(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】3次元光コヒーレンストモグラフィデータ及び画像を用いた医用診断装置及び病態評価方法
(51)【国際特許分類】
A61B 3/12 20060101AFI20240626BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240626BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240626BHJP
G06T 7/00 20170101ALN20240626BHJP
G16H 50/20 20180101ALN20240626BHJP
【FI】
A61B3/12
A61B3/10 100
A61B10/00 H
G06T7/00 612
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2022567801
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2021023628
(87)【国際公開番号】W WO2022004492
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸二
(72)【発明者】
【氏名】丸山 和一
(72)【発明者】
【氏名】三木 篤也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 良
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕和
(72)【発明者】
【氏名】原 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】メイ ソン
(72)【発明者】
【氏名】福間 康文
(72)【発明者】
【氏名】マオ ザイシン
(72)【発明者】
【氏名】ワング ゼングォ
(72)【発明者】
【氏名】チャン キンプイ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/183791(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/075719(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/102739(WO,A1)
【文献】特開2017-104309(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105787924(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108416793(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109730633(CN,A)
【文献】特開2015-000131(JP,A)
【文献】特開2019-180693(JP,A)
【文献】国際公開第2019/203311(WO,A1)
【文献】特開2019-154718(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0319551(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の眼の3次元ボリュームデータを受信する受信回路と、
前記3次元ボリュームデータの一部を
脈絡膜領域と脈絡膜血管構造とを含む別々のセグメントに分離し、前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行し、前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成するように構成されたプロセッサと、を含み、
前記処理は、シャドー低減、ノイズ低減、深度方向の強度減衰補償、及びコントラスト調整の少なくとも1つを含み、
前記プロセッサは、更に、前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成するように構成され、
前記プロセッサは、更に、前記少なくとも1つの診断指標に基づいて病態を評価するように構成される、医用診断装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、更に、前記診断指標の3次元の図を前記被検者の眼の構造に重畳してレンダリングする視覚化を行うように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの診断指標は、脈絡膜血管径、脈絡膜血管形状、脈絡膜血管密度、脈絡膜血管位置分布、脈絡膜血管屈曲度、脈絡膜血管指数、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、貫通血管長、貫通血管方向、貫通血管対称性、貫通血管数、貫通血管密度、神経周囲血管サイズ、及び、腫瘍サイズの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項4】
前記病態は、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)疾患であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、及び、血管指数を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のCSC疾患の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項5】
前記病態は、Vogt-小柳-原田(VKH)疾患であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、及び、血管指数を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のVKH疾患の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項6】
前記病態は、緑内障であり、
前記プロセッサは、更に、前記被検者の眼の強膜を貫通する神経周囲血管の数、前記強膜を貫通する前記神経周囲血管の形態、及び、前記強膜を貫通する前記神経周囲血管のサイズを含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の緑内障の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項7】
前記病態は、病的近視であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積の経時的な変化、及び、貫通血管の数、密度、又は形態を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の病的近視の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項8】
前記病態は、乳頭周囲萎縮(PPA)であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のPPAの進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項9】
前記病態は、網膜剥離手術からの回復であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の網膜剥離手術からの回復の進行を評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項10】
前記病態は、高血圧症、及び、脂質異常症の少なくとも1つであり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の高血圧症及び脂質異常症の少なくとも1つの進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項11】
前記病態は、認知症、又は、アルツハイマー病であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の認知症又はアルツハイマー病の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項12】
前記病態は、自己免疫疾患であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の自己免疫疾患の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項13】
前記病態は、内分泌疾患であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の内分泌疾患の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項14】
前記病態は、自律神経機能障害であり、
前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の自律神経機能障害の進行又はリスクを評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項15】
前記受信回路は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャナを用いて実行された前記被検者の眼の1回のスキャンから、前記被検者の眼の前記3次元ボリュームデータを受信する、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、更に、前記被検者の眼の第1の位置における前記少なくとも1つの診断指標の第1の値と、前記被検者の眼の第2の位置における前記少なくとも1つの診断指標の第2の値との間の対応を特定するレジストレーションを行うように構成され、前記レジストレーションは、前記エンハンスド3次元ボリュームデータと共局在化した前記3次元ボリュームデータを用いて行われ、
前記プロセッサは、更に、前記レジストレーションに基づいて、前記病態を評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項17】
前記プロセッサは、更に、第1の時間に決定された前記被検者の眼内の位置に対する前記少なくとも1つの診断指標の第1値と、前記第1の時間より遅い第2の時間で決定された前記被検者の眼内の前記位置に対する前記少なくとも1つの指標の第2値との間の対応を特定するレジストレーションを行うように構成され、前記レジストレーションは、前記エンハンスド3次元ボリュームデータと共局在化した前記3次元ボリュームデータを用いて行われ、
前記プロセッサは、更に、前記レジストレーションに基づいて、前記病態を評価するように構成される、請求項1に記載の医用診断装置。
【請求項18】
取得手段と、分離手段と、実行手段と、データセット生成手段と、診断指標生成手段と、評価手段と、を含む医用診断装置の作動方法であって、
前記取得手段が、被検者の眼の3次元ボリュームデータを取得
する工程と、
前記分離手段が、前記3次元ボリュームデータの一部を
脈絡膜領域と脈絡膜血管構造とを含む別々のセグメントに分離
する工程と、
前記実行手段が、前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行
する工程と、
前記データセット生成手段が、前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成
する工程と、
前記診断指標生成手段が、前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成
する工程と、
前記評価手段が、前記少なくとも1つの診断指標に基づいて、病態を評価する
工程と、
を含み、
前記処理は、シャドー低減、ノイズ低減、深度方向の強度減衰補償、及びコントラスト調整の少なくとも1つを含む、医用診断
装置の作動方法。
【請求項19】
コンピュータによって実行されたとき、以下を含むステップを実行する命令を格納した、非有形のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
被検者の眼の3次元ボリュームデータを取得し、
前記3次元ボリュームデータの一部を
脈絡膜領域と脈絡膜血管構造とを含む別々のセグメントに分離し、
前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行し、
前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成し、
前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成し、
前記少なくとも1つの診断指標に基づいて、病態を評価
し、
前記処理は、シャドー低減、ノイズ低減、深度方向の強度減衰補償、及びコントラスト調整の少なくとも1つを含む、コンピュータ読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年6月29日に出願された米国仮出願第63/045,508号の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、一般に、病状のモニタリング、評価、及び診断のためのデータ及び画像の解析に関し、特に、病状のモニタ、評価、及び診断のための3次元(3D)光コヒーレンストモグラフィ(OCT)データ及び画像の解析に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書に記載されている「背景技術」の説明は、本開示の背景を大まかに提示することを目的としている。出願時に先行技術として認められない記載の態様と同様に、この背景技術セクションに記載されている範囲で、現在の発明者の研究は、本発明に対する先行技術として明示的にも暗黙的にも認められない。
【0004】
OCTは、様々な生体組織(例えば、2次元スライス、及び/又は、3次元ボリューム)を生体内でイメージングし、解析する技術である。3次元(3D)ボリュームOCTデータから作成された画像は、撮影された組織の成分が異なると、見え方/明るさが異なる。様々な解析及び/又は視覚化のために、この違いに基づいて、画像からこれらの成分を分離することが可能である。例えば、OCT画像では、脈絡膜血管系は脈絡膜間質より暗く見える。従って、OCT画像中の脈絡膜血管系は、強度閾値を適用することで分離(セグメント化)することが可能である。しかしながら、OCT画像の固有の特性に起因して、画像に対して直接的に閾値化を適用すると、血管の分離(segmentation)にアーチファクトが発生する。OCTデータの成分を分離する他の手法が開発されているが、これらも様々な欠陥や制限に悩まされている。
【0005】
例えば、局所2値化方法によって脈絡膜の管腔領域と間質領域(stromal area)とを決定するとき、解析する深さで十分な画質を得るためには、特殊な画像取得プロトコル(enhanced depth imaging:EDI)と平均化したラインスキャンが必要であり、利用するOCTシステムのタイプによってはノイズの多い結果にならないようにする必要がある。更に、最終的な閾値を手動で適用するケースもある。2D投影画像において脈絡膜血管密度測定を行うと、深度分解能に欠け、シャドーアーチファクトに悩まされることがある。同様に、2次元(2D)B-スキャンにおける血管境界の自動検出は(機械学習を用いても)、シャドーアーチファクトの影響を受けることがあり、更に、アプリケーションのみ、又は、大きな血管だけに限定されている。更に、セグメンテーションがボリューム全体に適用されるのではなく、ボリューム内の各B-スキャンに対して実行されるため、分離された血管の連続性が劣化する場合がある。このため、各々の分離されたB-スキャンを接合したり又はつなぎ合わせたりして、1つの分離されたボリュームを生成する必要がある。他のセグメンテーション手法は、正常な眼(疾患のない眼)にしか適用できず、疾患に起因して網膜の構造が変化した場合にエラーが発生する。更に、セグメンテーションの中には、基礎データに対するノイズ除去フィルタの適用により、データの精度が低下するものもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
