(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-26
(45)【発行日】2024-07-04
(54)【発明の名称】シート収納装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 1/04 20060101AFI20240627BHJP
【FI】
B65H1/04 326B
B65H1/04 324
(21)【出願番号】P 2020101479
(22)【出願日】2020-06-11
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】上地 純平
【審査官】正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-127362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給送対象に向けて給送されるシートを収納する収納筐体と、
前記収納筐体に対して幅方向に移動可能で、シートの幅方向端部に突き当ててシートの幅方向の位置を規制する第一規制部材と、
前記第一規制部材よりも給送方向上流に設置され、前記シートの幅方向端部
に突き当ててシート
の幅方向の位置を規制する第二規制部材と、
前記シートが載置され、少なくとも給送方向下流側端部が昇降移動する底板部材とを備えるシート収納装置において、
前記底板部材にシートを載置した後に、前記第二規制部材を、シートから退避した退避位置からシートに向かって移動させてシートの
幅方向端部に自動的に突き当てる第二規制部材移動機構を備えたことを特徴とするシート収納装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート収納装置において、
前記第二規制部材移動機構は、前記底板部材の昇降動作に連動して第二規制部材を移動させることを特徴とするシート収納装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート収納装置において、
前記第二規制部材は、弾性体であることを特徴とするシート収納装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか一項に記載のシート収納装置において、
前記第二規制部材が前記シートの
幅方向端部に当接した際に、前記第二規制部材を前記シートに向けて押圧する押圧手段を有することを特徴とするシート収納装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか一項に記載のシート収納装置において、
前記第二規制部材の前記シートに接触する接触部が、摺動部材で構成されていることを特徴とするシート収納装置。
【請求項6】
シート収納装置を備え、
前記シート収納装置に収納されたシートを給送して前記シートに画像を形成する画像形成装置において、
前記シート収納装置として、請求項1乃至5いずれか一項に記載のシート収納装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート収納装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給送対象に向けて給送されるシートを収納する収納筐体と、収納筐体に対して幅方向に移動可能で、シートの幅方向端部に突き当ててシートの幅方向の位置を規制する第一規制部材と、第一規制部材よりも給送方向上流に設置され、シートの幅方向端部またはシートの後端部に突き当ててシートの位置を規制する第二規制部材と、シートが載置され、少なくとも給送方向下流側端部が昇降移動する底板部材とを備えるシート収納装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記シート収納装置として、シート幅方向に所定の間隔を開けて設けられた第二規制部材としての一対の後端壁部を設けたものが記載されている。一対の後端壁部は、収納筐体が収納可能な最大サイズのシートがセットされたときに最大サイズのシートの後端に当接して位置を規制する。