニシャル動作の完了後(S11のYes)、制御部51は、メインモータ61をONにする(S13)。そして、前述した手差し底板34を手差し給紙ローラ32に接近させるための制御を行う。具体的には、手差し底板カムクラッチ65aをONにする(S14)。これにより、手差しカム軸65が回転駆動し(半回転180°)、底板カム35が底板ガイド部34aに当接している状態から当接していない状態へ遷移する。これにより、手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間している図9の状態から、手差し底板34が手差し給紙ローラ32に接近した図10の状態へ遷移する。
【0067】
上記の動作は、手差しカム軸65が図9の矢印方向に180°回転することにより行われる。この際、底板カム35と一体形成されている突起板35aが、押し下げレバー65dに当接して押し下げレバー65dを押し下げる位置から、押し下げレバー65dに当接しない位置へと回転する。これにより、押し下げレバー65dが上方へ移動し、カム検知フィラー65bへの押し下げ動作を解除する。従って、カム検知フィラー65bが所定の付勢力によって上昇し、検知部としてのフィラーセンサ65cによって検知される。以上の動作により、カム検知フィラー65bがフィラーセンサ65cに検知されない非検知位置(図17参照)からフィラーセンサ65cに検知される検知位置(図16参照)に移動し手差し底板34や中継従動ローラ42bの位置を認識する。
【0068】
制御部51は、フィラーセンサ65cがONになると(S15のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをOFFにする(S16)。これにより、底板カム35が底板ガイド部34aに当接しない状態で手差しカム軸65の回転が停止し、手差し底板34が底板スプリング36の付勢力により手差し給紙ローラ32に向けて付勢された状態を維持する。
【0069】
以上により、手差し給紙ローラ32は、手差し給紙トレイ31及び手差し底板34上に載置された用紙束の最上位の用紙Pに当接した状態になる。つまり、手差し給紙ローラ32によって手差し給紙路R2に給紙が可能な状態になる。また、フィラーセンサ65cのONにより、制御部51がその状態が検知する。
【0070】
続いて、制御部51は手差し給紙クラッチ64aをONにする(S17)。これにより、手差し給紙ローラ32が図9の矢印方向に回転駆動し、手差し底板34上の最上位の用紙Pが分離パッド33側へ送り出される。
【0071】
このとき、図5に示すように、最上位の用紙Pと一緒に上から2番目以降の用紙が送り出されても、2番目以降の用紙は分離パッド33との摩擦力によって搬送が阻害され、最上位の用紙Pのみが分離パッド33を通過し得る。なお、手差し給紙部30からの給紙搬送中は、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63aはOFFの状態のままであり、本体給紙トレイ91からの給紙搬送は行われない。
【0072】
手差し底板34上の最上位の用紙Pが分離パッド33側へ送り出された後、送り出された用紙Pは、符号R2で示す手差し給紙経路に沿って搬送される。そして、レジストセンサ49に用紙Pの先端が到達してレジストセンサ49がONになると(図11のS18のYes)、所定時間経過後(用紙Pの先端がレジストローラ対43に到達する前のタイミングで、例えばレジストセンサ49がONになってから100ms後)、手差し給紙クラッチ64aをOFFにして(S19)、用紙Pの搬送を一時中止する。これにより、用紙Pの先端が停止中のレジストローラ対43のニップに突き当たった状態となって、用紙Pのスキューが補正される。
【0073】
制御部51は、用紙Pを転写ニップで感光体1の表面のトナー像に重ね合わせ得るタイミングで、レジストクラッチをONにする(S20)。これにより、レジストローラ対43が回転駆動を開始し、用紙Pが転写ニップに向けて搬送される。
【0074】
このとき、手差し給紙クラッチ64aはOFFのままなので手差し給紙ローラ32は回転駆動しない。このため、用紙Pの後端側がまだ手差し給紙ローラ32と分離パッド33及び手差し底板34との間に挟持されている状態であると、搬送負荷が大きすぎて、レジストローラ対43の搬送力だけでは用紙Pを適切に搬送できないおそれがある。
【0075】
そこで、制御部51は、手差し底板カムクラッチ65aを再度ONにし(S21)、図10の底板カム35が底板ガイド部34aに当接しない状態(手差し底板34が手差し給紙ローラ32に付勢されている状態)から、手差しカム軸65をさらに180°回転駆動させて、図9のように底板カム35が底板ガイド部34aに当接する状態(手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間する状態)へと遷移させる。
