(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-25
(45)【発行日】2024-07-03
(54)【発明の名称】格子構造の形態の分光フィルタを備える投影露光装置の照射光学ユニット用のミラー、およびミラー上に格子構造の形態の分光フィルタを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240626BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2021530830
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(86)【国際出願番号】 EP2019082407
(87)【国際公開番号】W WO2020109225
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】102018220629.5
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】ジャリックス クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】シュスター ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】キーリー ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】サンドナー アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】マイシュ トビアス
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529117(JP,A)
【文献】特表2011-523782(JP,A)
【文献】特開2012-235046(JP,A)
【文献】特表2010-514204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影露光装置(1)の照射光学ユニット(4)用のミラーであって、
1.1. 格子構造(30)の形態の分光フィルタを備え、
1.2. 前記格子構造(30)は複数の格子リッジ(31)を有し、
1.2.1. 前記格子リッジ(31)は各々、前面(32)および側壁(33)を有し、
1.2.2. 底部(35)を有する溝(34)が、いずれの場合にも2つの格子リッジ(31)の間に形成され、
1.3. 前記格子構造(30)は、15°~60°の範囲内の最大エッジ急峻度(b)を有
し、
1.4. 前記格子構造(30)は、1マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲内の溝深さを有する、
ミラー。
【請求項2】
前記格子構造(30)は、閉じた保護層(38)によって覆われていることを特徴とする、請求項1に記載のミラー。
【請求項3】
前記保護層(38)は、構成成分としてモリブデンおよび/またはシリコンを含む1つまたは複数の層から成ることを特徴とする、請求項2に記載のミラー。
【請求項4】
前記格子構造(30)は、基板(37)上に適用されるかまたは基板(37)内に導入され、前記基板(37)は、以下の材料、すなわち、非晶質シリコン(a-Si)、ニッケルリン(NiP)、二酸化シリコン(SiO
2)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiOx)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(AlOx)のうちの1つもしくは複数、またはこれらの化合物から成ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のミラー。
【請求項5】
前記格子リッジ(31)は各々、台形形状の最小凸包絡を有する断面を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のミラー。
【請求項6】
投影露光装置(1)の照射光学ユニット(4)用のミラー上に格子構造(30)の形態の分光フィルタを生成するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
6.1. ミラー本体用の基板(37)を準備するステップ、
6.2. 前記基板(37)上に構造化層(40)を適用するステップ、
6.3. 前記構造化層(40)を構造化するステップ、
6.4. 前記基板(37)を構造化するステップであって、
前記格子構造(30)は複数の格子リッジ(31)を有し、
6.4.1. 前記格子リッジ(31)は各々、前面(32)および側壁(33)を有し、
6.4.2. 底部(35)を有する溝(34)が、いずれの場合にも2つの格子リッジ(31)の間に形成され、
