(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】ポリアセタール樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 59/00 20060101AFI20240626BHJP
C08K 5/092 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240626BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240626BHJP
【FI】
C08L59/00
C08K5/092
C08K5/098
C08K5/17
(21)【出願番号】P 2018115738
(22)【出願日】2018-06-19
【審査請求日】2021-05-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 章宏
(72)【発明者】
【氏名】門間 智宏
(72)【発明者】
【氏名】原科 初彦
【合議体】
【審判長】藤原 浩子
【審判官】▲吉▼澤 英一
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-14364(JP,A)
【文献】特表2002-541288(JP,A)
【文献】特開2001-192530(JP,A)
【文献】特開2008-31348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部
(B)炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸0.01~0.5質量部、
(C)下記式(1)で表される炭素数が3以上のアミン化合物0.3~2質量部、
とを含有
し、
前記アミン化合物が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンまたは2-アミノ-2-メチル-プロパノールであるポリアセタール樹脂組成物。
【化1】
R
1,R
2,R
3は、水素原子、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基または炭素数1~9の炭化水素基を表し、R
1,R
2,R
3の少なくとも1つが炭素数1~4のヒドロキシアルキル基である。
【請求項2】
さらに、(D)脂肪酸カルシウム塩0.01~0.3質量部を含有する請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)脂肪族カルボン酸が、アジピン酸およびドデカン二酸から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒド発生量が著しく抑制され、成形加工性に優れたポリアセタール樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアセタール樹脂は、機械的性質、耐疲労性、耐摩擦・摩耗性、耐薬品性及び成形性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、その他の精密機械部品、建材・配管部材、生活・化粧用部品、医用部品などの分野において広く利用されている。
しかしながら、用途の拡大、多様化に伴い、その品質に対する要求はより高度化する傾向を示している。特に自動車部品としての、最終製品の使用周辺の環境をホルムアルデヒドの汚染から守るための要求は、極めて高いものがある。
【0003】
自動車業界では、ポリアセタール樹脂からホルムアルデヒドの発生を定める種々の規格を制定している。例えばVDA275(ドイツ自動車工業会規格)は、代表的な評価であり一般的によく使用されているが、ポリアセタール樹脂の汎用性が高まるにつれ、さらに厳しい種々の条件を満足することが必要となっている。
【0004】
ホルムアルデヒドの発生を低減させるためにポリアセタールホモポリマー樹脂に、第1級アミンまたは第2級アミンを含有させる技術や、厳しい条件にも耐えられるポリアセタール樹脂組成物として、ヒドラジド化合物を含有させる技術が提案されている(特許文献1、2)。また、ポリアセタールコポリマー樹脂に、エチレン-メタクリル酸共重合体を含有させる技術が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2002-541288号公報
【文献】特開2013-010870号公報
【文献】特開2015-101599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車業界において新たに設けられた規格も含め広範囲な目標を満足するポリアセタール樹脂が要求されているが、上記の技術では満足するものはいまだ存在していなかった。
本発明の目的は、高温、長時間滞留等の厳しい成形条件下で成形された成形品においてもホルムアルデヒドの発生の少ないポリアセタール樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記によって達成された。
1.少なくとも、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部
(B)炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸0.001~10質量部、
(C)下記式(1)で表される炭素数が3以上のアミン化合物0.01~10質量部、
とを含有するポリアセタール樹脂組成物。
【化1】
