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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】Ge単結晶膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/08 20060101AFI20240626BHJP
   C30B 25/04 20060101ALI20240626BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C30B29/08
C30B25/04
H01L21/20
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021070283
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022165087
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】石川 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 哲弥
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-531361(JP,A)
【文献】特開2011-097062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 29/08
C30B 25/04
H01L 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウェーハの表層部を加工してSi細線アレイを形成し、
前記Si細線アレイ上にGe単結晶膜を化学気相成長法により形成し、
前記シリコンウェーハはSi支持基板上に絶縁層を介して上部Si層が形成されたSOIウェーハであり、
前記表層部は前記上部Si層であり、
前記Si細線アレイのライン幅は0.1~1.5μmであり、
前記Si細線アレイの形成では、Si細線パターン間の分離溝内にSiが残留するように前記上部Si層を選択的にエッチングすることを特徴とするGe単結晶膜の製造方法。
【請求項2】
前記Si細線アレイのスペース幅は0.1~1.0μmである、請求項1に記載のGe単結晶膜の製造方法。
【請求項3】
前記Ge単結晶膜の厚さは1μm以下である、請求項1又は2に記載のGe単結晶膜の製造方法。
【請求項4】
前記上部Si層の厚さは0.1~1.5μmである、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のGe単結晶膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Ge単結晶膜の製造方法及びこれを用いた光デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光半導体デバイスとしてGe(ゲルマニウム)を利用した光デバイスの開発が進んでいる。シリコンフォトニクスの基本光部品は、Si系光導波路とGe受光器であり、これらを同一基板上にモノリシック集積させた小型光モジュールは、通信システムに応用されるものと期待されている。
【0003】
Ge受光器の基礎材料であるGe単結晶膜の製造方法に関し、例えば特許文献1には、サブミクロン幅のSiOマスクが繰り返されたSi基板の表面にGeのエピタキシャル成長を行う方法が記載されている。図8に示すように、SiOマスク31が繰り返されたSi基板30の表面にGeのエピタキシャル成長を行うと、Si基板30の露出面からGeが選択的に成長する。結晶成長を継続すると、SiOマスク31上に空洞33を残してGeが横方向に成長し、隣接したGe選択成長層と一体化して連続膜が形成される。この手法を用いると、Si基板30上に貫通転位密度を低減させたGe単結晶薄膜32を熱処理なく形成できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-98493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来法においてGeを連続膜にし、かつ表面を平坦にするには、1.5μm程度の膜厚が必要である。またSiOマスクのない通常のSi基板上へのGe成長と比較して、膜厚が薄くなるため、通常成長に換算して2μm以上のGe膜が必要となる。Geの典型的な結晶成長速度は10nm/minであるため、2μm以上のGe膜を形成するためには4時間以上の結晶成長時間が必要である。
【0006】
またSiOマスクは10nm程度の薄膜であることが必要である。SiOマスクが厚くなるとGe結晶の横方向成長が阻害され、連続膜を得るためにさらなる長時間の成長が必要となるからである。SiOマスクの厚さは、Geの結晶成長前に行うフッ酸水溶液による処理で低減できるが、フッ酸の濃度や処理時間を精密に管理する必要がある。
【0007】