【0076】
上記の動作を実施する制御側の動作として、制御部51は、手差し底板カムクラッチ65aをONにしてから所定時間経過後(例えば200ms後)に、手差し底板カムクラッチ65aをOFFにする(S22)。これにより、図9のように底板カム35が底板ガイド部34aに当接した状態で手差しカム軸65の回転が停止し、手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間した状態になる。
【0077】
その結果、手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間に用紙Pの後端側が挟持されない状態になり、搬送負荷が低減される。したがって、レジストローラ対43の搬送力だけで用紙Pを適切に搬送できるようになる。
【0078】
ところで、本プリンタが対応する用紙(シート)には様々な厚みのものが存在し、中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとが搬送する用紙の厚みも様々である。例えば、図12(a)および図12(b)に示すように、中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとの間のニップ部Nにより、薄紙P1や厚紙P2を挟持して搬送する。薄紙P1は厚紙P2に比べてそのこしが弱いため、ニップ部Nでの変形量も大きくなる。
【0079】
そして厚紙を搬送する場合には、図5に示すように、中継ローラ対42の下流側のレジストローラ対43に厚紙の先端を突き当てることで、厚紙にたるみを作り、厚紙の先端位置を揃える。そして、厚紙にたるみを作るためには大きな搬送力が必要となるため、中継ローラ対42のニップ部Nのニップ圧を、厚紙に合わせたものに設定する必要がある。
【0080】
しかし、厚紙用に設定した上記のニップ圧で薄紙を搬送しようとすると、ニップ圧が過大になって薄紙の変形量が大きくなり、薄紙のシワやキズの原因になるおそれがある。またこれとは逆に、中継ローラ対42のニップ部Nのニップ圧を薄紙に合わせると、厚紙にたるみを作ることが難しくなってしまう。
【0081】
以上のように、搬送する用紙の厚みによって中継ローラ対42のニップ部Nの適切なニップ圧も異なってくる。そこで本実施形態では、中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧力、つまり、加圧バネ37bの中継従動ローラ42bに対する付勢力を調整する付勢力調整機構を設ける。具体的には、付勢力調整機構の一部として、前述した手差しカム軸65を利用している。
【0082】
図13に示すように、手差しカム軸65の軸方向一端側に、付勢力調整部材であるカムレバー70が挿入される。カムレバー70は、ネジ110により手差しカム軸65に固定される。これらの手差しカム軸65、手差しカム軸65に設けられた底板カム35、および、カムレバー70等により付勢力調整機構60が構成される。
【0083】
カムレバー70は、その外周面側に、カムレバー70の径方向に突出する複数の突起部70a、70b、70cを有する。突起部70aおよび突起部70bは軸方向の同じ位置に設けられ、突起部70cは、突起部70a、70bと軸方向の異なる位置に設けられる。
【0084】
手差しカム軸65の回転により、カムレバー70が回転する。これにより、突起部70a~70cがカムレバー70の周方向に回転して周方向位置を変化させる。また手差しカム軸65の回転により、手差しカム軸65に設けられた底板カム35および突起板35aが回転する。
【0085】
この手差しカム軸65が、図14に示すように、フレーム80に装着される。そして図15に示すように、フレーム80に、被当接部材としての支持プレート71、加圧バネ37b、軸受部37a、中継従動ローラ42b、そして、後述する連結部材72等が装着される。
【0086】
以上の手差しカム軸65周辺の構成を図16に示す。カムレバー70の軸方向において、突起部70c(図13参照)に対向して、検知部としてのスイッチSWが設けられる。スイッチSWは、カムレバー70を挟んで支持プレート71と反対側に設けられる。
【0087】