要するに、適切に分離された脈略膜血管系からデータを作成するために、ノイズ除去を行わず、B-スキャンを繰り返して平均化したり、あるいは深さ方向に沿って平均化したりすることが従来から行われている。その結果、セグメンテーションの寸法及び位置が制限される。また、更に、3Dデータに適用する場合、従来の方法では計算時間が長くなり、解析できるデータが制限されることがある。これらの制限のため、本発明の前では、脈絡膜血管系の臨床的に価値のある多くの視覚化、及び、定量化を提示することは実用的でなく、及び/又は、可能でさえなかった。従来のOCTデータから得られる定量化は、ノイズが多くて正確な解析に使えるこができず、多数のボリュームから得られた平均値を利用する。それでもまだノイズに悩まされることがあり、(平均値が得られる反復ボリュームごとに)走査回数を増加させる必要があったり、あるいは比較的小さな関心領域(例えば、シングルB-スキャンにおける中心窩の下1.5mm)に限定されたりする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態の1つの態様は、被検者の眼の3次元ボリュームデータを受信する受信回路と、前記3次元ボリュームデータの一部を別々のセグメントに分離し、前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行し、前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成するように構成されたプロセッサと、を含む医用診断装置である。前記プロセッサは、更に、前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成するように構成され、更に、前記少なくとも1つの診断指標に基づいて病態を評価するように構成される。
【0008】
前記プロセッサは、更に、前記診断指標の3次元の図を前記被検者の眼の構造に重畳してレンダリングする視覚化を行うように構成されていてもよい。
【0009】
前記少なくとも1つの診断指標は、脈絡膜血管径、脈絡膜血管形状、脈絡膜血管密度、脈絡膜血管位置分布、脈絡膜血管屈曲度、脈絡膜血管指数、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、貫通血管長、貫通血管方向、貫通血管対称性、貫通血管数、貫通血管密度、神経周囲血管サイズ、及び、腫瘍サイズの少なくとも1つを含む。
【0010】
前記病態は、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、及び、血管指数を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のCSC疾患の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0011】
前記病態は、Vogt-小柳-原田(VKH)疾患であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、脈絡膜間質体積、及び、血管指数を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のVKH疾患の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0012】
前記病態は、緑内障であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、前記被検者の眼の強膜を貫通する神経周囲血管の数、前記強膜を貫通する前記神経周囲血管の形態、及び、前記強膜を貫通する前記神経周囲血管のサイズを含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の緑内障の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0013】
前記病態は、病的近視であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積の経時的な変化、及び、貫通血管の数、密度、又は形態を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の病的近視の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0014】
前記病態は、乳頭周囲萎縮(PPA)であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者のPPAの進行又はリスクを評価するように構成される。
【0015】
前記病態は、網膜剥離手術からの回復であってよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の網膜剥離手術からの回復の進行を評価するように構成される。
【0016】
前記病態は、高血圧症、及び、脂質異常症の少なくとも1つであってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の高血圧症及び脂質異常症の少なくとも1つの進行又はリスクを評価するように構成される。
【0017】
前記病態は、認知症、又は、アルツハイマー病であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の認知症又はアルツハイマー病の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0018】
前記病態は、自己免疫疾患であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の自己免疫疾患の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0019】
前記病態は、内分泌疾患であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の内分泌疾患の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0020】
前記病態は、自律神経機能障害であってもよい。その場合、前記プロセッサは、更に、脈絡膜血管容積、及び、脈絡膜間質体積を含む前記診断指標に基づいて、前記被検者の自律神経機能障害の進行又はリスクを評価するように構成される。
【0021】
前記受信回路は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)スキャナを用いて実行された前記被検者の眼の1回のスキャンから、前記被検者の眼の前記3次元ボリュームデータを受信してもよい。
【0022】
前記プロセッサは、更に、前記被検者の眼の第1の位置における前記少なくとも1つの診断指標の第1の値と、前記被検者の眼の第2の位置における前記少なくとも1つの診断指標の第2の値との間の対応を特定するレジストレーションを行うように構成されてもよい。前記レジストレーションは、前記エンハンスド3次元ボリュームデータと共局在化した前記3次元ボリュームデータを用いて行われる。前記プロセッサは、更に、前記レジストレーションに基づいて、前記病態を評価するように構成されてもよい。
【0023】
前記プロセッサは、更に、第1の時間に決定された前記被検者の眼内の位置に対する前記少なくとも1つの診断指標の第1値と、前記第1の時間より遅い第2の時間で決定された前記被検者の眼内の前記位置に対する前記少なくとも1つの指標の第2値との間の対応を特定するレジストレーションを行うように構成されてもよい。前記レジストレーションは、前記エンハンスド3次元ボリュームデータと共局在化した前記3次元ボリュームデータを用いて行われる。前記プロセッサは、更に、前記レジストレーションに基づいて、前記病態を評価するように構成されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態の別の態様は、被検者の眼の3次元ボリュームデータを取得し、前記3次元ボリュームデータの一部を別々のセグメントに分離し、前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行し、前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成し、前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成し、前記少なくとも1つの診断指標に基づいて、病態を評価する、医用診断方法である。
【0025】
いくつかの実施形態の別の態様は、コンピュータによって実行されたとき、以下を含むステップを実行する命令を格納した、非有形のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、被検者の眼の3次元ボリュームデータを取得し、前記3次元ボリュームデータの一部を別々のセグメントに分離し、前記別々のセグメントのそれぞれに対して異なる処理を実行し、前記別々に処理されたセグメントを結合して、エンハンスド3次元ボリュームデータセットを生成し、前記エンハンスド3次元ボリュームデータセットから少なくとも1つの診断指標を生成し、前記少なくとも1つの診断指標に基づいて、病態を評価する、コンピュータ読み取り可能な媒体である。
【0026】
この概要は、以下の「詳細な説明」に更に記載されている概念の一部を簡略化して紹介するものである。この概要は、請求項に記載された主題の主要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、また請求項に記載された主題の範囲を限定することを意図したものではない。更に、請求される主題は、本開示のいずれかの部分で指摘された任意の又はすべての欠点を解決する限定事項に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本開示の範囲は、添付の図面と共に読まれる場合、例示的な実施形態の以下の詳細な説明から最もよく理解される。図面は、次の通りである。
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る方法の一例のフローチャートを示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の一実施形態に係る前処理及びセグメンテーションの応用例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の一実施形態に係る前処理、セグメンテーション、及び、視覚化・定量化/評価の更なる応用例を示す。
【
図3A】
図3Aは、本発明の一実施形態に従って生成される合成画像の一例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の一実施形態に従って生成される合成画像の別の例を示す図である。
【
図3C】
図3Cは、本発明の一実施形態に従って生成される合成画像の別の例を示す図である。
【
図3D】
図3Dは、本発明の一実施形態に従って生成される合成画像の別の例を示す図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の一例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【0028】
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の一実施形態に係る診断指標の視覚化の別の例を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の一実施形態に従って測定可能な血管のパラメータを示す図である。
【
図18】
図18は、本開示に係る被検者の眼の特徴を示す図である。
【
図19】
図19は、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20A】
図20Aは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20B】
図20Bは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20C】
図20Cは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20D】
図20Dは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20E】
図20Eは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20F】
図20Fは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20G】
図20Gは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20H】
図20Hは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20I】
図20Iは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20J】
図20Jは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20K】
図20Kは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図20L】
図20Lは、本発明の一実施形態に係るエンハンスドボリュームデータの3Dレンダリング図である。
【
図21A】
図21Aは、本発明の一実施形態に係るユーザインターフェースを示す図である。
【
図22】
図22は、本発明の一実施形態に係る処理前のOCTスキャンからのen-face画像である。
【
図23】
図23は、本発明の一実施形態に係る処理後のen-face画像である。
【
図24】
図24は、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図25】
図25は、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図26】
図26は、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図27A】
図27Aは、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図27B】
図27Bは、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図27C】
図27Cは、本発明の一実施形態によって測定可能な特徴を示す、被検者の眼の一部の断面図である。
【
図28A】
図28Aは、本発明の一実施形態によって測定可能な眼の特徴を示す図である。
【
図28B】
図28Bは、本発明の一実施形態によって測定可能な眼の特徴を示す図である。
【
図29A】
図29Aは、本発明の一実施形態に係る血管構造を片側から3D視覚化した一例を示す図である。
【
図30】
図30は、本発明の一実施形態に従って測定可能な被検者の眼の構造とランドマークを示す図である。
【
図31】
図31は、本発明の実施形態を実現するために用いられる例示的なコンピュータハードウェア及びソフトウェアを示す図である。 本開示の更なる適用分野は、以下に示す詳細な説明から明らかになるだろう。例示的な実施形態の詳細な説明は、説明を目的としたものであり、従って、本開示の範囲を必ずしも限定することを意図したものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、これまで実用的でなく、及び/又は、既知の技術では可能でなかった3次元(3D)ボリュームOCTデータの臨床的に価値のある解析、及び、視覚化に関する。このような解析、及び、視覚化により、医療従事者の疾患の診断、観察、及び、治療管理を行う(すなわち、病態の進行又はリスクを評価する)能力を向上させることができる。簡潔に説明すると、解析が行われ、一連の前処理技術に続いて3次元の関心成分(例えば、脈絡膜血管系)のOCTデータを分離することで、視覚化が行われる。前処理に続いてデータにセグメンテーションを適用し、組み合わせることで、最終的に所望の成分のフル3Dセグメンテーションを作成することができる。その後、平滑化などの後処理を分離された成分に適用してもよい。本明細書では、OCTデータの脈絡膜血管系について特に説明するが、本開示はそのように限定されるべきものではない。