光デバイスの応答速度を10GHz以上にするためには、光集積回路の受光器や光強度変調器で使用されるGe単結晶膜の厚さを1μm以下にする必要がある。しかし、従来法により製造された厚いGe単結晶膜ではこのような高速光デバイスに応用できない。SiOマスクをサブミクロン以下へ細線化することも考えられるが、高精度の加工技術が必要である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、Ge単結晶の薄い連続膜を従来よりも短い時間で得ることが可能なGe単結晶膜の製造方法及びこれを用いた光デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明によるGe単結晶膜の製造方法は、シリコンウェーハの表層部を加工してサブミクロン幅のSi細線アレイを形成し、前記Si細線アレイ上にGe単結晶膜を化学気相成長法により形成することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、SiOマスクを用いた従来のGe単結晶膜の製造方法よりも短い成長時間・小さい成長膜厚でGeの連続膜を得ることができる。また、従来法と同様に、SiとGeとの間にある4%の格子不整合によりGe単結晶中に発生する貫通転位密度を熱処理なく低減でき、高品質なGeエピタキシャル膜を形成することができる。
【0011】
本発明において、前記Si細線アレイのライン幅は0.1~1.5μmであることが好ましい。また、前記Si細線アレイのスペース幅は0.1~1.0μmであることが好ましい。Si細線アレイのライン幅が0.1~1.5μmであれば、貫通転位密度が低く、表面が平坦なGe単結晶の連続膜を形成することができる。またSi細線アレイをSi光導波路として利用することができ、小型光モジュールの製造効率を高めることができる。
【0012】
本発明において、前記Ge単結晶膜の厚さは1μm以下であることが好ましい。これにより、応答速度が10GHz以上の光デバイスの作製に好適なGe単結晶膜を提供することができる。
【0013】
本発明において、前記シリコンウェーハはSi支持基板上に絶縁層を介して上部Si層が形成されたSOIウェーハであり、前記表層部は前記上部Si層であることが好ましい。この場合において、前記上部Si層の厚さは0.1~1.5μmであることが好ましい。SOIウェーハを用いた場合には、Si細線アレイの加工が容易である。さらにSOIウェーハはシリコンフォトニクスを用いた光集積回路の基板材料として好適であり、光源、光導波路、光強度変調器、受光器、光結合器といった様々な光デバイスの高密度集積が可能である。
【0014】
前記Si細線アレイの形成では、Si細線パターン間の分離溝内にSiが残留しないように前記上部Si層を選択的にエッチングしてもよく、Si細線パターン間の分離溝内にSiが残留するように前記上部Si層を選択的にエッチングしてもよい。前者の場合、Si細線パターン間の分離溝内に空洞が形成されたGe単結晶膜を得ることができる。また後者の場合、Si細線パターン間の分離溝内でもGeの成長が起こるため、Si細線パターン間に空洞がないGe単結晶膜を得ることができる。
【0015】
本発明において、前記シリコンウェーハはバルクシリコンウェーハであってもよい。この場合、Si細線パターン間の分離溝内でもGeの成長が起こるため、Si細線パターン間に空洞がないGe単結晶膜を得ることができる。
【0016】
また、本発明による光デバイスは、Si基板の表層部に形成されたサブミクロン幅のSi細線アレイからなる光導波路アレイと、前記Si細線アレイ上に形成されたGe単結晶膜とを備え、前記Ge単結晶膜はpn接合又はpin接合を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、Ge単結晶膜の膜厚を1μm以下にすることができる。したがって、10GHz以上の高速動作が可能な光デバイスを実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、Ge単結晶の薄い連続膜を従来よりも短い時間で得ることが可能なGe単結晶膜の製造方法及びこれを用いた光デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)乃至(c)は、本発明の第1の実施の形態によるGe単結晶膜の製造方法を示す模式図である。
図2図2(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態によるGe単結晶膜の製造方法を示す模式図である。
図3図3(a)及び(b)は、本発明の実施の形態による光デバイスの構造を示す図であって、(a)は略断面図、(b)は略平面図である。
図4図4は、実施例1によるGe単結晶膜の断面のSEM画像である。
図5図5は、実施例1によるGe単結晶膜の断面のTEM画像である。
図6図6は、実施例2によるGe単結晶膜の断面のTEM画像である。
図7図7は、比較例によるGe単結晶膜の断面のSEM画像である。
図8図8は、従来のGe単結晶膜の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるGe単結晶膜の製造方法を示す模式図である。
【0022】
Ge単結晶膜の製造では、まずSOI(Silicon On Insulator)ウェーハ10を用意する(図1(a))。SOIウェーハ10は、Si支持基板11上にBOX(Buried Oxide)層と呼ばれる絶縁層12を介して上部Si層13(Si活性層)が形成されたシリコンウェーハの一種である。上部Si層13の厚さは0.1~1.5μmであることが好ましい。絶縁層12の厚さは特に限定されないが、1~20μmであることが好ましい。
【0023】