これによれば、これら一対の後端壁部によってシートの後端の位置を規制することで、第一規制部材たるサイドフェンスをシートの幅方向端部に突き当てる作業を忘れたとしても、シート収納装置内でシートがスキューするのを抑制できると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の構成においては、収納筐体にシートをセットするときに、後端壁部に引っ掛かってしまい、シート収納装置へのシートのセット性が悪いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、給送対象に向けて給送されるシートを収納する収納筐体と、前記収納筐体に対して幅方向に移動可能で、シートの幅方向端部に突き当ててシートの幅方向の位置を規制する第一規制部材と、前記第一規制部材よりも給送方向上流に設置され、前記シートの幅方向端部に突き当ててシートの幅方向の位置を規制する第二規制部材と、前記シートが載置され、少なくとも給送方向下流側端部が昇降移動する底板部材とを備えるシート収納装置において、前記底板部材にシートを載置した後に、前記第二規制部材を、シートから退避した退避位置からシートに向かって移動させてシートの幅方向端部に自動的に突き当てる第二規制部材移動機構を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シート収納装置へのシートのセット性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】底板の給送方向下流側端部の昇降について説明する図。
【
図6】用紙幅規制部材が退避位置にある状態を示す図。
【
図7】弾性体の用紙幅規制部材を用紙の束の幅方向端部に突き当てた状態を示す概略図。
【
図8】ラックギヤと用紙幅規制部材との間に加圧スプリングを設けた例を示す概略図。
【
図9】用紙幅規制部材の少なくとも用紙の束の幅方向端部に接触する接触面を摺動部材とした例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置の実施形態として、電子写真方式で画像を形成する電子写真プリンタについて図面を参照して説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に省略する。
【0009】
以下の説明で「画像形成装置」とは、紙、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に現像剤やインクを付着させて画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも意味する。
【0010】
本実施形態の「シート」とは、紙、コート紙、OHPシート、ラベル紙、フィルム、布帛等を含む。さらに、「シート」とは、樹脂製シート、表裏面の保護紙、金属製シート、銅箔等の金属箔やメッキ処理等を施した電子回路基板材、特殊フィルム、プラスチックフィルム、プリプレグ、電子回路基板用シート等を含む。
プリプレグは、炭素繊維等に予め樹脂が含浸してあるシート状の材料である。プリプレグの例としては、炭素繊維やガラスクロスのような繊維状補強材に、硬化剤、着色剤などの添加物を混合した熱硬化性樹脂等を含浸させ、加熱または乾燥して半硬化状態にしたシート状の強化プラスチック成形材料が含まれる。
【0011】
そして、「シート」には、現像剤やインクを付着させることができる媒体である被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものも含む。さらに「シート」には、可撓性のものに限らず硬い板状のものや比較的厚みのあるものも含まれる。
【0012】
以下の実施形態では、各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
本実施形態では画像形成装置の一例として、電子写真プリンタについて説明するが、本発明を適用可能な画像形成装置はこれに限るものではない。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置の何れか一つ、またはこれらの少なくとも二つ以上を組み合わせた複合機として構成する給送トレイや手差し給送トレイで実施することも可能である。また、当該複合機に画像読取装置を加えた原稿給送トレイであってもよい。
【0013】
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。
図1は、実施形態に係るプリンタ100の概略構成図である。
図1に示すプリンタ100は、潜像担持体である感光体6と、感光体6の表面上にトナー像を作像する作像部7と、感光体6の表面上のトナー像を用紙Pに転写する転写装置8と、用紙P上に転写されたトナー像を用紙Pに定着する定着装置9と、を備える。これらによって、シートである用紙Pに画像を形成する画像形成部20を構成する。