6.4.3. 前記格子構造(30)は、1マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲内の溝深さを有し、
6.5. 前記基板(37)を構造化するために、以下の方法選択肢、すなわち、
6.5.1. 0°~60°の範囲内の所定のエッチング角度でエッチングすること、
6.5.2. 構造化層(40)および基板(37)のエッチングレートが異なる、エッチングすること、
6.5.3. 前記構造化層(40)には前記構造化中に
15°~
60°の範囲内の側壁急峻度が与えられている、エッチングすること、のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せが使用される、構造化するステップ、
6.6. 前記基板(37)上に、閉じた保護層(38)を適用するステップ、
を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記基板(37)を構造化するために、以下の方法選択肢、すなわち、
7.1. 0°~60°の範囲内の所定のエッチング角度での不活性ドライエッチング法、
7.2. 前記構造化層(40)および前記基板(37)のエッチングレートが異なる、不活性ドライエッチング法、
7.3. 前記構造化層(40)には前記構造化中に0°~60°の範囲内の側壁急峻度(b)が与えられている、不活性ドライエッチング法、
7.4. 基板(37)と構造化層(40)の前記エッチングレートの比がエッチングガスの組成を制御することによって設定される、反応性ドライエッチング法、
7.5. 基板(37)と構造化層(40)の前記エッチングレートの比がエッチング媒体の組成を制御することによって設定される、湿式化学エッチング法、のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せが使用される、方法。
【請求項8】
前記基板(37)を構造化するために不活性エッチング法と反応性エッチング法の組合せが使用されることを特徴とする、請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記基板(37)を構造化するために0°~60°の範囲内の所定の長手方向のエッチング角度を用いるエッチング法が使用されることを特徴とする、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記基板(37)を構造化するために0°~60°の範囲内の所定の横方向のエッチング角度を用いるエッチング法が使用されることを特徴とする、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
以下のパラメータ、すなわち、前記構造化層(40)を構造化するためのレーザ光線の収束、前記構造化層(40)を構造化するためのリソグラフィ工程中の露光の強度、前記構造化層(40)を構造化するためのリソグラフィ工程の現像の継続時間、ハードベークおよび/またはリフロー、前記構造化層(40)のその構造化後の温度、のうちの少なくとも1つが、前記構造化層(40)の前記側壁急峻度を設定するために標的化された方式で制御されることを特徴とする、請求項6~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記構造化層の前記側壁急峻度が設定される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載のミラーを少なくとも1つ備える、投影露光装置(1)用の照射光学ユニット(4)。
【請求項14】
14.1. 請求項13に記載の照射光学ユニット(4)と、
14.2. 照射放射線を発生させるための放射線源(3)と、
を備える、投影露光装置(1)用の照射系(2)。
【請求項15】
15.1. 照射放射線(10)を放射線源(3)から、結像されるべき構造を有するレチクル上へと伝達するための、請求項13に記載の照射光学ユニット(4)と、
15.2. 前記レチクルの前記構造をウエハ上へと結像するための投影光学ユニット(7)と、
を備える、マイクロリソグラフィ投影露光装置(1)。
【請求項16】
マイクロ構造化またはナノ構造化構成要素を生成するための方法であって、以下のステップ、すなわち、
- 感光材料から成る層が表面に少なくとも部分的に適用される、基板を準備するステップ、
- 結像されるべき構造を有するレチクルを準備するステップ、
- 請求項15に記載の投影露光装置(1)を準備するステップ、