次に、SOIウェーハ10の上部Si層13を加工してサブミクロン幅のSi細線アレイ14を形成する(図1(b))。Si細線アレイ14は、上部Si層13のフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより形成することができる。Si細線アレイ14は、面方位が(100)面である上部Si層13の<011>方向に沿って周期的に配列される。
【0024】
Si細線アレイ14のライン幅Wは0.1~1.5μmであることが好ましく、0.1~1.0μmであることがさらに好ましい。Si細線パターン14aのライン幅Wが0.1μmよりも小さい場合にはGe単結晶膜の貫通転位密度を低減する効果が非常に小さく、1.5μmよりも大きい場合には表面が平坦なGe単結晶膜を形成することが難しいからである。Si細線アレイ14のスペース幅Wは0.1~1.0μmであることが好ましく、ライン幅Wと等しいか或いはライン幅Wよりも小さいことが特に好ましい。
【0025】
次に、Si細線アレイ14が形成されたSOIウェーハ10の主面にGe単結晶膜15を化学気相成長法により形成する(図1(c))。Ge単結晶膜15はUHV-CVD(Ultra-High Vacuum Chemical Vapor Deposition)法により形成することが好ましく、結晶成長温度(基板温度)は600~700℃であることが好ましい。
【0026】
Geのエピタキシャル成長はSi細線パターン14aの表面から縦(膜厚)方向に進行すると共に、横方向にも進行するため、隣り合うGe層が接触すると連続膜になる。Si細線パターン14aの側壁面からのGeの結晶成長は抑制されるため、隣接するSi細線パターン14a,14a間には空洞16(キャビティ)が形成されるが、Geの結晶成長を継続すると、横方向のエピタキシャル成長により表面が平坦な連続膜が得られる。
【0027】
SiOマスクを使用する従来法において、表面が平坦なGeの連続膜を得るためには1.5μm程度の膜厚が必要であり、特にSiOマスクに覆われていない領域では2.0μm程度の膜厚が必要である。しかし、本発明によれば、表面が平坦なGeの連続膜を従来法よりも短い成長時間・小さい成長膜厚で得ることができる。これは、SiOマスク上のGe単結晶膜内に空洞が形成される従来法に比べて、空洞が形成される位置が下がる効果によるものである。なお、Si細線パターン14aのライン幅Wが広すぎる場合には、Geの連続膜の表面が平坦にならない。Ge成長中に結晶成長速度の遅い(311)ファセット面が広く形成され、このファセット面によって表面が傾斜した状態で安定化するからである。
【0028】
図2(a)及び(b)は、本発明の第2の実施の形態によるGe単結晶膜の製造方法を示す模式図である。
【0029】
本実施形態によるGe単結晶膜の製造方法は、SOIウェーハ10の上部Si層13を選択的にエッチングしてSi細線アレイ14を形成する際、隣接するSi細線パターン14a,14a間の分離溝14b(Siトレンチ)の底面を構成する絶縁層12の上面を完全に露出させず、絶縁層12の上面に上部Si層13の一部を残留させる点にある(図2(a))。
【0030】
その後、Ge単結晶膜15の形成時には、Si細線パターン14aの上面のみならず分離溝14bの底面からもGeのエピタキシャル成長が進行するため、分離溝14b内はGeで埋まり、空洞16は形成されない(図2(b))。しかし、第1の実施の形態と同様に、表面が平坦なGeの連続膜を従来法よりも短い成長時間・小さい成長膜厚で得ることができる。また、Ge単結晶膜中の転位はGeの横方向のエピタキシャル成長と共に横方向に進展するので、第1の実施の形態と同様に貫通転位密度を低減する効果が得られる。
【0031】
上記Ge単結晶膜が形成されたシリコンウェーハを用いて光デバイスを製造する場合、Si細線パターンは光導波路として機能し、Ge単結晶膜は光導波路に接続された光源、光変調器、受光器等の光デバイスとして加工される。例えばGe受光器は、Ge単結晶膜をパターニングした後、Ge単結晶膜の上面の一部にイオン注入を行い、pn接合を形成することにより実現できる。
【0032】
図3(a)及び(b)は、本発明の実施の形態による光デバイスの構造を示す図であって、(a)は略断面図、(b)は略平面図である。
【0033】
図3(a)及び(b)に示すように、この光デバイス20は、図1(c)に示したGe単結晶膜15を加工してSi細線パターン14a上にGe受光器21を形成したものである。上記のように、Si支持基板11(Si基板)上には絶縁層12を介してSi細線アレイ14が形成されており、Si細線アレイ14は光導波路アレイを構成している。Si細線アレイ14を構成する複数のSi細線パターン14aの各々はSi光導波路として機能する。このように、Si細線アレイ14は単にGeの結晶成長に利用されるだけでなく、実際に光デバイスの一部として機能するものである。
【0034】
またパターニングされたGe単結晶膜15はSi光導波路に接続されたGe受光器21を構成している。Ge単結晶膜15にはp型不純物領域15p及びn型不純物領域15nが設けられており、これによりpin接合が横方向に形成されている。p型不純物領域15p及びn型不純物領域15nはGe単結晶膜15の所定の領域にp型ドーパント及びn型ドーパントをそれぞれイオン注入することにより形成することができる。Ge受光器21は図示の構造に限定されず、種々の構造を採用することができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によるGe単結晶膜の製造方法は、サブミクロン幅のSi細線アレイ14上にGe単結晶膜15を化学気相成長法によりエピタキシャル成長させるので、Ge単結晶の薄い連続膜を従来よりも短い時間で形成することができる。また、従来と同様に、貫通転位密度が低減された高品質なGe単結晶薄膜を得ることができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【0037】