【0014】
また、プリンタ100は、画像形成部20の下方に、用紙Pの紙束を収納するシート収納手段である給送トレイ1と、給送トレイ1に収納された用紙Pに搬送力を付与する給送搬送手段である給送ローラ2とを備える給送装置200が配置されている。
さらに、画像形成部20の図中の右側には、手差しの用紙Pを載置する手差し給送トレイ3と、手差し給送トレイ3に載置された用紙Pに搬送力を付与する手差し給送ローラ4とを備える。
【0015】
プリンタ100で画像を形成する場合には、作像部7が具備する露光手段によって感光体6の表面上に潜像を形成し、作像部7が具備する現像装置で感光体6の表面上の潜像を現像し、感光体6の表面上にトナー像を形成する。
給送トレイ1に収納された用紙Pに画像を形成する場合には、給送ローラ2によって一枚ずつ搬送される用紙Pが、用紙搬送路21を通過して、レジストローラ対5に突き当たる位置まで搬送される。
手差し給送トレイ3に載置された用紙Pに画像を形成する場合には、手差し給送ローラ4によって一枚ずつ搬送される用紙Pが、レジストローラ対5に突き当たる位置まで搬送される。
【0016】
そして、感光体6の表面上のトナー像が転写装置8との対向部である転写位置に到達するタイミングに合わせるようにレジストローラ対5が回転駆動し、転写位置で感光体6の表面上のトナー像が用紙Pの表面上に転写される。トナー像が転写された用紙Pは、定着装置9での加熱及び加圧によりトナー像が定着され、排紙部10を通過し、排紙ローラ対16によって装置外の排紙トレイ19に排出される。
【0017】
給送トレイ1は、プリンタ100本体に対して
図2中の水平方向左側に引き出し可能となっている。給送トレイ1を引き出すことで、給送トレイ1における用紙Pの収納部が露出し、使用者が用紙Pを収納部内にセットすることができるようになる。
【0018】
次に、本実施形態の給送トレイ1について説明する。
図2は、給送トレイ1の平面図であり、
図3は、給送トレイ1の断面斜視図である。
給送トレイ1は、用紙Pを収納する収納筐体たるトレイ筐体30を有する。トレイ筐体30には、第一規制部材としての二つのサイドフェンス41と、エンドフェンス51と、底板部材としての底板43とが設置されている。
【0019】
2つのサイドフェンス41は、給送トレイ1内にセットされた用紙Pのサイズに合わせるように幅方向に移動可能となっており、用紙Pのセット後に使用者が用紙Pの幅に合わせて移動させることで、用紙Pの束の幅方向両端部に突き当てることができる。これにより、トレイ筐体30内における幅方向の用紙Pの位置が規制される。
【0020】
エンドフェンス51は、給送方向に移動可能となっており、用紙Pのセット後に使用者がエンドフェンス51を給送方向下流側へ移動させて、用紙Pの束の後端部に突き当てる。用紙Pの後端部にエンドフェンス51を突き当てることで、用紙Pの前端部がトレイ筐体30の前壁32に突き当たり、トレイ筐体30内の用紙Pの給送方向位置が規制される。
【0021】
この前壁32の幅方向中央部には、給送分離部材である分離ローラ22を備える。分離ローラ22は、給送ローラ2と対向し、給送ローラ2によって搬送力を付与される紙束の最上部の一枚の用紙Pと他の用紙Pとを分離する。これにより、一枚の用紙Pを次工程に送り込むことができるようになっている。
【0022】
底板43は、トレイ筐体30に対して底板回動軸431を中心に回動自在に保持されており、収納する用紙Pの給送方向下流側(用紙先端側)の下面を支持し給送方向下流側端部が上下動する。セットした用紙Pの枚数が多い場合は、底板43の給送方向下流側端部は下降した状態となり、セットした用紙Pの枚数が少なくなると上昇して、用紙Pの上面における先端側端部近傍が給送ローラ2に接触する状態を維持するようになっている。これにより、セットした用紙Pの枚数によらず、用紙Pを次工程に送り込むことができる。
【0023】
また、トレイ筐体30の幅方向両側のサイドフェンス41よりも給送方向上流側には、それぞれ、用紙Pのセット後に用紙へ向けて移動し用紙Pの束の幅方向端部に突き当てて、幅方向端部の位置を規制する第二規制部材として用紙幅規制部材60が設けられている。各用紙幅規制部材60は、後述する移動機構により、底板の昇降動作に連動して幅方向に移動するように構成されている。
【0024】
トレイ筐体30が収納可能な最大サイズは、一般的によく使用されるA4サイズまたはレターサイズである。
【0025】
図4は、底板43の給送方向下流側端部の昇降について説明する図である。