【0030】
眼は、最も重要な感覚器官であり、身体の健康全体を観察する窓である。近年、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を用いた高速、且つ、非侵襲的な眼のイメージングが進歩し、眼のイメージングを通じて、より多くの健康関連情報を明らかにすることができる。脈絡膜は、血管が多く、その構造変化は、眼、及び、身体の様々な生理的、及び、病理的な状態を反映する。本発明の一実施形態は、病態の3D脈絡膜血管系に対する考察能力を向上させ、ディープラーニングを用いた、OCT画像の3D脈絡膜血管系の自動視覚化及びボリューム計測を行う。
【0031】
本実施形態によれば、本方法で取得された脈絡膜血管容積、及び、全脈絡膜体積を用いて、疾患に関連する脈絡膜血管の診断の高感度、及び、高特異性を可能にする。中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)とVogt-小柳-原田(VKH)疾患を最初に説明する。しかしながら、その他の疾患/病気も考慮される。CSCは、視力障害を引き起こす非炎症性疾患であり、働き盛りの世代によく見られ、患者の日常生活や社会生活に大きな障害をもたらす可能性がある。VKHは、炎症性で、進行性のある、視力を脅かす疾患であり、世界における失明の主要原因の1つである。本発明の実施形態は、緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、及び、近視を含む疾患において、疾患の追跡及び診断に、並びに治療効果の指標として用いられるバイオマーカー(生体指標)を特定する。
【0032】
眼は、生きるために必要とされる感覚の90%を取り込む。眼の疾患を患うことは、生活の質を低下させ、視力障害を伴う患者は、特に高齢の世代の間において、認知症、又は、うつ病など他の病気や障害に発展するリスクの増加に直面する。逆に、全身の健康に異常が生じた場合、眼、特に後眼部、すなわち網膜、脈絡膜、視神経乳頭に変化が見られることがある。例えば、高血圧、糖尿病、自己免疫疾患、日和見感染症などは、網膜所見から診断することができる。例えば、眼底所見からアルツハイマー病などが診断されることがある。このように、眼の検査は、いくつかの一般的な疾患の評価に有用なバイオマーカーを提供する。
【0033】
脈絡膜組織は、AMDなどの視力を脅かす眼疾患を含む、眼のさまざまな生理的、及び、病理的状態において重要な役割を担っていると考えられている。脈絡膜の研究、特にその血管系の構造とボリューム(volume)は基本的に重要である。臨床的に重要であるにもかかわらず、従来の方法では脈絡膜組織の検査は困難であった。例えば、細隙灯顕微鏡による脈絡膜の検査は、網膜層や脈絡膜組織そのものの解剖学的特徴によって妨げられる。現在では、インドシアニングリーン血管造影(ICGA)とOCTとが、脈絡膜の内部構造の評価について標準的な手法である。ICGAは、侵襲的な処置で、重篤な副作用が生じる可能性があり、色素を注入して時系列の2D画像を通して血流を視覚化するものである。3D情報が得られないことと、ICGA特有の網膜血管や漏出に気を取られることとも欠点である。脈絡膜の上方の網膜層による妨害やアーチファクトは、従来のOCTイメージングに基づく臨床的な評価の障害になっている。
【0034】
本発明の一実施形態は、OCT画像ボリュームから3D情報を抽出する新規な画像処理を用いて、脈絡膜血管構造を視覚化し、定量化する。この方法では、OCTの画質、及び、定量化に悪影響を及ぼす問題を解決するために、一連の前処理技術が採用される。これらの問題は、スペックルノイズやランダムノイズ、シャドーアーチファクト、深層での信号の減衰や画像コントラストの低下を含む。特に、本前処理方法は、特定の取得プロトコルによらず日常的に取得される単一のOCTボリューム(例えば、シングルOCTスキャンから取り込まれたボリューム)に効果を発揮し、既存のデータベースに遡及的に適用して病態の新しい洞察を得ることができるという実用上の利点を提供する。
【0035】
次に、前処理されたOCTボリュームから、脈絡膜領域と脈絡膜血管構造が順次に分離(セグメント化)される。脈絡膜領域は、ブルッフ膜(BM)2416(
図24)と脈絡膜/強膜境界面(CSI)1808(
図18)との間の領域と定義され、本発明の一実施形態ではディープラーニングに基づくアルゴリズムを用いて分離され、脈絡膜血管は、脈絡膜血管と間質との間のコントラスト差を利用した複合的な方法により分離される。
【0036】
本開示に係る臨床的に価値のある解析、及び視覚化を行う方法の一例を
図1に示す。
図1に見られるように、3DボリュームOCTデータが取得され、対応する原画像(画像はグラフィカルな形式で基礎データを表現するものであるため、以下、「画像」と「データ」とは同一視される)が、被検者の眼のイメージング100によって生成される。イメージングに続いて、個々の2D画像(又は、多くの2D画像をまとめて3Dボリュームとして)には前処理102が実行される。前処理102は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年2月21日に出願され、”Image Quality Improvement Methods for Optical Coherence Tomography”と題された米国特許出願第16/797,848号に記載されているようなディープラーニングに基づくノイズ低減手法を適用することによってデータ、及び、画像内のスペックルノイズ、及び、他のノイズに対処してもよい。更に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年9月28日出願され、”3D Shadow Reduction Signal Processing Method for Optical Coherence Tomography (OCT) Images”と題された米国特許出願第16/574,453号に記載されているような画像処理、及び/又は、ディープラーニング技術を適用することによって、シャドーアーチファクト、及び、プロジェクションアーチファクトを低減してもよい。当然のことながら、他のノイズ低減手法が適用されてもよい。
【0037】
深度方向の強度減衰は、強度補償、及び、コントラスト強調の手法を適用することによって対処されてもよい。強度減衰補償は、高反射領域(例えば、RPE損傷があるとき)、又は、低反射領域(hyporeflective)(例えば、浮遊物、ドルーゼン、又は、網膜剥離があるとき)によって生ずる問題にも対処できる。このような手法は、例えば、局所ラプラシアンフィルタとして、所望の深度、及び、関心領域(2D、又は、3Dのいずれか)に局所的に適用することができる。加えて、又は、その代わりに、コントラストを向上させるために、コントラスト制限適用ヒストグラム平坦化(CLAHE)手法を適用することができる。当然のことながら、他のコントラスト強調手法(局所的、又は、大域的に適用される)、及び/又は、他の前処理手法を適用してもよい。
【0038】
前処理102は、画像全体又はボリューム全体に適用してもよいし、選択された関心領域のみに適用してもよい。その結果、前処理102に入力される各原画像又は各ボリュームに対して、複数の前処理済み画像が生成される場合がある。言い換えれば、原ボリュームOCTデータから取得された個々のB-スキャン又はC-スキャンには、異なる前処理手法が施されて、複数の前処理済み画像が生成される。前処理102に続いて、前処理済み画像(又は、画像の基礎となるデータ)は、脈絡膜血管系などの画像/データにおける所望の成分についてセグメント化104される。セグメンテーション処理104は、1つ以上の異なる手法を利用してもよく、ここで、適用される各セグメンテーション手法は、個々に、比較的簡単に、且つ、高速に実行でき、異なる強みと弱みとをもつことができる。
【0039】
例えば、いくつかのセグメンテーション手法は、異なる閾値レベルを利用してもよく、及び/又は、異なる方向からの表示(例えば、B-スキャン、又は、C-スキャン)からの解析に基づくものであってもよい。より具体的には、C-スキャンに対してセグメンテーションを施すことで、各C-スキャン画像にボリュームの全体の視野の情報が含まれるため、B-スキャンに対して施すセグメンテーションに比べて、血管の連続性を向上させることができる。これにより、B-スキャンに対するセグメンテーションに比べて、細い血管のセグメンテーションが更に可能となり、ユーザによる手動のセグメンテーションの検証も容易になる。しかしながら、C-スキャンに対するセグメンテーションは、ボリュームデータを平坦化するために用いられる前述のブルッフ膜のセグメンテーションの精度に依存する場合がある。
【0040】
上記を考慮して、異なるセグメンテーション手法は、前処理済み画像のうちの1つ又は複数に対して選択的に適用することが可能である。更に、上記のように示唆されているように、OCTボリューム全体に対する全体的なセグメンテーションは、ノイズ、及び、減衰(例えば、アーチファクトを引き起こす)のために、従来では、実用化することができなかった。しかしながら、上述の前処理の適用に続いて、セグメンテーション手法は、ボリュームからの個々のB-スキャン、又は、C-スキャンよりむしろ、本発明の一実施形態に係るOCTボリューム全体に適用してもよい。いずれの場合でも、各セグメンテーション手法は、前処理済み画像/データにおける所望の成分を分離(segment)する。ボリューム全体に適用されるセグメンテーションは、個々のセグメンテーションをつなぎ合わせる必要がないため、セグメンテーションの接続性を更に向上させることができる。このようなセグメンテーションは、比較的コントラストの低いボリュームの局所領域に対する感度が低くなるかもしれないが、これは、上記の深度補償及びコントラスト強調手法によって軽減することができる。
【0041】
一例の実施形態では、各セグメンテーション手法は、別々に前処理された画像/データに適用されてよい。別の実施形態では、セグメンテーション手法は、異なる関心領域に対応する画像/データに選択的に適用されてよい。例えば、最初の2つの前処理済み画像は、第1のセグメンテーション手法に従ってセグメント化され、次の2つの前処理済み画像は、第2のセグメンテーション手法に従ってセグメント化されてもよい。別の実施形態では、3DボリュームOCTデータが任意の数の手法に従って前処理された後、局所閾値化セグメンテーション手法が、前処理された3DボリュームOCTデータから取り出されたB-スキャン画像に適用されて脈絡膜血管系に関する第1の判定を行い、前処理された3DボリュームOCTデータから取り出されたC-スキャン画像に対して局所閾値化手法(local thresholding technique)が適用されて脈絡膜血管系に対して第2の判定を行い、前処理された3Dボリュームデータの全体に大域的閾値化手法(global thresholding technique)が適用されて脈絡膜血管系の第3の判定を行う。
【0042】
適用される前処理、及び、セグメンテーション手法の数にかかわらず、次に、セグメンテーションは組み合わされて、合成/強化された(エンハンスド)セグメント化画像又はデータが生成される。合成/強化されたセグメント化画像又はデータは、アーチファクトがなく、解析108の一部として様々な定量的な指標(metrics)を決定する処理、及び、セグメンテーション及び/又は指標(例えば、診断指標)の視覚化110の双方に十分な品質を有している。このように、合成画像は、前処理、及び、セグメンテーション手法のすべて含み、結合(union)、交差(intersection)、重み付け(weighting)、投票(voting)など、任意の方法に従って合成することができる。セグメンテーション104に続いて、セグメント化された画像又はデータは、例えば、平滑化のために、更に後処理されてもよい。
【0043】
前処理とセグメンテーションとの上記の組み合わせが、
図2Aについて模式的に図示されている。この例では、共通の3DボリュームOCTデータセットからそれぞれ、原画像と原データの2つのサブセットを利用する。画像/データのサブセットは、関心領域、表示(例えば、B-スキャンとC-スキャン)などに応じて分離されてもよい。
図2Aの例によれば、第1のサブセット200は第1の前処理202の対象となり、第2のサブセット204は第2の前処理206の対象となる。他の実施形態(破線で示す)では、各サブセット200、204は、利用可能な前処理202、206のいずれかの対象であってもよい。このようにして、第1のサブセット200に関連付けられたデータは、少なくとも1つの前処理されたデータサブセットになり、第2のサブセット204に関連付けられたデータは、少なくとも2つの前処理されたデータサブセットになる。前処理に続いて、結果として得られた各データセットは、同様に、任意のセグメンテーション手法(例として3つを示す)によりセグメンテーションされる。図示されるように、各前処理の結果は、異なるセグメンテーション手法208、210、212によって別々にセグメント化される。しかしながら、他の実施形態(破線で示す)では、セグメンテーション手法208、210、212の1つ以上が、前処理された画像/データのいずれかに適用されてもよい。最後に、各セグメンテーション手法208、210、212の出力は、上記のように合成214が行われて、合成強化(enhanced)セグメンテーションが行われる。上記の観点から、共通の原画像及び原データは、原画像及び原データの元となった3DボリュームOCTデータの単一の合成セグメンテーションを生成する方法の一部として、異なる前処理、及び/又は、セグメンテーション手法の対象となってよい。
【0044】
図2Bは、他の実施形態のブロック図を示す。
図2Bの例では、3Dセグメンテーション、及び、対応する定量的な診断指標の生成に、シングルOCTボリュームスキャン216が用いられる。前処理218のステップは、前述したように、シャドー低減224、ノイズ低減226、減衰補償228、及び、コントラスト調整230を含む。血管セグメンテーション220のステップは、層がセグメント化され、且つ、補正される半自動脈絡膜層セグメンテーション232(疾患の場合)と、B-スキャン表示、C-スキャン表示、及び、グローバルな閾値からのセグメンテーション結果を組み合わせる全自動合成セグメンテーション234とを含む。セグメンテーションから、視覚化・定量化222を実現することができる。脈絡膜血管の3Dピクセル単位のラベルは、視覚化236のための3D血管構造のレンダリングに直接用いることができ、多数の2D及び3D定量化238(例えば、血管ボリュームマップ、血管径マップなど)を生成することができる。
【0045】
本発明の一実施形態は、関心のある病態における脈絡膜をセグメント化するためのディープラーニング(DL)ベースの脈絡膜セグメンテーション方法を含む。DL法は、厚い脈絡膜、及び、拡張血管を含む脈絡膜を扱うように訓練される。脈絡膜領域内では、B-スキャン表示における局所閾値化、C-スキャン表示における局所閾値化、及び、大域的閾値化手法の結果を組み合わせた本発明のセグメンテーションアルゴリズムの一実施形態に従って、脈絡膜血管が自動的にセグメント化される。B-スキャン表示セグメンテーションは、簡略化のために脈絡膜血管のセグメンテーションに適用されることがあるが、小血管ではうまく機能しないことが多い。C-スキャン表示画像は、ブルッフ膜(BM)に対してボリュームを平坦化することによって生成され、C-スキャン表示でのセグメンテーションは、特にシャドー低減手法後に血管の接続性を向上させる。その上、同じC-スキャンレベルの血管は同様のサイズであるため、大血管でも小血管でも同じようにセグメンテーションが機能する。その一方で、疾患の場合に局所閾値化手法が苦戦する病態において、大域的閾値化方法は、太い拡張血管のセグメンテーションに最も上手く機能する。合成セグメンテーションの結果は、詳細な3D脈絡膜血管構造を含む。一方、3D間質情報は、血管のセグメンテーションの逆を行うことで得られる。
【0046】
本発明の一実施形態に係る3Dセグメンテーションは、ピクセルベースで行われ、脈絡膜血管の3D視覚化と定量化の双方を可能にする実用的な利点を提供する。3Dセグメンテーションは、そのままレンダリングエンジンに送られ、脈絡膜血管系の3D視覚化が自動的に行われる。自動セグメンテーション方法を含む実施形態によって示される明確さと詳細は、報告されている方法よりも優れている。脈絡膜血管の形態の詳細な3D視覚化により、既存の手法では実現できなかった深さ方向の観察が可能になる。
