(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ガラス物品および車載用表示装置
(51)【国際特許分類】
C03C 27/04 20060101AFI20240628BHJP
B32B 17/06 20060101ALI20240628BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C03C27/04 D
B32B17/06
G09F9/00 302
G09F9/00 342
(21)【出願番号】P 2023545571
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2022032462
(87)【国際公開番号】W WO2023032933
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2021139604
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022072684
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊成
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】井上 淳
(72)【発明者】
【氏名】穂刈 涼
(72)【発明者】
【氏名】▲角▼田 純一
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/081930(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/112435(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/023606(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/04
B32B 17/00-17/12
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面と第2の主面とを備えるカバーガラスと、
前記カバーガラスの前記第2の主面側に、接着層を介して接着されるフレームと、
を有し、
前記カバーガラスには、前記第2の主面の向きに凸形状となる湾曲部が設けられており、
前記接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含み、
R’を次の式(1)に示すものとし、C
1を次の式(2)に示すものとした場合、前記湾曲部が、C
1>0の場合に次の式(3)を満たし、C
1≦0の場合に次の式(4)を満たす、ガラス物品。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
ここで、
Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)であり、
Fは、前記カバーガラスに、前記湾曲部の曲げ軸に直交する第1方向に隣接して平坦状の平坦領域が設けられている場合における、前記平坦領域の前記第1方向の長さであり、
tは、前記カバーガラスの厚み(mm)であり、
A
1は、前記湾曲部における前記第1接着層の面積(mm
2)であり、
A
2は、前記湾曲部における前記第2接着層の面積(mm
2)であり、
Eは、前記カバーガラスのヤング率(GPa)であり、
Lは、前記第1方向における、前記湾曲部の長さ(mm)を指す。
【請求項2】
前記第2の主面の向きに凸形状となる湾曲部が、C
1>0の場合に次の式(6)を更に満たす、請求項1に記載のガラス物品。
【数5】
【請求項3】
前記カバーガラスには、前記第1の主面の向きに凸形状となる湾曲部も設けられており、
C
2を次の式(5)に示すものとした場合、前記第1の主面の向きに凸形状となる湾曲部が、C
2>0の場合に次の式(6)を満たし、C
2≦0の場合に次の式(7)を満たす、請求項1または2に記載のガラス物品。
【数6】
【数7】
【数8】
【請求項4】
第1の主面と第2の主面とを備えるカバーガラスと、
前記カバーガラスの前記第2の主面側に、接着層を介して接着されるフレームと、
を有し、
前記カバーガラスには、前記第1の主面の向きに凸形状となる湾曲部が設けられており、
前記接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含み、
R’を次の式(1)に示すものとし、C
2を次の式(5)に示すものとした場合、前記湾曲部が、C
2>0の場合に次の式(6)を満たし、C
2≦0の場合に次の式(7)を満たす、ガラス物品。
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
ここで、
Rは、前記湾曲部の曲率半径(mm)であり、
Fは、前記カバーガラスに、前記湾曲部の曲げ軸に直交する第1方向に隣接して平坦状の平坦領域が設けられている場合における、前記平坦領域の前記第1方向の長さであり、
tは、前記カバーガラスの厚み(mm)であり、
A
1は、前記湾曲部における前記第1接着層の面積(mm
2)であり、
A
2は、前記湾曲部における前記第2接着層の面積(mm
2)であり、
Eは、前記カバーガラスのヤング率(GPa)であり、
Lは、前記第1方向における、前記湾曲部の長さ(mm)を指す。
【請求項5】
前記湾曲部の前記第1方向における両側に、前記平坦領域が設けられている、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項6】
前記(A
1+A
2)/Lが、80mm以下である、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項7】
前記接着層は、前記第1接着層と前記第2接着層との両方を含み、前記第1接着層と前記第2接着層とは、異なる接着部材で構成されている、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項8】
前記カバーガラスの厚みであるtは、0.3mm以上3.0mm以下である、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項9】
前記湾曲部の曲率半径であるRは、50mm以上10000mm以下である、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項10】
前記カバーガラスのヤング率であるEは、60GPa以上90GPa以下である、請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品。
【請求項11】
ディスプレイと、前記ディスプレイの表面に設けられた請求項1
、請求項2及び請求項4のいずれか1項に記載のガラス物品と、を有する、
車載用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス物品および車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転時に必要な情報等を表示する車載用表示装置などにおいて、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイが使用される場合がある。これらのディスプレイには、前面の保護に、カバーガラスが配置されることがある。また、近年、車内のインテリアには高いデザイン性が求められており、曲面形状を有するカバーガラスが求められている。カバーガラスを曲げ成形する方法の一つとして、例えば特許文献1のような冷間成形法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば冷間成形法によって曲げ成形されたカバーガラスは、カバーガラスがフレームに接着剤で固定されることで曲面形状が維持されているため、スプリングバックによりカバーガラスがフレームから剥離するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制可能なガラス物品および車載用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るガラス物品は、第1の主面と第2の主面とを備えるカバーガラスと、前記カバーガラスの前記第2の主面側に、接着層を介して接着されるフレームと、を有し、前記カバーガラスには、前記第2の主面の向きに凸形状となる湾曲部が設けられており、前記接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含み、R’を次の式(1)に示すものとし、C1を次の式(2)に示すものとした場合、前記湾曲部が、C1>0の場合に次の式(3)を満たし、C1≦0の場合に次の式(4)を満たす。
【0007】
ここで、下記式におけるRは、前記湾曲部の曲率半径(mm)であり、Fは、前記カバーガラスに、前記湾曲部の曲げ軸に直交する第1方向に隣接して平坦状の平坦領域が設けられている場合における、前記平坦領域の前記第1方向の長さであり、tは、前記カバーガラスの厚み(mm)であり、A1は、前記湾曲部における前記第1接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記湾曲部における前記第2接着層の面積(mm2)であり、Eは、前記カバーガラスのヤング率(GPa)であり、Lは、前記第1方向における、前記湾曲部の長さ(mm)を指す。
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るガラス物品は、第1の主面と第2の主面とを備えるカバーガラスと、前記カバーガラスの前記第2の主面側に、接着層を介して接着されるフレームと、を有し、前記カバーガラスには、前記第1の主面の向きに凸形状となる湾曲部が設けられており、前記接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含み、R’を次の式(1)に示すものとし、C2を次の式(5)に示すものとした場合、前記湾曲部が、C2>0の場合に次の式(6)を満たし、C2≦0の場合に次の式(7)を満たす。
【0013】
ここで、下記式におけるRは、前記湾曲部の曲率半径(mm)であり、Fは、前記カバーガラスに、前記湾曲部の曲げ軸に直交する第1方向に隣接して平坦状の平坦領域が設けられている場合における、前記平坦領域の前記第1方向の長さであり、tは、前記カバーガラスの厚み(mm)であり、A1は、前記湾曲部における前記第1接着層の面積(mm2)であり、A2は、前記湾曲部における前記第2接着層の面積(mm2)であり、Eは、前記カバーガラスのヤング率(GPa)であり、Lは、前記第1方向における、前記湾曲部の長さ(mm)を指す。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る車載用表示装置は、ディスプレイと、前記ディスプレイの表面に設けられた前記ガラス物品と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る車載用表示装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るガラス物品の模式図である。
【
図5】
図5は、カバーガラスの特性同士の関係を説明するためのグラフの一例である。
【
図6】
図6は、第1接着層と第2接着層との両方を設ける場合の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図12】
図12は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図13】
図13は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図14】
図14は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図15】
図15は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図16】
