(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-06-27
(45)【発行日】2024-07-05
(54)【発明の名称】光学素子、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020123813
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2023-02-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石戸 総
(72)【発明者】
【氏名】関川 賢太
(72)【発明者】
【氏名】永山 裕道
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-533073(JP,A)
【文献】米国特許第10520772(US,B1)
【文献】特開2011-197629(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102162873(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面を有するレンズと、
前記レンズの前記曲面に形成される位相差層と、を含み、
前記位相差層は、遅相軸と進相軸とを有する液晶層を含み、
前記液晶層は、複数の液晶分子を含み、前記曲面の重心における法線方向から見て、前記液晶層全体に亘って前記複数の液晶分子が互いに平行に配向されており、
前記液晶分子の長軸方向が前記遅相軸であり、前記液晶分子の短軸方向が前記進相軸であり、
前記法線方向から見て、前記重心と前記曲面の周縁の各点とを結ぶ各線分を前記重心から前記曲面の周縁に4:1で分割する分割線と、前記重心を通る前記遅相軸に平行な第1仮想線と、前記重心を通る前記進相軸に平行な第2仮想線と、が設定され、
前記法線方向から見て、前記第1仮想線と前記分割線とは第1点と第2点とで交差し、前記第2仮想線と前記分割線とは第3点と第4点とで交差し、
前記第2仮想線上の前記第3点及び前記第4点での前記液晶層の厚みの和が、前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みの和よりも小さく、
前記第2仮想線上の前記第3点及び前記第4点での前記液晶層の厚みが、前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みよりも小さく、
前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みが、前記重心での前記液晶層の厚みよりも厚く、
前記分割線内の領域における、前記法線方向に平行な光(波長543nm)のリタデーションの標準偏差が、3.0nm以下である、光学素子。
【請求項2】
前記位相差層は、1/4波長板である、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記位相差層は、前記液晶層の上に積層される第2液晶層を更に含む広帯域位相差層である、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記液晶層は、エネルギー硬化性樹脂を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記位相差層は、前記レンズと前記液晶層の間に、前記液晶層に含まれる液晶分子を配向させる配向層を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学素子を製造する製造方法であって、
前記レンズの前記曲面の上に液晶組成物を塗布し、前記液晶層を形成することと、
前記液晶層をドライエッチングし、前記第2仮想線上の前記第3点及び前記第4点での前記液晶層の厚みを、前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みよりも薄くすることと、
を含む、光学素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学素子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、曲面形状に形成した位相差フィルムが記載されている。位相差フィルムは、延伸フィルムである。位相差フィルムは、高温で曲げ加工され、レンズの曲面に貼合される。位相差フィルムは、主ポリマーとして、シクロオレフィンコポリマー(COC)樹脂又はシクロオレフィンポリマー(COP)樹脂を含む。COC樹脂又はCOP樹脂を含む位相差フィルムは、ポリカーボネート(PC)樹脂を含む位相差フィルムに比べて、熱及び応力による複屈折性の変化が小さい。
【0003】
