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特許7510119重合体、それを用いた液晶配向剤、液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】重合体、それを用いた液晶配向剤、液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/32 20060101AFI20240626BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C08G18/32 050
C08G18/32 037
G02F1/1337 520
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023007632
(22)【出願日】2023-01-20
(62)【分割の表示】P 2020507905の分割
【原出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2023052560
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2018057182
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】野田 尚宏
【審査官】大塚 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-002235(JP,A)
【文献】特公昭45-022159(JP,B1)
【文献】特開昭50-012085(JP,A)
【文献】特公昭49-012080(JP,B1)
【文献】特開2017-142453(JP,A)
【文献】特公昭46-009572(JP,B1)
【文献】特開平11-255721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/32
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(3-1)で表されるジアミノ化合物と、ジイソシアネートと、から得られる、重合体。
【化1】
式中、Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、分岐していてもよい。Bは単結合、又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2の脂肪族炭化水素基を示す。
【請求項2】
前記ジアミノ化合物と、下式(4-1)~式(4-11)及び式(4-13)で表されるジイソシアネートの少なくとも1つと、から得られる、請求項1に記載の重合体。
【化2】
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の重合体を用いた、液晶配向剤。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶配向剤から得られる、液晶配向膜。
【請求項5】
請求項4に記載の液晶配向膜を用いた、液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、それを用いた液晶配向剤、液晶配向膜、及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において液晶配向膜は、液晶を一定の方向に配向させる役割を担う。現在、工業的に利用されている主な液晶配向膜は、ポリアミド酸(ポリイミド前駆体やポリアミック酸ともいわれる。)やポリイミド溶液からなるポリイミド系の液晶配向剤を基板に塗布し、焼成することで成膜される。また、基板面に対して液晶を平行配向又は傾斜配向させる場合、成膜した後、ラビングによる表面延伸処理(ラビング処理)が行われている。ラビング処理に代わる方法として、偏光紫外線の照射等による異方性光化学反応を利用する方法も提案されている。
【0003】
液晶表示素子の表示特性の向上のために、数々の技術が提案されてきた。例えば、特許文献1(特開平2-287324号公報)では、高い電圧保持率(VHR)を得るために、特定の繰り返し構造を有するポリイミド樹脂を用いることが提案されている。また、特許文献2(特開平10-104633号公報)では、残像が消去されるまでの時間を短くするために、イミド基以外に窒素原子を有する可溶性ポリイミドを用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-287324号公報
【文献】特開平10-104633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、液晶ディスプレイ(LCDパネル)の多機能化・多様化に伴い、ガラス基板を用いたディスプレイから、樹脂基板(プラスチック基板、すなわちフィルム基板)を用いたフレキシブルなディスプレイへと、開発が進んでいる。それに従い、低温での焼成で得ることができる液晶配向膜が必要となってきており、加えて、液晶配向膜に要求される信頼性(高い電圧保持率等)も求められるようになってきている。
【0006】
液晶配向膜に用いられる材料としては、ポリアミド酸やポリアミド酸エステル等のポリイミド前駆体や、それらを焼成により或いは化学反応により脱水することで得られるポリイミド等が挙げられる。このうち、ポリアミド酸は、その合成が容易であり、かつ溶媒への溶解性に優れるため、基板への塗布性・成膜性に優れる液晶配向剤を得ることができる。しかし、ポリアミド酸は、その構造上、加水分解等により分解しやすいため、これを用いて得た液晶配向膜では、長期に亘って信頼性を確保することが難しい。
【0007】