図16は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図17】
図17は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図18】
図18は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図19】
図19は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図20】
図20は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。
【
図21】
図21は、例1及び例2の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、例3及び例4の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図23】
図23は、例5及び例6の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図24】
図24は、例7及び例8の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図25】
図25は、例9及び例10の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図26】
図26は、例11及び例12の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図27】
図27は、例13及び例14の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図28】
図28は、例15及び例16の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図29】
図29は、例17及び例18の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図30】
図30は、例19及び例20の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図31】
図31は、例21及び例22の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図32】
図32は、例23及び例24の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図33】
図33は、例25及び例26の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図34】
図34は、例27及び例28の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図35】
図35は、例29及び例30の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図36】
図36は、例31及び例32の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図37】
図37は、例33及び例34の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図38】
図38は、例35及び例36の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図39】
図39は、例37及び例38の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図40】
図40は、例39及び例40の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図41】
図41は、例41及び例42の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【
図42】
図42は、例43及び例44の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、数値については四捨五入の範囲が含まれる。
【0022】
(車載用表示装置)
図1は、本実施形態に係る車載用表示装置を示す模式図である。
図1に示すように、本実施形態に係るガラス物品10は、車載用表示装置2に設けられ、画像が表示されるディスプレイ3の表面(前面)のカバー材として用いられる。
【0023】
車載用表示装置2は、車両に設けられる表示装置であり、例えば、車内においてステアリングシャフト1の前側に設けられる。ディスプレイ3には、例えばカーナビゲーション画面やスピードメータなどの各種メータ等及びスタートボタンなどが表示される。ただし、
図1の構成は一例であり、ガラス物品10が適用される車載用表示装置2は、任意の構成であってよい。また、ガラス物品10は、車載用表示装置2の表面のカバー材として用いられることに限られず、任意の用途に用いるものであってよい。
【0024】
(ガラス物品)
図2は、本実施形態に係るガラス物品の模式図である。
図2に示すように、ガラス物品10は、カバーガラス12と、フレーム14と、接着層16とを含む。カバーガラス12は、透明な板状のガラス部材であり、一方側の主面である主面12A(第1の主面)と、主面12Aと反対側の主面である主面12B(第2の主面)とを有する。ガラス物品10が車載用表示装置2などの被搭載物に搭載された場合には、カバーガラス12の主面12Aが外部に露出する側となり、主面12Bが被搭載物(ここではディスプレイ3)に面する側となる。なお、ここでの透明とは、可視光に対して透過することを指す。
【0025】
フレーム14は、カバーガラス12の主面12Bに取り付けられる枠状の部材である。フレーム14は、例えば樹脂や金属製であるが、それに限られず任意の材料で形成されていてよい。後述のようにカバーガラス12がX方向(第1方向)に湾曲しているため、フレーム14も、カバーガラス12に沿ってX方向に湾曲する。フレーム14は、カバーガラス12の主面12Bの周縁部に取り付けられる。
【0026】
図2の例では、フレーム14は、カバーガラス12の主面12Bの周縁部の、周方向における全区間にわたって設けられているが、それに限られず、一部の区間で途切れていてもよい。また、
図2の例では、カバーガラス12の周縁側の端部がフレーム14からはみ出していないが、それに限られずカバーガラス12の周縁側の端部がフレーム14からはみ出していてもよい。
【0027】
図2の例では、フレーム14はカバーガラス12の周縁に設けられ、内側が開口した枠状であるが、フレーム14が開口していない箱形状であってもよい。すなわち、
図2におけるフレーム14のZ方向側に、開口を覆う板状の部材を備えていても良い。このように、フレーム14の形状や、主面12Bでの取り付け位置は、以上の説明に限られず任意であってよい。
【0028】
フレーム14は、接着層16を介してカバーガラス12の主面12Bに固定(接着)されている。すなわち、接着層16は、フレーム14とカバーガラス12の主面12Bとの間に設けられており、フレーム14のカバーガラス12側の表面とカバーガラス12の主面12Bとを接着する。接着層16は、両面テープや接着剤など、フレーム14とカバーガラス12とを接着可能な任意の接着部材で構成されていてよい。
【0029】
ガラス物品10は、接着層16として、第1接着層と第2接着層との少なくとも一方を含む。第1接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる接着層を指し、第2接着層は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる接着層を指す。すなわち、第1接着層の押し込み弾性率は、第2接着層の押し込み弾性率より高い。第1接着層は、押し込み弾性率試験における弾性率が100MPa未満であることが好ましく、30MPa未満がより好ましい。ここで、第1接触層の押し込み弾性率試験における弾性率は、5MPa以上100MPa未満が好ましく、5MPa以上30MPa未満がより好ましい。第2接着層は、押し込み弾性率試験における弾性率が0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上がより好ましい。ここで、第2接触層の押し込み弾性率試験における弾性率は、0.2MPa以上5MPa未満が好ましく、0.5MPa以上5MPa未満がより好ましい。
【0030】
第1接着層と第2接着層とは、異なる接着部材で構成されている。第1接着層を構成する接着部材は、第2接着層を構成する接着部材よりも、接着強度が高いといえる。なお、接着層16は、3種類以上の接着部材で構成されていてもよい。
【0031】
なお、本実施形態における押し込み弾性率試験は、次の方法で行われる。
カバーガラス12の主面12Bとフレーム14に接着された接着層16を鉛直方向上側を向いて露出させて、クリープメータ(例えば、株式会社山電製 型番RE2―33005C)に配置し、その接着層16に対して、室温、例えば20℃、相対湿度50%の環境下で、プランジャ(例えば、株式会社山電製円柱状プランジャ 型番P-61、φ1.5、H40)を、押し込み深さが接着層16の厚みの5%~10%となるまで、押し込み速度0.05mm/秒で押し込む。
【0032】
接着層の露出のさせ方は特に限られないが、接着剤が変性しない方法が好ましい。例えば、第1接着層と被接着体であるカバーガラス12又はフレーム14との間に金属の薄板などを差し込んで、物理的に剥離させる方法などがあげられる。剥離させる途中で接着層が厚さ方向の途中で破断してしまった場合、より厚く残存した方で弾性率を測定することが好ましい。
また、フレーム14およびカバーガラス12の内、よりヤング率が高い側に残存した接着層を用いて弾性率を測定することも好ましい。すなわち、フレームが金属製の場合はフレーム側に、フレームがヤング率の低い樹脂製の場合は、カバーガラス側に接着層を残存させ、弾性率を測定することが好ましい。
【0033】
次に、押し込んだ際のプランジャに作用する荷重と、プランジャの押し込み方向における変位量とを逐次測定しておき、荷重と変位量とを時間毎にプロットし、そのプロットした各点の近似線の傾きを、接着層16の弾性率として算出する。この押し込み弾性率試験を接着層16の位置毎に行って、弾性率が5MPa以上となる領域を、第1接着層とし、弾性率が5MPa未満となる領域を、第2接着層とする。なお、0.04秒ごとにプロットし、同じ位置において2回ずつ押し込み弾性率試験を行うことが好ましい。2回の測定の両方で弾性率が5MPa以上となる位置を、第1接着層とし、2回の測定の両方で弾性率が5MPa未満となる位置を、第2接着層としてよい。
【0034】
ここで、本発明における押し込み弾性率試験の意味について説明する。ガラス物品においては、接着剤はガラス面、あるいはガラス面上の印刷面と、金属や樹脂製のフレームとを接着する。接着したガラス面と被接物とを剥離しようとした場合、一般的に接着剤が破断することにより剥離するように接着剤は材料設計される。そして、接着剤が破断される場合の接着強度は接着剤の引っ張り弾性率に依存することは知られている。しかしながら、既存の接着強度試験として知られている、十字型接着強度試験やH型接着強度試験法などは、カバーガラスとフレームが接着された状態のガラス物品では測定が困難であった。本発明では、既存の接着強度試験に変わる評価方法として、カバーガラスとフレームが接着された状態のガラス物品からも検証可能な押し込み弾性率試験を採用した。本発明において、ガラス物品とフレームが剥離する際には接着剤が破断すること、そして引っ張り弾性率と押し込み弾性率には一般的に正の相関関係があることが知られていることから、接着強度と押し込み試験における弾性率にも相関関係があると推測される。
【0035】
(カバーガラス)
