(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】官能特性評価変換システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0203 20230101AFI20240626BHJP
【FI】
G06Q30/0203
(21)【出願番号】P 2020137592
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100086391
【氏名又は名称】香山 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓介
(72)【発明者】
【氏名】中島 郁世
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 源哉
(72)【発明者】
【氏名】本山 三知代
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073019(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある
食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が前記第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該
食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換する
制御装置と、
前記
制御装置によって変換された前記1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を出力する出力装置とを含
み、
前記第1消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品の複数のサンプルそれぞれに対する複数の前記第1官能特性評価用語毎の評価結果を求めるアンケートの結果データを第1アンケート結果データとし、前記第2消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品の前記複数のサンプルそれぞれに対する複数の前記第2官能特性評価用語毎の評価結果を求めるアンケートの結果データを第2アンケート結果データすると、
前記制御装置は、
前記第1アンケート結果データに基づいて、前記複数のサンプル別に所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を算出し、
前記第2アンケート結果データに基づいて、前記複数のサンプル別に所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を算出し、
前記第2アンケート結果データから算出された、サンプル別の前記所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を予測変数とし、前記第1アンケート結果データから算出された、サンプル別の前記所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を説明変数とした部分最小二乗回帰または重回帰分析を行うことにより、前記予測変数の回帰式の係数を演算し、
前記第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値のロジット変換値に、前記係数を乗算することにより、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値のロジット変換値を算出し、
前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値のロジット変換値を逆ロジット変換することにより、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を算出し、
これにより、前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換する、官能特性評価変換システム。
【請求項2】
言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が前記第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換するための変換係数を記憶した記憶装置と、
前記記憶装置に記憶されている前記変換係数を用いて、前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換する制御装置と、
前記制御装置によって変換された前記1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を出力する出力装置とを含み、
前記第1消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品の複数のサンプルそれぞれに対する複数の前記第1官能特性評価用語毎の評価結果を求めるアンケートの結果データを第1アンケート結果データとし、前記第2消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品の前記複数のサンプルそれぞれに対する複数の前記第2官能特性評価用語毎の評価結果を求めるアンケートの結果データを第2アンケート結果データすると、
前記変換係数は、前記第2アンケート結果データから算出された、前記複数のサンプル別の所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を予測変数とし、前記第1アンケート結果データから算出された、前記複数のサンプル別の所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率のロジット変換値を説明変数とした部分最小二乗回帰または重回帰分析を行うことにより算出され、