図18に示すように、加圧バネ37bは、その一端を支持プレート71に固定され、その他端を軸受部37aに固定される。中継従動ローラ42bは、そのローラ軸66を保持する軸受部37aを介して加圧バネ37bの付勢力を伝達され、中継駆動ローラ42aの側(図の左側)へ加圧される。これにより、中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとの間にニップ部が形成される。
【0088】
支持プレート71は、加圧バネ37bが固定される側と反対側の面に、手差しカム軸65からの突起部70aが当接する。別の言い方をすると、支持プレート71は、突起部70aに当接された位置で、図18の左右方向の位置決めされている。
【0089】
手差しカム軸65が回転することにより、カムレバー70は、支持プレート71に当接する部分を変更することができる。具体的には、カムレバー70の支持プレート71に当接する部分である、突起部70a、突起部70b、これらの突起部が設けられていない周面部70d(図20a参照)を当接させる。これらの突起部70a、突起部70b、そして周面部70dは、周方向にその径が変化するカム部74を構成する。ただし、曲面を周状に連続して形成したカム部74としてもよい。
【0090】
図18に示すように、支持プレート71の軸方向両側には、連結部材72が設けられる。図19に示すように、連結部材72は、複数の孔を有する板状部材である。連結部材72の一端側に設けられたスライド孔72a(孔部72a)に、支持プレート71に設けられた、挿入部としてのピン71aが挿入されている。ピン71aは、支持プレート71の側壁に設けられ、側壁よりも軸方向の外側へ突出した部分である。また、連結部材72の他端側に設けられた孔部にローラ軸66が挿入されている。
【0091】
図18に示すように、スライド孔72aは、中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧方向(図18の左右方向)に延在しており、ピン71aはスライド孔72a内を図18の左右方向に移動可能に設けられる。つまり、支持プレート71には連結部材72に対する上記左右方向の移動範囲が、ピン71aがスライド孔72a内で移動可能な範囲内に規制されている。図18の左右方向は、上記のように中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧方向およびその反対方向でもあり、中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する接離方向でもある(図18の両矢印C参照で、図18の左方向が接近方向、図18の右方向が離間方向)。以下、この方向を単に接離方向とも呼ぶ。
【0092】
引張部材である各バネ73は、一端がカバー部75に、他端が各連結部材72に固定され、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aから引き離す方向の力を、連結部材72を介してローラ軸66および中継従動ローラ42bに加えている。このため中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aへの付勢力が回避され、押圧のない離間状態またはニップ圧のない状態になり、中継従動ローラ42bが連れ回りしない状態にすることができる。なお、このカバー部75は、ローラ軸66と手差しカム軸65の位置を決める部材でありローラ軸66と手差しカム軸65が貫通する孔を有し、ローラ軸66と手差しカム軸65と各孔とは中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとが接離可能な隙間を有してもよい。
【0093】
図20(a)に示すように、突起部70aは突起部70bよりもその高さ(突出方向の幅)が大きい。従って、突起部70aが支持プレート71に当接することで、加圧バネ37bが最も圧縮され、中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧力が最も大きくなる。つまり、中継ローラ対42のニップ部Nのニップ圧が最も大きくなる。この配置が、ニップ部Nを、厚紙を通紙するのに適したニップ圧に設定した厚紙設定である。
【0094】
手差しカム軸65の回転位相が図20(a)の位置において、図20(b)に示すように、突起部70cはスイッチSWと反対側に配置され、スイッチSWはOFF状態である。また図20(c)に示すように、ピン71aがスライド孔72a内で中継従動ローラ42b寄りに配置される。
【0095】
次に、手差しカム軸65の回転による加圧バネ37bの伸縮動作および中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aから離間動作について説明する。なお、図20図22の各図において、(a)~(c)はそれぞれ同じ配置の違う断面を示した図であり、(a)図は加圧バネ全体を示した断面図、(b)図はスイッチSWの位置の断面図、(c)図は連結部材72を示した断面図である。