カバーガラス12は、湾曲しつつフレーム14に取り付けられている。本実施形態では、カバーガラス12は、平板状のガラス板が冷間成形法によって曲げられて、フレーム14に取り付けられている。すなわち、カバーガラス12は、曲げ応力が作用した状態で、フレーム14に取り付けられている。以下、カバーガラス12についてより具体的に説明する。なお、ここでの冷間成形とは、ガラスの温度を軟化点まで上げずに、所望の形状に曲げる工法を指す。
【0036】
(カバーガラスの形状)
図3は、カバーガラスの上面図であり、
図4は、カバーガラスの断面図である。
図3の例では、カバーガラス12は、長方形の平板状のガラス板が湾曲した形状となっている。以下、カバーガラス12の1つの側面(端面)を側面12C1とし、側面12C1に対向する側面を側面12C2とし、カバーガラス12の他の1つの側面を側面12C3とし、側面12C3に対向する側面を側面12C4とする。
【0037】
図3の例では、側面12C1、12C2が長方形の短辺であり、側面12C3、12C4が長方形の長辺となっている。なお、カバーガラス12は、長方形の平板状のガラス板が湾曲した形状であることに限られず任意の形状のガラス板が湾曲したものであってよい。例えば、カバーガラス12は、多角形、円形、又は楕円形の平板状のガラス板が湾曲した形状になっていてもよい。
【0038】
(カバーガラスの曲げ)
図3は、カバーガラス12の主面12B上の位置Pの法線方向(Z方向)からカバーガラス12を見た場合の図であり、
図4は、カバーガラス12のX方向に沿った断面Sを示している。
【0039】
ここで、カバーガラス12の主面12Bの任意の点Pにおける主面12Bの接線方向のうちで、以下の条件を満たすように選ばれる接線方向を、X方向(第1方向)とし、点Pにおける主面12Bの接線方向のうちで、X方向に直交する方向を、Y方向とし、X方向及びY方向に直交する方向を、すなわち位置Pの法線方向(厚み方向)を、Z方向とする。ここで、X方向は、カバーガラス12の主面12Bの任意の点Pにおける主面12Bの接線方向のうち、接線方向と法線方向を含む平面と主面12Bとが交差して形成される線の曲率半径が、最小になる方向を指す。
【0040】
本実施形態のカバーガラス12は一軸曲げされているため、位置Pをいずれの点にとっても、X方向を一義に規定することができる。ただし、後段の別例のように、複数の湾曲部20が設けられてそれぞれの湾曲部20の曲げ方向が交差する場合もある。この場合、湾曲部20毎にX方向を規定すればよい。すなわち、1つの湾曲部20上の位置Pの接線方向のうち、接線方向と法線方向を含む平面と主面12Bとが交差して形成される線の曲率半径が最小になる方向を、その湾曲部20のX方向として、湾曲部20毎に同様にX方向を規定してよい。
なお、接線方向と法線方向を含む平面と主面12Bとが交差して形成される線の曲率半径が最小となる接線方向が複数ある場合には、それらの接線方向のうちの少なくとも一方向をX方向に定めてよい。以下、X方向とZ方向を含む平面と主面12Bとが交差して形成される線の曲率半径を、曲率半径R1と記載する。
【0041】
カバーガラス12は、Y方向を曲げ軸とし、X方向を曲げ軸と直交する方向として、曲率半径Rで湾曲しているといえる。カバーガラス12の曲率半径R(Y方向を曲げ軸とした曲げの曲率半径)は、すなわち、50mm以上10000mm以下であることが好ましく、100mm以上5000mm以下であることがより好ましく、200mm以上3000mm以下であることが更に好ましい。曲率半径Rがこの範囲となることで、デザイン性を向上させつつ、フレームからの剥離を抑制できる。更に、曲率半径は例えば2000mm以下であり、1750mm以下であり、1500mm以下であり、1250mm以下であり、1000mm以下であってもよい。曲率半径がこの範囲であると、従来、フレームからの剥離が生じやすかったが、本発明の式を満たすことにより、剥離を有意に抑制できる。
【0042】
カバーガラス12は、Y方向を曲げ軸とした曲げ方向以外の方向に曲がっていないことが好ましい。カバーガラス12は、X方向を曲げ軸とした曲げを有さないことが好ましく、言い換えれば、カバーガラス12の主面12B上のY方向に沿った軌跡は、直線状であることが好ましい。なお、曲げを有さないとは、曲率半径が無限大であることに限られず、曲率半径が10000mmより大きいであることも含んでよい。このようにY方向を曲げ軸とした方向以外に曲がっていないことで、カバーガラス12が平面展開でき、冷間成形を適切に行うことができる。
【0043】
以下、カバーガラス12のうちで、Y方向を曲げ軸とした曲げが形成されている部分を、湾曲部20と記載する。湾曲部20は、カバーガラス12のうちで、Y方向を曲げ軸として同一の曲率半径Rで曲がっている領域を指す。すなわち、カバーガラス12のうちの湾曲部20が、曲率半径RでY方向を曲げ軸として曲がっているといえる。
図4の例では、カバーガラス12の全体がX方向に同一の曲率半径Rで曲がっているので、カバーガラス12の全体が湾曲部20になっているといえる。
なお、ここでの曲率半径Rが同一であるとは、位置毎の曲率半径Rが厳密に同一であることに限られない。例えば、カバーガラス12の主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域の、X方向における一方側の端点から他方側の端点までの各位置において、測定した曲率半径Rの変化が5%以下であれば、すなわち各位置の曲率半径Rの最大値と最小値との差分が、各位置の曲率半径Rの最大値の5%以下であれば、その領域を同一の曲率半径の領域とみなして、1つの湾曲部20として扱う。なお、湾曲部20の各位置における曲率半径Rの平均値を、その湾曲部20の曲率半径Rとして扱ってよい。
【0044】
カバーガラス12の曲率半径Rの測定方法としては、接触型もしくは非接触型の三次元計測機を用いて形状測定し形状データから求める方法、もしくは、R定規をカバーガラス12に押し当てて測定する方法が挙げられる。
【0045】
本実施形態では、湾曲部20は、主面12A側に凸となるように曲がっている。ただし、湾曲部20は、主面12A側に凸となるように曲がることに限られず、主面12B側に凸となるように、曲がってもよい。
【0046】
なお、上述した任意の点Pは、主面12Bの湾曲部20における任意の点であり、例えば、主面12Aの中央領域が湾曲部20である場合、主面12Bの中心位置(例えば、カバーガラス12の重心位置)であってよい。つまり、X方向及びY方向は、主面12Bの中心からの接線方向であり、Z方向は、主面12Bの中心における法線方向であってもよい。
【0047】
(湾曲部の長さ)
湾曲部20の、曲げ軸に直交するX方向における長さを、周長Lとする。周長Lは、湾曲部20のX方向における一方側の端点(位置)から、湾曲部20のX方向における他方側の端点(位置)までを結び、主面12B上をX方向に向かう線の長さを指す。
【0048】
主面12B上をX方向に向かう線とは、主面12B上に沿い、Y方向にずれずにX方向に向かう線を指す。
図3の例では、湾曲部20のX方向における一方側の端点が、側面12C1上の点であり、湾曲部20のX方向における他方側の端点が側面12C2上の点であるため、周長Lは、側面12C1から側面12C2までの、主面12B上をX方向に向かう線の長さを指す。
【0049】
周長Lは、100mm以上2000mm以下であることが好ましく、150mm以上700mm以下であることがより好ましく、200mm以上400mm以下であることが更に好ましい。ここで、周長Lは100mm以上であることが好ましく、150mmがより好ましく、200mm以上が更に好ましく、また、2000mm以下であることが好ましく、700mm以下がより好ましく、400mm以下が更に好ましい。周長Lがこの範囲となることで、デザイン性を向上させつつ、フレームからの剥離を抑制できる。
なお、本実施形態では、曲率半径Rが同一となる領域であっても、周長Lが5mm以下となる領域(例えば表面の凹凸や微細なうねり)は、湾曲部20として扱わない。すなわち、曲率半径Rが同一であり、かつ周長Lが5mmより長い領域を、湾曲部20とする。
【0050】
湾曲部20の、曲げ軸であるY方向における長さは、80mm以上500mm以下であることが好ましく、100mm以上400mm以下であることがより好ましく、120mm以上300mm以下であることが更に好ましい。ここで、Y方向における長さは80mm以上であることが好ましく、100mm以上がより好ましく、120mm以上が更に好ましく、また、500mm以下であることが好ましく、400mm以下がより好ましく、300mm以下が更に好ましい。
【0051】
なお、湾曲部20のY方向における長さとは、湾曲部20のY方向における一方側の端点(位置)から、湾曲部20のY方向における他方側の端点(位置)までを結び、主面12B上をY方向に向かう線の長さを指す。
なお、主面12B上をY方向に向かう線とは、主面12B上に沿い、X方向にずれずにY方向に向かう線を指す。
図3の例では、それぞれの点が側面12C3、12C4上の点であるため、湾曲部20のY方向における長さとは、側面12C3から側面12C4までの、主面12B上をY方向に向かう線の長さを指す。
【0052】
(カバーガラスの厚み)
カバーガラス12の厚みtは、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.4mm以上1.5mm以下であることがより好ましく、0.6mm以上1.3mm以下であることが更に好ましい。ここで厚みtは、0.3mm以上であることが好ましく、0.4mm以上がより好ましく、0.6mm以上が更に好ましく、また、3.0mm以下であることが好ましく、1.5mm以下がより好ましく、1.3mm以下が更に好ましい。厚みtがこの範囲となることで、デザイン性を向上させつつ、フレームからの剥離を抑制できる。なお、厚みtは、主面12Aから主面12BまでのZ方向における距離を指す。
【0053】
(カバーガラスのヤング率)
カバーガラス12のヤング率Eは、60GPa以上90GPa以下であることが好ましく、68GPa以上78GPa以下であることがより好ましく、72GPa以上76GPa以下であることが更に好ましい。ここで、ヤング率Eは、60GPa以上であることが好ましく、68GPa以上がより好ましく、72GPaが更に好ましく、また、90GPa以下であることが好ましく、78GPa以下がより好ましく、76GPa以下が更に好ましい。ヤング率Eがこの範囲となることで、デザイン性を向上させつつ、フレームからの剥離を抑制できる。
【0054】
(カバーガラスの材料)
カバーガラス12用のガラスの材料は任意であるが、例えば、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボロシリケートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウケイ酸ガラスなどを使用できる。また、カバーガラス12としては、厚さが薄くても強化処理によって大きな応力が入りやすく薄くても高強度なガラスが得られるアルミノシリケートガラスやリチウムアルミノシリケートガラスが好ましい。なお、化学強化処理は、通常、アルカリ金属を含む溶融塩中にガラスを浸漬させることにより行われる。
【0055】
カバーガラス12は、酸化物基準のモル%で、SiO2を50~80%、Al2O3を0.1~25%、Li2O+Na2O+K2Oを3~30%、MgOを0~25%、CaOを0~25%およびZrO2を0~5%含むことが好ましいが、特に限定されない。なお、ここでの50~80%とは、カバーガラス12の全量のモル%を100%とした場合に、50%以上80%以下であることを指し、他の数値範囲も同様である。また、Li2O+Na2O+K2Oとは、Li2OとNa2OとK2Oとの合計含有量を指す。カバーガラス12を以下の組成とすることで、カバーガラス12を湾曲させた場合にも剛性を適切に保つことができる。
【0056】
より具体的には、カバーガラス12用のガラスのより好ましい組成として、以下のガラスの組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0~25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。
