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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20240628BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20240628BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240628BHJP
   B60K 35/00 20240101ALI20240628BHJP
【FI】
B60R11/02 C
C03C21/00 101
G09F9/00 350Z
B60K35/00
G09F9/00 302
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023513017
(86)(22)【出願日】2022-04-04
(86)【国際出願番号】 JP2022017072
(87)【国際公開番号】W WO2022215687
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2021066497
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 涼
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰宏
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-027169(JP,A)
【文献】特開2019-019054(JP,A)
【文献】特開2016-102868(JP,A)
【文献】特開2018-169616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
C03C 21/00
G09F 9/00
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、
各層の部材は、板状部材のみ、または、前記板状部材およびリブからなり、
前記筐体底部材は、車両の内装部に対して、少なくとも2点の固定点で固定され、
前記2点の固定点の中間点を通り、前記2点の固定点どうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面R、
前記カバーガラスの主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg
前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記中間点に対応する点までの長さを距離Z、
としたときに、
前記距離Zと前記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、
前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を前記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、下記式(1)を満たす、車載表示装置。
【数1】
前記式(1)中、
:前記カバーガラスのヤング率
:前記カバーガラスの厚さ
であり、Sは、下記式(2)で表される。
【数2】

前記式(2)中、
:第2層のヤング率
:第2層の厚さ
:第n層のヤング率
:第n層の厚さ
であり、前記t、前記tおよび前記tを含む、1~n層のうち任意のk層目の厚さtは、下記式(3)で表される。
【数3】
前記式(3)中、
a:前記第k層の前記板状部材の厚さ
:前記リブのうち、前記仮想線Lが通る前記第k層の前記板状部材上の点pに最も近いリブRb1の幅
:前記リブRb1と、前記仮想線Lが通る前記板状部材上の点pを通り前記リブRb1の中心線に垂直な線の延びる方向に位置するリブRb2との距離
h:前記リブRb1および前記リブRb2の厚さ
であり、bは、下記式(4)で表される。
【数4】
ただし、
前記nは、3以上の整数であり、
前記hは、0以上の数であり、
前記ヤング率の単位は、GPaであり、
前記厚さ、前記距離および前記幅の単位は、mmである。
【請求項2】
カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、
各層の部材は、板状部材のみ、または、前記板状部材およびリブからなり、
前記筐体底部材は、車両の内装部に対して1点の固定点で固定され、
前記固定点を通り、前記固定点における前記カバーガラスの厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面を仮想面R、
前記カバーガラスの主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg
前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記固定点に対応する点までの長さを距離Z、
としたときに、
前記距離Zと前記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、
前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を前記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、下記式(1)を満たす、車載表示装置。
【数5】
前記式(1)中、
:前記カバーガラスのヤング率
:前記カバーガラスの厚さ
であり、Sは、下記式(2)で表される。
【数6】
前記式(2)中、
:第2層のヤング率
:第2層の厚さ
:第n層のヤング率
:第n層の厚さ
であり、前記t、前記tおよび前記tを含む、1~n層のうち任意のk層目の厚さtは、下記式(3)で表される。
【数7】
前記式(3)中、
a:前記第k層の前記板状部材の厚さ
:前記リブのうち、前記仮想線Lが通る前記第k層の前記板状部材上の点pに最も近いリブRb1の幅
:前記リブRb1と、前記仮想線Lが通る前記板状部材上の点pを通り前記リブRb1の中心線に垂直な線の延びる方向に位置するリブRb2との距離
h:前記リブRb1および前記リブRb2の厚さ
であり、bは、下記式(4)で表される。
【数8】
ただし、
前記nは、3以上の整数であり、
前記hは、0以上の数であり、
前記ヤング率の単位は、GPaであり、
前記厚さ、前記距離および前記幅の単位は、mmである。
【請求項3】
前記筐体底部材は、ブラケットを用いて、前記内装部に固定される、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、更に、下記式(5)を満たす、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
S≦-588.8t+2660…(5)
【請求項5】
前記カバーガラスは、圧縮応力層の厚さが10μm以上ある強化ガラスであり、
前記カバーガラスの厚さが、0.5~2.5mmであり、
前記カバーガラスのヤング率が、60~90GPaであり、
前記表示パネルのヤング率が、60~90GPaであり、
前記筐体底部材のヤング率が、40~250GPaである、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項6】
前記仮想線Lが通る前記カバーガラスの主面上の打点Pに、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにインパクタを衝突させるヘッドインパクト試験において、前記インパクタの減速度が、50G以上である、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項7】
前記カバーガラスの単位面積あたりの前記車載表示装置の質量をMとしたとき、下記式(6)および(7)を満たす、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
M≧-0.10t +0.38t -0.62t +0.42t+1.75…(6)
M≦0.03t+2.40…(7)
ただし、前記質量Mの単位は、g/cmである。
【請求項8】
前記表示パネルの端面と対向する位置に、筐体側壁が設けられ、
