IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日清製粉グループ本社の特許一覧

<>
  • 特許-冷凍食品及びその製造方法 図1
  • 特許-冷凍食品及びその製造方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】冷凍食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240626BHJP
   A23L 3/36 20060101ALI20240626BHJP
   A23L 3/365 20060101ALI20240626BHJP
   A23L 7/10 20160101ALI20240626BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20240626BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240626BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240626BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240626BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240626BHJP
【FI】
A23L15/00 Z
A23L3/36 Z
A23L3/365 A
A23L7/10 E
A23L7/109 C
A23L29/231
A23L29/256
A23L29/281
A23L35/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020179009
(22)【出願日】2020-10-26
(65)【公開番号】P2022070009
(43)【公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 一晃
(72)【発明者】
【氏名】仲西 由美子
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 純子
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-050845(JP,A)
【文献】特開2008-188007(JP,A)
【文献】特開2009-132450(JP,A)
【文献】特開昭63-109748(JP,A)
【文献】特開昭60-234559(JP,A)
【文献】特開2012-105641(JP,A)
【文献】特開2009-000051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
B65D 81/32 - 81/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米飯及び/又は麺類の上に、未加熱状態の卵を含む食材が配置されており、
冷凍後に測定した10℃における粘度が462mPa・s以上であるゲル状物(卵含有量が30質量%以上であるものを除く)が、前記未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆っている、冷凍食品であって、前記食材が、未加熱状態の全卵を40質量%以上含む、冷凍食品
【請求項2】
米飯の上に、未加熱状態の卵を含む食材が配置されており、当該米飯が、調理済み米飯である、請求項1に記載の冷凍食品。
【請求項3】
前記ゲル状物が、ゼラチン、ペクチン及び寒天から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の冷凍食品。
【請求項4】
米飯及び/又は麺類の上に、未加熱状態の卵を含む食材を配置する工程と、
前記米飯及び/又は麺類の上に配置された前記食材の上に、冷凍後に測定した10℃における粘度が462mPa・s以上であるゲル状物(卵含有量が30質量%以上であるものを除く)を、該ゲル状物が当該未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆うように配置する工程と、
前記食材と該食材を覆う前記ゲル状物とを、前記米飯及び/又は麺類ごと冷凍する工程と、を有する、冷凍食品の製造方法であって、前記食材が、未加熱状態の全卵を40質量%以上含む、冷凍食品の製造方法。
【請求項5】