【0057】
(i)のガラスはソーダライムシリケートガラスに含まれ、(ii)および(iii)のガラスはアルミノシリケートガラスに含まれ、(iv)および(v)のガラスはリチウムアルミノシリケートガラスに含まれる。
【0058】
(i)モル%で表示した組成で、SiO2を63~73%、Al2O3を0.1~5.2%、Na2Oを10~16%、K2Oを0~1.5%、Li2Oを0~5.0%、MgOを5~18%及びCaOを1~10%を含むガラス
【0059】
(ii)モル%で表示した組成が、SiO2を50~74%、Al2O3を5~15%、Na2Oを10~20%、K2Oを0~8%、Li2Oを0~5.0%、MgOを2~15%、CaOを0~6%およびZrO2を0~5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が65~85%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が1~15%であるガラス
【0060】
(iii)モル%で表示した組成が、SiO2を68~80%、Al2O3を4~10%、Na2Oを5~15%、K2Oを0~1%、Li2Oを0~5.0%、MgOを4~15%およびZrO2を0~1%含有するガラス
【0061】
(iv)モル%で表示した組成が、SiO2を67~75%、Al2O3を0~4%、Na2Oを7~15%、K2Oを1~9%、Li2Oを0~5.0%、MgOを6~14%およびZrO2を0~1.5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が71~75%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス
【0062】
(v)モル%で表示した組成が、SiO2を50~73%、Al2O3を5~20%、B2O3を0~6%、P2O5を0~10%、Li2Oを4~12%、Na2Oを3~20%、K2Oを0~5%、MgOを0~8%、CaOを0~2%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、ZnOを0~5%、TiO2を0~2%、ZrO2を0~4%含有するガラス
【0063】
(接着領域)
湾曲部20の主面12Bの全域のうちで、接着層16と重なっている領域を、接着領域ARとし、接着層16と重なっていない領域を、領域AR0とする。接着領域ARは、Z方向に沿った湾曲部20の中心位置を通る軸を軸方向とした場合における、領域AR0の径方向外側に形成されている。
【0064】
本実施形態では、カバーガラス12の全体が湾曲部20を構成しているため、カバーガラス12の主面12Bの全域の内で接着層16と重なっている領域が、接着領域ARとなる。なお、接着領域ARは連続していなくてもよく、不連続やまだらな複数の接着領域ARが形成されていてもよい。
【0065】
また、湾曲部20の主面12Bの全域のうちで、弾性率が5MPa以上の第1接着層と重なっている領域(接着領域ARのうちで第1接着層と重なっている領域)を、第1接着領域とし、湾曲部20の主面12Bの全域のうちで、弾性率が5MPa未満の第2接着層と重なっている領域(接着領域ARのうちで第2接着層と重なっている領域)を、第2接着領域する。
【0066】
本実施形態では、カバーガラス12の全体が湾曲部20を構成しているため、カバーガラス12の主面12Bの全域の内で第1接着層と重なっている領域が、第1接着領域であり、カバーガラス12の主面12Bの全域の内で第2接着層と重なっている領域が、第2接着領域である。
この場合、第1接着領域の面積A1は、8288mm2以下であることが好ましく、第2接着領域の面積A2は、20214mm2以下であることが好ましい。また、第1接着領域の面積A1と第2接着領域の面積A2とを足した値(本実施形態では領域AR)を、周長Lで除した値((A1+A2)/L)は、80mm以下であることが好ましい。なお、第1接着領域の面積A1を、前記湾曲部における前記第1接着層の面積ということがあり、また、第2接着領域の面積A2を、前記湾曲部における前記第2接着層の面積ということがある。
【0067】
この好ましい数値範囲は、第2接着領域が設けられず第1接着領域が設けられるケース、第1接着領域が設けられず第2接着領域が設けられるケース、及び、第1接着領域と第2接着領域との両方が設けられるケースの全てに適用できる。
なお、第2接着領域が設けられず第1接着領域が設けられるケースにおいては、第1接着領域の面積A1は、350mm2以上95000mm2以下であることが好ましく、740mm2以上25000mm2以下であることがより好ましく、1500mm2以上8500mm2以下であることが更に好ましい。ここで、第1接着領域の面積A1は、350mm2以上であることが好ましく、740mm2以上がより好ましく、1500mm2以上が更に好ましく、また、95000mm2以下であることが好ましく、25000mm2以下がより好ましく、8500mm2以下が更に好ましい。
また、このケースにおいては、第1接着領域の面積A1を周長Lで除した値(A1/L)は、50mm以下であることが好ましく、35mm以下であることがより好ましく、25mm以下であることが更に好ましい。
【0068】
また、第1接着領域が設けられず第2接着領域が設けられるケースにおいては、第2接着領域の面積A2は、850mm2以上230000mm2以下であることが好ましく、1700mm2以上60000mm2以下であることがより好ましく、3800mm2以上20000mm2以下であることが更に好ましい。ここで、第2接着領域の面積A2は、850mm2以上であることが好ましく、1700mm2以上がより好ましく、3800mm2以上が更に好ましく、また、230000mm2以下であることが好ましく、60000mm2以下がより好ましく、20000mm2以下が更に好ましい。
また、このケースにおいては、第2接着領域の面積A2を周長Lで除した値(A2/L)は、115mm以下であることが好ましく、85mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることが更に好ましい。
【0069】
また、第1接着領域と第2接着領域との両方が設けられる場合には、第1接着領域の面積A1は、170mm2以上47000mm2以下であることが好ましく、370mm2以上12000mm2以下であることがより好ましく、790mm2以上4200mm2以下であることが更に好ましい。また、第2接着領域の面積A2は、420mm2以上110000mm2以下であることが好ましく、880mm2以上29000mm2以下であることがより好ましく、1900mm2以上10000mm2以下であることが更に好ましい。ここで、第1接着領域の面積A1は、170mm2以上であることが好ましく、370mm2以上がより好ましく、790mm2以上が更に好ましく、また、47000mm2以下であることが好ましく、12000mm2以下がより好ましく、4200mm2以下が更に好ましい。また、第2接着領域の面積A2は、420mm2以上であることが好ましく、880mm2以上がより好ましく、1900mm2以上が更に好ましく、また、110000mm2以下であることが好ましく、29000mm2以下がより好ましく、10000mm2以下が更に好ましい。
また、このケースにおいては、第1接着領域の面積A1と第2接着領域の面積A2とを足した値(本実施形態では領域AR)を、周長Lで除した値((A1+A2)/L)は、80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることが更に好ましい。
第1接着領域と第2接着領域との面積がこの範囲となることで、画像が表示される領域AR0が小さくなることを抑制しつつ、フレームからの剥離を抑制できる。なお、接着領域ARには、例えば印刷層が形成され、領域AR0は、例えば表示部として利用される。
【0070】
(カバーガラスの特性同士の関係)
ここで、カバーガラスを湾曲させてフレームに接着させた場合、スプリングバックにより、すなわちカバーガラスが平板状に戻ろうとする力により、カバーガラスがフレームから剥離するおそれがある。本発明者は、鋭意研究の結果、カバーガラス12の特性同士の関係(本実施形態では曲率半径Rと厚みtとヤング率Eと周長Lと第1接着領域や第2接着領域の面積との関係)を、適切な範囲に設定することにより、フレームからの剥離を抑制できることを想起した。以下、カバーガラス12の特性同士の関係について説明する。
【0071】
以降においては、湾曲部20の曲率半径Rの補正値を、補正曲率半径R’とする。補正曲率半径R’は、次の式(1)で表される。補正曲率半径R’は、湾曲部20のX方向における両側(X方向における一方向側と他方向側)に、曲がっておらず平坦状である平坦領域(平坦部)が接続されている場合における、曲率半径Rの補正値である。
【0072】
【0073】
式(1)における長さFは、湾曲部20のX方向における両側に隣接して接続されるそれぞれの平坦部のうちで、X方向における長さの短い方の平坦部のX方向における長さである。すなわち、長さFは、X方向における長さの短い方の平坦部の、X方向における一方側の端部(湾曲部20に接続される側の端部)から、その平坦部のX方向における他方側の端部(湾曲部20に接続されていない側の端部)までの、その平坦部の主面に沿った長さである。本実施形態では、平坦部が設けられていないためFがゼロとなり、補正曲率半径R’は、曲率半径Rと同じ値となる。平坦部が設けられた例については、後述する。
【0074】
(主面12A側に凸となるケース)
湾曲部20が主面12A側に凸となるように湾曲しているケースを説明する。湾曲部20が主面12A側に凸となるように湾曲しているケースでは、C2を次の式(5)に示す値とした場合において、C2が0より大きい場合(C2>0)には、湾曲部20は、次の式(6)を満たし、C2が0以下の場合(C2≦0)には、湾曲部20は、次の式(7)を満たす。なお、式(5)~式(7)においては、第2接着領域が設けられていない場合にはA2がゼロとなり、第1接着領域が設けられてない場合にはA1がゼロとなる。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
式(5)から式(7)について説明する。
図5は、カバーガラスの特性同士の関係を説明するためのグラフの一例である。
図5は、横軸が補正曲率半径R’であり、縦軸が接着領域ARの面積(A
1+A
2)を周長Lで除した値であり、以下適宜、接着幅と記載する。
【0079】
図5の曲線は、厚みt及びヤング率Eを所定値とした場合における、補正曲率半径R’毎の、フレームが剥離する境界となる接着幅の値を示している。すなわち、厚みt及びヤング率Eが所定値の場合、
図5の曲線よりも接着幅の値を高くすれば、フレームの剥離を抑制できるといえる。
図5の曲線に示すように、補正曲率半径R’が大きくなるほど、剥離が抑制できる接着幅を小さくすることができ、補正曲率半径R’がある値R’0以上となる場合には、剥離が抑制できる接着幅が一定となる。
【0080】
図5に示すグラフのように、C
2が0以下となる場合に、剥離が抑制できる接着幅が一定となる。すなわち、式(5)におけるC
2は、剥離が抑制できる接着幅が一定となっているかを判断する指標値であり、式(7)は、剥離が抑制できる接着幅が一定となっているケースにおける、剥離が抑制できる接着幅を規定した式といえる。すなわち、湾曲部20は、C
2が0以下である場合には、式(7)を満たすように設計されることで、剥離が抑制できる。言い換えれば、補正曲率半径R’と厚みtと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、C
2が0以下となるように設定され、かつ、周長Lと面積A
1と面積A
2とが、式(7)を満たすように設定されることで、剥離を抑制できる。
【0081】
一方、
図5に示すグラフのように、C