前記表示パネルの端面と前記筐体側壁との距離d1が、2mm以下である、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルの端部と、前記表示パネルよりも前記筐体底部材側の部材との距離d2が、1mm以下である、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【請求項10】
前記仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、下記式(4A)を満たす、請求項1又は2に記載の車載表示装置。
【数9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表示パネルおよびカバーガラスを有する車載表示装置がある。
車載表示装置のカバーガラスには、特許文献1に記載されているように、「安全性の観点から、車両の衝突事故が発生したときに乗員の頭部等がぶつかっても割れないほどの優れた耐衝撃性が要求される」([0005])。
【0003】
特許文献1には、カバーガラスを有する車載表示装置が「式(I)・・・P≦0.0302t +0.0039t+0.0478」を満たすことにより、カバーガラスの耐衝撃性に優れることが記載されている([0007]~[0008])。この「式(I)」中のP値は、車載表示装置の剛性を示す指数と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/027812号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車載表示装置は、通常、筐体底部材を有する。筐体底部材は、車載表示装置の各部を収納する筐体を構成する。
筐体底部材は、ブラケット等の固定部材を介して、車両の内装部(ダッシュボードなど)に固定される。
【0006】
車載表示装置の型(タイプ)としては、筐体底部材の下端のみがダッシュボードに固定された「スタンディング型」と、筐体底部材の上端付近もダッシュボードに固定された「インダッシュ型またはオンダッシュ型」とがある。
以下では、便宜的に、「インダッシュ型またはオンダッシュ型」を、まとめて、単に、「インダッシュ型」ともいう。
【0007】
特許文献1には、実質的に、スタンディング型の車載表示装置のみが開示されている(特許文献1の図4を参照)。
インダッシュ型の車載表示装置は、スタンディング型の車載表示装置よりもダッシュボードからのはみ出しが小さく、固定状態が強固であり、衝撃吸収性が低くなりやすい。
このため、インダッシュ型の車載表示装置においては、カバーガラスが良好な耐衝撃性を発揮するのに必要な剛性の範囲が、スタンディング型とは異なる場合がある。すなわち、特許文献1に記載の「式(I)」を満たすだけでは不十分な場合がある。
【0008】
なお、近年は、軽量化等の目的で、リブを有する筐体底部材を用いることがあり、この点も考慮して、車載表示装置の剛性を検討することを要する。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、カバーガラスの耐衝撃性に優れるインダッシュ型またはオンダッシュ型の車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[10]を提供する。
【0011】
[1]カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、各層の部材は、板状部材のみ、または、上記板状部材およびリブからなり、上記筐体底部材は、車両の内装部に対して、少なくとも2点の固定点で固定され、上記2点の固定点の中間点を通り、上記2点の固定点どうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面R、上記カバーガラスの主面と上記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg、上記表示パネルの主面と上記仮想面Rとの交差線のうち、上端から上記中間点に対応する点までの長さを距離Z、としたときに、上記距離Zと上記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、上記表示パネルの主面と上記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を上記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、上記カバーガラスから上記筐体底部材までが、後述する式(1)を満たす、車載表示装置。
【0012】
[2]カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、各層の部材は、板状部材のみ、または、上記板状部材およびリブからなり、上記筐体底部材は、車両の内装部に対して1点の固定点で固定され、上記固定点を通り、前記固定点における前記カバーガラスの厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面を仮想面R、上記カバーガラスの主面と上記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg、上記表示パネルの主面と上記仮想面Rとの交差線のうち、上端から上記固定点に対応する点までの長さを距離Z、としたときに、上記距離Zと上記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、上記表示パネルの主面と上記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を上記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、上記カバーガラスから上記筐体底部材までが、後述する式(1)を満たす、車載表示装置。
【0013】
[3]上記筐体底部材は、ブラケットを用いて、上記内装部に固定される、上記[1]又は[2]に記載の車載表示装置。
[4]上記仮想線L上において、上記カバーガラスから上記筐体底部材までが、更に、後述する式(5)を満たす、上記[1]~[3]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[5]上記カバーガラスは、圧縮応力層の厚さが10μm以上ある強化ガラスであり、上記カバーガラスの厚さが、0.5~2.5mmであり、上記カバーガラスのヤング率が、60~90GPaであり、上記表示パネルのヤング率が、60~90GPaであり、上記筐体底部材のヤング率が、40~250GPaである、上記[1]~[4]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[6]上記仮想線Lが通る上記カバーガラスの主面上の打点Pに、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにインパクタを衝突させるヘッドインパクト試験において、上記インパクタの減速度が、50G以上である、上記[1]~[5]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[7]上記カバーガラスの単位面積あたりの上記車載表示装置の質量をMとしたとき、後述する式(6)および(7)を満たす、上記[1]~[6]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[8]上記表示パネルの端面と対向する位置に、筐体側壁が設けられ、上記表示パネルの端面と上記筐体側壁との距離d1が、2mm以下である、上記[1]~[7]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[9]上記表示パネルの端部と、上記表示パネルよりも上記筐体底部材側の部材との距離d2が、1mm以下である、上記[1]~[8]のいずれか1に記載の車載表示装置。
[10]上記仮想線L上において、上記カバーガラスから前記筐体底部材までが、後述する式(4A)を満たす、前記[1]~[9]のいずれか1に記載の車載表示装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、カバーガラスの耐衝撃性に優れるインダッシュ型またはオンダッシュ型の車載表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、車載表示装置を示す断面図である。
図2図2は、図1のA-A線断面図である。
図3図3は、筐体底部材をリブ側から見た模式図である。
図4図4は、ブラケットの配置状態を示す模式図である。
