(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】車両用窓ガラス
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/32 20060101AFI20240628BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240628BHJP
H01Q 9/42 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
B60J1/00 B
H01Q9/42
(21)【出願番号】P 2020087864
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 芳人
(72)【発明者】
【氏名】野田 潤
(72)【発明者】
【氏名】江川 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 栄太
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-118400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/32
B60J 1/00
H01Q 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記L字状エレメントは、前記第1エレメントに沿って延長した水平仮想線を基準にしたとき、前記水平仮想線を交差せずに前記第2端部側とは反対側に延伸して開放端を有する、車両用窓ガラス。
【請求項2】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記アンテナ素子が受信する所定周波数帯の電波の空気中の中心波長をλ
0
、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記アンテナの長さL
A
は、0.65×λ
0
×k以上0.90×λ
0
×k以下を満足する、車両用窓ガラス。
【請求項3】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記アンテナ素子が受信する所定周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記アンテナの長さL
A
は、0.35×λ×k以上1.15×λ×k以下を満足し、
前記メアンダ状エレメントの長さL
M
は、0.25×λ×k以上0.70×λ×k以下を満足する、車両用窓ガラス。
【請求項4】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記アンテナ素子が受信する所定周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記アンテナの長さL
A
は、0.35×λ×k以上1.15×λ×k以下を満足し、
前記アンテナ素子が受信する所定周波数帯の電波の空気中の中心波長をλ
0
とするとき、
前記メアンダ状エレメントの長さL
M
は、0.35×λ
0
×k以上0.60×λ
0
×k以下を満足する、車両用窓ガラス。
【請求項5】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部から前記ガラス板の主面に沿って前記水平方向と直交する垂直方向に延伸する垂直仮想線を与えたとき、
前記垂直仮想線を基準に、水平方向における前記第2エレメントの最長距離が、水平方向における前記第1エレメントの最長距離よりも長く、
前記垂直仮想線上には前記第1エレメントのみが配置され、
前記アンテナ素子は、FM放送波の周波数帯の電波を受信する、車両用窓ガラス。
【請求項6】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記アンテナは、前記第1エレメント、前記第3エレメント及び前記第4エレメントを含む外縁により囲まれた略四角形の第1付加アンテナ領域を含み、
前記第1付加アンテナ領域内に閉ループエレメントを備える、車両用窓ガラス。
【請求項7】
前記閉ループエレメントの外縁は、前記第1エレメントと前記第4エレメントの一部を共有する、請求項
6に記載の車両用窓ガラス。
【請求項8】
前記閉ループエレメントの外縁は、前記第3エレメントと共有しない、請求項
7に記載の車両用窓ガラス。
【請求項9】
前記アンテナは、前記閉ループエレメント内に水平方向及び垂直方向に、前記閉ループエレメントを短絡する短絡線を有して、複数の小閉ループエレメントを有する、請求項
6または7に記載の車両用窓ガラス。
【請求項10】
複数の前記小閉ループエレメントは、略同一形状である、請求項
9に記載の車両用窓ガラス。
【請求項11】