ここで、R1,R2,R3は、水素原子、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基または炭素数1~9の炭化水素基を表し、R1,R2,R3の少なくとも1つが炭素数1~4のヒドロキシアルキル基である。
2.さらに、(D)脂肪酸カルシウム塩0.01~0.3質量部を含有する前記1記載のポリアセタール樹脂組成物。
3.前記(B)脂肪族カルボン酸が、アジピン酸およびドデカン二酸から選択される少なくとも1種である前記1又は2記載のポリアセタール樹脂組成物。
4.前記(C)が、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-プロパンジオール、および、2-アミノ-2-メチル-プロパノールから選択される少なくとも1種である前記1~3記載のポリアセタール樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温、長時間滞留等の厳しい成形条件下で成形された成形品においてもホルムアルデヒドの発生の少ないポリアセタール樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。本発明には、前記ポリアセタール樹脂組成物で構成されたポリアセタール樹脂成形品も含まれる。
【0010】
<ポリアセタール樹脂組成物>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、
(A)ポリアセタール樹脂100質量部
(B)炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸0.001~10質量部、
(C)下記式(1)で表される炭素数が3以上のアミン化合物0.01~10質量部、
とを含有することを特徴とする。
【化2】
ここで、R1,R2,R3は、水素原子、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基または炭素数1~9の炭化水素基を表し、R1,R2,R3の少なくとも1つが炭素数1~4のヒドロキシアルキル基である。
【0011】
<(A)ポリアセタール樹脂>
本発明のポリアセタール樹脂とは、オキシメチレン基(-OCH2-)を主たる構成単位とする高分子化合物であり、ポリアセタールホモポリマー(例えば、米国デュポン社製,商品名「デルリン」、旭化成(株)製、商品名「テナック4010」など)、オキシメチレン基以外に他のコモノマー単位を含有するポリアセタールコポリマー(例えば、ポリプラスチックス(株)製,商品名「ジュラコン」など)が含まれる。
【0012】
コポリマーにおいて、コモノマー単位には、炭素数2~6程度(好ましくは炭素数2~4程度)のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(-OCH2CH2-)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)が含まれる。
【0013】
コモノマー単位の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂全体に対して、0.01~20モル%、好ましくは0.03~10モル%(例えば、0.05~5モル%)、さらに好ましくは0.1~5モル%程度の範囲から選択できる。
【0014】
ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどであってもよい。ポリアセタールコポリマーは、ランダムコポリマーの他、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーなどであってもよい。
【0015】
また、ポリアセタール樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸又はそれらの無水物とのエステル化などにより安定化してもよい。ポリアセタールの重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく、溶融成形可能であればよい。
【0016】
前記ポリアセタール樹脂は、例えば、ホルムアルデヒドの単独重合、トリオキサンと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3-ジオキソラン、ジエチレングリコールホルマール、1,4-ブタンジオールホルマールなどの環状エーテルや環状ホルマールを共重合することにより製造できる。
【0017】
<(B)炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸>
本発明の炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸(以下、本発明のカルボン酸と略すこともある)であり、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族カルボン酸は、脂肪族トリカルボン酸のモノエステル、脂肪族テトラカルボン酸のモノエステル、脂肪族テトラカルボン酸のジエステルであってもよい。また、脂肪族カルボン酸は、飽和カルボン酸であってもよいし、不飽和カルボン酸であってもよい。
【0018】