- 前記投影露光装置(1)を利用して、前記レチクルの少なくとも1つの部分を前記基板の前記感光層の領域上へと投影するステップ、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、独国特許出願第10 2018 220 629.5号の優先権を主張し、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、投影露光装置の照射光学ユニット用のミラーに関する。本発明は更に、照射光学ユニット用のミラー上に格子構造の形態の分光フィルタを生成するための方法に関する。更に、本発明は、投影露光装置用の照射光学ユニットおよび照射系と、投影露光装置と、に関する。最後に、本発明は、マイクロ構造化またはナノ構造化構成要素を生成するための方法、および、この方法に従って生成される構成要素に関する。
【背景技術】
【0003】
格子構造を分光フィルタとして使用することは例えば、独国特許公開第10 2012 010 093号から知られている。そのような格子構造、特にそのような格子構造を備える照射光学ユニット用のミラーの改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
この目的は請求項1の特徴によって達成される。
【0005】
本発明の核心は、定められた(defined)エッジ急峻度を有する格子構造を形成することにある。格子構造のエッジ急峻度、特に最大エッジ急峻度は、特に15°~60°の範囲内、特に30°~45°の範囲内である。
【0006】
この場合、エッジ急峻度はミラーの表面に、特に2つの格子リッジの間の領域内のミラーの対応する局所表面の接線に対して測定される。
【0007】
格子構造のエッジは特にアンダーカットなしで形成される。格子構造は特に、エッチングされたアンダーカットを有さない。
【0008】
本発明によれば、結果として格子構造をより良好に保護できることが認識されている。特に、このようにして、耐久性が向上した格子構造の形態の分光フィルタを備えるミラーを形成することが可能である。
【0009】
性能面の理由から、投影露光装置の照射光学ユニット用のミラー上の格子構造は通常、ミラー表面に対して可能な限り急峻に、特に可能な限り垂直に形成される。驚くべきことに、格子構造の耐久性の問題に関しては、特にその水素安定性に関しては、エッジ急峻度を下げて格子構造を形成するのが有利であり得ることが見出されている。
【0010】
本発明の更なる態様によれば、格子構造は閉じた保護層によって覆われている。格子構造は特に閉じた保護層によって完全に覆われている。
【0011】
格子構造中に有害な水素が侵入するのを保護層によって防止できる。このことにより、望まれない層剥離をもたらし得る材料における応力を防止できる。有害な水素雰囲気下でアタックされる材料から成るミラー基板の場合、この材料を保護できる。そのような材料は例えばスズ、シリコン、またはこれらの化合物であり得る。
【0012】
本発明の更なる態様によれば、保護層は、構成成分としてモリブデンおよび/またはシリコンを含む1つまたは複数の層から成る。保護層はまた、構成成分として銅、銀、プラチナ、金、ロジウム、金属、酸化物、もしくはそのような物質の組合せを含み得るか、または対応する物質から成ることができる。保護層は特に、水素安定性を有する材料から成る。特に、複数のモリブデン-シリコン二重層が保護層の役割を果たし得る。特に、複数のそのような層から成る層スタック、特に複数のそのようなモリブデン-シリコン二重層が、保護層の役割を果たし得る。二重層の数は0~100の範囲内、特に30~80の範囲内、特に40~60の範囲内であり得る。
【0013】
モリブデン-シリコン二重層は、特にEUV範囲内の用途に適している。ミラーは特に、EUV露光機器の構成要素であり得る。
【0014】
本発明によれば、定められたエッジ急峻度に起因して、モリブデン-シリコン二重層を格子構造上に中断なく、すなわち閉じた層として、特に完全に閉じた層として、適用できることが認識されている。
【0015】
本発明の更なる態様によれば、格子構造は基板上に適用されるかまたは基板内に導入され、基板は以下の材料、すなわち、非晶質シリコン(a-Si)、二酸化シリコン(SiO2)、チタン(Ti)、プラチナ(Pt)、金(Au)、アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiOx、すなわちTiOまたはTi2O3)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ニッケルリン(NiP)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al2O3)のうちの1つもしくは複数、またはこれらの化合物から成る。
【0016】
そのような材料は、特にEUV投影露光装置の構成要素として有用であることが分かっている。
【0017】
本発明の更なる態様によれば、格子リッジは各々、台形形状の最小凸包絡を有する断面を有する。格子リッジは特に、各々が台形形状の断面を有し得る。このことは特に、隣り合う溝の底部を通る局所接平面よりも上に突出している格子リッジの部分が台形形状の断面を有することを意味するものと理解されるべきである。これは等脚台形または非等脚台形を含み得る。特に、非直角台形が含まれる。言い換えれば、格子リッジは特に、4つ以上の頂点を有する非矩形断面を有する。