【0096】
図21(a)に示すように、手差しカム軸65を回転させて突起部70bを支持プレート71に当接させる。これにより、突起部70bと突起部70aの高さの差分だけ、支持プレート71が中継駆動ローラ42aから離間する。つまり、その分だけ加圧バネ37bが伸長し付勢力が減圧するため、中継ローラ対42のニップ部Nのニップ圧が小さくなる。この配置が、ニップ部Nを、薄紙(普通紙)を通紙するのに適したニップ圧に設定した普通紙設定である。以下、上記の支持プレート71の移動方向(図21bの右方向)を離間方向とも呼び、その反対方向を中継駆動ローラ42aに対する接近方向として、単に接近方向とも呼ぶ。
【0097】
手差しカム軸65の回転位相が図21(a)の位置において、図21(b)に示すように、突起部70cはスイッチSWを押圧してON状態にする。これにより、制御部51が、ニップ部Nのニップ圧が普通紙設定になっていることを認識できる。このようにスイッチSWにより中継従動ローラ42bや手差し底板34の位置を認識できる。
【0098】
また図21(c)に示すように、支持プレート71が離間方向へ移動した分だけ、ピン71aがスライド孔72a内を移動する。つまり、支持プレート71が連結部材72に対して離間方向へ相対移動する。
【0099】
また、図22(a)に示すように、手差しカム軸65を回転させて、カムレバー70を、突起部70aおよび突起部70bが支持プレート71に当接しない位相に変更する。これにより、突起部70aあるいは突起部70bが支持プレート71に当接した場合(図20aあるいは図21aの場合)と比較すると、支持プレート71がさらに離間方向へ移動し、加圧バネ37bの付勢力がさらに減圧あるいは付勢されない状態(回避された状態)になる。この状態で、加圧バネ37bの中継従動ローラ42bに対する上記接近方向の付勢力は、バネ73の上記離間方向の引張力よりも小さくなっている。
【0100】
図22(c)に示すように、上記の支持プレート71の離間方向への移動の途中で、ピン71aがスライド孔72aに当接する。そして、バネ73の引張力により、連結部材72が離間方向へ移動し、連結部材72に挿入されたローラ軸66も離間方向へ移動する。つまり、図22(c)および図23に示すように、中継従動ローラ42bが中継駆動ローラ42aから離間する。この配置は、紙詰まりを取り除くための設定である。つまり、ニップ部Nで用紙のジャムが発生した場合に、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aから離間させることで、その間に詰まった用紙を取り除くことができる。以下、この配置を離間設定と呼ぶ。なお、バネ73を用いてローラ軸66を離間方向へ移動しているが、本実施形態と異なる構成として、バネ73を用いない場合も可能である。加圧バネ37bが伸びた状態でピン71aがスライド孔72aに離間方向で当接しないようにする。これによりカバー部75の各孔においてローラ軸66と手差しカム軸65が隙間を移動する。すなわち中継駆動ローラ42aと中継従動ローラ42bとは付勢力が回避され押圧のない離間状態またはニップ圧のない中継従動ローラ42bが連れ回りしない状態にすることもできる。特に手差しカム軸65に係合する孔を長孔にしておくと良い。また上記の離間設定の配置は図22(a)の配置に限らず、突起部70aおよび突起部70bが支持プレート71に当接しない位置、つまり、周面部70dのいずれかの部分が支持プレート71に当接する位置であればよい。
【0101】
また図22(b)に示すように、離間設定において、突起部70cはスイッチSWに接触しておらず、スイッチSWはOFF状態である。
【0102】
以上のように本実施形態では、中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧力を変更する加圧力可変機構、あるいは、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aから離間させる離間動作のための駆動力として、手差しカム軸65の回転を利用する。従って、新たに駆動機構を設けることなく上記動作が可能になり、画像形成装置の部品数を削減および省スペース化が実現できる。また中継従動ローラ42bと中継駆動ローラ42aとの離間のため、外カバー等のユニットの開閉や取外しの必要がないため、開閉部材の開閉領域を含めた開閉構造のスペース分だけ、省スペース化が実現できる。
【0103】