特許文献2に記載の位相差層は、曲面にコーティングされる。コーティング方法としては、例えばスピンコート法が用いられる。レンズの曲面に位相差層をコーティングする場合、レンズの曲面に位相差フィルムを貼合する場合に比べて、シワの発生を抑制でき、また、厚みムラを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-220853号公報
【文献】特開2012-32527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学素子は、曲面を有するレンズと、レンズの曲面に形成される位相差層と、を含む。
【0006】
本発明者は、実験等によって、レンズの曲面に均一な厚みの位相差層を形成すると、位相差層のリタデーションのバラツキが大きくなってしまうという課題を見出した。
【0007】
本開示の一態様は、位相差層のリタデーションのバラツキを低減する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光学素子は、曲面を有するレンズと、前記レンズの前記曲面に形成される位相差層と、を含む。前記位相差層は、遅相軸と進相軸とを有する液晶層を含む。前記液晶層は、複数の液晶分子を含み、前記曲面の重心における法線方向から見て、前記液晶層全体に亘って前記複数の液晶分子が互いに平行に配向されている。前記液晶分子の長軸方向が前記遅相軸であり、前記液晶分子の短軸方向が前記進相軸である。前記法線方向から見て、前記重心と前記曲面の周縁の各点とを結ぶ各線分を前記重心から前記曲面の周縁に4:1で分割する分割線と、前記重心を通る前記遅相軸に平行な第1仮想線と、前記重心を通る前記進相軸に平行な第2仮想線と、が設定される。前記法線方向から見て、前記第1仮想線と前記分割線とは第1点と第2点とで交差し、前記第2仮想線と前記分割線とは第3点と第4点とで交差する。前記第2仮想線上の前記第3点及び前記第4点での前記液晶層の厚みの和が、前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みの和よりも小さい。前記第2仮想線上の前記第3点及び前記第4点での前記液晶層の厚みが、前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みよりも小さい。前記第1仮想線上の前記第1点及び前記第2点での前記液晶層の厚みが、前記重心での前記液晶層の厚みよりも厚い。前記分割線内の領域における、前記法線方向に平行な光(波長543nm)のリタデーションの標準偏差が、3.0nm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、位相差層のリタデーションのバラツキを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(A)は参考形態に係る光学素子のY軸方向に垂直な断面図であり、
図1(B)は
図1(A)の光学素子のX軸方向に垂直な断面図であり、
図1(C)は
図1(A)の光学素子の平面図である。
【
図2】
図2は
図1(A)の液晶層を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図3(A)は
図1の点P101における液晶分子をY軸方向から見た図であり、
図3(B)は
図1の点P101における液晶分子をX軸方向から見た図である。
【
図4】
図4(A)は
図1の点P103における液晶分子をY軸方向から見た図であり、
図4(B)は
図1の点P103における液晶分子をX軸方向から見た図である。
【
図5】
図5は、平板状の液晶層の傾斜角度と、Rdとの関係の一例を示す図である。
【
図6】
図6(A)は実施形態に係る光学素子のY軸方向に垂直な断面図であり、
図6(B)は
図6(A)の光学素子のX軸方向に垂直な断面図であり、
図6(C)は
図6(A)の光学素子の平面図である。
【
図7】
図7は、ドライエッチング用のマスクと液晶層の位置を示す平面図である。
【
図8】
図8は、例1の光学素子の第1仮想線上及び第2仮想線上でのRdの分布を示す図である。
【
図9】
図9は、例2の光学素子の第1仮想線上及び第2仮想線上でのRdの分布を示す図である。
【
図10】
図10は、例1及び例2の光学素子の分割線内の領域におけるRdの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。また、明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0012】
先ず、主に
図1を参照して、参考形態に係る光学素子101について説明する。
図1(A)及び
図1(B)に示すように、光学素子101は、レンズ102を含む。レンズ102は、曲面102aを含む。
【0013】