【0018】
台形は特に、適切な退化しない台形である。格子リッジは特に、少なくとも四辺形の断面を有する。これらは各々、特に、4つ以上の頂点を有する断面を有する。
【0019】
原理的には、一般的な四辺形の断面を有する格子リッジを形成することが可能である。格子リッジの前面は特に、対応する格子リッジと隣り合う溝の底部と平行である必要は必ずしもない。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、格子リッジの前面および/または隣り合う格子リッジ間の溝の底部はいずれの場合も、平面状に具現化される。格子リッジの前面は特に、溝の底部と平行に配向することができる。
【0021】
本発明の更なる態様によれば、特に格子リッジの前面に対して垂直な方向においておよび/または隣り合う格子リッジ間の溝の底部に対して垂直な方向において平面視したときの、格子リッジの側壁によって構成される総面積割合は、最大で10%、特に最大で5%、特に最大で3%、特に最大で2%、特に最大で1%、特に最大で0.5%、特に最大で0.3%である。総面積割合はここでは特に、側壁によって構成されるミラーの全反射面積の面積割合を意味するものと理解されたい。
【0022】
ミラーの法線に対して実質的に垂直に配向された、特に、全ての格子リッジの最小凸包絡の法線に対してまたは隣り合う格子リッジ間の溝の底部を通って延びる平面を通る法線に対して傾斜が15°未満、特に10°未満、特に5°未満、特に3°未満、特に2°未満、特に1°未満である、ミラーの表面積の割合は、ミラーの全反射面積の、特に少なくとも90%、特に少なくとも95%、特に少なくとも97%、特に少なくとも98%、特に少なくとも99%、特に少なくとも99.5%、特に少なくとも99.7%である。
【0023】
本発明の更なる態様によれば、ミラーはコレクタミラーまたはコンデンサミラーである。
【0024】
本発明の更なる目的は、投影露光装置の照射光学ユニット用のミラー上に格子構造の形態の分光フィルタを生成するための方法を改善することである。この目的は、以下:
- ミラー本体用の基板を準備するステップ、
- 基板上に構造化層を適用するステップ、
- 構造化層を構造化するステップ、
- 基板を構造化するために、以下の方法選択肢、すなわち、
-- 0°~60°の範囲内、特に0°~20°の範囲内の所定のエッチング角度でエッチングすることであって、エッチング角度はこの場合、エッチング中のイオンの入射角、特に法線方向からのその偏位である、エッチングすること、
-- 構造化層および基板のエッチングレートが異なる、エッチングすること、
-- 構造化層には構造化中に10°~90°の範囲内の側壁急峻度が与えられ、これらの角度は基板の表面に対して測定される、エッチングすること、のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せが使用される、構造化するステップ、
- 基板上に閉じた保護層を適用するステップ、を含む方法によって達成される。
【0025】
本発明の核心は、基板の構造化中の標的化された(targeted)処理の実施またはその複数の態様の組合せによって、定められたエッジ急峻度を有する、特にエッジ急峻度が15°~60°の範囲内である格子構造を生成することにある。
【0026】
利点は上記したことから明らかである。
【0027】
保護層を特に基板上に成長させることができる。一般に、基板は保護層でコーティングされている。
【0028】
保護層の詳細については上記の説明を参照されたい。
【0029】
特に、フォトレジスト(PR)層は構造化層の役割を果たし得る。本発明の更なる態様によれば、基板を構造化するために、以下の方法選択肢、すなわち、
- 0°~60°の範囲内、特に0°~20°の範囲内の所定のエッチング角度で不活性ドライエッチング法であって、エッチング角度はこの場合、エッチング中のイオンの入射角、特に法線方向からのその偏位である、不活性ドライエッチング法、
- 構造化層および基板のエッチングレートが異なる、不活性ドライエッチング法、
- 構造化層には構造化中に10°~90°の範囲内の側壁急峻度が与えられている、不活性ドライエッチング法であって、これらの角度は基板の表面に対して測定される、不活性ドライエッチング法、
- 基板と構造化層のエッチングレートの比が例えばエッチング角度またはイオンエネルギーなどの様々なパラメータによって設定される、不活性ドライエッチング法、
- 基板と構造化層のエッチングレートの比がエッチングガスの組成を制御することによって設定される、反応性ドライエッチング法、
- 基板と構造化層のエッチングレートの比がエッチング媒体の組成を制御することによって設定される、湿式化学エッチング法、のうちの1つもしくは複数、またはこれらの組合せが使用される。