前記アンテナ素子は、AM放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項
6から10のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項12】
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置され
、
前記ガラス板上に、前記アンテナ素子が配置される領域とは異なる、第2付加アンテナ領域に、前記アンテナ素子が受信する周波数帯とは異なる周波数帯の電波を受信する付加アンテナ素子が備えられる、車両用窓ガラス。
【請求項13】
前記付加アンテナ素子は、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項
12に記載の車両用窓ガラス。
【請求項14】
前記L字状エレメントは、前記第1エレメントに沿って延長した水平仮想線を基準にしたとき、前記水平仮想線を交差して前記第2端部側とは反対側に延伸して開放端を有する、請求項
2から13のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項15】
前記アンテナ素子が受信する所定周波数帯の電波の空気中の波長をλ、前記ガラス板の波長短縮率をk、とするとき、
前記アンテナの長さL
Aは、0.35×λ×k以上1.15×λ×k以下を満足する、請求項
1,5から13のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項16】
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部から前記ガラス板の主面に沿って前記水平方向と直交する垂直方向に延伸する垂直仮想線を与えたとき、
前記垂直仮想線を基準に、水平方向における前記第2エレメントの最長距離が、水平方向における前記第1エレメントの最長距離よりも長い、請求項
1から4,6から13のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項17】
前記垂直仮想線上には前記第1エレメントのみが配置される、請求項
16に記載の車両用窓ガラス。
【請求項18】
前記アンテナ素子は、FM放送波の周波数帯の電波を受信する、請求項
1から4,6から13のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【請求項19】
前記メアンダ状エレメントは、S字状エレメントである、請求項
1から18のいずれか一項に記載の車両用窓ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用窓ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、MF(Medium Frequency)帯~UHF(Ultra High Frequency)帯の周波数帯にわたる範囲の所定周波数帯の放送波を受信するアンテナを備えた車両用の窓ガラスが知られている。例えば、特許文献1には、VHF(Very High Frequency)-Low帯~UHF帯の電波を受信できる、自動車の側部窓ガラスに装着したガラスアンテナが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のガラスアンテナは、VHF-Low帯を含む周波数帯におけるアンテナ利得は必ずしも十分なレベルでとは言えず、より高い利得が得られるアンテナを搭載した車両用窓ガラスが要求されている。
【0005】
そこで、本開示は、所定周波数帯の放送波の電波を高感度で受信できるとともに、配置するアンテナの領域を省スペース化できる車両用窓ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
ガラス板と、
前記ガラス板に備えられるアンテナ素子を有し、
前記アンテナ素子は、給電部とアンテナを有し、
前記アンテナは、
前記給電部と接続するメアンダ状エレメントと、
前記メアンダ状エレメントの前記給電部側に位置する第1端部とは反対側で、前記メアンダ状エレメントを含む四角形領域の対角線方向に位置する第2端部と接続するL字状エレメント、を有し、
前記メアンダ状エレメントは、前記第1端部側に配置される第1エレメントと、前記第2端部側に配置される第2エレメントと、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間に配置される第3エレメントと、前記第1エレメントと前記第3エレメントを接続する第4エレメントを有し、
前記第1エレメント、前記第2エレメント及び前記第3エレメントはいずれも水平方向に延伸し、
前記第3エレメントのうち前記第1端部側とは反対側の端部から前記第2端部までの間には複数方向に分岐するエレメントを含まず、