例えば、上記実施形態においてはSOIウェーハ上にGe単結晶膜を形成したが、本発明はSOIウェーハを用いる場合に限定されず、例えばバルクシリコンウェーハを用いることも可能である。この場合、バルクシリコンウェーハの表層部をサブミクロン幅の細線アレイに加工し、その上にGeをエピタキシャル成長させることにより、第2の実施の形態と同様に空洞のないGeの連続膜を形成できる。
【0038】
また、図3に示した光デバイス20はGe単結晶膜15をGe受光器として加工した例であるが、Ge単結晶膜を光変調器とすることも可能であり、Ge受光器に限定されるものではない。
【実施例
【0039】
(実施例1)
面方位が(100)面であるSOIウェーハの上部Si層を細線状に加工して、<011>方向に延在するSi細線アレイ(ラインアンドスペースパターン)を形成した。SOIウェーハの上部Si層の厚さは0.22μm、絶縁層の厚さは3μmとした。Si細線アレイの形成はフォトリソグラフィ及びドライエッチングにより行い、Si細線アレイのライン幅及びスペース幅を0.5μmとし、Si細線パターン間の分離溝には上部Si層の残留がなく、SiO絶縁層の上面が露出した構造とした。
【0040】
次に、Si細線アレイが形成されたSOIウェーハ上にGeをUHV-CVD法により形成した。原料ガスにはGeHを用い、700℃の基板温度でGeのエピタキシャル成長を行った。Geの結晶成長は、Si細線アレイのない平面領域で1.0μmのGe単結晶膜が得られる条件下で行った。
【0041】
こうして得られたGe単結晶膜の断面をSEMにより観察した。その結果、図4に示すように、厚さが0.8μmのGe連続膜を形成することができ、Ge連続膜の表面は平坦面となった。またSi細線間には空洞が形成されていた。
【0042】
実施例1によるGe単結晶膜の断面をTEMにより観察した。その結果、図5に示すように、Si細線の側壁や空洞に転位が引き込まれる傾向が確認された。
【0043】
次に、Ge単結晶膜を貫通する転位の密度を評価した。Ge単結晶膜の表面をHF/HNO/CHCOOH/I混合液でエッチングし、表面に形成されるエッチピット密度から貫通転位密度を求めた。その結果、実施例1によるGe単結晶膜の貫通転位密度は1.2×10cm-2であった。これは細線パターンのないSi平面上に形成したGe単結晶膜の貫通転位密度(2.4×10cm-2)の約半分の値であった。この結果から、本発明は従来法と同様に、SiとGeとの間にある4%の格子不整合によって発生する貫通転位密度低減でき、熱処理なしで高品質なGe単結晶膜が得られることが分かった。
【0044】
(実施例2)
Si細線パターン間の分離溝内に上部Si層の一部が極薄く残留するようにドライエッチングの時間を僅かに短くした点以外は実施例1と同様にSOIウェーハの上部Si層を加工してSi細線アレイを形成した。その後、実施例1と同一条件下でGe連続膜を形成した。
【0045】
こうして得られたGe単結晶膜の断面をSEMにより観察した。その結果、実施例1と同様に、厚さが約0.8μmのGe連続膜を形成することができ、Ge連続膜の表面は平坦面となった。さらに、Si細線間に空洞が形成されず、Si細線間にGeが埋め込まれた状態となった。
【0046】
実施例2によるGe単結晶膜の断面をTEMにより観察した。その結果、図6に示すように、Si細線の側壁に転位が引き込まれる傾向が維持されることが分かった。すなわち、Si細線アレイを形成した場合には、分離溝内の空洞の有無によらず貫通転位の低減効果が認められた。またこの結果から、SOIウェーハに限らず、Si細線パターン間にSi表面が表れるバルクシリコンウェーハにおいても貫通転位密度の低減効果があることが確認された。
【0047】
(比較例)
Si細線アレイのライン幅を1.5μmとした点以外は実施例1と同一条件下でGe単結晶膜を形成した。その結果、図7に示すように、Si細線パターン間に空洞を有する厚さが約1.0μmのGe連続膜を形成することができた。しかし、Ge連続膜の表面は平坦面とならず、凹凸面となった。Ge連続膜の厚さは、Si細線パターンの中央で最大、Si細線間の分離溝で最小となった。
【0048】
なお比較例ではSi細線アレイのライン幅を1.5μmとした点以外は実施例1と同一の結晶成長条件にしたため、Ge単結晶膜の表面を平坦面にできなかったが、Si細線アレイのライン幅が1.5μm程度であれば、結晶成長温度や炉内圧などの結晶成長条件を調整することで平坦化が可能と思われる。
【符号の説明】
【0049】
10 SOIウェーハ
11 Si支持基板
12 絶縁層
13 上部Si層
14 Si細線アレイ
14a Si細線パターン
14b 分離溝
15 Ge単結晶膜
15n n型不純物領域
15p p型不純物領域
16 空洞
20 光デバイス
21 受光器
30 Si基板
31 SiOマスク
32 Ge単結晶薄膜
33 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8