2が0より大きい場合には、剥離が抑制できる接着幅は、補正曲率半径R’などに応じて変化する。式(6)は、剥離が抑制できる接着幅が変化するケースにおける、剥離が抑制できる接着幅などのパラメータを規定した式といえる。すなわち、湾曲部20は、C
2が0より大きい場合には、式(6)を満たすように設計されることで、剥離が抑制できる。言い換えれば、補正曲率半径R’と厚みtと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、C
2が0より大きくなるように設定され、かつ、補正曲率半径R’と厚みtとヤング率Eと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、式(6)を満たすように設定されることで、剥離を抑制できる。なお、式(6)におけるEt
2は、カバーガラス12の剛性を示すパラメータであり、E(t/R’)は、曲げ応力を示すパラメータである。
【0082】
(主面12B側に凸となるケース)
湾曲部20が主面12B側に凸となるように湾曲しているケースを説明する。湾曲部20が主面12B側に凸となるように湾曲しているケースでは、C1を次の式(2)に示す値とした場合において、C1が0より大きい場合(C1>0)には、湾曲部20は、次の式(3)を満たし、C1が0以下の場合(C1≦0)には、湾曲部20は、次の式(4)を満たす。なお、式(2)~式(4)においては、第2接着領域が設けられていない場合にはA2がゼロとなり、第1接着領域が設けられてない場合にはA1がゼロとなる。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
図5に示すグラフのように、C
1が0以下となる場合に、剥離が抑制できる接着幅が一定となる。式(2)におけるC
1は、剥離が抑制できる接着幅が一定となっているかを判断する指標値であり、式(4)は、剥離が抑制できる接着幅が一定となっているケースにおける、剥離が抑制できる接着幅を規定した式といえる。すなわち、湾曲部20は、C
1が0以下である場合には、式(4)を満たすように設計されることで、剥離が抑制できる。言い換えれば、補正曲率半径R’と厚みtと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、C
1が0以下となるように設定され、かつ、周長Lと面積A
1と面積A
2とが、式(4)を満たすように設定されることで、剥離を抑制できる。
【0087】
一方、
図5に示すグラフのように、C
1が0より大きい場合には、剥離が抑制できる接着幅は、補正曲率半径R’などに応じて変化する。式(3)は、剥離が抑制できる接着幅が変化するケースにおける、剥離が抑制できる接着幅などのパラメータを規定した式といえる。すなわち、湾曲部20は、C
1が0より大きい場合には、式(3)を満たすように設計されることで、剥離が抑制できる。言い換えれば、補正曲率半径R’と厚みtと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、C
1が0より大きくなるように設定され、かつ、補正曲率半径R’と厚みtとヤング率Eと周長Lと面積A
1と面積A
2とが、式(3)を満たすように設定されることで、剥離を抑制できる。
【0088】
C
1が0より大きい場合(C
1>0)、湾曲部20が更に次の式(6)を満たすことが好ましい。なお、式(6)においても、第2接着領域が設けられていない場合にはA
2がゼロとなり、第1接着領域が設けられてない場合にはA
1がゼロとなる。
湾曲部20が式(6)を満たす場合、カバーガラス12がフレーム14により強固に接着されるため、高温、熱サイクル、機械的な振動・衝撃、紫外線などの影響を長期にわたって受けた場合であっても、剥離を抑制しやすい。
また湾曲部20が式(6)を満たすことにより、
図13のように、主面12Bの側に凸な湾曲部に加え、主面12Aの側に凸な湾曲部を更に備える場合において、両方の湾曲部においてフレームとの接着幅を同一にしても剥離を抑制できるため、意匠性に優れるという利点がある。
【0089】
【0090】
以上説明したように、本実施形態に係るガラス物品10は、主面12A(第1の主面)と主面12B(第2の主面)とを備えるカバーガラス12と、カバーガラス12の主面12B側に、接着層16を介して接着されるフレーム14と、を有する。カバーガラス12には、主面12Aの向きに凸形状となる湾曲部20が設けられており、接着層16は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPaとなる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含む。R’を式(1)に示すものとし、C2を式(5)に示すものとした場合、湾曲部20は、C2>0の場合に式(6)を満たし、C2≦0の場合に式(7)を満たす。本実施形態に係るガラス物品10は、湾曲部20が式(6)又は式(7)を満たすことで、フレーム14からの剥離を抑制できる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態に係るガラス物品10は、主面12A(第1の主面)と主面12B(第2の主面)とを備えるカバーガラス12と、カバーガラス12の主面12B側に、接着層16を介して接着されるフレーム14と、を有する。カバーガラス12には、主面12Bの向きに凸形状となる湾曲部20が設けられており、接着層16は、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa以上となる第1接着層と、押し込み弾性率試験において弾性率が5MPa未満となる第2接着層との少なくとも一方を含む。R’を式(1)に示すものとし、C1を式(2)に示すものとした場合、湾曲部20は、C1>0の場合に式(3)を満たし、C1≦0の場合に式(4)を満たす。本実施形態に係るガラス物品10は、湾曲部20が式(3)又は式(4)を満たすことで、フレーム14からの剥離を抑制できる。更に湾曲部20は、C1>0の場合に式(6)を満たすことが好ましい。
【0092】
(A1+A2)/Lは、80mm以下であることが好ましい。(A1+A2)/Lがこの範囲となることで、領域AR0が狭くなることが抑制されて、デザイン性を向上させたり、画像を表示する画面が小さくなったりすることなどを抑制できる。また、(A1+A2)/Lがこの範囲となることで、接着面積を小さくして、貼り合せ易くして位置精度を向上させることができる。また、(A1+A2)/Lは、60mm以下であることがより好ましい。(A1+A2)/Lがこの範囲となることで、接着欠陥を少なくして信頼性よく接着でき、ガス抜けの促進や、接着剤を接着領域の全域に適切にいきわたらせることができる。
【0093】
接着層16は、第1接着層と第2接着層との両方を含んでいてよく、第1接着層と第2接着層とは、異なる接着剤で構成されていてよい。第1接着層と第2接着層との両方を含むことで、カバーガラス12とフレーム14とを適切に接着できる。例えば、両面テープのように接着力は低いが貼合直後から接着力を発現する第2接着層と、湿気硬化型接着剤のように最終接着強度は高いが、強度発現に時間を要する第1接着層とを設けるなど、特性が異なる接着層を設けることで、カバーガラス12とフレーム14とを、位置精度よくかつ十分な接着力で、接着できる。
【0094】
図6は、第1接着層と第2接着層との両方を設ける場合の一例を示す図である。第1接着層と第2接着層との両方を設ける場合は、第1接着層AR1よりも径方向外側に第2接着層AR2を設けることが好ましい。外側に接着力の低い第2接着領域を設けることで、例えば第2接着領域(例えば両面テープ)が、第1接着領域の接着剤の土手として機能して、第1接着領域の硬化前の接着剤が外側にはみ出すことを抑制できる。
【0095】
図6の例では、第1接着層AR1の外周縁と第2接着層AR2の内周縁とを離した状態で、第1接着層AR1よりも径方向外側に第2接着層AR2を設けている。ただし、
図6は一例であり、第1接着層と第2接着層との両方を設ける場合、第1接着層の位置と第2接着層の位置とは、任意に設定してよい。
【0096】
カバーガラス12の厚みtは、0.3mm以上3.0mm以下であることが好ましい。厚みtをこの範囲とすることで、フレーム14からの剥離を好適に抑制できる。
【0097】
湾曲部20の曲率半径Rは、50mm以上10000mm以下であることが好ましい。曲率半径Rをこの範囲とすることで、デザイン性を向上させつつ、フレーム14からの剥離を好適に抑制できる。
【0098】
カバーガラス12のヤング率Eは、60GPa以上90GPa以下であることが好ましい。ヤング率Eをこの範囲とすることで、フレーム14からの剥離を好適に抑制できる。
【0099】
本実施形態に係る車載用表示装置2は、ディスプレイ3と、ディスプレイ3の表面(前面)に設けられるガラス物品10とを有する。車載用表示装置2は、カバーガラス12からフレーム14が剥離することを抑制できる。
【0100】
(他の例)
以下、カバーガラス12の形状の他の例について説明する。
【0101】
(スプライン形状の例)
図7は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。上述の実施形態においては、湾曲部20は、同じ曲率半径Rで曲がった部分として説明していたが、曲率半径が一定に定まらないスプライン曲線状にX方向に曲がっている場合もある。その場合、スプライン曲線状にX方向に曲がっている箇所の全体を湾曲部20として取り扱う。
【0102】
上述の実施形態の説明では、主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域の、X方向における一方側の端点から他方側の端点までの各位置において、測定した曲率半径Rの変化が5%以下となる領域を、曲率半径が同一の1つの湾曲部20として取り扱っていた。
一方、本例では、主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域の、X方向における一方側の端点から他方側の端点に向かう50mm以下の長さの区間における、各位置の曲率半径Rの変化が、5%より高くなる領域を、スプライン形状の1つの湾曲部20として取り扱う。そして、
図7に示すように、スプライン形状の湾曲部20を一定の曲率半径で曲がる形状に近似して、一定の曲率半径で曲がる形状に近似された際の曲率半径を、その湾曲部20の曲率半径Rとして取り扱う。
具体的には、スプライン形状の湾曲部20の主面12BのX方向における一方の端点を端点20J、他方の端点を端点20Kとし、端点20Jと端点20Kを結び、X方向及びY方向に沿う平面(すなわち端点20J、20Kを通るXY平面)を平面αとする。そして、平面αを主面12Bに接するように、Z方向に平行移動した面を平面βとした場合、端点20Jおよび端点20Kを通り、平面βと接するような円弧20Rの曲率半径を、湾曲部20の曲率半径Rとする。
【0103】
(平坦部を有する例)
図8及び
図9は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。湾曲部20には、X方向に平坦部22が接続されていてもよい。平坦部22は、湾曲部20に対して主面12Bが連続するように(不連続とならないように)、湾曲部20に対して接続されている。
図8は、湾曲部20のX方向における一方向側(片側)に平坦部22が接続されている場合の例である。平坦部22は、カバーガラス12の全域のうちで、湾曲部20のX方向における端部に接続される平坦状の部分である。平坦部22が平坦状であるとは、曲率半径が無限大であることに限られず、曲率半径が10000mmより大きいことも含んでよい。
【0104】
湾曲部20に平坦部22が接続されている場合には、式(1)から式(7)の適用については、湾曲部20と平坦部22とを1つの湾曲部20aとして取り扱う。例えば、
図8のように湾曲部20のX方向の一方側に平坦部22が設けられてX方向の他方側に平坦部22が設けられない場合、湾曲部20aの曲げ方向であるX方向における長さ(湾曲部20のX方向における長さと平坦部22の長さFとの合計値)が、周長Lとして扱われる。
【0105】