前記L字状エレメントは、前記第2端部から延伸し前記第1端部側に水平方向に折れ曲がって配置される、車両用窓ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、所定周波数帯の放送波の電波を高感度で受信できるとともに、配置するアンテナの領域を省スペース化できる車両用窓ガラスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態の車両用窓ガラスのアンテナ配置を説明する図である。
【
図3】第1実施形態の車両用窓ガラスのアンテナの長さを説明する図である。
【
図4】第2実施形態の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図5】第3実施形態の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図6】第4実施形態の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図7】第4実施形態の車両用窓ガラスの具体的構成例を示す図である。
【
図8】実施例1~実施例4の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図9】実施例1~実施例4の車両用窓ガラスの水平偏波のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
【
図10】実施例1~実施例4の車両用窓ガラスの垂直偏波のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
【
図11】比較例の車両用窓ガラスの構成例を示す図である。
【
図12】実施例3、比較例1~比較例2の車両用窓ガラスの水平偏波のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
【
図13】実施例3、比較例1~比較例2の車両用窓ガラスの垂直偏波のアンテナ利得の測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本開示にかかる実施形態について説明する。なお、各形態において、平行、直角、水平、垂直、上下、左右などの方向には、本発明の効果を損なわない程度のずれが許容される。また、X軸方向、Y軸方向、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向は、互いに直交する。XY平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態にかかる車両用窓ガラスを示す図である。
図1において、X軸方向は、車両の前後方向に対応し、Y軸方向は、車両の上下方向に対応する。また、XY平面は、水平面に垂直な方向(鉛直方向)に対応する。
【0011】
図1に示す車両用窓ガラス101は、ガラス板1上に給電部3とアンテナ11を有する。なお、本明細書では、給電部3とアンテナ11を含む導体を「アンテナ素子」と総称する場合があり、後述する実施形態においても給電部3とアンテナ12~14を含む導体を「アンテナ素子」と称する。アンテナ素子において、アンテナ11は給電部3に接続される。また、ガラス板1上に備えられる給電部3は、1つのみのいわゆる単極の給電部に相当し、アンテナ11は単極タイプのアンテナである。
【0012】
なお、単極とは、アンテナにおける給電部が1つのみでありガラス板1上に接地側の給電部が備えられないことを意味する。そして、給電部3は、外部の信号処理装置の信号経路に導電性部材を介して電気的に接続される。導電性部材は、例えばAV線(自動車用電線)や同軸ケーブルが挙げられる。導電性部材としてAV線を用いる場合、AV線を給電部3に電気的に接続する。また、導電性部材として同軸ケーブルを用いる場合、同軸ケーブルの芯線を給電部3に接続し、外部導体を車両の金属ボディ等にアース接続する。
【0013】
図1の車両用窓ガラス101は、ガラス板1の主面をXY平面とし、ガラス板1を車両のボディフランジ2に取り付けられた状態を模式的に示している。
図1の車両用窓ガラス101は、車両のリアクオータ等のサイドガラスへの適用例を示すが、サイドガラスに限らず、車両のフロントガラスやリアガラスに適用してもよい。また、ガラス板1の周辺領域、つまりボディフランジ2に沿った領域に(不図示の)遮光膜を備えてもよい。遮光膜は、具体的に、黒色セラミックス等のセラミックスが挙げられる。また、給電部3及びアンテナ11の一部は、遮光膜と重なるように配置でき、このような配置にすると、アンテナ素子の一部が遮光膜によって隠蔽されて視認されなくなり意匠性が向上する。
【0014】