【0047】
上記のように、単一の複雑な前処理及びセグメンテーションを実行するのではなく、複数の前処理及びセグメンテーション手法を利用して合成結果を生成することにより、前処理及びセグメンテーションの合計時間、及び、計算能力が削減される。それにもかかわらず、同じ品質を達成することができ、3Dボリューム全体にセグメンテーションを適用することができる。その結果、ノイズやシャドーアーチファクトがなく、以下でより詳しく後述されるような病態の評価、及び、モニタリングに有用な視覚化、及び、定量化に十分な品質を持つセグメンテーションを行うことができる。
【0048】
図3A~
図3Dは、本発明の一実施形態に係る3DボリュームOCTデータからセグメント化された脈絡膜血管系をレンダリングする合成画像の例を示す。
図3A~
図3Dの例では、異なるハッシュパターンの領域が示されているが、異なる領域は、代替的に、対応する領域における定量的な指標の値を表す色を用いて表示されてもよい。
【0049】
図1に戻って、ボリュームの定量的な解析のために従来使用されていたB-スキャンの2次元データではなく、合成画像又はボリュームを処理して、ボリュームOCTデータ全体に基づいて多くの定量化可能な指標の生成及び解析108を行うようにしてもよい。これらの診断指標(本明細書では、指標と同義と同義の場合もある)は、上記の前処理済みのセグメント化されたOCTデータから生成されるため、従来の手法に従ってOCTデータから得られる指標よりも有意に正確である。更に、指標(及び
図3Aのようなセグメント化された視覚化、並びに、指標から生成された任意の視覚化)は、ボリュームの複数の2D画像又はボリューム全体にわたって、及び、単一のOCTボリュームから(複数のスキャンの平均ではなく、単一のスキャンから取り込まれるように)比較的大きな領域(例えば、単一のB-スキャンの1.5mmよりも大きい)について決定されてよい。
【0050】
例えば、3Dボリューム内において、セグメント化されていないデータに対し合成セグメント化画像でセグメント化されたデータを比較することによって、血管の空間的なボリューム(及び、これに関連して、成分を分離した血管系などのある領域における全ボリュームの割合である密度)、直径、長さ、容積比(指数(index)ともいう)などを特定することができる。例えば、セグメント化されたピクセルの数を数えることで、関心領域内の血管系の量(例えば、ボリューム(体積、容積)、又は、密度)の指標としてもよい。それらの指標を深さなどの1つの次元に沿って投影(最大、最小、平均、合計などをとる)することで、ボリュームマップ、直径マップ、指数マップなどを生成することができる。このようなマップは、被検者の眼の構造上(例えば、網膜上)の各位置に、指標の定量化された値を視覚的に示すことができる。更に、単一の次元又は関心領域(例えば、マップ全体)においてそれらの指標を総計することにより、全ボリューム、代表指数などを特定することが可能である。広いエリアにわたる、単一のOCTボリュームからの指標のように定量化することで、これまで不可能だった被検者間の比較、又は、被検者個々の経時的な比較が可能になる。
【0051】
また、指標は、比較することもできる。例えば、比較指標は、異なる時間に1人の被検者から得られOCTボリューム、異なる眼(例えば、1人の個人の右眼と左眼)から得られたOCTボリューム、複数の被検者(例えば、個人とある母集団を代表する集団個体との間)から得られたOCTボリューム、又は、同じ眼の異なる関心領域(例えば、異なる層)から得られたOCTボリュームの指標に基づくものであってよい。これらの比較は、比較の各要素ごとに指標を判定し、任意の統計的な比較手法を実行することにより行うことができる。例えば、比較指標は、比較データの比率、比較データ間の差、比較データの平均、比較データの合計、比較データの偏差などであってよい。比較は、総ボリュームデータについて全般的に行われてもよいし、場所ごと(例えば、比較マップの各ピクセル位置で)に行われてもよい。
【0052】
共通の関心領域からの指標を比較する場合、比較される要素(異なるデータセット、画像、ボリューム、指標など)は、同様に比較できるように、互いにレジストレーションされていることが好ましい。言い換えると、レジストレーションすることにより、各要素の対応する部分を比較することができる。いくつかの例では、例えば脈絡膜血管系の変化を比較する場合、血管系は各要素で必ずしも同じではないため(例えば、比較する期間中の治療に起因して)、血管系そのものに基づいてレジストレーションを行わなくてもよい。より一般的に言えば、要素間で異なる可能性のある情報、又は、比較される指標に用いられる情報に基づいて、レジストレーションが行われないことが好ましい。これを考慮して、いくつかの実施形態では、レジストレーションは、各比較要素の元の(例えば、前処理されていない)OCTボリュームから生成されたen-face画像に基づいて実行されてよい。これらのen-face画像は、レジストレーションに用いられる領域内の各A-ラインに沿った強度の総和や平均化などを行うことで生成することができる。網膜血管は影を落とすことがあるため、en-face画像はレジストレーションに有効である。従って、OCTのen-face画像上において比較的安定している暗い網膜血管系をランドマークとすることができる。更に、OCTボリュームから生成された指標、脈絡膜血管系画像などは、同じボリュームから生成されるため、共通してen-face画像にレジストレーションされる。例えば、第1のボリュームの表在血管は第2のボリュームの表在血管にレジストレーションされ、第1のボリュームの脈絡膜血管(又は、脈絡膜血管の指標)を、第2のボリュームの脈絡膜血管と比較することができる。
【0053】
そして、これらの指標の視覚化を行い、表示110を行ったり、後に閲覧するために保存したりすることができる。すなわち、本発明の実施形態は、ボリュームOCTデータのセグメント化された成分(例えば、脈絡膜血管系)の視覚化だけでなく、そのセグメント化された成分に関連する定量化された指標の視覚化(例えば、マップ、及び、グラフ)を行うことが可能である。これらの定量化された指標を視覚化することで、上記の比較を、更に簡素化することができる。このような視覚化は、3Dボリューム情報を表す指標の2D表現、及び/又は、2つ以上のOCTボリュームの間の変化、及び/又は、差分を表す比較可能な指標の表現であってもよい。上記の指標を考慮すると、視覚化は、例えば、脈絡膜血管指数マップ、脈絡膜厚マップ、血管ボリュームマップ、及び/又は、それぞれの比較であってもよい。
【0054】
視覚化では、様々な形式で情報が符号化されることがある。例えば、視覚化の各ピクセルの強度は、そのピクセルに対応する位置での指標の値を示し、色はその値の推移を示すもの(又は、その推移に強度を利用し、その値に色を利用するもの)であってよい。あるいは、
図3A~
図3Cの例に示すように、異なる値を異なるハッシュパターン領域で示すようにしてもよい。更に別の実施形態では、異なる指標情報を特定するために異なる色チャンネルを用いてもよい(例えば、各指標ごとに異なる色を使用し、強度はその指標の推移又は値を表す)。更に別の実施形態では、色相、彩度、明度(HSV)、及び/又は、色相、彩度、輝度(HSL)のコード化の様々な形式を用いてもよい。更に別の実施形態では、透明度を用いて追加情報を符号化してもよい。
【0055】
図3Aの視覚化は、脈絡膜血管系の2D画像であり、各ピクセルのハッシュパターンが以前のスキャンとの比較で指標の局所的な推移に対応する。例えば、各ピクセルのハッシュパターンは、以前に取り込まれた3Dボリュームデータからの以前の指標と比較して、血管容積、血管長、血管厚などの3Dボリュームデータの測定値の変化に対応させてもよい。例えば、図は、今回の検査と前回の検査との間の指標の比率(又は、差分)を示すことができる。赤色、すなわち第1のハッシュパターンは、測定値が拡大した領域(比率>1、又は、差分>0)を示し、紫色、すなわち第2のハッシュパターンは、測定値が縮小した領域(比率<1、又は、差分<0)を示し、緑色、すなわち第3のハッシュパターンは、測定値が安定した領域(比率~1、又は、差分~0)を示してもよい。パターンの違いにより、局所的な経時変化を容易に視覚化することができる。以前の測定値との比較は、単純な差分、複数の測定値の平均値に対する変化、標準偏差などの統計的計算としてとらえることができる。当然ながら、色と変化と間の相関は、他のスキーム(schemes)に従って設定されてもよい。
【0056】
脈絡膜血管2Dボリュームマップは、本開示に係る視覚化の別の例を表す。3Dボリュームデータセットの脈絡膜血管系容積は、3Dボリュームデータの各A-ラインの脈絡膜血管系に対応するピクセル数に各ピクセルの解像度を乗算することによって求めることができる。深さ方向に集約される場合、ボリュームマップの各ピクセルは、3Dボリュームデータセットの1つのA-ラインに対応する。このような視覚化に従って、ボリュームマップの各ピクセルの強度が、対応する位置の血管容積に対応することになる。同様に、セグメント化されたピクセル数を脈絡膜(又は、他の領域)における総ピクセル数と比較することで、その領域にわたる血管系(又は、他の成分)の密度を定量化することができる。一般に、ボリューム(容積)と密度は、共に増加したり減少したりする。本発明の一実施形態は、任意のカラーマップ(各強度が色に対応する)でマップを直接表示して、1つのボリューム内で血管系と定量的な血管容積を示すことが可能である。他のケースでは、実施形態は、各ピクセルの強度が量(例えば、血管容積)を表す一方、色が以前のスキャン又は別の基準スキャンと比較してそのボリュームの局所的な推移に対応する合成画像としてマップを表示することが可能である。
【0057】
上記のように、2D視覚化マップを生成するために用いられる指標は、追加の解析のために関心領域に対して更に集計されてもよい。例えば、中心窩(半径1mmを有する)、傍中心窩(上方、鼻側、下方、耳側)(中心窩の中心から半径1~3mmを有する)、中心窩周囲(上方、鼻側、下方、耳側)(中心窩の中心から半径3~5mmを有する)等に相当する領域について、指標の値、及び/又は、ピクセル強度が集計されてもよい。集計は、総和、標準偏差など、任意の統計計算により求められたものであってよい。集計された数値が異なる時点で収集される場合、トレンド解析を行い、対応する推移(trend)の視覚化を行うことが可能である。また、集計された数値は、患者間や標準値(normative value(s))との比較も行うことが可能である。
【0058】
図4Aに、中心窩と中心窩周囲の鼻側の脈絡膜体積の推移の視覚化の一例を示す。
図4Aに見られるように、4週間にわたり毎週、中心窩と中心窩周囲の鼻側の領域それぞれで脈絡膜の体積が集計された。この視覚化により、被検者は1週目から2週目にかけて中心窩周囲の鼻側における血管系のボリュームが増加し、同時期にそれに対応して中心窩における血管系のボリュームが減少していることが明確にわかる。しかしながら、3週目で中心窩における血管系のボリュームが増加し始めると、中心窩周囲の鼻側のボリュームが元の値より減少した。3週目から4週目にかけて、各領域のボリュームは増加した。
【0059】
図4Bに、視覚化の別の例を示す。
図4Bでは、脈絡膜血管系の総容積が、中心窩(Center)、鼻側-上方(NS)、鼻側(N)、鼻側-下方(NI)、耳側-下方(TI)、耳側(T)、及び、耳側-上方(TS)の異なるセクタごとに示されている。総容積は、各セクタ内の脈絡膜血管のピクセルの総数を合計するようによって求めてよい。3Dデータの解像度に基づき、ピクセルの総数を、その後に物理的なサイズ(例えば、立方ミリメートル)に変換することができる。
図4Bの視覚化によれば、患者の治療前、治療後1ヶ月、及び、治療後1年の容積が示される。図に示すように、治療後は各セクタで血管の容積が大きく減少する。
【0060】
その他の2Dマップや推移の視覚化は、異なる指標に対して生成することができる。例えば、血管厚マップ、及び、推移の視覚化は、3Dボリュームデータセットの各A-ラインについて脈絡膜血管系のピクセルの総数を求めることによって生成することができる。或いは、非血管指数マップ、及び、推移の視覚化は、ある領域(脈絡膜など)内の非血管ピクセルの総数を求めることによって生成することができる。
【0061】
上記の態様は、ソフトウェアを実行するように構成されたハードウェアプロセッサを介して実施される。「プロセッサ」は、例えば、抵抗器、トランジスタ、キャパシタ、インダクタなどを含む、任意の数の電気部品で構成される任意の電気回路、又はその一部であってもよい。回路は、例えば、集積回路、一連の集積回路、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、プリント基板(PCB)上のディスクリート電子部品の集合体など、任意の形態であってよい。プロセッサは、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、デジタルハードディスクなど、揮発性、又は、不揮発性の何らかの形態のメモリに格納されたソフトウェア命令を実行することができる。プロセッサは、OCTなどのイメージングシステムと統合されていてもよいが、単独でもよいし、画像データの処理以外の動作に用いられるコンピュータの一部であってもよい。
【0062】
本発明の実施形態を確認するために、臨床試験を実施した。CSCとVKHの患者をスウェプトソース光コヒーレントトポグラフィ(SS-OCT):DRI-OCT(登録商標)(トプコン、東京、日本)で検査した。黄斑部の12mm×9mmのB-スキャンが、3Dボリュームを形成する。研究対象は、健常眼(健診センタで収集され、眼科医が確認した超健常者)38名と、治療歴のないCSCの患者23名と、VKH又は交感性眼炎(SO)の患者16名を含んでいた。23名のCSC患者は、我々の医療記録においてCSCの診断基準で診断された患者(78名)から網膜専門医が無作為に選ばれたものである。VKH又はSOと診断された16名の患者は、大阪大学附属病の診療所から継続的に募集されたものである。23名(女性5名、男性18名)の患者は、OCTによって撮影された神経感覚剥離、及び、フルオレセイン(網膜色素上皮層(RPE)レベルでの漏出)とインドシアニングリーン血管造影(ICGA)(脈絡膜血管の過透過性)の所見から、CSCと診断された。患者の記録は、網膜専門医によって遡及的に再調査された。CSC以外の眼疾患を伴う被検者、及び、脈絡膜に到達する前にOCT信号に著しい減衰を引き起こす色素上皮剥離が進んだ(high pigment epithelium detachment)被検者は除外された。
【0063】
VKHとSOの研究は、細隙灯検査、OCT、血管造影、及び、腰椎穿刺の臨床データに基づいて、VKH又はSOと診断された16名(女性5名、男性11名)の患者の32眼を参加させた。患者の記録は、ぶどう膜炎専門医によって遡及的に再調査された。初診時に、炎症に起因した重度の網膜剥離や硝子体混濁により一般的にSS-OCTによる脈絡膜の観察が妨げられるため、初期段階は、治療後の3日間とする。
【0064】
本発明の実施形態に係る3D解析及び視覚化は、
図2Bに示すように、定量的な解析のため、脈絡膜内の3D血管構造を生成するために、定められたシングルOCTボリュームスキャンから取得された3Dデータを入力することを含む。
【0065】
画質を向上させ、正確な脈絡膜血管のセグメンテーションを支援するために、一連の前処理手法がオリジナルのボリュームOCTスキャンに適用される。すなわち、ディープラーニングベース(DL)のノイズ低減手法は、レジストレーション-平均化、脈絡膜領域の網膜血管が落とす影を最小化するシャドー低減手法、脈絡膜深部の画像コントラストを更に向上させる深度減衰補償、及び、血管の視覚性を高める局所コントラスト強調の128倍に相当するレベルに、OCT画像に含まれるスペックルノイズを低減する。
【0066】
正常な被検者の眼とCSCの被検者の眼との間の実施形態に係る視覚化の比較によれば、網膜側では、両被検者の血管の厚さはほぼ同様であるように見えることが示される。しかし、強膜側では、CSCの被検者は、血管厚が増加し、血管の形状に歪みが生じていることを示す。この視覚化手法は、後述する他の眼疾患/病態の既存データに対して遡及的に適用することで、病態に関してより多くの洞察を得るのに役立つ。