【0030】
これら異なる方法の選択肢を、互いに組み合わせることもできる。例として、反応性ドライエッチング法の場合にまたは湿式化学エッチング法の場合に、10°~90°の範囲内の側壁急峻度を有する構造化された構造化層を提供することができる。
【0031】
反応性ドライエッチング法の場合特に、エッチングガスの酸素含有量を制御できる。特に、結果として、構造化層の定められたエッチングが容易に可能になる。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、基板を構造化するために、不活性エッチング法と反応性エッチング法の組合せが使用される。
【0033】
そのようなエッチングの組合せの場合、化学的および物理的なイールドによって同時にエッチングイールドが実現される。上記した影響可能性が結果的に組み合わされ得る。
【0034】
本発明の更なる態様によれば、基板を構造化するために、0°~60°の範囲内の所定の長手方向のエッチング角度を用いるエッチング法が使用される。
【0035】
本発明の更なる態様によれば、基板を構造化するために、0°~60°の範囲内の所定の横方向のエッチング角度を用いるエッチング法が使用される。
【0036】
この場合、長手方向のエッチング角度は、基板に対して垂直に延在し格子構造の溝方向に画定される平面におけるエッチング角度を意味するものと理解されたい。
【0037】
この場合、横方向のエッチング角度は、基板に対して垂直に延在し格子構造の溝方向に対して垂直な平面におけるエッチング角度を意味するものと理解されたい。
【0038】
本発明の更なる態様によれば、基板をエッチングするための、特に構造化するためのイオン線を、基板の局所表面に対して垂直に延びる軸線を中心にして傾けることができ、エッチング工程中に、基板の表面に対して垂直に延びる軸線を中心にして回転させることができる。この手段によっても、定められたエッジ急峻度を有する格子構造を生成するために基板を構造化することが可能である。
【0039】
本発明の更なる態様によれば、以下のパラメータのうちの少なくとも1つが、構造化層の側壁急峻度を設定するために標的化された方式で制御される:
- レーザ光線の収束、近接リソグラフィ法の露光時間、近接露光の距離、マスクの、特にホログラフィックマスクの設計、露光方法の波長、
- 構造化層を構造化するためのリソグラフィ工程中の露光の強度、
- 構造化層を構造化するためのリソグラフィ工程の現像の継続時間、
- ハードベークおよび/またはリフロー。
【0040】
この結果、構造化層の側壁急峻度は影響を受け、特に柔軟かつ正確に設定され得る。
【0041】
本発明の更なる目的は、投影露光装置用の照射光学ユニットおよび照射系と、更に投影露光装置と、を改善することである。
【0042】
これらの目的は、上記の説明に係るミラーを備える、照射光学ユニット、および照射装置、および対応する投影露光装置によって、達成される。利点は上記したことから明らかである。
【0043】
本発明の更なる目的は、マイクロ構造化またはナノ構造化構成要素を生成するための方法、およびそのような構成要素を改善することである。
【0044】
これらの目的は、上記の説明に係る投影露光装置を提供することによって達成される。利点に関してはやはり上記の説明を参照されたい。
【0045】
本発明の更なる利点、特徴、および詳細は、図面を参照する複数の例示的な実施形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】EUV投影リソグラフィ用の投影露光装置を通る子午断面の概略図である。
【
図2】格子構造の形態の分光フィルタを備えるミラーの概略図である。
【
図3】格子リッジのエッジの領域内の格子構造から抜き出した概略図である。
【
図4A】基板を構造化するための方法の第1の変形の概略図である。
【
図4B】表面に構造化層が適用された、
図4Aに係る方法によって構造化された基板の例示的な概略図である。
【
図5A】初期状態(
図5A)、中間製品(
図5B)、および完成した構造化された基板(
図5C)による、基板を構造化するための方法の代替の変形の概略図である。
【
図5B】初期状態(
図5A)、中間製品(
図5B)、および完成した構造化された基板(
図5C)による、基板を構造化するための方法の代替の変形の概略図である。
【
図5C】初期状態(
図5A)、中間製品(
図5B)、および完成した構造化された基板(
図5C)による、基板を構造化するための方法の代替の変形の概略図である。
【
図6A】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが低い場合の、初期状態(
図6A)、中間製品(
図6B)、および完成した構造化された基板(