前記制御装置は、
前記第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値のロジット変換値に、前記変換係数を乗算することにより、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値のロジット変換値を算出し、
前記第2消費者群の当該食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値のロジット変換値を逆ロジット変換することにより、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を演算し、
これにより、前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、前記第2消費者群の前記食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換する、官能特性評価変換システム。
【請求項3】
前記出力装置は、
前記食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値と、
前記制御装置によって変換された前記1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値とを出力する、請求項1または2に記載の官能特性評価変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、官能特性評価変換システムに関する。官能特性は、感覚によって区別される性質であり、「味・匂い・食感」、「見た目(色調や形状、脂肪交雑の度合いなど)」、「音(咀嚼音など)」等を含む。
【背景技術】
【0002】
互いに異なる言語や地域に属している消費者は、同一食品を喫食したときに異なる「味・匂い・食感」として認知することが多い。このため、異なる言語・地域間における味・匂い・食感を表現する用語の違いは、単に翻訳による一対一対応の変換では困難であり、当該用語が含む意味の違いも考慮した変換が必要であるが、このような変換を実現する技術は存在していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
言語や地域の異なる消費者間において味・匂い・食感に関する用語は一対一の対訳となるとは限らず、ある特定の消費者群が感じる味・匂い・食感から他の言語・地域に背景を有する消費者群、例えば外国人等が感じる味・匂い・食感を推定するためには、言語や地域の違いに起因する官能特性の認知や表現の違いを加味した変換を行うことが必要である。しかし、そのような技術は存在しない。
【0005】
なお、特許文献1に記載されている、訓練されたパネリストを用いた官能評価においては、パネリストは評価用語の定義を学習しているため言語や文化が異なっても一対一の対訳で変換できる可能性はあるが、一般消費者は通常官能評価や評価用語に関する訓練を受けていないので、各自の言語的・文化的背景や経験に基づき官能特性を認知する。このため、一般消費者の官能特性の認知にあっては、特定の言語・文化に属する消費者が認知した特性をそのまま他の言語・文化に属する消費者が認知する特性に一対一対訳で置き換えることは不可能である。
【0006】
本発明の目的は、ある特定の消費者または消費者群におけるある食品に関する官能特性評価結果を、他の言語または地域に背景を有する消費者群におる当該食品に関する官能特性評価に変換することが可能となる、官能特性評価変換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある商品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が前記第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該商品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換するための変換処理を行う変換処理部と、前記変換処理部によって変換された前記1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を出力する出力装置とを含む、官能特性評価変換システムを提供する。
【0008】
「言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群」とは、「言語が同じ消費者群」、「地域が同じ消費者群」および「言語および地域が同じ消費者群」のうちのいずれかの消費者群を意味する。「言語および地域のうちの少なくとも一方が前記第1消費者群とは異なる第2消費者群」とは、「言語が前記第1消費者群とは異なる消費者群」、「地域が前記第1消費者群とは異なる消費者群」および「言語および地域が前記第1消費者群とは異なる消費者群」のうちのいずれかの消費者群を意味する。
【0009】
この構成では、ある特定の消費者または消費者群におけるある食品に関する官能特性評価結果を、他の言語または地域に背景を有する消費者群におる当該食品に関する官能特性評価に変換することが可能となる。
この発明の一実施形態では、前記変換処理部は、前記第1消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第1官能特性評価用語毎の評価結果を求める第1アンケートの結果データと、前記第2消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第2官能特性評価用語毎の評価結果を求める第2アンケートの結果データとからなるアンケート結果データ群に基づいて、前記変換処理を行う。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記変換処理部は、前記第2アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を予測変数とし、前記第1アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を説明変数とした部分最小二乗回帰または重回帰分析を行うことにより、前記予測変数の回帰式の係数を演算し、演算された前記係数を用いて、前記変換処理を行う。