米飯の上に、未加熱状態の卵を含む食材を配置する工程を有し、前記米飯は、炊飯米と該炊飯米100質量部に対して50質量部以上100質量部以下の調味液とを混合することにより得られる、請求項4に記載の冷凍食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍食品及びその製造方法に関する。
【0002】
従来、冷凍食品に、麺類や米飯等の主食材と組み合わせるソースの流動性を調整することが種々の目的で行われている。特許文献1には、調理した麺類、パスタ、米等の主食材と、ソース、スープ等の調味液にゼラチンを添加してゲル状にしたゼラチン添加調味液とを混合してパッケージに収容し、冷凍した冷凍食品が記載されている。同文献には、ゼラチンを添加することで調味液により麺類がふやけずに電子レンジ加熱したときには液状のソースとなる旨が記載されている。特許文献2では、米飯及び/又は麺類の上に肉及び/又は野菜を配置し、肉及び/又は野菜からの電子レンジ加熱中の水分過蒸発を防止するために、変性澱粉、ガム等を含む25℃における粘度が5~75mPa・sであるソースで肉及び/又は野菜を実質的に覆っている冷凍食品が記載されている。特許文献3には、凍結させてなる第一成分を含む第一層と凍結させてなる第二成分を含む第二層とが第二層を下にして配置された前記冷凍調味液塊であって、60℃における流動性が、第二成分よりも第一成分の方が低い冷凍食品が記載されている。同文献には、当該構成により、解凍ムラを防止し出来上がりの見栄えを良好になると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-037434号公報
【文献】特開2005-171号公報
【文献】特開2006-061113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、冷凍食品はその手軽さから広く普及しており、その種類も広がっている。例えば雑炊など、米飯や麺類等の主食材に溶き卵を上掛けして加熱するタイプの食品について、冷凍食品化の動きが進んでいる。このようなタイプの冷凍食品について卵のふんわり感を得ようとすると、卵を未加熱の溶き卵の状態で冷凍し、電子レンジ加熱の際に加熱して固化する必要が出てくる。しかしながらそのような冷凍食品において、卵を適度な固形感を有するよう固まらせ、且つ主食材の食感が良好なものは得られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は鋭意検討したところ、米飯等の主食材の上に未加熱状態の卵を配置し、その上を特定粘度のゲル状物により直接接する状態で覆った冷凍食品とすることで、電子レンジ加熱した際に未加熱状態の卵を適度な固形感を有する状態(形状)に固化できるとともに主食材の食感も良好にできることを知見した。
【0006】
本発明は上記知見に基づくものであり、米飯及び/又は麺類の上に、未加熱状態の卵を含む食材が配置されており、
10℃における粘度が130mPa・s以上であるゲル状物が、前記未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆っている、冷凍食品を提供するものである。
【0007】
また本発明は、米飯及び/又は麺類の上に、未加熱状態の卵を含む食材を配置する工程と、
前記米飯及び/又は麺類の上に配置された前記食材の上に、10℃における粘度が130mPa・s以上であるゲル状物を、該ゲル状物が当該未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆うように配置する工程と、
前記食材と該食材を覆う前記ゲル状物とを、前記米飯及び/又は麺類ごと凍結する工程と、を有する、冷凍食品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、米飯等の主食材の上に未加熱状態の卵を配置した冷凍食品について、電子レンジ加熱によって、適度な固形感を有する形状、好ましくは直火に掛けた鍋の中で溶き卵を加熱したときのような固形感を有する形状に卵を固化させることができるとともに、主食材の食感を良好なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例で得られた冷凍食品の加熱前の状態を示す写真である。
図2】実施例で得られた冷凍食品の加熱後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本実施形態の冷凍食品において、米飯は、既に炊飯された米飯を指す。また麺類は既に茹で又は蒸しなどのα化がなされた麺類(以下「加熱済み麺」ともいう。)を指す。米飯は米のみからなるものであってもよく、雑穀や麦など別の穀類を有していてもよい。米飯が米以外の別の穀類を有している場合、米以外の穀類の割合は、米飯を構成する穀類全体に対して50質量%以下であることが好ましい。麺類としては、パスタ、うどん、そば、そうめん、ラーメンなどの中華麺、ビーフン、フォー等が挙げられる。以下、米飯及び/又は麺類は「主食材」とも記載する。