図6C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図6B】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが低い場合の、初期状態(
図6A)、中間製品(
図6B)、および完成した構造化された基板(
図6C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図6C】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが低い場合の、初期状態(
図6A)、中間製品(
図6B)、および完成した構造化された基板(
図6C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図7A】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが高い場合の、初期状態(
図7A)、中間製品(
図7B)、および完成した構造化された基板(
図7C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図7B】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが高い場合の、初期状態(
図7A)、中間製品(
図7B)、および完成した構造化された基板(
図7C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図7C】基板よりも構造化層の方がエッチングレートが高い場合の、初期状態(
図7A)、中間製品(
図7B)、および完成した構造化された基板(
図7C)による、基板を構造化するための方法の更なる変形を示す図である。
【
図8A】構造化層の構造化に対するレーザ光線の収束の影響を明らかにするための例示的な概略図である。
【
図8B】構造化層の構造化に対するレーザ光線の収束の影響を明らかにするための例示的な概略図である。
【
図9】構造化層の側壁急峻度に対する、現像継続時間を長くすることの効果を明らかにする概略図である。
【
図10A】ハードベークしていない構造化層を有する基板から抜き出した概略図である。
【
図11】等方性湿式化学エッチング後に構造化層を適用した基板から抜き出した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
まず、マイクロリソグラフィ投影露光装置1の全体構造について説明する。
【0048】
図1は、マイクロリソグラフィ投影露光装置1を子午断面で概略的に示す。投影露光装置1の照射系2は、放射線源3のほかに、対物面6内にある対物視野5を露光するための照射光学ユニット4を有する。この場合、対物視野5内に配置されておりこの図面には図示されていないレチクルが露光され、上記のレチクルは(同じく図示されていない)レチクルホルダによって保持されている。投影光学ユニット7は、対物視野5を像平面9内の像視野8内に結像する(image)役割を果たす。レチクル上の構造が、像平面9内の像視野8の領域内に配置されているウエハの感光層上に結像され、上記のウエハも同じく図面には図示されていないが、ウエハホルダ(同じく図示されていない)によって保持されている。
【0049】
放射線源3は、放出され使用される放射線が5nm~30nmの間の範囲内であるEUV放射線源である。これはプラズマ源、例えばGDPP(ガス放電生成プラズマ)源またはLPP(レーザ生成プラズマ)源であり得る。例として、10.6μmの、すなわち赤外範囲内の波長で動作する二酸化炭素レーザでスズを励起させて、プラズマを形成することができる。放射線源3としてシンクロトロンに基づく放射線源も使用できる。そのような放射線源についての情報を、当業者は例えば米国特許第6,859,515号に見出すことができる。放射線源3から発出されるEUV放射線10がコレクタ11によって収束される。対応するコレクタは欧州特許出願第1225481号から知られている。コレクタ11の下流において、EUV放射線10は中間焦点面12を通って伝播し、その後で複数の視野ファセット13aを有する視野ファセットミラー13に入射する。視野ファセットミラー13は照射光学ユニット4の平面内に配置されており、これは対物面6に対して光学的に共役である。
【0050】
EUV放射線10は以降では照射光とも結像光とも呼ばれる。
【0051】
視野ファセットミラー13の下流において、EUV放射線10は、複数の瞳ファセット14aを有する瞳ファセットミラー14によって反射される。瞳ファセットミラー14は照射光学ユニット4の瞳面内に配置されており、これは投影光学ユニット7の瞳面に対して光学的に共役である。瞳ファセットミラー14と、光線経路の順序で指定するミラー16、17、および18を備える転送光学ユニット15の形態の結像光学アセンブリと、を利用して、部分視野とも個別ミラー群とも呼ばれ以下で更に詳細に記載する、視野ファセットミラー13の個別視野ファセット19が、対物視野5内に結像される。転送光学ユニット15の最後のミラー18は、かすめ入射のためのミラー(「かすめ入射ミラー」)である。