図4に示すように、給送トレイ1の給送方向下流側端部には、揺動可能に支持されたレバー部材130が設けられている。レバー部材130の揺動端130aには、弾性部材であるスプリング132の一端が取り付けられており、スプリング132の他端は、底板43の給送方向下流側端部の幅方向端部に取り付けられている。
【0026】
プリンタ100の装置本体には、レバー部材130の揺動端130aを上方にガイドするレバーガイド部材133が設けられている。
図4(a)に示すように、給送トレイ1が装置本体から引き出された状態のときは、レバー部材130は、ストッパ部201に当接しており、揺動端130aがレバーガイド部材133に乗り上げることが可能な高さよりも下がることを防止している。
【0027】
給送トレイ1が装置本体から引き出された状態のときは、
図4(a)に示すように、底板43は、全体がトレイ筐体30の底面30aに接触した状態となっている。装置本体に対して給送トレイ1を挿入することで、レバー部材130の揺動端130aがレバーガイド部材133に乗り上げて上方に持ち上げられる。すると、レバー部材130が揺動し、底板43の給送方向下流側端部が上昇し底板43に載置された用紙の束の上面(最上位の用紙)が給送ローラ2に圧接する。その後は、スプリング132が伸長しながらレバー部材130の揺動端130aがレバーガイド部材133に持ち上げられていき、給送トレイ1が装置本体収納されると、
図4(b)に示すように、レバー部材130の揺動端130aがレバーガイド部材133の頂部に位置する。
【0028】
給送によって底板43上の用紙が減っていくと、スプリング132が徐々に縮んでいき、底板43の給送方向下流側端部が上昇して、用紙Pの上面における先端側端部近傍が給送ローラ2に接触する状態を維持する。
【0029】
なお、底板43を昇降させる機構は、
図4の構成に限られない。例えば、給送トレイ1が装置本体から引き出すと、バネによって給送方向下流側が上方へ付勢されている底板43がトレイ筐体30の底面に接触した状態でロックされ、給送トレイ1を装置本体に挿入する動作に連動してロックが解除されることで底板の給送方向下流側がバネによって上昇するロック方式や、モータで底板の給送方向下流側を昇降させる方式でもよい。
【0030】
本実施形態では、積載可能な最大用紙枚数がトレイ筐体30に収納されたときでも、底板43は、所定量上昇するように構成されている。
【0031】
次に、本実施形態の特徴部について、説明する。
上述したように、トレイ筐体30に用紙の束をセットした後に、使用者がサイドフェンス41を幅方向に移動させて用紙の束の幅方向端部に突き当てる作業を行って、用紙の束の幅方向の位置の規制を行う。しかしながら、例えば、トレイ筐体30が収納可能なレターサイズなどの最大サイズの用紙Pを載置した場合は、サイドフェンス41を幅方向の最も外側に移動させて、用紙Pを底板43に載置することになる。このとき、載置した用紙Pの幅方向の端部とサイドフェンス41との間の隙間が狭いため、サイドフェンス41を用紙Pに突き当てる作業を忘れる場合がある。その結果、セットされた用紙は、サイドフェンス41により幅方向の位置が規制されていない状態で給送が行われる。このように、幅方向位置が規制されていない状態で給送が行われると、給送中に用紙後端が振られて斜め送りとなるおそれがある。用紙が斜め送りされると、用紙Pに対して画像が傾いた不良画像が発生するおそれがある。
【0032】
最大サイズの用紙セット時におけるサイドフェンス突き当て作業忘れによる斜め送りを抑制するために、最大サイズの用紙とトレイ筐体30の側壁との間の隙間を減らすようにすることが考える。しかし、かかる構成においては、最大サイズの用紙をトレイ筐体30にセットするときに、トレイ筐体30の側壁が干渉してしまい、最大サイズの用紙セット性が悪い。
【0033】
そこで、本実施形態では、底板43の上昇の動きに連動して、幅方向へ移動してシートの幅方向端部に突き当たって、用紙の幅方向の位置を規制する第二規制部材としての用紙幅規制部材60を設けている。
【0034】
図5は、用紙幅規制部材60を幅方向に移動させる第二規制部材移動機構たる移動機構70の概略構成図である。
図5(a)は、平面図であり、
図5(b)は、移動機構70付近を給送方向上流側見た概略図であり、
図5(c)は、幅方向外側から見た移動機構70の概略図である。
【0035】