炭素数が4以上である脂肪族飽和ジカルボン酸の具体例として、ブタン二酸(コハク酸,炭素数が4である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ペンタン二酸(グルタル酸,炭素数が5である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸,炭素数が6である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ヘプタン二酸(ピメリン酸,炭素数が7である脂肪族飽和ジカルボン酸)、オクタン二酸(スベリン酸,炭素数が8である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ノナン二酸(アゼライン酸,炭素数が9である脂肪族飽和ジカルボン酸)、デカン二酸(セバシン酸,炭素数が10である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ウンデカン二酸(炭素数が11である脂肪族飽和ジカルボン酸)、ドデカン二酸(炭素数が12である脂肪族飽和ジカルボン酸)が挙げられる。
【0019】
また、炭素数が4以上である脂肪族不飽和ジカルボン酸の具体例として、ブテン二酸(フマル酸,炭素数が4である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、ペンテン二酸(グルタコン酸,炭素数が5である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、ヘキセン二酸(ジヒドロムコン酸,炭素数が6である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、オクテン二酸(炭素数が8である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、デセン二酸(炭素数が10である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、ウンデセン二酸(炭素数が11である脂肪族不飽和ジカルボン酸)、ドデセン二酸(炭素数が12である脂肪族不飽和ジカルボン酸)等が挙げられる。
【0020】
炭素数が4以上である脂肪族トリカルボン酸の具体例として、2-ヒドロキシプロパン-1,2,3-トリカルボン酸(クエン酸)等が挙げられる。炭素数が4以上である脂肪族テトラカルボン酸の具体例として、エチレンテトラカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
本発明の炭素数が4以上であって分子内にカルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.001~10質量部、好ましくは0.005~1質量部、特に0.01~0.5質量部が好ましい。
【0022】
<(C)下記式(1)で表されるアミン化合物 >
本発明の炭素数が3以上のアミン化合物(以下、本発明のアミン化合物(C)ということもある)は、下記式(1)で表される化合物である。
【化3】
ここで、R1,R2,R3は、水素原子、炭素数1~4のヒドロキシアルキル基または炭素数1~9の炭化水素基を表し、R1,R2,R3の少なくとも1つが炭素数1~4のヒドロキシアルキル基である。
【0023】
具体例には、これらに限定はされないが、例えば、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-プロパンジオール、および2-アミノ-2-メチル-プロパノールが挙げられ、特にトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが好ましい。
【0024】
本発明のアミン化合物(C)は、ポリアセタール樹脂100質量部に対し0.01~10質量部、好ましくは0.02~5質量部、そして最も好ましくは0.05~2質量部含有させる。
【0025】
<(D)脂肪酸カルシウム塩>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、アルカリ成分として、(D)脂肪酸カルシウム塩を含有してもよい。
【0026】
脂肪酸カルシウム塩の原料脂肪酸は、飽和脂肪酸であってもよいし、不飽和脂肪酸であってもよいし、水酸基で置換されている脂肪酸(ヒドロキシカルボン酸)であってもよい。また、原料脂肪酸は、ジカルボン酸であっても、オキソカルボン酸であっても、カルボン酸誘導体であってもよい。
【0027】
飽和脂肪酸として、エタン酸(酢酸、炭素数:2)、プロパン酸(プロピオン酸、炭素数:3)、ブタン酸(酪酸、炭素数:4)、ペンタン酸(吉草酸、炭素数:5)、ヘキサン酸(カプロン酸、炭素数:6)、ヘプタン酸(エナント酸、炭素数:7)、オクタン酸(カプリル酸、炭素数:8)、ノナン酸(ペラルゴン酸、炭素数:9)、デカン酸(カプリン酸、炭素数:10)、ドデカン酸(ラウリン酸、炭素数:12)、テトラデカン酸(ミリスチン酸、炭素数:14)、ヘキサデカン酸(パルミチン酸、炭素数:16)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸、炭素数:17)、オクタデカン酸(ステアリン酸、炭素数:18)、エイコサン酸(アラキジン酸、炭素数:20)、ドコサン酸(ベヘン酸、炭素数:22)、オクタコ酸(モンタン酸、炭素数:28)等が挙げられる。
【0028】
不飽和脂肪酸として、ソルビン酸(炭素数:6)、オレイン酸(炭素数:18)、リノール酸(炭素数:18)、リノレン酸(炭素数:18)、アラキドン酸(炭素数:20)、エイコサペンタエン酸(炭素数:20)、ドコサヘキサエン酸(炭素数:22)等が挙げられる。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸として、エタン二酸(シュウ酸、炭素数:2)、プロパン二酸(マロン酸、炭素数:3)、ブタン二酸(コハク酸、炭素数:4)、ペンタン二酸(グルタル酸、炭素数:5)、ヘキサン二酸(アジピン酸、炭素数:6)、ヘプタン二酸(ピメリン酸、炭素数:7)、オクタン二酸(スベリン酸、炭素数:8)、ノナン二酸(アゼライン酸、炭素数:9)、デカン二酸(セバシン酸、炭素数:10)、ウンデカン二酸(炭素数:11)、ドデカン二酸(炭素数:12)等が挙げられる。