次に、本実施形態にかかる車両用窓ガラス101におけるアンテナ11の構成について、詳細に説明する。車両用窓ガラス101は、給電部3と接続するメアンダ状エレメント20と、L字状エレメント50が直列的に接続された基本構成をなす。つまり、アンテナ11は、途中で2つ以上の経路に分岐するようなエレメントを含まないことが好ましい。
【0015】
メアンダ状エレメント20は、給電部3を起点として水平方向に延伸する第1エレメント21と、給電部3側とは反対側に位置して水平方向に延伸する第2エレメント22を有する。
図1において、水平方向とはX軸方向である。第2エレメント22は、給電部3から最も離れた水平方向に延伸するエレメントでもある。また、メアンダ状エレメント20は、それ自体が分岐せずに2つの端部を有するメアンダ形状をなし、
図1において、給電部3側の端部として端部a、給電部3側とは反対側の端部として端部dを定義する。なお、端部dは、L字状エレメント50の端部とも共通する。なお、本明細書において、メアンダ状エレメント20における、端部aは「第1端部」とも言い、端部dは「第2端部」とも言う。
【0016】
また、メアンダ状エレメント20は、第1エレメント21と第2エレメント22の間に水平方向(負のX軸方向)に延伸する第3エレメント23を有する。第3エレメント23は、水平方向に延伸する複数のエレメントのうち第1エレメント21と隣り合うエレメントに相当する。そして、メアンダ状エレメント20は、第1エレメント21のうち給電部3側とは反対側の端部bを有し、第1エレメント21(の端部b)と第3エレメント23を接続する第4エレメント24を有する。なお、第4エレメント24は、垂直方向(正のY軸方向)に延伸するが、第1エレメント21と直交する方向に限らず、Y軸方向から傾く方向であったり曲線部分を含んだりしてもよい。
【0017】
また、第3エレメント23のうちメアンダ状エレメント20の端部a(給電部3)側とは反対側の端部からメアンダ状エレメント20の端部dまでの間には複数方向に分岐するエレメント(分岐エレメント)を含まない。例えば、メアンダ状エレメント20は、端部cから負のX軸方向に延伸して、端部cから分岐する分岐エレメントを含まない。メアンダ状エレメント20は、このような分岐エレメントを含まないことで、アンテナ11の受信利得が向上し、アンテナ11が配置される領域をコンパクト化(省スペース化)でき、ガラス板1における空白領域を広く確保できる。
【0018】
さらに、メアンダ状エレメント20は、第2エレメント22と第3エレメント23を接続する第5エレメント25を有する。
図1の例においてメアンダ状エレメント20は、第1エレメント21~第5エレメント25によって構成される、いわゆる「S字状エレメント20」とも称する。また、
図1の例において第5エレメント25は、第3エレメント23から垂直方向(正のY軸方向)に延伸するが、第3エレメント23に直交する方向に限らず、Y軸方向から傾く方向であったり曲線部分を含んだりしてもよい。第5エレメント25は、第2エレメントと接続する端部cを有する。
【0019】
L字状エレメント50は、端部dを起点として垂直方向(負のY軸方向)に延伸する第6エレメント56と、端部d側とは反対側の端部eから端部a(給電部3)側に向かう水平方向(負のX軸方向)に延伸する第7エレメント57を有する。第7エレメント57は、端部dから延伸し端部a側に水平方向に折れ曲がって配置される。また、L字状エレメント50は、それ自体が分岐せずに2つの端部を有し、
図1において、L字状エレメント50は、メアンダ状エレメント20側とは反対側の端部として端部fを有する。さらに、端部fはアンテナ11の開放端でもある。
【0020】
また、メアンダ状エレメント20、L字状エレメント50は、金属のボディフランジ2との距離(間隔)を適宜設定できる。例えば、第2エレメント22と並走するボディフランジ2との距離、第6エレメント56と並走するボディフランジ2との距離を設定できる。これらのエレメントは、ボディフランジ2と容量結合する距離としてもよく、容量結合しない距離としてもよい。これらのエレメントはボディフランジ2と容量結合させる場合の距離は、30mm以下であればよく、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましい。また、容量結合させる場合、該距離の下限はとくに無いが、0mm超であればよく3mm以上が好ましい。また、これらのエレメントが、ボディフランジ2と容量結合させない場合、これらの距離は、30mm超とすればよい。
【0021】
図2は、車両用窓ガラス101において、メアンダ状エレメント20が配置される領域を説明する図である。ここで、第1エレメント21の端部aと端部b、第2エレメント22の端部cと端部dの4点を結んでできる四角形領域70を与える。このとき、メアンダ状エレメント20の2つの端部である端部aと端部dを結ぶ直線は、四角形領域70の対角線に相当する。
【0022】
また、