この移動機構70は、底板43の底板回動軸431と一体的に回転するように、底板回動軸431に取り付けられた入力ギヤ71と、この入力ギヤ71に噛み合うウォームギヤ72とを有している。ウォームギヤ72が取り付けられた駆動伝達軸73には、トルクリミッタ74を介してピニオンギヤ75が取り付けられている。このピニオンギヤ75にラックギヤ76が噛み合っている。ラックギヤ76のシート側端部には、用紙幅規制部材60が取り付けられている。また、ラックギヤ76のシート側とは反対側の端部には、ストッパ部76aが設けられており、ラックギヤ76が所定量シート側へ移動すると、ストッパ部76aがピニオンギヤ75に突き当たり、ラックギヤ76の移動を規制し、ピニオンギヤ75とラックギヤ76との噛み合いが外れないようにしている。
【0036】
給送トレイ1が装置本体から引き出され、底板43の全体がトレイ筐体30の底面30aに接触している状態(
図5(c)の破線)のときは、
図6に示すように、用紙幅規制部材60は、サイドフェンス41が最大サイズの用紙の幅方向端部を規制する位置Xよりも幅方向外側の退避位置に位置している。よって、最大サイズの用紙をトレイ筐体30にセットするとき用紙幅規制部材60が、セットの邪魔となるのを抑制できる。
【0037】
給送トレイ1が装置本体にセットされて、底板回動軸431を支点にして給送方向下流側端部が上昇するように底板43が回動すると、
図5(c)に示すように、底板回動軸431とともに入力ギヤ71が矢印A方向に回動する。入力ギヤ71が回動することで、入力ギヤ71に噛み合うウォームギヤ72が回転し、駆動伝達軸73を介してピニオンギヤ75に回転が伝達され、ピニオンギヤ75は、
図5(b)の矢印B方向に回転する。ピニオンギヤ75の回転運動はラックギヤ76に直線運動に変換されて伝達され、ラックギヤ76は
図5(a)や、
図5(b)に示す矢印C方向へ移動する。これにより、用紙幅規制部材60が退避位置からセットされた用紙へ向けて移動し、用紙幅方向端部に突き当たる。
【0038】
本実施形態においては、移動機構70は、用紙幅方向一方側に配置された用紙幅規制部材60、他方側に配置された用紙幅規制部材60それぞれに設けられている。底板43の給送方向下流側端部が上昇すると、幅方向両側の用紙幅規制部材60がそれぞれ移動機構70により退避位置からセットされた用紙に向かって移動し、用紙の束の幅方向端部に突き当たる。これにより、一対の用紙幅規制部材60により用紙の幅方向の位置が規制される。このように、一対の用紙幅規制部材60によりセットされた用紙の幅方向の位置が規制されることで、使用者が用紙セット時にサイドフェンス突き当て作業忘れたとしても、用紙幅規制部材60によりされた用紙の幅方向の位置を規制することができる。その結果、最大サイズの用紙について、幅方向位置が規制されていない状態で給送が行われるのを防止することができる。よって、給送中に用紙後端が振られて斜め送りとなるの抑制でき、用紙Pに対して画像が傾いた不良画像が発生するのを抑制することができる。
【0039】
本実施形態では、トレイ筐体30が収納可能な最大枚数の用紙が底板43に載置された場合でも、給送トレイ1を装置本体にセットしたときに底板43の給送方向下流側端部が上昇するように構成されている。移動機構は、トレイ筐体30が収納可能な最大枚数の用紙が載置されたときの底板43の上昇でも、用紙幅規制部材60が最大サイズの用紙の幅方向端部に突き当たるように構成されている。
【0040】
また、本実施形態では、駆動伝達軸73とピニオンギヤ75との間にトルクリミッタ74が設けられている。そのため、用紙幅規制部材60がセットされた用紙の束の幅方向端部に突き当たり、用紙の束により幅方向への移動が規制され、トルクリミッタ74にかかるトルクが規定以上のトルクとなると、トルクリミッタ74が作動し、駆動伝達軸73がピニオンギヤ75に対して空転する。これにより、用紙幅規制部材60の用紙幅方向端部にかかる当接圧が所定値以上高くなることがなく、用紙幅規制部材60により用紙の給送が妨げられるのを防止でき、給送不良の発生を抑制できる。また、セットされた用紙の束の枚数の減少に伴い、底板43を良好に上昇させることができ、給送ローラ2と用紙との接触圧を規定の値に維持できる。よって、給送ローラ2の用紙に対するスリップによる給送不良の発生も抑制することができる。
【0041】