【0011】
この発明の一実施形態では、前記変換処理部は、前記第1消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第1官能特性評価用語毎の評価結果を求める第1アンケートの結果データと、前記第2消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第2官能特性評価用語毎の評価結果を求める第2アンケートの結果データとからなるアンケート結果データ群から算出された変換係数を用いて、前記変換処理を行う。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記変換係数は、前記第2アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を予測変数とし、前記第1アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を説明変数とした部分最小二乗回帰または重回帰分析が行われることにより演算される。
【0013】
この発明の一実施形態では、言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある商品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が前記第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該商品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換するための変換係数を記憶した係数記憶部と、前記第1官能特性評価用語および前記第2官能特性評価用語を記憶した評価用語記憶部と、前記係数記憶部に記憶されている変換係数と、前記評価用語記憶部に記憶されている前記第1官能特性評価用語および前記第2官能特性評価用語とに基づいて、前記変換を行う変換処理部と、前記変換処理部によって変換された前記1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値を出力する出力装置とを含む、官能特性評価変換システムを提供する。
【0014】
この構成では、ある特定の消費者または消費者群におけるある食品に関する官能特性評価結果を、他の言語または地域に背景を有する消費者群におる当該食品に関する官能特性評価に変換することが可能となる。
この発明の一実施形態では、前記変換係数は、前記第1消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第1官能特性評価用語毎の評価結果を求める第1アンケートの結果データと、前記第2消費者群に含まれる複数の消費者それぞれに対して行われ、前記食品に対する複数の前記第2官能特性評価用語毎の評価結果を求める第2アンケートの結果データとからなるアンケート結果データ群から算出される。
【0015】
この発明の一実施形態では、前記変換係数は、前記第2アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第2官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を予測変数とし、前記第1アンケートの結果データから算出された所定複数の前記第1官能特性評価用語毎の選択確率に応じた値を説明変数とした部分最小二乗回帰または重回帰分析が行われることにより演算される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、この発明の実施形態に係る官能特性評価変換システムの構成を説明するための模式図である。
【
図2】
図2は、消費者に提供されるアンケート用紙またはアンケート画面の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、サンプル情報テーブルの内容例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、消費者情報テーブルの内容例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、アンケート結果記憶部に記憶されるアンケート結果データの一例を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第1の変換処理後に表示装置に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、変換処理部による第1の変換処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の変換処理後に表示装置に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変換処理部による第2の変換処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第3の変換処理後に表示装置に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
[1]官能特性評価変換システムの構成
図1は、この発明の実施形態に係る官能特性評価変換システムの構成を説明するための模式図である。
官能特性評価変換システム1は、言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある
食品に関する1または複数の第1官能特性評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該
食品に関する1または複数の第2官能特性評価用語毎の第2評価値に変換して出力するためのシステムである。
【0018】
この実施形態では、第1消費者群が日本人であり、第2消費者群が欧州人であり、食品が食肉である場合について説明する。以下において、後述するアンケートに回答した消費者を、回答者または被験者という場合がある。
官能特性評価変換システム1は、複数の消費者端末2と、サーバ3とを含む。複数の消費者端末2は、通信網4を介して、サーバ3に接続されている。
【0019】
消費者端末2は、アンケートに対する回答を消費者が入力したり、入力された回答をサーバ3に送信したりするために用いられる。消費者端末2は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートフォン、タブレット型コンピュータ等のコンピュータから構成される。
サーバ3は、消費者端末2等から取得したアンケート結果データ等を用いて、官能特性評価を変換する機能、官能特性評価の変換結果を出力(表示)する機能等を備えている。
[2]アンケート内容
図2は、消費者に提供されるアンケート用紙またはアンケート画面の一例を示す模式図である。
【0020】
ここでは、
図2がアンケート画面の一例を示しているものとして、アンケート画面の内容について説明する。
図2の例では、アンケート内の日本語には英語が併記されている。
アンケート画面の上欄には、回答用紙番号、サンプル番号(Sample No)、回答者番号(Tester ID)等が記載されている。
回答用紙番号は、アンケート毎に付与された番号である。サンプル番号は、食肉サンプル(この例では牛肉サンプル)毎に付与された番号である。回答者番号は、回答者毎に付与された識別番号(ID)である。
【0021】
アンケート画面の上欄よりも下側の領域には、「Q: Check all items which express taste, flavor and texture traits of this beef sample. このサンプルの味や香り、食感を表す用語すべてにチェックして下さい」のメッセージと、表とが表示されている。
この実施形態では、味、香り(匂い)または食感を表す用語を、官能特性評価用語(以下、「評価用語」という。)ということにする。表には、複数の評価用語と、評価用語毎に当該サンプルが該当するか否かを入力するためのチェックボックスとが表示される。回答者は、ある評価用語に対して当該サンプルの味、香り(匂い)または食感が該当すると感じた場合には、当該評価用語に対応するチェックボックスにチェックを入力し、該当しないと感じた場合には当該評価用語に対応するチェックボックスにチェックを入力しない。
[3]サーバ3の電気的構成
図1を参照して、サーバ3は、例えば、パーソナルコンピュータからなり、制御装置5と、表示装置6と、操作装置7と、記憶装置8とを含む。制御装置5は、CPUおよびメモリを含む。表示装置6は、例えば、液晶ディスプレイである。操作装置7は、マウス、キーボード等を含む。
【0022】
記憶装置8は、ハードディスク、不揮発性メモリ等から構成されている。記憶装置8には、食肉属性テーブル8A、消費者属性テーブル8B、評価用語テーブル8C、サンプル情報テーブル8D、消費者情報テーブル8E、アンケート結果記憶部8F等が設けられている。
食肉属性テーブル8Aには、食肉の属性に関する分類用語が記憶される。食肉の属性として、食肉の種類、部位、産地等を挙げることができる。食肉属性テーブル8Aには、例えば、種類、部位および産地毎に、それぞれ、種類の分類用語、部位の分類用語および産地の分類用語が記憶される。種類の分類用語には、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉等があり、部位の分類用語には、例えば、ネック、肩、ヒレ等があり、産地の分類用語には、例えば、神戸、松坂、米沢等がある。
【0023】
消費者属性テーブル8Bには、消費者の属性に関する分類用語が記憶されている。消費者の属性として、出身地、使用言語、国籍等を挙げることができる。消費者属性テーブル8Bには、例えば、出身地(出身国)および使用言語毎に、それぞれ出身地(出身国)の分類用語および使用言語の分類用語が記憶される。出身地(出身国)の分類用語には、例えば、日本(または日本人)、欧州(または欧州人)、中国(または中国人)等があり、使用言語の分類用語には、日本語、フランス語、中国語等がある。
【0024】
評価用語テーブル8Cには、「食感」に関する評価用語と、「味、匂い」に関する評価用語とが、区別可能に記憶されている。各評価用語は、日本語とそれに意味が近いと想定される英語からなる。
「食感」に関する評価用語には、この実施形態では、「やわらかい(Tender)」、「かたい(Tough)」、「ジューシー(Juicy)」、「ぱさつく(Dry)」、「なめらか(Smooth)」、「ざらつく(Rough)」、「歯ごたえ・かみごたえ(Chewy)」、「飲み込みやすい(Easy to swallow)」および「弾力(Spring)」がある。この実施形態では、これらの「食感」に関する評価用語のうちの日本語の評価用語が、本発明における「第1官能特性評価用語」の一例であり、これらの「食感」に関する評価用語のうちの英語の評価用語が、本発明における「第2官能特性評価用語」の一例である。
【0025】
「味、匂い」に関する評価用語には、この実施形態では、
図2のアンケート画面に表示されている評価用語のうち、「食感」に関する評価用語以外の評価用語がある。具体的には、「味、匂い」に関する評価用語には、「甘味(Sweet taste)」、「苦味(Bitter taste)」、「脂肪が口に残る(Fat remaining)」、「甘い匂い(Sweet aroma」等がある。