また、湾曲部20aの主面12Bのうちで第1接着層と重なっている領域の面積(湾曲部20の主面12Bのうちで第1接着層と重なっている領域の面積と平坦部22の主面12Bのうちで第1接着層と重なっている領域の面積との合計値)が、面積A1として扱われる。また、湾曲部20aの主面12Bのうちで第2接着層と重なっている領域の面積(湾曲部20の主面12Bのうちで第2接着層と重なっている領域の面積と平坦部22の主面12Bのうちで第2接着層と重なっている領域の面積との合計値)が、面積A2として扱われる。
ただし、湾曲部20のX方向の一方側に平坦部22が設けられてX方向の他方側に平坦部22が設けられない場合、式(1)における長さFについては、平坦部22が無い場合と同様に、ゼロとして扱う。言い換えれば、片側にのみ湾曲部20が設けられる場合は、補正曲率半径R’は、曲率半径Rと同じ値となる。
【0106】
図9に示すように、平坦部22は、湾曲部20のX方向における両側(X方向における一方向側と他方向側)に接続するように設けられていてもよい。
【0107】
図9に示すように、湾曲部20のX方向における一方側の平坦部22と他方側の平坦部22との主面12Bに沿った長さが異なる場合には、湾曲部20と、主面12Bに沿った長さが短い方の平坦部22とを、1つの湾曲部20aとして取り扱う。すなわち、短い方の平坦部22の主面12Bに沿った長さが、式(1)における長さFとして扱われ、湾曲部20aのX方向における長さ(湾曲部20の長さと短い方の平坦部22の長さFとの合計値)が、周長Lとして扱われる。
また、湾曲部20aの主面12Bのうちで第1接着層と重なる領域の面積(湾曲部20の主面12Bのうちで第1接着層と重なる領域の面積と短い方の平坦部22の主面12Bのうちで第1接着層と重なる領域の面積との合計値)が、面積A
1として扱われる。
また、湾曲部20aの主面12Bのうちで第2接着層と重なる領域の面積(湾曲部20の主面12Bのうちで第2接着層と重なる領域の面積と短い方の平坦部22の主面12Bのうちで第2接着層と重なる領域の面積との合計値)が、面積A
2として扱われる。なお、湾曲部20のX方向における一方側の平坦部22と他方側の平坦部22との主面12Bに沿った長さが同じ場合には、湾曲部20と、いずれか一方の平坦部22とを、1つの湾曲部20aとして取り扱う。
【0108】
(湾曲部が複数の場合の例)
図10及び
図11は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。湾曲部20は、複数設けられていてもよく、言い換えれば、カバーガラス12には、曲率半径Rが異なる複数の湾曲部20が形成されていてよい。この場合、それぞれの湾曲部20は、同じ方向であるY方向を曲げ軸として曲がっている。
【0109】
湾曲部20が複数であることは、次のようにして判断できる。すなわち、主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域の、X方向における一方側の端点から他方側の端点に向かう50mmより長い区間における、各位置の曲率半径Rの変化が、5%より高くなる領域には、曲率半径Rが異なる複数の湾曲部20が形成されていると判断する。すなわち、主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域の、X方向における一方側の端点から他方側の端点に向かう50mm以下の長さの区間で曲率半径Rの変化が5%以下であるが、一方側の端点から他方側の端点に向かう50mmより長い区間では曲率半径Rの変化が5%を超える場合には、スプライン形状の1つの湾曲部ではなく、複数の湾曲部が形成されていると判断する。
【0110】
この場合、
図10の例に示すように、主面12B上においてY方向を曲げ軸として曲がっている領域のうちで、その領域のX方向における一方側の端点20Lから他方の端点20Mに向かう区間の各位置における曲率半径Rの変化が、5%以下となっている領域を、曲率半径Rが同一となる1つの湾曲部20Aとする。湾曲部20Aは、一方側の端点20Lから、曲率半径Rの変化が5%より大きくなる位置20Nまでの間の領域である。そして、位置20Nから、他方の端点20Mに向かう区間の各位置における曲率半径Rの変化が、5%以下となっている領域を、もう1つの湾曲部20Bとする。
【0111】
図10の例では、位置20Nから端点20Mまでの区間で曲率半径の変化が5%以下となっているため、位置20Nから端点20Mまでの領域が、湾曲部20Bとして扱われる。ただし例えば、位置20Nから端点20Mまでの間に、曲率半径Rの変化が5%より大きくなる位置があれば、位置20Nから、曲率半径Rの変化が5%より大きくなる位置までの領域が、1つの湾曲部20Bとなる。この場合、湾曲部20が3つ以上存在することになる。
【0112】
このように湾曲部20が複数形成されている場合には、それぞれの湾曲部20に、式(1)から式(7)が適用される。すなわち、それぞれの湾曲部20は、主面12A側に凸となる場合には、式(6)又は式(7)が満たされ、主面12B側に凸となる場合には、式(3)又は式(4)が満たされる。
図10は、曲率半径がR1となる湾曲部20Aと、曲率半径がR2となる湾曲部20Bとが形成されている例を示している。
図10の例では、湾曲部20A、20Bの両方が主面12A側に凸であるが、それに限られず、湾曲部20A、20Bの両方が主面12B側に凸であってもよい。また、湾曲部20の数は2つに限られず3つ以上であってもよい。
【0113】
図11は、複数の湾曲部20に平坦部22が接続された場合の例である。複数の湾曲部20に平坦部22が接続されている場合には、式(1)から式(7)の適用については、1つの湾曲部20とその湾曲部20に接続されている平坦部22とを、1つの湾曲部20aとして取り扱う。
【0114】
図11の例では、湾曲部20AのX方向における一方側に長い平坦部22が接続され、湾曲部20AのX方向における他方側に短い平坦部22が接続され、短い平坦部22の湾曲部20Aとは反対側に湾曲部20Bが接続されている。この場合、湾曲部20Aと短い平坦部22とが、1つの湾曲部20aとして扱われ、湾曲部20Bと短い平坦部22とが、他の1つの湾曲部20aとして扱われる。湾曲部20aについての長さF、周長L、面積A
1、面積A
2の算出方法は、1つの湾曲部20に平坦部22が接続された場合と同様であるため、説明を省略する。なお、
図11の例では、湾曲部20Aには片側だけに平坦部22が接続されているため、湾曲部20Aにおける式(1)での長さFについては、ゼロとして扱う。
【0115】
図12及び
図13は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。以上の説明では、複数の湾曲部20が、同じ方向側に凸であったが、異なる方向に凸であってもよい。例えば、
図12に示すように、湾曲部20Aが主面12A側に凸であり、湾曲部20Bが主面12B側に凸であってもよい。
【0116】
また、
図13の例では、湾曲部20AのX方向における一方側に長い平坦部22が接続され、湾曲部20AのX方向における他方側に短い平坦部22が接続され、短い平坦部22の湾曲部20Aとは反対側に湾曲部20Bが接続されている。この場合、湾曲部20Aと短い平坦部22とが、1つの湾曲部20aとして扱われ、湾曲部20Bと短い平坦部22とが、他の1つの湾曲部20として扱われる。湾曲部20aについての長さF、周長L、面積A
1、面積A
2の算出方法は、1つの湾曲部20に平坦部22が接続された場合と同様であるため、説明を省略する。また、それぞれの湾曲部に、式(1)から式(7)が適用される。すなわち、湾曲部20Aは主面12A側に凸となるため、式(6)又は式(7)が満たされ、湾曲部20Bは主面12B側に凸となるため、式(3)又は式(4)が満たされる。
【0117】
図14から
図17は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。上述の実施形態の説明では、矩形のガラス板をX方向に曲げてカバーガラス12としていたため、カバーガラス12のX方向の長さは位置毎に一定であったが、形状によっては、カバーガラス12のX方向の長さが位置毎に異なる場合がある。そのような場合の周長Lについて、以下で説明する。
【0118】
上述のように、周長Lは、湾曲部20の方向Yに沿った曲げ軸YAに対してX方向における最も一方側の位置から、湾曲部20の曲げ軸YAに対してX方向における最も他方側の位置までを結び、主面12B上をX方向に向かう線の長さを指す。従って、例えば
図14のように、台形のガラス板を、Y方向を曲げ軸として曲げてカバーガラス12とした場合には、台形の長辺である側面12C3の両端点が、湾曲部20の曲げ軸YAに対してX方向における最も一方側の位置20C及び最も他方側の位置20Dとなり、位置20Cと位置20Dとを結び主面12B上をX方向に向かう線の長さが、周長Lとなる。
【0119】
また、以上の説明では、曲げ軸に直交するX方向が、曲げる前の平板状のカバーガラス12の横方向の辺である側面12C3、12C4に沿っていたが、それに限られず、曲げ軸に直交するX方向が、曲げる前の平板状のカバーガラス12の辺に対してずれていてもよい(交差していてもよい)。
図15は、X方向が、曲げる前の平板状のカバーガラス12の側面12C3、12C4に対して交差している場合の例を示している。
図15の例では、台形の長辺である側面12C3の一方の端点が位置20Cとなり、台形の短辺である側面12C4の他方の端点が位置20Dとなる。また
図15の例では、位置20Cと位置20DとのY方向における位置がそろっていないため、位置20DをY方向にずらした位置20D’と位置20Cとを結び、主面12Bに沿った面をX方向に向かう線の長さを、周長Lとする。すなわち
図15の例では、位置20Cと位置20D’とを結び曲率半径がRとなる曲線の長さが、周長Lとなる。なお、位置20D’は、Y方向の位置が位置20CのY方向の位置とそろうように、位置20DをY方向にずらした位置である。このように、位置20Cと位置20DとのY方向における位置がそろっていない場合は、Y方向における位置を揃えた位置20Cから位置20D’までの主面12Bに沿った面をX方向に進む線の長さを、周長Lとする。
【0120】
図16は、多角形のガラス板を、方向Yに沿った線分YAを曲げ軸として湾曲させてカバーガラス12とした場合の例である。
図16の例でも、湾曲部20の方向Yに沿った曲げ軸YAに対してX方向における最も一方側及び他方側の点である位置20Cと位置20DとのY方向の位置がそろっていないため、位置20D’と位置20Cとを結び、主面12Bに沿った面をX方向に向かう線の長さが、周長Lとなる。
【0121】
図17は、外周が曲線状となるガラス板を、方向Yに沿った線分YAを曲げ軸として湾曲させてカバーガラス12とした場合の例である。
図17の例でも、湾曲部20の方向Yに沿った曲げ軸YAに対してX方向における最も一方側及び他方側の点である位置20Cと位置20DとのY方向の位置がそろっていないため、位置20D’と位置20Cとを結び、主面12Bに沿った面をX方向に向かう線の長さが、周長Lとなる。
【0122】
図18から
図20は、本実施形態の他の例に係るカバーガラスの模式図である。以上の説明では、複数の湾曲部20が、Y方向を曲げ軸として同じ方向に曲がっていたが、複数の湾曲部20の曲げ軸の方向が異なっていてもよい。この場合、それぞれの湾曲部20の曲げ軸は、カバーガラス12の主面12A上において交差せず、それぞれの湾曲部20の曲げ軸を主面12Aよりも外側に延長した点で交差する。湾曲部20の曲げ軸の方向が異なる場合でも、曲げ軸同士が主面12Aにおいて交差しないことで、カバーガラス12の平面展開が可能となり、適切に冷間成形できる。
【0123】
図18及び
図19は、複数の湾曲部20の曲げ軸の方向が異なるカバーガラス12の模式的な図の例を示している。
図18の例では、平坦部22のX方向における一方側に湾曲部20Aが接続され、その平坦部22のX方向における他方側に湾曲部20Bが接続されている。
【0124】