【0067】
本発明の一実施形態によれば、正常な被検者の血管ボリュームマップ、OCTのB-スキャン、及び、3D脈絡膜血管構造の視覚化は、VKHの被検者の左眼及び右眼の視覚化との比較に用いることができる。すべての被検者の血管ボリュームマップは、カラーバーがボリューム単位(例えば、mm3)で同じスケールを持つ定量的な値を示すことができる。有利なことに、実施形態によれば、3D脈絡膜血管構造は、網膜側からも強膜側からも、又は任意の断面に沿って同様に観察することができる。
【0068】
CSCの被検者に対する実施形態に係る視覚化は、健常者と比較して、血管の肥厚、及び、血管形状の歪みの増加を示す。病態において、網膜下液が多く(SRF)、厚い脈絡膜にもかかわらず、両症例とも明瞭な血管構造であることがわかる。ICGAにおける暗いエリアは、SRFとその奥にある奇形の脈絡膜血管を示す。奇形の脈絡膜血管は、通常、拡張して漏出しているため、その構造や解剖学的変化はICGAでは観察が難しいが、実施形態に係る血管ボリュームマップではより明確に観察することができる。ICGAにおいて脈絡膜血管が明瞭に描出されているエリアでは、血管ボリュームマップにおける血管構造がICGA画像とよく一致する。
【0069】
本手法では、深さ方向に沿って血管総容積を算出することによって、3D血管セグメンテーションから脈絡膜血管ボリュームマップを生成することができる。この新たに生成された血管ボリュームマップは、en-face上の各位置において、空間的に共局在化された構造と定量的なボリューム情報とを示し、臨床医によってより多くの病態を評価するように利用されてもよい。例えば、血管ボリュームマップは、健常眼と疾患眼の双方について、中心窩を横切る、ノイズ低減されシャドー補償がされたOCTのB-スキャンと共に表示することができる。病態において網膜下液(SRF)が多く、脈絡膜が非常に厚いにもかかわらず、血管ボリュームマップは、正常な場合だけでなく病的な場合にも、血管の構造を明瞭に示すことがある。血管ボリュームマップの強度値は、各位置の総血管容積に対応してもよく、両被検者の立法ミリメートル単位のカラーバーが同じスケールで描かれている。この色/強度表示により、健常者と比較して、CSCの被検者の眼は、血管容積が多く、血管が拡張していることを視診することができる。厚みの差は、OCTのB-スキャンでも確認することができる。
【0070】
従来、眼科医が脈絡膜疾患を疑う場合、病変を観察するための絶対的基準(gold standard)としてICGAが行われる。健康な場合と病的の場合の双方で脈絡膜血管を明瞭に明らかにすることで、本発明に係る血管ボリュームマップ方法は、脈絡膜疾患を検査する際にICGAに代わる非侵襲的な方法を提供することができる。例えば、ICGAで暗いエリアが観察されることがあるが、それは、SRFとその背後にある奇形の脈絡膜血管の存在を示している。奇形の脈絡膜血管は通常拡張して漏出しているため、ICGAではその構造や解剖学的変化の観察が困難である。
【0071】
これに対し、本発明に係る視覚化は、3Dの血管構造を明らかにし、血管が漏れている状態でも継続して機能することができる。その結果として、血管ボリュームマップは、ICGAよりも明瞭に脈絡膜血管を示す。ICGAによって脈絡膜血管が明瞭に画像化された領域では、OCTの血管ボリュームマップにおいて示される血管構造が、大量の奇形血管を含め、ICGAの血管構造とよく一致する。他の領域(黄斑部周辺)では、ICGA画像が暗く見えるICGAより、本発明の一実施形態に係る血管ボリュームマップでは、脈絡膜血管がより明瞭に観察される。その結果として、ICGAによって脈絡膜が観察できるほとんどの症例では、血管ボリュームマップは、ICGAによるものと同等、又は更に鮮明な血管構造を示す。
【0072】
このように、本発明に係る視覚化は、疾患状態でも血管構造を明瞭に観察できるようになる(ICGAと比較して良好、又は、同等)。これらの視覚化は、容易な観察のために、適切なカラーマップにより、血管の構造/容積分布を強調することも可能にする。また、これらの視覚化によれば、血管の変形、拡張、及び位置を直接可視化することが可能になる。長期的にプロットすると、血管容積の直接的に視認することができ、例えば、治療中の変化をモニタリングすることが可能になる。
【0073】
臨床経過の間、臨床医は、本発明の実施形態における血管ボリュームのアプローチが、治療の効果を評価するのに有用であることを見いだすことができる。例えば、VKHの被検者の検査において、治療が症状の改善を示した後、0ヶ月(0M)(
図3A)、1ヶ月(1M)(
図3B)、3ヶ月(3M)(
図3C)の時点でスキャンが行われた。血管ボリュームマップの表示には、様々なカラーマップを用いて、マップの様々な特徴を強調することができる。例えば、暖色系のマップが一般的に血管系を強調するが、寒色系のマップがボリュームの変化の検査により適している場合がある。
【0074】
図3A~
図3Cの例では、様々なハッシュパターンが、1×10
-4mm
3~3×10
-4mm
3の範囲の様々な血管容積に対応している。
図3A~
図3Cでは、治療中のVKHの被検者で、劇的な血管容積の変化が観察されるが、比較対象のCSCの被検者ではわずかな変化しか観察されない(図示せず)。これらの容積変化の観察は、B-スキャンから測定された脈絡膜の厚みと合致する。各時点における血管容積の統計的比較は、例えば
図3Dに示すように、ETDRSグリッド302の直径3mmの円内で行われる。CSC群(23名の被検者)の結果では、血管ボリュームマップを目視で確認できるように、治療中の脈絡膜ボリューム又は血管ボリュームに著しい変化は見られなかった(
図5、
図6)。一方、VKHの臨床被検者群(10名の被検者)では、
図7、
図8の診断指標によって示されるように、治療後に脈絡膜体積と血管容積の両方が著しく変化していることが確認される。
【0075】
画像から得られる定量的な情報を用いて、疾病の診断を行うこともできる。
図9~
図16は、関心領域内の定量的なマップの特徴を統計的にまとめ、その結果得られた値を、曲面下面積(Area Under Curve:AUC)分析(ここでは、特に、受信者操作特性(Receiver Operating Characteristic:ROC)曲線)で疾患診断に利用した例を示す。このように、定量値は、疾病診断のための新たなバイオマーカーや治療結果のモニタリングのための新たなバイオマーカーとして利用できる可能性がある。
図9~16は、疾患診断に用いられる脈絡膜血管容積と脈絡膜体積の定量解析の例を示す。血管容積と脈絡膜体積の統計的比較は、ETDRSグリッドの直径3mmの円内の領域で定量化することができる。
図9/10対
図11/12は正常眼対CSC眼を表し、
図13/14対
図15/16は正常眼対VKH眼を表す。血管容積(p<0.0001)と脈絡膜体積(p<0.0001)は、CSC眼とVKH眼の双方に対して正常眼と有意な差がある。血管容積と脈絡膜体積の曲面下面積(AUC)は、CSC眼で0.85と0.84である。
【0076】
3次元ボリュームデータと画像から、更に、以下のような指標を算出することができる。ボリューム(体積、容積)は、ピクセル数×ピクセル解像度で表される。脈絡膜領域は、BM(ブルッフ膜)+40μmとCSI(脈絡膜-強膜界面)との間の領域と定義される。脈絡膜体積は、脈絡膜領域の体積である。血管容積は、脈絡膜領域内でセグメント化された脈絡膜血管の容積である。
実質(Parenchyma)容積=脈絡膜体積-血管容積(ボリューム)血管指数=血管容積/脈絡膜体積×100%
図17の例に示すように、血管径(diamter)1705=2×各血管(又は、血管スケルトン)1707の中心から血管境界1701までの距離であり、或いは、他の公知の方法で算出された血管径である。血管中心1707は、
図29Bに示すように、スケルトン化された血管構造から見出すことができる。
血管長1703=スケルトン化した血管構造の長さ血管密度=スケルトン化された血管構造の容積・面積/脈絡膜の体積・面積×100%(3次元状況の場合は容積(体積)、2次元状況の場合は面積)
「終端(end)」(すなわち、測定開始点)は、血管が細くなり本方法で検出できなくなる自然のままの終端、又は、血管が途切れる位置でもよいし、血管が発生する分岐点であってもよい。
【0077】
図3Dは、血管ボリュームマップ上にETDRSグリッド302を重ね合わせた例を示す。血管ボリュームマップは、各位置での定量的な血管容積の情報を明らかにする。ETDRSグリッド302と組み合わせることで、血管ボリュームマップは、各小領域の局所的な変化を明らかにし、臨床医がより良い判断をすることを支援する。血管ボリュームマップは、局所的な変化を明らかにするために、より小さな象限を有するように形式を整えることができる。その場合、臨床医は、評価のための正確な位置を特定することができる。明確な位置での本血管ボリューム法による目視観察と定量解析とを組み合わせることにより、眼に関連する他の疾患の発症/治療経過を追跡する上で非常に有用となるであろう。
【0078】
定量化の面では、関心領域(例えば、ETDRSグリッド302)のいずれについても、脈絡膜体積と血管容積の値、血管指数(血管容積と脈絡膜体積との比)を算出することが可能である。本発明の実施形態は、脈絡膜の指標の変化の統計的分析を含む。統計的アプローチの一例をCSC群(23眼の被検者)とVKH群(10名の被検者)について検証し、その結果をCSC群については
図16、17に示し、VKH群については
図21、22に示す。血管容積のわずかな変化は、CSCの治療に従って観察され(1.21±0.26mm
3;0ヶ月、1.13±0.28mm
3;1ヶ月、1.12±0.28mm
3;3ヶ月)、統計的に有意な変化は、VKHの治療に従って観察される(1.03±0.30mm
3;3日、0.77±0.30mm
3;1ヶ月、0.82±0.32mm
3;6ヶ月)。
【0079】
血管容積と脈絡膜体積との定量的な差は、疾患群と年齢をマッチさせた正常群とを順に比較することでわかるように、診断用途に有用であると考えられる。CSCと正常との間の結果、VKHと正常との間の結果を
図9~
図16に示す。上記の通り、
図9~
図12はCSC対正常との比較、
図13~
図16はVHK対正常の比較であり、統計的に有意な差が認められた。ETDRSチャートの中間の円(直径3mm)内で測定した正常群の平均血管容積と平均脈絡膜体積は、それぞれ0.86mm
3、1.76mm
3である。比較のため、これら2つの脈絡膜の指標は、いずれも疾患群で高い値を示す。具体的には、CSC群について、血管容積の平均は1.27mm
3、脈絡膜体積の平均は2.47mm
3である。血管容積(p<0.0001)と脈絡膜体積(p<0.0001)は、正常な眼に対して有意な差がある。血管容積と脈絡膜体積の曲面下面積(AUC)は、ROC曲線から測定されるように0.85と0.84である。CSCの診断の利用には、血管容積は、0.95mm
3より大きく、感度は82.61%を超え、特異度は70.13%を超える。一方、脈絡膜体積は、2.07mm
3より大きく、感度は73.91%を超え、特異度は70.13%を超える。VKH群については、血管容積の平均と脈絡膜体積の平均は、それぞれ1.07mm
3、2.25mm
3である。血管容積(p<0.001)と脈絡膜体積(p<0.001)は、正常な眼に対して有意な差がある。VKHの診断の利用には、血管容積は、0.93mm
3より大きく、感度は74.07%を超え、特異度は63.64%を超える。一方、脈絡膜体積は、2.02mm
3より大きく、感度は70.73%を超え、特異度は68.83%を超える。本発明の実施形態は、健常者とCSCやVKHなどの典型的な脈絡膜血管関連疾患との双方における脈絡膜指標の3Dボリューム定量化結果を提供する。
【0080】
CSCとVKHという2つの典型的な病態について、本発明の実施形態は、血管ボリュームマップによって、ICGAによる検査と同等、又はそれ以上に明瞭な血管構造の検査が可能であることを示す。本手法により新たに得られた脈絡膜血管と間質の3D構造で定量的な情報は、既存のモダリティでは不可能であった、その病的又は解剖学的な変化を把握するために臨床医に有益である。例えば、本発明の実施形態は、臨床治療の様々なステージにおけるVKH被検者とCSC被検者との間の脈絡膜血管容積の変化の様々な挙動の初回観察を明らかにしてきた。CSC患者は、健常者よりも大きな脈絡膜体積及び脈絡膜血管容積を有するが、正常よりも大きな脈絡膜体積及び脈絡膜血管容積を有する健常眼も存在する。一部はCSCを発症する潜在的リスクを担うと考えられ、今後、本発明の一実施形態によって観察又は評価されてもよい。脈絡膜血管容積は、予防医学におけるCSCのバイオマーカーとして機能する可能性もある。
【0081】
3D視覚化と定量化の汎用性により、脈絡膜血管容積は、他の脈絡膜血管関連疾患や眼の一般的な健康状態をモニタするのに有用である。また、眼の疾患や健康状態について新たな知見を得るために、既存のデータベースに遡及的に適用することも可能である。非侵襲的、且つ、高速なイメージングモダリティによって達成される優れた視覚化と定量化は、AMDや病的近視など失明に関連するさまざまな脈絡膜疾患に適用することが可能である。例えば、血管容積は、AMDにおける抗VEGF治療の効果を評価するのに有用であると考えられる。
【0082】
図3A~
図3Cに示すように、2D血管ボリュームマップは、治療前後の様々な時点における比較の視覚化を可能にする。2つ以上の定量的な血管ボリュームマップを比較するために、合成マップを生成することができる。強度は、(複数のマップの1つにおける)血管の構造を示し、色、ハッシュパターン、階調値はマップ間の相対的な変化を示すことができる。このように視覚化することで、各血管の位置の局所的な変化をピンポイントで把握することができ、疾患のモニタリングに有利となる。もう1つの(second)マップが基準マップである場合、合成マップは正常/異常領域を強調表示し、臨床医による解析を容易にする。
【0083】
図3A~
図3Cのような2Dの図は、対応するA-ライン位置にマッピングされた定量的な指標(例えば、血管容積、血管径、血管指数、実質(間質)体積、脈絡膜体積)、又は、メタ指標(meta-metrics)(例えば、ベースラインスキャンにレジストレーションされたフォローアップスキャンを比較した場合の指標の相対的変化)を表現することができる。2Dの定量的な指標は、3Dにおける指標を集計(例えば、最大、最小、平均など)することで求めたり、3Dの指標を2Dの表面でスライスして、ある深さ(2Dの表面によって定義される)での指標を表示することで得られたりすることができる。陰影化/ハッシュ化(又は、色又は強度で表すことが可能な他のケース)は、指標、又は、メタ指標の量を直接適に表すことができる(例えば、暗いほど高い値を示す)ので、局所的な指標をピンポイントで特定することができる。マップが相対的な変化(メタ指標)を示すケースでは、関心ある指標(例えば、血管容積)の全体的及び局所的な変化を容易に示すことができるため、被検者の疾患の進行や治療効果の長期的なモニタリングに利用することが可能である。他のケースでは、強度と色で2つの異なる指標(例えば、強度は血管容積を示し、色はベースラインと比較した相対的な変化を示す)を符号化し、複合マップを形成して定量的な指標(絶対)とベースライン又は前回診察時と比較した相対的変化とを同時に示すことで、臨床医は1つの図に示された両方の情報で容易に判断できるようにすることもできる。
【0084】
血管ボリュームマップと同様の他の指標マップ、例えば、血管径マップ、血管密度マップ、血管長マップ、血管指数マップを、血管ボリュームマップと同様に視覚化のために3次元血管構造から算出することも可能である。
【0085】
図18は、網膜1802、脈絡膜1810、及び、強膜1820を含む視神経乳頭1812の周囲の位置における眼1800の後部の層を表している。層間の境界は、ブルッフ膜(BM)1822と脈絡膜-強膜界面(CSI)1808である。また、
図18には、視神経が網膜層と脈絡膜層の双方を通過して脳に接続する視神経乳頭1812、網膜静脈1814、網膜動脈1816、脈絡膜血管1818、及び、強膜側からCSI1808を貫通する貫通血管1806が示され、例えば後述の
図19及び
図20に示すように本発明の実施形態により視覚化することができる。貫通血管は、貫通血管の長さ、貫通血管の数、及び、貫通血管の対称性を含む指標に基づき、近視や緑内障と相関がある可能性がある。