曲面102aは、例えば凹曲面である。凹曲面は、重心P100が周縁よりも凹む曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凹曲面の重心P100は、凹曲面の周縁よりも凹む。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに垂直である。Z軸方向は、凹曲面の重心P100における法線方向である。XY平面は、凹曲面の重心P100における接平面に対して平行である。
【0014】
光学素子101は、レンズ102の曲面102aに形成される位相差層103を更に含む。位相差層103は、例えば、レンズ102の上に形成される配向層104と、配向層104の上に形成される液晶層105と、を含む。但し、配向層104は、任意の構成であって無くてもよい。
【0015】
液晶層105は、遅相軸と進相軸を有する。Z軸方向視で、遅相軸はX軸方向であり、進相軸はY軸方向である。遅相軸は屈折率の最も大きい方向であり、進相軸は屈折率の最も小さい方向である。
【0016】
図2に示すように、液晶層105は、互いに平行な複数の液晶分子105aを含む。Z軸方向視で、液晶分子105aの長軸方向はX軸方向であり、液晶分子105aの短軸方向はY軸方向である。
【0017】
本発明者は、実験等によって、レンズ102の曲面102aに均一な厚みの液晶層105を形成すると、液晶層105のリタデーションRdのバラツキが大きくなってしまうという課題を見出した。
【0018】
Rdは、遅相軸の屈折率neと進相軸の屈折率noとの差Δn(Δn=ne-no)と、液晶層105のZ軸方向寸法dとの積である。つまり、Rdは、Rd=Δn×dの式から求められる。
【0019】
液晶層105の厚みが均一な場合に、上記課題の生じる理由について説明する。液晶層105は、
図1(A)及び
図1(B)に示すように、レンズ102の曲面102aの上に形成される。その結果、曲面102aの重心P100から離れた位置では、XY平面に対して液晶分子105aが傾斜する。
【0020】
液晶分子105aの傾斜は、
図1(C)に示す第1仮想線L101上の点P101、P102と、第2仮想線L102上の点P103、P104とで異なる。Z軸方向視で、第1仮想線L101は、重心P100を通り、遅相軸に平行な仮想線である。また、Z軸方向視で、第2仮想線L102は、重心P100を通り、進相軸に平行な仮想線である。
【0021】
図3に、第1仮想線L101上の点P101での液晶分子105aの傾斜を示す。
図3において、破線は重心P100での液晶分子105aを示し、実線は点P101での液晶分子105aを示す。
図3から明らかなように、点P101では、重心P100に比べて、液晶分子105aのX軸方向寸法が小さくなるのに対し、液晶分子105aのY軸方向寸法は変わらない。点P102でも同様である。
【0022】
その結果、第1仮想線L101上の点P101、P102では、重心P100に比べて、neが小さくなり、noが変わらないので、Δnが小さくなる。また、点P101、P102では、重心P100に比べて、dが大きくなる。Δnの減少によるRdの減少は、dの増大によるRdの増大よりも大きい。その結果、点P101、P102では、重心P100に比べて、Δnとdの積であるRdは小さくなる。
【0023】
図4に、第2仮想線L102上の点P103での液晶分子105aの傾斜を示す。
図4において、破線は重心P100での液晶分子105aを示し、実線は点P103での液晶分子105aを示す。
図4から明らかなように、点P103では、重心P100に比べて、液晶分子105aのY軸方向寸法がわずかに小さくなるのに対し、液晶分子105aのX軸方向寸法は変わらない。点P104でも同様である。
【0024】
その結果、第2仮想線L102上の点P103、P104では、重心P100に比べて、noが小さくなり、neが変わらないので、Δnが大きくなる。また、点P103、P104では、重心P100に比べて、dが大きくなる。従って、点P103、P104では、重心P100に比べて、Rdが大きくなる。
【0025】
図5に、平板状の液晶層の傾斜角度と、Rdの測定値との関係の一例を示す。
図5において、傾斜角度が0°であることは、平板状の液晶層がXY平面に平行配向であることを意味する。
【0026】
図5の黒丸は、平板状の液晶層を、第2仮想線L102を中心に時計回りと反時計回りに回転させ、傾斜させたデータである。傾斜角度が正であることは、回転方向が時計回りであることを意味する。また、傾斜角度が負であることは、回転方向が反時計回りであることを意味する。
【0027】
図5の黒丸の傾斜角度の横軸の絶対値は、第1仮想線L101上の点P101、P102と重心P100との距離に相当する。点P101、P102と重心P100との距離が大きいほど、液晶分子105aの傾斜角度の絶対値が大きく、Rdが小さくなる。