図5図5は、筐体底部材を示す断面図である。
図6図6は、図5のリブを模式的に示す平面図である。
図7図7は、点pの位置が図6とは異なる場合のリブを示す模式図である。
図8図8は、縦方向のリブのほかに、横方向のリブも示す模式図である。
図9図9は、並んだリブどうしが平行ではない状態を示す模式図である。
図10図10は、カバーガラスに表示パネルが貼合された状態を示す模式図である。
図11図11は、車載表示装置を拡大して示す断面図である。
図12図12は、車載表示装置の変形例を示す模式図である。
図13図13は、断面形状が台形である場合のリブを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む。
【0017】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態には、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変形および置換を加えることができる。
【0018】
本発明の実施形態に係る車載表示装置は、カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、各層の部材は、板状部材のみ、または、前記板状部材およびリブからなり、前記筐体底部材は、車両の内装部に対して、少なくとも2点の固定点で固定され、前記2点の固定点の中間点を通り、前記2点の固定点どうしを結ぶ線に対して垂直な仮想面を仮想面R、前記カバーガラスの主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記中間点に対応する点までの長さを距離Z、としたときに、前記距離Zと前記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を前記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、後述する式(1)を満たす。
【0019】
または、本発明の実施形態に係る車載表示装置は、カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する車載表示装置であって、各層の部材は、板状部材のみ、または、前記板状部材およびリブからなり、前記筐体底部材は、車両の内装部に対して1点の固定点で固定され、前記固定点を通り、前記固定点における前記カバーガラスの厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面を仮想面R、前記カバーガラスの主面と前記仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcg、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線のうち、上端から前記固定点に対応する点までの長さを距離Z、としたときに、前記距離Zと前記距離Zcgとの比Z/Zcgが、0.6以下であり、前記表示パネルの主面と前記仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を前記車載表示装置の厚さ方向に通る仮想線L上において、前記カバーガラスから前記筐体底部材までが、後述する式(1)を満たす。
【0020】
図1は、車載表示装置1を示す断面図である。以下、「車載表示装置」を単に「表示装置」という場合がある。
図2は、図1のA-A線断面図である。なお、図2では、後述する横方向のリブ7(リブ75、リブ76およびリブ77)の図示を省略している。
後述するように、車載表示装置1は、インダッシュ型またはオンダッシュ型の車載表示装置である。
車載表示装置1は、例えば、カーナビゲーション装置であるが、ディスプレイオーディオなどの車両に搭載される他の表示装置であってもよい。
【0021】
〈基本構成〉
車載表示装置1は、液晶パネルなどの表示パネル3およびカバーガラス2を有する。
表示パネル3は、粘着層(図示せず)によって、カバーガラス2に貼合されている。
粘着層は、例えば、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルムまたはOCAテープであり、その厚さは、例えば、5~400μmであり、50~200μmが好ましい。
車載表示装置1は、更に、筐体底部材5および筐体側壁8を有し、これらが車載表示装置1の筐体を構成する。筐体底部材5の上には、表示パネル3が液晶パネルである場合に必要なバックライトユニット4が配置されている。以下、「筐体底部材」を単に「底部材」という場合がある。
【0022】
このように、本発明の実施形態に係る車載表示装置は、カバーガラスから筐体底部材までのn層が積層された構成を有する。本発明の実施形態に係る車載表示装置は、カバーガラスから筐体底部材までのn層を有し、かつ、途中に少なくとも表示パネルを有する。換言すれば、本発明の実施形態に係る車載表示装置は筐体底部材、表示パネル及びカバーガラスをこの順で含むn層の積層構造を有し、その第1層がカバーガラスであり、第n層が筐体底部材である。
nは、3以上の整数であり、4以上が好ましい。一方、nは、15以下が好ましく、12以下がより好ましい。
【0023】
例えば、図1および図2に示す車載表示装置1の場合、カバーガラス2(第1層)、表示パネル3(第2層)、バックライトユニット4(第3層)、および、筐体底部材5(第4層)という4層が、この順に積層されている。
実際には、カバーガラス2(第1層)と表示パネル3(第2層)との間に粘着層が存在するが、粘着層の取り扱いについては、後述する。
【0024】
なお、車載表示装置1は、バックライトユニット4を有しなくてもよい。
具体的には、例えば、車載表示装置1は、カバーガラス2(第1層)、表示パネル3(第2層)、および、筐体底部材5(第3層)という3層がこの順に積層された構成を有していてもよい。
この場合、表示パネル3としては、バックライトユニット4を必要としない、有機ELパネルなどが選択される。
【0025】
また、本発明の実施形態に係る車載表示装置における各層の部材は、板状部材のみ、または、板状部材およびリブからなる。
ただし、以下に記載する実施形態では、板状部材およびリブからなる部材が筐体底部材に限定される場合を例に説明する。
筐体底部材とは別の部材が板状部材およびリブからなる場合は、以下に説明する筐体底部材と同様に扱えばよい。
【0026】
筐体底部材5は、板状部材である筐体底板6を含む。筐体底板6におけるカバーガラス2とは反対側の面には、複数本のリブ7が設けられている。リブ7は、一例として、四角柱状の部材である。筐体底部材5を、リブ7を有する形状にすることで、リブ7が無い肉厚な板形状にするよりも、車載表示装置1を軽量化できる。リブ7の形状は、直線的な形状ではなく、湾曲した形状であってもよい。
【0027】
図3は、筐体底部材5をリブ7側から見た模式図である。図3では、後述するブラケット9などの図示を省略している。
図3に示すように、本実施形態の筐体底部材5においては、複数本のリブ7が格子状に設けられている。具体的には、図3中の上下方向に延びている複数本のリブ7、すなわちリブ71、リブ72、リブ73およびリブ74と、図3中の左右方向に延びている複数本のリブ7、すなわちリブ75、リブ76およびリブ77とが交差している。ただし、リブ7の形状は、図3に限られず任意であってよく、例えば、直線的な形状ではなく、湾曲した形状であってもよいし、格子状に設けられていなくてもよい。
なお、筐体底部材5は、リブ7を有しなくてもよい。この場合、筐体底部材5は、筐体底板6のみからなる。
筐体底部材5は、筐体側壁8と一体であっていてもよい。筐体底部材5は、ダイキャスト、プレス成型などの方法によって形成されてもよい。
【0028】
〈車両の内装部に対する固定〉
次に、上述した図1図3に加えて、更に図4を参照して、車載表示装置1(筐体底部材5)の、車両の内装部10に対する固定について、説明する。以下、「車両の内装部」を単に「内装部」という場合がある。内装部10は、例えば、車両のダッシュボードの一部である。
図4は、ブラケット9の配置状態を示す模式図であり、車載表示装置1(筐体底部材5)を内装部10(図4では図示せず)側から見た図である。図4では、リブ7などの図示を省略している。
【0029】