【0011】
前記の米飯及び/又は麺類である主食材は、調理済みであることが冷凍食品の食味向上のために好ましい。ここでいう調理済みとは調味済みであることを意味する。例えば調味は炊飯米又は加熱済み麺と調味液とを混合することであってもよい。前記の調味とは必ずしも加熱を伴う必要はないが、炊飯米又は加熱済み麺と調味液とを混合する際に適宜加熱を行ってもよい。なお、調味液としては、冷凍食品の種類に対応したものがそれぞれ使用できる。調味液中の水の割合は例えば30質量%以上99.9質量%以下が挙げられ、食味等の点から、より好ましくは、50質量%以上99.5質量%以下である。主食材が炊飯米又は加熱済み麺と調味液との混合物である場合、当該混合物における炊飯米又は加熱済み麺と調味液との好ましい配合比率としては後述する割合が挙げられる。
【0012】
未加熱状態の卵としては、少なくとも卵黄を含むものであり、具体的には全卵、卵黄等が挙げられ、使用しやすさの点から全卵が好ましい。全卵は、卵の黄身と白身が混ざった状態であることが電子レンジの際に適度な固形感を有する形状が得やすい点や色などの外観の点で好ましい。未加熱状態の卵を含む食材において、卵以外の成分としては、糖類、加工デンプン類、水、醤油や塩等の調味料が挙げられる。未加熱状態の卵を含む食材における卵の割合としては、電子レンジの際に適度な固形感を有する形状が得やすい点や色などの外観の点から、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましく、100質量%であってもよい。未加熱状態の卵を含む食材は、プラスチック製シートなどを介さずに炊飯米又は加熱済み麺と卵とが直接接触するように配置されていることが、冷凍食品の喫食者が当該シートを除去する手間が省ける点や、ゲル状物を用いることにより主食材の食感を良好とする効果に優れる点等から好ましい。
【0013】
未加熱状態の卵を含む食材の量は、例えば主食材100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下であることが、卵の固形形状の視認容易性や卵が多すぎることによる主食材の食感の低下を防止する点で好適であり、より好ましくは、5質量部以上20質量部以下である。ここで主食材の量は炊飯米及び/又は加熱済み麺と調味液との混合物である場合、分母となる主食材の量は調味液を含む前記の混合物の量とする。
【0014】
冷凍食品では、ゲル状物が、未加熱状態の卵を含む食材と直接接した状態で未加熱状態の卵を含む食材を覆っている。ゲル状物は10℃の粘度が130mPa・s以上であるものであり、この粘度を有することで、冷凍状態において、未加熱状態の卵とゲル状物との混合が抑制された状態で未加熱状態の卵がゲル状物に覆われた状態となる。これにより電子レンジ加熱時に未加熱状態の卵を適度な固形感を有する形状、好ましくは直火の鍋で溶き卵を加熱したときと同様又は近似した固形感を有する形状にて固形化することができる。また、ゲル状物が特定の粘度以上であることで、主食材の食感も良好なものとなる。ゲル状物それ自体は、通常電子レンジ加熱により溶解するため、喫食時にはほとんど視認されないものとなる。
【0015】
更に一層ゲル状物による卵の固形化を容易する点、及び主食材の食感を向上させる点から、ゲル状物の10℃の粘度は、130mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上であることがより好ましい。またゲル状物の10℃の粘度は、電子レンジ加熱で容易に溶解して卵の食感への影響が抑制される点やゲル状物の充填しやすさの点から40000mPa・s以下であることが好ましく、ゲル状物の充填しやすさの点から5000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0016】
冷凍食品におけるゲル状物の粘度は、ゲル状物200gを縦180mm×横140mmのパウチ(延伸ナイロン製)へ封入、-18℃で2日間凍結させた後、10℃の水槽に1時間以上入れ解凍させたものを測定し、B型粘度計で測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
【0017】