【0028】
一方、
図5の白丸は、平板状の液晶層を、第1仮想線L101を中心に時計回りと反時計回りに回転させ、傾斜させたデータである。傾斜角度が正であることは、回転方向が時計回りであることを意味する。また、傾斜角度が負であることは、回転方向が反時計回りであることを意味する。
【0029】
図5の白丸の傾斜角度の横軸の絶対値は、第2仮想線L102上の点P103、P104と重心P100との距離に相当する。点P103、P104と重心P100との距離が大きいほど、液晶分子105aの傾斜角度の絶対値が大きく、Rdが大きくなる。
【0030】
図5の黒丸と白丸を比較すれば明らかなように、第1仮想線L101上と第2仮想線L102上とでは、Rdの変化の傾向が異なる。第1仮想線L101上では、重心P100からの距離が大きいほど、Rdが小さくなる。一方、第2仮想線L102上では、重心P100からの距離が大きいほど、Rdが大きくなる。
【0031】
なお、レンズ102の曲面102aは、本参考形態では凹曲面であるが、凸曲面であってもよい。凸曲面は、重心P100が周縁よりも凸む(突出する)曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凸曲面の重心P100は、凸曲面の周縁よりも凸む。
【0032】
凸曲面と凹曲面とで、液晶分子105aの傾斜角度の絶対値は同程度になる。従って、凸曲面と凹曲面とで、Rdの分布は同程度になる。
【0033】
次に、
図6を参照して、本実施形態に係る光学素子1について説明する。
図6(A)及び
図6(B)に示すように、光学素子1は、レンズ2を含む。レンズ2は、曲面2aを含む。曲面2aは、例えば凹曲面である。凹曲面は、重心P0が周縁よりも凹む曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凹曲面の重心P0は、凹曲面の周縁よりも凹む。
【0034】
光学素子1は、レンズ2の曲面2aに形成される位相差層3を更に含む。位相差層3は、例えば、レンズ2の上に形成される配向層4と、配向層4の上に形成される液晶層5と、を含む。但し、配向層4は、任意の構成であって無くてもよい。
【0035】
液晶層5は、遅相軸と進相軸を有する。Z軸方向視で、遅相軸はX軸方向であり、進相軸はY軸方向である。遅相軸は屈折率の最も大きい方向であり、進相軸は屈折率の最も小さい方向である。X軸方向とY軸方向とZ軸方向とは、互いに垂直である。Z軸方向は、凹曲面の重心P0における法線方向である。XY平面は、凹曲面の重心P0における接平面に対して平行である。
【0036】
図6(C)に示すように、Z軸方向視で、第1仮想線L1は、重心P0を通り、遅相軸に平行な仮想線である。また、Z軸方向視で、第2仮想線L2は、重心P0を通り、進相軸に平行な仮想線である。
【0037】
Z軸方向視で、分割線L3は、重心P0と曲面2aの周縁の各点とを結ぶ各線分を、重心P0側から曲面2aの周縁に4:1で分割する。また、Z軸方向視で、第1仮想線L1と分割線L3とは第1点P1と第2点P2とで交差し、第2仮想線L2と分割線L3とは第3点P3と第4点P4とで交差する。
【0038】
第1点P1と重心P0との距離は、X1の0.8倍である。X1は、重心P0からX軸正方向に伸びる直線と曲面2aの周縁との交点と、重心P0との距離である。第2点P2と重心P0との距離は、X2の0.8倍である。X2は、重心P0からX軸負方向に伸びる直線と曲面2aの周縁との交点と、重心P0との距離である。
【0039】
第3点P3と重心P0との距離は、Y1の0.8倍である。Y1は、重心P0からY軸正方向に伸びる直線と曲面2aの周縁との交点と、重心P0との距離である。第4点P4と重心P0との距離は、Y2の0.8倍である。Y2は、重心P0からY軸負方向に伸びる直線と曲面2aの周縁との交点と、重心P0との距離である。
【0040】
本実施形態によれば、第2仮想線L2上の第3点P3及び第4点P4での液晶層5の厚みty1、ty2の和が、第1仮想線L1上の第1点P1及び第2点P2での液晶層5の厚みtx1、tx2の和よりも小さい。つまり、下記式(1)が成立する。
【0041】
【数1】
上記式(1)が成立すれば、重心P0から離れた位置でのRdの差(
図5の黒丸と白丸の差)を低減できる。Rdの差が小さくなるように、液晶層5の厚みに差が付けられるからである。従って、色調のムラを抑制できる。
【0042】
液晶層5の厚みは、レンズ2の曲面2aの各点における法線方向に測定する。液晶層5の厚みは、例えば、分光干渉から算出するか、又は走査電子顕微鏡(SEM)の写真から算出する。
【0043】
上記式(1)に加えて、好ましくは、下記式(2)が成立する。
【0044】
【数2】