また以上のように、スライド孔72a内に支持プレート71のピン71aを配置することで、ピン71aの接離方向の移動範囲をスライド孔72a内に規制できる。つまり、支持プレート71の連結部材72に対する接離方向の相対移動の範囲を規制できる。これにより、手差しカム軸65の回転動作によって、前述のように中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aに対する加圧力の変更と中継従動ローラ42bの中継駆動ローラ42aからの離間の両方の動作をさせることができる。つまり、図20(c)あるいは図21(c)のように、ピン71aが連結部材72に非接触の状態では、手差しカム軸65の回転によって支持プレート71のみが接離方向へ移動し、上記加圧力を変更できる。一方、図22(c)のように、ピン71aがスライド孔72aの一端側まで移動し、ピン71aが連結部材72に接触した状態では、上記離間方向の移動時に、支持プレート71、連結部材72、そして中継従動ローラ42bを一体となって移動させることができる。このように、接離方向に延在する孔部72aとピン71aの組み合わせにより、支持プレート71の接離方向の位置がある特定の範囲では支持プレート71のみを移動させて加圧バネ37bの伸縮動作をさせ、ある特定の範囲では支持プレート71と一体的に連結部材72および中継従動ローラ42bを移動させ、中継従動ローラ42bを中継駆動ローラ42aに対して接離方向へ移動させることができる。
【0104】
また、それぞれの突起部70a、70bが支持プレート71に当接することで、それぞれの位置で支持プレートの配置を固定できる。従って、ニップ部Nのニップ圧をそれぞれ所望の圧力、つまり、厚紙設定と普通紙設定の圧力に設定できる。なお、突起部を3つ以上設けて、3種類以上の紙厚の設定をすることもできる。
【0105】
なお、本実施形態では支持プレート71に挿入部としてのピン71aを設けて連結部材72に接離方向に延在する孔部としてのスライド孔72aを設けたが、支持プレート71に孔部を設けて連結部材72に挿入部を設ける構成であってもよい。また、本実施形態では、加圧バネ37bの一端が固定され、接離方向の移動によって加圧バネ37bを伸縮させる部材と、カムレバー70のカム部が当接する部材と、連結部材72の穴部に挿入される挿入部を設けた部材を全て同一の支持プレート71としたが、これらが、一体的に接離方向へ移動する複数の部材に分かれていてもよい。
【0106】
また前述のように、手差しカム軸65の回転により、突起板35a(図13参照)が回転し、カム検知フィラー65bがフィラーセンサ65cによって検知される検知位置(図16参照)とフィラーセンサ65cによって検知されない非検知位置(図17参照)とを切り換えることができる。具体的には、図20に示す厚紙設定の配置では図16に示すようにフィラーセンサ65cが検知状態になり、それ以外の配置、つまり図21および図22に示す配置では図17に示すようにフィラーセンサ65cが非検知状態になる。
【0107】
以上の厚紙設定(図20)、普通紙設定(図21)、離間設定(図22)のそれぞれの場合について、フィラーセンサ65cとスイッチSWの状態をまとめたものを表1に示す。
【0108】
【表1】
【0109】
制御部51は、フィラーセンサ65cとスイッチSWの状態の組み合わせにより、3つの設定モードを識別できる。つまり、表1に示すように、フィラーセンサとSWの状態の組み合わせが、ONとOFFの場合は厚紙設定、OFFとONの組み合わせの場合は普通紙設定、両方がOFFの場合は離間設定と認識できる。但し、必ずしも両方のセンサを設ける必要はない。以下の説明では、まず、スイッチSWを設けず、フィラーセンサ65cのみを設けた場合の制御フローについて説明する。
【0110】
まず、厚紙を通紙する場合と普通紙を通紙する場合のそれぞれについて、ニップ部Nのニップ圧をそれぞれのモードに設定するフローを説明する。
【0111】
図24に示すように、本体給紙厚紙モードの場合(本体給紙トレイから厚紙を給紙する場合)には、まず、フィラーセンサ65cがONか否かを判断する(図24のS31)。前述のように、フィラーセンサ65cがONの場合には厚紙設定になっていると判断できるので、メインモータを駆動させて通常の給紙フローを実行する(S37)。フィラーセンサ65cがOFFの場合には、メインモータを回転させ、手差し底板カムクラッチ65aに通電させる(S32,S33)。これにより、手差しカム軸65が回転する。
【0112】