なお、本実施形態では、トルクリミッタ74を設けて、用紙幅規制部材60が用紙の束の幅方向端部に当接した後に、底板43の上昇に伴う駆動力が用紙幅規制部材60に加わらないようにしているが、これに限られるものではない。例えば、ピニオンギヤをゴムローラからなるピニオンローラとし、ラックギヤを矩形状の棒形状とし、摩擦力でラックをシート側へ移動させるように構成する。そして、用紙幅規制部材60が用紙の束の幅方向端部に当接すると、ピニオンローラがラックに対してスリップし、底板の上昇に伴う駆動力が用紙幅規制部材60に加わらないようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態では、トレイ筐体30が収納可能な最大サイズがレターサイズであるが、これよりも幅方向のサイズがわずかに小さいA4サイズにおいても、この用紙幅規制部材60により幅方向規制部材により規制することもできる。具体的には、移動機構を、トレイ筐体30が収納可能な最大枚数の用紙が載置されたときの底板43の上昇で、用紙幅規制部材60がAサイズの用紙の幅方向端部に突き当たるように構成する。これにより、トレイ筐体30が収納可能な最大サイズがレターサイズのみならず、A4サイズの用紙に対しても給送時において用紙幅規制部材60により幅方向に規制することができ、複数の用紙サイズにて、サイドフェンス41突き当て作業のし忘れによる用紙の斜め送りを抑制することができる。
【0043】
また、用紙幅規制部材60は、スポンジなどの弾性体で構成している。これにより、
図7に示すように、用紙幅規制部材60を用紙の束の幅方向端部に突き当てたときに、用紙幅規制部材60が潰れて、用紙幅規制部材60を用紙の束に密着させることができる。これにより、隙間なく用紙幅規制部材60を用紙に接触させることができ、より一層、用紙の斜め送りを抑制することができる。また、用紙幅規制部材60として用いる弾性体の弾性率や硬度を調整することにより、容易に最適な押し当て力を得ることができる。
【0044】
図8は、ラックギヤ76と用紙幅規制部材60との間に押圧手段としての加圧スプリング77を設けた例を示す概略図である。
図8に示すように、ラックギヤ76と用紙幅規制部材60との間に加圧スプリング77を設けることで、用紙の束の幅方向端部に用紙幅規制部材60が突き当たると、加圧スプリング77が圧縮変形して、用紙幅規制部材60を用紙の束の幅方向に押圧する押圧力が発生する。これにより、用紙幅規制部材60をより用紙に密着させることができ、用紙の斜め送りの抑制効果を高めることができる。また、用いる加圧スプリング77のバネ乗数により、押圧力を調整することができ、容易に最適な押圧力を得ることができる。
【0045】
図9は、用紙幅規制部材60の少なくとも用紙の束の幅方向端部に接触する接触面を摺動部材とした例を示す概略図である。
図9(a)に示すように、用紙幅規制部材60を摺動部材としてもよいし、
図9(b)に示すように、安価な材料からなる基部60aと、摺動部材からなる接触部60bとで用紙幅規制部材60を構成してもよい。このように、用紙幅規制部材60の少なくとも用紙の束の幅方向端部に接触する接触面を摺動部材とすることで、用紙給送時の用紙の用紙幅規制部材60に対する摺動抵抗を低減でき、給送性をよくすることができる。
【0046】
図9(b)に示す構成では、基部60aをスポンジなどの弾性体としてもよく、
図9(a)、
図9(b)に示す構成においてもラックギヤ76と用紙幅規制部材60との間に加圧スプリング77を設けてもよい。
【0047】
また、上述では、底板43にシートを載置し、その後に底板43の昇降に連動して用紙幅規制部材60を自動的に移動し、用紙の束の幅方向端部に当接する構成としている。しかし、例えば、移動機構にアクチュエータなどを設けて、底板43の上昇とは異なる前後のタイミングまたは上昇完了後のタイミングでアクチュエータを駆動し、用紙幅規制部材60をシートに向けて移動して用紙の束の幅方向端部に当接させてもよい。
【0048】
また、用紙の束の後端に突き当てる後端規制部材を、幅方向両側に設け、用紙の束をトレイ筐体30にセットするときは、用紙の束の後端から給送方向上流側に退避した退避位置にこれら後端規制部材を位置させる。そして、給送トレイ1を装置本体に収納後の底板の上昇に伴い、各後端規制部材を用紙の束の後端に向けて移動させて、用紙の束の後端に突き当てて、用紙の束の後端の位置を規制するように追加または置き換えてもよい。このように、後端規制部材を用紙の束の後端に突き当てることで、用紙セット時の用紙スキューが解消され、サイドフェンスの動作し忘れによる用紙の斜め送りを抑制することができる。また、用紙の束をセットするときは、後端規制部材は退避位置にあるため、この後端規制部材が、用紙セットの邪魔となることがなく、用紙のセット性を良好にできる。