筐体底部材5は、その背面側(カバーガラス2とは反対側)の固定点(固定点P1~固定点P4)で、車両の内装部10に固定されている。すなわち、図4において、底部材5のZ方向側の主面(以下、単に「底部材5の主面」という場合がある)には、固定点Pが形成されている。固定点Pの数は図4の例では4つであるが、その数は任意であってよい。固定点P(固定点P1~固定点P4)は、底部材5の、車両に(本実施形態では内装部10に)固定されるインターフェースとなる箇所であり、本実施形態では後述のブラケット9が取り付けられ得る箇所である。以降の固定点Pの説明におけるX方向、Y方向及びZ方向は、次のように規定できる。すなわち、図1図4に示すように、表示装置1の厚み方向であって表示面から背面に向かう方向を、Z方向とする。表示装置1が車両に取り付けられた状態で、Z方向と直交し水平面に沿った一方の向きに向かう方向(図1の例では右方向)を、X方向とする。Z方向及びX方向に直交する方向のうち鉛直方向上方に向かう方向をY方向とする。なお、Z方向、X方向、Y方向については、「方向」は向きを有する概念として使用される。すなわち、「Z方向」と称した場合、上記で定めた向きを指すものとし、「Z方向と反対の方向」と称した場合、上記で定めた向きとは反対の向きを指すものとする。
【0030】
底部材5は、そのZ方向側の主面が固定部材(ここではブラケット9)と接触した状態で、ブラケット9に固定される。底部材5の主面のうちの、固定部材と接触する領域を接触領域とすると、固定点Pは、接触領域上の点といえる。固定点Pは、接触領域上の任意の位置であってよい。例えば、図4においては、固定点P(固定点P1~固定点P4)は各接触領域の辺のうち、Y方向側に位置する辺の、X方向における中点位置として例示される。固定点P(固定点P1~固定点P4)は、例えば接触領域の辺のうち、Y方向と反対の方向側に位置する辺の、X方向における中点位置であってもよい。なお、固定点Pは、接触領域毎に1つずつ形成されるといえる。すなわち、固定点Pが複数ある場合には、離れた位置に複数の接触領域が形成されており、それぞれの接触領域に1つずつ固定点が形成されているといえる。固定点Pが1つの場合には、接触領域も1つであるといえる。
【0031】
例えば、車載表示装置1(筐体底部材5)がブラケット9に固定される場合には、底部材5の主面のうちの、ブラケット9の凸面9aの端の一辺の中点と重なる位置(すなわち、図1~4に例示される実施形態では接触領域のY方向と反対側の辺の、X方向における中点)を、固定点Pとしてもよい。また、底部材5がボルトなどの固定具でブラケット9に固定される場合には、固定点Pは、底部材5の主面のうちの、固定具が挿入される穴(例えばボルト穴)が開口している箇所であってよい。または、底部材5が1つの接触領域あたり複数の固定具でブラケット9に固定される場合には、固定点Pは、固定具が挿入される穴(例えばボルト穴)が開口している箇所同士の中央位置であってもよい。また例えば、底部材5が接着剤などでブラケット9に固定される場合には、固定点Pは、底部材5の主面のうちの、接着剤が塗布される接触領域上の点であってよい。また例えば、底部材5の主面に突起部が形成されて、突起部が車両(本実施形態では内装部10)に形成された凹部に挿入されることで、車両に固定される場合もある。この場合、ブラケット9を別途設けることなく、底部材5の突起部をブラケット9とみなしてよい。この場合、底部材5の突起部のZ方向側の面が接触領域となり、接触領域上の点を、固定点Pとしてよい。また例えば、底部材5の主面に凹部が形成されて、車両(本実施形態では内装部10)に形成された突起部が底部材5の主面の凹部に挿入されることで、車両に固定される場合もある。この場合、ブラケット9を別途設けることなく、車両の突起部をブラケット9とみなしてよい。この場合、底部材5の凹部のZ方向側の面が接触領域となり、接触領域上の点を、固定点Pとしてよい。固定点Pの位置などについては後述する。
【0032】
図4の例では、固定点P1および固定点P2は、車両の幅方向に沿って配置されている。固定点P3および固定点P4も同様である。固定点P1および固定点P2を通る線と、固定点P3および固定点P4を通る線とは、互いに平行であり、これらの4点で長方形を形成している。
【0033】
図1図4に示すように、固定点(固定点P1~固定点P4)には、固定部材であるブラケット9(ブラケット91~ブラケット94)が取り付けられてもよい。その場合、ブラケット9を介して、筐体底部材5は、内装部10に固定される。
ブラケット9は、長尺の板状部材であり、U字状に屈曲している。ブラケット9はS字状に屈曲していてもよい。
ブラケット9は、例えばその板幅方向の中心が固定点(固定点P1~固定点P4)に位置付けられている。ブラケット9は、U字状の屈曲により形成される凸面9a(図2中、下側の面)の端の一辺が固定点(固定点P1または固定点P2)に接している。図1~4に例示する実施形態では、ブラケット9の凸面9aに垂直な方向は、車両の幅方向と垂直に交わる。
【0034】
図1~4に例示される実施形態では、ブラケット9は、U字状の屈曲により形成される凸面9aと、凸面9aに接続する一方の面9bと、凸面9aに接続する他方の面9cとから構成される。一方の面9bと、他方の面9cはそれぞれ、凸面9aに略垂直に形成されている。また、図1~4に例示される実施形態では、ブラケット9は、凸面9aに接続する一方の面9bが筐体底部材5と接し、かつ、凸面9aに接続する他方の面9cが内装部10と接している。
ブラケット9は、筐体底部材5および内装部10と、例えばネジ(図示せず)などの固定具によって固定されている。
【0035】
図4には、固定点P1と固定点P2との中間点Qが図示される。
中間点Qと固定点P1との距離、または、中間点Qと固定点P2との距離を距離Xとする。
振動特性(JIS D 1601 自動車部品振動試験方法)を好適なものとする観点から、距離Xは、30~200mmが好ましく、50~130mmがより好ましい。
【0036】
図4中の上下方向に並ぶ固定点P1と固定点P3との距離、または、固定点P2と固定点P4との距離を距離Yとする。
距離Yは、距離Xと同様の理由から、30~200mmが好ましく、35~125mmがより好ましい。
【0037】
本発明の実施形態において、中間点Qとしては、筐体底部材5に設定される固定点のうち、上から、すなわちY方向側から2つの固定点を選択し、それらの中点を採用する。
例えば、図1図4には、上下2つずつ4つの固定点(固定点P1~固定点P4)で筐体底部材5が内装部10に固定される態様が例示される。
図1図4に示すように、固定点が上下に複数ある場合、中間点Q(ひいては、後述する仮想面R)を規定するための固定点としては、最上段の2つの固定点(図1図4では、固定点P1および固定点P2)を用いる。
【0038】
同じ高さ、すなわちY方向における位置が同じである線上に3点以上の固定点が存在する場合、固定点どうしの間隔が最も狭い固定点を2つ選択し、その中点を中間点Qとする。
同じ高さに、等間隔で3点以上の固定点が存在する場合、間隔が最も狭い2つの固定点の組み合わせのうち任意の組み合わせとなる2つの固定点の中点を中間点Qとしてよい。すなわち、中間点Q(ひいては、後述する仮想面Rおよび仮想線L)の候補が複数ある場合、そのうちいずれか1つが本発明の要件を満たせばよいものとする。
【0039】
筐体底部材5は、3点で、内装部10に固定されていてもよい。
例えば、図4を援用して説明すると、固定点P1および固定点P2が無く、その代わりに、固定点P1と固定点P2とを結ぶ線上に、別の固定点P′(図4等には図示せず)が存在する場合が想定される。この場合、筐体底部材5は、固定点P3、固定点P4および固定点P′の3点で、内装部10に固定される。
このとき、固定点P3と固定点P4とに高さの差がなければ、固定点P′に近い方の点を選択し、固定点P′との中点を中間点Qとする。固定点P′との距離に差がない場合は、任意の一方を選択し、固定点P′との中点を中間点Qとする。
【0040】
筐体底部材5は、内装部10に対して、1点の固定点(便宜的に「固定点P″」と表記する)のみで固定されてもよい。すなわち、固定点P″のみにブラケット9が配置され、このブラケット9を用いて、筐体底部材5が内装部10に固定されてもよい。
この場合、固定点P″に配置されるブラケット9の凸面9aの筐体底部材5と接する辺に対して垂直な仮想面を、後述する仮想面Rとする。
【0041】
筐体底部材5は、ブラケット9を用いることなく、例えば筐体底部材5の一部が変形して、内装部10に固定されてもよい。反対に、内装部10の一部が変形して、筐体底部材5に固定されてもよい。この場合、各固定点は、各固定箇所の中心と定義すればよい。