そして、フィラーセンサ65cがONになったタイミングで、メインモータおよび手差し底板カムクラッチ65aをOFFにする(S34,S35)。これにより、ニップ部Nのニップ圧が最も大きくなった状態(図20aの状態)で手差しカム軸65を停止でき、厚紙設定が完了する。そして、イニシャル動作を開始し、その後、図6で示した通常の給紙フローを実行する(S36)。
【0113】
次に本体給紙普通紙モードの場合を説明する。図25に示すように、まず、フィラーセンサ65cがOFFか否かを判断する(図25のS41)。前述のように、フィラーセンサ65cがOFFの場合には普通紙設定になっていると判断できるので、メインモータを駆動させて図6で示した通常の給紙フローを実行する(S48)。フィラーセンサ65cがONの場合には、メインモータを回転させ、手差し底板カムクラッチ65aに通電させる(S42,S43)。これにより、手差しカム軸65が回転する。
【0114】
そして、フィラーセンサ65cがONになった時点から(S44のYes)200ms後、手差し底板カムクラッチ65aをOFFにする(S45)。そしてその後、メインモータをOFFにする(S46)。前述のように、フィラーセンサ65c単独では普通紙設定の位置か否かを識別できないため、フィラーセンサ65cがONになった位置から200ms回転させることで、手差しカム軸65を普通紙設定の位相(図21aの状態)まで回転させることができる。これにより、普通紙設定が完了する。そして、イニシャル動作を開始し、その後、図6で示した通常の給紙フローを実行する(S47)。
【0115】
次に、スイッチSWを設け、フィラーセンサ65cに替えてスイッチSWを上記制御に用いた場合の普通紙設定のフロー図を、図26を用いて説明する。なお、厚紙設定は前述のようにフィラーセンサ65c単独での識別が可能なため、フィラーセンサ65cを用いて位相の判断を行う。従って、そのフロー図に変化はない。
【0116】
図26に示すように、まず、スイッチSWがONか否かを判断する(図26のS51)。前述のように、スイッチSWがONの場合には普通紙設定になっていると判断できるので、メインモータを駆動させて図6で示した通常の給紙フローを実行する(S57)。スイッチSWがOFFの場合は、メインモータを回転させ、手差し底板カムクラッチ65aに通電させる(S52,S53)。これにより、手差しカム軸65が回転する。
【0117】
そして、スイッチSWがONになった位置で、手差し底板カムクラッチ65a、および、メインモータをOFFにする(S55)。これにより、普通紙設定が完了する。そして、イニシャル動作を開始し、その後、図6で示した通常の給紙フローを実行する(S56)。
【0118】
このように、スイッチSWを設けることで、制御部51は、スイッチSWがONになった位置を普通紙設定の位置と判断することができる。従って、前述の実施形態のように、一度、フィラーセンサ65cがONになる位置まで手差しカム軸65を回転させ、さらに、所定時間だけ手差しカム軸65を回転させる(図25のS44、S45参照)といった動作が不要になり、普通紙設定への切り替えのための時間の短縮化およびメインモータの駆動時間の短縮化ができる。なお、フィラーセンサ65cの検知精度を上げて単独で普通紙と厚紙との識別を可能にしてもよいし、スイッチSWの単独または併用でもよい。
【0119】
図27は、手差し給紙と本体給紙のいずれを行うかを判断する制御フロー図である。図27に示すように、まず、手差し給紙か否かを制御情報から判別する(S101)。そして、Yesの場合(S102)には、図11で示した手差し給紙フローへ移行する。Noの場合(S103)には、厚紙設定か普通紙設定かを判断し、前述の各設定のフロー(図24図25あるいは図26のフロー)へ移行する。このように、給紙装置による給紙開始時には、まず、手差し給紙か本体給紙かの判断が行われる。
【0120】
次に、本プリンタにおける異常停止時における処理フローについて説明する。 図28は、本プリンタにおける異常停止時における処理の流れを示すフローチャートである。
本プリンタにおいて、搬送不良など、用紙Pの搬送を停止させるべき装置異常が検知されると(S61)、制御部51は、まず、本体給紙クラッチ62a及び中継クラッチ63a並びに手差し給紙クラッチ64aをOFFにする(S62)。その後、手差し給紙中であるかどうかを制御部51が制御情報から判断する(S63)。
【0121】
手差し給紙中である場合(S63のYes)、本実施形態では、用紙Pが手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間に挟持されている可能性があるので、手差し給紙ローラ32と手差し底板34とを互いに離間させる。本実施形態においては、手差し底板34が上昇しているフィラーセンサ65cがONである状態から手差しカム軸65を200msだけ回転駆動させると、手差し底板34が下降して手差し給紙ローラ32から離間した状態になる。なお、このとき、中継ローラ対42の両ローラ42a、42bは当接した状態になる。