一方、可溶性ポリイミド(ポリアミド酸の脱水反応により得られる溶媒に可溶なポリイミド)は、プレイミド化されているため、加熱してイミド化させる熱硬化工程が必要なく、そのため、比較的低温での焼成が可能になる。また、化学的安定性・耐熱性に優れるため、可溶性ポリイミドを用いて得た液晶配向膜では、長期に亘って信頼性を確保しやすくなる。しかし、可溶性ポリイミドは、溶解させることができる溶媒の選択肢が少なく、それゆえに、使用できる溶媒が限られ、その結果、可溶性ポリイミドを用いる場合、塗布中・成膜中に析出等が生じ、塗膜に欠陥ができやすい。近年の、LCDパネルの大型化・高精細化・使用環境の多様化に伴い、それぞれの問題を解決するとともに、各種特性を向上させることができる手法の探索が求められている。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、その課題は、低温での焼成が可能、かつ印刷性(得られる重合体の、有機溶媒への溶解性)が良好である液晶配向剤を提供することにある。また、上記液晶配向剤を得ることができる重合体を提供することにある。また、ラビング処理を行なう場合にはラビング耐性に優れる上液晶配向性が良好であり(すなわち、低プレチルト角を実現でき)、かつ電圧保持率が高い液晶配向膜を提供することにある。更に、上記液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究した結果、特定の構造を有する重合体、及びそれを用いた液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。なお、上記重合体は新規であり、上記重合体を得るためのモノマーも、新規化合物を含んでいる。
【0010】
すなわち、本発明は、以下1.~9.を要旨とする。
1. 下式(1)で表される構造を有する、ポリウレア及びポリウレア共重合体である重合体を含有する、液晶配向剤。
【0011】
【化1】
式中、Xはジイソシアネート誘導体に由来の二価の有機基を示し、Yはジアミン誘導体に由来の二価の有機基を示す。Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、分岐していてもよい。Rは水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又は下式(1-1)で表される有機基を示す。Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2の脂肪族炭化水素基を示す。
【0012】
【化2】
式中、黒点は窒素原子への結合箇所を意味し、R、Ra及びRbは上記のR、Ra及びRbと同義である。
【0013】
2. 下式(2)で表されるジアミン誘導体と、ジイソシアネート誘導体と、から得られる、ポリウレア及びポリウレア共重合体である重合体を含有する、1.に記載の液晶配向剤。
【0014】
【化3】
式中、Aは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の、二価の有機基を示し、B及びCはそれぞれ独立して、単結合、又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。R、R、Ra及びRbは上記のR、R、Ra及びRbと同義である。
【0015】
3. 前記ジアミン誘導体のうち下式(3)で表されるジアミノ化合物と、ジイソシアネート誘導体と、から得られる、ポリウレア及びポリウレア共重合体である重合体を含有する、2.に記載の液晶配向剤。
【0016】
【化4】
式中、Arはアリーレン基を示し、Dは単結合、又は炭素数1~5の炭化水素基を示す。R、R、Ra及びRbは上記のR、R、Ra及びRbと同義である。
【0017】
4. 前記ジアミン誘導体のうち下式(3-a)で表されるジアミノ化合物と、ジイソシアネート誘導体と、から得られる、ポリウレア及びポリウレア共重合体である重合体を含有する、3.に記載の液晶配向剤。
【0018】
【化5】
式中、D及びRは上記のD及びRと同義である。
【0019】
5. 下式(3-1)で表されるジアミノ化合物と、ジイソシアネート誘導体と、から得られる、重合体。
【0020】
【化6】
式中、Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、分岐していてもよい。Bは単結合、又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2の脂肪族炭化水素基を示す。
【0021】
6. 前記ジアミノ化合物と、下式(4-1)~式(4-11)及び式(4-13)で表されるジイソシアネート誘導体の少なくとも1つと、から得られる、5.に記載の重合体。
【0022】
【化7】
【0023】
7. 5.又は6.に記載の重合体を用いた、液晶配向剤。
【0024】
8. 1.~4.及び7.の何れか1つに記載の液晶配向剤から得られる、液晶配向膜。
【0025】
9. 8.に記載の液晶配向膜を用いた、液晶表示素子。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、低温での焼成が可能であり、高品位な液晶配向膜を得ることができる上、印刷性に優れる液晶配向剤を提供することができる。また、本発明によれば、上記液晶配向剤を得るための新規な重合体を提供することができる。また、本発明によれば、ラビング処理を行なう場合にはラビング耐性に優れる上、低プレチルト角を実現できるのに加えて、電圧保持率が高い液晶配向膜を提供することができる。更に、本発明によれば、上記液晶配向膜を用いた液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の一態様である液晶配向剤は、式(2)で表されるジアミン誘導体(以下「ジアミン」と称することがある)と、ジイソシアネート誘導体(以下「ジイソシアネート」と称することがある)と、から得られる、本発明の一態様である重合体を含有する。
【0028】
<本発明に使用するジアミン>
本発明に使用するジアミンは、式(2)で表される。
【0029】
【化8】
式中、Aは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基の、二価の有機基を示し、B及びCはそれぞれ独立して、単結合、又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、分岐していてもよい。Rは水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又は式(1-1)で表される有機基を示す。Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2の脂肪族炭化水素基を示す。
【0030】
モノマーの重合反応性や、耐熱性や液晶配向性に優れた液晶配向膜を得ることができる、等の観点からは、式(2)中、Aは芳香族炭化水素基、Bは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、Cは単結合、であると好ましい。式(2)は、具体的には以下の構造が挙げられる。
【0031】
【化9】
式中、Arはアリーレン基を示し、Dは単結合、又は炭素数1~5の炭化水素基を示す。R、R、Ra及びRbは上記のR、R、Ra及びRbと同義である。