サンプル情報テーブル8Dには、例えば、
図3に示すように、サンプル番号毎に、種類、部位および産地が記憶される。
【0026】
消費者情報テーブル8Eには、例えば、
図4に示すように、回答者番号毎に、出身地および使用言語が記憶される。回答者の属性(出身地、使用言語等)は、例えば、当該回答者の消費者端末2から取得される。
アンケート結果記憶部8Fには、例えば、
図5に示すように、回答用紙番号毎に、回答者番号、サンプル番号、各評価用語に対する選択の有無等が記憶される。各評価用語に対する選択の有無を表すデータは、その評価用語が選択されたことを表す「1」と、その評価用語が選択されなかったことを表す「0」とからなる。
【0027】
制御装置5は、データ取得部5Aおよび変換処理部5Bを含む。データ取得部5Aは、アンケート結果データ、回答者の属性データ等を取得する。変換処理部5Bは、アンケート結果データ、回答者の属性データ等に基づいて、官能特性評価の変換処理を行い、変換処理結果を表示装置6に表示する。以下、変換処理部5Bの機能について詳しく説明する。
[4]変換処理部5Bの機能
この実施形態では、消費者の属性が出身地であり、アンケート対象の消費者には、出身地が日本である複数の日本人と、出身地が欧州である複数の欧州人とが存在している。
【0028】
また、この実施形態では、アンケートに使用される食肉は、牛肉であり、部位の異なる4種類のサンプルがある。
86名の消費者を被験者(回答者)とし、各被験者に対して4種類の牛肉サンプルを喫食させることにより、344件のアンケートを実施し、344個のアンケート結果データを取得した。また、各消費者から、その消費者が、日本人および欧州人のうちのいずれの消費者群に属するかの情報(消費者属性情報)を取得した。
【0029】
アンケート結果データは、例えば、サーバ3が各被験者の消費者端末2にアンケート画面を提供し、アンケート画面に被験者がチェックを入力することにより、サーバ3(データ取得部5A)が取得するようにしてもよい。また、アンケート結果データは、例えば、各被験者にアンケート用紙を提供し、回答後のアンケート用紙を回収し、回収したアンケート用紙から取得するようにしてもよい。
【0030】
消費者属性情報は、例えば、サーバ3が各被験者の消費者端末2に属性入力画面を提供し、アンケート画面に被験者が属性を入力することにより、サーバ3(データ取得部5A)が取得するようにしてもよい。また、消費者属性情報は、例えば、各被験者に属性を記入するための属性記入用紙を提供し、記入後の属性記入用紙を回収し、回収した属性記入用紙から取得するようにしてもよい。
【0031】
以下では、食感に関する評価用語の評価値を変換する場合の変換処理部5Bの機能について説明する。
変換処理部5Bは、原則的には、評価変換前データを評価変換後データに変換し、評価変換前データおよび評価変換後データを表示装置6に表示する。ただし、変換処理部5Bは、評価変換前データを生成し、生成された評価変換前データを評価変換後データに変換し、評価変換前データおよび評価変換後データを表示装置6に表示する場合もある。
[4.1]変換処理部5Bによる第1の変換処理例
以下、変換処理部5Bによる第1の変換処理について説明する。
【0032】
図6は、第1の変換処理後に表示装置6に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
図6の例では、評価変換前データは、「日本人の日本語による食肉の評価用語毎の評価値(重み)J
1~J
9」である。そして、評価変換後データは、「欧州人の英語による食肉の評価用語毎の第2評価値(重み)E
1~E
9」である。評価変換前データおよび評価変換後データの評価値は、0以上1以下の値をとる。
【0033】
この例では、日本人は、本発明における「第1消費者群」の一例であり、欧州人は、本発明における「第2消費者群」の一例である。また、評価変換前データの評価用語毎の評価値は、本発明における「第1評価値」の一例であり、評価変換後データの評価用語毎の評価値は、本発明における「第2評価値」の一例である。
図7は、変換処理部5Bによる第1の変換処理の手順を示すフローチャートである。
【0034】
以下において、日本語評価用語は、「食感に関する日本語評価用語」を意味し、英語評価用語は、「食感に関する英語評価用語」を意味するものとする。
第1の変換処理の実行指令が入力されると(ステップS1)、変換処理部5Bは、評価変換前データを作成する(ステップS2、S3)。具体的には、変換処理部5Bは、アンケート結果データ群から、被験者が日本人であるアンケート結果データを抽出する(ステップS2)。次に、変換処理部5Bは、抽出した日本人アンケート結果データに基づいて、日本語評価用語毎に選択確率を、当該用語の評価値として演算する(ステップS3)。これにより、日本語評価用語毎の評価値が得られる。これにより、評価変換前データが作成される。
【0035】
次に、変換処理部5Bは、日本人アンケート結果データに基づいて、サンプル別に日本語評価用語毎の選択確率を算出する(ステップS4)。
次に、変換処理部5Bは、アンケート結果データ群から、被験者が欧州人であるアンケート結果データを抽出する(ステップS5)。
次に、欧州人アンケート結果データに基づいて、サンプル別に英語評価用語毎の選択確率を算出する(ステップS6)。
【0036】
次に、変換処理部5Bは、欧州人における英語評価用語毎の選択確率を予測変数とし、日本人における日本語評価用語毎の選択確率を説明変数とした部分最小二乗回帰を行うことにより、予測変数の回帰式の係数を求める(ステップS7)。
ステップS7の処理について、より具体的に説明する。ステップS4で算出された、第1サンプルに対する日本語評価用語毎の選択確率をJ
w1~J
w9、第2サンプルに対する日本語評価用語毎の選択確率をJ
x1~J
x9、第3サンプルに対する日本語評価用語毎の選択確率をJ