【0030】
脂肪族オキソカルボン酸として、2-オキソプロパン酸(ピルビン酸、炭素数:3)、ヒドロキシカルボン酸として、リンゴ酸(炭素数:4)、クエン酸(炭素数:6)、リシノレイン酸(炭素数:18)、12-ヒドロキシステアリン酸(炭素数:18)等が、脂肪族トリカルボン酸誘導体として、アコニット酸(炭素数:6)等が挙げられる。
【0031】
発明においては、2種以上の脂肪酸カルシウム塩を同時に添加してもよく、何等制限するものではない。例えば、ステアリン酸カルシウムとパルミチン酸カルシウムを同時に添加しても良く、また異なる炭素数の脂肪酸からなる金属塩、例えば(パルミチン酸-ステアリン酸)カルシウムとが混在していても良い。
【0032】
発明において、(D)成分の配合量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.005~0.3質量部であり、0.01~0.2質量部が好ましい。
【0033】
<(D)成分の(B)成分に対するモル比>
本発明において(D)脂肪酸カルシウム塩を使用する場合、(D)脂肪酸カルシウム塩の(B)脂肪族カルボン酸に対するモル比である(D)脂肪酸カルシウム塩のモル含量/(B)脂肪族カルボン酸のモル含量は、0.1以上5以下であることが好ましく、0.3以上4以下であることがより好ましい。
【0034】
モル比をこの範囲とすることによって、樹脂組成物の成形品からのホルムアルデヒド発生を抑制しつつ、十分な耐熱安定性を得ることができる。
【0035】
<その他の添加剤>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、さらに、酸化防止剤を含んでもよい。
【0036】
酸化防止剤には、公知の酸化防止剤を使用することができ、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノール類など)、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0037】
これらの酸化防止剤は単独で又は二種以上使用できる。酸化防止剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部、好ましくは0.05~2.5質量部、特に0.1~1質量部程度の範囲から選択できる。
【0038】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、さらに、公知の以下の安定剤を含んでもよい。
安定剤としては、特に加工安定剤や耐候(光)安定剤などが挙げられる。加工安定剤としては、公知のポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド及び脂肪酸金属塩などから選択された少なくとも一種が使用できる。前記加工安定剤は、一種又は二種以上組合せて使用できる。
【0039】
加工安定剤の割合は、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部、好ましくは0.03~5質量部(例えば、0.05~3質量部)程度、特に0.05~2質量部程度含有させることができる。
【0040】
耐候(光)安定剤としては、(a)ベンゾトリアゾール系化合物、(b)ベンゾフェノン系化合物、(c)芳香族ベンゾエート系化合物、(d)シアノアクリレート系化合物、(e)シュウ酸アニリド系化合物、(f)ヒンダードアミン系化合物などが例示できる。
【0041】
耐候(光)安定剤は、単独で用いてもよいが、1種又は2種以上を組み合わせて使用するのが好ましく、(a)ベンゾトリアゾール系化合物、(b)ベンゾフェノン系化合物、(c)芳香族ベンゾエート系化合物、(d)シアノアクリレート系化合物、及び/又は(e)シュウ酸アニリド系化合物の耐候(光)安定剤と、(f)ヒンダードアミン系化合物との併用が好ましい。
耐候(光)安定剤の添加量は、例えば、ポリアセタール樹脂100質量部に対して0.01~5質量部(例えば、0.01~3質量部)、好ましくは0.01~2質量部、さらに好ましくは0.1~2質量部(例えば、0.1~1.5質量部)程度である。
【0042】
本発明のポリアセタール樹脂組成物に、さらに着色剤を混合することも可能である。着色剤としては、各種染料または顔料が使用できる。染料はソルベント染料が好ましく、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、又はナフトキノン系染料などが挙げられる。顔料については、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用でき、単独で用いてもよく、また複数の着色剤を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
着色剤の含有量は、例えば、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0~5質量部(例えば、0.01~5質量部)、好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.3~3質量部程度である。
【0044】
本発明のポリアセタール樹脂組成物には、必要に応じてその他、離型剤、核剤、帯電防止剤、難燃剤、界面活性剤、各種ポリマー、充填剤などを1種又は2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0045】