【0049】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
給送対象に向けて給送される用紙などシートを収納するトレイ筐体30などの収納筐体と、収納筐体に対して幅方向に移動可能で、シートの幅方向端部に突き当ててシートの幅方向の位置を規制するサイドフェンス41などの第一規制部材と、第一規制部材よりも給送方向上流に設置され、シートの幅方向端部またはシートの後端部に突き当ててシートの位置を規制する用紙幅規制部材60などの第二規制部材と、シートが載置され、少なくとも給送方向下流側端部が昇降移動する底板43などの底板部材とを備える給送トレイ1などのシート収納装置において、底板部材にシートを載置した後に、第二規制部材を、シートから退避した退避位置からシートに向かって移動させてシートの端部に自動的に突き当てる移動機構70などの第二規制部材移動機構を備えた。
これによれば、底板43などの底板部材に用紙Pなどのシートが載置される前の状態においては、用紙幅規制部材60などの第二規制部材は、退避位置にあるため、第二規制部材がシートのセットの邪魔とならず、特許文献1に記載の構成に比べて、シートを容易にトレイ筐体30などの収納筐体にセットすることができる。
また、第二規制部材は、底板部材にシートが載置された後、自動的に退避位置から移動して、シートの端部に突き当たってシートの位置を規制する。これにより、サイドフェンス41などの第一規制部材をシートの幅方向端部に突き当てる作業を忘れたとしても、第二規制部材によりシートの位置を規制することができ、シート収納装置内でシートがスキューするのを抑制できる。
【0050】
(態様2)
態様1において、移動機構70などの第二規制部材移動機構は、底板43などの底板部材の昇降動作に連動して第二規制部材を移動させる。
これによれば、実施形態で説明したように、底板43などの底板部材に載置されたシートを給送ローラ2に当接させる際の底板部材の昇降に伴い、用紙幅規制部材60を移動させて、用紙などのシートの端部に突き当てることができる。
【0051】
(態様3)
態様1または2において、用紙幅規制部材60などの第二規制部材は、弾性体である。
これによれば、
図7を用いて説明したように、用紙幅規制部材60などの第二規制部材をシートの端部に突き当てたときに、第二規制部材が潰れて、第二規制部材をシートに密着させることができ、より一層、シートの斜め送りを抑制することができる。
【0052】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、用紙幅規制部材60などの第二規制部材がシートの端部に当接した際に、第二規制部材を前記シートに向けて押圧する加圧スプリング77などの押圧手段を有する。
これによれば、
図8を用いて説明したように、用紙幅規制部材60などの第二規制部材をシートに密着させることができ、より一層、シートの斜め送りを抑制することができる。
【0053】
(態様5)
態様1乃至4いずれかにおいて、用紙幅規制部材60などの第二規制部材の用紙などのシートに接触する接触部が、摺動部材で構成されている。
これによれば、
図9を用いて説明したように、給送時のシートの用紙幅規制部材60などの第二規制部材に対する摺動抵抗を低減でき、給送性をよくすることができる。
【0054】
(態様6)
給送トレイ1などのシート収納装置を備え、シート収納装置に収納された用紙などのシートを給送してシートに画像を形成する画像形成装置において、シート収納装置として、態様1乃至5いずれかのシート収納装置を用いた。
シート収納装置へのシートセットを容易に行え、かつ、シートに対して画像が傾いた不良画像が発生するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 :給送トレイ
2 :給送ローラ
22 :分離ローラ
30 :トレイ筐体
30a :底面
32 :前壁
41 :サイドフェンス
43 :底板
51 :エンドフェンス
60 :用紙幅規制部材
60a :基部
60b :接触部
70 :移動機構
71 :入力ギヤ
72 :ウォームギヤ
73 :駆動伝達軸
74 :トルクリミッタ
75 :ピニオンギヤ
76 :ラックギヤ
76a :ストッパ部
77 :加圧スプリング
130 :レバー部材
130a :揺動端
132 :スプリング
133 :レバーガイド部材
200 :給送装置
201 :ストッパ部
431 :底板回動軸
P :用紙
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】