【0052】
図2は、格子構造30の形態の分光フィルタを備えるミラーの反射面を例として概略的に示す。格子構造30は、所定の範囲内の波長を有する放射線をマスキングして排除するための、特に赤外範囲内の波長をマスキングして排除するための、分光フィルタの役割を果たす。
【0053】
格子構造30は複数の格子リッジ31を備える。格子リッジ31は各々、前面32および側壁33を有する。溝34はいずれの場合も格子リッジ31同士の間に形成される。溝34は各々、底部35を有する。
【0054】
格子リッジ31は各々、特に台形形状の断面を有する。この断面は等脚台形または非等脚台形に対応し得る。これは特に非矩形である。これは特に非三角形である。
【0055】
ミラーの全反射面積の、特に、側壁33によって構成される格子構造30の総面積の面積割合は、平面視したとき、特に垂直投影の場合に、最大10%、特に最大5%、特に最大3%、特に最大2%、特に最大1%、特に最大0.5%、特に最大0.3%である。
【0056】
台形形状の断面の代わりに、格子リッジ31はまた、全体に台形形状の最小凸包絡を有する断面も有し得る。原理的には、格子リッジ31の前面32は、隣り合う溝34の底部35と平行に配向する必要はない。
【0057】
格子リッジ31の前面32と溝34の底部35の間には、基板37に対する面法線36の方向にオフセットVが存在する。オフセットVは特に、赤外範囲の4分の1波長の領域内にある。オフセットVは特に、1マイクロメートル~10マイクロメートルの範囲内にある。他の値が同様に可能である。
【0058】
オフセットVは格子構造30の溝深さとも呼ばれる。更なる詳細については独国特許公開第10 2012 010 093号を参照されたい。
【0059】
本発明によれば、急峻なまたは更には凹状の側壁を有する格子リッジ31の実施形態は、保護層38の適用後に基板が保護層38によって完全には閉じられないという影響があることが認識されている。このことは、浸食性雰囲気下で、特に電離水素を含む雰囲気下で、基板がアタックされるという影響を及ぼし得る。水素は特に、基板37の破壊を、または層剥離を引き起こし得る応力をもたらす可能性がある。
【0060】
本発明によれば、したがって側壁33の各々の側壁急峻度bが15°~60°の範囲内であれば有利なことが認識されている。この場合、側壁急峻度bはエッジ急峻度とも呼ばれ、側壁33(
図3を参照)に隣接する溝34の底部35の領域内の局所接平面39と関連させて測定される。
【0061】
定められたそのような側壁急峻度bは、保護層38が閉じられる、特に基板37を隙間なく完全に覆うことが可能であるという効果を有する。
【0062】
側壁急峻度bの定められた側壁33を、特に構造化層40の特にリソグラフィ工程を利用した構造化中に、ならびに/または、特に構造化層40のおよび基板37のエッチング中に、好適な処理の実装によってどのように生成できるかに関する、様々な変形の説明を、以下に示す。
【0063】
特に、フォトレジスト(PR)から成る層は構造化層40の役割を果たす。上記の層は構造化ステップによって、特にリソグラフィ法によって、柔軟かつ精確に構造化され得る。
【0064】
図4Aは、基板37を構造化するための不活性ドライエッチング法を概略的に示す。このタイプの方法では、エッチングは、真空中で加速させた方向性のあるイオンを使用して実行され、腐食によって純粋に物理的に材料除去が行われる。この場合、原理的には側壁急峻度bを設定する2つの可能性が存在する。
図4Aに示す変形では、側壁急峻度bは、イオンの入射角ewの影響を受ける。入射角ewはエッチング角度とも呼ばれる。この場合、イオン線41は溝34の配向と平行に傾けることができる。このことは長手方向の傾斜とも呼ばれる。イオン線41を、溝34の配向に対して横方向に傾けることもできる。このことは横方向の傾斜とも呼ばれる。イオン線41を基板37に対する面法線42に対して傾けること、および傾けたイオン線41を上記の面法線42を中心に回転させることもまた可能である。
【0065】
構造化層40の影になることに起因して、90°未満の側壁急峻度bを有する側壁33が形成される(
図4Bを参照)。側壁急峻度bは入射角ewの選択によって影響、特に設定され得る。
【0066】
不活性ドライエッチングの場合、側壁急峻度bは、構造化層40と基板37のエッチングレートが異なることによっても影響され得る。このことが例として
図5A~
図5Cに示されている。特に中間製品から明らかなように(
図5Bを参照)、エッチングレートの違いは側壁急峻度bへの影響をもたらす。この図および続く図では、エッチングされる領域はいずれの場合もハッチングされて図示されている。
【0067】