上記式(2)が成立すれば、上記式(1)のみが成立する場合に比べて、液晶層5のRdのムラがより小さくなる。従って、色調のムラをより抑制できる。(ty1+ty2)/(tx1+tx2)は、好ましくは0.80よりも大きく、より好ましくは0.85よりも大きい。また、(ty1+ty2)/(tx1+tx2)は、好ましくは0.99よりも小さく、より好ましくは0.98よりも小さい。
【0045】
また、上記式(1)に加えて、好ましくは、下記式(3)が成立する。
【0046】
【数3】
上記式(3)が成立すれば、上記式(1)のみが成立する場合に比べて、液晶層5のRdのムラがより小さくなる。従って、色調のムラをより抑制できる。
【0047】
また、上記式(3)に加えて、好ましくは、下記式(4)が成立する。
【0048】
【数4】
上記式(4)が成立すれば、上記式(3)のみが成立する場合に比べて、液晶層5のRdのムラがより小さくなる。従って、色調のムラをより抑制できる。ty1/tx1、ty1/tx2、ty2/tx1及びty2/tx2は、それぞれ、好ましくは0.80よりも大きく、より好ましくは0.85よりも大きい。である。また、ty1/tx1、ty1/tx2、ty2/tx1及びty2/tx2は、それぞれ、好ましくは0.99よりも小さく、より好ましくは0.98よりも小さい。
【0049】
また、本実施形態によれば、第1仮想線L1上の第1点P1及び第2点P2での液晶層5の厚みtx1、tx2が、重心P0での液晶層5の厚みtoよりも厚い。つまり、下記式(5)が成立する。
【0050】
【数5】
上記式(5)が成立すれば、第1仮想線L1上でのRdのムラ(
図5の黒丸の上下動)を低減できる。第1仮想線L1上でのRdの差が小さくなるように、tx1、tx2と、toと、に差が付けられるからである。従って、色調のムラを抑制できる。
【0051】
また、上記式(5)に加えて、好ましくは、下記式(6)が成立する。
【数6】
【0052】
上記式(6)が成立すれば、上記式(5)のみが成立する場合に比べて、液晶層5のRdのムラがより小さくなる。従って、色調のムラをより抑制できる。to/tx1及びto/tx2は、それぞれ、好ましくは0.80よりも大きく、より好ましくは0.85よりも大きい。また、to/tx1及びto/tx2は、それぞれ、好ましくは0.99よりも小さく、より好ましくは0.98よりも小さい。
【0053】
また、本実施形態によれば、第2仮想線L2上の第3点P3及び第4点P4での液晶層5の厚みty1、ty2が、重心P0での液晶層5の厚みtoよりも薄い。つまり、下記式(7)が成立する。
【0054】
【数7】
上記式(7)が成立すれば、第2仮想線L2上でのRdのムラ(
図5の白丸の上下動)を低減できる。第2仮想線L2上でのRdの差が小さくなるように、ty1、ty2と、toと、に差が付けられるからである。従って、色調のムラを抑制できる。
【0055】
また、上記式(7)に加えて、好ましくは、下記式(8)が成立する。
【0056】
【数8】
上記式(8)が成立すれば、上記式(7)のみが成立する場合に比べて、液晶層5のRdのムラがより小さくなる。従って、色調のムラをより抑制できる。ty1/to及びty2/toは、それぞれ、好ましくは0.80よりも大きく、より好ましくは0.85よりも大きい。また、上記式(8)において、ty1/to及びty2/toは、それぞれ、好ましくは0.99よりも小さく、より好ましくは0.98よりも小さい。
【0057】
また、本実施形態によれば、分割線L3内の領域(分割線L3を含む)における、Z軸方向に平行な光(波長543nm)のRdの標準偏差σが3.0nm以下である。つまり、下記式(9)が成立する。
【0058】
【数9】
標準偏差σが3.0nm以下であると、分割線L3内の領域でのRdのムラを低減できる。なお、分割線L3内の領域におけるRdの測定点は、P1、P2、P3及びP4を含み、合計100点以上設定される。標準偏差σは、例えば0.0nm~3.0nmであり、好ましくは0.0nm~2.0nmである。
【0059】
なお、レンズ2の曲面2aは、本実施形態では凹曲面であるが、凸曲面であってもよい。凸曲面は、重心P0が周縁よりも凸む曲面である。X軸方向に垂直な断面でも、Y軸方向に垂直な断面でも、凸曲面の重心P0は、凸曲面の周縁よりも凸む。
【0060】
凸曲面と凹曲面とで、液晶分子の傾斜角度の絶対値は同じ傾向になる。従って、曲面2aが凸曲面でも、上記式(1)が成立すればよい。また、曲面2aが凸曲面でも、上記式(2)~(9)の1つ以上が成立することが好ましい。
【0061】
次に、
図6等を再度参照して、光学素子1について説明する。光学素子1が有するレンズ2は、用途によって、性能の観点から、曲面2aを有することが望まれる。
【0062】
レンズ2は、球面レンズでもよいし、非球面レンズでもよい。また、レンズ2は、両凹レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、両凸レンズ、平凸レンズ、及び凸メニスカスレンズのいずれでもよい。レンズ2は、曲面2aを有すればよい。