湾曲部20Aは、X方向における一方側の端辺である側面12C1から他方側の端辺20Pまでにおいて、曲げ軸YAを曲げ軸として曲がっている。すなわち、湾曲部20Aは側面12C1から端辺20PまでのX方向における各位置の曲率半径の変化が5%以下となるように、曲げ軸YAを曲げ軸として曲がっている領域である。
湾曲部20Bは、X方向における一方側の端辺20Qから他方側の端辺である側面12C2までにおいて、曲げ軸YBを曲げ軸として曲がっている。すなわち、湾曲部20Bは、端辺20Qから側面12C2までのX方向における各位置の曲率半径の変化が5%以下となるように、曲げ軸YBを曲げ軸として曲がっている領域である。平坦部22は、X方向において端辺20Pから端辺20Qまでの平坦な領域である。
【0125】
湾曲部20Aの曲げ軸YAと、湾曲部20Bの曲げ軸YBとは、異なる方向に延在しているが、カバーガラス12の主面12A上において交差せず、曲げ軸YA、YBを主面12Aよりも外側に延長した点で、交差する。なお、
図18は、説明の便宜上、Y方向を曲げ軸として、すなわち曲げ軸YA、YBが同じ方向となっている図として示しているが、実際には、湾曲部20A、20Bの曲げ軸YA、YBは、互いに異なる方向に延在する。
【0126】
曲げ軸の方向が異なる複数の湾曲部20に平坦部22が接続されている場合には、式(1)から式(7)の適用については、1つの湾曲部20とその湾曲部20に接続されている平坦部22とを、1つの湾曲部20aとして取り扱う。
【0127】
図19の例では、湾曲部20AのX方向における他方側に平坦部22が接続され、湾曲部20BのX方向における一方側に平坦部22が接続されている。この場合、湾曲部20Aと平坦部22とが、1つの湾曲部20aとして扱われ、湾曲部20Bと平坦部22とが、他の1つの湾曲部20aとして扱われる。湾曲部20aについての長さF、面積A
1、面積A
2の算出方法は、1つの湾曲部20に平坦部22が接続された場合と同様であるため、説明を省略する。なお、
図19の例では、湾曲部20A、20Bには片側だけに平坦部22が接続されているため、湾曲部20A、20Bにおける式(1)での長さFについては、ゼロとして扱う。
【0128】
図20に基づき、曲げ軸の方向が異なる複数の湾曲部20における周長Lの算出方法を説明する。
図20は、説明の便宜上、湾曲部20Aと平坦部22とを含む湾曲部20aを抽出した図としている。
図20の例では、側面12C1の最もX方向における一方側の端点が、湾曲部20aの位置20Cとなり、端辺20P’の最もX方向における他方側の端点が、湾曲部20aの位置20Dとなる。
【0129】
図20の例では、位置20Cと位置20DとのY方向における位置がそろっていないため、位置20DをY方向にずらした位置20D’と位置20Cとを結び、主面12Bに沿った面をX方向に向かう線の長さを、湾曲部20aの周長Lとする。すなわち
図20の例では、位置20Cと位置20D’とを結び曲率半径がRとなる曲線の長さが、周長Lとなる。なお、湾曲部20Bと平坦部22とを含む湾曲部20aについても、同様に周長Lが求められるが、説明は省略する。
【実施例】
【0130】
次に、実施例について説明する。なお、発明の効果を奏する限りにおいて実施態様を変更しても構わない。各例においては、実試験、又はシミュレーションによる試験とのいずれかを行った。後述の表1~10における実試験の欄に「あり」と記載があるものは、実試験を行い、空欄のものはシミュレーションを行った。また、後述の
図21~
図42のプロットのうち、円で囲われたものが実試験の結果である。
【0131】
(シミュレーション)
シミュレーションには、有限要素法を用いた衝撃・衝突解析ソフトウェア(日本ESI株式会社製PAM-CRASH)を用いた。シミュレーションでは、接着層として接着破断エネルギーを設定できるCOS3D(Material Type305)を使用し、実試験と整合するように接着破断エネルギーEFRSnを設定した。シミュレーションにおいては、まず、ガラス板に曲げの弾性エネルギー(ガラスの応力として蓄積される)を与える。
次に、曲がったガラス板に接着層を介してフレームを貼りつける。ガラスの弾性エネルギーで接着層およびフレームが変形し、接着層のうち接着エネルギーが接着破断エネルギーを超えたエレメントは消失するため、ガラスがフレームから剥離する現象をシミュレーションで表現できる。なお、シミュレーション結果と実試験の結果に乖離が生じないことは確認済みである。また、シミュレーションにおける弱接着層の接着破断エネルギーは弱接着層の実試験結果をもとに設定した。
【0132】
(シミュレーション条件)
下記物性および各例に記載の条件で実試験に対応したモデルを作成し、剥離が生じるかを判定した。剥離が生じない場合を、A(貼合可)とし、2msecの間に剥離が生じる場合を、B(貼合不可)とした。・ガラス板ヤング率:70GPa(G=29.17、K=38.89), 74GPa(G=30.08、K=45.68), 77GPa(G=31.56、K=45.83)・フレームヤング率:206GPa(G=79.231、K=171.667)
ここで、Gはせん断弾性係数、Kは体積弾性係数である。
【0133】
(実試験)
実試験においては、ガラス板として、AGC製アルミノシリケート(製品名ドラゴントレイル)のガラス板を用いた。このガラス板を、フレームと接着されない側(第1の主面側)に凸またはフレームと接着される側(第2の主面側)に凸となるように横方向(X方向)に曲げて、X方向に湾曲したカバーガラスとし、周縁側の端部がフレームからはみ出さないように、接着層を介して枠状のフレームに接着させた。フレームは、圧延鋼材SS400製のものを用い、接着層としては、強接着層(第1接着層)であるスリーボンド製1539、又は、弱接着層(第2接着層)であるスリーエム製VHX-1701-04を用いた。
実試験では、200時間後の外観検査で、カバーガラスがフレームから剥離しているかを評価した。200時間後に剥離していない場合を、A(貼合可)とし、200時間後に剥離している場合を、B(貼合不可)とした。
【0134】
【0135】
(例1、例2)
表1は、例1及び例2のカバーガラスの特性を示す表である。
図21は、例1及び例2の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例1及び例2においては、厚みtが1.1mm、縦(Y方向)の長さが150mm、横(X方向)の長さが250mmの長方形のガラス板を準備した。ガラス板のヤング率は、74GPaであり、AGC製アルミノシリケート(製品名ドラゴントレイル)のガラス板を想定した。
例1、例2においては、フレームと接着される側(第2の主面側)に凸となるように横方向(X方向)に曲げて、カバーガラスの全体を湾曲させたため、平坦部が形成されず、全体が1つの湾曲部となる。接着層としては、第1接着層に相当する接着剤(スリーボンド製 接着剤1539)を想定した。フレームは、圧延鋼材SS400製のものを想定した。例1及び例2においては、曲率半径R、面積A
1、周長Lが表1に示すように異なる複数のサンプルを準備した。
【0136】
図21は、例1及び例2の各サンプルの曲率半径Rと、接着領域の面積(ここでは第1接着領域の面積A
1)を周長Lで除した値(接着幅)との関係をプロットしたグラフである。
図21の実線は、式(3)または式(4)を満たすかを示す境界となるラインであり、縦軸の値が実線以上となるサンプルが、式(3)または式(4)を満たすことになるといえる。
図21の点線は、式(6)を満たす境界となるラインであり、縦軸の値が点線以上となるサンプルが、式(6)を満たす。
【0137】
比較例である例1は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例2は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0138】
【0139】
(例3、例4)
表2は、例3及び例4のカバーガラスの特性を示す表である。
図22は、例3及び例4の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例3及び例4においては、カバーガラスの一部を湾曲させて、湾曲部の両側に平坦部を形成した。例3及び例4において、曲率半径R、面積A
1、周長Lが表1に示すように異なる複数のサンプルを準備した。それ以外の点については、例1及び例2と同様とした。
表2及び
図22に示すように、比較例である例3は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例4は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。また、例4のうち一部サンプルでは、更に式(6)を充足した。
【0140】
【0141】
(例5、例6)
表3は、例5から例10のカバーガラスの特性を示す表である。
図23は、例5及び例6の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例5及び例6においては、カバーガラスの厚みを0.7mmとし、曲率半径R、面積A
1、及び周長Lを表3に示したものとした以外は、例1、例2と同様とした。
表3及び
図23に示すように、比較例である例5は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例6は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。また、例6のうち一部サンプルでは、更に式(6)を充足した。
【0142】
(例7、例8)
図24は、例7及び例8の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例7及び例8においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
1、及び周長Lを表3に示したものとした以外は、例5、例6と同様とした。
表3及び
図24に示すように、比較例である例7は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例8は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0143】
(例9、例10)
図25は、例9及び例10の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例9及び例10においては、カバーガラスの厚みを0.5mmとし、曲率半径R、面積A
1、及び周長Lを表3に示したものとした以外は、例1、例2と同様とした。
表3及び
図25に示すように、比較例である例9は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例10は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0144】
【0145】
(例11、例12)
表4は、例11及び例12のカバーガラスの特性を示す表である。
図26は、例11及び例12の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例11及び例12においては、接着層として第2接着層に相当する接着剤(スリーエム製 両面テープ VHX-1701-04)を用い、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表4に示したものとした以外は、例1、例2と同様とした。
表4及び
図26に示すように、比較例である例12は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例11は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0146】
【0147】
(例13、例14)
表5は、例13及び例14のカバーガラスの特性を示す表である。
図27は、例13及び例14の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例13及び例14においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表5に示したものとした以外は、例11、例12と同様とした。