ゲル状物におけるゲル化剤は、ゼラチン、ペクチン、寒天、カラギーナン、キサンタンガム等の増粘多糖類等が挙げられ、ゼラチン、ペクチン及び寒天から選ばれる少なくとも一種であることが、雑炊の外観および食感の点で好ましい。ゲル状物におけるゲル化剤の粘度は、例えば0.1質量%以上20質量%以下である場合、所定粘度のゲル状物の得やすさや食味の点から好ましく、0.3質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。なお、ペクチンを用いる場合は、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム等のカルシウム塩をゲル状物中、0.01質量%以上1質量%以下程度の量で含有させてもよい。本発明の冷凍食品において、未加熱状態の卵を覆うゲル状物の上に具材等を配置する場合、ゲル状物の少なくとも一部が露出されるように具材等を配置することが、本発明による視覚的な固形感が良好である効果が得やすい点で好ましい。例えば冷凍食品の平面視において、ゲル状物の表面の面積、例えばゲル状物を平面視したときのゲル状物の全投影面積(上方から見た投影面積)における具材等で被覆された部分の投影面積(同上)が70%以下、特に50%以下であると、加熱時に卵の形状が見えやすくなる。
【0018】
ゲル状物は、それ自体が調味されていても、されていなくてもよいが、調味されていることが冷凍食品全体の風味のバランスを良好なものとすることができる点で好ましい。この観点から、好ましくはゲル状物の塩分濃度としては、0.2質量%以上4.0質量%以下が好ましく、0.5質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。また冷凍食品はゲル状物と混合して、又はゲル状物上に肉や野菜などの具材を有していてもよい。
【0019】
冷凍食品の食味の等の点から、ゲル状物は、水を80質量%以上含むことが好ましく、
90質量%以上含むことがより好ましく、95質量%以上含むことが更に好ましい。
【0020】
ゲル状物は、未加熱状態の卵と直接接する状態で、未加熱状態の卵を含む食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆っている。ゲル状物は前記食材の全体を覆っていてもよく、一部のみを覆っていてもよい。ゲル状物の形態は膜状等に成形されていてもよく、一度固まったゲルが複数に破砕された状態であってもよく、ゲルがある程度流動性を有する状態で前記食材の上に流し込まれた不定形の状態であってもよい。冷凍食品はその平面視において、主食材上における前記食材が存在する面積(上方からみた投影面積)のうち、ゲル状物により被覆された部分の面積(同上)が30%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。
【0021】
ゲル状物の量は、未加熱状態の卵を含む食材100質量部に対し、100質量部以上2000質量部以下であることが、卵の固形しやすさや全体の食味、食感の点で好適であり、より好ましくは、200質量部以上1000質量部以下である。
【0022】
冷凍食品は通常容器に収容されている。容器としては、容器本体及び蓋体とを有するものであり、電子レンジ加熱に耐え得る耐熱性、冷凍保管に耐え得る耐寒性、耐水性等が求められことから、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)、延伸ナイロン(ONY)等のポリアミド(PA)等のプラスチック、各種紙材、あるいはそれらのラミネート材等のマイクロ波透過可能な材料が用いられる。
【0023】
以上の冷凍食品は電子レンジ加熱をすることで未加熱状態の卵が特定粘度以上のゲル状物に覆われていることで容易に固形化する。またゲル状物は加熱により溶解する。これにより、溶き卵を直火の鍋で加熱して得られるような適度に卵が固形化した食品が得られる。このような冷凍食品として好適なものとしては、雑炊、おじや、かゆ、リゾット風米飯等のスープに浸った米飯類が挙げられる。
【0024】
冷凍食品は、冷凍状態から電子レンジ加熱する場合、電子レンジ加熱の時間は例えば1人分の食品の場合、500Wであれば1分~9分、600Wであれば1分~8分が挙げられる。
【0025】
続いて、冷凍食品の製造方法を説明する。上記の冷凍食品の説明で述べた事項は下記の冷凍食品の製造方法の説明に適宜使用できる。また下記の冷凍食品の製造方法の説明は、上記の冷凍食品の説明に適宜使用できる。
冷凍食品の製造方法としては、米飯及び/又は麺類の上に、未加熱状態の卵を含む食材を配置する工程(以下、「第1工程」ともいう。)と、