なお、上述した固定の条件を満たす限り、筐体側壁8の一部が変形して内装部10に固定されてもよく、反対に、内装部10の一部が変形して筐体側壁8に固定されてもよい。
【0042】
〈比Z/Zcg
図1図4には、中間点Qを通り、固定点P1と固定点P2と(中間点Qの定義に用いた2つの固定点P)を結ぶ線に対して垂直な仮想面Rを図示している。なお、上述したように、筐体底部材5がブラケット9を用いて1点の固定点P″のみで内装部10に固定される場合、仮想面Rは、このブラケット9の凸面9aの筐体底部材5と接する辺に対して垂直な仮想面であり、固定点P″を通り、固定点P″におけるカバーガラス2の厚み方向と鉛直方向とを含む仮想面であるともいえる。換言すれば、中間点Qを有する態様において、仮想面Rは中間点Qを含むYZ平面として定義され得る。また、筐体底部材5が内装部10に対して1点の固定点P″のみで固定される場合には、仮想面Rは固定点P″を含むYZ平面として定義され得る。
【0043】
ここで、図2を参照されたい。カバーガラス2の主面と仮想面Rとの交差線の長さを距離Zcgとする。更に、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端(Y方向側の端)から中間点Qに対応する点までの長さを距離Zとする。ただし、筐体底部材5が内装部10に対して1点の固定点P″のみで固定される場合には、上記の「中間点Qに対応する点」を「固定点P″に対応する点」と読み替える。すなわち、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端(Y方向側の端)から固定点P″に対応する点までの長さを距離Zとする。距離Zについて、表示パネル3の中心から表示パネル3の外側に向かう方向を正方向とし、表示パネルの外側から表示パネル3の中心に向かう方向を負方向とする。
なお、「中間点Qに対応する点」又は「固定点P″に対応する点」とは、中間点Q又は固定点P″を、車載表示装置1の厚さ方向(図1中では上下方向)に移動させて、表示パネル3の主面上に位置付けた点である。
【0044】
本願においては、距離Zと距離Zcgとの比Z/Zcgが0.6を超える場合をスタンディング型と定義する。一方、距離Zと距離Zcgとの比Z/Zcgが0.6以下である場合をインダッシュ型またはオンダッシュ型と定義する。
【0045】
車載表示装置1は、距離Zと距離Zcgとの比Z/Zcgが0.6以下であり、インダッシュ型またはオンダッシュ型(以下、単に「インダッシュ型」ともいう)である。
【0046】
〈式(1)~式(4)〉
インダッシュ型の車載表示装置1においては、カバーガラスが良好な耐衝撃性を示すためには、上述したように、特許文献1に記載された「式(I)」を満たすだけでは不十分な場合がある。更に、リブ7を有し得る筐体底部材5の形状を考慮することを要する。
【0047】
ここで、図2には、表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線の上端から5mm下端側を車載表示装置1の厚さ方向に通る仮想線Lを図示している。仮想線Lは、カバーガラス2の表面(主面)に対して垂直である。
なお、仮想線Lが通るカバーガラス2の主面上の点を打点Pとする。後述するヘッドインパクト試験は、この打点Pにインパクタを衝突させて、カバーガラス2の耐衝撃性などを評価する試験である。
本発明者らは、仮想線L上において、カバーガラスから筐体底部材までのn層の積層体が下記式(1)を満たすときに、カバーガラスの耐衝撃性が優れることを見出した。
【0048】
【数1】
【0049】
上記式(1)中、
:カバーガラスのヤング率(単位:GPa)
:カバーガラスの厚さ(単位:mm)
であり、Sは、下記式(2)で表される。
なお、下記式(2)で求められるS値は、仮想線L上の各部材(各層)からなる積層体の剛性を示すと言える。打点Pは、車載表示装置1の中で、耐衝撃性が弱くなりやすい位置である。打点Pを通る仮想線L上の積層体の剛性が上記範囲であると、カバーガラス2の変形が抑制され、衝撃による発生応力がガラスの破壊応力を超えないため、カバーガラス2の耐衝撃性が優れる。
【0050】
【数2】
【0051】
上記式(2)中、
:第2層のヤング率(単位:GPa)
:第2層の厚さ(単位:mm)
:第n層(本実施形態では筐体底部材)のヤング率(単位:GPa)
:第n層(本実施形態では筐体底部材)の厚さ(単位:mm)
であり、t、tおよびtを含む、1~n層のうち任意のk層目の厚さtは、下記式(3)で表される。
【0052】
【数3】
【0053】
上記式(3)中、
a:第k層の板状部材(k=nのとき、本実施形態では筐体底部材の筐体底板)の厚さ(単位:mm)
:リブのうち、仮想線Lが通る第k層の板状部材(k=nのとき、本実施形態では筐体底部材の筐体底板)上の点pに最も近いリブRb1の幅(単位:mm)
:リブRb1とリブRb2との距離(単位:mm)
h:リブRb1およびリブRb2の厚さ(単位:mm)である。
上述の通り、本実施形態では板状部材およびリブからなる部材が筐体底部材に限定される場合を例示する。そのため、例えばk=nのとき、すなわち筐体底部材における板状部材及びリブについて述べると、図5~9に例示するように、リブRb1は、底部材5のリブ7のうち、仮想線Lが通る筐体底板6の主面6B(リブ7が設けられる側の主面)上の点pに最も近いリブ7である。リブRb2は、仮想線Lが通る筐体底板6上の点pとリブRb1とを結ぶ線上に位置し、かつリブRb1に最も近いリブ7である。言い換えれば、リブRb2は、リブRb1と、仮想線Lが通る筐体底板6上の点pを通りリブRb1の中心線に垂直な線の延びる方向に位置するリブである。
また、リブRb1の幅とは、リブRb1の延在方向から見た場合のリブRb1の幅を指す。また、リブRb1とリブRb2との距離とは、リブRb1の延在方向から見た場合の、リブRb1の中心軸とリブRb2の中心軸と間の距離を指す。さらに言えば、リブRb1とリブRb2との距離とは、点pを通るリブRb1(リブ72)の垂線上における、リブRb1(リブ72)とリブRb2(リブ73)との距離(中心線どうしの距離)といえる。また、リブRb1とリブRb2のZ方向における厚みが異なる場合、hは、リブRb1とリブRb2のZ方向における厚みの平均値であってよい。
【0054】
式(3)において、bは、下記式(4)で表される。
【0055】
【数4】
【0056】
筐体底部材を含む各層の部材がリブを有しない場合もあることから、hは、0を含む数、すなわち、0以上の数である。
【0057】
第k層の部材がリブを有しない場合は、h=0であるから、その厚さtについては、上記式(3)および(4)から、t=aが算出される。
つまり、本実施形態においては、第1層(板状部材であるカバーガラスのみ)や第2層(板状部材である表示パネルのみ)は、リブを有しないから、それらの厚さは、板状部材であるカバーガラスや表示パネル自体の厚さとなる。
反対に、例えば、第1層や第2層にもリブがある場合は、それぞれの厚さであるtおよびtは、上記式(3)および(4)に基づいて算出される。
【0058】
図5は、筐体底部材5を示す断面図であり、図1の拡大図でもある。
図6は、図5のリブ7(リブ72およびリブ73)を模式的に示す平面図であり、筐体底板6(図6では図示せず)をリブ7側から見た図でもある。
図5および図6には、上述したa、h、w、wおよび点pが図示されている(aおよびhは図5のみ)。点pは、カバーガラス2の打点Pに対応する筐体底板6上の点であり、どちらも仮想線L上に位置する。
なお、bは、図5において、筐体底板6の表面(カバーガラス2側の面)から図心G(筐体底部材5の断面図である図5における図心)までの距離である。
【0059】
図5および図6において、リブ72およびリブ73は、どちらも、点pから等距離であるから、リブRb1は、リブ72およびリブ73のどちらであってもよい。ただし、便宜的に、図5および図6では、リブ72を、リブRb1としている。
図5および図6から、wが、点pに最も近いリブRb1の幅であることが分かる。更に、wが、リブRb1とリブRb2との距離(リブRb1およびリブRb2の中心線どうしの距離)であることが分かる。
【0060】
式(3)および式(4)においては、リブの無い筐体底部材と断面二次モーメントが同じになるように、第n層である筐体底部材の厚さ(t)(第k層の厚さt)を求めている。
【0061】
図7は、点pの位置が図6とは異なる場合のリブ7(リブ72およびリブ73)を示す模式図である。