【0032】
ジアミンを合成するための試薬を入手するのが容易である、ジイソシアネートとの反応性が良好である、得られる上記重合体の物性が良好になる、等の観点を鑑みた場合、式(3)中、Arはフェニレン基が好ましく、Rは水素原子が好ましい。従って、式(3)は、好ましくは以下式(3-a)´で表される構造である。なかでも、式(3)中、Ra及びRbはそれぞれ水素原子であることが好ましい。従って、式(3)は、特に好ましくは、式(3-a)で表される。
【0033】
【化10】
式中、D及びRは上記のD及びRと同義である。

【0034】
目的とするモノマーを好適に得ることができる、上記の特性のすべてが良好になりやすい、等の観点からは、上記式(3-a)´は、好ましくは下式(3-1)で表される。
【0035】
【化11】
式中、B、R、Ra及びRbは上記のB、R、Ra及びRbと同義である。式(3-1)中、Bが炭素数1及び2であり、Ra及びRbがそれぞれ水素原子であると、式(3-1)は、式(3-1a)及び式(3-1b)で表される。
【0036】
【化12】
式中、Rは上記のRと同義である。
【0037】
ただし、式(2)で表されるジアミンの具体例は、式(3)で表されるジアミンに限定されない。本発明の効果(例えば、低プレチルト角を実現できること)が損なわれない範囲であれば、上記重合体を合成するにあたり、式(2)又は式(3)で表されるジアミンの一部を、後述する式(5)で表されるジアミンに置き換えてもよい。
【0038】
<本発明に使用するジイソシアネート>
本発明に使用するジイソシアネートは、式(4)で表される。
【0039】
【化13】
式中、Xは二価の有機基を示す。式(4)は、好ましくは式(4-1)~式(4-11)及び式(4-13)で表される。
【0040】
【化14】
【0041】
式(4-1)~式(4-5)で表される脂肪族ジイソシアネートを用いる場合は、式(4-6)~式(4-13)で表される芳香族ジイソシアネートを用いる場合に比べ、得られる重合体が溶媒に良好に溶解するようになる。一方、上記芳香族ジイソシアネートは、上記脂肪族ジイソシアネートに比べ、ジアミンと良好に反応する。例えば、式(4-6)や式(4-7)に示すような芳香族ジイソシアネートは、ジアミンと良好に反応し、得られる液晶配向膜の耐熱性を向上させることができる。
【0042】
上記重合体を得るのに汎用性が高い化合物である、得られる上記重合体の特性が良好になる、等の観点からは、式(4)は、式(4-1)、式(4-7)、式(4-8)、式(4-9)、又は式(4-10)が好ましい。また、式(4)は、得られる液晶配向膜の液晶配向性が良好になる観点からは、式(4-13)が好ましい。
【0043】
ただし、本発明の趣旨の範囲内であれば、式(4)は上記に限定されない。得られる重合体、液晶配向剤、及び液晶配向膜等の目標とする特性に応じて、入手が容易なジイソシアネートを好適に使用することができる。ジイソシアネートは、2種以上を併用して使用してもよい。
【0044】
<ジアミン>
上記重合体を得るにあたり、式(2)で表されるジアミンの一部を、それ以外のジアミン(他のジアミン)に置き換えてもよい。一般に、ジアミンは種類が豊富であり、また、様々な機能を有する有機基を持つ化合物が多いため、他のジアミンを併用することで、上記重合体に更なる効果を付与することができたり、上記ジアミンの上記効果を更に向上させることができたりする場合がある。式(2)で表されるジアミンのモル数に対する、他のジアミンのモル数の比は、本発明の効果(例えば、低プレチルト角を実現できること)が損なわれない範囲内で任意である。例えば、上記比は、0.5以下とすることができる。勿論、他のジアミンを併用しなくてもよい。このような他のジアミンとしては、例えば、下式(5)で表されるジアミンが挙げられる。
【0045】
【化15】
式中、Yは二価の有機基を示す。Yの構造の例は、下式(Y-1)~式(Y-49)及び式(Y-57)~式(Y-175)のように列挙されるが、これらに限定されない。Rはそれぞれ独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基を示す。テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンと、の反応ではポリアミド酸を与え、ジイソシアネートと、ジアミンと、の反応ではポリウレアを与える。
【0046】
【化16】
【0047】
【化17】
【0048】
【化18】
【0049】
【化19】
【0050】
【化20】
【0051】
【化21】
【0052】
【化22】
【0053】
【化23】
式中、特に断りのない限り、nは1から6の整数である。
【0054】
<重合体>
ポリウレア及びポリウレア共重合体である重合体は、ポリウレア及び/又はポリウレア共重合体である重合体を意味する。かかる重合体は、式(1)で表される。
【0055】
【化24】
式中、Xはジイソシアネートに由来の二価の有機基を示し、Yはジアミンに由来の二価の有機基を示す。Rは炭素数1~4のアルキル基を示し、分岐していてもよい。Rは、水素原子、炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、又は下式(1-1)で表される有機基を示す。Ra及びRbはそれぞれ独立して、水素原子、又は炭素数1~2の脂肪族炭化水素基を示す。
【0056】
【化25】
式中、黒点は窒素原子への結合箇所を意味し、R、Ra及びRbは上記のR、Ra及びRbと同義である。
【0057】
ポリウレアは、ウレア結合の部位の極性により強固な水素結合を結ぶため、得られる膜は機械強度に優れる。一方、その強い水素結合力がポリマーの凝集の要因となり、ポリマー溶液の安定性等を悪くする場合がある(ポリマー溶液の粘度が増加する、ポリマーの一部が析出する、ポリマー溶液がゲル化する、等)。そのため、ポリウレアの構造によっては、使用可能な溶媒が制限され、例えば、高極性かつ高沸点の溶媒を使用する必要がある。
【0058】
上記重合体は、式(1)で表される構造、すなわち、ポリウレアのN原子上に式(1-1)で表される有機基が置換された構造を有している。式(1-1)で表される有機基が水素結合の形成を阻害し、これにより、ポリマー同士の凝集を妨ぐことができる。このため、ポリマー溶液の安定性が大きく向上する。よって、ポリウレアのポリマー溶液を得るにあたり、使用可能な溶媒の選択の幅を広げることができ、ひいては、低温での焼成や、印刷性の大きな改善も可能となる。なお、ウレア結合の部位は、成膜時の焼成温度によっては、ヒダントイン環や分子間架橋を形成する場合がある。