【0063】
レンズ2の外形は、
図6(C)に示す円形には限定されず、例えば楕円形、又は多角形等であってもよい。レンズ2の外形に関係なく、上記式(1)が成立すればよい。また、レンズ2の外形に関係なく、上記式(2)~(9)の1つ以上が成立することが好ましい。
【0064】
レンズ2の材質は、樹脂でもよいし、ガラスでもよい。樹脂レンズの樹脂は、例えば・ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアクリレート、環状オレフィンである。ガラスレンズのガラスは、例えばBK7、合成石英である。
【0065】
位相差層3は、例えば1/4波長板である。1/4波長板と、不図示の直線偏光板とが組み合わせて用いられてもよい。直線偏光板の吸収軸と、1/4波長板の遅相軸とは、45°ずらして配置される。直線偏光板と1/4波長板とで、円偏光板が構成される。
【0066】
直線偏光板は、位相差層3を基準としてレンズ2とは反対側に配置されてもよいし、位相差層3とレンズ2との間に配置されてもよいし、レンズ2を基準として位相差層3とは反対側に配置されてもよい。
【0067】
位相差層3は、図示しないが、液晶層5の上に積層される第2液晶層を更に含む広帯域位相差層であってもよい。第2液晶層では、上記式(1)が成立しても成立しなくてもよいが、好ましくは上記式(1)が成立する。上記式(2)~(9)も、上記式(1)と同様である。
【0068】
広帯域位相差層に含まれる液晶層の数は、2つ以上であればよく、3つ以上であってもよい。Z軸方向視で、複数の液晶層は、互いに異なる方位の遅相軸を有する。少なくとも1つの液晶層で、上記式(1)が成立すればよい。好ましくは、全ての液晶層で、上記式(1)が成立する。上記式(2)~(9)も、上記式(1)と同様である。
【0069】
広帯域位相差層は、例えば、配向層4と液晶層5を交互に積層したものである。レンズ2側から、配向層4と液晶層5とがこの順番で積層される。なお、レンズ2とは別の透明基材の上に形成された液晶層と、レンズ2の上に形成された液晶層とを貼り合わせて、広帯域位相差層を形成してもよい。
【0070】
配向層4は、液晶層5の液晶分子を配向させるものである。配向層4は、例えばポリイミドのラビング、偏光UV照射によるシランカップリング剤又はポリイミドの光分解、偏光UV照射による光二量化若しくは光異性化の利用、剪断力による流動配向処理、又は無機物の斜め蒸着による配向処理等の処理が施されたものである。複数の処理が、組み合わせて使用されてもよい。これらの中でも、配向規制力、曲面への適用性、異物の軽減の観点から、偏光UV照射による光二量化若しくは光異性化の利用が好ましい。
【0071】
偏光UV照射による光二量化の生じる材料としては、クマリン、ジフェニルアセチレン、又はアントラセンが用いられる。偏光UV照射による光異性化の生じる材料としては、アゾベンゼン、スチルベン、α-イミノ-βケトエステル、又はスピロピランが用いられる。偏光UV照射による光二量化と光異性化の両方の生じる材料としては、シンナメート、カルコン、又はスチルバゾールが用いられる。
【0072】
配向層4は、レンズ2の曲面2aにコーティングされる。コーティングの方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、キャスト法、スプレーコート法、ビードコート法、ワイヤーバーコート法、ブレードコート法、ローラーコート法、カーテンコート法、スリットダイコート法、グラビアコート法、スリットリバースコート法、マイクログラビア法、又はコンマコート法等である。樹脂組成物がレンズ2の曲面2aに塗布され、乾燥される。樹脂組成物の溶剤は、塗布後の加熱によって除去される。なお、コーティングの方法は、溶剤を使用しない蒸着法であってもよい。
【0073】
配向層4の厚みは、例えば1nm~10μm、好ましくは10nm~5μm、より好ましくは50nm~2μmである。配向層4の厚みは、液晶層5の厚みと同様に、レンズ2の曲面2aの各点における法線方向に測定する。
【0074】
なお、上記の通り、配向層4は、任意の構成であって、無くてもよい。その場合、レンズ2の曲面2aには、液晶層5の液晶分子を配向させる処理が施されてもよい。
【0075】
液晶層5は、
図2に示す液晶層105と同様に、互いに平行に配向される複数の液晶分子を含む。Z軸方向視で、液晶分子の長軸方向はX軸方向であり、液晶分子の短軸方向はY軸方向である。液晶分子は、本実施形態では棒状液晶であるが、ディスコティック液晶であってもよい。
【0076】