図7では、点p(打点Pに対応する点)が、リブ72とリブ73との間ではなく、リブ72の外側(左側)に位置している。図7では、点pに最も近いリブ72がリブRb1となり、点pとリブRb1とを結ぶ線上に位置するリブ73がリブRb2となる。
そのうえで、リブRb1の幅w、および、リブRb1とリブRb2との距離wを求める。更に、点pとリブRb1との距離(点pから、リブRb1の中心線までの距離)wも求める。
そして、距離wが距離wと同値以上(w≧w)であれば、wおよびwの値を用いて、式(3)および式(4)を計算して、t(t)の値を求める。
しかしながら、距離wが距離wよりも大きい場合(w>w)は、wおよびwの値を式(3)および式(4)に適用せず、リブ7が無いものとして計算する。
【0062】
図8は、縦方向のリブ7(リブ72およびリブ73)のほかに、横方向のリブ7(リブ75およびリブ76)も示す模式図である。
図8では、点pに最も近いリブRb1は、横方向のリブ75である。そして、点pとリブRb1とを結ぶ線上に位置するリブRb2は、リブ75と平行なリブ76である。
このように、複数本のリブ7が存在する場合であっても(例えば、図3を参照)、そのうち、点pに最も近いリブRb1(および、それに対応するリブRb2)のみを考慮すればよい。
【0063】
点pとの距離が等しいリブRb1が複数本ある場合は、それら全てについて、上述した距離wと距離wとの関係を検討する。
そして、いずれか1つのリブRb1について、距離wが距離wと同値以上(w≧w)であれば、そのリブRb1に関するwおよびwの値を用いて、式(3)および式(4)を計算して、t(t)の値を求める。
【0064】
図9は、並んだリブ7どうしが平行ではない状態を示す模式図である。すなわち、図9においては、縦方向のリブ72とリブ73とが非平行であり、かつ、横方向のリブ75とリブ76とについても非平行である。
図9においては、点pに最も近いリブRb1は、リブ73である。そして、点pとリブRb1(リブ73)とを結ぶ線上に位置するリブRb2は、リブ72ではなく、リブ75である。
そして、リブRb1(リブ73)の幅w、および、点pを通るリブRb1(リブ73)の垂線上における、リブRb1(リブ73)とリブRb2(リブ75)との距離(中心線どうしの距離)wを求める。
【0065】
このように、複数本のリブ7が交差して形成される形状は、4つ角が直角の四角形(矩形)でなくてもよく、矩形以外の四角形、その他の多角形であってもよい。
その場合にも、上述した定義であれば、式(3)および式(4)の計算に必要なwおよびwの値を決定できる。
【0066】
なお、リブ7の断面形状は、例えば長方形や台形である。
図13は、断面形状が台形である場合のリブ7を示す模式図である。上述したwおよびwは、図13に示すように、筐体底部材5の筐体底板6の表面(リブ7が設けられている側の面)から、h/2の高さの位置における値とする。
【0067】
上記式(1)を満たすときにカバーガラスの耐衝撃性が優れることは、後述する[実施例]において実証されている。
すなわち、[実施例]においては、上記式(1)を満たさない場合(比較例)はカバーガラスに発生する応力が割れ発生の閾値より大きいのに対して、上記式(1)を満たす場合(実施例)はカバーガラスに発生する応力が割れ発生の閾値より小さいことが示されている。
更に、下記式(4A)を満たす場合は、カバーガラスに発生する応力が更に小さくなるため、割れ発生の頻度をより少なくすることができるので、更に好ましい。
【0068】
【数5】
【0069】
上述したように、インダッシュ型の車載表示装置は、衝撃吸収性が低くなりやすい。具体的には、インダッシュ型の車載表示装置は、ヘッドインパクト試験において、インパクタの減速度が、50G以上であり得る。
【0070】
なお、ヘッドインパクト試験は、仮想線Lが通るカバーガラス2の主面上の打点P(図2参照)に、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにインパクタを衝突させる試験である(後述する[実施例]を参照)。
【0071】
そして、乗員の安全性の観点から、ヘッドインパクト試験において、インパクタの減速度が80Gを超える時間(以下、便宜的に、「減速度80G超時間」ともいう)が3ミリ秒(ms)未満であることが要求される。
このような観点から、車載表示装置は、仮想線L上において、第1層から第n層までが、更に、下記式(5)を満たすことが好ましい。
S≦-588.8t+2660…(5)
上記式(5)を満たすときに、減速度80G超時間が3ミリ秒未満であることは、後述する[実施例]において実証されている。
【0072】
なお、上述したように、実際には、カバーガラス(第1層)から筐体底部材(第n層)までの部材の少なくとも一層は、粘着層であり得る。例えば、上述した4層構造においては、カバーガラス(第1層)と表示パネル(第2層)との間に、粘着層が配置され得る。
ここで、粘着層のヤング率(E粘着層)および厚さ(t粘着層)を考慮すると、上記S値を求める式(2)は、以下のように表される。
S=E粘着層・t粘着層 +E・t +E・t +E・t … (2)
しかしながら、粘着層のヤング率(E粘着層)は、その他の層のヤング率と比較して非常に小さい。そのうえ、粘着層の厚さ(t粘着層)は、例えば5~400μmである。
このため、式(2)中の「E粘着層・t粘着層 」の値は、その他の「E・t 」~「E・t 」の値と比べて、無視できるほど小さい。
したがって、第1層から第n層までに粘着層が存在する場合であっても、式(2)を考える際に、粘着層は存在しないものとみなしてもよい。換言すれば、「E粘着層・t粘着層 」の値を0(ゼロ)とみなしてもよい。
【0073】
同様の理由から、カバーガラス(第1層)から筐体底部材(第n層)までに含まれる他の薄膜層および樹脂層についても、式(2)を考える際に、存在しないものとみなしてよい。例えば、カバーガラスの表面には、AR(Anti-Reflection)層、AFP(Anti-Finger-Print)層などの薄膜層が形成されている。また、表示パネルは、TFT、透明導電体などの薄膜層を有する。しかし、これらの薄膜層は、例えば、カバーガラスそのものや、表示パネルを構成するガラス基板(ソーダライムガラスなど)と比べて、極めて薄い。
また、バックライトユニットなどは樹脂層を有する場合があるが、樹脂層のヤング率は非常に小さい。
このため、これらの薄膜層および樹脂層を仮に「第m層」とした場合、「E・t 」の値は0(ゼロ)とみなしてもよい。
【0074】
薄膜層を有する車載表示装置の構成の一例として、例えば、カバーガラス、OCA、偏光板、カラーフィルター、液晶、TFT基板、偏光板、輝度上昇フィルム、レンズシート、拡散板、導光板、反射フィルム、バックライトユニットケース、プリント配線基板、筐体底部材および筐体樹脂カバーからなる構成が挙げられる。
【0075】
以下、各層を構成する部材について、具体的に説明する。
なお、各部材の材料等については、車載表示装置の仮想線L上において、カバーガラスから筐体底部材までが上述した式(1)を満たす限り、特に限定されない。
また、各部材は、複数の材料が複合した構成された複合材であってもよい。
【0076】
〈カバーガラス〉
カバーガラスは、化学強化ガラスなどの強化ガラスであることが好ましい。
強化ガラスにおける圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば10μm以上であり、15μm以上が好ましく、25μm以上がより好ましく、30μm以上がさらに好ましい。圧縮応力層の厚さ(DOL)は、例えば180μm以下であり、50μm以下が好ましい。
圧縮応力層における表面圧縮応力(CS)は、500MPa以上が好ましく、650MPa以上がより好ましく、750MPa以上がさらに好ましい。表面圧縮応力(CS)の上限は特に限定されないが、例えば、CSは、1200MPa以下が好ましい。
ガラスに化学強化処理を施して化学強化ガラスを得る方法は、典型的には、ガラスをKNO溶融塩に浸漬し、イオン交換処理した後、室温付近まで冷却する方法が挙げられる。KNO溶融塩の温度や浸漬時間などの処理条件は、表面圧縮応力および圧縮応力層の厚さが所望の値となるように設定すればよい。
ガラス種としては、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス(SiO-Al-NaO系ガラス)等が挙げられる。なかでも、強度の観点からは、アルミノシリケートガラスが好ましい。