【0059】
<反応溶液>
反応溶液(上記重合体を得る為の反応に用いる有機溶媒)としては、上記重合体が溶解する溶液であれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。上記重合体が析出しない範囲であれば、上記重合体を溶解させない溶液であっても、上記反応溶液に混合して使用することができる。
【0060】
また、反応溶液中の水分は重合反応を阻害し、更には生成した重合体を加水分解させる原因となるので、脱水乾燥させた反応溶液を用いることが好ましい。ジイソシアネートとジアミンとを反応溶液中で反応させる際には、ジアミンを分散或いは溶解させた反応溶液を攪拌させ、ジイソシアネートをそのまま、又は反応溶液に分散或いは溶解させて添加する方法、逆にジイソシアネートを分散又は溶解させた反応溶液にジアミンを添加する方法、ジイソシアネートとジアミンとを反応溶液に交互に添加する方法等が挙げられ、これらの何れの方法を用いてもよい。
【0061】
また、ジイソシアネート又はジアミンが複数種の化合物からなる場合は、予め混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、更に個別に反応させた低分子量体を混合反応させ高分子量体としてもよい。その際の重合温度は-20℃から150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは-5℃から100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応溶液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、ジイソシアネートとジアミンの反応溶液中での合計濃度は、好ましくは1質量%から50質量%、より好ましくは5質量%から30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、反応溶液を追加することもできる。
【0062】
ポリウレアの重合反応においては、ジイソシアネートの合計モル数と、ジアミンの合計モル数と、の比は0.8から1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応と同様、このモル比が1.0に近いほど、生成する重合体の分子量は大きくなる。
【0063】
[重合体の回収]
反応溶液から、生成した上記重合体を回収するには、反応溶液を貧溶媒に投入して上記重合体を沈殿させればよい。貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセロソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた上記重合体は、濾過して回収した後、常圧又は減圧下で、常温又は加熱して乾燥させることができる。また、回収した上記重合体を有機溶媒に再溶解させ、再沈殿及び再回収する操作を2回から10回繰り返すと、上記重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの内から選ばれる3種以上の貧溶媒を用いると、精製の効率がより一層上がるので好ましい。
【0064】
上記重合体の分子量は、上記重合体から得られる塗膜の強度、及び、塗膜を形成する時の作業の容易性、塗膜の膜厚の均一性、等を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000から1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000から150,000である。
【0065】
<液晶配向剤>
本発明の一態様である液晶配向剤は、液晶配向膜を形成するための塗布液であり、塗膜(樹脂被膜)を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解している。樹脂成分は、少なくとも一種の上記重合体を含む。液晶配向剤中の、樹脂成分の含有量は2質量%から20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%から15質量%、特に好ましくは3質量%から10質量%である。本発明において、樹脂成分に含まれる重合体は、その全てが上記重合体であってもよく、本発明の趣旨の範囲内であれば、それ以外の重合体(他の重合体)が含まれていてもよい。樹脂成分中、他の重合体の含有量は0.5質量%から15質量%、好ましくは1質量%から10質量%である。かかる他の重合体は、例えば、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、セルロース、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0066】
上記液晶配向剤に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン等が挙げられる。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
上記液晶配向剤は、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布して形成される塗膜の、膜厚の均一性や表面の平滑性を向上させる溶媒や化合物、又は、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等である。
【0068】
膜厚の均一性や表面の平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)としては、低表面張力を有する溶媒、例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1-ヘキサノール、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの貧溶媒は1種でも複数種を混合して用いてもよい。上記貧溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる有機溶媒全体の5質量%から80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%から60質量%である。
【0069】