<ポリアセタール樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、粉粒状混合物や溶融混合物であってもよく、ポリアセタール樹脂と、本発明のカルボン酸および本発明のアミン化合物と、必要により他の添加剤とを慣用の方法で混合することにより調製できる。例えば、各成分を混合して、一軸又は二軸の押出機により混練して押出してペレットを調製した後、成形する方法、一旦組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製し、そのペレットを所定量混合(希釈)して成形に供し、所定の組成の成形品を得る方法、ポリアセタール樹脂のペレットに抑制剤を散布などにより付着させた後、成形し、所定の組成の成形品を得る方法などが採用できる。
【0046】
また、成形品に用いられる組成物の調製において、基体であるポリアセタール樹脂の粉粒体(例えば、ポリアセタール樹脂の一部又は全部を粉砕した粉粒体)と他の成分(脂肪族カルボン酸、アミン化合物、脂肪酸カルシウム塩、脂肪族カルボン酸とアミン化合物とのマスターバッチなど)を混合して溶融混練すると、添加物の分散を向上させるのに有利である。
【0047】
本発明の組成物から得られる成形品は、自動車分野での使用に最も適しているが、その他電気・電子分野の機構部品(能動部品や受動部品など)、建材・配管分野、日用品(生活)・化粧品分野、及び医用分野(医療・治療分野)の部品・部材として好適に使用される。
【0048】
より具体的には、自動車分野の機構部品としては、インナーハンドル、フェーエルトランクオープナー、シートベルトバックル、アシストラップ、各種スイッチ、ノブ、レバー、クリップなどの内装部品、メーターやコネクターなどの電気系統部品、オーディオ機器やカーナビゲーション機器などの車載電気・電子部品、ウインドウレギュレーターのキャリアープレートに代表される金属と接触する部品、ドアロックアクチェーター部品、ミラー部品、ワイパーモーターシステム部品、燃料系統の部品などが例示できる。
【実施例】
【0049】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0050】
なお、実施例及び比較例において、成形品からのホルムアルデヒドの発生量について、以下のようにして評価した。
【0051】
[成形品からのホルムアルデヒド発生量]
実施例及び比較例で調製したポリアセタール樹脂組成物を用い、下記条件で平板状試験片(100mm×40mm×2mm)を成形した。この平板状試験片を23℃、50%RHの雰囲気下で放置した後、平板状試験片2枚を10Lのフッ化ビニル製サンプリングバッグに封入し脱気して、4Lの窒素を入れ、65℃で2時間加熱した後、サンプリングバッグ内の窒素を0.5ml/minで3L抜き取り、発生したホルムアルデヒドをDNPH(2,4-ジニトロフェニルヒドラジン)捕集管(Waters社製 Sep-Pak DNPH-Silica)に吸着させた。その後、DNPH捕集管からDNPHとホルムアルデヒドとの反応物をアセトニトリルで溶媒抽出し、高速液体クロマトグラフでDNPHとホルムアルデヒドとの反応物の標準物質を用いた検量線法により、発生したホルムアルデヒド量を求め、試験片単位重量あたりのホルムアルデヒド発生量(μg/g)を算出した。
【0052】
* 成形機 :FANUC ROBOSHOT α―S100ia
* 成形条件:シリンダー温度(℃)ノズル -C1-C2-C3
220 220 220 220
射出圧力 60(MPa)
射出速度 1.0(m/min)
成形機内滞留時間 30分
金型温度 80(℃)
【0053】
実施例及び比較例としてポリアセタール樹脂100質量部に、表1、表2に示す材料、割合で混合した後、二軸押出機により溶融混合し、ペレット状の組成物を調製した。なお、すべての試料には、酸化防止剤としてペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]0.35質量部を添加した。
このペレット状の組成物から、射出成形機により試験片を成形し、この試験片からのホルムアルデヒド発生量を測定した。評価を表3に示す。なお、表1、表2における数値の単位は、質量部である。
【0054】
実施例および比較例で使用したポリアセタール樹脂等の材料は、以下の通りである。
1.(A)ポリアセタール樹脂
(A-1):トリオキサン96.7質量%と1,3-ジオキソラン3.3質量%とを共重合させてなるポリアセタール共重合体(メルトインデックス(190℃,荷重2160gで測定):9g/10min)
【0055】
2.(B)脂肪族カルボン酸
(B-1):アジピン酸
(B-2):ドデカン二酸
【0056】
3.(C)アミン化合物
(C-1):トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(THAM)
(C-2):2-アミノ-2-メチル-プロパノール(AMP)
(C-3):メラミン
(C-4):ベンゾグアナミン
【0057】
4.(D)脂肪酸カルシウム塩
(D-1):ステアリン酸カルシウム
(D-2):パルミチン酸カルシウム
(D-3):12-ヒドロキシステアリン酸カルシウム
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
表3,4より明らかなように、比較例に比べて、実施例の樹脂組成物は、高温、長時間滞留という厳しい成形条件下で成形された成形品からのホルムアルデヒドの発生量が極めて小さいため、成形品の品質を向上できる。