表5及び
図27に示すように、比較例である例13は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例14は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
また、例14のうち一部サンプルでは、更に式(6)を充足した。
【0148】
【0149】
(例15、例16)
表6は、例15から例20、例41から例44のカバーガラスの特性を示す表である。
図28は、例15及び例16の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例15及び例16においては、カバーガラスの厚さを0.7mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表6に示したものとした以外は、例11、例12と同様とした。
表6及び
図28に示すように、比較例である例15は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例16は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
また、例16のうち一部サンプルでは、更に式(6)を充足した。
【0150】
(例17、例18)
図29は、例17及び例18の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例17及び例18においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表6に示したものとした以外は、例15、例16と同様とした。
表6及び
図29に示すように、比較例である例17は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例18は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0151】
(例19、例20)
図30は、例19及び例20の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例19及び例20においては、カバーガラスの厚さを0.5mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表6に示したものとした以外は、例11、例12と同様とした。
表6及び
図30に示すように、比較例である例19は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例20は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
また、例20のうち一部サンプルでは、更に式(6)を充足した。
【0152】
(例41~44)
図41、42は例41~44の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例41~44はガラス板のヤング率を70GPaまたは77GPaとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表6に示したものとした以外は例11、12と同様にした。
表6及び
図41、42に示すように、比較例である例42、44は、式(3)又は式(4)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例41,43は、式(3)又は式(4)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0153】
【0154】
(例21、例22)
表7は、例21から例24のカバーガラスの特性を示す表である。
図31は、例21及び例22の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例21及び例22においては、フレームと接着されない側(第1の主面側)に凸となるように横方向(X方向)に曲げて、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表7に示したものとした以外は、例1、例2と同様とした。
表7及び
図31に示すように、比較例である例21は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例22は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0155】
(例23、例24)
図32は、例23及び例24の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例23及び例24においては、接着層として第2接着層に相当する接着剤(スリーエム製 両面テープ VHX-1701-04)を用い、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表7に示したものとした以外は、例21、例22と同様とした。
表7及び
図32に示すように、比較例である例24は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例23は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0156】
【0157】
(例25、例26)
表8は、例25から例28のカバーガラスの特性を示す表である。
図33は、例25及び例26の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例25及び例26においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表7に示したものとした以外は、例23、例24と同様とした。
表8及び
図33に示すように、比較例である例25は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例26は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0158】
(例27、例28)
図34は、例27及び例28の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例27及び例28においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表7に示したものとした以外は、例21、例22と同様とした。
表8及び
図34に示すように、比較例である例27は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例28は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0159】
【0160】
(例29、例30)
表9は、例29から例36のカバーガラスの特性を示す表である。
図35は、例29及び例30の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例29及び例30においては、カバーガラスの厚みを0.7mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例23、例24と同様とした。
表9及び
図35に示すように、比較例である例29は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例30は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0161】
(例31、例32)
図36は、例31及び例32の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例31及び例32においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例29、例30と同様とした。
表9及び
図36に示すように、比較例である例31は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例32は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0162】
(例33、例34)
図37は、例33及び例34の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例33及び例34においては、カバーガラスの厚みを0.7mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例21、例22と同様とした。
表9及び
図37に示すように、比較例である例33は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例34は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0163】
(例35、例36)
図38は、例35及び例36の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例35及び例36においては、カバーガラスの一部を湾曲させて湾曲部の両側に平坦部を形成し、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例33、例34と同様とした。
表9及び
図38に示すように、比較例である例35は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例36は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0164】
【0165】
(例37、例38)
表10は、例37から例40のカバーガラスの特性を示す表である。
図39は、例37及び例38の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例37及び例38においては、カバーガラスの厚みを0.5mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例23、例24と同様とした。
表10及び
図39に示すように、比較例である例37は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例38は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0166】
(例39、例40)
図40は、例39及び例40の各カバーガラスの評価結果を示すグラフである。
例39及び例40においては、カバーガラスの厚みを0.5mmとし、曲率半径R、面積A
2、及び周長Lを表9に示したものとした以外は、例21、例22と同様とした。
表10及び
図40に示すように、比較例である例39は、式(6)又は式(7)を満たさず、カバーガラスがフレームから剥離してしまうことが分かり、実施例である例40は、式(6)又は式(7)を満たし、カバーガラスがフレームから剥離することを抑制できることが分かる。
【0167】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0168】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2021年8月30日出願の日本特許出願(特願2021-139604)、2022年4月26日出願の日本特許出願(特願2022-072684)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0169】
2 車載用表示装置
10 ガラス物品
12 カバーガラス
12A、12B 主面
14 フレーム
16 接着層
20 湾曲部
A1、A2 面積
F 長さ
R 曲率半径
R’ 補正曲率半径
t 厚み