y1~J
y9、第4サンプルに対する日本語評価用語毎の選択確率をJ
z1~J
z9で表すことにする。なお、Jの添え字中の数字1~9は、
図6の日本語評価用語の上から何番目かを示す数字である。
【0037】
また、ステップS6で算出された、第1サンプルに対する英語評価用語毎の選択確率をE
w1~E
w9、第2サンプルに対する英語評価用語毎の選択確率をE
x1~E
x9、第3サンプルに対する英語評価用語毎の選択確率をE
y1~E
y9、第4サンプルに対する英語評価用語毎の選択確率をE
z1~E
z9で表すと、次式(1)に示すようなモデルが得られる。なお、Eの添え字中の数字1~9は、
図6の英語評価用語の上から何番目かを示す数字である。
【0038】
【0039】
このモデルから、部分最小二乗法を用いて係数行列Aの各成分(各係数a11~a99)が求められる。
次に、変換処理部5Bは、ステップS3で演算された日本語評価用語毎の評価値と、ステップS7で求められた係数とに基づいて、欧州人における英語評価用語毎の評価値を算出する(ステップS8)。
【0040】
具体的には、変換処理部5Bは、次式(2)のJ1~J9にステップS3で演算された日本語評価用語毎の評価値を代入することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値E1~E9を算出する。これにより、評価変換後データが得られる。
【0041】
【0042】
最後に、変換処理部5Bは、ステップS3の処理によって得られた評価変換前データと、ステップS8の処理によって得られた評価変換後データとを、表示装置6に表示する(ステップS9)。これにより、
図6に示すような画面が表示装置6に表示される。
なお、変換処理部5Bは、予め評価変換前データを作成して記憶装置8内の評価変換前データ記憶部(図示略)に記憶させておいてもよい。さらに、変換処理部5Bは、予め予測変数の回帰式の係数a
11~a
99を求めておき、
図1に二点鎖線で示す第1係数記憶部8Gに記憶させておいてもよい。
【0043】
この場合には、第1の変換処理の実行指令が入力されると、変換処理部5Bは、評価変換前データ記憶部に記憶されている評価変換前データにおける日本語評価用語毎の評価値を、前述の式(2)のJ1~J9に代入することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値E1~E9を算出する。そして、変換処理部5Bは、評価変換前データと評価変換後データとを、表示装置6に表示する。
[4.2]変換処理部5Bによる第2の変換処理例
以下、変換処理部5Bによる第2の変換処理について説明する。
【0044】
図8は、第2の変換処理後に表示装置6に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
図8の例では、評価変換前データは、「日本人の日本語による食肉の評価用語毎の評価値J
1~J
9(重み)」である。ただし、評価値はあてはまるかあてはまらないかを示す1または0で表される。評価変換前データは、例えば、ある日本人被験者がある食肉サンプルを試食したときに、食感に関する9個の評価用語毎にあてはまるかあてはまらないかの回答を求めたアンケート結果に基づいて得ることができる。
【0045】
評価変換後データは、「欧州人の英語による食肉の評価用語および評価用語毎の第2評価値(重み)E
1~E
9」である。ただし、評価値はあてはまるかあてはまらないかを示す1または0で表される。
図9は、変換処理部5Bによる第2の変換処理の手順を示すフローチャートである。
評価変換前データは、記憶装置8の評価変換前データ記憶部(図示略)に記憶されているものとする。
【0046】
第2の変換処理の実行指令が入力されると(ステップS11)、変換処理部5Bは、アンケート結果データ群から、被験者が日本人であるアンケート結果データを抽出する(ステップS12)。次に、変換処理部5Bは、日本人アンケート結果データに基づいて、サンプル別に日本語評価用語毎の選択確率を算出する(ステップS13)。次に、サンプル毎の日本語評価用語の選択確率をロジット変換する(ステップS14)。選択確率PABのロジット変換値は、log(PAB/(1-PAB))となる。
【0047】
次に、変換処理部5Bは、アンケート結果データ群から、被験者が欧州人であるアンケート結果データを抽出する(ステップS15)。次に、欧州人アンケート結果データに基づいて、サンプル別に英語評価用語毎の選択確率を算出する(ステップS16)。次に、サンプル毎の英語評価用語の選択確率をロジット変換する(ステップS17)。
次に、変換処理部5Bは、ステップS17で演算された欧州人における英語評価用語毎のロジット変換値を予測変数とし、ステップS14で演算された日本人における日本語評価用語毎のロジット変換値を説明変数とした部分最小二乗回帰を行うことにより、予測変数の回帰式の係数を求める(ステップS18)。
【0048】
ステップS18の処理について、より具体的に説明する。ステップS14で算出された、第1サンプルに対する日本語評価用語毎のロジット変換値をJ’
w1~J’
w9、第2サンプルに対する日本語評価用語毎のロジット変換値をJ’
x1~J’
x9、第3サンプルに対する日本語評価用語毎のロジット変換値をJ’
y1~J’
y9、第4サンプルに対する日本語評価用語毎のロジット変換値をJ’
z1~J’
z9で表すことにする。なお、J’の添え字中の数字1~9は、
図8の日本語評価用語の上から何番目かを示す数字である。
【0049】
また、ステップS17で算出された、第1サンプルに対する英語評価用語毎のロジット変換値をE’
w1~E’
w9、第2サンプルに対する英語評価用語毎のロジット変換値をE’
x1~E’
x9、第3サンプルに対する英語評価用語毎のロジット変換値をE’
y1~E’
y9、第4サンプルに対する英語評価用語毎のロジット変換値をE’
z1~E’