図2の車両用窓ガラス101において、ガラス板1の主面(XY平面)に沿って第1エレメント21の点aを起点として水平方向(正のX軸方向)に延長した仮想線を水平仮想線Ex、垂直方向(正のY軸方向)に延長し水平仮想線Exと直交する仮想線を垂直仮想線Eyとする。このとき、第2エレメント22は、垂直仮想線Eyよりも正のX軸方向側に配置すると、給電部3の上方(正のY軸方向)側に空白領域ができる。このように、車両用窓ガラス101に空白領域ができると、ガラス板1の開口部におけるアンテナが配置される領域がコンパクト化されたり、その空白領域に、アンテナ11が受信する周波数帯とは異なる周波数帯の電波を受信する(不図示の)アンテナを備えたりもできる。
【0023】
さらに、メアンダ状エレメント20において、垂直仮想線Eyを基準として水平方向(正のX軸方向)における、第1エレメント21の最長距離と第2エレメント22の最長距離を比べると、第2エレメント22の最長距離の方が長い。言い換えると、垂直仮想線Eyを基準としたときの、端部dまでの距離は、端部bまでの距離よりも長い。メアンダ状エレメント20は、このように形成すると、L字状エレメント50を容易に配置しやすくなる。
【0024】
L字状エレメント50は、第6エレメント56が水平仮想線Exを交差するように垂直方向(負のY軸方向)に延伸して、第7エレメント57が水平仮想線Exより下方(負のY軸方向)に配置される。この場合、第7エレメント57は、第1エレメント21よりも下方の領域で水平方向(負のX軸方向)に延伸することから、エレメントの長さ調整の自由度が高くなるため、所望のアンテナ利得を実現しやすくなる。なお、第6エレメント56は、垂直方向(負のY軸方向)に延伸するが、第2エレメント22と直交する方向に限らず、Y軸方向から傾く方向であったり曲線部分を含んだりしてもよい。
【0025】
また、メアンダ状エレメント20は、メアンダ形状の主要なエレメントのパターンが形成されていればよい。例えば、メアンダ状エレメント20は、給電部3と第1エレメント21の間に、第1エレメント21よりも短く、水平方向とは異なる方向に延伸する(不図示の)接続エレメントが挿入されてもよい。接続エレメントは、例えば、第1エレメント21の長さの1/10以下の長さに設定してもよい。さらに、L字状エレメント50も、L字状の主要パターンが形成されていればよく、例えば、第7エレメント57の負のX軸方向の先端から水平方向とは異なる(不図示の)延長エレメントを備えてもよい。その場合、延長エレメントの先端が開放端(端部f)となる。
【0026】
図3は、車両用窓ガラス101において、アンテナ11を構成するエレメントの長さを示す図である。ここで、アンテナ11の全長、すなわち、端部aから端部fまでの長さをL
Aとし、メアンダ状エレメント20の長さすなわち、端部aから端部dまでの長さをL
Mとする。そして、アンテナ素子が受信する周波数帯の電波の空気中の波長をλとし、ガラス板1の波長短縮率をkとする。このとき、長さL
Aは、0.35×λ×k以上1.15×λ×k以下を満足すればよい。また、長さL
Aは、0.45×λ×k以上1.05×λ×k以下を満足すると好ましく、0.55×λ×k以上0.95×λ×k以下を満足するとより好ましい。なお、アンテナ素子は、例えばFM放送波の電波を受信するアンテナとして使用できるが、FM放送波以外の電波を受信するアンテナとしてもよい。
【0027】
さらに、アンテナ素子が受信する周波数帯の電波の空気中の中心波長をλ0とすると、長さLAは、0.65×λ0×k以上0.90×λ0×k以下を満足するとよく、0.67×λ0×k以上0.85×λ0×k以下を満足すると好ましく、0.70×λ0×k以上0.80×λ0×k以下を満足するとより好ましい。
【0028】
また、メアンダ状エレメント20の長さLMは、0.25×λ×k以上0.70×λ×k以下を満足するとよく0.30×λ×k以上0.65×λ×k以下を満足すると好ましく、0.35×λ×k以上0.60×λ×k以下を満足するとより好ましい。さらに、長さLMは、0.35×λ0×k以上0.60×λ0×k以下を満足するとよく、0.40×λ0×k以上0.60×λ0×k以下を満足すると好ましく、0.45×λ0×k以上0.55×λ0×k以下を満足するとより好ましい。
【0029】
なお、アンテナ及び給電部3は、例えば、導電性金属を含有するペースト(例えば、銀ペースト等)をガラス板1の車内側表面にプリントして焼付けることによって形成できる。しかし、アンテナ及び給電部3の形成方法は、この方法に限定されない。例えば、アンテナ又は給電部3は、銅等の導電性物質を含有する線状体又は箔状体を窓ガラスの車内側表面又は車外側表面に設けることで形成してもよい。あるいは、アンテナ又は給電部3は、ガラス板に接着剤等により貼付されてもよく、ガラス板1自体の内部に設けられてもよい。
【0030】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態にかかる車両用窓ガラスを示す図である。