【0086】
図19は、本発明の一実施形態に係る、貫通血管1902が見える網膜の断面から見た3D-レンダリング1900を示す。2DのB-スキャンではすべての貫通血管を手動で識別することは困難であり、貫通血管の数、各血管のサイズ、及び/又は、各血管の方向を正確かつ直接的に測定することは不可能である。本発明の一実施形態によれば、曲線1904が脈絡膜-強膜界面(CSI)1808の平滑化された表面にフィッティングされ、ユーザによって決定されるピクセル数だけ上下にシフトされ得る曲線1904に対して前処理されたOCTボリュームを平坦化することによって、位置、CSIレベルにおける直径、貫通方向1906(絶対方向、又は、基準ベクトルに対する相対方向)、貫通血管のサイズ、及び、貫通血管の数を正確に定量化することが可能である。本発明の一実施形態に係るノイズ低減により、en-face画像におけるまだらの出現(speckled appearance)が大幅に改善され、特定の信頼性を向上させることができる。en-face画像は、上面からボリューム、又は、スライドを示す3Dデータを視覚化したものである。更に、本発明の一実施形態によるシャドー補正は、en-face上の貫通血管の特定を混乱させる可能性のあるシャドーアーチファクトを最小化する。貫通血管は、画像上で暗点として明瞭に表示され、その位置(ONH中心、中心窩中心、又は、その2つの間の線に対して)、CSIレベルでの貫通血管の直径、貫通血管の数を、en-face画像上で容易に測定することができる。しかしながら、1枚の2Dのen-face画像では、貫通血管の長さや方向を測定することはできない。
図19は、セグメント化された脈絡膜血管の3Dレンダリングの側面図を示す。この側面図では、平滑化された脈絡膜-強膜界面(CSI)から突き出た貫通血管を観察することができ、本発明の一実施形態は、貫通血管の長さ(CSI境界の下方の血管の長さ)、又は、血管の方向(例えば、レンダリングの座標に対する方向、局所的なCSI境界の法線方向に対する方向、視神経乳頭中心から中心窩に向かう基準方向、その逆、又は、他の基準方向に対する方向)を測定することができる。
【0087】
3D血管セグメンテーションにより、貫通血管の視覚化と定量化とが可能となり、貫通する血管の数をカウントしたり貫通血管の対称性を定量化したりすることも可能となる。貫通血管(すなわち、滑らかなCSI境界を貫通する血管)の形態(すなわち、様々な深さでの方向と厚み)は、緑内障や病的近視などの疾患と相関がある可能性がある。貫通血管の数は、実施形態に係るOCT又は3D血管構造のen-face表示(view)から容易に特定することができる。その数は、スキャン領域内で定義された関心領域内でカウントすることができる。血管サイズは、CSI境界の直下、又は、それ以外の深さで測定可能である。血管方向は、3D空間における絶対的な貫通方向、又は、視神経乳頭中心と中心窩中心とを結ぶ基準線との相対的な方向として定義することができる。貫通血管の数、サイズ、及び、方向は、眼の各象限、同一人物の両眼間、同時刻又はある経過時間にわたって測定することができる。対称性は、被検者の両眼にわたって測定することができる(すなわち、様々な象限(鼻側、耳側、下方、上方)の間の類似性)。
【0088】
図20A~
図20Lは、ビデオ3D視覚化から取り込んだフレームを示す。ビデオ3D視覚化は、水平方向(
図20A~
図20F)、及び/又は、垂直方向(
図20G~
図20L)に回転することができ、脈絡血管構造、脈絡膜-強膜境界面(
図19)を容易にレンダリングし、貫通電流を明瞭に表すことができる。
【0089】
血管新生加齢黄斑変性症(wet-AMD)の治療には、定期的に抗VEGF(血管内皮細胞増殖因子)を注射することで、脈絡膜体積を減らすことができる場合がある。血管容積と間質体積の相対的な変化は、本発明以前の従来の方法によって、直接的に調べることができない。臨床経過を通じて血管容積、脈絡膜体積、及び血管指数を個別にモニタリングし、応答者と非応答者(すなわち、どの構造要素が治療に反応するか、反応しないか)を比較することで、AMDに対する抗VEGF(血管内皮増殖因子)治療の予後を予測するためのバイオマーカーが開発される。その上、脈絡膜血管、又は、間質体積の観察を実施形態に従って行い、それによってどの抗VEGF治療が最も効果的であるかを判断する(すなわち、薬剤スクリーニングをチェックする)ことができる。
【0090】
また、実施形態に係る視覚化は、脈絡膜血管容積、又は、間質体積をチェックするために、どの抗VEGF治療が各患者の治療に最適であるか(すなわち、オーダーメイド治療)も決定する。また、実施形態に係る視覚化は、薬剤の切り替えのタイミング(すなわち、ある抗VEGF治療がうまくいかなくなり、別の薬に変更すべき時期)を決定するのにも有用である。実施形態に係る同様の解析は、脈絡膜の肥厚に関する他の治療(例えば、光凝固(PC)、光線力学的療法(PDT))についても行われる。
【0091】
図21Aは、本発明の実施形態に係る、貫通血管、及び、他の指標を容易に視覚化、及び、定量化する能力を提供するコンピュータ・ユーザ・インターフェース2100の一例を示す。この例では、B-スキャン2102は、対応するen-faceレンダリング2104に隣接して表示されてもよく、en-face内のB-スキャンの位置は、垂直ライン2112によって示される。B-スキャン2102は、CSI境界2106の位置を示し、en-faceレンダリング2104は、B-スキャン位置の垂直ライン2112とともに、境界2106に対応する深さのen-face、貫通血管2117、視神経乳頭2108、視神経乳頭陥凹(optic cup)2110を示す。
図21Aに示すように、CSIレベルにおける貫通血管2117の数、及び、血管のサイズは、エンハンスド(enhanced、強化)OCTボリュームを用いてCSIレベル(又は、ユーザによって決定された幾つかのピクセルだけ上/下にシフトしたレベル)のen-face画像上で容易に測定できる。また、視神経乳頭陥凹乳頭径比は、視神経乳頭の陥凹を評価するために、実施形態に従って、測定と使用も可能である。しかしながら、2D画像では、貫通血管の長さ、他の深さでの貫通レベルの直径、又は、貫通血管の方向を測定することはできない。これらは、実施形態に係る血管セグメンテーションの3Dレンダリングにおいて測定することができる。血管径、及び、長さは、3Dにおいて他の血管と同じように測定することができる。貫通方向は、疾患診断にも相関がある可能性がある。特に、方向は、3Dレンダリングが生成される座標において定義したり、基準方向に対して相対的に定義したりすることができる、基準方向は、局所的なCSI表面の法線/接線方向、又は、視神経乳頭中心から中心窩中心に向く方向であってよい。
【0092】
図21B及び
図21Cは、本開示で説明する前処理ステップ後の典型的なB-スキャンを示す。各図中のライン2106は、CSI境界を示す。
図21Bは、オリジナルのB-スキャンの一例であり、
図21Cは、本発明の一実施形態に係るCSIに対して平坦化が行われた後のB-スキャンを示す。貫通血管はCSI境界を通り抜ける血管であるため、本発明の実施形態によるCSI境界に対するOCTボリュームの平坦化により、CSIレベルのen-face画像を用いて貫通血管を特定することができる。また、網膜層2116、脈絡膜層2118、強膜2120も参考のために示す。
【0093】
図22は、CSIレベルでの
図21BのオリジナルのOCTスキャンのen-face画像の一例を示す。従来のOCTスキャンのまだらの出現2202と表層からのシャドーアーチファクトのため、従来のスキャンでは、貫通血管を特定することが容易でない場合がある。
【0094】
図23は、
図21Cに示すように、CSIレベルでの強化(enhanced)・平坦化したOCTスキャンのen-face画像の一例を示す。本発明の実施形態によって最小化されたスペックルノイズとシャドーアーチファクトにより、強化されたen-face画像における貫通血管を特定し、定量化することがより容易となる。貫通血管2117は、それ以外は一様な強度を有する背景に暗い点として現れる。従って、血管のサイズ(例えば、直径)、血管の数、血管の位置(例えば、視神経乳頭2108の中心までの距離、視神経乳頭中心と中心窩中心との方向に対する相対位置)は、本発明の実施形態によって求めることができる。これらの指標(特に、視神経乳頭付近)は、緑内障や近視と相関がある可能性がある。
【0095】
図24は、脈絡毛細血管2402、中血管2404(サトラー層内)、大血管2406(ハラー層内)、RPE2408、ブルッフ膜2416、強膜2410、網膜2412を表した断面図を示す。一実施形態に係る3D視覚化のノイズ除去及びディープラーニングを用いて、脈絡膜の腫瘍、又は、脈絡膜の緑内障に応じた指標をモニタすることができる。治療(例えば、抗VEGF治療、レーザー治療、PDT治療など)の後、視覚化により、どの層が変化したかを判断することができ、治療の進捗状況の評価を支援する病態、及び、生理の解明につなげることができる。従来の方法は、中心脈絡膜厚で治療の効果をモニタするものであり、治療が成功すると中心脈絡膜厚が減少するのが一般的である。しかしながら、従来の方法は、一次元的な指標しか得られず、血管と間質の相対的な変化/反応を治療に反映させることができない。例えば、脈絡膜の厚みの減少は、血管サイズの減少のみ、又は、間質サイズの減少のみ、あるいは、比率が異なるこれら2つの組み合わせによって引き起こされる可能性があり、これらは、本発明によって可能になった3D個別ボリューム解析を用いてのみ区別することができる。
【0096】
図25は、肉芽腫又は腫瘍2502を有する断面図を示す。従来の方法では、脈絡膜肉芽腫又は腫瘍2502は、大脈絡膜血管2406と同様の外観(区別できない)を有する場合がある。本発明に係る局所的な定量血管解析により、腫瘍2502のサイズ変化だけでなく、腫瘍2502の周囲の血管容積/間質容積の変化も個別にモニタすることが可能となる。
【0097】
図26は、AMDの後期における脈絡膜新生血管(CNV)の説明図を示す。RPE2408の下方に位置するタイプIのCNV2604と、タイプIIのCNV2602とは、網膜神経感覚上皮とRPEとの間の網膜下腔に広がる。CNVは、典型的には、抗VEGF療法で治療される。本発明の実施形態によれば、抗VEGF治療からどの構造(すなわち、大血管2406、中血管2404、脈絡毛細血管2402、又は、間質などのうちどれが)変化するかを明らかにすることができる。抗VEGF療法には様々な薬剤があり、被検者の中には、ある種の薬剤に反応しない被検者がいる。非応答者を早期に発見し、薬剤を切り替えることができることは有用であり、本発明の実施形態に係る様々な構造のボリュームのモニタリングは、早期発見を支援することができる。また、CNVのタイプを区別し、治療によってどの層/構造が変化したか、又は、変化しなかったかを観察して薬剤を選択することも可能である。また、血管と間質を別々に解析することで、治療によって脈絡膜の各部位がどのように変化するのかを明らかにすることもできる。
【0098】
図27A~
図27Cは、VKHとCSCに対して様々な脈絡膜肥厚のメカニズムを示す視覚化の例を示し、従来の方法に従って容易に区別できない疾患の区別が可能になる。例えば、
図27Aは、網膜2412、脈絡膜2702、血管2704、及び、脈絡膜間質2712の正常な断面を視覚化したものである。
図27Bは、CSC患者の断面の視覚化の一例を表し、
図27Cは、VKH患者の断面の視覚化の一例を表す。図に示すように、
図27CのVKH患者は、正常例と比較して脈絡膜が有意に厚く(脈絡膜厚2714が正常脈絡膜厚2706より厚いため脈絡膜体積が大きい)、血管指数(血管容積/面積と全脈絡膜体積/面積との比)は正常よりやや小さい。血管容積/面積は、最長方向、及び、最短方向の血管横断寸法2710の測定値を用いて、本発明によって定量化可能である指標である。血管容積と血管面積は、検討対象領域によって同じ指標になる場合がある。血管容積/面積は、ピクセル数×ピクセル解像度で算出される。領域が3Dの場合、ピクセル解像度は3Dとなり、ボリューム(容積、体積)を示す。逆に、領域が2Dの場合(例えば、B-スキャンの内側)、ピクセル解像度は2Dとなり、面積を示す。VKHでは血管も実質も拡張するが、実質はもっと大きく拡張する。CSC患者は、正常よりも脈絡膜厚2708と血管指数が大きいため脈絡膜体積が大きく、CSCでは実質ではなく血管が拡張する。このように、本発明の一実施形態によれば、血管と実質とを別々に解析することで、VKHとCSCとを区別することが可能である。これは、VKHとCSCの双方で脈絡膜厚の増加を示すだけの従来の手法では不可能である。本方法によれば、本発明に従って定量化が可能な血管容積、特に、本発明に従って個別に定量化が可能な血管容積、脈絡膜体積、及び、血管指数を考慮することによって、疾患を区別することができる。
【0099】
VKH患者の臨床経過をモニタリングする間、血管指数/血管容積の増加は、疾患の再発を示唆する可能性がある。健常者の日常的モニタリングでは、血管容積/血管サイズ/血管径の増加、又は、形態の変化は、CSC発症の可能性を示唆する場合がある。CSC又はMPPEに対して様々な治療(例えば、光凝固療法(PC)と光線力学的療法(PDT))を受けた被検者の血管容積/血管サイズ/血管径を比較することにより、比較評価してもよい。
【0100】
脈絡膜は、加齢とともに自然に菲薄化する。本発明の一実施形態は、本方法に係る解析及び視覚化により、血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数、並びに貫通血管の数、及び、サイズについて、健常者の加齢に伴う菲薄化のベースラインを設定することが可能である。加齢に伴い脈絡膜が菲薄化するレートは、非常に多様である。従来の方法に従って、被検者の菲薄化するレートを基準正常レートと比較することで、疾患の診断/予後を知ることができる。しかし、従来の方法は、「正常」レートのばらつきが大きいため、信頼性に欠け、限界がある。
【0101】
本発明の一実施形態によれば、脈絡膜の血管容積と間質体積とを個別に測定/定量化することができるので、本発明の一実施形態は、変動の少なく加工が不要な菲薄化レートを設定し、より良い診断/予後ツールとして機能することができる。通常の菲薄化に加えて、緑内障は、脈絡膜血管の更なる菲薄化を引き起こし、視神経乳頭エリアの周辺、特に視神経乳頭の耳側の貫通血管の数/サイズを減少させる場合がある。本発明の一実施形態に従って設定されたベースラインに対して正常な被検者を比較することにより、潜在的な緑内障発症の予後を得ることができる。
【0102】
強度近視は、脈絡膜の菲薄化を伴う。従って、本発明の実施形態に係る、血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数、並びに、貫通血管の数、及び、サイズを個別に解析することにより、本発明の実施形態は、各成分の菲薄化レートを分離することが可能である。病的近視と他の近視の被検者との間の変化の推移を比較することにより、本発明の実施形態は、病的近視の予後を明らかにすることができる。貫通血管の数/サイズ、脈絡膜血管容積(間質体積、又は、血管指数)は、病的近視の進行に影響する。近視の進行は、視神経周囲の貫通血管のサイズ、及び、数に関連すると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、それらの指標のうちの1つ以上の定量化によって、進行をモニタ/特徴付けることができる。
【0103】
また、高血圧の予後は、実施形態に従って測定可能な指標に関連することもある。高血圧は、脈絡膜の血管系に影響を与えると考えられている。高血圧を発症した人々について、正常対照と比較して、血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数を個別に解析することによって、本発明の実施形態は、合併症を発症する疾患のリスクを有するグループの特性、又は、バイオマーカーを明らかにすることができる。また、定期的な血圧測定時に、各人について血管容積、脈絡膜容積、実質体積、及び、血管指数を用いてチェックを行うことで、疾患の進行をモニタすることができる。その指標を正常な状態として、各人が、血圧の変動を確認する。各人は規則的な血圧を有するが、病的な状態では血圧がダイナミックに変化する場合がある(すなわち、病的な状態では、血圧の変動がより大きく現れることがある)。従って、本発明の一実施形態によれば、疾患のモニタリングの能力を高めることが可能である。