特に、構造化層40に異なるレジストを選択することによって、異なるエッチングレートを達成できる。
【0068】
異なるエッチングレートの影響に加えて、この場合側壁急峻度bは、構造化層40の側壁43の急峻度cによって影響、特に設定され得る。急峻度cはレジスト急峻度とも呼ばれる。これは構造化層40を構造化するためのリソグラフィステップにおいて、柔軟かつ精確に選ばれ得る。
【0069】
更に、この変形においても、側壁急峻度bは、エッチング角度の選択によって影響、特に設定され得る。
【0070】
反応性ドライエッチング法の場合、エッチングは真空中で加速させた方向性を有するイオンを使用して実行され、イオンと表面の材料の化学反応によって、可能な最大の程度で材料除去が行われる。この場合、側壁急峻度bは、化学成分の標的化された選択によって設定され得る。可能なエッチングガスはここでは、O2(C12、Sf6、CF4、CHF3、O2、C2F6、CF6、SIC14、BC13)、およびこれらの混合物である。
【0071】
例として、構造化層40の定められたエッチングは、エッチングガスの組成の標的化された選択によって、例えばその酸素含有量を変えることによって設定可能である。構造化層40のエッチングレートを、基板37のエッチングレートよりも低くすること(
図6A~
図6C)、または高くすること(
図7A~
図7C)ができる。
【0072】
構造化層40の側壁43の所与の側壁の急峻度cはしたがって、基板37のより平坦なまたはより急峻な側壁急峻度をもたらし得る。
【0073】
エッチングの組合せも可能である。エッチングの組合せの場合、化学除去および物理除去によって同時にエッチング除去が実現される。このことは例えば、反応性エッチングガスを使用し、それらを構造化層40を適用した基板37の表面上へと、方向性をもたせかつ加速させて適用することによって、達成可能である。このことにより、上記した変形、特に側壁急峻度bの設定への影響可能性を、組み合わせることが可能である。
【0074】
構造化層40の側壁43の側壁急峻度cは、リソグラフィ工程中の様々な要因によって影響され得る。これは特に、リソグラフィ工程中の露光の強度によって影響され得る。これはレーザ光線44の標的化された収束によって影響され得る(
図8Aを参照)。
【0075】
コリメートされたレーザ光線44を使用することによって、構造化層40においてより高い側壁急峻度cを達成することが可能である(
図8Bを参照)。
【0076】
構造化層40を構造化するためのリソグラフィ工程の現像処理もまた、レジスト構造の側壁急峻度cに影響する。露光された構造化層40の現像中には、レジストの暗がり除去(dark removal)も常に生じる。上記の暗がり除去の結果、エッジが角取りされる。
図9は例として、現像継続時間を長くした結果の顕著なエッジの角取りを示す。
【0077】
ハードベークおよびリフローを、構造化層40の側壁急峻度cに影響を与えるように標的化された方式で使用することもできる。現像されたフォトレジスト構造の熱リフローを、構造化層40を構造化するように、およびしたがって例えばドライエッチング法によって生成される格子リッジ31の側壁急峻度bに影響するように標的化された方式で、使用することができる。ハードベークの結果、特に、レジストエッジの球状または円筒状の角取がもたらされる。
図10Aは例として、ハードベークを行わずにまたは行う前に構造化された構造化層40が適用された、基板37を示す。
図10Bは、ハードベーク後の熱で角取りされた、対応する構造を示す。
【0078】
構造化層40のエッチングレートと基板37のエッチングレートの相異は、湿式化学エッチング法の場合にも達成され得る。側壁急峻度bの対応する影響は、
図5Bに係る不活性ドライエッチング法の場合のように通例のものである。
【0079】
基板37の等方性の拡散制限型エッチングの場合も、側壁急峻度bは標的化された方式で影響され得る。このタイプの方法の場合、アンダーカット領域45の程度は特に、エッチング溶液の互いの混合に依存する。
【0080】
基板37の構造化後、格子構造30には閉じた保護層38が付与される。保護層38は特に基板37上に適用される。これは特に基板37上に堆積させることができる。保護層38を基板37上で成長させることも可能である。
【0081】
特に、モリブデン-シリコン二重層構造が保護層の役割を果たし得る。そのような層スタックの詳細は先行技術から知られている。
【0082】
マイクロ構造化またはナノ構造化構成要素を、特に半導体構成要素を、例えばマイクロチップを、リソグラフィによって生成するために、投影露光装置1を利用して、対物視野5内のレチクルの少なくとも1つの部分が、像視野8内のウエハ上の感光層の領域上に結像される。スキャナまたはステッパとしての投影露光装置1の実施形態に応じて、レチクルとウエハはスキャナ動作でまたはステッパ動作で1ステップずつ、時間的に同期してy方向に連続的に移動される。