【0122】
本実施形態では、上述したように、手差し給紙中において、手差し底板34が手差し給紙ローラ32に接触した状態と離間した状態のいずれの状態にもなり得る。そのため、制御部51は、まず、フィラーセンサ65cがONであるかどうかを判断し(S64)、フィラーセンサ65cがONであったなら(S64のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをONにして(S66)、手差しカム軸65を回転駆動させ、200ms後に手差し底板カムクラッチ65aをOFFにして(S67)手差しカム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をOFFにし(S70)、装置を停止させ(S71)、ユーザーによる用紙Pの除去作業が可能な状態にする。
【0123】
一方、制御部51は、フィラーセンサ65cがOFFであったなら(S64のNo)、手差し底板カムクラッチ65aをONにし(S65)、手差しカム軸65を回転駆動させる。その後、フィラーセンサ65cがONになったら(S64のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをそのままONにし続けて(S66)、手差しカム軸65の回転駆動を継続し、200ms後に手差し底板カムクラッチ65aをOFFにして(S67)、手差しカム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をOFFにし(S70)、装置を停止させ(S71)、ユーザーによる用紙Pの除去作業が可能な状態にする。
【0124】
以上のような制御によって、手差し給紙中に用紙Pの搬送を停止させるべき装置異常が発生したとき、手差し底板34が手差し給紙ローラ32から離間した状態になって、手差し給紙路R2中に残存する用紙P(手差し給紙ローラ32と手差し底板34との間に挟持されている用紙P)の除去作業が容易になる。
【0125】
また、本体給紙中であった場合(S63のNo)、用紙Pが中継ローラ対42のローラ間に挟持されている可能性があるので、中継ローラ対42のローラ間を互いに離間させる。本実施形態においては、図22(a)のように、突起部70aおよび突起部70bが支持プレート71に当接しない状態で中継ローラ対42のローラ間が互いに離間した状態になる。具体的には、手差し底板カムクラッチ65aをONにして(S68)、50ms後に手差し底板カムクラッチ65aをOFFにする(S69)。つまり、通常の動作時には突起部70aが支持プレート71に当接する位置(図20aの位置)か突起部70bが支持プレート71に当接する位置(図21aの位置)かのいずれの配置になっているため、そこから適当な時間だけカムレバー70を回転させることにより、カムレバー70を突起部70aおよび突起部70bが支持プレート71に当接しない離間位置に配置することができる。
【0126】
その後、制御部51は、メインモータ61をOFFにし(S70)、装置を停止させ(S71)、ユーザーによる用紙Pの除去作業が可能な状態にする。
【0127】
以上のような制御によって、本体給紙中に用紙Pの搬送を停止させるべき装置異常が発生したとき、中継ローラ対42の両ローラ42a、42bが互いに離間した状態になり、本体給紙路R1中に残存する用紙P(中継ローラ対42のローラ間に挟持されている用紙P)の除去作業が容易になる。そして、両ローラ42a、42bを離間させる動作を、上記のように制御部51によって自動で行うことができるため、ユーザー操作を必要とせずその利便性が高い。加えて、本実施形態では、このようなユーザー操作を不要とするために専用の動作手段を設けることなく、手差し底板34を動作させるための手差しカム軸65を利用して中継ローラ対42のローラ間を離間させることができる。このように、簡易な構成によって、上記離間動作を実現できる。
【0128】
また、手差しカム軸65を利用することで、手差しカム軸65の位相を検知するフィラーセンサ65cを本体給紙の設定モードの検知、つまり、制御部51が厚紙設定、普通紙設定、離間設定のいずれの設定であるかを検知するために利用することができるため、この点からも給紙装置の部品数の削減や構成の簡素化を実現できる。
【0129】
次に、本プリンタにおける異常停止の解除時における処理フローについて説明する。