図4は、車両用窓ガラス102を示し、とくにメアンダ状エレメント30に特徴を有する。なお、第2実施形態のうち第1実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0031】
車両用窓ガラス102は、給電部3とアンテナ12を有する。アンテナ12は、メアンダ状エレメント30とL字状エレメント50を有して、これらが端部dで接続して直列的に配置される。メアンダ状エレメント30は、第1実施形態にかかる車両用窓ガラス101のメアンダ状エレメント20のような「S字状エレメント20」と異なる。すなわち、メアンダ状エレメント30は、第2エレメント22と第3エレメント23を接続するエレメントが、4回折り曲げられてなるジグザグ形状(つづら折り形状)をなす。具体的にこのエレメントは、第3エレメント23の端部から、正のY軸方向に延伸して正のX軸方向に延伸し、さらに正のY軸方向に延伸して負のX軸方向に延伸し、さらに正のY軸方向に延伸して第2エレメント22の端部cと接続する。
【0032】
アンテナ12の長さLAは、第1実施形態における説明と同様の範囲を満たすとよい。さらに、メアンダ状エレメント30の長さLMについても、端部aから端部dまでの長さが、第1実施形態におけるメアンダ状エレメント20の説明と同様の範囲を満たすとよい。
【0033】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態にかかる車両用窓ガラスを示す図である。
図5は、車両用窓ガラス103を示し、とくにL字状エレメント60に特徴を有する。なお、第3実施形態のうち第1実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0034】
図5に示す車両用窓ガラス103は、給電部3とアンテナ13を有する。アンテナ13は、メアンダ状エレメント20とL字状エレメント60を有して、これらが端部dで接続して直列的に配置される。L字状エレメント60は、第1実施形態にかかる車両用窓ガラス101のL字状エレメント50と異なる。すなわち、L字状エレメント60は、第6エレメント66と第7エレメント67を有してL字形状をなすが、第6エレメント66は水平仮想線Exと交差せずに垂直方向(負のY軸方向)に延伸して、第7エレメント67が水平仮想線Exより上方(正のY軸方向)に配置される。また、アンテナ13の長さL
Aは、第1実施形態における説明と同様の範囲を満たすとよい。なお、第6エレメント66は、垂直方向(負のY軸方向)に延伸するが、第2エレメント22と直交する方向に限らず、Y軸方向から傾く方向であったり曲線部分を含んだりしてもよい。
【0035】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態にかかる車両用窓ガラスを示す図である。
図6は、車両用窓ガラス104を示し、とくにメアンダ状エレメント20およびL字状エレメント50が形成される位置とは異なる領域に、付加的なエレメントを有する。なお、第4実施形態のうち第1実施形態と同様の構成及び効果の説明は、上述の説明を援用することで、省略又は簡略する。
【0036】
図6に示す車両用窓ガラス104は、メアンダ状エレメント20の一部を外縁とした第1付加アンテナ領域71を有する。具体的に、第1付加アンテナ領域71は、その外縁が、第1エレメント21、第4エレメント24及び第3エレメント23を含む。さらに、第1付加アンテナ領域71は、垂直仮想線Eyと第3エレメント23の水平方向(負のX軸方向)に延伸する延長線によって囲まれた、略四角形の領域に相当する。そして、付加的なアンテナは、この第1付加アンテナ領域71に配置される。
【0037】
また、車両用窓ガラス104は、ガラス板1によってできる開口部の面積にもよるが、例えば、メアンダ状エレメント20のうち、第2エレメントおよび第3エレメントの配置によってできる空白領域に第2付加アンテナ領域72を有してもよい。第2付加アンテナ領域72には、例えば、アンテナ14が受信する周波数帯とは異なる周波数帯の電波を受信するアンテナが備えられてもよい。
【0038】
図7は、車両用窓ガラス104として、第1付加アンテナ領域71内に第1付加アンテナ80を備えた例を示す。つまり、アンテナ14は、メアンダ状エレメント20、L字状エレメント50及び第1付加アンテナ80を有する。第1付加アンテナ80は、第1エレメント21の端部aから垂直方向(正のY軸方向)に延伸する第1付加エレメント81と、第1付加エレメント81のうち端部aとは反対側の端部から水平方向(正のX軸方向)に延伸して第4エレメント24の中間点と接続する第2付加エレメント82を有する。ここで、アンテナ14は、第1エレメント21及び第4エレメント24の一部を共有し、さらに第1付加エレメント81及び第2付加エレメント82によって閉ループエレメントの外縁を形成する。なお、閉ループエレメントの外縁は、第3エレメント23と共有しなくてもよい。