液晶層5は、例えば光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂等のエネルギー硬化性樹脂を含む。液晶層5は、液晶組成物の塗布及び乾燥によって形成される。液晶組成物は、例えば、アクリル基又はメタクリル基を含む光硬化性の高分子液晶などである。液晶組成物は、単独で液晶相を示さない成分で構成されてもよい。重合によって液晶相が生じればよい。重合性の液晶組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、重合開始剤、レベリング剤、重合禁止剤、カイラル剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、又は二色性色素など用いられる。複数種類の添加剤が併用されてもよい。
【0077】
液晶組成物の塗布方法は、一般的なものであってよい。液晶組成物の塗布方法は、例えば、スピンコート法、バーコート法、押し出しコート法、ダイレクトグラビアコート法、リバースグラビアコート法、又はダイコート法等である。液晶組成物の溶剤は、塗布後の加熱によって除去される。
【0078】
液晶組成物の溶剤は、例えば有機溶剤である。有機溶剤は、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド)、炭化水素(例えばベンゼン、若しくはヘキサン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、若しくはプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート)、ケトン(例えばアセトン、若しくはメチルエチルケトン)、又はエーテル(例えばテトラヒドロフラン、若しくは1,2-ジメトキシエタン)である。2種類以上の有機溶剤が併用されてもよい。なお、液晶層5は、溶剤を使用しない蒸着法または真空注入法で形成されてもよい。
【0079】
液晶層5の厚みは、光の波長と、位相差と、Δn(Δn=ne-no)とに基づいて決められる。例えば、光の波長が543nmであり、位相差が1/4波長である場合、Rdは136nmである。Rdが136nmであってΔnが0.1である場合、液晶層5の厚みは1360nmである。
【0080】
液晶層5の厚みは、上記の通り、光の波長と、位相差と、Δnとに基づいて決められ、特に限定されないが、例えば0.1μm~20μm、好ましくは0.2μm~10μm、より好ましくは0.5μm~5μmである。なお、液晶層5は、1/4波長板には限定されず、1/2波長板等であってもよい。
【0081】
ところで、本実施形態では、上記の通り、液晶層5の厚みは、少なくとも式(1)を満たす。つまり、第2仮想線L2上の第3点P3及び第4点P4での液晶層5の厚みty1、ty2の和が、第1仮想線L1上の第1点P1及び第2点P2での液晶層5の厚みtx1、tx2の和よりも小さい。
【0082】
液晶層5の厚みは、例えばドライエッチング法によって調整する。ドライエッチング法として、例えばプラズマエッチング法が用いられる。プラズマエッチング法では、液晶層5の一部を覆うマスクを用いて、酸素等のプラズマで液晶層5の露出部をエッチングする。
【0083】
図7に示すように、マスクMは、例えば、第1仮想線L1上の第1点P1及び第2点P2を覆う。第2仮想線L2上の第3点P3及び第4点P4は、マスクMから露出している。この状態で液晶層5をエッチングすれば、ty1、ty2の和がtx1、tx2の和よりも小さくなる。液晶層5の厚みの変化が滑らかになるように、大きさの異なる複数のマスクMが順番に用いられてもよい。
【0084】
プラズマエッチング法では、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)装置が用いられる。プラズマの発生に用いられるガスは、例えば酸素ガスを含み、酸素ガスの他にCF4又はCCl4等のハロゲン含有ガスを更に含んでもよい。エッチング時間及びガス流量などで、エッチング量を制御できる。
【0085】
なお、光学素子1は、図示しないが、ハードコート層又は防汚層等の保護層を更に含んでもよい。保護層は、位相差層3を保護するものであり、位相差層3を基準としてレンズ2とは反対側に配置される。
【実施例】
【0086】
以下、実験データについて説明する。下記の例1が実施例であり、下記の例2が比較例である。
【0087】
[例1]
例1では、レンズと配向層と液晶層とからなる光学素子を作製した。レンズとしては、平凹レンズ(エドモンドオプティクス社製、商品コード#45-038)を用意した。このレンズの直径は、50mmであった。
【0088】
配向層は、偏光UV照射により配向規制力が発現する光配向膜を用いた。光配向膜の材料を含む溶液を、スピンコーターで平凹レンズの凹曲面に塗布した。塗布後の乾燥は、100℃で10分間実施した。乾燥後、配向層の表面には、偏光露光装置(山下電装社製、HC-1001)を用いて、240mW/cm2の光を照射し、配向規制力を付与した。配向層の厚みは、およそ0.1μmであった。