膜厚の均一性や塗膜表面の平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R-30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含まれる樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部から2質量部、より好ましくは0.01質量部から1質量部である。
【0070】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物等が挙げられる。例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-4、4’-ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
【0071】
更に、基板と膜の密着性の向上に加え、バックライトによる光の照射が原因となる電気特性の低下等を防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系の添加剤を添加してもよい。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0072】
【化26】
【0073】
基板と膜との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その化合物の使用量は、液晶配向剤に含まれる樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部から30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部から20質量部である。使用量が上記値未満であると密着性が向上しにくくなり、上記値よりも多くなると液晶配向性が悪くなる場合がある。
【0074】
上記液晶配向剤には、上記のような溶媒や化合物の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性等の電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、更には、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的で、所定の架橋性化合物を添加してもよい。
【0075】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
上記液晶配向剤を、基板上に塗布して焼成した後、ラビングや光照射等で配向処理をすることで、本発明の一態様である液晶配向膜を得ることができる。基板としては、透明性の高いガラス基板、又はプラスチック基板(例えば、アクリル基板やポリカーボネート基板)等を用いることができる。また、液晶を駆動させるためのITO電極等が形成された基板を用いることが、液晶表示素子を製造するプロセスを簡素化させる観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板にシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極は、アルミ等の光を反射する材料も使用できる。液晶配向剤を塗布する方法は特に限定されないが、工業的には、スピンコート印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷等が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナー等があり、目的に応じてこれらの方法を用いてもよい。
【0076】
焼成は、ホットプレート等の加熱手段により50℃から300℃、好ましくは80℃から250℃で行うことができる。液晶配向剤中の有機溶媒を蒸発させることで、塗膜を形成させることができる。塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力が増えやすく、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nmから300nm、より好ましくは10nmから150nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の塗膜を、ラビング又は偏光紫外線照射等で配向処理する。
【0077】
上記した手法により、上記液晶配向剤から、液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製することで、本発明の一態様である液晶表示素子を得ることができる。液晶セルを作製する手法の一例としては、液晶配向膜の形成された1対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサーを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法が挙げられる。又は、スペーサーを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法が挙げられる。このときのスペーサーの厚みは、好ましくは1μmから30μm、より好ましくは2μmから10μmである。上記液晶配向剤を用いて作製された上記液晶表示素子は、信頼性に優れるため、大画面で高精細の液晶テレビ等に好適に利用できる。
【実施例
【0078】
<ジアミンの合成>
実施例1
ethyl(4-aminobenzyl)glycinate[NG4ABA]の合成
【0079】
【化27】
【0080】
第1工程
窒素導入管と還流管を備えた1Lの4口フラスコに、グリシンエチル塩酸塩105.6g(0.694mol)、THF500g、トリエチルアミン93.6g(0.925mol)を加え、メカニカルスターラーを用いて室温で1時間撹拌した後、THFが還流する温度(設定70℃)で加熱し、4-ニトロベンジルブロミド50.0g(0.231mol)をTHF500.0gに溶解させてこれをゆっくり滴下し、滴下終了後、更に24時間反応させた。4-ニトロベンジルブロミドが消失した時点で反応終了とし、析出している固体を濾過により除去し、THFをロータリーエバポレーターで除去し、得られた粗物を酢酸エチル300.0gで再溶解させた。この溶液を純水100gで3回洗浄し、10%塩酸水溶液300gを加え、1時間撹拌し、水層側を回収して、その水層を酢酸エチル100gで3回洗浄した。水層に更に酢酸エチル300gを加え、炭酸カリウムをゆっくり加え、pHを10程にして1時間撹拌し、有機相側を回収し、純水100gで3回洗浄した。この有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過し、活性炭を加えしばらく撹拌した後、濾過により活性炭を取り除き、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して、目的物(ニトロ体)である薄黄色の粘体46.0g(0.193mol)を得た。目的物が得られたことを、H-NMRで確認した。