【0039】
図7に示す車両用窓ガラス104のアンテナ14は、第1付加アンテナ80を含む閉ループエレメント内に、他のエレメントを形成してもよい。具体的に、アンテナ14は、第1付加アンテナ80を含む閉ループエレメント内に、第1付加エレメント81と第4エレメント24とを水平方向に接続し閉ループエレメントの短絡線に相当する、水平エレメント83、84、85を有する。さらに、第1付加アンテナ80を含むアンテナ14は、第2付加エレメント82と第1エレメント21を垂直方向に接続する短絡線に相当する、垂直エレメント86、87を有する。短絡線は、水平方向に1本以上、垂直方向に1本以上あればよく、水平方向に複数本、垂直方向に複数本あってもよい。このように、アンテナ14は、閉ループ内に、水平エレメント83、84、85および垂直エレメント86、87を配置することで、最小単位となる、複数(この場合12個)の小閉ループエレメントを有してもよい。また、複数の小閉ループエレメントは略同一形状でもよく、このようにすることで意匠性が向上する。なお、閉ループエレメントは、複数の小閉ループエレメントを包含する最も広い領域の閉ループエレメントに相当する。
【0040】
また、
図7に示す車両用窓ガラス104のアンテナ14は、第1付加アンテナ80を含むことによって、第1実施形態~第3実施形態のアンテナ素子が受信する周波数帯の電波とは異なる周波数帯の電波を受信できる。つまり、アンテナ14を含むアンテナ素子は、メアンダ状エレメント20とL字状エレメント50によって受信する周波数帯の電波に加え、第1付加アンテナ80によって、異なる周波数帯の電波を受信できる統合型アンテナとして使用できる。例えば、アンテナ14は、第1付加アンテナ80を含むことによって、AM放送波の電波を受信できる。このとき、メアンダ状エレメント20とL字状エレメント50によってFM放送波の電波を受信する仕様の場合、第1付加アンテナ80の有無によるFM放送波の電波の受信感度に大きな変化は無い。
【0041】
さらに、第2付加アンテナ領域72を有してもよい。第2付加アンテナ領域72には、アンテナ14を含むアンテナ素子が受信する周波数帯とは異なる周波数帯の電波を受信する付加アンテナ素子が備えられてもよい。例えば、付加アンテナ素子は、地上デジタルテレビ放送波の周波数帯の電波を受信するアンテナ素子(他の給電部および他のアンテナ)を備えてもよい。
【実施例】
【0042】
ここで、上記実施形態の車両用窓ガラスのアンテナのアンテナ特性の評価結果について説明する。以下で説明する実施例では、メアンダ状エレメント20とL字状エレメント50によってFM放送波の周波数帯(76MHz~108MHz)の電波を受信する仕様とし、第1付加アンテナ80によってAM放送波の周波数帯(500kHz~1700kHz)の電波を受信する仕様とした。
【0043】
(実施例1)
実施例1は、第4実施形態にかかる車両用窓ガラス104について、ガラス板1にアンテナ素子を形成した。アンテナ14の各寸法は下記のとおりであり、各エレメントの延伸方向は水平方向(X軸方向)または垂直方向(Y軸方向)とした。なお、アンテナ14のうちメアンダ状エレメント20(S字状エレメント)とL字状エレメント50は、第4実施形態にかかる車両用窓ガラス104のアンテナ11に相当する。また、実施例1(後述する実施例2,3,4及び比較例1、比較例2)における、エレメントの長さの単位は「mm」である。
L1(第1エレメント長):402
L2(第2エレメント長):290
L3(第3エレメント長):240
L4(第4エレメント長):170
L5(第5エレメント長):100
L6(第6エレメント長):300
L7(第7エレメント長):300
LA(アンテナ長):1802
LM(メアンダ状エレメント長):1202
LP(第1付加エレメント長):120
閉ループエレメント:402×120
小閉ループエレメント(各12個):134×3
第2エレメントとボディフランジ2との間隔:23~31
第6エレメントとボディフランジ2との間隔:30
【0044】
このとき、FM放送波の周波数帯の電波の空気中の波長λが2776mm~3995mm、ガラス板1の波長短縮率kが0.72であり、アンテナ(アンテナ11)の長さLAは、0.63×λ×k~0.90×λ×kの範囲である。また、FM放送波の周波数帯の電波の空気中の波長λ0は3259mmであり、アンテナ(アンテナ11)の長さLAは、0.77×λ0×kである。さらに、メアンダ状エレメント20の長さLMは、0.41×λ×k~0.60×λ×kの範囲であり、0.51×λ0×kである。
【0045】