z9で表すと、次式(3)に示すようなモデルが得られる。なお、E’の添え字中の数字1~9は、
図8の英語評価用語の上から何番目かを示す数字である。
【0050】
【0051】
このモデルから、部分最小二乗法を用いて係数行列Bの各成分(各係数b11~b99)が求められる。
次に、変換処理部5Bは、評価変換前データ記憶部(図示略)に記憶されている評価変換前データと、ステップS18で求められた係数とに基づいて、欧州人における英語評価用語毎の評価値を算出する(ステップS19)。
【0052】
具体的には、変換処理部5Bは、次式(4)のJ’1~J’9に、評価変換前データの評価値J1~J9のロジット変換値を代入することにより、欧州人における英語評価用語毎のロジット変換値E’1~E’9を求める。そして、変換処理部5Bは、E’1~E’9を逆ロジット変換することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値E1~E9を算出する。
【0053】
【0054】
1番目の英語評価用語の評価値の求め方についてより具体的に説明する。
式(4)からE’1は、次式(5)で表される。
【0055】
【0056】
変換処理部5Bは、式(5)のJ’1~J’9に評価変換前データの評価値J1~J9のロジット変換値を代入することにより、欧州人における1番目の英語評価用語のロジット変換値E’1を演算する。そして、変換処理部5Bは、E’1を逆ロジット変換することにより、欧州人における1番目の英語評価用語の評価値E1を演算する。
例えば、評価変換前データの各日本語評価用語の評価値[J1 J2 J3 J4 J5 J6 J7 J8 J9]が、[101010101]である場合、0のロジット変換値は-∞となり、1のロジット変換値は∞となるため、E’1は、次式(6)で表される。
【0057】
【0058】
したがって、(b11-b21+b31-b41+b51-b61+b71-b81+b91)<0であれば、E’1は負の無限大に発散する。この場合、E’1を逆ロジット変換した値は0となり、欧州人における1番目の英語評価用語は0に設定される。
一方、(b11-b21+b31-b41+b51-b61+b71-b81+b91)>0であれば、E’1は正の無限大に発散する。この場合、E’1を逆ロジット変換した値は1となり、欧州人における1番目の英語評価用語は1に設定される。
【0059】
2番目~9番目の英語評価用語の評価値E
2~E
9についても同様な方法で演算される。これにより、評価変換後データが得られる。
最後に、変換処理部5Bは、評価変換前データと、ステップS28の処理によって得られた評価変換後データとを、表示装置6に表示する(ステップS20)。これにより、
図8に示すような画面が表示装置6に表示される。
【0060】
なお、変換処理部5Bは、予め予測変数の回帰式の係数b
11~b
99を求めておき、
図1に二点鎖線で示す第2係数記憶部8Hに記憶させておいてもよい。
この場合には、第2の変換処理の実行指令が入力されると、変換処理部5Bは、評価変換前データ記憶部に記憶されている評価変換前データにおける日本語評価用語毎の評価値のロジット変換値を、式(4)のJ’
1~J’
9に代入することにより、欧州人における英語評価用語毎のロジット変換値E’
1~E’
9を求める。次に、変換処理部5Bは、E’
1~E’
9を逆ロジット変換することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値E
1~E
9を算出する。そして、変換処理部5Bは、評価変換前データと、ステップS28の処理によって得られた評価変換後データとを、表示装置6に表示する。
[4.3]変換処理部5Bによる第3の変換処理例
以下、変換処理部5Bによる第3の変換処理について説明する。
【0061】
図10は、第3の変換処理後に表示装置6に表示される、評価変換前データおよび評価変換後データの一例を示す模式図である。
図10の例では、評価変換前データは、「日本人の日本語による食肉の単一の評価用語の評価値J
1(重み)」である。評価変換後データは、「欧州人の英語による食肉の評価用語および評価用語毎の評価値(重み)E
1~E
9」である。評価変換前データおよび評価変換後データの評価値は、0以上1以下の範囲内の値をとる。
【0062】
図10の例では、日本人が「やわらかい」と感じた食肉を欧州人が食したときに欧州人がどのように感じるかを予測するための変換例である。
評価変換前データは、例えば、日本人アンケート結果から、「やわらかい」の選択確率を演算することにより、得ることができる。
第3の変換処理の手順は、
図9を用いて説明した第2の変換処理の手順と同様である。ただし、
図9のステップS19においては、変換処理部5Bは、まず、式(4)のJ’
1に評価変換前データの評価値J
1(この例では、J
1=0.8)のロジット変換値を代入し、J’
2~J’
9に評価値0.5に対するロジット変換値(=0)を代入することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値のロジット変換値E’
1~E’
9を求める。そして、変換処理部5Bは、得られたロジット変換値E’
1~E’
9を、逆ロジット変換することにより、欧州人における英語評価用語毎の評価値E
1~E
9を演算する。
【0063】
なお、第3の変換処理においても、第2の変換処理と同様に、変換処理部5Bは、予め予測変数の回帰式の係数b
11~b
99を求めておき、
図1に二点鎖線で示す第2係数記憶部8Hに記憶させておいてもよい。この場合には、第3の変換処理の実行指令が入力されると、変換処理部5Bは、ステップS19の処理と同様な処理(ただし、式(4)のJ’
1には評価変換前データの評価値J
1(この例では、J
1=0.8)のロジット変換値が代入され、J’
2~J’
9には0のロジット変換値が代入される)と、ステップS20の処理とを行えばよい。
[5]実施形態の効果