前記米飯及び/又は麺類の上に配置された前記食材の上に、10℃における粘度が130mPa・s以上であるゲル状物を、該ゲル状物が未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における前記米飯及び/又は麺類に面する側の反対側を覆うように配置する工程(以下、「第2工程」ともいう。)と、
前記食材と該食材を覆う前記ゲル状物とを、前記米飯及び/又は麺類ごと凍結する工程(以下、「第3工程」ともいう。)と、を有する。
【0026】
第1工程に用いる米飯及び/又は麺類としては、上述したものを用いることができる。また調理済みの米飯及び/又は麺類として、炊飯米及び/又は加熱済み麺と調味液とを混合したものを用いる場合、炊飯米及び/又は加熱済み麺と調味液との混合比率としては、炊飯米及び/又は加熱済み麺100質量部に対し、調味液が50質量部以上であることが主食材の食感の点で好ましく、100質量部以下であることが卵を含む食材が配置された場合の卵の保形性が高い点や、レンジ加熱での固形化しやすさの点で好ましい。この観点から主食材100質量部に対し、調味液は50質量部以上120質量部以下であることが好ましく、60質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。なお炊飯米及び/又は加熱済み麺と混合させる調味液中の水の割合としては上述した好ましい範囲が挙げられる。
【0027】
第1工程に用いる未加熱状態の卵を含む食材としては上述したものが使用できる。卵の黄身と白身が混ざった好ましい状態を得るためには、通常の溶き卵を得る際のほぐしを行えばよい。また未加熱状態の卵を含む食材における未加熱状態の卵の好ましい使用割合としては、上述した未加熱状態の卵を含む食材における未加熱状態の卵の好ましい割合として上述した割合が挙げられる。また、主食材に対する未加熱状態の卵を含む食材の好ましい使用量としても、上述した主食材に対する未加熱状態の卵を含む食材の好ましい量と同様の量が挙げられる。米飯及び/又は麺類の上に配置する未加熱状態の卵を含む食材は、液状又は流動状であることが、作業性等の点で好ましい。ここでいう「流動状」とは、内径5cmで軸方向の一端が開口端である円筒状の容器内に、品温5℃の評価対象物(食材)を40g入れた後、該容器の軸方向を水平方向と一致させ、その状態から該容器の軸方向を水平方向に対して40°傾けたときに、傾けてから2秒以内に該容器の開口端から評価対象物が流れだすのを目視で視認できることを指す。
【0028】
第2工程において、ゲル状物としては、例えば鍋などにゲル化剤と水を入れて加熱し、ゲル化剤を溶解させて冷やし固めたものを好ましく使用できる。ゲル化剤としては上述したものを挙げることができる。またゲル化剤の使用量としては、上述した好ましいゲル化剤の量と同様の量を使用できる。ゲル状物には更に調味料などを含有させてもよく、食塩量は上述した好ましい塩分量となるように使用できる。
【0029】
本製造方法では前記米飯及び/又は麺類の上に配置された未加熱状態の卵を含む食材の上に、10℃における粘度が130mPa・s以上であるゲル状物を配置して、該ゲル状物が未加熱状態の卵と直接接触する状態で当該食材における米飯及び/又は麺類の反対側に面する側を覆うようにする。ゲル状物を10℃の粘度を130mPa・s以上とすることで、未加熱状態の卵を含む食材における卵を固形化させるとともに主食材の食感を良好なものとすることができる。ゲル状物による効果を一層高める点から、ゲル状物の10℃の粘度は、130mPa・s以上であることが好ましく、200mPa・s以上であることがより好ましい。
またゲル状物の10℃の粘度は、電子レンジ加熱で容易に溶解して卵の食感への影響が抑制される点やゲル状物の充填しやすさの点から40000mPa・s以下であることが好ましく、ゲル状物の充填しやすさの点から5000mPa・s以下であることがより好ましい。
本発明の製造方法におけるゲル状物の粘度は冷凍後に測定する粘度であって、B型粘度計で測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法にて測定できる。
【0030】
なお、ゲル状物を、未加熱状態の卵を含む食材上に配置する際には、ゲル状物、未加熱状態の卵を含む食材及び米飯及び/又は麺類(主食材)の温度は、0℃超であって、ゲル状物がゲル化状態を維持できる温度であることが好ましい。
【0031】
第3工程では、第2工程で得られた前記食材と該食材を覆う前記ゲル状物とを、前記米飯及び/又は麺類ごと冷凍する。冷凍温度としては通常-15~-50℃が挙げられる。
【実施例
【0032】
(実施例1~15、比較例1~4)
1:調理済み米飯の調製