次に、車両用窓ガラス104を車両のサイドガラスとして取り付け水平面内の車両全周範囲(0°~360°)において、所定の角度毎に76MHz~108MHzのFM放送波の周波数帯の受信電波におけるアンテナ利得の平均値を測定した。同様に、500kHz~1700kHzのAM放送波の周波数帯の受信電波におけるアンテナ利得の平均値を測定した。
【0046】
(実施例2)
実施例2は、第7エレメントの長さを変化させた以外は、実施例1と同じ条件とした。
L7(第7エレメント長):250
LA(アンテナ長):1752
このとき、アンテナ(アンテナ11)の長さLAは、0.61×λ×k~0.87×λ×kの範囲であり、0.74×λ0×kである。
【0047】
(実施例3)
実施例3は、第7エレメントの長さを変化させた以外は、実施例1と同じ条件とした。
L7(第7エレメント長):200
LA(アンテナ長):1702
このとき、アンテナ(アンテナ11)の長さLAは、0.59×λ×k~0.85×λ×kの範囲であり、0.73×λ0×kである。
【0048】
(実施例4)
実施例4は、第7エレメントの長さを変化させた以外は、実施例1と同じ条件とした。
L7(第7エレメント長):150
LA(アンテナ長):1652
このとき、アンテナ(アンテナ11)の長さLAは、0.57×λ×k~0.83×λ×kの範囲であり、0.70×λ0×kである。
【0049】
図9は、FM放送波の周波数帯の電波における水平偏波の受信感度(単位:dBd)を示したグラフであり、実施例1~実施例4の測定結果を示した。これらの実施例では、水平偏波における平均利得が、-18.2[dBd]以上となり所定のアンテナ利得を実現できた。
【0050】
【0051】
図10は、FM放送波の周波数帯の電波における垂直偏波の受信感度(単位:dBd)を示したグラフであり、実施例1~実施例4の測定結果を示した。これらの実施例では、水平偏波における平均利得が、-19.1[dBd]以上となり所定のアンテナ利得を実現できた。なお、AM放送波の周波数帯の電波も十分なレベルで受信できた。
【0052】
【0053】
(比較例1)
図11は、比較例1における車両用窓ガラス110を示した図である。比較例1の車両用窓ガラス110は、実施例3の車両用窓ガラス104に、メアンダ状エレメント20(S字状エレメント20)の途中から分岐する分岐エレメント111を付加した。つまり、比較例1の車両用窓ガラス110は、アンテナ15として実施例1のアンテナ14と分岐エレメント111を有する。具体的に、分岐エレメント111は、第2エレメント22の端部cから水平方向(負のX軸方向)に長さL
Eのエレメントを有する。比較例1は、この分岐エレメント111を有する以外は実施例3と同じ条件とした。
L
E(分岐エレメント長):190
【0054】
(比較例2)
比較例2は、分岐エレメント111の長さを変化させた以外は、比較例1と同じ条件とした。
LE(分岐エレメント長):100
【0055】
図12は、FM放送波の周波数帯の電波における水平偏波の受信感度(単位:dBd)を示したグラフであり、比較例1および比較例2の測定結果を実施例3の測定結果と併せて示した。これらの比較例では、分岐エレメント111を与えることで、実施例3に比べて水平偏波における平均利得が低下した。
【0056】
【0057】
図13は、FM放送波の周波数帯の電波における垂直偏波の受信感度(単位:dBd)を示したグラフであり、比較例1および比較例2の測定結果を実施例3の測定結果と併せて示した。これらの比較例では、分岐エレメント111を与えることで、実施例3に比べて垂直偏波における平均利得が低下した。
【0058】
【0059】
図12および
図13の結果より、従来技術のように、メアンダ状エレメント20(S字状エレメント20)の途中から分岐エレメント111を与えるとFM放送波の周波数帯の電波のアンテナ利得が低下することが確認された。さらに、比較例1および比較例2のように分岐エレメント111を含むアンテナ15を与えると、アンテナ15を配置する領域が大きくなり、ガラス板1の空白領域を広く確保できない。
【0060】
以上、実施形態を説明したが、本開示の技術は上記の実施形態に限定されない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 ガラス板
2 ボディフランジ
3 給電部
11~15 アンテナ
21 第1エレメント
22 第2エレメント
23 第3エレメント
24 第4エレメント
25 第5エレメント
20 メアンダ状エレメント(S字状エレメント)
30 メアンダ状エレメント
50、60 L字状エレメント
56 第6エレメント
57 第7エレメント
70 四角形領域
71 第1付加アンテナ領域
72 第2付加アンテナ領域
80 第1付加アンテナ
81 第1付加エレメント
82 第2付加エレメント
83~85 水平エレメント
86、87 垂直エレメント
101~104 車両用窓ガラス
a~f 端部
110 車両用窓ガラス
111 分岐エレメント