H NMR (500MHz、CDCl):δ 8.2(2H)、7.53(2H)、4.22(2H)、3.93(2H)、3.42(2H)、1.89(1H)、1.27(3H)
【0081】
第2工程
窒素導入管と撹拌子を備えた500mlの4口フラスコに、上記で得られたニトロ体45.0g(0.19mol)、THF300.0g、鉄ドープ型白金カーボン4.5gを加え、容器内を注意深く水素雰囲気下に置換し、室温で24時間反応させた。原料が消失した時点で反応終了とし、白金カーボンをメンブランフィルターで除去し、ろ液に活性炭(白鷺製)を加え、40℃で30分撹拌した。その後、再び濾過し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した後、高真空ポンプで乾燥させ、目的物である薄黄色の粘体35.4g(0.17mol:収率89%)を得た。目的物(NG4ABA)が得られたことを、H-NMRで確認した。
H NMR (500MHz、CDCl):δ 6.99(2H)、6.63(2H)、4.15(2H)、3.70(2H)、3.38(2H)、3.00(2H)、1.24(3H)
【0082】
実施例2
ethyl(3-aminobenzyl)glycinate[NG3ABA]の合成
【0083】
【化28】
【0084】
実施例1から、原料である4-ニトロベンジルブロミドを3-ニトロベンジルブロミドに変更して合成した。目的物(NG3ABA)は薄黄色の固体として得られ、その収量は37.4g(0.18mol:94%)であった。目的物が得られたことは、H-NMRで確認した。
H NMR (500MHz、CDCl):δ 7.10(1H)、6.65(1H)、6.57(1H)、4.16(2H)、3.70(2H)、3.39(2H)、3.09(2H)、1.25(3H)
【0085】
実施例3
ethyl(4-aminophenethyl)glycinate[NG4APhA]の合成
【化29】
【0086】
第1工程
窒素導入管と還流管を備えた1Lの4口フラスコに、4-ニトロフェネチルアミン塩酸塩50g(0.246mol)、THF500g、トリエチルアミン62.1g(0.604mol)を加え、メカニカルスターラーを用いて室温で1時間撹拌し、THFが還流する温度(設定70℃)で加熱し、2-クロロ酢酸エチル25.1g(0.205mol)をTHF300gに溶解させてこれをゆっくり滴下し、滴下終了後、更に24時間反応させた。2-クロロ酢酸エチルが消失(HPLCにて確認)した時点で反応終了とし、析出している固体を濾過により除去し、THFをロータリーエバポレーターで除去し、得られた粗物を酢酸エチル500gで再溶解させた。この溶液を純水100gで3回洗浄し、10%塩酸水溶液500gを加え、1時間撹拌し、水層側を回収して、その水層を酢酸エチル100gで3回洗浄した。水層に更に酢酸エチル500gを加え、炭酸カリウムをゆっくり加え、pHを10程にして1時間撹拌し、有機相側を回収し、純水100gで3回洗浄した。この有機相に無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥させ、濾過し、活性炭を加えしばらく撹拌した後、濾過により活性炭を取り除き、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、目的物である薄黄色の粘体34.2g(0.136mol:収率66%)を得た。目的物(ニトロ体)が得られたことを、H-NMRで確認した。
H NMR (500MHz、CDCl):δ 8.14(2H)、7.37(2H)、4.16(2H)、3.43(2H)、2.95(4H)、2.19(1H)、1.25(3H)
【0087】
第2工程
窒素導入管と撹拌子を備えた500mlの4口フラスコに、上記で得られたニトロ体30.0g、THF300g、鉄ドープ型白金カーボン3.0gを加え、容器内を注意深く水素雰囲気下に置換し、室温で24時間反応させた。原料が消失した時点で反応終了とし、白金カーボンをメンブランフィルターで除去し、ろ液に活性炭(白鷺製)を加え、40℃で30分撹拌した。その後、再び濾過し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した後、高真空ポンプで乾燥させ、目的物(NG4APhA)である薄黄色の粘体25.1g(0.113mol:収率95%)を得た。目的物が得られたことをH-NMRで確認した。
H NMR (500MHz、CDCl):δ 6.99(2H)、6.60(2H)、4.18(2H)、3.42(2H)、2.89(2H)、2.86(2H)、2.75(2H)、1.24(3H)
【0088】
<略語>
液晶配向剤の調製で用いる略号は以下の通りである。
(ジイソシアネート)
IDI:イソホロンジイソシアネート
4IBI:(イソシアナトメチル)フェニル-イソシアネート
DI-3MG:1,3-ビス(4-イソシアナトフェノキシ)プロパン
DI-2MG:1,2-ビス(4-イソシアナトフェノキシ)エタン
【0089】
【化30】
【0090】
(ジアミン)
NG4ABA:エチル(4-アミノベンジル)グリシネート
NG3ABA:エチル(3-アミノベンジル)グリシネート
NG4APhA:エチル(4-アミノフェネチル)グリシネート
Me3ABA:N-メチル-3-アミノベンジルアミン
Me4APhA:N-メチル-4-アミノフェネチルアミン
DA-3MG:1,3-ジ(4-アミノフェノキシ)プロパン
【0091】
【化31】
【0092】
(溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
BCS:ブチルセロソルブ
GBL:γブチロラクトン
【0093】
また、ポリイミドの分子量測定条件は、以下の通りである。
装置:センシュー科学社製 常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(SSC-7200)