ガラス材料としては、例えば、酸化物基準のモル%表示で、SiOを50~80%、Alを1~20%、NaOを6~20%、KOを0~11%、MgOを0~15%、CaOを0~6%およびZrOを0~5%含有するガラス材料が挙げられる。
アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(例えば、AGC社製「ドラゴントレイル(登録商標)」)も好適に用いられる。
【0077】
カバーガラスのヤング率(E)は、60GPa以上が好ましく、70GPa以上がより好ましい。
一方、カバーガラスのヤング率(E)は、90GPa以下が好ましく、80GPa以下がより好ましく、75GPa以下が更に好ましい。
カバーガラスを含む各部材のヤング率は、引張試験(JIS K7161・JIS K7113)により求められる(以下、同様である)。
【0078】
カバーガラスの厚さ(t)は、0.5mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、1.1mm以上が更に好ましい。
一方、カバーガラスの厚さ(t)は、2.5mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましく、1.3mm以下が更に好ましい。
カバーガラスを含む各部材の厚さは、図1中、上下方向の長さ、あるいはZ方向の長さである(以下、同様である)。
【0079】
カバーガラスの形状は、例えば、主面を見る方向から見て、矩形である。
カバーガラスのサイズは、例えば、カバーガラスが矩形である場合、長手方向の流さが100~800mmであり、短手方向の長さが40~300mmであるサイズが挙げられる。
【0080】
ここで、カバーガラスの単位面積あたりの車載表示装置の質量をM(単位:g/cm)としたとき、この質量Mとカバーガラスの厚さtとは下記式(6)および(7)を満たすことが好ましい。
なお、車載表示装置の筐体底部材を車両の内装部に固定する際にブラケット等の固定部材を用いる場合、質量Mは、固定部材の質量を含むものとする。
M≧-0.10t +0.38t -0.62t +0.42t+1.75…(6)
M≦0.03t+2.40…(7)
【0081】
質量Mが式(6)を満たすことで、衝突によるカバーガラスの変形が抑制された、カバーガラスがより割れにくい車載表示装置が得られる。
質量Mが式(7)を満たすことで、衝突時の減速度が高くなりにくく、かつ、減速度の高い時間を短くできるため、人体などの被衝突体の損傷が起きにくい車載表示装置が得られる。
【0082】
なお、式(6)において、tの値が0.7以上になるに従い、質量Mの値が低下する。このため、車載表示装置を軽量化する観点からは、カバーガラスの厚さ(t)は、0.7mm以上が好ましい。
【0083】
〈表示パネル〉
表示パネルは、例えば液晶パネル、有機ELパネル、PDP、電子インク型パネル等であり、タッチパネル等を有していてもよい。表示パネルの中で、一般的には、最も厚いのがガラス基板であり、表示パネル全体の剛性を支配する。このため、ガラス基板のヤング率を表示パネルのヤング率とみなしてもよい。
表示パネルのヤング率(E)は、60GPa以上が好ましく、70GPa以上がより好ましい。
一方、表示パネルのヤング率(E)は、90GPa以下が好ましく、75GPa以下がより好ましい。
表示パネルの厚さ(t)は、1.0mm以上が好ましく、1.1mm以上がより好ましい。
一方、表示パネルの厚さ(t)は、2.0mm以下が好ましく、1.3mm以下がより好ましい。
【0084】
図10は、カバーガラス2に表示パネル3が貼合された状態を示す模式図である。
図10中、カバーガラス2を十分な接着強度で接着して保持する観点から、距離D1は、2~30mmが好ましく、5~20mmがより好ましい。
また、上記接着強度の観点およびデザイン上の観点から、距離D2は、2~200mmが好ましく、5~150mmがより好ましい。
【0085】
〈バックライトユニット〉
バックライトユニットは、一般に、レンズシート、拡散シート、導光板、ランプ、反射板などの部材で構成される。これらの部材の中で、通常、最も厚いのが導光板であり、導光板が、バックライトユニット全体の剛性を支配する。このため、導光板のヤング率をバックライトユニットのヤング率とみなす。
バックライトユニットのヤング率(E)は、1GPa以上が好ましく、2GPa以上がより好ましく、60GPaが更に好ましい。
一方、バックライトユニットのヤング率(E)は、90GPa以下が好ましく、85GPa以下がより好ましい。
バックライトユニットの厚さ(t)は、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましく、3mm以上が更に好ましい。
一方、バックライトユニットの厚さ(t)は、10mm以下が好ましく、6mm以下がより好ましく、5mm以下が更に好ましい。
【0086】
図11は、車載表示装置1を拡大して示す断面図である。
図11に示すように、表示パネル3の端面と対向する位置に、隙間を空けて、筐体側壁8が配置されていてもよい。ここで、筐体側壁8は、バックライトユニット4の一部であってもよい。
表示パネル3の端面と筐体側壁8との隙間の距離d1(表示パネル3の端面と筐体側壁8との距離d1)は、2mm以下が好ましく、1.8mm以下がより好ましい。
これにより、ヘッドインパクト試験の際に、カバーガラス2に加わる応力を軽減でき、耐衝撃性がより優れる。
【0087】
図11に示すように、表示パネル3の端部(端面から5mm以内の部位)と、表示パネル3よりも筐体底部材5側の部材(ここでは、バックライトユニット4の一部)との間には、隙間が設けられている。この隙間の距離d2(表示パネルの端部と、表示パネルよりも筐体底部材側の部材との距離d2)は、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましい。
【0088】
〈筐体底部材〉
筐体底部材のヤング率は、例えば1.5GPa以上が好ましく、40GPa以上がより好ましく、60GPa以上がさらに好ましい。一方で、筐体底部材のヤング率は、250GPa以下が好ましく、230GPa以下がより好ましく、100GPa以下がさらに好ましく、80GPa以下が特に好ましい。
筐体底部材がリブを有する場合、筐体底部材のヤング率(E)は、1.5GPa以上100GPa以下が好ましく、40GPa以上80GPa以下がより好ましい。
筐体底部材がリブを有しない場合、筐体底部材のヤング率(E)は、40GPa以上250GPa以下が好ましく、60GPa以上230GPa以下がより好ましい。
【0089】
筐体底部材の材料としては、例えば、アルミニウムやマグネシウムなどの金属元素を含有する金属(単体)または合金が好ましい。また、筐体底部材の材料としては、樹脂でもよく、樹脂層と金属層との積層体であってもよい。
筐体底部材の形状等については、図5を参照されたい。
図5中のa、すなわち筐体底板6の厚さは、生産性の観点から、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましい。
一方、図5中のaは、軽量化の観点から、6mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましい。
【0090】
図5中のh、すなわちリブ7の厚さは、0mmであってもよいが、リブ7による剛性増加効果を得る観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。
一方、図5中のhは、筐体底部材5の生産しやすさの観点、および、筐体底部材5のサイズが大きくなりすぎることを抑制する観点から、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。
【0091】
図5中のwは、筐体底部材5の生産しやすさの観点から、1mm以上が好ましく、2mm以上がより好ましい。
一方、図5中のwは、ヘッドインパクト試験におけるカバーガラス2の応力発生を効果的に抑制する観点から、40mm以下が好ましく、30mm以下がより好ましい。
【0092】
図5中のwは、筐体底部材5の生産しやすさの観点、および、リブ7による剛性増加効果を得る観点から、1mm以上が好ましく、3mm以上がより好ましい。
一方、図5中のwは、車載表示装置1の軽量化効果を得る観点から、20mm以下が好ましく、15mm以下がより好ましい。
【0093】
〈変形例〉
図1図9(特に、図1図2および図10)には、表示パネルが1個である車載表示装置を示したが、これに限定されず、図12に示すように、表示パネルは複数個であってもよい。表示パネルが複数個ある場合、それぞれの表示パネルについて、上述した式(1)~式(4)に基づく値を算出すればよい。