前述の実施形態では、日本人の食肉に関する1または複数の日本語評価用語の評価値を、欧州人の食肉に関する1または複数の英語評価用語の評価値に変換して出力させることが可能となる。
[6]変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の実施形態で実施することもできる。
【0064】
例えば、サーバ3は、前述のアンケート(前述の例では344件分のアンケート)を実施した後において、サンプルを購入した消費者に対してアンケートを実施してアンケート結果を取得することにより、アンケート結果データ群を更新し、更新後のアンケート結果データ群に基づいて、前述の第1、第2または第3の変換処理を行うようにしてもよい。なお、係数a11~a99またはb11~b99を予め算出して記憶しておく場合には、例えば、アンケート結果データ群が更新される都度または定期的に係数a11~a99またはb11~b99を算出して、対応する係数記憶部8G,8Hに記憶するようにしてもよい。このように更新後のアンケート結果データ群に基づいて変換処理を行うようにすると、より多くのアンケート結果に基づいて、変換処理を行えるので、評価変換後データの評価値の信頼性を高めることができる。
【0065】
サンプルを購入した消費者からアンケート結果データを取得する方法としては、例えば、消費者がネットで食肉を注文した場合には、食肉が配達されるタイミングでアンケートメールを消費者の消費者端末2に送信する。そして、アンケートメールに対する回答をサーバ3が受信する。
あるいは、食肉のパッケージに、サーバ3が提供するアンケートのWebサイトにアクセスするためのデータ(アクセス用データ)を印刷しておく。アクセス用データとしては、例えばQRコード(登録商標)を用いることができる。食肉を購入した消費者は、食肉のパッケージに印刷されたアクセス用データと当該消費者の消費者端末2とを用いて、サーバ3が提供するアンケートのWebサイトにアクセスする。これにより、消費者端末2にアンケート画面が表示されるので、アンケート画面上で回答し、回答結果をサーバ3に送信する。
【0066】
また、前述の実施形態では、第1の変換処理では、選択確率をロジット変換することなく、係数を算出しているが、第1の変換処理においても、選択確率をロジット変換し、得られたロジット変換値を用いて係数を算出するようにしてもよい。この場合には、係数を用いて得られる予測変数は、英語評価用語毎の評価値のロジット変換値となるため、得られた予測変数を逆ロジット変換することにより、英語評価用語毎の評価値が算出される。
【0067】
また、前述の実施形態では、第1の変換処理または第3の変換処理では、選択確率のロジット変換値を用いて係数を算出しているが、選択確率を用いて係数を算出するようにしてもよい。
前述の実施形態では、変換処理部5Bは、欧州人における英語評価用語毎の選択確率(またはそのロジット変換値)を予測変数とし、日本人における日本語評価用語毎の選択確率(またはそのロジット変換値)を説明変数とした部分最小二乗回帰を行うことにより、予測変数の回帰式の係数を求めている。しかし、変換処理部5Bは、欧州人における英語評価用語毎の選択確率(またはそのロジット変換値)を予測変数とし、日本人における日本語評価用語毎の選択確率(またはそのロジット変換値)を説明変数とした重回帰分析を行うことにより、予測変数の回帰式の係数を求めるようにしてもよい。
【0068】
前述の実施形態では、変換処理部5Bは、第1消費者群である日本人の食肉に関する1または複数の日本語評価用語毎の評価値を、第1消費者群とは言語および地域が異なる第2消費者群である欧州人の食肉に関する1または複数の英語評価用語毎の評価値に変換している。しかし、変換処理部5Bは、言語および地域のうち少なくとも一方が同じである第1消費者群に含まれる1または複数の消費者の、ある食品に関する1または複数の第1評価用語毎の第1評価値を、言語および地域のうちの少なくとも一方が第1消費者群とは異なる第2消費者群の当該食品に関する1または複数の第2評価用語毎の第2評価値に変換するための変換処理を行うようにしてもよい。
【0069】
つまり、第1消費者群と第2消費者群とは、言語および地域のうち少なくとも一方が異なればよい。また、食品は、食肉以外の食品であってもよい。
また、前述の実施形態では、「食感」に関する評価用語の評価値を変換する場合について説明したが、本発明は、「味、匂い」に関する評価用語の評価値を変換する場合にも適用することができる。また、本発明は、「見た目(色調や形状、脂肪交雑の度合いなど)」、「音(咀嚼音など)」等の官能特性に関する評価用語の評価値を変換する場合にも適用することができる。
【0070】
また、前述の実施形態では、アンケート結果記憶部8Fには、回答用紙番号毎に、回答者番号、サンプル番号等のアンケート結果データが記憶されている。しかし、アンケート結果記憶部8Fには、回答用紙番号毎ではなく、アンケート単位のアンケート結果を取得した順に当該アンケート結果に付与される番号(連番)毎に、回答者番号、サンプル番号等のアンケート結果データが記憶されてもよい。
【0071】
また、アンケート結果記憶部8Fには、回答用紙番号毎ではなく、アンケート単位のアンケート結果がアンケート結果記憶部8Fに記憶される順に当該アンケート結果に付与される番号(連番)毎に、回答者番号、サンプル番号等のアンケート結果データが記憶されてもよい。
この発明は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 官能特性評価変換システム
2 消費者端末
3 サーバ
4 通信網
5 制御装置
5A データ取得部
5B 変換処理部
6 表示装置
7 操作装置
8A 食肉属性テーブル
8B 消費者属性テーブル
8C 評価用語テーブル
8D サンプル情報テーブル
8E 消費者情報テーブル
8F アンケート結果記憶部
8G 第1係数記憶部
8H 第2係数記憶部