カラム:Shodex社製カラム(KD-803、KD-805)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム-水和物(LiBr・HO)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、THFが10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約9000,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(分子量 約12,000、4,000、1,000)
【0094】
<重合体の合成>
実施例4
DI-2MG/NG3ABA
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、NG3ABA1.00g(4.80mmol)を測り取り、NMP13.43gを加え溶解させ、DI-2MG1.37g(4.60mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度420mPas、の重合体(ポリマー溶液:P-1)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:46200であった。
【0095】
実施例5
DI-2MG/NG4ABA
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、NG4ABA1.00g(4.80mmol)を測り取り、NMP13.32gを加え溶解させ、DI-2MG1.35g(4.56mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度370mPas、の重合体(ポリマー溶液:P-2)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:39800であった。
【0096】
実施例6
DI-3MG/NG4APhA
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、NG4APhA1.00g(4.50mmol)を測り取り、NMP13.20gを加え溶解させ、DI-3MG1.33g(4.28mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度440mPas、の重合体(ポリマー溶液:P-3)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:46300であった。
【0097】
実施例7
4IBI/NG4APhA、DA-3MG
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、NG4APhA0.50g(2.25mmol)、DA-3MG0.58g(2.25mmol)を測り取り、NMP10.48gを加え溶解させ、4IBI0.77g(4.41mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度280mPas、の重合体(ポリマー溶液:P-4)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:37300であった。
【0098】
実施例8
IDI、DI-3MG/NG4ABA、DA-3MG
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、NG4ABA0.50g(2.40mmol)、DA-3MG0.62g(2.40mmol)を測り取り、NMP13.60gを加え溶解させ、DI-3MG0.74g(2.40mmol)、IDI0.54g(2.42mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度330mPas、の重合体(ポリマー溶液:P-5)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:41600であった。
【0099】
比較例1
DI-2MG/Me3ABA
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、Me3ABA1.00g(7.34mmol)を測り取り、NMP19.36gを加え溶解させ、DI-2MG2.24g(7.57mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度530mPas、の重合体(ポリマー溶液:PRef-1)を得た。得られた重合体の重量平均分子量はMw:39900であった。
【0100】
比較例2
DI-2MG/Me4APhA
窒素導入管と撹拌子を備えた50mlの2口フラスコに、Me4APhA1.00g(6.66mmol)を測り取り、NMP16.38gを加え溶解させ、DI-2MG1.89g(6.39mmol)を加え、窒素雰囲気下40℃で24時間反応させた。これにより、濃度15質量%、粘度490mPas、の重合体(ポリマー溶液:PRef-2)を得た。得られたポリマーの重量平均分子量はMw:41300であった。
【0101】
<液晶配向剤の調整>
実施例9
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、実施例4で得られた重合体(P-1)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-1)を得た。
【0102】
実施例10
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、実施例5で得られた重合体(P-2)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-2)を得た。
【0103】
実施例11
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、実施例6で得られた重合体(P-3)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-3)を得た。
【0104】
実施例12
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、実施例7で得られた重合体(P-4)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-4)を得た。
【0105】
実施例13