図29は、本プリンタにおける異常停止解除時における処理の流れを示すフローチャートである。装置の異常停止が発生し、ユーザーによる用紙Pの除去作業が終了したら、制御部51は、装置の異常停止を解除し(S81)、まず、レジストセンサ49がOFFであるか否かを判断する(S82)。用紙Pの搬送を停止させるべき装置異常が発生した場合、通常、搬送中であった用紙Pはレジストセンサ49との対向位置に存在する。そのため、レジストセンサ49がOFFであれば(S82のYes)、装置異常停止時に残存していた用紙Pは除去されたと判断し、プリント再開のためのイニシャル動作を開始する(S84)。一方、レジストセンサ49がONであった場合(S82のNo)、再び、装置異常停止状態に戻し(S83)、例えば、ユーザーに報知して用紙の除去を促すなどの処理をする。
【0130】
イニシャル動作を開始すると、制御部51は、まず、メインモータ61をONにする(S85)。その後、フィラーセンサ65cがONであるどうかを判断する(S86)。そして、フィラーセンサ65cがONであったなら(S86のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをONにして(S88)、手差しカム軸65を回転駆動させ、200ms後に手差し底板カムクラッチ65aをOFFにして(S89)、手差しカム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をOFFにすることで(S90)、イニシャル動作を終了する(S91)。
【0131】
一方、制御部51は、フィラーセンサ65cがOFFであったなら(S86のNo)、手差し底板カムクラッチ65aをONにし(S87)、手差しカム軸65を回転駆動させる。その後、フィラーセンサ65cがONになったら(S86のYes)、手差し底板カムクラッチ65aをそのままONにし続けて(S88)、手差しカム軸65の回転駆動を継続し、200ms後に手差し底板カムクラッチ65aをOFFにして(S89)、手差しカム軸65の回転を停止させる。その後、制御部51は、メインモータ61をOFFにすることで(S90)、イニシャル動作を終了する(S91)。
【0132】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0133】
20 作像部
30 手差し給紙部(手差しシート搬送部)
31 手差しトレイ
32 手差し給紙ローラ(手差し搬送部材)
34 手差し底板(載置部)
34a 底板ガイド部
35 手差し底板カム
35a 突起板
36 底板スプリング
37a 軸受部
37b 加圧バネ(付勢部材あるいはバネ)
40 本体給紙部
41 本体給紙ローラ
42 中継ローラ対
42a 中継駆動ローラ(第1の搬送ローラ)
42b 中継従動ローラ(第2の搬送ローラ)
43 レジストローラ対
46 排紙ローラ対(排出部)
49 レジストセンサ
50 給紙部(シート搬送装置)
51 制御部
60 付勢力調整機構
61 メインモータ
62 給紙ローラ軸
62a 本体給紙クラッチ
63 中継ローラ軸
63a 中継クラッチ
64 手差し給紙ローラ軸
64a 手差し給紙クラッチ
65 手差しカム軸(回転軸)
65a 手差し底板カムクラッチ
65b カム検知フィラー
65c フィラーセンサ(検知部)
65d 押し下げレバー
66 ローラ軸
70 カムレバー
70a~70c 突起部
71 支持プレート(被当接部材)
71a ピン(挿入部)
72 連結部材
72a スライド孔(孔部)
73 バネ(引張部材)
74 カム部
100 プリンタ(画像形成装置)
SW スイッチ(検知部)
C 中継従動ローラの中継駆動ローラに対する接離方向
P 用紙(記録媒体あるいはシート)
R1 本体給紙路(第1のシート搬送路)
R2 手差し給紙路(第2のシート搬送路)
R3 共通搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【文献】特開2011-190030号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図11
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図15
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図19
図20
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図25
図26
図27
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