【0104】
また、妊娠高血圧腎症の予後も、実施形態に従って得ることが可能な指標に関連する可能性がある。例えば、妊娠高血圧腎症は、脈絡膜の血管系に影響を与えると考えられている。妊娠高血圧腎症を発症した人々について、正常対照と比較して、血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数を個別に解析することによって、本発明の実施形態は、妊娠中にそのような疾患のあるリスクを有するグループの予後を明らかにすることができる。また、正規の妊娠期間中にそれらの指標をチェックすることで、妊娠高血圧腎症の状態をモニタすることができる。
【0105】
網膜剥離後の視力変化の予後も、実施形態に従って得ることが可能な指標に関連する場合がある。網膜剥離は、網膜色素上皮層から感覚網膜が剥離する疾患で、失明の原因の1つである。その場合、感覚網膜は、網膜色素上皮からの栄養と酸素の供給が断ち切られる。視力(VA)の予後は、網膜が剥離するまでの期間によって異なる。血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数を比較することにより、本発明の実施形態は、網膜剥離患者に対する治療後のVAの予後を明らかにすることができる。VA予後不良の可能性がある患者に対して、医師は、それらの指標から、疾患、及び/又は、治療の経過を観察し、評価してもよい。
【0106】
本発明の実施形態は、網膜色素変性症(retinal pigmentosa)の病態生理を解明してもよい。網膜色素変性症は、失明の主要原因の1つであり、臨床的には典型的な網膜の外観、又は、眼科検査結果を観察するが、原因不明のため病態生理は明らかではない。網膜色素変性症を発症した人々について、血管容量、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数を個別に解析することで、網膜色素変性症の予後、又は、悪化の時期を予測できる可能性がある。
【0107】
腎疾患における透析療法は、本発明の実施形態に従って利用可能な指標と相関があると考えられる。腎機能障害を発症した人々について、正常対照と比較して、血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指数を個別に解析することにより、本発明の実施形態は、合併症を発症する疾患のリスクを有するグループの特性、又は、バイオマーカーを明らかにすることができる。また、通常の腎機能中に、各人の血管容積、脈絡膜体積、実質体積、及び、血管指標を用いてこれらの指標をチェックし、その指標を正常状態とすることで、各人は、腎機能の変動を個別に確認することも可能である。また、これらの指標を透析療法の前後で観察することで、適切な透析方法を探索することが可能になる。
【0108】
図29Aは、血管構造の片側から(例えば、正面(front)/網膜側から)血管構造の3D視覚化した一例を示す。あるいは、本発明の一実施形態に係る3D視覚化は、代替的に、血管系の別の側(例えば、後ろ(back)側)から表すことができる。血管構造を表裏(front and back)両面から観察することで、疾患中の形態変化を観察することができる。関心領域の様々な方向に沿って断面観察を行ってもよい。2Dの定量的な血管の視覚化により、従来のインドシアニングリーン血管造影(ICGA)に比べ、非侵襲的な方法で健康な血管と機能不全の血管の明瞭な視覚化を行うことができる。例えば、診断やモニタリングのニーズの支援のために、表裏の異なる方向から得られた数値から長期的なトレンド解析を行い、数値を疾患診断のバイオマーカーとして利用することができる。健常者は、均一な(網膜側と強膜側の双方から)血管のサイズと規則的な血管の形状を示す。病理学的な症例は、強膜側で血管が拡張して密度が低下し、血管の形状はよりいびつで不規則である。健常者における局所的な血管密度の低下又は血管の拡張は、疾患の初期段階、又は、発症の可能性を示唆する。従って、本発明は、予後の視覚化/定量化を提供することができる。
図29Aの網膜側血管の視覚化では、血管2902は、赤色の画素又は第1のハッシュパターンで描かれ、空白のスペース2904は、間質領域を表す。視神経乳頭の切り出し2906は、定量化から視神経領域を自動的に省く。あるいは、本発明の一実施形態に係る網膜側の間質構造の視覚化では、青色の画素又は第2のハッシュパターンが間質領域を表し、空白が血管を表すようにしてもよい。
【0109】
健常者の眼における網膜側の3D視覚化と、健常者の眼における強膜側の3D視覚化とは、健康な状態の特徴と病的な状態の特徴の定量化に用いることができる。
【0110】
例えば、
図28Aの健康な状態の眼と28Bの病的な状態の眼の例に示すように、本発明の一実施形態は、血管の直線の長さ2804と実際の血管経路長2802とを比較することによって血管の蛇行/規則性を判定することができる。血管の拡張は、
図17に関して上述したように、本発明の一実施形態によって定量化することができる。あらゆる方向から(すなわち、前後、又は、3D空間の任意の基準面から)の血管構造の視覚化により、様々な被検者における違いや、同一の被検者の経時変化を発見/把握することができる。
【0111】
すべての指標は、3D領域(例えば、スキャンの全視野(FOV)にわたって、又は、
図3Dに示すETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)グリッドのようなグリッドに従って領域の小領域にわたって)で、局所的に、又は、平均的に計算することができる。
【0112】
本発明の一実施形態によれば、レンダリングされたOCTスキャンにおいて、各画素は、システムによって決定された解像度(軸方向及び横方向)を有し、ボリューム/面積の計算のために容易に取得することができる。脈絡膜領域は、BM(ブルッフ膜)2416+40μmとCSI(脈絡膜-強膜界面)セグメンテーションラインとの間で定義される。脈絡膜体積は、脈絡膜領域に対応するピクセル数×ボリュームピクセル解像度で算出される。血管容積は、血管に対応するピクセル数(#)×ボリュームピクセル解像度で算出される。ボリューム(体積、容積)は、任意の定義された関心領域(例えば、FOVに対して、ETDRSグリッド302のセクション)内で集計することができる。また、A-ラインに沿ってのみボリュームを集計し、
図3A~
図3Cに示すように、en-face方向の血管ボリュームマップを得ることもできる。実質/間質体積=血管に対応するピクセル数×ボリュームピクセル解像度、脈絡膜体積=血管容積+間質体積なので、他の2つからいずれか1つを導き出すこともできる。(ボリューム)血管指数=血管容積/脈絡膜体積×100%
【0113】
図29Aは、グレースケールの血管ボリュームマップの一例を示す。
図29Bは、血管スケルトン2908が
図29Aの各血管の算出された中心座標から生成された、スケルトン化血管ボリュームマップの一例を示す。また、
図29Aの2Dではなく3Dデータでスケルトンマップを生成することも可能である。血管長は、血管スケルトンマップの所定の強度のピクセル数に1次元のピクセル解像度を乗じた値として定量化されてもよい。また、血管ボリュームマップ29Aは、
図29Bのスケルトン画像を重ねて表示してもよい。
【0114】
図30は、眼の基本的な構造とランドマークを示し、相対的な方向を示している:耳側3002と鼻側3004視神経乳頭3006と、視神経乳頭3006から生じる4本の大血管3008とがある。また、黄斑位置3010、ONH中心から黄斑中心(中心窩)への方向を示す基準ライン3012が示されており、他の指標(例えば、貫通血管方向)の基準方向となり得る。臨床的に重要な領域3014は、強膜からの貫通血管3016(本発明に従って定量化可能なサイズ、数、貫通方向、対称性などの指標を有する)が緑内障(又は近視)と相関する可能性がある場所を示す。例えば、
図19のような貫通血管の数/サイズ及び脈絡膜血管容量(間質体積、又は、血管指数)は、緑内障の進行に影響するので、本発明の一実施形態に係る緑内障の生体指標又は指標(indicators)として用いることが可能である。
【0115】
脈絡膜血管の3D構造を目視で確認することで、医師は、血管のサイズ/直径、血管の構造/血管形状(真っすぐ、規則正しいかいびつか、不規則)、血管密度(血管がどれだけ密集しているか)、血管サイズの分布(例えば、網膜に向かって細くなる、強膜に向かって太くなる)などの情報を得ることができる。血管のサイズとその分布は、血管径指標で定量的に測定することができる。血管長、血管密度、血管容積、血管指数などの指標は、血管構造を定量的に特徴付けることができる。
【0116】
また、脈絡膜体積、脈絡膜血管容積、血管指数、及び、本明細書に開示された他の診断指標は、以下のような応用をもたらすこともできる。
【0117】
CSCの症例では、血管容積と脈絡膜体積とが、正常(健常)症例に比べ有意に増加する。血管容積が大きい正常症例は、CSCが発生しやすい可能性がある。従って、本発明の実施形態は、血管容積と脈絡膜体積とに基づいて予後を予測することができる。
【0118】
抗VEGF治療後に血管容積がどのように、いつ、変化するかを把握することは、治療を改善することができる。他の指標(例えば、視力の変化)の前に患者にとって効果が得られないかどうかを評価するために、患者の脈絡膜体積と血管容積を測定することは有用である可能性がある。本発明の実施形態は、VKH症例の予後予測に血管容積(血管指数)を用いる。血管指標値、又は、血管容積の増加は、他の方法で再発を発見する前にVKH再発の可能性を示す指標になると考えられる。
【0119】
強膜を貫通する神経周囲血管の数、形態、密度(単位面積当たりの数)、及び、サイズも、本発明の実施形態によって、例えば、緑内障又は高度近視の予測に用いられる。緑内障、又は、高度近視では、これらの血管がより多いか、又は、これらの血管がより細くなる可能性がある。
【0120】
また、本発明の実施形態は、加齢に伴い小さくなる可能性のある脈絡膜血管容積の測定可能な変化に基づいて、緑内障、又は、病的近視を予測することもできる。
【0121】
脈絡膜血管容積は、近視の程度に比例して変化すると考えられている。本発明の実施形態は、それらが増加するか減少するかを評価することができるため、病的近視の指標として用いることができる。
【0122】
乳頭周囲萎縮症(PPA)の発症と脈絡膜血管容積と脈絡膜体積との間には、関連があると考えられる。従って、本発明の実施形態は、それらの測定可能な指標に基づく近視の予測に用いることができる。
【0123】
近視の場合、強膜を貫通する血管が細くなると考えられている。従って、本発明の一実施形態に係る検出可能な菲薄化は、近視の進行に関連すると考えられる。病的近視は、視力を脅かす合併症(黄斑変性症、新生血管、網膜剥離など)が引き起こす、近視の進行した状態である。従って、本発明の実施形態によれば、近視の進行をモニタし、病的近視の発症を予防することが可能である。
【0124】
CSCと多発性斑状色素上皮症(MPPE)の双方は、機能障害の原因となる網膜色素上皮が存在する可能性がある。臨床検査では、脈絡膜血管容積、又は、脈絡膜体積が大きくなる。しかし、治療(強膜切開、PDT、PC)により脈絡膜血管容積、又は、脈絡膜体積は減少すると考えられる。従って、本発明の実施形態は、治療効果の指標として用いることができる。
【0125】
糖尿病性網膜症の視覚的予後(脈絡膜血管容積の減少のため)は、本発明の実施形態によって観察可能な指標に関連すると考えられる。糖尿病網膜症の治療(レーザー、外科的治療、抗VEGF薬投与)後の脈絡膜血管容積は、予後と関連すると考えられる。脈絡膜血管容積を維持することは、被検者の眼の健康を維持するために重要である可能性がある。例えば、健康な脈絡膜血管は、網膜色素上皮細胞を健康に保つために平素の酸素供給を続けることができる。ピット黄斑症候群の病態は、本発明の実施形態によって観察可能な指標と関連すると考えられる。その理由は、ピット黄斑症候群が、視神経乳頭においてクモ膜下腔からの異常流を有する可能性があるからである。
【0126】
脈絡膜血管容積、及び/又は、脈絡膜体積は、網膜の色素変性の病態と関連があると考えられる。従来は網膜の眼底写真から色素変性が検出され、その画像を得るのに利用可能な従来のOCTは存在しない。しかしながら、本発明の一実施形態は、網膜色素層での高画質のレンダリングを実現し、わずかな変化を観察できるようにする。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することができる。
【0127】
脈絡膜血管容積、及び/又は、脈絡膜体積は、網膜剥離手術後の視力予後に関連があると考えられる。例えば、急性の重度の網膜剥離は、手術によって引き起こされた炎症のために脈絡膜血管容積を減少させる可能性がある。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することができる。
【0128】
脈絡膜血管系に影響を与える因子として、血圧/高血圧、脂質/脂質異常症/自律神経がある。しかしながら、脈絡膜血管の血管硬化と脈絡膜厚についての知見(観察)が述べられている報告があるだけで、血管の形態や血管容積についてはまだ不明な点が多い。それでも、本実施形態に従って利用可能な指標に従って、高血圧、及び、脂質/脂質異常症を診断することができると考えられる。
【0129】
脈絡膜体積(血管、又は、間質)は、認知症(アルツハイマー病)などの神経変性疾患と関連すると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、それらの病態を診断することができる。
【0130】
脈絡膜体積(血管、又は、間質)は、血液循環疾患(高血圧など)と関連すると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することができる。
【0131】
脈絡膜体積(血管、又は、間質)は、自己免疫疾患と関連があると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することができる。
【0132】
脈絡膜体積(血管、又は、間質)は、糖尿病などの内分泌疾患と関連があると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することができる。
【0133】
脈絡膜血管容積(又は、間質体積)は、自律神経機能障害と関連があると考えられる。従って、本発明の一実施形態によれば、その病態を診断することもできる。
【0134】
ここで用いられる技術は、特別なプロトコルを必要とせず、OCTスキャナに直接、又は、同時に接続する必要がなく、既存の3Dデータに対して遡及的に適用することが可能である。3Dデータは、従来技術のように1つの値に集約したり、任意の方向に沿ってスライス/集約したりして2D表示を行うことができる一方、3D情報全体の表示や様々な表示/位置の切り替えを追加処理なしで行うことができ、2Dよりも精度の高い表示を行うことができる。本明細書では、単数形で記載され、「1つ」(「a」又は「an」)という単語で進められる要素又はステップは、そのような除外が明示的に記載されていない限り、複数の要素又はステップを除外しないと理解すべきである。更に、本発明の「一実施形態」への言及は、記載された特徴を組み込んだ追加の実施形態の存在を排除すると解釈されることを意図したものではない。
【0135】
本明細書に記載の制御方法、及び、システムは、コンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又は、それらの任意の組み合わせ若しくはサブセットを含むコンピュータプログラミング技術又はエンジニアリング技術を用いて実装することができる。その技術的効果は、本開示に係る3次元ボリュームデータと診断指標の処理を少なくとも含むことができる。
【0136】
図31は、本明細書に記載される様々な実施形態を実施し得るコンピュータのブロック図を示す。本開示の制御態様は、システム、方法、及び/又は、コンピュータプログラム製品として具現化することができる。コンピュータプログラム製品は、1つ以上のプロセッサに実施形態の態様を実行させることができる、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令が記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を含んでもよい。