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、実施例8で得られた重合体(P-5)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-5)を得た。
【0106】
比較例3
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、比較例1で得られた重合体(PRef-1)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-6)を得た。
【0107】
比較例4
撹拌子を備えた50mlの三角フラスコに、比較例2で得られた重合体(PRef-2)10.0gを測りとり、NMP2.5g、GBL5.0g、BCS7.5gを加え室温で30分撹拌し、固形分6.0質量%、NMP44質量%、GBL20質量%、BCS30質量%の、液晶配向剤(AL-7)を得た。
【0108】
比較例5
日産化学(株)社製のSE-6414を、液晶配向剤(AL-8)として用いた。
【0109】
実施例9~13の液晶配向剤(AL-1~AL-5)及び比較例3~5の液晶配向剤(AL-6~AL-8)を用いて、下記手法に基づき、液晶配向膜を評価した。
【0110】
<白化耐性及び塗布性(印刷性)の評価>
得られた液晶配向剤を、よく洗浄したCr基板にそれぞれ1滴たらし、室温25℃、湿度60%で放置して、白くなる(白化する)までの時間を測定した。測定した時間に基づき、白化耐性を評価した。
【0111】
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、洗浄したCr板上に配向膜印刷機(日本写真印刷社製「オングストローマー」)を用いてフレキソ印刷を行うことにより、塗布性試験を行った。
【0112】
アニロックスロールに約1.0mlの液晶配向剤を滴下し、空運転を10回実施した後、10分間印刷機を止め、印刷版を乾燥させた。その後、Cr基板1枚に印刷を行い、印刷後の基板を70℃のホットプレート上に5分間放置して、塗膜の仮乾燥を行い、膜状態を観察した。目視と、光学顕微鏡(ニコン社製「ECLIPSE ME600」)での倍率50倍とで、主に膜厚ムラやエッジ部の膜厚ムラを観察した。
【0113】
<液晶配向性、電圧保持率、及びプレチルト角の評価>
[液晶配向性の観察、及び液晶セルの作製]
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート印刷により塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、180℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この膜をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中で1分間、超音波を照射して洗浄し、エアブローで水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0114】
上記の液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、MLC-2041(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、液晶配向性を観察した後、液晶セルを110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、電圧保持率測定用の液晶セルを得た。
【0115】
上記の手順で得られた電圧保持率測定用の液晶セルを用いて、60℃の温度下で1Vの電圧を60μs間印加し、166.7ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。なお、電圧保持率の測定には東陽テクニカ社製のVHR-1電圧保持率測定装置を使用した。
【0116】
[プレチルト角の評価]
プレチルト角の測定にはオプトメトリクス社製 Axo Scan ミュラーマトリクスポーラリメーターを用いた。
【0117】
[ラビング耐性の評価]
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート印刷により塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、180℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させた。この膜をレーヨン布(吉川化工製YA-20R)でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、共焦点レーザー顕微鏡を用いてラビング耐性を評価した。膜が剥離している場合は×、膜上に削れカスや傷が多く見られた場合は△、良好な場合(膜の剥離が見られず、かつ膜上に削れカスや傷が多く見られない場合)は○とする。各種評価の結果を表1に示す。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例9~13の液晶配向剤は、比較例と比べて大幅に白化耐性に優れており、また印刷性も良好である。比較例5は、ポリアミック酸系の材料であるため、白化耐性や印刷性は良好な材料系ではある。実施例9~13は、白化耐性や印刷性について、比較例5と同等以上の特性を得ることができると期待される。式(1-1)で表される有機基は、分子内での反応や分子間の架橋等にも費やされることが考えられるため、比較例3及び4と比べても、実施例9~13はラビング耐性が非常に良好である。比較例5はイミド化反応が進まない為、ラビング耐性が悪い結果になったと考えられる。
【0120】
また、実施例9~13の液晶配向剤を用いて得られた液晶セルでは、低プレチルト角かつ高い電圧保持率が得られている。これは、式(1-1)で表される有機基が種々反応に用いられるのと、ポリアミック酸のように分解反応を伴わない結果であると考察できる。よって、本発明の一態様である液晶配向膜は、低温での焼成で得ることができる液晶配向膜として非常に有望であると考えられる。なお、実施例7~10の何れの液晶配向剤を用いても、液晶配向膜及び液晶表示素子を好適に得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の液晶配向剤を用いて作製した液晶表示素子は、信頼性の高い液晶表示デバイスとすることができ、IPS液晶表示素子、FFS液晶表示素子等、種々の方式による表示素子に好適に用いることができる。