【0089】
液晶層は、液晶組成物の塗布及び乾燥によって形成した。液晶組成物は、紫外線硬化型の液晶(BASF社製、LC242)に光重合開始剤(BASF社製、DarocureTPO)とレベリング剤を加え、酢酸エチルで溶解したものを用いた。液晶組成物は、スピンコーターで配向層の上に塗布した。塗布後の乾燥は、100℃で10分間実施した。乾燥後、紫外線照射装置(浜松フォトニクス社製、LC6)を用い、3000mW/cm2の光を照射し、液晶組成物を硬化させた。
【0090】
液晶層の厚みは、ドライエッチング法によって調整した。マスクとしては、ホウケイ酸ガラス(ショット社製、D263)のガラス板を用いた。ガラス板は、
図7に示すように液晶層の上に載せた。ガラス板は、Y軸方向寸法が35mmであり、X軸方向寸法が76mmであり、Z軸方向寸法(厚み)が0.5mmであった。エッチング装置としては、反応性イオンエッチング装置(SAMCO社製、RIE-10NR)を用いた。酸素ガスの流量は20sccmであり、気圧は5.3Paであり、エッチング時間は20秒であった。
【0091】
[例2]
例2では、液晶層のドライエッチングを省いた以外、例1と同じ条件で光学素子を作製した。
【0092】
[評価]
(1.液晶層の厚み)
液晶層の厚みは、近赤外顕微分光測定機(オリンパス株式会社製、USPM-RU-W)を用いて、空気と液晶層との界面で反射した光と、液晶層と配向層との界面で反射した光との干渉波の波形から測定した。この測定では、液晶層の屈折率は1.56とした。
【0093】
表1に、液晶層の厚みの測定結果を示す。
【0094】
【表1】
表1から明らかなように、例1では、液晶層のドライエッチングを実施したので、上記式(1)~(4)が成立した。一方、例2では、液晶層のドライエッチングを省略したので、上記式(1)~(4)が成立しなかった。
【0095】
例2では、tx1、tx2、ty1、及びty2が、略同一であり、且つtoよりも大きかった。ドライエッチング前の液晶層の厚みは、主に凹曲面の重心P0からの距離に依存し、重心P0からの方位には依存しなかった。
【0096】
凹曲面の重心P0からの距離が遠いほど、ドライエッチング前の液晶層の厚みが厚かった。これは、凹曲面の重心P0からの距離が遠い位置では、勾配が急であり、液晶組成物が重力に逆らって這い上がろうとし、液晶組成物の流動が妨げられるからである。
【0097】
ドライエッチング前の液晶層の厚みの分布は、凹曲面の勾配、液晶組成物の粘度、固形分の濃度、溶剤の沸点、並びにスピンコートの回転数などで決まる。ちなみに、例1~例2では、tx1、tx2、ty1、及びty2の測定点における傾斜角度は、約20°であった。
【0098】
なお、液晶層の厚みは、走査電子顕微鏡(SEM)を用いても測定可能である。SEMの試料は、
図6(C)に示す第1仮想線L1と第2仮想線L2とで光学素子を切断し、作製する。切断面のSEM写真を用いて、液晶層の厚みを測定可能である。
【0099】
(2.液晶層のRd)
液晶層のRdは、二次元複屈折率評価装置(フォトニックラティス社製、WPA-200)を用い、曲面2aの全体で一括測定した。Rdの測定に用いる光の波長は、543nmであった。
【0100】
図8に、例1の光学素子の第1仮想線L1上及び第2仮想線L2上でのRdを示す。
図8において、黒丸は第1仮想線L1上でのRdの測定値を示し、白丸は第2仮想線L2上でのRdの測定値を示す。
図8から明らかなように、例1の光学素子は、第1仮想線L1上でも、第2仮想線L2上でも、Rdの分布が均一であった。
【0101】
図9に、例2の光学素子の第1仮想線L1上及び第2仮想線L2上でのRdを示す。
図9において、黒丸は第1仮想線L1上でのRdの測定値を示し、白丸は第2仮想線L2上でのRdの測定値を示す。
図9から明らかなように、例2の光学素子は、第1仮想線L1上ではRdの分布が均一であったが、第2仮想線L2上ではRdの分布が不均一であった。
【0102】
図10に、例1及び例2の光学素子の分割線L3内の領域におけるRdの分布を示す。各例で、Rdの測定点は、約16000点である。例1では、液晶層のドライエッチングを実施したので、Rdの標準偏差σは1.7nmであり、上記式(9)が成立した。一方、例2では、液晶層のドライエッチングを省略したので、Rdの標準偏差σは3.4nmであり、上記式(9)が成立しなかった。
【0103】
以上、本開示に係る光学素子及びその製造方法について説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0104】
1 光学素子
2 レンズ
2a 曲面
3 位相差層
5 液晶層
L1 第1仮想線
L2 第2仮想線
L3 分割線
P0 重心
P1 第1点
P2 第2点
P3 第3点
P4 第4点