【0094】
図12は、車載表示装置の変形例を示す模式図であり、カバーガラス2、表示パネル3およびブラケット9のみを図示している。図12では、2個の表示パネル3が、1枚のカバーガラス2に貼合され、ブラケット9を用いて筐体底部材5(図12には図示せず)が内装部10(図12には図示せず)に固定されている。
図12においても、2箇所の固定点P1および固定点P2が設定されている。このため、上述した、仮想面R、比Z/Zcg、仮想線Lなどを決定したうえで、上述した式(1)~式(4)に基づく値を算出できる。
【0095】
図12では、表示パネル3の外側にブラケット9が配置されている。図12に示すように、筐体底部材5における、表示パネル3と対向する面に2つの固定点が存在しない場合、表示パネル3の外周に隣接する固定点を考慮する。
例えば、図12中の左側の表示パネル3(表示パネル3a)については、その外側に存在する4点(固定点P1~固定点P4)を固定点とする。このうち、上から2つの固定点である固定点P1および固定点P2の中点を中間点Qとする。そして、中間点Qを通り、固定点P1と固定点P2とを結ぶ線に垂直な面を仮想面Rとする。
一方、図12中、右側の表示パネル3(表示パネル3b)については、その外側に存在する3点(固定点P1、固定点P4および固定点P5)を固定点とする。このうち、固定点P2および固定点P5の中点を中間点Qとする。
【0096】
固定点が表示パネル3の外側に存在する場合、位置関係によっては、中間点Qも、表示パネル3の外側に位置することがある。
このとき、距離Z(表示パネル3の主面と仮想面Rとの交差線のうち、上端から中間点Qに対応する点までの長さ)はマイナス値となり、比Z/Zcgは0.6以下となるため、インダッシュ型と判断できる。
【0097】
なお、カバーガラス2および表示パネル3の形状は、矩形(図1図2および図10を参照)に限定されず、図12に示すように、矩形以外の四角形、その他の多角形であってもよい。そのほか、円形などであってもよい。
また、カバーガラス2および表示パネル3は、平板状の部材に限定されず、湾曲した板状の部材であってもよい。
【実施例
【0098】
以下、実施例を用いて本発明の実施形態を具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
例1~18および26~28が実施例であり、例19~25が比較例である。
【0099】
実施例、比較例においては、図1~11に基づいた表示装置1のシミュレーションモデルを準備し、シミュレーションモデルに対して衝撃を印加するシミュレーションを実行することで、ヘッドインパクト試験を模擬した。図1に示すように、表示装置1のモデルは、カバーガラス2(第1層)、表示パネル3(第2層)、バックライトユニット4(第3層)、および、筐体底部材5(第4層)を有するものとした。
カバーガラスのモデルは、アルミノシリケートガラスをベースとする化学強化用ガラス(AGC株式会社製「ドラゴントレイル」)に化学強化処理を施した矩形の化学強化ガラスを模擬して、DOL:35μm、CS:750MPaとした。
カバーガラスのサイズは、長手方向:250mm、短手方向:150mmとした。
カバーガラスのヤング率(E)および厚さ(t)については、後述する。
【0100】
表示パネルのモデルは、ソーダライムガラスの両面に偏光板(材料:トリアセチルセルロース)を貼合した構成を模擬し、厚さは1.1mmとした。
粘着層のモデルは、OCA(日栄化工株式会社製「MHM-FWD」)を模擬した構成とした。
バックライトユニットのモデルは、板状体(材料:ポリカーボネート)を模擬した構成とし、厚さ:3mmとした。
筐体底部材および筐体側壁のモデルは、アルミニウム材料を模擬とした。
各部は、両面テープ(3M社製「VHX1701-04」、厚さ:0.4mm)を用いて接着したものと想定した。筐体底部材には、格子状のリブ(図3参照)を設けた。
【0101】
本シミュレーションでは、上記筐体を、車両の内装部に、ブラケットを用いて固定した。
ブラケットのモデルは、厚さ:2mm、板幅:20mm、長さ:50mmとし、SS400鋼材を模擬するようヤング率:206GPaとし、2:5:2の長さ割合で直角に屈曲させた部材を用いたと想定した。
後述するヘッドインパクト試験に際しては、筐体底部材と内装部との間に、厚さ50mmのスポンジ(Aearo Technologies LLC社製「メモリーフォームCF-45M」)を配置したものと想定した。
【0102】
上述した比Z/Zcg、t、a、w、w、hおよびXの値は、作製した車載表示装置の試験体ごとに異なる値となるよう調整した。各値を下記表1に示す。なお、ここでのa、w、w及びhは、tを求めるために用いる値であり、すなわち筐体底部材に関するa、w、w及びhである。更に、下記表1には、上述した質量M(カバーガラスの単位面積あたりの車載表示装置の質量)の値も記載した。
その他の値は、いずれの試験体においても、以下のようにした。
:74GPa(カバーガラスのヤング率)
:73GPa(ソーダライムガラスのヤング率)
:2.2GPa(ポリカーボネートのヤング率)
:70GPa(アルミニウムのヤング率)
:1.1mm
:3mm
D1:12mm
D2:40mm
d1::1.5mm
d2:0.5mm
【0103】
なお、いずれの例も、カバーガラスの単位面積あたりの車載表示装置の質量Mは、上述した式(6)および(7)を満たしていた。
【0104】
〈ヘッドインパクト試験(HIT)〉
各例で生成したモデルの打点Pに、以下の条件でインパクタを衝突させるシミュレーションを実行した。
カバーガラスの打点P(図2参照)に対して、半球状の剛体であるインパクタ(材料:アルミニウム、直径:165mm、質量:6.8kg)を衝突させた。インパクタがカバーガラスに衝突する方向は、カバーガラスの主面に対して角度90°の方向とした。衝突最高速度を24.1km/hとして、衝突時のエネルギーが152Jとなるようにした。このとき、インパクタの減速度(単位:G)を求めた。
【0105】
(評価結果)
打点Pにインパクタを衝突させた際にカバー部材2に発生する応力の解析結果をシミュレーションで取得した。カバー部材2に発生した最大応力が所定の閾値以下であり、閾値より12%以上小さい場合には、判定をAとし、閾値より0%以上12%未満小さい場合に、判定をBとし、閾値より大きく、閾値より0%超12%未満大きい場合に、判定をCとし、閾値より12%以上大きい場合に、判定をDとした。
同じ構成の試験体があった場合、カバー部材(カバーガラス)2の強度バラツキにより、同じ発生応力でも割れる場合と、割れない場合とが存在し、割れ発生の閾値に発生応力の値が近いほど、割れ発生頻度が高くなる。
AおよびBは、発生する最大応力が閾値以下であり、ヘッドインパクト試験によるカバーガラスの割れが発生しにくくなる。CおよびDは、発生する最大応力が閾値より大きく、ヘッドインパクト試験によりカバーガラスの割れが発生しやすくなる。更に、Aの場合は割れ発生の頻度を有意に抑制できる。
また、表1に示すように、シミュレーションにおいて、インパクタの減速度の解析結果も取得した。
【0106】
【表1】
【0107】
更に、例1~18および26~28のうち、式(5)を満たさない例26~28は減速度80G超時間が3ms以上であったのに対して、式(5)を満たす例1~18は減速度80G超時間が3ms未満であった。
例1~18および26~28は、いずれも、式(6)を満たしていた。
例1~18および26~28を対比すると、式(7)を満たさない例26~28よりも、式(7)を満たす例1~18の方が、インパクタの減速度の値が小さく、減速度が80G超である時間が短い傾向が見られた。
【0108】
本発明を詳細にまた特定の実施形態を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2021年4月9日出願の日本特許出願(特願2021-066497)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0109】
1:車載表示装置
2:カバーガラス
3:表示パネル
4:バックライトユニット
5:筐体底部材
6:筐体底板
7:リブ
8:筐体側壁
9(91、92、93、94):ブラケット
10:内装部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13