【0137】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、命令実行装置(プロセッサ)によって使用するための命令を格納することができる有形、かつ、非一時的な装置であってよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えば、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁気記憶装置、半導体記憶装置、又は、これらの適切な組み合わせであってもよいが、これらに限定されるものではない。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体のより具体的な例の包括的ではないリストには、次の各々(及び、適切な組み合わせも含む)が含まれる:フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM、又は、フラッシュ)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスク(CD、又は、CD-ROM)、デジタル汎用ディスク(DVD)、MO、及び、メモリカード又はスティック。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本開示で使用されるように、電波又は他の自由に伝播する電磁波、導波管又は他の伝送媒体(例えば、光ファイバケーブルを通過する光パルス)を伝播する電磁波、又は、ワイヤを通過する電気信号などの一時的な信号そのものであると見なされるべきものではない。
【0138】
本開示に記載される機能を実装するコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体から適切なコンピュータデバイス又は処理装置に、或いは、グローバルネットワーク(すなわち、インターネット)、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、及び/又は、無線ネットワークを通じて、外部コンピュータ又は外部記憶装置にダウンロードすることができる。ネットワークは、銅線伝送、光通信ファイバ、無線伝送、ルーター、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイコンピューター、及び/又は、エッジサーバーを含んでもよい。各コンピュータデバイス又は各処理装置内のネットワークアダプタカード又はネットワークインターフェースは、ネットワークからコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を受信し、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令をコンピュータデバイス又は処理装置内のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納するために転送することができる。
【0139】
本開示の動作を実行するためのコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、機械語命令、及び/又は、マイクロコードを含んでもよく、これは、アセンブリ言語、Basic、Fortran、Java、Python、R、C、C++、C#、又は、同様のプログラミング言語を含む1以上のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれたソースコードからコンパイル又は解釈(interpret)されてもよい。コンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、ユーザのパーソナルコンピュータ、ノートブックコンピュータ、タブレット、又は、スマートフォン上で完全に実行されてもよく、リモートコンピュータ又はコンピュータサーバー上で完全に実行されてもよく、又は、これらのコンピュータデバイスの任意の組み合わせで実行されてもよい。リモートコンピュータ、又は、コンピュータサーバーは、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、又は、グローバルネットワーク(すなわち、インターネット)を含むコンピュータネットワークを介して、ユーザのデバイス、又は、複数のデバイスに接続されてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は、プログラマブル論理アレイ(PLA)を含む電子回路は、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令からの情報を使用してコンピュータ読み取り可能なプログラム命令を実行して、本開示の態様を実行するために、電子回路を構成、又は、カスタマイズしてもよい。
【0140】
本開示の態様は、本開示の実施形態に係る方法、装置(システム)、及び、コンピュータプログラム製品のフロー図、及び、ブロック図を参照して、本明細書で説明される。フロー図とブロック図の各ブロック、及び、フロー図及びブロック図中のブロック図の組み合わせは、コンピュータ読み取り可能なプログラム命令によって実装できることは、当業者には理解されるであろう。
【0141】
本開示に記載のシステム、及び、方法を実装することができるコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ、又は、他のプログラマブル装置のプロセッサを介して実行される命令が、本開示のフロー図、及び、ブロック図において規定された機能を実装するためのシステムを作成するように、機械を生成するために汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は、他のプログラマブル装置の1以上のプロセッサ(及び/又は、プロセッサ内の1以上のコア)に提供されてもよい。これらのコンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、命令を格納するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が本開示におけるフロー図、及び、ブロック図において規定される機能の態様を実装する命令を含む製品となるように、コンピュータ、プログラマブル装置、及び/又は、他のデバイスに特有の方法で機能するように指示することができるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。
【0142】
コンピュータ読み取り可能なプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上にロードされて、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行される命令が本開示におけるフロー図、及び、ブロック図において規定された機能を実装するように、コンピュータ実装プロセスを生成するために、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は、他のデバイス上で実行される一連の動作ステップを実行させるようにしてもよい。
【0143】
図31は、1つ以上のネットワーク化されたコンピュータとサーバーのネットワーク化されたシステム3100を示す機能ブロック図である。一実施形態において、
図31に示されたハードウェア環境、及び、ソフトウェア環境は、本開示に係るソフトウェア、及び/又は、方法を実装するための例示的なプラットフォームを提供することができる。
図31を参照すると、ネットワーク化されたシステム3100は、コンピュータ3105、ネットワーク3110、リモートコンピュータ3115、ウェブサーバー3120、クラウドストレージサーバー3125、及び、コンピュータサーバー3130を含んでもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、
図31に示された1つ以上の機能ブロックの複数のインスタンスが採用されてもよい。
【0144】
コンピュータ3105の追加的な詳細は、
図31にも示されている。コンピュータ3105内に図示されている機能ブロックは、例示的な機能を確立するためにのみ提供されており、網羅的であることを意図していない。また、リモートコンピュータ3115、ウェブサーバー3120、クラウドストレージサーバー3125、及び、コンピュータサーバー3130については詳細が示されていないが、これらの他のコンピュータ、及び、デバイスは、コンピュータ3105について示されたものと同様の機能を含んでいてもよい。コンピュータ3105は、パーソナルコンピュータ(PC)、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ネットブックコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又は、ネットワーク3110上の他のデバイスと通信可能な任意の他のプログラム可能な電子デバイスであってよい。
【0145】
コンピュータ3105は、プロセッサ3135、バス3137、メモリ3140、不揮発性ストレージ3145、ネットワークインターフェース3150、周辺機器インターフェース3155、及び、ディスプレイインターフェース3165を含んでもよい。これらの機能の各々は、いくつかの実施形態では、個々の電子サブシステム(集積回路チップ、又は、チップと関連するデバイスとの組み合わせ)として実装されてもよいし、他の実施形態では、機能のいくつかの組み合わせが単一のチップ(システムオンチップ、又は、SoCと呼ばれることがある)に実装されてもよい。
【0146】
プロセッサ3135は、インテル・コーポレーション、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ社(AMD)、アーム・ホールディングス(Arm)、アップル・コンピュータ社などによって設計、及び/又は、製造されたものなど、1つ以上のシングルチップ、又は、マルチチップのマイクロプロセッサであってもよい。マイクロプロセッサの例として、インテル社のCeleron、Pentium、Core i3、Core i5、及び、Core i7、AMD社のOpteron、Phenom、Athlon、Turion、及び、Ryzen、Arm社のCortex-A、Cortex-R、及び、Cortex-Mなどがある。バス3137は、ISA、PCI、PCI Express(PCI-e)、AGPなどの独自又は業界標準の高速パラレル、又は、シリアル周辺機器相互接続バスであってもよい。
【0147】
メモリ3140、及び、不揮発性ストレージ3145は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であってもよい。メモリ3140は、ダイナミック・ランダムアクセス・メモリ(DRAM)、及び、スタティック・ランダムアクセス・メモリ(SRAM)などの任意の適切な揮発性ストレージデバイスを含んでもよい。不揮発性ストレージ3145は、下記を1つ以上含んでもよい:フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ(SSD)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM、又は、Flash)、コンパクトディスク(CD、又は、CD-ROM)、デジタル汎用ディスク(DVD)、及び、メモリカード又はスティック。
【0148】
プログラム3148は、不揮発性ストレージ3145に格納され、本開示の他の場所で詳細に説明され、図面に示されている特定のソフトウェア機能を作成、管理、及び、制御するために使用される、機械読み取り可能な命令、及び/又は、データの集合体であってもよい。いくつかの実施形態では、メモリ3140は、不揮発性ストレージ3145よりも大幅に高速であってもよい。そのような実施形態では、プログラム3148は、プロセッサ3135による実行の前に、不揮発性ストレージ3145からメモリ3140に転送されてもよい。
【0149】
コンピュータ3105は、ネットワークインターフェース3150を介して、ネットワーク3110を経由して他のコンピュータと通信し、相互に作用することが可能であってもよい。ネットワーク3110は、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)、又は、これら2つの組み合わせであってもよく、有線、無線、又は光ファイバ接続を含んでいてもよい。一般的に、ネットワーク3110は、2つ以上のコンピュータと関連するデバイスとの間の通信をサポートする接続、及び、プロトコルの任意の組み合わせとすることができる。
【0150】
周辺機器インターフェース3155は、コンピュータ3105とローカルに接続される他のデバイスとのデータの入出力を可能にするものであってよい。例えば、周辺機器インターフェース3155は、外部デバイス3160への接続を提供してもよい。外部デバイス3160は、キーボード、マウス、キーパッド、タッチスクリーン、及び/又は、他の適切な入力デバイスのようなデバイスを含んでもよい。外部デバイス3160は、例えば、サムドライブ、ポータブル光ディスク又は磁気ディスク、及び、メモリカードなどのポータブルのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も含んでもよい。本開示の実施形態を実践するために使用されるソフトウェア、及び、データ、例えば、プログラム3148は、このようなポータブルのコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納されてもよい。このような実施形態では、ソフトウェアは、不揮発性ストレージ3145上にロードされてもよいし、代わりに、周辺機器インターフェース3155介してメモリ3140に直接的にロードされてもよい。周辺機器インターフェース3155は、外部デバイス3160と接続するために、RS-232、又は、ユニバーサル・シリアル・バス(USB)などの業界標準の接続を用いてもよい。
【0151】
ディスプレイインターフェース3165は、コンピュータ3105をディスプレイ3170に接続してもよい。ディスプレイ3170は、いくつかの実施形態では、コンピュータ3105のユーザにコマンドライン、又は、グラフィカルユーザインタフェースを提示するために用いられてもよい。ディスプレイインターフェース3165は、VGA、DVI、DisplayPort、HDMI(登録商標)などの1つ以上の独自、又は、業界標準の接続を用いて、ディスプレイ3170に接続してもよい。
【0152】
上記のように、ネットワークインターフェース3150は、コンピュータ3105の外部にある他のコンピューティングシステム、及び、ストレージシステム又はデバイスとの通信を提供する。本明細書で説明するソフトウェアプログラム、及び、データは、例えば、リモートコンピュータ3115、ウェブサーバー3120、クラウドストレージサーバー3125、及び、コンピュータサーバー3130から、ネットワークインターフェース3150、及び、ネットワーク3110を介して不揮発性ストレージ3145にダウンロードされてもよい。更に、本開示で説明するシステム、及び、方法は、ネットワークインターフェース3150、及び、ネットワーク3110を介してコンピュータ3105に接続された1つ以上のコンピュータによって実行されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本開示に記載されているシステム、及び、方法は、リモートコンピュータ3115、コンピュータサーバー3130、又は、ネットワーク3110上の相互接続されたコンピュータの組み合わせによって実行されてもよい。
【0153】
本開示に記載されたシステム、及び、方法の実施形態で採用されるデータ、データセット、及び/又は、データベースは、保存され、及び/又は、リモートコンピュータ3115、ウェブサーバー3120、クラウドストレージサーバー3125、及び、コンピュータサーバー3130からダウンロードされてもよい。
【0154】
上記の教示に照らして、本発明の多数の修正、及び、変形が可能である。従って、添付の請求項の範囲内で、本発明は、本明細書に具体的に記載されている以外の方法で実施することができることを理解されたい。