歩留まり230質量%にて米を炊飯し、炊飯米を得た。15℃で20分、炊飯米を冷却した後に、当該炊飯米を、当該炊飯米100質量部に対し70質量部の雑炊用の調味液と混合し、5℃で30分静置した。雑炊用の調味液は食塩0.5質量%、その他調味料0.5質量%、残部が水からなる溶液であった。静置後の混合物は再度軽く混ぜた。
2:ゲル状物の調製
水に、食塩を2質量%濃度となるように加え、更にゼラチン、ペクチン(LMペクチン)又はキサンタンガムを下記表1~表3に記載の濃度となるように加えて、撹拌混合しながら加熱した。食塩及びゲル化剤の濃度の基準は、これらを水に溶解させたゲル状物を得るための溶液である。なおペクチンを添加した場合には塩化カルシウムを前記溶液中0.2質量%濃度となるように加えた。溶液の重量を調整し、加熱で減った分だけ水を加えて再度混合し、0℃超5℃以下に冷却した。また、得られたゲル状物について、下記の方法で粘度を測定した。結果を表1~表3に示す。得られたゲル状物について、ゲル状物200gを縦180mm×横140mmのパウチ(ONY製)へ封入、-18℃で2日間凍結させた後、10℃の水槽に1時間以上入れ解凍させたものをB型粘度計で後述の実施例に記載の方法にて測定した粘度を併せて示す。
3:盛り付け
平面視長方形、側面台形の容器(開口部の縦10cm、横15cm、底面縦9cm、横13cm、高さ3.75cm、材質PP、PE)を用意した。上記1で調製した炊飯米と調味液との混合物140g(5℃)を容器に入れた。米飯の上にほぐした全卵10g(10℃)を回しかけ、次いで全卵の上に上記2で冷却していたゲル状物70gを掛けて、全卵をゲル状物で覆った。平面視したときに全卵が視認される面積のうち、ゲル状物が被覆する面積は100%であった。容器に蓋(材質:ONY、PE)をして、-40℃で冷凍し冷凍の雑炊を得た。
【0033】
(粘度の測定)
粘度測定は、B型粘度計(東機産業社製TV-25型)を用いて、10℃に設定した水槽で行った。サンプル20mLを投入し10℃で15分間保持した。ローターR14(HH2)で回転(50rpm)させ回転開始60秒後に値を読み取った。
【0034】
各実施例及び比較例で得られた冷凍食品について、冷凍状態にて目視でゲルの下に位置する卵の形状を評価した。結果を表1~表3に示す。
また各実施例及び比較例で得られた冷凍食品について、蓋をした状態で食品1つにつき600Wで4分30秒間電子レンジ加熱したときの、目視による固形感、及び米飯の食感を以下のように評価した。結果を表1~表3に示す。
また実施例3で得られた冷凍状態の雑炊の写真を図1に示し、当該雑炊を電子レンジ加熱した写真を図2に示す。
【0035】
<評価>
卵の形状:
5:卵とゲル状物が全く一体化していない。
4:卵とゲル状物がほとんど一体化していない。
3:卵とゲル状物がやや一体化しているが、卵とゲル状物が混合していない部分を多く含むため問題ない範囲である。
2:卵とゲル状物がほとんど一体化している。
1:卵とゲル状物が完全に一体化している。
【0036】
卵の固形感:
5:卵が直火の鍋で溶き卵を加熱したときと同様の固形感を有する形状で固まっている。
4:卵がほとんど固まっており、固形感は卵が直火の鍋で溶き卵を加熱したときに近く、問題ない範囲である。
3:卵が一部固まっていないが、固形感は卵が直火の鍋で溶き卵を加熱したときに近く、問題ない範囲である。
2:卵が液状でほぼ固まっていない。
1:卵が液状で固まっていない。
【0037】
米飯の食感:
5:吸水せず適度な硬さである。
4:ほとんど吸水せず概ね適度な硬さである。
3:吸水するが、概ね問題ない硬さである。
2:吸水しやや柔らかくなっている。
1:吸水し柔らかい。
【0038】
総合評価:
5:食感および外観がきわめて良好。
4:食感および外観が良好。
3:食感および外観がやや良好。
2:食感および外観がやや不良。
1:食感および外観が不良。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
【表3】
【0042】
表1~表3から、粘度が130mPa・s以上のゲル状物が未加熱状態の卵を含む食材を覆っている各実施例の冷凍食品によれば、卵をゲル状物とが接触しながら互いに一体化しない状態、つまり互いに混合しない状態で配置されており、電子レンジ加熱したときに卵が固まり適度な固形感を有し、米飯の食感が良好であることが判る。一方、粘度が130mPa・s未満のゲルが未加熱状態の卵を含む食材を覆っている各比較例の冷凍食品によれば、卵がゲル状物と一体化しており、電子レンジ加熱をしたときに卵が固まらず、米飯の食感に劣ることが判る。




図1
図2